JP4113994B2 - 燃料集合体および原子炉の炉心 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料集合体および原子炉の炉心に係り、特にプルトニウム燃料を用いて転換比を高めた原子炉において、冷却材のボイド係数を改良することができる燃料集合体および原子炉の炉心に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体ナトリウム(Na)を冷却材とする高速増殖炉(LMFBR)の実用化が容易でない段階となっている。火災を起こしやすいNaを用いないで燃料の増殖または高い転換比が達成できる原子炉が設計できれば、より安全な原子力発電が可能となる。
【0003】
この考えから、Naを用いないでLMFBRの優れた特性を実現する方策が検討されているが、LMFBRの場合と同様に冷却材の喪失によって炉心の反応度が高まるという「ボイド係数が正」という現象が起こり易く、この現象が大きなネックとなって未だ満足な炉心設計ができていないのが現状である。
【0004】
ボイド係数が正になる特性の原因を簡単にまとめると、ボイド発生により中性子スペクトルが硬化し(高いエネルギーへシフトし)、中性子「スペクトルの上側」(高いエネルギー側)で中性子発生率対吸収率比が増大する点と、中性子「スペクトルの下側」(低いエネルギー側)において中性子吸収率が減少する点にある。転換比または増殖比を高めることにより、炉心のボイド係数を正とした炉心においては、安全な原子炉の運転が困難となることを容易に避けることができない。
【0005】
ボイド係数を負にする案の原理として、ボイド発生に伴う中性子の漏れを増大させる方法が知られている。この原理を実現する構成として、細長い炉心として中性子漏洩を大きくする方法、燃料をかなり広い範囲で排除して中性子漏洩を大きくする方法、偏平な炉心として軸方向に中性子を漏洩させる偏平炉心、あるいは内部に向けて中性子漏洩が可能な内部ブランケットを有する軸方向非均質炉心が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各々の構成では、炉心を大型にできないため、燃料装荷量が少なく、原子炉容器内部の空間利用率が悪く、原子力発電の経済性を悪化させる大きな原因となる課題がある。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために前記原理を検討する際に、スペクトルの下側において中性子吸収効果が減少する点に着目して、実現可能な「新しい原理」が存在し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、スペクトルが硬化しても中性子吸収効果が減少しないようにし、ボイド率増大に伴って中性子の移動距離が長くなる(面積が広くなる)特性を利用できるような原子炉および燃料を設計できれば、新しい原理が実現できることになる。
【0009】
スペクトルが硬化しても中性子吸収能力が低下しない中性子吸収材を分散して配置すれば、このような「新しい原理」が実現可能である。つまり、この「新しい原理」は、ボイド率増大に伴って中性子の移動距離が増大することにより、分散して配置された中性子吸収材の中性子をより良く吸収する特性を利用するものである。
【0010】
数値計算の結果、スペクトルが非常に硬い小型のLMFBRや、プルトニウム富化度が高い原子炉などではこの「新しい原理」は適用困難であるが、原子炉でスペクトルがあまり高くない領域(中速スペクトル領域)では有望であることが明らかになった。また、本原理を従来技術と組み合わせることにより、燃料装荷量を増大させ、原子力発電の経済性向上に寄与できることが明らかになった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、前記特性を採用したボイド係数を改良することができ、軽水炉などのNaを用いない高転換型または増殖型の軽水あるいは重水を用いた安全な原子炉を設計でき、もって核燃料の利用率を改良できる燃料集合体および原子炉の炉心を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による燃料集合体は、請求項1記載の如く、冷却材が軽水又は重水であり、減速材対燃料体積比が1.0以下である高転換型又は増殖型の原子炉に用いられるとともに核燃料物質がMOX燃料である燃料集合体において、前記燃料集合体は、強中性子吸収材を含む吸収材セグメントを軸方向の一部に有する第1の燃料棒と、全長がMOX燃料からなる第2の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい空洞からなる燃料低減セグメント部を有する第3の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい減速材セグメント部を有する第4の燃料棒とから構成され、前記強中性子吸収材は、天然ボロンまたはB 10 を濃縮した濃縮ボロン、又はボロンカーバイド(B 4 C)、六硼化ユーロピウム(EuB 6 )、ユーロピアとガドリニアの混合酸化物(Eu 2 O 3 −Gd 2 O 3 )又はHfB 2 もしくはそれらの混合物、又はハフニウムの水素化物からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明による燃料集合体は、請求項2記載の如く、前記第1の燃料棒を複数本チャンネルボックス内部に分散して配置したことを特徴とする。また、請求項3記載の如く、前記第3の燃料棒を前記第1の燃料棒の一部または全部を取り囲むように配置したことを特徴とする。