以下、本発明にかかわる面放電型プラズマディスプレイ装置およびプラズマディスプレイパネルおよびその製造方法を、その実施の一形態を示す図面に基づき具体的に説明する。なお、各図において、同一符号は従来のものと同一または相当のものを示す。
(実施の形態1〜3に共通の部分)
図1は、本発明に係わるプラズマディスプレイ装置100の全体構成を示すブロック図である。同図1に示すとおり、本装置100は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称す)1と、プライミングパルスや書込みパルスや維持パルス等の各駆動信号をPDP1に対して印加する駆動制御部2とに大別される。そして、駆動制御部2は、A/D120、フレームメモリ130、スキャン制御部110、X電極駆動回路141、Y電極駆動回路142およびA電極駆動回路143よりなる。
又、PDP1は、後述するように、第1基板側に設けられる第1表示電極ないしは第1電極たるX電極と、第2表示電極ないしは第2電極たるY電極と、上記第1基板と対向する第2基板側に一対のX、Y電極に対して直交関係を保って交差するように配設された第3電極ないしはアドレス電極たるA電極とを含む、AC3電極面放電型のパネルである。
プラズマディスプレイ装置100の動作について説明する。プラズマディスプレイ装置100は、PDP1と、図示しないフレキシブルプリント配線板を介してPDP1のX、Y、A電極に電気的に接続された駆動制御部2とから構成されている。
駆動制御部2内では、先ず、画像データを与える入力信号VINがA/D120によってアナログデジタル変換され、このA/D120から出力されるデジタルデータはフレームメモリ130に蓄えられる。その後、スキャン制御部110は、フレームメモリ130に蓄えられているデジタル画像信号を呼び出し、それらの信号に基づいて、X電極駆動回路141、Y電極駆動回路142およびA電極駆動回路143の駆動をそれぞれ制御する各種制御信号を、対応する、それぞれの駆動回路141〜143へ出力する。そして、上記制御信号を受けて、上記駆動回路141〜143は、図3(a)〜図3(e)に示すような、プライミングパルス121や書込みパルス122やアドレスパルス124や放電維持パルス123−1、123−2等の駆動パルス信号をPDP1の対応電極へと印加し、これにより、PDP1を駆動する。
今、図1中のA電極線A1〜A3を、各々、レッド色(R色と称す)、グリーン色(G色と称す)及びブルー色(B色と称す)の蛍光を発光する各蛍光体の直下に配設されたものとすると、A電極線A1〜A3の一つがそれぞれX電極線及びY電極線と交差する2点で以て規定される部分が後述する「単位発光領域」をなし、破線で囲まれた領域EGが一画素を与える。
PDP1におけるX、Y、A電極線の配線構成を模式的に示せば、図2の平面図のようになる。即ち、X電極ないしはX電極線XEは全ての単位発光領域について共通の信号線であり、このX電極線XEと各Y電極ないしは各Y電極線YE1〜YEnとは、複数の電極対を構成し、X電極線XEとY電極線YEi(i=1〜n)とから成る各電極対が各A電極線Aj(j=1〜m)と交差して、(m×n)個の単位発光領域が形成されている。
X電極駆動回路141が出力するプライミングパルス121、第1維持パルス123−1、Y電極駆動回路142が出力する書込みパルス122、第2維持パルス123−2およびA電極駆動回路143が出力するアドレス信号124の各パルス及び信号におけるタイミングチャートを、図3(a)〜図3(e)に示す。
尚、上述した図1〜図3の説明は、実施の形態1〜3とそれらの変形例に共通している。
(実施の形態1)
図4は、本実施の形態1に係わるプラズマディスプレイパネル(PDP)1Aの要部断面構造を示す斜視図であり、図1に示す任意の1画素EGにあたる部分を抽出して描いたものである。
図4において、各参照符号は次のものを示す。即ち、11は、例えば透明なガラスよりなる、前面基板である第1基板であり、17は透明な誘電体層であり、18は例えばMgOなどから成る保護層であり、これらの部材11、17、18と後述するX電極XE、Y電極YEによって、いわゆる「前面パネル」が構成される。又、21は背面基板である第2基板、22は、銀ペーストのパターン印刷及び焼成によって形成される、所定幅を有するアドレス電極(A電極)であり、これらの部材21、22と、後述する各部29、50、28によって、いわゆる「背面パネル」が構成されている。そして、前面パネルの外周部と背面パネルの外周部とが貼り合わされ、その後、封止されることにより、PDP1Aが形成される。
尚、以下の説明においては、原則として、誘電体層17と保護層18とを併せて、単に「誘電体」と称す(この呼称は後述する各実施の形態2〜3とそれらの変形例についても原則として援用される)。
28Rは、Xe原子が発する所定波長の紫外線を吸収して赤色(R)の蛍光(所定波長の可視光)を発する蛍光体、28Gは緑色(G)の蛍光を発する蛍光体、28Bは青色(B)の蛍光を発する蛍光体であり、蛍光体28R、蛍光体28Gおよび蛍光体28Bを総称して蛍光体28と称す。
29は可視光を反射しうる材質から成るストライプ形状の第1隔壁、30はペニングガス等の、Xe原子を含む放電ガスで満たされた放電空間、41はネサ膜等で構成される帯状透明導電膜(以下、透明電極と称す)、42はCr−Cu−Cr又はCr−Al−Cr等の多層膜から成る帯状金属膜(以下、金属電極と称す)、EGは1画素である。画素EGは、赤(R)、緑(G)および青(B)の各色をそれぞれ発光する3つの単位発光領域EUR、EUG、EUB(これらを総称して単位発光領域EUと称する)より構成される。
Sは第1基板11の外面(第2主面)の一部をなす表示面、XEおよびYEは、第1基板11の内面(第1主面)上に互いに平行に所定の間隔を有して配置された、第1方向D1に延在するX電極およびY電極であり、このX電極XEおよびY電極YEは、共に、透明電極41(主電極)およびその抵抗軽減化のための金属電極42(副電極)より構成される。50は、第1方向に延在して第1隔壁29と交差する第2隔壁であり、第1隔壁29と同一材料(例えば、ガラスペーストを母材とする)から成り、この実施の形態における特徴部分である。
尚、PDP1Aの各電極XE、YE、22とその駆動制御部2の対応部分の出力端とは、図示しないフレキシブルプリント配線板で以て互いに電気的に接続されている。
以下では、PDP1Aのパネル構造と放電の状態とについて、より詳細に述べる。尚、PDP1Aの駆動のための回路構成と駆動方法とについては、既述したとおりである。
