JP4113551B2 - 検知システム - Google Patents

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Description

本発明は、歯列の欠損部分を補う義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する人工歯根埋入位置算出装置、該人工歯根埋入位置算出装置が生成したデータに基づき、人工歯根窩洞を穿孔する際に用いるガイド部材を製造するガイド部材製造装置、及び人工歯根窩洞を穿孔する穿孔装置の穿孔方向を検知する検知装置を合わせてなる検知システムに関するものである。
歯が欠損した場合、歯列における欠損部分において、粘膜下の顎骨を削ることにより所望の形状の人工歯根窩洞を形成し、この人工歯根窩洞に人工歯根(インプラント)を埋入させ、この人工歯根に義歯を支持させることにより、前記欠損部分を補う治療が行われている。
この人工歯根は、粘膜下に埋め込まれ、粘膜からの突出端に前記義歯が被されるため、従来から行われている入歯治療に必要なバネがなく、見た目の歯列がよい。また、人工歯根により支持された義歯は、天然歯と同様の手入れのみでよく、人工歯根に支持されているため安定性の点でも優れている。
上述のような人工歯根を埋入する場合、歯科医は、患者の顎骨のレントゲン画像を取得する。また、歯が欠損した状態での歯型を取り、この歯型に基づき歯列模型を作製する。
この歯列模型は歯科技工士に渡され、歯科技工士は、前記歯列模型に基づき、ワックス・アップと呼ばれる前記歯列の欠損部分を補うべき義歯を、該歯列における残存歯に基づき形作る。
歯科医は、前記レントゲン画像及び歯列模型に基づき、埋入すべき人工歯根の長さ,太さ,及び埋入位置を算出し、算出された長さ及び太さ等に対応した人工歯根を、例えばチタンによる既製の構造体(人工歯根)から選択する。
また歯科医は、上述のように算出した埋入位置に、選択した人工歯根を埋入させるべくドリルにより人工歯根窩洞を設け、この人工歯根窩洞に、チタン製の人工歯根を嵌合させることにより、人工歯根を所定の位置に埋入させる。更に、この人工歯根の粘膜における突出端部に、歯科技工士が形成した形状の義歯を被せることにより、患者の歯列に調和した義歯により欠損部分を補うことができる。
しかし、歯科医は、歯列模型による歯列の状態と、CT(Computed Tomography) を含めたレントゲン画像による顎骨の2次元データとに基づき人工歯根の埋入位置を算出しており、患者の粘膜下の顎骨及び神経系の形状を3次元的に正確に把握することは非常に難しく、人工歯根窩洞の穿孔手術においては、自身の経験及び適切な勘に依存している場合が多い。
下顎骨には下顎管と呼ばれる太い神経系があり、上顎には上顎洞と呼ばれる空洞があり、また、人工歯根を埋入させるべき欠損部分の近傍には、該欠損部分に隣在する残存歯の歯根があり、これらの神経系,空洞及び残存歯の歯根等を確実に回避して人工歯根窩洞を穿孔することは非常に困難である。
また、上述した方法においては、歯科医が作製した患者の歯列模型に基づき、歯科技工士が最終的な義歯の形状を形成することが必要であり、歯列模型の作製及び歯科技工士の義歯形成のための技術、時間及び費用が必要であるという問題があった。
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、歯列の3次元データ及び該歯列に連なる顎骨の3次元データを取得し、この歯列の3次元データと顎骨の3次元データとを合成し、生成された合成データに基づき、粘膜下の顎骨及び各歯の歯根の形状等を十分に把握することができ、下顎管,上顎洞及び隣在する歯根を十分に回避した人工歯根の埋入位置を算出する人工歯根埋入位置算出装置、該人工歯根埋入位置算出装置が生成した義歯データを付加した合成データに基づき、前記義歯データが示す義歯及び該義歯の近傍を覆う形状の部材を形成し、また、形成した部材に、前記人工歯根埋入位置算出装置が算出した埋入位置に連なるガイド孔を穿孔する構成を備えることにより、人工歯根窩洞を穿孔する際に、穿孔された前記ガイド孔が、上述した人工歯根埋入位置算出装置にて適切に算出された人工歯根の埋入方向における人工歯根窩洞へ、ドリル等の穿孔装置の先端部を誘導するガイド部材を精度良く製造するガイド部材製造装置及び穿孔装置に装着され、該穿孔装置の穿孔方向を検出し、検出した穿孔方向が、上述したガイド部材製造装置により製造されたガイド部材が有するガイド孔の穿孔方向であるか否かを判断し、該ガイド孔の穿孔方向でないと判断した場合、前記穿孔装置の穿孔方向が誤っている旨を報知することにより、人工歯根窩洞の穿孔手術における穿孔方向の適否を歯科医に報知する検知装置からなる検知システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、生成された義歯データを付加した合成データが示す歯列における咬合情報を生成する構成を備え、患者個人の咀嚼時の歯列における荷重情報を取得できない場合に、前記咬合情報を生成し、生成された咬合情報に基づき、人工歯根の埋入位置を算出することにより、咀嚼時に歯列の各歯に加わる荷重情報を取得できない場合であっても、生成された咬合情報から、より適切な人工歯根の埋入位置を算出する検知システムを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、歯列データと顎骨データとを合成して生成した合成データが示す歯列における残存歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する検知システムを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、合成データが示す歯列において、前記義歯データを生成する際に利用する残存歯がない場合に、各患者の使用中義歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、患者に残存歯がない場合であっても、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する検知システムを提供することにある。