また、請求項4記載の如く、前記第4の燃料棒を前記第1の燃料棒の一部または全部を取り囲むように配置したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明による燃料集合体は、請求項5記載の如く、前記第3の燃料棒と前記第4の燃料棒を、前記第1の燃料棒を取り囲むように混合して配置したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明による燃料集合体は、請求項6記載の如く、前記第1の燃料棒の吸収材セグメントの上下に金属製ウールを配置したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明による燃料集合体は、請求項7記載の如く、前記第4の燃料棒の減速材セグメントの上下に金属製ウールを配置したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による原子炉の炉心は、請求項8記載の如く、冷却材が軽水又は重水であり、減速材対燃料体積比が1.0以下である高転換型又は増殖型の原子炉の炉心において、前記原子炉の炉心の一部に装荷される燃料集合体の核燃料物質はMOX燃料であり、かつ、前記燃料集合体は、強中性子吸収材を含む吸収材セグメントを軸方向の一部に有する第1の燃料棒と、全長がMOX燃料からなる第2の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい空洞からなる燃料低減セグメント部を有する第3の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい減速材セグメント部を有する第4の燃料棒とから構成され、前記強中性子吸収材は、天然ボロンまたはB10を濃縮した濃縮ボロン、又はボロンカーバイド(B4 C)、六硼化ユーロピウム(EuB6 )、ユーロピアとガドリニアの混合酸化物(Eu2O3 −Gd2O3 )又はHfB2もしくはそれらの混合物、又はハフニウムの水素化物からなることを特徴とする。
また、本発明による原子炉の炉心は、請求項9記載の如く、前記燃料集合体の下流側ブランケット部に減速材兼冷却材空間に囲まれた低散乱空間を設けるとともに、前記低散乱空間にガスプレナム部が上部に設けられた複数の燃料棒、又は複数の太径中空管と複数の細径管、又は断面が略正方形の容器、を配置したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明による原子炉の炉心は、請求項10記載の如く、前記減速材兼冷却材空間の横断面幅は 0.5 〜3 cm であることを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明に係る燃料集合体および燃料棒の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1(a)〜(d)は本発明に係る燃料集合体の第1の実施の形態を説明するためのもので、図1(a)は縦断面図、図1(b)は図1(a)のB−B横断面図、図1(c)は図1(a)のC−C横断面図、図1(d)は図1(a)のD−D横断面図である。
【0034】
燃料集合体1は正方形のチャンネルボックス2の内部に多数の燃料棒3を六角格子状に配列して構成されている。なお、各々の燃料棒3の上下両端部は各々上,下部タイプレート(図示せず)によって固定されている。冷却材と中性子減速材の機能を有する水が燃料棒3,3相互間の間隙を、燃料集合体の下部(上流側)から上部(下流側)に向けて流れている。
【0035】
本発明に係る燃料集合体1は、核燃料の転換比ないし増殖率を高めるために、燃料棒3,3間の間隔は許容できる範囲で狭くされており、この結果、減速材対燃料体積比(以下単に体積比と呼ぶ)が小さくなっている。
【0036】
この体積比は、減速材として水を用いる従来の原子炉では2程度であったが、水を用いる本実施の形態では1以下、目標としては0.5 ないしそれ以下である。核燃料物質としては二酸化ウランに二酸化プルトニウムを混合した混合酸化物燃料(以下、MOXと呼ぶ)のペレットが図示しない被覆管内に充填され、燃料棒3が構成されている。
【0037】
図1(a)に示す燃料集合体1の軸方向の基本構成は、従来の高速炉の例にならって、下端部の冷却材上流側に上流側ブランケット17,下流側の上端部に下流側ブランケット14があり、両者の中間は高速炉のシードに対応してPu富化度の高い高濃度領域となっている。
【0038】
本実施の形態では図1(a)のD−D矢視部で記した近傍に従来の高速炉の内部ブランケットを連想させる低濃度領域15を配置している。低濃度領域15の冷却材上流側は上流側主発熱部16,下流側は下流側主発熱部13となっており、それらの横断面は図1(c)で示すように燃料棒3は規則正しく配列されている。
【0039】
低濃度領域15はブランケットでない点が従来例と異なっており、図1(d)に示すようにボロン10(B10)の濃度を高めた濃縮ボロンを中性子吸収材とした、●印で記した吸収材セグメント4が分散して配置されている。低濃度領域15のPu濃度は上流側および下流側主発熱部の濃度(通常Puの富化度は10〜20%)の1/2ないし1/4程度とされる。
【0040】
燃料集合体1の下流側で図1(a)のB−B横断面部および下流側ブランケット14部の横断面は図1(b)に示すようにチャンネルボックス2の内面に沿って2列の燃料棒3,3が配列され、その内側に1列分程度の燃料を排除した空間(減速材兼冷却材空間、以下単に水ギャップと呼ぶ)5がある。
【0041】
さらに内部は燃料棒3の上部にガスプレナム状の空間を設けて形成した多数の燃料棒3のガスプレナム部を束ねて構成した低散乱空間6が設けられている。なお、図1(b),図1(c)および図1(d)において、チャンネルボックス2の内面に取付けられている方形の部材は水排除材である。
【0042】
つぎに、図2および図3により図1に示した第1の実施の形態における燃料集合体の作用を説明する。
図2は無限増倍率の計算値、図3はボイド反応度効果計算結果を示している。37本の燃料棒を六角格子状に束ねて構成した燃料バンドルにおいて、減速材の水の密度を変え、中性子スペクトル計算を行ったものである。計算においては説明を単純にするため、水の温度は20℃に固定した。