先ず、PDP1Aの第1基板11の内面ないし対向面上には、表示ライン数n(図2参照)にあたる数、即ちn個の電極対EPが、各表示ライン間隔に応じて所定の間隔を保って、第1方向D1に延長形成されている。ここで、各電極対EPは、互いに平行に第1方向D1に沿って配設された第1、第2表示電極たるX電極XEおよびY電極YEとから構成される。そして、X電極XEおよびY電極YEは、既述したように、共に、透明電極41と金属電極42とから構成され、表示面S側の第1基板11の内面上に配置されている。
更に、X電極XEおよびY電極YEを被覆するように、第1基板11の内面上に透明な誘電体層17が形成され、この誘電体層17の表面上には、保護層18が全面的に形成されている。この保護層18は、(1)放電の際に発生するイオンの衝突に起因する誘電体層17の劣化を防止し、(2)放電の際の電子放射を円滑に行なわせて放電を安定化すると共に、(3)放電空間30との界面をなす、その表面内に、互いに極性が異なる第1壁電荷と第2壁電荷(これらを壁電荷と総称する)とを蓄積するという機能を担う。
一方、第2基板21の内面(第1主面ないし対向面)上には、互いに所定の間隔を以て第2方向D2に並列配置されたm個(図2参照)のA電極22が形成されている。従って、上記した一対のX及びY電極XE、YEと、これらの電極XE、YEに対して直交関係を保って交差するように対応付けられる一本のA電極22とによって、一つの単位発光領域EUは対応ないしは規定付けられる。
更に、第2基板21の内面上には、各A電極22を挟み込むように、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延び、且つ、その頂上部(第1頂上部)29Tが保護層18の上記表面の一部分に当接する、互いに並列配置された(m+1)個のストライプ状の第1隔壁29が形成されている。更に、第2基板21の内面において第1隔壁29が形成されている部分以外の部分上には、各A電極22をまたがって乗り越すように、第1方向D1に平行な方向に延びた、互いに並列配置された、(n+1)個のストライプ状の第2隔壁50が形成されている。この第2隔壁50の頂上部(第2頂上部)50Tは、保護層18の表面と当接している。即ち、第2基板21の内面からの第2頂上部50Tの高さhが第1隔壁29の第1頂上部29Tの高さHとほぼ同一となるように(h≒H)、あるいは、第1隔壁29の第1頂上部29Tを含む仮想的な平面と、第2隔壁50の第2頂上部50Tを含む仮想的な平面とが略一致するように、第1及び第2隔壁29、50は互いに交差して形成されている。
なお、基本的に各放電空間30は、図4に示すように、ほぼ、互いに隣り合う両第1隔壁29、29の対峙する第1及び第2側面部29W1、29W2、隣り合う両第2隔壁50、50の対向し合う第3及び第4側面部50W3、50W4、第1基板11の内面において隣り合う上記第1隔壁29、29で挟まれた部分および第2基板21の内面において隣り合う上記第1隔壁29、29で挟まれた部分の、それぞれによって規定される。従って、この場合には、放電空間30は略直方体状の空間となる。
また、各単位発光領域EUは、隣接し合う両第1隔壁29、29の各対向し合う第1、第2側面部29W1、29W2と、隣接し合う両第2隔壁50、50の各対向する第3、第4側面部50W3、50W4とによって規定される長方形の大きさに、ほぼ一致して区画される。
並列された隣り合う第1隔壁29、29で挟まれた第2基板21の内面上には、銀ペーストのパターン印刷と焼成とによって形成された所定幅のA電極22が配置されており、隣り合う第1隔壁29、29および隣り合う第2隔壁50、50の各頂上部29T、50Tおよびその近傍を除いて、隣り合う第1隔壁29、29の各対向する第1、第2側面部29W1、29W2、隣り合う第2隔壁50、50の各対向する第3、第4側面部50W3、50W4、隣り合う第1隔壁29、29で挟まれた第2基板21の内面およびA電極22を全て覆い尽くすように、略枡形(箱形)状の蛍光体28が設けられている。すなわち、各単位発光領域EUの放電空間30において発生した放電を包み込むように、蛍光体28が設けられている。
図5及び図6は、図4の第1基板11又は図61の第1基板211の上面から、即ち、表示面S(SP)側から放電空間を眺めたときの要部を模式的に示す透視図である。この内、図5は、本実施の形態における、単位発光領域EU、X電極XE、Y電極YE、第1隔壁29および第2隔壁50の配置関係の概略を示し、図6は、例えば図61に示した従来の装置における、単位発光領域EUP、X電極XEP、Y電極YEPおよび隔壁229の配置関係の概略を示している。なお、図5、6においては、第1隔壁29、隔壁229または第2隔壁50を、斜めの細かいハッチングで概略的に表している。参照符号Dは表示ラインの中心である。
また、第2隔壁50は、第1隔壁29と同様に、白色顔料を混入した低融点ガラスによって形成されるものであり、個々の第2隔壁50の対向する第3、第4側面部50W3、50W4上には、蛍光体28が付着している。そして、図6に示す従来の装置では、第2方向D2に隣接し合う単位発光領域EU同士が、隔壁によって隔離されていないため、放電空間230が第2方向D2に連続して形成されている。しかし、本実施の形態においては、同じく蛍光体28が付着された第2隔壁50によって、図5に示すように、放電空間30が第2方向D2に実質的に断続して存在している。
本実施の形態のPDP1Aはこのような構成を有するので、次のような諸々の利点が得られる。それらの利点を、図7に示した模式図を用いて説明する。同図7は、図4に示す断線I1−I2に沿ったPDP1Aの縦断面図であり、PDP1Aの要部断面構造を示すと共に、紫外線の自己吸収と放射の様子とを模式的に示している。同図7の例示から理解されるように、各放電空間30は殆ど完全な閉空間である。
(1) 3電極面放電型PDPの長所である、イオン衝撃(ion bombardment)による蛍光体28の劣化防止効果を発揮させることができると共に、
(2) 放電の繰り返し回数が増えることによって紫外線の強度損失がより大きくなる前に、または、紫外線の伝搬、拡散の進行距離が長くなって紫外線の強度損失がより大きくなる前に、隣り合う第1隔壁29、29の各対向する第1、第2側面部29W1、29W2に付着する蛍光体28及び、隣り合う第2隔壁50、50の各対向する第3、第4側面部50W3、50W4に付着する蛍光体28に、特に後者の蛍光体28に、紫外線を照射することが可能となる。このため、蛍光体28に吸収される紫外線の照射量が急増することとなり、紫外線の損失が大きくなる前に蛍光体28への紫外線入射量を増加させることが可能となり、紫外線から可視光に変換する際の発光効率が確実に改善され、表示光の輝度の向上が図れる(既述の問題点1)の克服)。