本発明に係る検知システムは、歯列の欠損部分を補う義歯を支持する人工歯根を埋入する埋入位置を算出し、埋入位置に対応する人工歯根窩洞を穿孔する方向を検知する検知システムであって、前記歯列の3次元データを取得する歯列データ取得手段と、前記歯列に連なる顎骨の3次元データを取得する顎骨データ取得手段と、前記歯列における咀嚼時の荷重情報を取得する荷重情報取得手段と、前記歯列データ取得手段が取得した歯列の3次元データ及び前記顎骨データ取得手段が取得した顎骨の3次元データを合成する合成手段と、該合成手段が生成した歯列及び顎骨の合成データが示す前記歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する義歯データ生成手段と、該義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データ及び前記荷重情報取得手段が取得した荷重情報に基づき、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する算出手段とを備える人工歯根埋入位置算出装置、該人工歯根埋入位置算出装置が生成した義歯データを付加した合成データに基づき、前記義歯データが示す義歯及び該義歯の近傍を覆う部材を形成する形成手段と、該形成手段が形成した部材に、前記人工歯根埋入位置算出装置が算出した埋入位置に連なる前記ガイド孔を穿孔する穿孔手段とを備えるガイド部材製造装置、並びに前記人工歯根窩洞を穿孔する穿孔装置の穿孔方向を検出する検出手段と、該検出手段が検出した穿孔方向が、前記ガイド部材製造装置により製造されたガイド部材が有するガイド孔の穿孔方向であるか否かを判断する判断手段と、該判断手段が前記ガイド孔の穿孔方向でないと判断した場合、前記穿孔装置の穿孔方向が誤っている旨を報知する報知手段とを備える検知装置を有することを特徴とする。
本発明に係る検知システムは、前記義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データが示す歯列における咬合情報を生成する咬合情報生成手段を備え、前記荷重情報取得手段が前記荷重情報を取得していない場合、前記算出手段は、前記義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データ及び前記咬合情報生成手段が生成した咬合情報に基づき、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出すべくなしてあることを特徴とする。
本発明に係る検知システムは、前記義歯データ生成手段は、前記合成データが示す歯列における残存歯に基づき前記義歯データを生成すべくなしてあることを特徴とする。
本発明に係る検知システムは、前記義歯データ生成手段は、前記合成データが示す歯列における残存歯がない場合、使用中義歯に基づき前記義歯データを生成すべくなしてあることを特徴とする。
本発明に係る検知システムは、前記算出手段は、前記荷重情報又は咬合情報に基づき、咀嚼時に前記義歯データが示す義歯に加わる荷重方向を算出する荷重方向算出手段を備え、該荷重方向算出手段が算出した荷重方向に基づき、前記人工歯根の埋入位置を算出すべくなしてあることを特徴とする。
本発明による場合は、歯列の3次元データ及び該歯列に連なる顎骨の3次元データを取得し、この歯列の3次元データと顎骨の3次元データとを合成し、生成された合成データに基づき、粘膜下の顎骨及び各歯の歯根の形状等を十分に把握することができ、下顎管,上顎洞及び隣在する歯根を十分に回避した人工歯根の埋入位置を算出することができる。
また、前記歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成し、この義歯データを付加した前記合成データに基づき、予め取得してある前記歯列における咀嚼時の荷重情報を考慮して、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する構成を備えることにより、患者個人の咀嚼時において各歯に加わる荷重に基づき、より適切な人工歯根の埋入位置を算出することができる。
更に、上述のように各データをデジタルデータとして取得することにより、人工歯根の埋入位置を算出するための各処理を、3次元立体ならびに2次元平面画像により解剖学的に正確にコンピュータにて実行させることが可能となり、予知性を期待できるような、より適切な埋入位置を力学解析により更に的確に算出することができる。また、各データの再利用が可能であり、各データを取得した時点で存在していた歯が、後日欠損した場合に、予め取得してある歯列及び顎骨の3次元データに基づき義歯を形成することができ、残存歯により適応した義歯及び該義歯を支持する人工歯根を植立させることができる。
本発明による場合は、生成された義歯データを付加した合成データが示す歯列における咬合情報を生成する構成を備え、患者個人の咀嚼時の歯列における荷重情報を取得できない場合に、前記咬合情報を生成し、生成された咬合情報に基づき、人工歯根の埋入位置を算出することにより、咀嚼時に歯列の各歯に加わる荷重情報を取得できない場合であっても、生成された咬合情報から、より適切な人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、歯列データと顎骨データとを合成して生成した合成データが示す歯列における残存歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、合成データが示す歯列において、前記義歯データを生成する際に利用する残存歯がない場合に、各患者の使用中義歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、患者に残存歯がない場合であっても、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、取得された荷重情報又は生成された咬合情報に基づき、咀嚼時に前記義歯データが示す義歯に加わる荷重方向を算出し、算出された荷重方向に基づき、前記人工歯根の埋入位置を算出する構成を備えることにより、患者毎の咀嚼動作に適合した人工歯根の埋入位置を算出することができ、歯列における他の歯に負担を加えない埋入位置を算出することができる。
また本発明による場合は、上述したような人工歯根埋入位置算出装置が生成した義歯データを付加した合成データに基づき、前記義歯データが示す義歯及び該義歯の近傍を覆う形状の部材を形成し、また、形成した部材に、前記人工歯根埋入位置算出装置が算出した埋入位置に連なるガイド孔を穿孔する構成を備えることにより、人工歯根窩洞を穿孔する際に、穿孔された前記ガイド孔が、上述した人工歯根埋入位置算出装置にて適切に算出された人工歯根の埋入方向における人工歯根窩洞へ、ドリル等の穿孔装置の先端部を誘導するガイド部材を精度良く製造することができる。
更に本発明による場合は、例えばドリル等の穿孔装置に装着され、該穿孔装置の穿孔方向を検出し、検出した穿孔方向が、上述したガイド部材製造装置により製造されたガイド部材が有するガイド孔の穿孔方向であるか否かを判断し、該ガイド孔の穿孔方向でないと判断した場合、前記穿孔装置の穿孔方向が誤っている旨を報知することにより、人工歯根窩洞の穿孔手術の経験が少ない歯科医であっても、ガイド部材のガイド孔に沿って、人工歯根窩洞を精度良く穿孔することができる。