【0043】
水密度が1の場合の体積比を0.45として計算した。また、燃料棒3内の燃料として、減損ウランの酸化物に6%または13%のPuを酸化物として混合したものを採用した。
【0044】
37本の燃料棒3が全て同じ組成の場合に対する計算値を実線で示し、天然ボロンからなるB4 C粉末を理論密度の70%で充填した1本の吸収材充填棒を配置したときの計算値を破線で示した。なお、B10の濃度はこの計算例の5倍以上に高めることができるため、以下詳述する本実施の形態の作用はさらに高めることができるが、ここでは最も厳しい条件として計算した。
【0045】
図2は無限増倍率K∞の水密度の変化に伴う変化を、図3は水の密度が減少していくにつれて計算体系の反応度が変化する特性(ボイド反応度効果)が、吸収材充填棒の有無によって変化する様子を示したものである。
【0046】
図2からは、通常の燃料棒と同じように長い吸収材充填棒を用いると無限増倍率の低下により炉心の反応度が大きく抑えられるため、短尺化して使用すべきことが分かる。
【0047】
図3からは、Pu富化度が高い(13%富化)場合には、曲線b0 とb1 が示すように水の密度が減少するにつれて正方向へ増大しているため、ボイド反応度効果は正であり、負方向への改良効果(b0 からb1 へのシフト)は微小であるが、Pu富化度が低い(6%)場合には、水密度が低下するにつれて実線a0 から破線a1 のように曲線の開きが大きくなっており、ボイド係数は負の方向へ改良されていることが分かる。
【0048】
Puの富化度によって特性がこのように異なるのは、Pu富化度が高くなるにつれて中性子スペクトルが硬くなるため、吸収材の中性子吸収特性が減少してくるためである。
【0049】
この計算例では、天然ボロンB4 C粉末を用いているが、濃縮ボロンを用いて吸収材セグメントの飽和特性を向上させると、Pu富化度が13%程度に高くなっても改良効果が現れてくる。両図から、吸収材充填棒の長さ、すなわち吸収材セグメントはPu富化度の比較的低い部分において比較的短くすることが重要であることが分かる。
【0050】
図1に示した第1の実施の形態の低濃度領域はこのような背景のもとに考慮されたものである。低濃度領域に高速炉の内部ブランケットのように減損ウランを用いると炉心の燃焼の進行とともにPuが生成されるため、ボイド効果の改良効果が燃焼とともに減少する。
【0051】
本実施の形態のようにPuの富化度を低下させただけの場合には、燃焼が進行してもPu濃度の増加はなく、さらに中性子吸収材の吸収材濃度も高く保持されているために、ボイド係数改良効果が劣化することはない。また、Puは富化度が低いとはいえ十分核分裂を起こすので、炉心全体の出力分布を内部ブランケット使用の場合のように悪化させることはない。
【0052】
本実施の形態によればボイド係数を負へ改良させる新たな原理を採用できるようになるので、炉心の軸方向長さを長くできるようになり、より多くの核燃料を炉心に装荷できるようになり、原子力発電の経済性が向上する。
【0053】
なお、図1(a)のB−B横断面部から下流側のブランケット部には水ギャップ5と低散乱空間6が設けられている。この部分は本実施の形態における必須条件ではないが、中性子の下流側への漏れを調節する機能を有しており、低濃度領域15と協調してボイド係数を改良する性質を持たせることができる。
【0054】
ボイド率が増大すると水ギャップ5部が大きくボイド化され、低散乱空間6を介して中性子は下流側へ漏れる割合が増大し、核反応に寄与する中性子の量が減少するため、ボイド係数改良に寄与させることができる。ただし、この場合には核燃料を部分的に排除しているため、発熱部が減少するのでこの部分は小規模に止めるのが好ましい。
【0055】
図4(a)〜(f)は図1に示した第1の実施の形態における燃料集合体の軸方向諸特性について説明したものである。
(a)は核分裂物質の濃度ε分布であり、下端部(上流側)と上端部(下流部)は漏洩する中性子を捕獲してPuを生成させるために減損ウランを配置したブランケット、中央部は低濃度領域であってMOX燃料であり、その上下は高濃度領域である。(b)は中性子吸収材の吸収断面積Σa である。(c)は軸方向ボイド率分布である。
【0056】
(d)は無限増倍率K∞分布である。上下ブランケット部の無限増倍率は当然低いが、吸収材を添加した低濃度領域でもある程度低くなっている。ボイド率が高くなった場合の無限増倍率を模式的に破線で示す。図4(d)中、(イ)はボイド率が高いときを示し、(ロ)はボイド係数が正のため高くなるときを示している。
【0057】
低濃度領域およびその周辺(イ)では、中性子移動面積の増大により吸収材による中性子吸収効果が増大するために低くなっている。一方、低濃度領域から離れた(ロ)で示す上下の高濃度領域では本来正のボイド係数部であるため、無限増倍率は高くなっている。
【0058】
上端部の下流側ブランケットの下側の無限増倍率が低下している部分は図1(a)のB−B横断面部に対応し、核燃料物質を大幅に排除したために低下したものである。前述のようにこの部分は本実施の形態の必須部分ではないが、中性子を漏洩させることにより、本実施の形態と同様に、ボイド係数を負の方向へ改善する作用がある。
【0059】
(e)は軸方向出力分布である。図4(e)中、(イ)はボイド率が高いときを示し、(ロ)はボイド係数が正のため高くなるときを示している。ボイド率が高くなると破線で示すように変化する。
【0060】
炉心の下半分では通常ボイド率はあまり高くなく、ボイド率もあまり増大しないので出力分布もあまり変化しないが、低濃度領域の吸収材の中性子吸収効果が増大し空間的にも広がるため、(イ)で示す範囲では出力は低下し、(ロ)で示す下流側ではボイド率がかなり高くなり、さらにボイド係数が正の領域であるため若干出力が増大する領域も生じる。
【0061】