(3) 併せて、従来装置のような連続的にストライプ状に蛍光体が形成される場合には無い効果が得られる。即ち、本PDP1Aでは、蛍光体28より発生した蛍光が、(イ)可視光にとって白色である、つまり可視光を吸収しない蛍光体28の表層において反射されると共に、(ロ)実質的に枡形(箱形)状として形成された隔壁(それは白色のような明色を帯びる)の表面により反射される、すなわち、隣り合う第1隔壁29、29の第1、第2側面部29W1、29W2での反射に加えて、隣り合う第2隔壁50、50の各対面する第3、第4側面部50W1、50W2の表面においても反射が起こることになり、発生した蛍光の当該単位表示領域EU外への漏れだしを完全に防ぐことができる。従って、蛍光の漏れ出しによる色バランスへの影響を効果的に抑え、色にじみの殆ど無い、くっきりとした画像が得られ、画質を向上させることもできる(既述の問題点2)の克服)。
尚、上述した構成を採用することで、発明者らは、第2隔壁が存在せずストライプ状の蛍光体を有する図61に示したような従来構造のものと比較して、5%〜20%程度の輝度の向上を図ることが可能であることを、見い出している。
(4) また、第1隔壁29と同一高さ・同一材質の第2隔壁50を設けることによって、第2方向D2に互いに隣接する画素同士における、互いに隣り合う表示ライン間に発生していたセル間放電を完全に防止することもできる(既述の問題点3)の克服)。
すなわち、面放電型のプラズマディスプレイ装置においては、第1基板11上に配置されたX電極XEおよびY電極YEの間で放電が起こるのであるが、この放電形態は第1基板11の内面に沿って生じる放電であるため、印加電圧を比較的高くしたり、又は電極間ピッチを比較的狭くしたりする場合に生じる、セル間放電を、上記の第2隔壁50の存在によって確実に抑えることができる。
すなわち、第2隔壁50を第2方向D2に並ぶ隣り合う画素EG、EG間に存在させて両画素EG、EGを物理的に完全に隔離することによって、第2方向D2に進行する励起された、原子あるいは分子を、第2隔壁50の第3、第4側面部50W3、50W4に衝突させて基底状態に戻すことが可能となる。これにより、エネルギの損失が起こり、励起された原子等が隣りの画素EGの領域にまで侵入して放電漏れを発生させるのを完全に防止することができる。このように、第2隔壁50を設けるという発想は、結果的に放電電流が流れにくくなることを逆に積極的に利用するものである。
さらに、第2隔壁50によってセル間放電を確実に抑えることができることによって、印加電圧を高くすることができるため、表示のための放電をより確実に発生させることができると共に、電極間ピッチを狭くすることができるため、画素密度を向上させた高精細のプラズマディスプレイ装置を得ることができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1にかかるPDP1Aにおいては、第2隔壁50の高さhを第1隔壁29の高さHとほとんど同程度か同等のものにして、1)紫外線の損失、2)発光もれ及び3)放電もれをほぼ完全に又は完全に抑えるように構成している。
しかし、各単位発光領域EUの周囲ないしはその放電空間が、隣り合う第1隔壁29、29の第1、第2側面部29W1、29W2および隣り合う第2隔壁50、50の第3、第4側面部50W3、50W4によって完全に囲まれてしまうため、プラズマディスプレイパネルの製造の際に排気及び放電ガスの封入を実行することが困難になってしまう場合が生じうる。
すなわち、パネルを製造する際には、互いに貼り合わされた第1基板11および第2基板21の間の各放電空間30を、一旦排気する工程(以下、排気工程と称す)と、その後、放電ガスを封入する工程(以下、封入工程と称す)とが必要となる。この排気工程における排気抵抗が高いと排気が不十分となり、続く封入工程において不純ガスの存在を許すことになってしまい、信頼性が低くなってしまうという問題を引き起こすことになる。
そこで、第1、第2隔壁29、50によって互いに仕切られた、隣り合った両放電空間30、30の一方から他方へと気体が流れ込みうるだけのスペースないしは流路を設けることが必要となる。この場合、両隔壁29、50の一方の高さを他方の高さよりも小さくすれば、上記の流路を確保することが出きそうである。しかし、第1隔壁29の高さHを第2隔壁の高さhよりも小さくすることは、一方の単位発光領域で生じた励起原子等や蛍光や紫外線が第1方向D1に隣り合った異色の単位発光領域側へと伝播してしまうという問題点を惹起するため、この解決策を採用することは好ましくない。従って、第2隔壁50の高さhを第1隔壁29の高さHよりも小さくすることにより(h<H)、流路を確保するという着想が浮上してくる。
しかしながら、第2方向D2に対して流路を設定すると、なる程、そのことにより排気・封止工程で生ずる当該問題点を解決することはできるけれども、実施の形態1において提案された第2隔壁50を設けるという発想の意義ないしは効果が損なわれてしまうというジレンマに行き当たってしまう。従って、この、(A)既述した問題点1)〜3)の克服と、(B)良好な排気・封止の実現という、互いにトレードオフの関係にある、大別して2つの問題点ないしは目的を同時に満足させることが必須となるのである。
それでは、両目的(A)、(B)の調和点として、第2方向D2に沿う流路の排気コンダクタンスをいかに設定し、かつ、いかなる範囲でコントロールするべきであろうか。その答は、直ちに一義的に導出されるものではなく、深い考察が必要となる。
(C)更に、製造時の観点からのみならず、PDP1Aの駆動時においても、特にプライミング放電の面からみて、実施の形態1のPDP1Aには新たなる問題点が生じている。この点を、以下に詳述する。
一般に、AC型PDPの駆動サイクルは、消去動作−書き込み動作−維持動作より構成される。この駆動サイクルの消去動作には、プライミング放電動作(パネル全面にわたって各放電空間に同時に放電を行う動作)が含まれている。
このプライミング放電を発生させるためには、維持動作時に印加する、維持電圧よりも大きな電圧(通常、維持電圧の2倍弱の電圧)を、プライミングパルスとして、10〜20μsec程度、表示電圧間に印加する。これにより、プライミング放電(種火放電)が各放電空間30毎に同時に発生する。これは、その後の書き込み動作を確実なものとするためである。
例えば、図61に例示した従来の構成においては、プライミング放電が発生すると、第2方向に、励起された原子、分子、電子(以下、励起粒子群と称す)が拡散し、この励起粒子群の拡散がプライミング放電の伝搬を行いやすくするという役目を担っている。