本発明による場合は、歯列の3次元データ及び該歯列に連なる顎骨の3次元データを取得し、この歯列の3次元データと顎骨の3次元データとを合成し、生成された合成データに基づき、粘膜下の顎骨及び各歯の歯根の形状等を十分に把握することができ、下顎管,上顎洞及び隣在する歯根を十分に回避した人工歯根の埋入位置を算出することができる。
また、前記歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成し、この義歯データを付加した前記合成データに基づき、予め取得してある前記歯列における咀嚼時の荷重情報を考慮して、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する構成を備えることにより、患者個人の咀嚼時において各歯に加わる荷重に基づき、より適切な人工歯根の埋入位置を算出することができる。
更に、上述のように各データをデジタルデータとして取得することにより、人工歯根の埋入位置を算出するための各処理を、3次元立体ならびに2次元平面画像により解剖学的に正確にコンピュータにて実行させることが可能となり、予知性を期待できるような、より適切な埋入位置を力学解析により更に的確に算出することができる。また、各データの再利用が可能であり、各データを取得した時点で存在していた歯が、後日欠損した場合に、予め取得してある歯列及び顎骨の3次元データに基づき義歯を形成することができ、残存歯により適応した義歯及び該義歯を支持する人工歯根を植立させることができる。
本発明による場合は、生成された義歯データを付加した合成データが示す歯列における咬合情報を生成する構成を備え、患者個人の咀嚼時の歯列における荷重情報を取得できない場合に、前記咬合情報を生成し、生成された咬合情報に基づき、人工歯根の埋入位置を算出することにより、咀嚼時に歯列の各歯に加わる荷重情報を取得できない場合であっても、生成された咬合情報から、より適切な人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、歯列データと顎骨データとを合成して生成した合成データが示す歯列における残存歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、合成データが示す歯列において、前記義歯データを生成する際に利用する残存歯がない場合に、各患者の使用中義歯に基づき、該歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する構成を備えることにより、患者に残存歯がない場合であっても、各患者が有する歯列により適合する義歯データを算出することができ、患者の歯や顎堤に調和した義歯から、該義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出することができる。
本発明による場合は、取得された荷重情報又は生成された咬合情報に基づき、咀嚼時に前記義歯データが示す義歯に加わる荷重方向を算出し、算出された荷重方向に基づき、前記人工歯根の埋入位置を算出する構成を備えることにより、患者毎の咀嚼動作に適合した人工歯根の埋入位置を算出することができ、歯列における他の歯に負担を加えない埋入位置を算出することができる。
また本発明による場合は、上述したような人工歯根埋入位置算出装置が生成した義歯データを付加した合成データに基づき、前記義歯データが示す義歯及び該義歯の近傍を覆う形状の部材を形成し、また、形成した部材に、前記人工歯根埋入位置算出装置が算出した埋入位置に連なるガイド孔を穿孔する構成を備えることにより、人工歯根窩洞を穿孔する際に、穿孔された前記ガイド孔が、上述した人工歯根埋入位置算出装置にて適切に算出された人工歯根の埋入方向における人工歯根窩洞へ、ドリル等の穿孔装置の先端部を誘導するガイド部材を精度良く製造することができる。
更に本発明による場合は、例えばドリル等の穿孔装置に装着され、該穿孔装置の穿孔方向を検出し、検出した穿孔方向が、上述したガイド部材製造装置により製造されたガイド部材が有するガイド孔の穿孔方向であるか否かを判断し、該ガイド孔の穿孔方向でないと判断した場合、前記穿孔装置の穿孔方向が誤っている旨を報知することにより、人工歯根窩洞の穿孔手術の経験が少ない歯科医であっても、ガイド部材のガイド孔に沿って、人工歯根窩洞を精度良く穿孔することができる。
以下に、本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置を、コンピュータを利用した実施の形態に基づいて詳述する。図1は本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置の構成を示すブロック図であり、図において1は本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置としてのコンピュータを示している。
コンピュータ1は、CPU10,RAM11,ハードディスク(以下、HDという)12,外部記憶装置13,ディスプレイ14,キーボード15,マウス16等を備えている。
CPU10は、バスを介してコンピュータ1の上述したようなハードウェア各部と接続されており、それらを制御すると共に、HD12に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。
HD12は、本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置としての動作に必要な種々のコンピュータプログラムを記憶している。
RAM11は、SRAM,DRAM,フラッシュメモリ等で構成されており、CPU10によるコンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。尚、RAM11にフラッシュメモリを使用した場合には、停電,コンピュータ1の移動等のために電源が遮断された場合であっても記憶内容が失われることはない。
外部記憶装置13は、CD−ROMドライブ又はフレキシブルディスクドライブ等で構成されており、本発明に係るコンピュータプログラムが記録されているCD−ROM又はフレキシブルディスク等の可搬型記録媒体13aから、本発明のコンピュータプログラムである歯列データ取得処理プログラム,顎骨データ取得処理プログラム,咀嚼データ取得処理プログラム,合成処理プログラム,義歯データ生成処理プログラム及び算出処理プログラムを読み取り、HD12に記憶させる。