(f)は中性子インポータンスの軸方向分布である。軸方向に組成が一様な標準的な体系では余弦(cos )の2乗の分布になることはよく知られており、本実施の形態でも基本的には標準の形になっているが、吸収材を含む低濃度領域で若干低下している。全体としてインポータンスの高いところに低濃度領域を配置しているため、吸収材や低濃度領域の軸方向の長さを効果的に短めに設定することができる。
【0062】
つぎに図5および図6により本発明に係る燃料集合体の第2の実施の形態を説明する。
図5は、図1(d)を拡大して図6と対比するために示した参考図で、図6は、本実施の形態における燃料集合体1aの要部を示す横断面図で図5と対応し、同一部分には同一符号を付している。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、吸収材セグメント4の周りを取巻く6本の燃料棒3のうちの半分を、空洞で代表されるような燃料低減セグメント(V棒)7で置き換えて配置したことにある。
【0063】
本実施の形態によれば、吸収材の効果をさらに高めることができる。この例では1本の吸収材セグメント4の周りに3本のV棒7が配置されているが、3本に限定する必要はない。1本に減らすことも、6本に増やすこともできるが、増やしすぎると核燃料物質の減少につながるので、その点を考慮した設計が必要である。
【0064】
つぎに図7により本発明に係る燃料集合体の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態における燃料集合体1bは第2の実施の形態における燃料集合体1aの変形例で、1本の吸収材セグメント4の周りを3本のV棒7と3本のW棒8で取り囲んでいることにある。
【0065】
W棒8は減速材セグメントであり、水や固体減速材であるZrH2 ,ZrD2 ,C,Be,BeO,Al2 O3 ,CeO2 などが中性子の減速材として使用される。なお、本実施の形態ではV棒7とW棒8を同数ずつ配置した例で示したが、これらを同数に配置する必要はなく、例えば全数をW棒8のみとすることもできる。
【0066】
つぎに図8により本発明に係る燃料集合体の第4の実施の形態を説明する。図8は図1(d)に対応しており、本実施の形態における燃料集合体1cが第1の実施の形態と異なる点は、より多数の吸収材セグメント4を規則的かつ分散的に配置したことにある。本実施の形態によれば、チャンネルボックス2内の燃料棒3,3間に23本の吸収材セグメント4を規則的に分散配置して本数を増大させることにより吸収効果が増大し、よって低濃度領域の長さを低減できる。
【0067】
つぎに図9および図10により本発明に係る燃料集合体の第5の実施の形態を説明する。
図9は図1(b)を拡大して図10と対比するために示した参考図で、図10は本実施の形態の燃料集合体1dの要部を示している。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、燃料棒3の直径より大きい太径中空管9を多数束ね、余分の隙間を細径管10で埋め、低散乱空間6を形成したことにある。本実施の形態によれば、この空間6を形成する構造材の量が低減できるので、低散乱空間6の特性を改良することができる。
【0068】
つぎに図11により本発明に係る燃料集合体の第6の実施の形態を説明する。本実施の形態が第5の実施の形態と異なる点は、低散乱空間6を略正方形の断面からなる容器11と、この容器11内に設けられる内部補強材12とにより構成したことにある。本実施の形態によれば、より少ない構造材を用いて低散乱空間6を構成するので、より良い低散乱空間6を構成することができる。
【0069】
つぎに図12により本発明に係る燃料集合体の第7の実施の形態を説明する。図12は図1(a)に対応しており、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、図1(a)のB−B横断面で示す下流側主発熱領域13の上部を図1(c)に示すように燃料棒3で全てを満たしたことにある。また、下流側ブランケット14も同じ構成としている。
【0070】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と全く同じでこの部分だけが異なるとボイド係数の改良に不十分な場合も生じるため、低濃度領域15の機能強化が必要になるが、核燃料の装荷量を向上でき、ブランケット燃料装荷量も増大できるので、出力分布の平坦化やPu増殖に寄与できる。
【0071】
つぎに図13により本発明に係る燃料集合体の第8の実施の形態を説明する。図13は図1(a)に対応しており、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、主発熱領域18を多数に分割するように複数配置して、それらの領域18,18間に低濃度領域15を設けたことにある。本実施の形態によれば、ボイド係数を負に保ったまま燃料集合体の軸方向長さを格段に長くできるので、炉心への核燃料の装荷量を大幅に増大でき、原子力発電の経済性を向上することができる。
【0072】
つぎに図14により本発明に係る燃料集合体の第9の実施の形態を説明する。図14は図1(a)に対応しており、本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、下流側ブランケット14と上流側ブランケット17との間に主発熱領域18を主体的に設け、主発熱領域18の上端と下流側ブランケット14との間に低濃度領域15を設けたことにある。
【0073】
本実施の形態は、主発熱領域のPu富化度がやや低く、ボイド係数の必要な改良の程度があまり大きくない場合に特に好適であって、下流側ブランケットと主発熱領域との間に吸収材セグメントを含む低濃度領域を配置することで、燃料集合体の反応度的な損失を少なくすることができる。
【0074】
なお、必要があれば、主発熱領域18のPu濃度が若干低い軸方向中央部の例えば±50cmあたりに、10〜30cmの長さで吸収材セグメントを横断面方向に分散配置しても本実施の形態の効果が得られる。
【0075】