しかしながら、本発明の実施の形態1においては、従来の構成のものより、さらに輝度等を向上させるという目的から、第1隔壁29に交差する、蛍光体28が付着された、第1隔壁29と同質材料からなり、かつ同一高さの第2隔壁50を、第1方向D1に延在させるという、構造を採用した。これにより、上記の目的(A)が達成されるが、その反面、上述の励起粒子群の拡散が、閉じた放電空間30内に限られてしまうため、第2方向における励起粒子群の拡散が有していた「プライミング放電の伝搬性を促進する機能」が阻害されてしまうことになる。
そこで、かかる観点からも、第2隔壁50の高さhを第1隔壁29の高さHよりも小さくすることが必要となってくる。しかし、この場合にも、本目的(C)と上記目的(A)とは互いにトレードオフの関係にあるため、両目的(A)、(C)をいかに調和させるか、そのための適切な両隔壁29、50の高低差の範囲いかんが問題点として浮上してくるのである。この点の解答も、直ちに導出しえるものではないことは明らかである。特に、プライミングパルスを発生させる駆動ドライバ、本例では共通電極たるX電極XEにプライミングパルスを印加するX電極駆動ドライバ(図1の回路141)の構成をも視野に入れて、考察する必要性がある。とりあえず、ここでは、プライミング放電という観点から新たな問題点(C)がPDP1Aについて生じてしまうという点を指摘することに止め、本問題点(C)の克服については、上記の問題点(A)と(B)との調和という先の課題を先に検討した上で、その後に説明することにする。
この実施の形態2は、実施の形態1のPDP1Aを、その利点を出来る限り発揮させつつ、そこで生ずる上記の問題点(B)を克服するという観点から、改良している。その改良点は、第2隔壁50の高さを第1隔壁29のそれよりも低く形成して、第2方向D2に沿って流路を設けるという点にある。この点を、図8の斜視図に示す。
同図8は、図4と同様に、図1の任意の1画素EG分の構成を抽出して描いたものであり、図8中の符号で図4中の符号と同一のものは、同一のものを示す。同図8においては、第1隔壁29の高さを記号Hmainとして表し、第2隔壁50の高さを記号Hsubとして表している。いずれの高さHmain、Hsubも、第2基板21側の蛍光体28が付着している内面から、当該隔壁29、50の第1、第2頂上部29T、50Tまでの距離で与えられる。
図8に示される流路の断面形状を、図9に拡大して模式的に示す。ここで、「流路」とは、次の様に定義される。即ち、互いに隣り合う第1隔壁29、29の対面し合う第1、第2側面部29W1、29W2の各一部と、第2隔壁50の第2頂上部50Tと、上記第1隔壁29、29の両第1頂上部29T、29Tと当接(面接触、線接触を含む)する保護層18の表面とによって規定される空間を、気体の「流路」と呼ぶ。そして、この気体の流路と内接する四角形(それは長方形又は正方形)の内で、面積が最大となる四角形を、図9に示す流路断面FCSとして定義する。
このように定義すると、図9に示す流路断面FCSは、(後述する、縦寸法a)×(横寸法b)で与えられる面積を有し、流路の奥行きは第2隔壁50の幅寸法Lで以て与えられる。
ここで、排気のし易さを、上記流路の排気コンダクタンスCによって表す。この排気コンダクタンスCは、一般的に、以下に示す式、即ち、数1として表される。
但し、数1では、縦寸法aを(Hmain−Hsub)として表しているが、同寸法aは、排気工程および封入工程における気体の流路断面FCSにおける、第1基板11上の保護層18の表面から第2隔壁50の上面までの間隔に当たる。なお、各寸法a、b、Lの単位は、それぞれMKSA単位系のmmで以て表され、従って、形状因子βの単位はmm2で表現される。
上述の排気コンダクタンスCの値が大きければ大きいほど、排気工程において到達する真空度は高くなる。逆に排気コンダクタンスCの値が低ければ低いほど、到達する真空度も低くなる。従って、残留する不純ガスの量を少なくするためには、高い真空度を確保しなければならない。また同様に、封入工程においても、排気コンダクタンスCの値が大きいほど、十分なガス圧にまで放電ガスを封入することが可能となる。
すなわち、第2隔壁50の第2高さHsubを第1隔壁29の第1高さHmainよりも低くすればするほど、寸法aが大きくなるので、形状因子βの値が大きくなって、排気コンダクタンスCの値を大きな値にコントロールすることができ、排気工程および封入工程が行い易くなるとともに、不純ガスの残留を抑えて信頼性のよいPDP1Bを得ることができる。
しかし、既述した通り、高低差(Hmain−Hsub)が大きくなる程に、第2隔壁50の存在によって得られた効果は減少してゆく。従って、第2隔壁50を設けたことによるメリットをいかにして有効に残すことができるかが、ここでのポイントである。
そこで、既述した問題点1)〜4)の内でいずれの問題点を重点的に解決すべきかが、先ず検討されなければならない。この点、問題点1)の起因となっている紫外線の自己吸収と放電との繰り返しは、第1隔壁29に比して低い第2隔壁50の第2頂上部50T上に付着された蛍光体28によって紫外線の吸収を行わせることにより、実施の形態1の効果の減少を出来る限り抑えることが可能である。又、問題点2)の起因となっている紫外線の保護層18による吸収による損失については、第2隔壁50の幅寸法Lのコントロールによってや、第2頂上部50T上に付着する蛍光体28による紫外線の吸収によって、上記の高低差を設けたことに伴う当該損失の増大化を出来る限り抑制することも可能かと考えられる。更に、問題点4)の起因となる放電もれについては、第2隔壁50の幅寸法Lを大きくとることによって励起原子等と第2隔壁50との衝突を多発させることで、放電もれ抑圧の効果の減少を出来る限り抑えることも可能である。しかし、問題点3)の起因をなす発光もれについては、実施の形態1では、第2隔壁50とそこに付着された蛍光体28とによって、閉空間とされた放電空間30内へ向けて蛍光を反射させることにより効果を奏していたため、図8のようにPDP1Bを構成した場合には、第2隔壁50と、当該隔壁50に付着された蛍光体28からの蛍光との反射による効果が減少する。
従って、先ず第1次的に重視すべきことは、高低差(Hmain−Hsub)をもたせる場合においても輝度の低下を出来る限り抑止できるようにすることである。そのためには、表示光の輝度と排気コンダクタンスとの相互関係に着目して、隔壁29、50間の高低差(Hmain−Hsub)のとりうる範囲を第1次的に決定付けることが求められる。