本実施の形態において、歯科医は、上述した構成のコンピュータ1により実現される人工歯根埋入位置算出装置を利用する場合、患者毎に、歯列データ及び顎骨データと、咀嚼時において各歯に加わる荷重情報を示す咀嚼データとを予め取得しておく。
尚、歯列データは、患者から採取した歯型に基づき作製された歯列模型から、該歯列を3次元データとして取得され、該歯列における欠損部分においては、粘膜の表面を3次元データとして取得している。また、顎骨データは、X線ビームを走査させて人体の内部器官の断層画像を取得するCT(Computerized Tomography:コンピュータ断層撮影)画像撮影装置により取得された患者の顎骨についての複数のCT画像に基づき3次元データとして生成される。更に、咀嚼データは、患者が義歯を使用している場合には、この義歯を所定箇所に装着させた状態で、患者に柔軟性を有する物質を咬ませ、この咀嚼時に各歯に加わる荷重の大きさ及び方向等を計測して取得される。
また、上述したCT画像及び歯型は、残存歯が比較的多い患者の場合、上下顎の歯列の間に、例えば、アルー社製のアルーワックス(登録商標)等の馬蹄既製のコンパウンドを軟化して咬合させ、このコンパウンドが軟化している間に、コンパウンドの外側の所定箇所に直径7mm程度のセラミックボールを圧接し、更にこのセラミックボールを接着剤等で固定した状態で取得する。一方、欠損歯が多い患者の場合、該患者が使用している使用中義歯(入歯)を装着させ、この使用中義歯の所定箇所に接着剤等でセラミックボールを固定した状態で取得する。
このようにセラミックボールを所定箇所に固定させた状態でCT画像及び歯型を取得することにより、本発明の人工歯根埋入位置算出装置において、歯列データと顎骨データとを合成する際の目印とすることができる。
上述のように各装置において夫々取得した歯列データ,顎骨データ及び咀嚼データは、夫々の装置をケーブル(図示せず)を介してコンピュータ1に接続することにより、前記ケーブルを介してコンピュータ1に備えるRAM11に記憶させることもでき、また、夫々の装置から、一旦CD−ROM又はフレキシブルディスク等の記録媒体に記録し、コンピュータ1に備える外部記憶装置13を介してRAM11に記憶させることもできる。
このように歯列データ,顎骨データ及び咀嚼データをRAM11に記憶させることにより、コンピュータ1は、後述する人工歯根の埋入位置の算出処理に各データを用いることができる。
以下に、上述した構成のコンピュータ1による人工歯根の埋入位置の算出処理について説明する。図2はコンピュータ1による人工歯根埋入位置算出処理を示すフローチャートである。
コンピュータ1を人工歯根埋入位置算出装置として動作させる場合、歯科医は、対象となる患者の歯列についての3次元データと、該歯列に連なる顎骨についての3次元データと、該歯列において咀嚼時に各歯に加わる荷重情報を示す咀嚼データとを、夫々外部の装置にて予め取得しておき、コンピュータ1に設けられた所定のアイコンをマウス16にてクリック等することにより、コンピュータ1に人工歯根埋入位置算出処理を実行させる。
コンピュータ1において、歯科医により所定のアイコンをクリックされた場合(S1)、CPU10は、HD12に記憶してある本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置として動作するための各コンピュータプログラムをRAM11に読み出し(S2)、夫々のコンピュータプログラムに含まれるプログラムコードを順次実行する。
まずCPU10は、歯列データ取得処理プログラム,顎骨データ取得処理プログラム及び咀嚼データ取得処理プログラムを順次実行することにより、外部から夫々歯列データ,顎骨データ及び咀嚼データを取得しRAM11に記憶する(S3)。尚、各データは、上述したように、夫々の装置をケーブルを介してコンピュータ1に接続することにより、前記ケーブルを介して取得してもよく、また、夫々の装置から、一旦CD−ROM又はフレキシブルディスク等の記録媒体に記録し、コンピュータ1に備える外部記憶装置13を介して取得してもよい。
次にCPU10は、RAM11に読み出した合成処理プログラムを実行することにより、ステップS3においてRAM11に記憶した歯列データと顎骨データとを合成して合成データを生成する(S4)。
尚、歯列データを取得する際に患者から採取する歯型、及び顎骨データを生成する際に撮影するCT画像は、患者の上下顎の歯列の間に咬合させたコンパウンドの所定箇所にセラミックボールを固定した状態で取得されており、歯列データ及び顎骨データには、夫々セラミックボールが含まれている。従って、互いに有するセラミックボールを基準に、歯列データと顎骨データとを合成することにより、各歯と該歯に連なる顎骨とを適切に合成することができる。
患者が既治療の歯に金属製の被せ物を有している場合、CT画像を撮影する際のX線ビームは、この被せ物に反射するため、適切な歯列情報を含んだCT画像を取得することが非常に困難である。従って、上述のように歯列模型から取得した歯列データと、CT画像から生成した顎骨データとを合成することにより、適切な歯列データと顎骨データとからなる合成データを取得することができる。
CPU10は、RAM11に読み出した義歯データ生成処理プログラムを実行することにより、歯列における欠損部分を補う義歯を示す義歯データ、本実施の形態では、前記欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成する(S5)。尚、前記欠損部分を補う義歯としては、本実施の形態に示すような歯冠、及び可撤性義歯(入歯)等がある。また、この歯冠データを生成する処理手順については後に詳述する。
次にCPU10は、ステップS3において取得した咀嚼データがあるか否かを判断する(S6)。本実施の形態では、上述のような咀嚼データの取得を必須要件とせず、ステップS3においては前記咀嚼データを取得していない場合、CPU10は、ステップS5で生成した歯冠データを、ステップS4で生成した合成データにおける欠損部分に付加し、該欠損部分を前記歯冠データで補われた前記合成データが示す歯列における各歯に加わる咬合力の方向を計測し、該咬合力の方向を示す咬合情報を生成して、RAM11に記憶させる(S7)。
CPU10は、生成した歯冠データを、ステップS4において生成した合成データにおける欠損部分に付加し、RAM11に読み出した算出処理プログラムを実行することにより、ステップS5において生成した歯冠データが示す歯冠を支持する人工歯根の埋入位置を算出する(S8)。尚、この人工歯根の埋入位置を算出する処理手順についても後に詳述する。
更にCPU10は、上述のように算出することにより、人工歯根の埋入位置を示す埋入位置データを取得し、ディスプレイ14に算出処理の完了を表示して(S9)、埋入位置の算出処理を終了する。
