JP4113651B2 - デジタル放送受信装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、OFDM信号などのデジタル信号を受信して復調するデジタル放送受信装置に係わり、特にマルチパス環境下およびSFN(単一周波数網)における、ガードインターバルを越える遅延波が発生しても、シンボル間干渉が発生し難くして、伝送特性への影響を軽減させるようにしたデジタル放送受信装置に関する。
【0002】
[発明の概要]
本発明は、OFDM信号などを受信するデジタル放送受信装置に関するもので、OFDM信号に与えたガードインターバルを越える遅延波が到来したとき、パイロットキャリアの復調結果からマルチパスの遅延時間、強度を推定し、この推定結果を基に等化器を動作させることで、ガードインターバルを越えるマルチパス環境下でも、シンボル間干渉による特性劣化を軽減させ、受信を可能にするものである。
【0003】
【従来の技術】
OFDM信号はマルチパスによるシンボル間干渉を避けるため、送信側で、有効シンボル期間にガードインターバル期間を付加して信号を送出し、これを受信した受信側で、遅延波の遅延時間がガードインターバル長以内であれば、シンボル間干渉が生じないように、ウインドウで有効シンボルを切り出し、復調するようにしている。
従来のデジタル放送受信装置としては、特開平11−298434号公報に記載“OFDM復調装置”が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のデジタル放送受信装置によれば、遅延波の遅延時間がガードインターバル長を越える場合、シンボル間干渉が生じる遅延波の等化は、FFT回路の前段で受信信号の自己相関を求め、そのピーク、位相を検出して適応等化フィルタのフィルタ係数を設定することによってなされているため、遅延パス数の増える毎に最適値への収束に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による波形等化を行わないときと同程度まで改善させることができるデジタル放送受信装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、請求項1では、デジタル放送信号を受信して受信信号を生成するとともに、この受信信号を復調して情報を再生するデジタル放送受信装置において、受信信号内に含まれているパイロット信号R(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、マルチパスの伝送路応答F’(ω)を推定するマルチパス側伝送応答算出手段と、周波数特性W(ω)のフィルタを有する波形等化器を含む伝送路を経由した受信信号内に含まれているパイロット信号Y(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、波形等化器を含めた伝送路応答Z’(ω)を推定する主経路側伝送応答算出手段と、この主経路側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答Z’(ω)と前記マルチパス側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答F’(ω)とに基づき、シンボル間干渉による伝送特性を軽減させるように、前記波形等化器を制御する波形等化器制御手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
請求項2では、請求項1に記載のデジタル放送受信装置において、前記波形等化器の係数更新頻度、伝送路の周波数応答の推定頻度を減少させて、装置内で使用される1つのIFFT回路または1つのFFT回路に、時分割でIFFT処理、FFT処理とを行わせることを特徴としている。
【0008】
上記の構成において、請求項1では、マルチパス側伝送応答算出手段は受信信号内に含まれているパイロット信号R(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、マルチパスの伝送路応答F’(ω)を推定する。主経路側伝送応答算出手段は、周波数特性W(ω)のフィルタを有する波形等化器を含む伝送路を経由した受信信号内に含まれているパイロット信号Y(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、波形等化器を含めた伝送路応答Z’(ω)を推定する。この主経路側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答Z’(ω)と前記マルチパス側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答F’(ω)とに基づき、波形等化器制御手段は、シンボル間干渉による伝送特性を軽減させるように、前記波形等化器を制御する。これにより、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による波形等化を行わないときと同程度まで改善させる。