そこで、発明者らは、図8の構造を有するPDP1Bの寸法を様々に変えて製作した試験品を準備し、それらの試験品に関する形状因子βの値についての性質をテストすることにより、種々の検討を重ねた。その結果、形状因子βが1.5×10-4(単に1.5E−4とも称す)mm2に等しいか又はそれよりも大きければ、再現性良く良好な排気および封入状態を確保できるため放電状態が安定し、形状因子βを1.5E−4mm2に近づける程に表示光の輝度の減少を出来る限り抑えることができる一方、逆に形状因子βがその値よりも小さな値の場合には、残留する不純ガスの影響が強く現れ、放電電圧のばらつきや放電不良(放電しない、放電の持続性がない等)が多く発生してしまうことを、本願発明者らは見い出した。従って、形状因子βを1.5×10-4mm2以上に設定すれば、再
現性良く良好な排気および封入状態を確保できる結果、放電状態が安定したPDP1Bを得ることができる。
図10は、以上の結果を与える、実測データから得られる特性曲線を示している。即ち、図10は、形状因子βと表示光の輝度(パネル全体の輝度)との関係を示す一つの例である。
図10の横軸は形状因子βの対数値を示しており、その縦軸は、第2隔壁50が存在しない場合のPDP全面の輝度を基準とするPDP1Bの全面についての輝度の大きさ(輝度比)を示している。従って、形状因子β=0のときの輝度の値は1となる。
図10を参照して説明すると、形状因子βの値が1.5×10-4mm2よりも
小さい場合には、上述したように排気工程および封入工程において適切な排気および放電ガスの封入が行えないために、放電状態が悪化してしまう。また、形状因子βの値が極大値を与える1.5×10-4mm2よりも大きくなるにつれて、輝度の大きさが次第に減少する。そして、発明者らは、形状因子βの値が1.5×10-4mm2の値のときに、輝度が最大値となることを、検討の結果見い出したのである。
また、図11、図12は、セル間放電の発生を説明するための図である。特に、図12においては、横軸をパラメータγで以て表している。このパラメータγは、隔壁高さ比γ=Hsub/Hmain(第2隔壁50の高さ/第1隔壁29の高さ)として与えられる。なお、図11は、第2隔壁50がないと仮定したときの特性曲線を示す。
図11を参照すると、隣接画素間における隣り合うX電極XEとY電極YEとの間の距離(ギャップ)が大きくなるにつれて、セル間放電を発生させるときの印加電圧が比例的に大きくなる。従って、例えば、画素密度を増大するときには、X電極XEとY電極YEとの間の距離(ギャップ)を小さくするにつれて印加電圧を小さくすれば、セル間放電が発生しにくいPDPを達成することができると言える。しかしながら、印加電圧が小さくなると、PDP1Bを駆動するための電圧マージンを大きくとることができなくなり、多様な駆動を行うことができなくなってしまい、現実的には、高精細なプラズマディスプレイ装置を得ることが難しいとも言える。従って、この方法で以て高精細化要求に対応するのは、現実的でない。
他方、第2隔壁50が存在するときの特性曲線を与える図12を参照すると、パラメータγが大きければ大きいほど(高低差がより小さくなる程)、セル間放電が発生するまでの印加電圧が大きくなり、実施の形態1のPDP1Aのようにパラメータγが1となるときは、隣接画素間におけるX電極XEとY電極YEとが空間的に殆ど断絶されるため、セル間放電を引き起こすときの印加電圧は非常に高いものとなる。すなわち、この場合には、セル間放電が全く生じないことが理解される。
従って、上述した排気行程、封入工程を含むPDPの製作プロセスを用いてPDP1Bを製作する際には、形状因子βの値として1.5×10-4mm2以上の値を確保できるように、第2隔壁50の第2高さHsubの値をできるだけ大きく設定すれば、(1)輝度の向上を図りつつ、(2)印加電圧における電圧マージン(それは、セル間放電を発生させてしまうときの印加電圧で以て限定付けられる)をより十分なレベルにまで確保でき、(3)併せて、セル間放電も十分に防止可能であるという、PDP1Bを得ることができる。
これらの点を理解しやすくするためにも、図13に模式的な縦断面図を示す。同図13は、図7と同様の表現による縦断面図である。
なお、採り得る形状因子βの値の最大値は、第2高さHsubが0となる時の値、すなわち、(Hmain・b)2/{(Hmain+b)・L}である。従って、適切な形状因子βの値の範囲は、1.5×10-4mm2≦β<(Hmain・b)2/{(Hmain+b)・L}なる関係を満足する範囲内となる。
もちろん、実施の形態1の説明においても述べたが、最終的に第1基板11と第2基板21とを張り合わせ、それぞれの基板の周辺部を、低融点ガラス等で封止することによってパネルが完成されることになるが、所定の放電ガス圧の雰囲気の中で封止を行うことにより、上述した構成のプラズマディスプレイパネルPDP1Bを得るようにしてもよいことは言うまでもない。
以上より、形状因子βが上式の関係を満たすように高さHsubを設定した、図8に示すようなPDP1Bを実現することにより、次の効果が得られる。
(i) 形状因子βを所定の値以上にすることによって、放電状態を良好とすることができ、かつ形状因子βを所定値(1.5E−4mm2 )付近に設定することで、最も高い輝度を得ることができる。その他、上記の効果(2)、(3)も得られる。
(ii) 蛍光体28を形成する場合、通常は、コスト上の問題から、スクリーン印刷を採用する場合が多い。このスクリーン印刷を用いて蛍光体ペーストを塗布する際に、もし第1隔壁29および第2隔壁50の高さが同じだとすると、第2方向D2に沿って蛍光体ペーストを塗布していくので、塗布方向に対して第2隔壁50の第2頂上部50Tが障害物の如く位置することとなり、第2頂上部50Tの上に蛍光体ペーストが付着してしまうことになる。そして、蛍光体ペーストの塗布完了後に、これを乾燥、焼成すると、第2隔壁50の第2頂上部50Tに蛍光体ペーストが載った状態で焼成が行われることになり、第2隔壁50の実質的な高さが、第1隔壁29(この頂上部29T上には蛍光体28が載っていない)よりも高くなってしまう。このように第2隔壁50の実質的な高さが高くなると、例えば赤色(R)の単位発光領域において放電が発生した際に、隣接の異色の光を発する単位発光領域(緑(G)や青(B))にも放電が及んで(拡がって)しまい、隣接する単位発光領域の壁電荷の状態を変化させてしまうこと(放電の干渉)によって、正常な表示が行えなくなる。
そこで、図8のPDP1Bのように、あらかじめ第2隔壁50の高さHsubを低く形成することによって、蛍光体28を形成する際に生ずる第2隔壁50の高さの実質的な上昇分を高低差(Hmain−Hsub)で以て吸収してしまうことができ、上述の状況を未然に回避することができる。