以下に、上述した人工歯根埋入位置算出処理における歯冠データの生成処理(図2におけるステップS5)のサブルーチンを説明する。図3はコンピュータ1による人工歯根埋入位置算出処理における歯冠データ生成処理手順を示すフローチャートである。
CPU10は、RAM11に読み出した義歯データ生成処理プログラムを実行した場合、生成した歯列データと顎骨データとの合成データにおいて、上下顎の各歯列における欠損部分を検知し(S11)、上顎又は下顎の歯列における欠損部分の位置を認識する。
次にCPU10は、認識した欠損部分に対して、同顎における反対側の同名歯が残存しているか否かを判断する(S12)。即ち、認識した欠損部分を有する歯列、具体的には上顎又は下顎の歯列において、該欠損部分に対して、中央に位置する歯を中心とした左右対称の位置に残存歯があるか否かを判断しており、該位置に残存歯があると判断した場合、該残存歯の形態及び寸法等が適切であるか否かを判断する(S13)。
CPU10は、前記残存歯の形態及び寸法等が適切であると判断した場合、該残存歯の形状に基づき歯冠データを生成する(S14)。
一方、ステップS12において、同顎における反対側の同名歯が残存していないと判断した場合、該同顎にその他の残存歯があるか否かを判断している(S15)。またCPU10は、該同顎に他の残存歯があると判断した場合、及びステップS13において、前記欠損部分の同顎における反対側の残存歯が適切でないと判断した場合、該同顎の各残存歯の幅径を計測し(S16)、平均的な歯冠幅径に基づき、前記欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成する(S17)。
また、ステップS15において、CPU10は、前記欠損部分の同顎に残存歯がないと判断した場合、前記欠損部分の対顎に残存歯があるか否かを判断し(S18)、前記欠損部分の対顎に残存歯があると判断した場合、該残存歯の形態及び寸法等が適切であるか否かを判断する(S19)。
CPU10は、該残存歯の形態及び寸法等が適切であると判断した場合、該対顎にある各残存歯の幅径を計測し(S20)、計測した各残存歯の幅径から平均的な歯冠幅径に基づき、前記欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成する(S17)。
CPU10は、ステップS18において、前記欠損部分の対顎に残存歯がないと判断した場合、及び、ステップS19において、前記対顎にある残存歯が適切でないと判断した場合、当該患者の使用中義歯があるか否かを判断する(S21)。
CPU10は、患者の使用中義歯があると判断した場合、該使用中義歯の形態及び寸法が適切であるか否かを判断し(S22)、該使用中義歯の形態及び寸法が適切であると判断した場合、該使用中義歯における各人工歯の幅径を計測し(S23)、計測した各人工歯の幅径に基づき、前記欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成する(S24)。
CPU10は、ステップS21において、使用中義歯がないと判断した場合、及び、ステップS22において、使用中義歯が適切でないと判断した場合、前記患者の鼻翼幅径を計測し(S25)、計測した鼻翼幅径に基づき、前記欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成する(S26)。尚、患者の鼻翼幅径だけでなく、患者の顔面の各部計測値に基づき歯冠データを生成することもできる。
上述のように、欠損部分に対して、同顎にある残存歯に基づき該欠損部分を補う歯冠の形状を生成することにより、各患者が有する歯や顎堤に調和した歯冠データを生成することができる。また、前記同顎に残存歯がない場合であっても、使用中義歯に基づき該欠損部分を補う歯冠の形状を生成することにより、各患者の歯列により適合する歯冠データを生成することができる。
以下に、上述した人工歯根埋入位置算出処理における算出処理(図2におけるステップS8)のサブルーチンを説明する。図4はコンピュータ1による人工歯根埋入位置算出処理における算出処理手順を示すフローチャートである。
CPU10は、RAM11に読み出した算出処理プログラムを実行した場合、既に生成してある歯列データと顎骨データとの合成データに歯冠データを付加して(S31)、歯列において欠損部分がない合成データを生成する。
次にCPU10は、RAM11に咀嚼データが記憶してあるか否かを判断し(S32)、咀嚼データがあると判断した場合、RAM11から読み出した咀嚼データを、欠損部分がない合成データに代入し(S33)、該合成データが示す歯列において、前記咀嚼データに基づく咀嚼動作を仮想的に実行させる(S35)。
一方、CPU10は、咀嚼データがないと判断した場合、RAM11に記憶してある咬合情報を読み出して、該咬合情報を、欠損部分がない合成データに代入する(S34)。
これにより、合成データが示す歯列において、咀嚼時に各歯に加わる対合歯からの咬合力の方向が算出されると同時に、歯冠データが示す歯冠においても、咀嚼時に対合歯から加わる咬合力の方向が検索される(S36)。
CPU10は、上述のように順次検索される、咀嚼時に前記歯冠に加わる咬合力の方向に基づき、力学的に最適な前記歯冠を支持する人工歯根を埋入すべき埋入位置を算出する(S37)。またCPU10は、順次算出される埋入位置が解剖学的に安全であるか否かを、前記歯冠を植立すべき粘膜の下の下顎管,上顎洞及び隣在する歯根の状態に基づき判断し(S38)、算出した埋入位置が、下顎管,上顎洞及び隣在する歯根を避けて、解剖学的に安全であると判断するまで、ステップS36の処理に戻り、咀嚼時に前記歯冠に加わる咬合力の方向に基づき、力学的に最適な前記歯冠を支持する人工歯根を埋入すべき埋入位置を算出する(S37)。
CPU10は、ステップS38において、算出された埋入位置が、解剖学的に安全であると判断した場合、この埋入位置を示す埋入位置データを取得する(S39)。具体的には、人工歯根を埋入すべき角度及び位置等を取得する。
上述のように、人工歯根の埋入位置を算出する際に、患者個人の咀嚼データを考慮することにより、歯列の欠損部分を補う歯冠を、各患者独自の咀嚼動作に適合して算出された埋入位置に埋入される人工歯根により支持することができ、他の残存歯に加わる負荷を軽減することができる。また、前記咀嚼データが取得できない場合であっても、合成データに基づき、該合成データが示す歯列における咬合情報を生成し、生成した咬合情報に基づき、人工歯根の埋入位置を算出することにより、同様の効果が得られる。
上述したように、3次元の歯列データと顎骨データとを合成して生成された合成データに基づき、粘膜下の顎骨の形状を十分に把握することができ、神経系及び近傍の歯根を十分に回避した人工歯根の埋入位置を算出することができる。