【0009】
請求項2では、前記波形等化器の係数更新頻度、伝送路の周波数応答の推定頻度を減少させて、装置内で使用される1つのIFFT回路、または1つのFFT回路に、時分割でIFFT処理と、FFT処理とを行わせることにより、装置全体の部品点数を低減させながら、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による波形等化を行わないときと同程度まで改善させる。
【0010】
【発明の実施の形態】
《本発明の動作原理説明》
まず、本発明によるデジタル放送受信装置の詳細な説明に先だって、本発明によるデジタル放送受信装置の動作原理について説明する。
【0011】
今、図1に示すように、デジタル放送受信装置1として、等化器となるFIRフィルタ回路9、減算回路8、ウインドウ回路10、FFT回路11、複素除算回路12、信号復調回路13からなる受信復調ユニット2と、基準SP(SP;スキャッタードパイロット信号)ユニット3と、SP抽出回路14、SP復調回路15からなるSP抽出復調ユニット4と、ウインドウ回路16、FFT回路17からなる伝送路特性推定ユニット5と、SP抽出回路18、SP復調回路19からなるSP抽出復調ユニット6と、残差情報検出回路(キャンセル残渣演算回路)20、IFFT回路21、係数抽出回路22からなるFIRフィルタ係数生成ユニット7とを備えるものを想定する。
【0012】
このデジタル放送受信装置1には、伝送路特性推定ユニット5とSP抽出復調ユニット6とによって、受信復調ユニット2の伝送路におけるマルチパスの伝達関数“F’(ω)”を推定し、FIRフィルタ係数生成ユニット7によってこれを打ち消すように、等化器となるFIRフィルタ回路9を動作させて、マルチパスをキャンセルさせる機能を持たせる。
【0013】
以下、数式を用いて、このデジタル放送受信装置1のマルチパスキャンセル動作について説明する。
【0014】
まず、送信信号に含まれる既知のパイロット信号を“S(ω)”とし、伝送路における主波以外のマルチパスによる周波数特性を“H(ω)”とすると、デジタル放送送信装置(図示は省略する)から送信された送信信号のパイロット信号“S(ω)”が“S(ω)(1+H(ω))”として、デジタル放送受信装置1に入力される。
【0015】
そして、観測点aでのパイロット信号を“R(ω)”とすると、次式によって観測点aにおける伝達関数“F(ω)”を表わすことができる。
【0016】
【数1】
Figure 0004113651
【0017】
また、等化器となるFIRフィルタ回路9の周波数特性を“W(ω)”とすると、次式によって観測点bにおけるパイロット信号“Y(ω)”を表わすことができる。
【0018】
【数2】
Y(ω)=R(ω)−Y(ω)・W(ω) …(2)
【0019】
この(2)式を信号“Y(ω)”について整理すると、次式が得られることから、
【数3】
Y(ω)=R(ω)/(1+W(ω)) …(3)
次式によってデジタル放送受信装置1内における観測点aから観測点bまでの伝達関数“C(ω)”を表わすことができる。
【0020】
【数4】
Figure 0004113651
【0021】
そして、(1)式、(4)式から次式によって伝送路と、等化器とを合わせた伝達関数“Z(ω)”を求めることができる。
【数5】
Figure 0004113651
【0022】
ここで、マルチパスキャンセラ最適条件が“W(ω)=H(ω)”であるから、
次式によってキャンセル残差信号“Err(ω)”を表わすことができる。
【0023】
【数6】
Figure 0004113651
【0024】
そして、この(6)式で示されるキャンセル残差信号“Err(ω)”が最小となるように、FIRフィルタ回路9のタップ係数を制御することにより、マルチパスをキャンセルさせることができる。
【0025】
具体的には、基準SPユニット3によって各SP抽出復調ユニット4,6の各SP復調回路15,19の復調タイミングをとりながら、伝送路特性推定ユニット5のウインドウ回路16、FFT回路17、SP抽出復調ユニット6のSP抽出回路18、SP復調回路19によって、“i”をシンボル番号とする、観測点aにおける信号の伝達関数“F(i,ω)”を推定させ、これを残差情報抽出回路20に導くとともに、受信復調ユニット2のFIRフィルタ回路9、減算回路8、ウインドウ回路10、FFT回路11、SP抽出復調ユニット4のSP抽出回路14、SP復調回路15によって、“i”をシンボル番号とする、観測点bにおける伝送路と等化器とを含めた伝送関数“Z(i,ω)”を推定させ、これを残差情報抽出回路20に導いて、キャンセル残差信号“Err(i,ω)”を推定させる。
【0026】
次いで、ここで得られたキャンセル残差信号“Err(i,ω)”をIFFT回路21に導いて、IDFT処理またはIFFT処理させ、1シンボル当たりN個の複素情報を持つ時間領域の信号“err(i,n)”に変換させて、観測点bにおけるインパルスレスポンスを求めさせる。但し、“n”はIDFT処理またはIFFT処理における変換ポイント数“N”に対し、“0≦n<N”を満たす整数である。