尚、排気コンダクタンスCを規定する、排気工程および封入工程における気体の流路断面FCSの形状は、図9に例示したものに限定されるものではなく、様々な形状のものが製作プロセスに応じて形成される。その幾つかの例を、形成プロセスごとに、図14〜図20に示す。
イ)図14は、後述の実施の形態7で説明する製作プロセスで以て隔壁29、50を形成した場合である。
ロ)図15は、例えば多数回のスクリーン印刷を行って形成した場合に、第1隔壁29の第1頂上部29Tが逆U字状に丸くなってしまうときの、流路断面FCSの形状例を示す。
ハ)図16は、多数回のスクリーン印刷を行って形成した場合に、第1隔壁29の断面形状がΩ字状となってしまうときの、流路断面FCSの形状例を示す。
ニ)図17は、例えば後述する実施の形態6におけるサンドブラスト法で隔壁29、50を形成した結果、第1隔壁29の断面が台形状となり、且つ第2隔壁50が直線的な第2頂上部50Tを持つに至ったときの、流路断面FCSの一例を示す。
ホ)図18は、例えば上記ニ)で述べたサンドブラスト法で隔壁29、50を形成した結果、第2隔壁50が凸状の第2頂上部50Tを持つに至ったときの、流路断面FCSの形状例を示す。
ヘ)図19は、同じくサンドブラスト法で隔壁29、50を形成したときに、第2隔壁50の第2頂上部50Tが波立つときの、流路断面FCSの形状例を示す。
ト)図20は、同じくサンドブラスト法で隔壁29、50を形成したときに、第2隔壁50の第2頂上部50Tが凹状となるときの、流路断面FCSの形状例を示す。
以上において、イ)〜ヘ)の場合には、流路断面FCSの寸法aは(Hmain−Hsub)で以て与えられる(寸法Hsubを第2隔壁50の高さの最大値とする)。しかし、ト)の場合には、寸法aを(Hmain−Hsub)に等しいと定義すると、最大面積を有する内接四角形の寸法aとその定義上の値との間には若干の不一致が生ずるが、この差異は実際的に問題とならない(許容できる程度)。
上述したイ)〜ト)については、第1隔壁29、第2隔壁50のそれぞれの形態に応じて形成される断面形状FCSが、理想的には長方形または正方形によって規定され、より現実的には長方形または正方形の形状に近似した空間として規定されるので、この点を考慮して、形状因子βにおける、各寸法a、b、Lの各値を定めれば良い。
この場合、上述したイ)〜ト)における排気コンダクタンスの規定条件を、各図14〜図20中、破線に示すように、気体の流路に内接する、とりうる最大の長方形または正方形(総称して、四角形と定義する)の面積が、1.5×10-4mm2以上であれば、図10に関して述べた効果と同質の効果が得られる。
次に、既述した問題点(c)を克服するためには、第2隔壁50の高さHsubをいかに決定付ければ良いかを、検討する。
特に、第1隔壁29の第1頂上部29Tは、互いに発光色の異なる隣り合う単位発光領域のそれぞれで生じる放電の分離を確実なものとするために、ほとんど保護層18に当接するように構成されており、励起粒子群が、第1方向D1に隣接する単位発光領域間で拡散することは無い。
ここで、各放電空間30においてガス放電を発生させるに際して、予めその放電空間30内に励起粒子群が存在するときには、ガス放電の生じる確率が大幅に増大すると共に、短時間にその放電が拡がる。従って、上述のようなブライミング放電を各放電空間30において行わせる場合には、第2隔壁50を第1隔壁29よりも低く形成して、第2方向D2に励起粒子群の拡散を行わせることが、非常に有効である。
そこで、本実施の形態2に係るPDP1Bでは、図8に示されているように、第2隔壁50の高さを第1隔壁29のそれよりも低く形成している。これにより、第2方向D2における励起粒子群の拡散を図ることが可能となり、輝度の向上と共に、プライミング放電を確実に生じさせることができる。
しかし、ここで問題となるのは、両隔壁間の高低差(Hmain−Hsub)をいかなる範囲内でコントロールすれば良いかである。
この点に関し、発明者らの試験を通じての検討によれば、第1隔壁29および第2隔壁50の双方を設ける際に、数2で与えられる条件をもって行うことが非常に有効であることを見出した。
数2で示されるパラメータKは、放電発生の起こり易さを決定する、流路空間形状に依存するパラメータである。そこで以下、このパラメータKを放電形状因子と称する。
但し、放電形状因子Kを表す数2では、簡単化のために、aを(Hmain−Hsub)と定義しているが、ここでは、放電空間30における第1基板11上の保護層18から第2隔壁50の上面までの間隔である。なお、a、b、Lの単位はそれぞれμm、pの単位はTorrである。従って、放電形状因子Kの単位はμm/Torrで表される。
図21は、その縦軸にプライミング放電のために必要な印加電圧(以下、プライミング電圧と称す)をとり、その横軸に放電形状因子Kをとった場合において、PDP1Bの全放電空間に確実なプライミング放電を起こしうる最小のプライミング電圧が、放電形状因子Kの値によってどのように変化するかを表したものである。
図21を参照して説明すると、放電形状因子Kが0.03μm/Torr以上の範囲内では、図61に示した従来構造の場合に得られる、通常のプライミング電圧Vp(通常は、それは維持電圧Vsの2倍以下で与えられる)程度内に、本装置で必要なプライミング電圧を設定することができる。しかし、放電形状因子Kが0.03μm/Torrよりも小さくなると、本装置で必要とされるプライミング電圧が急激に上昇する。このように、必要なプライミング電圧が急激に上昇すると、後述する回路構成上の問題点が生ずると共に、全放電空間の内の局所的な放電空間に大きな放電電流が流れてしまい、放電空間の性能の安定性が図れなくなってしまうという問題点が生ずる。この点をより詳述すれば、次の通りである。
放電形状因子Kが0.03μm/Torrの状態は、図21のVp−K曲線の変曲点にあたり、放電形状因子K=0.03μm/Torrのときに必要なプライミング電圧は、通常のプライミング電圧Vsの値(例えば百数十V程度)の2倍程度であり、例えば300V程度の電圧値となる。
ここで、放電形状因子K<0.03μm/Torrに対応する領域、すなわち、例えば300V程度を越えるようなプライミング電圧が必要である領域における場合には図21に示されるように、所要とするプライミング電圧の値が増大してしまい、以下のような不具合点が発生する。