本発明に係る燃料集合体の実施の形態を第1から第9の例にわたって説明したが、これらの他に幾多の実施の形態があり、これらについて補足説明する。
上記各々の実施の形態では冷却材として水(軽水)の場合について説明したが、重水あるいは重水と軽水との混合物でも差支えない。特に軽水と重水との混合物を用いた場合は、重水によって軽水の密度を低減して中性子の減速特性を抑制することができる。
【0076】
また、上述の各燃料集合体の燃料棒の被覆管の肉厚を、従来の場合(約0.8 mm)から拡大して、1〜2mmとすることもできる。これにより、水対燃料の原子数比を低減して中性子の減速特性を抑制することができる。
【0077】
また、ボイド係数については、沸騰水型原子炉を想定して説明したが、加圧水型原子炉の場合においても冷却水が沸騰すると冷却材ボイドの状態が発生し、上述したボイド係数の問題と同じ事態が想定される。また、強中性子吸収材としてはB4 Cのみを取り上げて説明したが、EuB6 ,Eu 2 O 3 −Gd 2 O 3 ,HfH2 なども使用できる。
【0078】
吸収材セグメント4は低濃度領域15全般にわたって配置することを想定したが、短めでも長めでも良い。低濃度領域15が比較的長い場合には、吸収材セグメント4の位置はブランケットに隣接する場合のように、低濃度領域15の一方側に偏る配置の方が良い場合も考えられる。
【0079】
燃料低減セグメント(V棒)7の最も代表的なものは気体であるが、本発明の場合、原子炉の中で使用できるセラミック類はほとんど使用可能である。燃料物質や親物質が含まれても差支えない。ただし中性子散乱や吸収はあまり大きくない方が望ましいが、必須要件ではない。
【0080】
減速材セグメント(W棒)8の減速材は水,ZrH2 ,ZrD2 ,HfH2 ,C,Be,BeO,Al2 O3 ,CeO2 などがあるが、セグメントの燃料集合体内部の軸方向位置はボイド率が高くなる冷却材の流れの下流側に少数本分散して配置するのが好適である。本数が多いとせっかく中性子スペクトルを硬くしたのを軟化しすぎて転換比や増殖比の低減を来す。なお、低濃度領域にも若干数配置しても差支えない。
【0081】
次に、本発明に係る燃料集合体に組込む燃料棒の実施の形態を説明する。
図15は図1に示す第1の実施の形態の燃料集合体に用いた燃料棒の実施の形態である。図15(a)はチャンネルボックス2近傍に配置されている燃料棒3である。
【0082】
すなわち、被覆管19内に下部端栓20側、つまり下側(冷却材の流れの上流側)から、下部ブランケットである減損酸化ウランペレット(下部DUO2 )21,上流側主発熱領域を構成する上流側MOXペレット22,Puの濃度を低減してなる低濃度領域を構成するMOX低濃度ペレット23,下流側主発熱領域を構成する下流側MOXペレット24,下流側ブランケットを構成する減損酸化ウランペレット(上部DUO2 )25となっている。さらに、下流側は図1(a)で図示するのを省略したガスプレナム26となっており、上端は上部端栓27で封止されている。
【0083】
図15(b)は、図15(a)に示される燃料棒の内側に配置され、下流側において減速材兼冷却材空間(水ギャップ)を構成するために短尺化した短尺燃料棒28であって、下流部がバニッシング部29となっている。下流側のMOX部が若干短尺化され、下流側減損ウラン領域が除かれ、ガスプレナム26は下部端栓20側へ移されている。このプレナム26はMOXペレット22を支えるリング状の金属管30と断熱ペレット31によって構成されている。
【0084】
図15(c)は、本発明の第1の燃料棒に対応するものであるが、下流側に低散乱空間6を設けるために長いガスプレナム32が設けられている。図15(a)のMOX低濃度ペレット23のスタックの軸方向高さと略合わせてB4 Cペレット33のスタックが配置されている。このB4 Cペレット33が、濃縮ボロンを中性子吸収材とした吸収材セグメントとして作用する。
【0085】
B4 Cペレット33のスタックの上下には金属製ウール34が配置され、MOXペレット22,24とB4 Cペレット33との万一の粉末発生時の混合を防止している。金属製ウール34にはジルコニウムを用いることによって、B4 Cの核反応で僅かに発生するトリチウムを吸着させることができる。
【0086】
図15(d)は、本発明の第2の燃料棒に対応するが、本発明の特徴を強化するためにMOX低濃度ペレット23のスタックが設けられている。下流側には図15(c)の場合と同じ目的で長いガスプレナム32の低散乱空間が設けられている。
【0087】
図16は、本発明に用いる各種燃料棒の標準的な構成を模式的に説明したものであって、図16(a)は図15(c)に対応する本発明の第1の燃料棒、図16(b)は本発明の第2の燃料棒で、大部分を全長主発熱型MOX燃料35により占められている。
【0088】
図16(c)は本発明の第3の燃料棒であって、図6に示したV棒7に相当する。すなわち、図16(a)におけるB4 Cペレット33からなる吸収材セグメントと略同じ高さで略同じ長さにわたって燃料低減セグメント36を図15(b)の下端に設けたガスプレナム26と同様に構成されて、中間プレナム37を構成している。
【0089】
図16(d)は本発明の第4の燃料棒であって、図7に示したW棒8に相当する。すなわち、図16(a)における吸収材セグメントと略同じ高さで略同じ長さにわたって減速材セグメント38を構成している。このような構成は非水素含有の減速材を用いる場合に使用でき、水素を含む減速材の場合には、燃料充填空間と隔離しなければならないのは当然である。
【0090】
図16(e)は本発明の第5の燃料棒であって、減速材セグメント配置部の構成は図16(d)の場合と同様である。MOX低濃度ペレット23のスタックの下流側に減速材セグメント38を設け、下流側種発熱領域におけるボイド係数改良に寄与するようになっている。図16に示す構成はごく代表的な構成であって、本発明の思想を実現するためにはいろいろな変形応用が当然予想される。
【0091】