【0027】
そして、ここで得られた時間領域の信号“err(i,n)”を係数抽出回路22に導いて、FIRフィルタ回路9のタップ係数“w(i,m)”を求めさせる。
【0028】
この際、マルチパスが存在する最大遅延時間の番号が“M”であると仮定すると、FIRフィルタ回路9に要求される最大タップ長を“M”にしなければならないことから、FIRフィルタ回路9のタップ番号を“m”にする。但し、“m”はマルチパスが存在する最大遅延時間の番号“M”に対し、“0≦m<M”を満たす整数である。
【0029】
また、通常の受信状態では、“N>M”であることから、FIRフィルタ回路9を制御するとき、時間領域の信号“err(i,n)”において、主波の番号である“n=0”およびFIRフィルタ回路9の制限外の番号である“n>M”を切り捨て、マルチパスキャンセル後の残差を示すインパルスレスポンス“err(i,m)”のみを取り出させ、次式によってFIRフィルタ回路9のタップ係数“w(i,m)”を求めさせ、これをFIRフィルタ回路9に導き、マルチパスをキャンセルさせる。
【0030】
【数7】
w(i,m)=w(i−1,m)+μ・err(i,m) …(7)
但し、μ:0<μ≦1を満たす更新係数
【0031】
《実施形態の説明》
次に、図面を参照しながら、上述した基本原理を用いた本発明によるデジタル放送受信装置について詳細に説明する。なお、ここでは、図1を本発明によるデジタル放送受信装置の実施形態を示すブロック図として説明する。
【0032】
図1に示すデジタル放送受信装置1は、デジタル放送送信装置(図示は省略する)から送信された送信信号、例えば図2に示すようなISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−Tで使用されるOFDM信号(Orthogonal Freguency Division Multiplex signal)を受信し、この送信信号に含まれている情報を再生する受信復調ユニット2と、送信信号に含まれているSP信号“Y(i,ω)”を抽出するのに必要な基準SP信号(送信リファレンス信号)“S_REF(ω)”を生成する基準SPユニット3と、この基準SPユニット3から出力される基準SP信号“S_REF(ω)”を用いて、受信復調ユニット2の信号処理途中で得られた周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)からSP信号“Y(i,ω)”を抽出し、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“Z’(i,ω)”を推定するSP抽出復調ユニット4と、デジタル放送送信装置から送信された送信信号を受信して、受信復調ユニット2の等化器部分を除く伝送路を模擬して、この伝送路を通過した信号を生成する伝送路特性推定ユニット5と、基準SPユニット3から出力される基準SP信号“S_REF(ω)”を用いて、伝送路特性推定ユニット5から出力される周波数軸上のベースバンド信号“R_all(i,ω)”からSP信号“R(i,ω)”を抽出し、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“F’(i,ω)”を推定するSP抽出復調ユニット6と、これら各SP抽出復調ユニット4,6から出力される各伝達関数“Z’(i,ω)”、“F’(i,ω)”を用いて、タップ係数“w(i,m)”を求め、受信復調ユニット2のFIRフィルタ回路9を制御し、マルチパスをキャンセルさせるFIRフィルタ係数生成ユニット7とを備えており、伝送路特性推定ユニット5と、SP抽出復調ユニット6とによって、伝送路におけるマルチパスの伝達関数を推定し、これを打ち消すように、等化器となるFIRフィルタ回路9を動作させて、マルチパスをキャンセルさせながら、受信復調ユニット2の複素除算回路12、信号復調回路13によって、受信した信号を復調させる。
【0033】
受信復調ユニット2は、受信処理で得られた信号をA/D変換処理して得られたISDB−Tで使用されるOFDM信号R(i,t)を取り込むとともに、このOFDM信号から、帰還された等化済みの信号を減算する減算回路8と、入力されたタップ係数“w(i,m)”に基づき、減算回路8から出力される信号をフィルタリングして波形等化させ、減算回路8に帰還させるFIRフィルタ回路(Finite Inpulse Response circuit)9と、入力されたクロック信号を用いて、減算回路8から出力される等化処理済みの信号から有効シンボル期間を切り出すウインドウ回路10と、このウインドウ回路10から出力される信号を高速フーリェ変換して、周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)を生成するFFT回路(Fast Fourier Transform circuit)11と、SP抽出復調ユニット4から出力される伝達関数“Z’(i,ω)”を用いて、FFT回路11から出力される周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)を複素除算し、位相調整、振幅調整を行う複素除算回路12と、この複素除算回路12から出力される信号を復調処理して、受信処理で得られた信号中の情報を再生する信号復調回路13とを備えている。