イ) プライミングの効果は、イオンや電子の拡散の状態に大きく影響を受けるが、プライミング電圧が高すぎると、i)暗輝度が上昇してしまったり、ii)パネル中の表示領域外(例えば蛍光体が塗布されていない部分)にある電極の延長部分間における放電が発生しやすく(この場合には、例えばNeによるオレンジ色の発光が生じる)、また、iii)パネルと外部のドライバとを接続するためのフレキシブルプリント配線板(以下、FPCと称す)の金属端子を構成する金属原子が、当該金属端子間の、FPCの絶縁体中に拡散してしまい、FPCの絶縁体が導通性を帯びてしまう(極端な場合には、その間でショートが発生する)など、PDPの動作安定性や長寿命化に障害をきたす。
ロ) 通常のFET素子の耐圧は500V程度であるところ、図1の各駆動回路141、142等で用いられている、必要なプライミング電圧が300V程度を越えるときには、安全率として、必要な1.5倍を見込むことが困難になる。その意味で、必要なプライミング電圧が300V程度を越えないようにする必要がある。
ハ) さらに、図4に示す誘電体層17の耐電圧(それは通常500V程度)程度に対する安全率も見込めなくなってしまう。
ニ) 耐電圧500Vを越えるようなFET素子は高価であり、そのようなFET素子を使用することはコストの上昇を招く。
従って、放電形状因子K≧0.03μm/Torrとすることによって、上述のイ)〜ニ)のような不具合点が発生しない、動作が安定な、耐久性に優れるプラズマディスプレイ装置が得られる。
数2において、aは200〜300μmの範囲内で、bは10〜50μmの範囲内で、pは、Xeを1〜15mol%含有するNe−Xeガス(ペニングガス)の気圧300〜600Torr、Lは50〜500μmの範囲内で、いずれの値の組合せの場合にも、放電形状因子K≧0.03μm/Torrを満足すれば、プライミング電圧が安定し、輝度の向上と共に、プライミング放電に続く書き込み動作が良好になる。
なお、放電形状因子Kの内、pを除くa、b、Lの各値は、第1隔壁29、第2隔壁50のそれぞれの形態に応じて形成される流路空間の断面形状FCSが、理想的には長方形または正方形によって規定され、より現実的には長方形または正方形に近似した空間をとることを考慮して決定すればよい。すなわち、上述した排気コンダクタンスCの規定の仕方と同様に考えればよい。
(実施の形態3)
本実施の形態3は、既述した実施の形態1、2の改良であり、その改良点は第2隔壁50の配置位置にある。以下では、説明の便宜上、実施の形態2に係るPDP1Bに対して改良を加えた場合について既述する。勿論、そこで実現される第2隔壁50の形態を実施の形態1のPDP1Aに対しても適用可能であり、同様に後述する効果が得られる。
図22は、実施の形態3に係る、PDP1Cの要部断面構造を示す縦断面図(第1方向D1に直交する面、かつA電極22の中央に沿った切断面、つまり、図8に示す曲線I1−I2に関する断面図)である。同図22中、図13と同一符号のものは同一のものを示す。
ここでは、第2隔壁50Cの配置構成が、図13中の第2隔壁50と異なる。即ち、第2隔壁50Cは、(イ)(第2方向D2に沿って)ある表示ラインDにおけるX電極XEとそれに隣接する他の表示ラインにおけるY電極YEのそれぞれの金属電極(バス電極)42、42の直下に位置し、(第1方向D1に沿って)第2基板21の対向面21Sの一部及びA電極22の上面22Sの一部を含み、または、(ロ)(第2方向D2に沿って)ある表示ラインDのY電極YEとそれに隣接する他の表示ラインのX電極XEのそれぞれの金属電極42、42の直下に位置し、(第1方向D1に沿って)第2基板21の対向面21Sの一部及びA電極22の上面22Sの一部を含んで、設けられている。図22に例示したケースは、丁度、(イ)及び(ロ)の両ケースを実現した場合にあたる。
換言すれば、第2隔壁50Cの第3側面部50CW3は、金属電極42が形成されていない透明電極41の部分41AR(ないしは、その表面41S)に対面する、第2基板21の対向面21Sの部分及びA電極22の上面22Sの部分を含む第2領域AR2内にあり、第2頂上部50CTの稜線rd中、第3側面部50CW3との境界部分からその最頂部50CTCへ向けての第1稜線部分rd1は、X電極XEと、当該X電極XEとその隣りの表示ラインのY電極YEとのギャップd(より正確には第1ギャップd1)とに対面している。
又、第2隔壁50Cの第4側面部50CW4は、ある表示ラインDにおけるY電極YEの透明電極41において、その金属電極42が形成されていない部分41AR(又はその表面41S)に対面する、第2基板21の対向面21Sの部分及びA電極22の上面22Sの部分を含む第4領域AR4内にあり、その第2隔壁50Cの第2頂上部50CTの稜線部rd中、第4側面部50CW4との境界部分からその最頂上部50CTCへ向けての第2稜線部分は、Y電極YEと、当該Y電極YEとその隣りの表示ラインのX電極XEとのギャップd(より正確には第2ギャップd2)とに対面している。
これにより、第3、第4側面部50CW3、50CW4上に付着された蛍光体28は、当該表示ラインDの、金属電極42がその上に形成されていない、X電極XEを構成する透明電極41の部分41ARとY電極YEを構成する透明電極41の部分41ARとに対面する、保護層18の部分と対向面21Sの部分との間における放電空間に、せり出して位置することになる。
このように、第2隔壁50Cが形成されている領域Lを、図22に示すギャップd(=d1+d2:d1=d2)で与えられる範囲を越えて、そのギャップdの両側にある異なる表示ラインにおけるX及びY電極XE、YEに対面する、第2基板21の対向面21Sの部分とA電極22の上面22Sの部分とを含む範囲にまで拡大する理由は、次の点にある。
X電極XEおよびY電極YE間において発生する放電は、X電極XEおよびY電極YEの物理的な配置以上に拡大する。すなわち、X電極XEおよびY電極YE間における放電は、透明電極41、41間において発生するのみならず、放電空間30に存在する放電ガスイオンを通じて金属電極42の直下の空間部分にも発生する(図7、図63参照)。
ところが、金属電極42の直下部分において発生する放電に基づく発光は、光学的に不透明な金属電極42の遮蔽によって表示面S側には届かず、その点で無駄な発光となってしまう。すなわち、金属電極42の直下の空間内で生ずる放電のために供給される電力は、実質上の電力損失になってしまうと考えてよい。従って、この電力損失を抑えるためには、金属電極42の直下の空間、即ち、金属電極42に対面する、保護層18と第2頂上部50CTとの間における空間における放電の発生を抑えればよいこととなる。
