JP5616738B2 - サージカルガイド及び埋入孔穿孔具 - Google Patents
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Description
(1)術野がサージカルガイドで覆われて見えないため、ドリルの先端が歯槽骨を切削している部分を目で確認することができないので術者が不安になる、
(2)ドリルとガイドリングの案内孔との間には、わずかな間隙(遊び)が必要であるが、埋入孔の深さに比べ、ガイドリングの厚さが薄いため、この間隙(遊び)によってドリルの穿孔(進行)方向に誤差を生じ、埋入孔が所定の位置及び方向から少なからずズレてしまうおそれがある、
(3)切削中の歯槽骨が、ガイドリング、及びこれを保持する周縁部によって覆われ、さらにドリルによってガイドリングの案内孔が塞がれて、歯槽骨周辺には閉空間が形成されるため、切削中の歯槽骨に対して、冷却水を十分に供給することが困難となり、骨火傷を起こしてしまうおそれがある、
(4)フィクスチャーを埋入する埋入孔を穿孔するには、直径が小さなパイロットドリルから始まって、段階的に直径がより大きな数種類のドリルを使用することになるため、それぞれのドリルの直径に合わせたガイドリングを設けた数種類のサージカルガイドが必要となり、その分、コストがかさむ、
という問題があった。
(1)切削中のドリルの先端を目視することができ、
(2)ドリルの穿孔(進行)方向に誤差を生じにくく、
(3)また、冷却水を十分に供給することが可能で骨火傷を起こしにくく、
(4)しかも、1つで直径の異なる数種類のドリルに対応することができるサージカルガイド及び埋入孔穿孔具(サージカルガイドとドリルとからなる埋入孔穿孔具)を提供するものである。
すなわち、簡単な構成でありながら、
(1)サージカルガイドが術野を覆わないため切削中のドリルの先端を目視することができ、
(2)ドリルの穿孔(進行)方向に誤差を生じにくく、
(3)また、冷却水を十分に供給することが可能で骨火傷を起こしにくく、
(4)しかも、1つのサージカルガイドで直径の異なる数種類のドリルに対応することができ、
(5)さらに、海綿骨の骨密度が不均一であることに由来するドリルの方向ズレを起こさない。
<実施形態1>
I 概要
図1,図2に示すモックアップ30は、患者の口腔内から型取り(印象)して作られた上顎の実寸大の石膏模型である。同図に示す例では、右上の奥歯2本が抜けた状態を示している。奥歯2本が抜けた部分には、各奥歯のほぼ中心に対応する部位にそれぞれワイヤ31,32が植立されている。
(1)まず、CT画像データとシミュレーションソフトによって決定されたフィクスチャー71(図5参照)の埋入位置及び埋入方向と、造影剤入りのCT撮影用テンプレートとの相互の3次元的位置関係をCT画面上で計測する。
(2)次に、この計測値を基に造影剤入りのCT撮影用テンプレートにフィクスチャー71の埋入位置及び埋入方向を3次元的に特定するマークを付けてモックアップ30に装着する。
(3)つづいて、このマークをガイドとしてモックアップ30上に直径1mm程度、深さ10mm程度の孔を2個開け、それぞれにワイヤ31,32を植立する。
これにより、シミュレーションソフトにより決定されたフィクスチャー71の埋入位置及び埋入方向をモックアップ30上のワイヤ31,32の植立位置及び植立方向として表示することができる。言い換えると、患者の口腔内で、これらワイヤ31,32と同一の位置及び方向へ向けて、ハンドピースに装着したドリル41によって患者の歯槽骨62に埋入孔を穿孔すればよいことになる。
II 構造
(1)まず、第2指示部材12の基端部12a、中間部12b、先端部12cをほぼ直角に屈曲させる。
(2)次に、先端部12cを、ワイヤ31,32の先端31c,32cに当てて印を付け、その印の部位に2つの第2位置決め孔12g,12hを穿孔する。
(3)つづいて、これら第2位置決め孔12g,12にワイヤ31,32の先端31c,32cを係合させてテープで固定する。
(4)この状態を維持したまま、基端部12aを即時重合レジン23でガイド部材21の表面に固定する。
つづいて、上述構成のサージカルガイド10及び埋入孔穿孔具の使用手順について説明する。
(1)まず、ガイド部材21を患者の歯部に嵌合させ、ガイド部材21と一体の第1指示部材22を患者の口腔内におけるインプラント埋入予定部位の粘膜63に密着させ、粘膜63上の第1位置決め孔22a,22bの中心に対応する部位に電気メス(不図示)によって印を付ける。
(2)次に、ガイド部材21と一体の第1指示部材22を取り外し、電気メスで印を付けた部位を中心として、その周囲の粘膜63をパンチングにより取り除き、図4に示す円筒状の孔63a,63bを粘膜63に穿設する。
(3)つづいて、この円筒状の孔63a,63bの中心に対応する皮質骨61の骨面にマーキングバーで位置決め窩61a,61bを形成する。
(4)ここで、その後の作業の邪魔になるので、第1指示部材22をガイド部材21から切除する。