つぎに図17,18および19により本発明に係る原子炉の炉心の第1の実施の形態を説明する。
図17(a)は本実施の形態における原子炉の炉心を概略的に示す横断面図、図17(b)は図17(a)において“1”の位置に装荷する燃料集合体の縦方向断面図、図17(c)は図17(a)の炉心における“1”以外の位置に装荷する従来型の燃料集合体である。
【0092】
図17(b)に示す燃料集合体は、原子炉の安全確実な運転で最も必要な「炉心の冷却材ボイド係数」を改良するために用いられているものであって、この燃料集合体の設計によって、大幅にボイド係数を改良することもできるし、小規模に改良することもできる。
【0093】
ボイド係数を改良するための新規な本燃料集合体の構成の特徴は、局部的にプルトニウム濃度を低減し、その近傍に中性子吸収材を分散配置する点にあるが、この構成によって炉心の反応度は若干低下し、燃料の燃焼度を低下させる欠点もあるため、最適化設計を行う必要がある。図17(a)の炉心はこのような背景のもとに構成されたものである。
【0094】
図17(b)に示す燃料集合体の軸方向の基本構成は、下端部の冷却材上流側に上流側ブランケット17,下流側の上端部に下流側ブランケット14があり、両者の中間は、従来の燃料集合体では高速炉のシードに対応してPu富化度の高い高濃度燃料領域をなす内部ブランケットとなっているが、それとは異なりプルトニウム濃度を低減した低濃度領域15が配置されている。図17(c)に模式的に示す燃料集合体は低濃度領域のない従来の燃料集合体である。
【0095】
図18(a)〜(c)は図17(b)の燃料集合体の横断面図の例であって、図18(a)は図17(b)のA−A矢視横断面図、図18(b)は図17(b)のB−B矢視横断面図、図18(c)は図17(b)のC−C矢視横断面図、図19(a)〜(c)は本発明の燃料集合体に使用する燃料棒の例であって、図19(a)はチャンネルボックスの内面に沿って配列される燃料棒である。
【0096】
被覆管19内には下端(冷却材上流側)から、減損ウランを用いた酸化ウランペレット(下部DUO2 )21のスタック,上流側主発熱領域を構成する上流側MOXペレット22のスタック,本発明で吸収材セグメントの作用を確実なものにするという大きな役割を演じるPuの濃度を低減したMOX低濃度ペレット23のスタック,下流側主発熱領域を構成する下流側MOXペレット24のスタック,上部DUO2 25およびガスプレナム26となっている。
【0097】
図19(b)は図19(a)に示した燃料棒の配列の内側に減速材兼冷却材空間(以下水ギャップと呼ぶ)を構成するために、あるいは下流側の水排除容器を配置するために短尺化された燃料棒の例であって、下流側の上部DUO2 25領域が取除かれている。
【0098】
図19(c)は本発明の作用を発生させるために特に重要な燃料棒であって、図19(b)の場合と同じ目的で短尺化されている。図19(b)の燃料棒と異なる点は、図19(b)のMOX低濃度ペレット23のスタックとほぼ同じ高さにB4 Cペレット33のスタックが上下両側の金属製ウール34に挟んで配置されて「吸収材セグメント」を構成している点にある。
【0099】
金属製ウール34としてウール状にしたジルコニウムを用いると、ボロンが中性子と反応して発生した少量のトリチウム(被覆管19を腐食させる可能性がある)を選択的に吸着するので、被覆管19の健全性が確保される。金属製ウール34の他の目的は、燃料物質とB4 Cの僅かながら発生する可能性のある粉末の混合を防止することにある。
【0100】
ところで、本発明に係る燃料集合体は、核燃料の転換比ないし増殖比を高めるために、燃料棒間の間隔は許容できる範囲で狭くされており、この結果、減速材対燃料体積比(以下単に体積比と呼ぶ)が小さくなっている。
【0101】
この体積比は、減速材として水を用いる従来の原子炉では2程度であったが、水を用いる本実施例では1以下、目標としては0.5 ないしそれ以下である。核燃料物質としてはMOXペレットが被覆管の中に充填されている。
【0102】
このようにすることによって、軽水冷却の原子炉でも核燃料の高い転換または増殖が可能となるが、水のボイド係数が正となる。よって、従来の原子炉の構成で体積比を減ずると、安全な原子炉の運転が困難となることを容易に避けることができなかった。
【0103】
一方で、本発明の最大の特徴は、図17(b)のC−C矢視横断面部付近に従来の高速炉の内部ブランケットを連想させる低濃度燃料領域を配置している点にある。低濃度領域の冷却材上流側は上流側主発熱部,下流側は下流側主発熱部となっており、それらの横断面は図18(b)で示すように燃料は規則正しく配列されている。
【0104】
低濃度燃料領域はブランケットでない点が従来例と異なっており、図18(c)に示すようにボロン10(B10)の濃度を高めた濃縮ボロンを中性子吸収材とした吸収材セグメントが分散して配置されている。低濃度燃料領域のPu濃度は上流側および下流側主発熱部の濃度(通常Puの富化度は10〜20%)の1/2ないし1/4程度とされる。
【0105】
燃料集合体の下流側では図17(b)のA−A矢視横断面は下流側ブランケット部で図18(a)に示すようにチャンネルボックスの内面に沿って2列の燃料棒が配列され、その内側に1列分程度の燃料を排除した空間(減速材兼冷却材空間、すなわち、水ギャップ)があり、さらに内部は燃料棒を排除して方形断面からなる容器11が配置されている。
【0106】
この容器11の占める空間は中性子の散乱を抑制し、必要に応じて炉心の外部(下流側)へ中性子を漏洩させるために設けた中性子の低散乱空間である。この容器11は中性子の散乱を大幅に抑えるのが目的であるが、内部を無理して真空にする必要はない。原子炉運転中に変形が生じると炉心の反応度に影響が生じるため、内部補強材12で補強された構造となっている。
【0107】
水ギャップの厚みは、低散乱空間を経由して下流側へ中性子が漏洩する程度を必要なボイド係数の調整量に対応して0.5 cmから3cm程度の範囲で調節する。なお、図18(a),(b)および(c)において、チャンネルボックス2の内面に取付けられている多数の方形部材は水排除材である。