また、歯列の欠損部分を補う歯冠を示す歯冠データを生成し、この歯冠データを付加した前記合成データにおいて、予め取得してある前記歯列における咀嚼時の咬合力情報を示す咀嚼データに基づく咀嚼動作を実行することにより、患者個人の咀嚼データに基づき、より患者の歯列に適合した人工歯根の埋入位置を算出することができる。
以下に、上述のように算出された埋入位置において、人工歯根を埋入する人工歯根窩洞を精度良く穿孔する際の補助部材であるガイド部材の製造処理について説明する。
図5は本発明に係るガイド部材製造装置の要部構成を示すブロック図であり、図中2は本発明のガイド部材製造装置を示している。このガイド部材製造装置2は、制御部20,RAM21,HD22,材料貯蔵部23,部材形成部(形成手段)24,穿孔部(穿孔手段)25,表示部26,操作部27,外部記憶装置28等を備えている。
制御部20は、具体的にはCPU等により構成され、バスを介してガイド部材製造装置2の上述したようなハードウェア各部と接続されており、それらを制御すると共に、HD22に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。
HD22は、本発明に係るガイド部材製造装置2の動作に必要な種々のコンピュータプログラムを記憶している。
RAM21は、SRAM,DRAM,フラッシュメモリ等で構成されており、制御部20によるコンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。尚、RAM21にフラッシュメモリを使用した場合には、停電,ガイド部材製造装置2の移動等のために電源が遮断された場合であっても記憶内容が失われることはない。
外部記憶装置28は、CD−ROMドライブ又はフレキシブルディスクドライブ等で構成されており、各種のデータ及びコンピュータプログラムが記録されているCD−ROM又はフレキシブルディスク等の可搬型記録媒体から各データを読み取りHD22に記憶させる。
ガイド部材製造装置2においては、上述した人工歯根埋入位置算出装置としてのコンピュータ1が算出した合成データ及び埋入位置データを、コンピュータ1とケーブル(図示せず)を介して接続することにより、前記ケーブルを介して取得しRAM21に記憶させる構成としてもよく、また、前記合成データ及び埋入位置データは、コンピュータ1から一旦CD−ROM又はフレキシブルディスク等の記録媒体に記録され、ガイド部材製造装置2に備える外部記憶装置28を介してRAM21に記憶させることもできる。このように合成データ及び埋入位置データをRAM21に記憶させることにより、ガイド部材製造装置2は、ガイド部材の製造処理に各データを用いることができる。
材料貯蔵部23は、ガイド部材の原材料として例えばアクリリックレンジ等を適宜の形状に形成したアクリリックレンジブロックを貯蔵しており、制御部20からの制御に従い、アクリリックレンジブロックを適宜、部材形成部24に送り出す。
部材形成部24は、切削工具等から構成されており、材料貯蔵部23から取得したアクリリックレンジブロックを、制御部20からの制御により、上述したようにRAM21に記憶してある合成データに含まれる義歯データ及び該義歯データが示す義歯に隣接する歯を示すデータに基づき切削し、義歯及び該義歯に隣接する歯の形状に形成し、穿孔部25に送り出す。尚、切削された前記アクリリックレンジブロックは、患者の歯列における欠損部分において、該欠損部分に隣接する歯に掛止することにより前記欠損部分に装着されるため、該隣接する歯に形成された部分においては、冠状に形成されている。
穿孔部25は、部材形成部24により所望の形状に切削されたアクリリックレンジブロックに、制御部20の制御により、RAM21に記憶してある埋入位置データに連なる位置にガイド孔を穿孔する。
表示部26は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、ガイド部材製造装置2の動作状態等を表示する。
操作部27は、ガイド部材製造装置2を操作するために必要なファンクションキー及びガイド部材製造装置2にガイド部材の製造処理を実行させるための実行キー27a等を備えている。尚、表示部26をタッチパネル方式とすることにより、操作部27の各種のキーの一部又は全部を代用することも可能である。
以下に、上述した構成のガイド部材製造装置2によるガイド部材の製造処理について説明する。図6は本発明に係るガイド部材製造装置2によるガイド部材の製造処理を示すフローチャートである。
ガイド部材製造装置2を動作させる歯科医は、上述したようにコンピュータ1により合成データ及び埋入位置データを算出しておき、ガイド部材製造装置2の操作部27に備える実行キー27aをオンすることにより、ガイド部材製造装置2にガイド部材を製造させる。
ガイド部材製造装置2において、歯科医により実行キー27aがオンされた場合(S41)、制御部20は、外部から夫々合成データ及び埋入位置データを取得しRAM21に記憶する(S42)。
次に制御部20は、材料貯蔵部23に貯蔵してあるアクリリックレンジブロックを1つ部材形成部24に送り出し(S43)、部材形成部24により、RAM21に記憶してある合成データに基づく切削処理を実行することにより、該合成データに含まれる歯冠データが示す歯冠及び該歯冠に隣接する残存歯の形状に切削してガイド部材を形成する(S44)。
次に制御部20は、穿孔部25により、RAM21に記憶してある埋入位置データに基づき、ステップS44において形成したガイド部材の、前記埋入位置データが示す埋入位置に連なる位置に、ガイド孔を穿孔する(S45)。これにより、ガイド部材を、患者の術部、具体的には、歯列の欠損部分において、該欠損部分に隣接する残存歯に掛止させることにより装着した場合に、穿孔すべき人工歯根窩洞を延長した位置に前記ガイド孔が配置されることになる。
制御部20は、ガイド部材の所望箇所にガイド孔が穿孔された場合、表示部26に穿孔処理の完了を表示し(S46)、ガイド部材の製造処理を終了する。
図7はガイド部材の一例を示す模式図であり、図において3はガイド部材を示している。ガイド部材3は、歯列の欠損部分を補う歯冠の形状に形成された歯冠部30と、該欠損部分に隣接する隣接歯34a,34b,34cに被され、歯冠部30を支持する支持部31a,31b,31cとを備えており、歯冠部30には、ガイド孔32,32が穿設されている。
このようなガイド部材3は、図中の矢符A,A,Aで示すように、支持部31a,31b,31cを夫々隣接歯34a,34b,34cに被せることにより、歯冠部30を固定することができ、このようなガイド部材3において、ガイド孔32,32夫々にドリル等の穿孔装置の先端部を嵌合させていき、ガイド孔32,32に沿って、粘膜35下を穿孔することにより、目標とする埋入位置における人工歯根窩洞33,33を穿設することができる。