【0034】
そして、FIRフィルタ係数生成ユニット7から出力されるタップ係数“w(i,m)”に応じて、FIRフィルタ回路9のフィルタ特性を調整して、受信処理で得られた信号をA/D変換処理して得られた信号R(i,t)中に含まれるマルチパス成分をキャンセルさせるとともに、受信信号中に含まれる有効成分を切り出して、高速フーリェ変換し、これによって得られた周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)をSP抽出復調ユニット4に供給しながら、SP抽出復調ユニット4から出力される伝達関数“Z’(i,ω)”を用いて、周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)を複素除算した後、復調処理して、受信処理で得られた信号中の情報を再生する。
【0035】
また、基準SPユニット3は、周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)に含まれるSP信号を復調するのに必要な基準SP信号、例えば受信信号をA/D変換処理して得られた信号R(i,t)が図2に示すようにISDB−Tで使用されるOFDM信号であるときには、OFDMシンボル番号毎にSP信号の周波数配置が異なるとともに、4シンボルで完結していることから、前の3シンボル分を含むSP信号“Y(i−1,ω)”、“Y(i−2,ω)”、“Y(i−3,ω)”を復調するのに必要な基準SP信号“S(0,ω)”、“S(2,ω)”、“S(3,ω)”を1つにまとめて“ΣS(j,ω)”(但し、jは0≦j≦3を満たす整数)にするとともに、これを基準SP信号“S_REF(ω)”として、各SP抽出復調ユニット4,6に供給する。
【0036】
SP抽出復調ユニット4は、受信復調ユニット2のFFT回路11から出力された周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)に含まれるSP信号、すなわち抽出対象となるSP信号を基準として、前にある3シンボル分を含むSP信号“Y(i−1,ω)”、“Y(i−2,ω)”、“Y(i−3,ω)”を抽出し、これらを1つにまとめて“ΣY(j,ω)”(但し、jはi−3≦j≦iを満たす整数)にするとともに、これをSP信号“Y_sp(i,ω)”として出力するSP抽出回路14と、基準SPユニット3から出力される基準SP信号“S_REF(ω)”を用いて、SP抽出回路14から出力されるSP信号“Y_sp(i,ω)”を複素除算し、等化器を含めた全SP信号に対する伝達関数“Z’_P(i,ω)”を求めるとともに、各SP信号が周波数方向に対し、3キャリア毎、また時間方向に対して、4シンボル毎に挿入されていることを利用して、これら各伝達関数“Z’_P(i,ω)”の周波数方向を低域通過フィルタリング処理し、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“Z’(i,ω)”を推定するSP復調回路15とを備えている。
【0037】
そして、受信復調ユニット2のFFT回路11から出力される周波数軸上のベースバンド信号Y_all(i,ω)に含まれるSP信号“Y(i−1,ω)”、“Y(i−2,ω)”、“Y(i−3,ω)”を抽出するとともに、基準SPユニット3から出力される基準信号“S_REF(ω)”を用いて、SP信号“Y(i−1,ω)”、“Y(i−2,ω)”、“Y(i−3,ω)”を複素除算し、等化器を含めた全SP信号に対する伝達関数“Z’_P(i,ω)”を求めるとともに、各伝達関数“Z’_P(i,ω)”の周波数方向を低域通過フィルタリング処理して、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“Z’(i,ω)”を推定し、これをFIRフィルタ係数生成ユニット7と、複素除算回路12とに供給する。
【0038】
また、伝送路特性推定ユニット5は、受信復調ユニット2のウインドウ回路10と同じ特性を持ち、ウインドウ回路10に入力されているクロック信号と同じクロック信号を用いて、受信信号をA/D変換処理して得られた信号R(i,t)、例えば図2に示すようなISDB−Tで使用されるOFDM信号から有効シンボル期間を切り出すウインドウ回路16と、受信復調ユニット2のFFT回路11と同じ特性を持ち、ウインドウ回路16から出力される信号を高速フーリェ変換して、周波数軸上のベースバンド信号R_all(i,ω)を生成するFFT回路17とを備えており、受信復調ユニット2のウインドウ回路10に入力されているクロック信号と同じクロック信号を用いて、受信信号中に含まれる有効成分を切り出して、高速フーリェ変換し、これによって得られた周波数軸上のベースバンド信号R_all(i,ω)をSP抽出復調ユニット6に供給する。