【0108】
燃料集合体は正方形のチャンネルボックス2内に、多数の燃料棒を六角格子状に配列して構成されており、冷却材と中性子減速材の機能を有する水が燃料棒相互間の間隙を、燃料集合体の下部から上部に向かって流れている。
【0109】
つぎに、図20により本発明に係る原子炉の炉心の第2の実施の形態を説明する。図20は図17(a)に対応しており、図17(a)では炉心の比較的内部で図17(b)で示すような燃料集合体を2体または4体まとめて合計44体配置したが、本実施の形態では基本的には図17(b)に示した燃料集合体を炉心を十字型に切断するように配置し、不足分を図17(b)に示した燃料集合体を4体ずつまとめて、合計36体配置した構成となっている。
【0110】
つぎに、図21により本発明に係る原子炉の炉心の第3の実施の形態を説明する。図21は図17(a)に対応しており、かかる配置は比較的大規模にボイド係数を改良する際に好適であって、第1の実施の形態をさらに強調した構成になっている。すなわち、図17(b)に示した燃料集合体を2体ずつ対にして炉心を十字型に切断し、かつ不足部分に6体ずつ配置して、合計68体配置した構成となっている。
【0111】
なお、さらにボイド係数を改良する必要がある場合には、例えば炉心の周辺を除く全ての燃料集合体に図17(b)に示すような燃料集合体を使用しても良い。またこの燃料集合体は最外周にも配置することができる。さらに一段とボイド係数を改良する必要がある場合には、1体の燃料集合体の軸方向に複数の低濃度領域を設けたものを使用することもできる。
【0112】
以上、本発明に係る原子炉の炉心の実施の形態を多数の例にわたって説明したが、これらの他に多数の例がある。ボイド係数については、沸騰水型原子炉を想定して説明したが、加圧水型原子炉の場合においても冷却水が沸騰すると、上述したボイド係数の問題と同じ事態が想定される。また、強中性子吸収材としてはB4 Cのみを取り上げて説明したが、EuB6 ,Eu 2 O 3 −Gd 2 O 3 ,HfH2 なども使用できる。
【0113】
吸収材セグメントは低濃度領域全般にわたって配置することを想定したが、短めでも長めでも良い。低濃度領域が比較的長い場合には、吸収材セグメントの位置はブランケットに隣接する場合のように低濃度領域の一方側に偏る配置の方が良い場合も考えられる。吸収材セグメントの周辺には燃料物質を排除した内部ガスプレナムのような低散乱セグメントを配置することもできる。
【0114】
また、吸収材セグメントの周りや例えば冷却材流れの下流側などに、減速材のセグメントを配置することもできる。減速材セグメントの減速材には水,ZrH2 ,ZrD2 ,HfH2 ,C,Be,BeO,Al2 O3 ,CeO2 などを用いることができる。
【0115】
水素や重水素を含む減速材セグメントを燃料棒の一部分に導入する場合には、燃料領域との間は区画して燃料部へそれらのガスが侵入しないように燃料領域に対して気密に構成しなければならないが、その他の上記減速材ではウール状の金属物質を介在させて燃料物質と区画することもできる。
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、新しい原理のボイド係数改良法が得られるので、軽水炉などのNaを用いない高転換型または増殖型の軽水あるいは重水を用いた安全な原子炉を設計することができる。この結果、核燃料の利用率を著しく改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る燃料集合体の第1の実施の形態における燃料集合体の軸方向構成を概略的に示す模式図、(b)は(a)のB−B矢視方向横断面図、(c)は(a)のC−C矢視方向横断面図、(d)は(a)のD−D矢視方向横断面図。
【図2】本発明の作用を説明するための無限増倍率の計算値をプロットして示すグラフ図。
【図3】本発明の作用を説明するためのボイド反応度効果計算値をプロットして示すグラフ図。
【図4】(a)〜(f)は本発明の第1の実施の形態の燃料集合体の軸方向諸特性を図式的に説明するための図で、(a)は核分裂核種濃度分布図、(b)は吸収材の吸収断面積の分布図、(c)はボイド率分布図、(d)は無限増倍率分布図、(e)は出力分布図、(f)は中性子のインポータンス分布図である。
【図5】図1(d)を拡大して示す縦断面図。
【図6】本発明に係る燃料集合体の第2の実施の形態の要部を示す横断面図。
【図7】本発明に係る燃料集合体の第3の実施の形態の要部を示す横断面図。
【図8】本発明に係る燃料集合体の第4の実施の形態を示す横断面図。
【図9】図1(b)の拡大して示す縦断面図。
【図10】本発明に係る燃料集合体の第5の実施の形態を示す横断面図。
【図11】本発明に係る燃料集合体の第6の実施の形態を示す横断面図。
【図12】本発明に係る燃料集合体の第7の実施の形態を概略的に示す模式図。
【図13】本発明に係る燃料集合体の第8の実施の形態を概略的に示す模式図。
【図14】本発明に係る燃料集合体の第9の実施の形態を概略的に示す模式図。
【図15】(a)〜(d)は図1に示す本発明の第1の燃料集合体に組込む各種燃料棒の実施の形態を説明するための図で、(a)はチャンネルボックス近傍に配置する燃料棒を概略的に示す縦断面図、(b)は下流側に水ギャップを構成するために用いる短尺化された燃料棒を概略的に示す縦断面図、(c)はB4 Cペレットスタックを一部に収納した燃料棒を概略的に示す縦断面図、(d)は燃料集合体の内部に配置するMOX低濃度領域と冷却材の下流側にガスプレナムを有する燃料棒を概略的に示す縦断面図。
【図16】(a)〜(e)は本発明に係る燃料集合体に用いる標準的な燃料棒の実施の形態を説明するための図で、(a)は第1の燃料棒を概略的に示す縦断面図、(b)は第2の燃料棒を概略的に示す縦断面図、(c)は第3の燃料棒を概略的に示す縦断面図、(d)は第4の燃料棒を概略的に示す縦断面図、(e)は第5の燃料棒を概略的に示す縦断面図。