また、全部床義歯(いわゆる総入歯)等を使用する患者においては、残存歯が全く無く、カイド部材3を掛止させることができないため、歯冠部30を顎骨の表面に直接載置できるよう、歯冠部30の基底面が顎骨表面の形態に一致する形状を有するガイド部材を製造してもよい。
以下に、上述のように、ガイド部材製造装置2により製造したガイド部材3を用いて人工歯根窩洞を穿孔する穿孔装置に装着され、該穿孔装置の穿孔方向を検知する検知装置について説明する。
図8は本発明に係る検知装置の構成を示すブロック図であり、図中4は本発明の検知装置を示している。この検知装置4は、本体部40と、穿孔装置50に装着されるジャイロセンサ等により構成される検出部(検出手段)53とをケーブル54を介して接続することにより構成されている。尚、この本体部40と検出部53とを一体とする構成も可能である。
本体部40は、制御部41,RAM42,ROM43,表示部45,操作部46,検出部53と接続するためのインタフェース44等を備えている。
制御部41は、具体的にはCPU又はMPU等により構成され、バスを介して本体部40の上述したようなハードウェア各部、及びインタフェース44を介して検出部53と接続されており、それらを制御すると共に、ROM43に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。
ROM43は、本発明に係る検知装置4の動作に必要な種々のコンピュータプログラム、例えば穿孔方向判断処理プログラムを記憶している。
RAM42は、SRAM,DRAM,フラッシュメモリ等で構成されており、制御部41によるコンピュータプログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。尚、RAM42にフラッシュメモリを使用した場合には、停電,検知装置4の移動等のために電源が遮断された場合であっても記憶内容が失われることはない。
表示部45は、液晶表示装置等の表示装置であり、検知装置4の動作状態等を表示する。また穿孔装置50における穿孔方向の誤りを報知する報知手段としてのLED(Light Emitting Diode)からなる報知ランプ45aを備えている。尚、この報知ランプ45aは、穿孔装置50の穿孔方向が適切であれば、例えば青色に点灯し、穿孔方向が不適切であれば、例えば赤色に点灯する。また、報知ランプ45aだけでなく、穿孔装置50の穿孔方向の誤りを音声により報知するために、ブザー等を備える構成であってもよい。
操作部46は、検知装置4を操作するために必要なファンクションキー等を備えている。尚、表示部45をタッチパネル方式とすることにより、操作部46の各種のキーの一部又は全部を代用することも可能である。
穿孔装置50は、歯科医が十分に保持するための保持部51を備えており、保持部51の一端部には、該保持部51の長手方向に対して垂直にドリル部52が突設してある。また、このドリル部52は、ケーブル55を介して図示しないエンジン部に接続されており、このエンジン部からの電力供給により回転するように構成されている。
本実施の形態における検知装置4において、検出部53は、穿孔装置50の保持部51の、ドリル部52の穿孔方向を検出できる適宜位置に装着される。
検出部53は、検出した穿孔装置50のドリル部52における穿孔方向を、ケーブル54を介して本体部40の制御部41に入力し、制御部41が、ROM43に記憶してある穿孔方向判断処理プログラムを実行することにより、ドリル部52の穿孔方向が適切であるか否かを判断する。また、検出部53には、セットキー53aが設けてあり、このセットキー53aがオンされた時点での検出部53の検出方向が、設定方向として本体部40のRAM42に記憶される。
上述した構成の検知装置4を装着された穿孔装置50は、図8に示すように、ガイド部材製造装置2により製造されたガイド部材3を用い、患者の術部に装着されたガイド部材3のガイド孔32,32に沿って夫々ドリル部52を嵌合させていくことにより、ドリル部52の穿孔方向をある程度維持することができる。また、検出部53により検出されたドリル部52における穿孔方向が、本体部40において、予めセットキー53aによりキャリブレーションされ、RAM42に記憶してある設定方向であるか否かを制御部41が判断することにより、適切な穿孔方向を確実に維持しながら穿孔処理を行うことができる。
尚、検出部53は、ジャイロセンサだけでなく、光センサ等により構成してもよく、歯科医の腕の位置、穿孔装置50の位置、患者の体位,体位,顎位を3次元的に検出できる構成を備えることにより、より精度良く、人工歯根窩洞の穿孔処理を行うことができる。
以下に、上述した構成の検知装置4を装着した穿孔装置50による人工歯根窩洞の穿孔処理について説明する。図9は本発明に係る検知装置4を装着された穿孔装置50による人工歯根窩洞の穿孔処理を示すフローチャートである。
人工歯根窩洞の穿孔手術を行う歯科医は、上述したようにガイド部材製造装置2により製造したガイド部材3を、患者の術部、即ち歯列における欠損部分に装着させておき、穿孔装置50の保持部51を保持し、患者の術部に装着させたガイド部材3のガイド孔32の開口端からドリル部52の先端部分を嵌合させ、検出部53のセットキー53aをオンする。
検出部53はセットキー53aがオンされたか否かを判断しており(S51)、セットキー53aがオンされたと判断した場合、この時点で検出しているドリル部52の穿孔方向を、ケーブル54を介して制御部41に入力する。
制御部41は、表示部45に備える報知ランプ45aを青色で点滅させると同時に(S52)、検出部53から取得した穿孔方向を設定方向としてRAM24に記憶する(S53)。
一方、検出部53は、所定のタイミングにてドリル部52の穿孔方向を検出しており、逐次ケーブル54を介して本体部40の制御部41に入力する。
制御部41は、検出部53が検出したドリル部52の穿孔方向を順次取得し(S54)、ROM43に記憶してある穿孔方向判断処理プログラムをRAM42に読み出して実行することにより、検出部53から取得した穿孔方向が、RAM42に記憶してある設定方向と合致し、適切な穿孔方向であるか否かを判断する(S55)。ガイド部材3のガイド孔32は、穿孔すべき人工歯根窩洞に連なるように穿設されており、ドリル部52の中心軸が、ガイド孔32の中心軸と一致するように、ドリル部52を嵌合させる必要がある。