【0039】
SP抽出復調ユニット6は、伝送路特性推定ユニット5のFFT回路17から出力された周波数軸上のベースバンド信号R_all(i,ω)に含まれるSP信号、すなわち抽出対象となるSP信号を基準として、前にある3シンボル分を含むSP信号“R(i−1,ω)”、“R(i−2,ω)”、“R(i−3,ω)”を抽出し、これらを1つにまとめて“ΣR(j,ω)”(但し、jはi−3≦j≦iを満たす整数)にするとともに、これをSP信号“R_sp(i,ω)”として出力するSP抽出回路18と、基準SPユニット3から出力される基準SP信号“S_REF(ω)”を用いて、SP抽出回路18から出力されるSP信号“R_sp(i,ω)”を複素除算し、等化器を除いた全SP信号に対する伝達関数“F’_P(i,ω)”を求めるとともに、各SP信号が周波数方向に対して、3キャリア毎、また時間方向に対して、4シンボル毎に挿入されていることを利用して、これら各伝達関数“F’_P(i,ω)”の周波数方向を低域通過フィルタリング処理し、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“F’(i,ω)”を推定するSP復調回路19とを備えている。
【0040】
そして、伝送路特性推定ユニット5のFFT回路17から出力される周波数軸上のベースバンド信号R_all(i,ω)に含まれるSP信号“R(i−1,ω)”、“R(i−2,ω)”、“R(i−3,ω)”を抽出するとともに、基準SPユニット3から出力される基準信号“S_REF(ω)”を用いて、SP信号“R(i−1,ω)”、“R(i−2,ω)”、“R(i−3,ω)”を複素除算し、等化器を除いた全SP信号に対する伝達関数“F’_P(i,ω)”を求めるとともに、各伝達関数“F’_P(i,ω)”の周波数方向を低域通過フィルタリング処理して、信号キャリア全体に対する伝送路応答となる伝達関数“F’(i,ω)”を推定し、これをFIRフィルタ係数生成ユニット7に供給する。
【0041】
FIRフィルタ係数生成ユニット7は、SP抽出復調ユニット6から出力される伝達関数“F’(i,ω)”、すなわち観測点aの信号に対する伝達関数“F’(i,ω)”と、SP抽出復調ユニット4から出力される伝達関数“Z’(i,ω)”、すなわち観測点bにおける伝送路と等化器とを含めた伝送関数“Z’(i,ω)”とに基づき、前記(6)式に示す演算を行って、キャンセル残差信号“Err(i,ω)”を推定する残差情報検出回路(キャンセル残差演算回路)20と、この残差情報検出回路20から出力されるキャンセル残差信号“Err(i,ω)”を逆離散(ディスクリート)フーリェ変換処理または逆フーリェ変換して、1シンボル当たりN個の複素情報を持つ時間領域のインパルスレスポンス“err(i,n)”を求めるIFFT回路(Inverse Fast Fourier Transform circuit)21と、このIFFT回路21から出力されるインパルスレスポンス“err(i,n)”に基づき、主波の番号である“n=0”およびマルチパスが存在する最大遅延時間の番号“M”に対応して設定されているFIRフィルタ回路9の最大タップ長“M”に応じたタップ番号である“n>M”を除く部分を切り出すとともに、前記(7)式で示される演算を行ってFIRフィルタ回路9のタップ係数“w(i,m)”を求め、これを受信復調ユニット2のウインドウ回路10が切出しを行っていないタイミングで出力する係数抽出回路22とを備えている。
【0042】
そして、SP抽出復調ユニット6から出力される伝達関数“F’(i,ω)”と、SP抽出復調ユニット4から出力される伝達関数“Z’(i,ω)”とに基づき、前記(6)式に示す演算を行って、キャンセル残差信号“Err(i,ω)”を推定するとともに、キャンセル残差信号“Err(i,ω)”を逆離散フーリェ変換処理または逆フーリェ変換して、1シンボル当たりN個の複素情報を持つ時間領域のインパルスレスポンス“err(i,n)”を求め、このインパルスレスポンス“err(i,n)”から主波の番号である“n=0”およびマルチパスが存在する最大遅延時間の番号“M”に対応した、“n>M”を除く部分を切り出し、前記(7)式で示される演算を行ってFIRフィルタ回路9のタップ係数“w(i,m)”を求めた後、受信復調ユニット2のウインドウ回路10が切出しを行っていないタイミングで、タップ係数“w(i,m)”をFIRフィルタ回路9に供給し、フィルタリング特性を更新させる。
【0043】
このように、この実施形態では、伝送路特性推定ユニット5と、SP抽出復調ユニット6とによって、伝送路におけるマルチパスの伝達関数を推定し、これを打ち消すように、等化器となるFIRフィルタ回路9を動作させて、マルチパスをキャンセルさせながら、受信復調ユニット2の複素除算回路12、信号復調回路13によって、受信した信号を復調させるようにしているので、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による、波形等化を行わないときと同程度まで、改善させることができる。