位置決め窩61a,61bは、ドリル41によって患者の歯槽骨62にフィクスチャー71の埋入孔を穿孔開始する際のドリル41の先端41aの係合位置(起始点)となる。
なお、上述では、フラップレス法による場合について述べたが、フラップ法により粘膜63を剥離する場合には、(1)において電気メスで付けた2つの印を結ぶ直線に沿って粘膜63に切開線を入れ、頬側の粘膜63のみを剥離した時点で、2つの印の直下に対応する皮質骨61の骨面にマーキングバーで位置決め窩61a,61bを形成する。しかる後に口蓋側の粘膜63を剥離する。
(5)次に、ハンドピースにドリル41を装着し、ドリル41の先端41aを位置決め窩61aの中心に係合させ、これに並行して、ドリル41の基端部41bにある中心孔41dの入口が第2指示部材12の第2位置決め孔12gの直下にくる様にハンドピースの傾きを調節する。この状態を維持したままで、ガイドピン51を第2位置決め孔12gに通してからドリル41の中心孔41dに挿入し、ガイドピン51の基端部51dに設けられたストッパ51a(頭部)が第2指示部材12に当接するまでガイドピン51を押し込む(図4,図7参照)。
このとき、ガイドピン51が挿入されたドリル41は、その先端(ドリル41の先端41a)が位置決め窩61aによって、他端(ガイドピン51の基端部51d)が第2位置決め孔12gによってそれぞれ位置決めされている。そしてこれらの2点は、モックアップ30に植立されたワイヤ31の基端部31bと先端31cとにそれぞれ対応しているので、これら2点を結ぶ位置及び方向は患者の口腔内における、モックアップ30上のワイヤ31の植立位置及び植立方向、すなわちフィクスチャー71の埋入位置及び埋入方向と一致している。言い換えれば、ガイドピン51が挿入されたドリル41の位置及び方向は、患者の口腔内におけるフィクスチャー71の所定の埋入位置及び埋入方向を忠実に再現している。
以上で、ドリル41による埋入孔の穿孔開始準備が完了する。
(6)次に、ハンドピースのスイッチを入れてドリル41を回転させ、埋入孔の穿孔を開始する。ドリル41を、冷却水の注水下で毎分800回転以下で回転させつつ、ガイドピン51に沿ってスライドさせながら、ストッパ41cが皮質骨61に当接するまでドリル41を徐々に穿孔(進行)させる。これにより、骨火傷を起こすおそれなく、所定の深さの埋入孔を穿孔することができる。この際、ガイドピン51が挿入されたドリル41は、位置決め窩61aからその下方の海綿骨60を切削しながら徐々に穿孔を進めていくが、その過程においてもドリル41の切削部41e外周面とガイドピン51の基端部51dが、位置決め窩61a周囲の硬い皮質骨61内周壁と第2位置決め孔12gの2点によってそれぞれ位置決めされつづけるので、ドリル41の穿孔(進行)方向はこれら2点を結ぶ方向のみに限定される。したがって、たとえ海綿骨60の骨密度が不均一であっても穿孔(進行)方向にズレを生じることなく、フィクスチャー71の埋入孔を、所定の位置及び方向へ正確に穿孔することができる。これは、ガイドピン51が挿入されたドリル41を1つの装置と捉えると、この装置の可動範囲は長軸方向への伸縮のみに限られるため、ガイドピン51の基端部51dとドリル41の切削部41eの2箇所をそれぞれ遊びのない保持孔で位置決めすると、この装置の可動範囲は、これら2箇所を結ぶ直線方向への伸縮のみに限定されるからである。
(7)つづいて、使用するドリル41の直径を段階的に大きくして、所定の直径の埋入孔を穿孔する。なお、すでにあけた埋入孔が、より大きな埋入孔を穿孔する際のガイド孔となるので、海綿骨60の骨密度が著しく不均一でない限り、必ずしもすべての大きさの埋入孔穿孔にサージカルガイド10を使用する必要はない。
(8)引きつづいて、以上の操作を、別の埋入孔(図4中では、位置決め窩61bに対応する埋入孔)に対しても同様に行う。
こうして所定数の埋入孔をすべて、所定の位置及び方向へ所定の深さ及び所定の直径で穿孔することができる。
IV 利点
(1)術野を覆わないためサージカルガイドが手術の邪魔にならず、切削中のドリルの先端を目視することができるので術者が不安にならずにすむ。
(2)ガイドリングを使用したサージカルガイドと比べ、はるかに距離のある2点で位置決め(方向づけ)されるので、ドリル41の穿孔(進行)方向に誤差を生じにくい。
(3)切削中の歯槽骨62に対し冷却水を十分に供給することが可能なので、骨火傷を起こしにくい。
(4)1つサージカルガイドで直径の異なる数種類のドリルに対応することが可能なので、その分コストを抑制できる。
(5)海綿骨60の骨密度が不均一であることに由来するドリル41の方向ズレを起こさない。
(6)粘膜63を剥離して骨面を大きく露出させるフラップ法、パンチングによりフィクスチャー71が入るだけの円筒状の孔63a、63bを粘膜63に穿設するフラップレス法の両方に対応している。しかも、フラップ法の場合には、従来のサージカルガイドではガイド全体を骨面に密着させるために周囲の粘膜63を大きく剥離する必要があったが、このようなことがない。また、フラップレス法の場合には、従来のサージカルガイドでは麻酔による粘膜63の腫脹のため(とりわけ遊離端欠損の症例において)ガイドが安定しないことがあったが、このようなことがない。