制御部41は、検出部53から取得した穿孔方向が適切でないと判断した場合、報知ランプ45aを赤色に点灯させるとともに(S56)、表示部45に穿孔方向が不適切であることを表示する(S57)。尚、報知ランプ45aを、青,黄,赤の3色で点灯可能とすることにより、ドリル部52の穿孔方向の不適切度合に応じて点灯させる色を変化させてもよい。また、ドリル部52の穿孔方向が不適切である旨を報知する手段としては、報知ランプ45aのほか、警告音を発する構成としてもよい。
歯科医は、報知ランプ45aの赤色の点灯を確認した場合、ドリル部52の回転を停止させるとともに、ドリル部52の穿孔方向を適切に修正する。
一方、制御部41は、検出部53から取得した穿孔方向が適切であると判断した場合、報知ランプ45aを青色に点灯させ(S58)、表示部45に穿孔方向が適切であることを表示する(S59)。
歯科医は、ドリル部52の穿孔に伴う、ガイド部材3の上部から露出しているドリル部52の長さの減少に基づき、穿孔深さを認識しており、所定の穿孔深さまで穿孔した場合、操作部46を操作等することにより穿孔処理の終了を指示することができる。
制御部41は、歯科医からの穿孔処理の終了の指示があるか否かを判断しており(S60)、穿孔処理の終了が指示されるまでステップS54の処理に戻り、ドリル部52における穿孔方向が適切であるか否かの判断処理を繰り返す。
また制御部41は、人工歯根窩洞の穿孔処理の終了を指示されたと判断した場合、表示部45に穿孔処理の完了を表示し(S61)、処理を終了する。
その後、歯科医は、穿孔した人工歯根窩洞に、チタンの既製の構造体である人工歯根を埋入し、該人工歯根の突出端部に歯冠を接合することにより該歯冠を植立させ、歯列における欠損部分を補い、各患者により適合した人工歯根及び歯冠を植立させることができる。
上述した実施の形態において、人工歯根埋入位置算出装置として動作するためのコンピュータプログラムは、外部記憶装置13を介して記録媒体13aからコンピュータ1のHD12に記憶されているが、コンピュータ1にネットワークと接続するための通信インタフェース等を備えることにより、外部のネットワークを介して、他の通信装置から各コンピュータプログラムを取得する構成としてもよい。
本発明に係る人工歯根埋入位置算出装置の構成を示すブロック図である。 コンピュータによる人工歯根埋入位置算出処理を示すフローチャートである。 コンピュータによる人工歯根埋入位置算出処理における歯冠データ生成処理手順を示すフローチャートである。 コンピュータによる人工歯根埋入位置算出処理における算出処理手順を示すフローチャートである。 本発明に係るガイド部材製造装置の要部構成を示すブロック図である。 本発明に係るガイド部材製造装置によるガイド部材の製造処理を示すフローチャートである。 ガイド部材の一例を示す模式図である。 本発明に係る検知装置の構成を示すブロック図である。 本発明に係る検知装置を装着された穿孔装置による人工歯根窩洞の穿孔処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 コンピュータ
11 RAM
13a 記録媒体
2 ガイド部材製造装置
24 部材形成部(形成手段)
25 穿孔部(穿孔手段)
3 ガイド部材
32 ガイド孔
4 検知装置
45a 報知ランプ
52 ドリル部
53 検出部(検出手段)

Claims (5)

  1. 歯列の欠損部分を補う義歯を支持する人工歯根を埋入する埋入位置を算出し、埋入位置に対応する人工歯根窩洞を穿孔する方向を検知する検知システムであって、
    前記歯列の3次元データを取得する歯列データ取得手段と、
    前記歯列に連なる顎骨の3次元データを取得する顎骨データ取得手段と、
    前記歯列における咀嚼時の荷重情報を取得する荷重情報取得手段と、
    前記歯列データ取得手段が取得した歯列の3次元データ及び前記顎骨データ取得手段が取得した顎骨の3次元データを合成する合成手段と、
    該合成手段が生成した歯列及び顎骨の合成データが示す前記歯列の欠損部分を補う義歯を示す義歯データを生成する義歯データ生成手段と、
    該義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データ及び前記荷重情報取得手段が取得した荷重情報に基づき、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出する算出手段と
    を備える人工歯根埋入位置算出装置、
    該人工歯根埋入位置算出装置が生成した義歯データを付加した合成データに基づき、前記義歯データが示す義歯及び該義歯の近傍を覆う部材を形成する形成手段と、
    該形成手段が形成した部材に、前記人工歯根埋入位置算出装置が算出した埋入位置に連なる前記ガイド孔を穿孔する穿孔手段と
    を備えるガイド部材製造装置、
    並びに
    前記人工歯根窩洞を穿孔する穿孔装置の穿孔方向を検出する検出手段と、
    該検出手段が検出した穿孔方向が、前記ガイド部材製造装置により製造されたガイド部材が有するガイド孔の穿孔方向であるか否かを判断する判断手段と、
    該判断手段が前記ガイド孔の穿孔方向でないと判断した場合、前記穿孔装置の穿孔方向が誤っている旨を報知する報知手段とを備える検知装置
    を有することを特徴とする検知システム。
  2. 前記義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データが示す歯列における咬合情報を生成する咬合情報生成手段を備え、前記荷重情報取得手段が前記荷重情報を取得していない場合、
    前記算出手段は、前記義歯データ生成手段が生成した義歯データを付加した前記合成データ及び前記咬合情報生成手段が生成した咬合情報に基づき、前記義歯データが示す義歯を支持する人工歯根の埋入位置を算出すべくなしてあることを特徴とする請求項1に記載の検知システム。
  3. 前記義歯データ生成手段は、前記合成データが示す歯列における残存歯に基づき前記義歯データを生成すべくなしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の検知システム。
  4. 前記義歯データ生成手段は、前記合成データが示す歯列における残存歯がない場合、使用中義歯に基づき前記義歯データを生成すべくなしてあることを特徴とする請求項3に記載の検知システム。
  5. 前記算出手段は、前記荷重情報又は咬合情報に基づき、咀嚼時に前記義歯データが示す義歯に加わる荷重方向を算出する荷重方向算出手段を備え、該荷重方向算出手段が算出した荷重方向に基づき、前記人工歯根の埋入位置を算出すべくなしてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の検知システム。
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