【0044】
また、この実施形態では、復調に使用していない期間で、FIRフィルタ回路9のタップ係数を更新しているので、本線への影響を軽減させることができる。
【0045】
《他の実施形態》
また、上述した各実施形態では、FIRフィルタ回路9のタップ係数を更新した後、4シンボル以上、経過した後、SP復調回路15でフィルタ係数更新後の周波数特性を求めているので、最短で係数更新間隔が4シンボルに1回の割合になり、FFT回路が計算を行わないシンボル期間が発生しないことから、IFFT回路21と、FFT回路17とを独立させなければならない。
【0046】
しかしながら、この際、係数更新の間隔を5シンボル以上に1回の割合にすると、FFT回路17で計算を行わないですむシンボル期間が発生することから、図3に示すように、時分割でIFFT回路21にIFFT処理とFFT処理とを行わせても良い。
【0047】
このようにすることにより、システム全体の部品点数を低減させることができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、パイロット信号として、SP信号を使用するようにしているが、このようなSP信号以外の信号、例えば一般的なOFDM伝送方式で使用されている振幅/位相基準伝送用のキャリア信号であれば、パイロット信号として、どのような信号を使用しても良い。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、請求項1のデジタル放送受信装置では、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による波形等化を行わないときと同程度まで改善させることができる。
【0050】
請求項2のデジタル放送受信装置では、装置全体の部品点数を低減させながら、ガードインターバル長を越える遅延時間の遅延波が存在するときでも、シンボル間干渉の影響を軽減させて、ガードインターバル内の遅延波による波形等化を行わないときと同程度まで改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるデジタル放送受信装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示すデジタル放送受信装置に入力されるOFDM−Tの信号例を示す模式図である。
【図3】本発明によるデジタル放送受信装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
1:デジタル放送受信装置
2:受信復調ユニット(主経路側伝送応答算出手段)
3:基準SPユニット
4:SP抽出復調ユニット(主経路側伝送応答算出手段)
5:伝送路特性推定ユニット(マルチパス側伝送応答算出手段)
6:SP抽出復調ユニット(マルチパス側伝送応答算出手段)
7:FIRフィルタ係数生成ユニット(波形等化器制御手段)
8:減算回路
9:FIRフィルタ回路
10:ウインドウ回路
11:FFT回路
12:複素除算回路
13:信号復調回路
14:SP抽出回路
15:SP復調回路
16:ウインドウ回路
17:FFT回路
18:SP抽出回路
19:SP復調回路
20:残差情報検出回路
21:IFFT回路
22:係数抽出回路

Claims (2)

  1. デジタル放送信号を受信して受信信号を生成するとともに、この受信信号を復調して情報を再生するデジタル放送受信装置において、
    受信信号内に含まれているパイロット信号R(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、マルチパスの伝送路応答F’(ω)を推定するマルチパス側伝送応答算出手段と、
    周波数特性W(ω)のフィルタを有する波形等化器を含む伝送路を経由した受信信号内に含まれているパイロット信号Y(ω)と予め保持している送信リファレンス信号S(ω)とに基づき、波形等化器を含めた伝送路応答Z’(ω)を推定する主経路側伝送応答算出手段と、
    この主経路側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答Z’(ω)と前記マルチパス側伝送応答算出手段で得られた伝送路応答F’(ω)とに基づき、シンボル間干渉による伝送特性を軽減させるように、前記波形等化器を制御する波形等化器制御手段と、
    を備えることを特徴とするデジタル放送受信装置。
  2. 請求項1に記載のデジタル放送受信装置において、
    前記波形等化器の係数更新頻度、伝送路の周波数応答の推定頻度を減少させて、装置内で使用される1つのIFFT回路または1つのFFT回路に、時分割でIFFT処理とFFT処理とを行わせる、
    ことを特徴とするデジタル放送受信装置。
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