(7)ガイドリングを使用したサージカルガイドでは、ドリル41の外周がガイドリングの案内孔と接触するため、ドリル41の振動によってガイドがガタついたり、はずれ易かったりしたが、このようなことがない。
(8)ガイドリングを使用したサージカルガイドでは、ドリルをリングの上から挿入する際、患者が大きな口をあける必要があったが、このようなことがない。
(9)構造が簡単なため、容易かつ安価で作製できる。
12 第2指示部材
12a 基端部
12c 先端部
12g,12h 第2位置決め孔
21 ガイド部材
22 第1指示部材
30 モックアップ
30a〜30d モックアップの歯部
31,32 ワイヤ
31a,32a 突出部
31b,32b 突出部の基端部
31c,32c 突出部の先端
40 ハンドピースのコントラヘッド
41 ドリル
41aドリルの先端
41bドリルの基端部
41cドリルのストッパ
41dドリルの中心孔
41eドリルの切削部
51ガイドピン
51aガイドピンのストッパ(頭部)
51bガイドピンの先端
51dガイドピンの基端部
64a〜64d 患者の歯部
60 海綿骨
61 皮質骨
61a,61b 位置決め窩
63 粘膜
71 フィクスチャー
Claims (8)
- デンタルインプラントのフィクスチャーの埋入位置及び埋入方向を、患者の口腔内を模したモックアップ上に植立したワイヤの植立位置及び植立方向で表示したうえで、前記フィクスチャーを埋入するための埋入孔を患者の歯槽骨にドリルで穿孔する際に、口腔内でドリルを前記ワイヤと同一の位置及び方向へガイドするために使用されるサージカルガイドにおいて、
前記モックアップの歯部、及び前記モックアップの歯部に対応する患者の歯部に嵌合される着脱自在なガイド部材と、
前記ワイヤにおける、前記モックアップから突出している部分である突出部の基端部の位置を指し示す第1位置決め孔を有する第1指示部材と、
基端部が前記ガイド部材の表面に固定され、先端部における前記ワイヤの前記突出部の先端に対応する部位に、前記ワイヤの植立方向へ向けて穿設された第2位置決め孔を有する第2指示部材と、
回転軸に沿って穿設された中心孔を有する前記ドリルの前記中心孔に挿入されるガイドピンと、を備え、
ハンドピースに装着された前記ドリルの先端を、前記第1指示部材の前記第1位置決め孔に基づいて患者の皮質骨に形成された位置決め窩に係合させ、これと並行して前記ガイドピンを前記第2指示部材の前記第2位置決め孔に通してから前記ドリルの前記中心孔に挿入することにより、前記ドリルの穿孔方向を位置決めする、
ことを特徴とするサージカルガイド。 - 前記ワイヤの前記突出部の長さが、前記ドリルの長さから、CT画面から計測したこの部位における粘膜の厚さを差し引いた長さである、
ことを特徴とする請求項1に記載のサージカルガイド。 - 前記ガイドピンの直径は、前記ガイドピンが前記ドリルの前記中心孔に挿入された際に、自重では抜けない程度の嵌め合い状態を保持する大きさに設定されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のサージカルガイド。 - 前記ガイドピンは、前記第2位置決め孔に通された際に、前記第2指示部材に当接することで、前記ガイドピンのそれ以上の移動を禁止するストッパをその基端部に有する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のサージカルガイド。 - 前記第1指示部材は、前記ガイド部材と一体に形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサージカルガイド。 - 前記第1指示部材は、前記ガイド部材とは別のガイド部材と一体に形成されていて、全体として位置決め窩形成用ステントを構成している、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のサージカルガイド。 - 回転軸に沿った中心孔が、基端部から先端付近まで穿設されているドリルと、前記ドリルをガイドするサージカルガイドとを備えた埋入孔穿孔具おいて、
前記サージカルガイドが、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のサージカルガイドである、
ことを特徴とする埋入孔穿孔具。 - 前記ドリルは、他の部分より直径の大きなストッパが、その先端から前記埋入孔の所定の深さと同じ長さだけ離れた長軸方向の中間部に設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の埋入孔穿孔具。
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