【図17】(a)は本発明に係る原子炉炉心の第1の実施の形態を説明するための炉心配置図、(b)は(a)の“1”で示す本発明に係る燃料集合体の縦方向断面を示す模式図、(c)は従来の燃料集合体の縦方向断面を示す模式図。
【図18】(a)は図17(b)のA−A矢視方向横断面図、(b)は図17(b)のB−B矢視方向横断面図、(c)は図17(b)のC−C矢視方向横断面図。
【図19】(a)〜(c)は図17(b)において本発明に係る燃料集合体に組込む各種燃料棒の実施の形態を説明するための図で、(a)はチャンネルボックス近傍に配置する燃料棒を概略的に示す縦断面図、(b)は短尺化された燃料集合体の内部に配置するMOX低濃度領域を有する燃料棒を概略的に示す縦断面図、(c)はB4 Cペレットスタックを一部に収納した燃料棒を概略的に示す縦断面図。
【図20】本発明に係る原子炉の炉心の第2の実施の形態を示す炉心配置図。
【図21】本発明に係る原子炉の炉心の第3の実施の形態を示す炉心配置図。
【符号の説明】
1…燃料集合体、2…チャンネルボックス、3…燃料棒、4…吸収材セグメント、5…水ギャップ、6…低散乱空間、7…燃料低減セグメント(V棒)、8…減速材セグメント(W棒)、9…太径中空管、10…細径管、11…容器、12…内部補強材、13…下流側主発熱領域、14…下流側ブランケット、15…低濃度領域、16…上流側主発熱領域、17…上流側ブランケット、18…主発熱領域、19…被覆管、20…下部端栓、21…下部DUO2 、22…上流側MOXペレット、23…MOX低濃度ペレット、24…下流側MOXペレット、25…上部DUO2 、26…ガスプレナム、27…上部端栓、28…短尺燃料棒、29…バニッシング部、30…金属管、31…断熱ペレット、32…長いガスプレナム、33…B4 Cペレット、34…金属製ウール、35…全長主発熱型MOX燃料、36…燃料低減セグメント、37…中間プレナム、38…減速材セグメント。
Claims (10)
- 冷却材が軽水又は重水であり、減速材対燃料体積比が1.0以下である高転換型又は増殖型の原子炉に用いられるとともに核燃料物質がMOX燃料である燃料集合体において、
前記燃料集合体は、強中性子吸収材を含む吸収材セグメントを軸方向の一部に有する第1の燃料棒と、全長がMOX燃料からなる第2の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい空洞からなる燃料低減セグメント部を有する第3の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい減速材セグメント部を有する第4の燃料棒とから構成され、
前記強中性子吸収材は、天然ボロンまたはB10を濃縮した濃縮ボロン、又はボロンカーバイド(B4 C)、六硼化ユーロピウム(EuB6 )、ユーロピアとガドリニアの混合酸化物(Eu2O3 −Gd2O3 )又はHfB2もしくはそれらの混合物、又はハフニウムの水素化物からなることを特徴とする燃料集合体。 - 前記第1の燃料棒を複数本チャンネルボックス内部に分散して配置したことを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体。
- 前記第3の燃料棒を前記第1の燃料棒の一部または全部を取り囲むように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料集合体。
- 前記第4の燃料棒を前記第1の燃料棒の一部または全部を取り囲むように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料集合体。
- 前記第3の燃料棒と前記第4の燃料棒を、前記第1の燃料棒を取り囲むように混合して配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料集合体。
- 前記第1の燃料棒の吸収材セグメントの上下に金属製ウールを配置したことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の燃料集合体。
- 前記第4の燃料棒の減速材セグメントの上下に金属製ウールを配置したことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の燃料集合体。
- 冷却材が軽水又は重水であり、減速材対燃料体積比が1.0以下である高転換型又は増殖型の原子炉の炉心において、
前記原子炉の炉心の一部に装荷される燃料集合体の核燃料物質はMOX燃料であり、
かつ、前記燃料集合体は、強中性子吸収材を含む吸収材セグメントを軸方向の一部に有する第1の燃料棒と、全長がMOX燃料からなる第2の燃料棒と、前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい空洞からなる燃料低減セグメント部を有する第3の燃料棒と、
前記吸収材セグメント軸方向高さと長さが略等しい減速材セグメント部を有する第4の燃料棒とから構成され、
前記強中性子吸収材は、天然ボロンまたはB10を濃縮した濃縮ボロン、又はボロンカーバイド(B4 C)、六硼化ユーロピウム(EuB6 )、ユーロピアとガドリニアの混合酸化物(Eu2O3 −Gd2O3 )又はHfB2もしくはそれらの混合物、又はハフニウムの水素化物からなることを特徴とする原子炉の炉心。 - 前記燃料集合体の下流側ブランケット部に減速材兼冷却材空間に囲まれた低散乱空間を設けるとともに、前記低散乱空間にガスプレナム部が上部に設けられた複数の燃料棒、又は複数の太径中空管と複数の細径管、又は断面が略正方形の容器、を配置したことを特徴とする請求項8記載の原子炉の炉心。
- 前記減速材兼冷却材空間の横断面幅は0.5 〜3cmであることを特徴とする請求項9に記載の原子炉の炉心。
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