そこで、本実施の形態では、図22に示すように、(イ)ある表示ラインDのX電極XEとそれに隣接する他の表示ラインのY電極YE、又は、(ロ)ある表示ラインDのY電極YEとそれに隣接する他の表示ラインDのX電極XEの、それぞれの金属電極42、42に対面する範囲にまで、第2隔壁50Cの幅Lを拡大している。これにより、励起された原子あるいは分子が、この拡大された第2隔壁50Cに衝突して基底状態に戻ることにより、エネルギーの損失が起こり、結果的に放電電流が流れにくくなる。つまり、金属電極42の直下の空間では放電が発生しにくくなり、無効な電力損失を抑止することができる。そして、第2隔壁50Cの第2頂上部50CTとその直上の保護層18の表面との間隔を小さくする程、従って、第2隔壁50Cの高さを高くすればする程、上記衝突回数はより多くなるので、より放電電流が流れにくくなる。
なお、以下の説明では、X電極XEを構成する金属電極42に対面する、第2基板21の対向面21S及びA電極22の上面22S内の範囲(第1領域)を、対面範囲Jとして称すると共に、Y電極YEを構成する金属電極42に対面する、第2基板21の対向面21S及びA電極22の上面22Sの部分を含む範囲(第3領域)をも、同様に、対面範囲Jとして称する。
すなわち、図22に示すように、表示ラインDの中心から金属電極42までの最短距離をE、および表示ラインDの中心から第2隔壁50Cの側面部50CW3、50CW4までの最短距離をFとするとき、E≧Fなる関係を満足すれば、上述したように、放電空間30において金属電極42に対向する部分での放電を確実に抑えることができる。換言すれば、第2隔壁50Cが対面する範囲J、Jを含むような幅Lを有することによって、上述したように、金属電極42に対面する、保護層18の部分と第2隔壁50Cの第2頂上部50CTとの間の放電空間における放電を確実に抑えることができる。
既述したように、隣り合う第2隔壁50Cの第3、第4側面部50CW3、50CW4に付着された蛍光体28が後述する距離Fで規定される空間内にせり出してくることになり、紫外線が蛍光体28に到達するまでの距離も短くなるので、紫外線の吸収がより早く起きることとなり、この点でも、発光効率の向上に寄与する。
なお、図22には、隣り合う金属電極42、42に対応する両部分にわたって一つの第2隔壁50Cを設ける場合について示したが、対面する範囲J毎に第2隔壁50を設けるようにしても、上述と同様の効果が得られる。
更に、第2隔壁50Cの第3、第4側面部50CW3、50CW4のいずれか一方の側面部に関してのみ第2隔壁50Cの第3又は第4側面部50CW3又は50CW4のように形成し、他方側の側面部を、図13の第2隔壁50の側面部のように、対面する範囲Jを含まない形状で形成することも可能であり、この場合には、対面する範囲Jを含む上記一方の側面部で上述と同様の効果が得られる。
以上のように構成することで、金属電極42の直下の部分、より正確には、金属電極42の部分に対面する保護層18の表面部分においては放電が発生しないこととなり、金属電極42の部分を除く透明電極41、41間においてのみ放電が発生し、輝度は若干減少するが、金属電極42に放電電流が流れることはないため、発光効率(すなわち、光出力/投入電力)が実質的に向上する。また、第2隔壁50Cの幅Lを図13の第2隔壁50の幅よりも大きく形成することは、両基板11、21の貼付け作業時の位置合わせのマージンを大きくすることにも寄与する。
(実施の形態1〜3に共通する変形例)
(変形例その1)
以上述べた、実施の形態1乃至3の説明においては、蛍光体28は第2基板21上およびA電極22上に形成されているが、これに代えて、次のように構成しても良い。即ち、第2基板21上に例えばガラス成分を含む下地層を設け、その下地層の表面上にA電極22を設け、この下地層およびA電極22の上に蛍光体28を形成するようにしても良い。この場合、上記下地層と第2基板21とを、「第2基板」として定義することができる。このとき、上記下地層の表面が「第2基板の対向面」となる。
要は、第1基板11から第2基板21に向かう方向に、X電極XEおよびY電極YEに対面する側に蛍光体28が形成されていればよく、実施の形態1〜3において説明した構成のもので得られる効果を、この変形例においても得ることができる。
さらに、第2基板21上に形成されたA電極22の上面が絶縁体によって覆われたような変形例を考えることもできる。この場合には、上記絶縁体上に第1及び第2隔壁と蛍光体とが形成されることとなるが、既述した構成のもので得られる効果と同一の効果を得ることができる。この場合には、第2基板21と絶縁体とを以て「第2基板」という概念を想定することができ、そのような第2基板がA電極22を含んでいることとなる。このとき、上記絶縁体の表面が「第2基板の対向面」となる。
以上より、実施の形態1〜3及びここで述べた変形例におけるA電極22の配設位置に鑑みると、第2基板は、その各々が隣接し合う第1隔壁間に位置するように第2方向に沿って延長配設された、複数のA電極22を備えていると、言える。
(変形例その2)
実施の形態1〜3では、第2方向D2に第1隔壁29を延在させ、第1方向D1に第2隔壁50を延在させたが、この配設関係を逆転させるようにしても良い。即ち、第1方向D1に第1隔壁29を延在させ、第1隔壁29に直交するように、第2方向D2に第2隔壁50を延在させるのである。但し、X、Y電極XE、YE及びA電極22の位置関係は実施の形態1〜3の場合と同様である。従って、X、Y電極XE、YEは第1方向D1に延在し、A電極22は第2方向D2に延在する。勿論、このような両隔壁29、50の位置関係の反転に応じて、同一蛍光色の蛍光体28の付着方向も、第2方向D2から第1方向D1へと反転させる。
かかる変形例の構成を、透視平面図として模式的に描いた図23に示す。
但し、図23の変形例では、表示ラインは第2方向D2に平行となるので、PDPの書き込み工程において、各A電極22に順次に印加すべきアドレスパルスを、順次に隣接する異なる画素の同一蛍光色に関する画像データに基づき生成することとなる。このため、図23の変形例では、長方形の画面である場合には、走査ライン数が多くなり、書き込みの期間が長くなってしまうというデメリットはある。
(変形例その3)
実施の形態1〜3では、任意の単位発光領域EUの両サイドに、対峙し合う、2つの同質・同一形状・同一寸法の第2隔壁50(50C)を設けている。しかし、各第2隔壁50毎に、その存在位置において、既述した各効果、即ち、1)発光効率の改善(紫外線損失の低減)、2)発光もれの低減及び3)放電もれの抑制が生じているのである。
そうであるならば、任意の単位発光領域EUの一方側にのみ、少なくとも1本の第2隔壁50を設ければ、図61に示した従来構造よりも有利な効果が得られる。かかる観点から、1本の第2隔壁50を複数本の第1隔壁29と直交するように設けた例を模式的に示すのが、図24の透視平面図である。
同図24において、ある単位発光領域EU(i)と、第2方向D2に隣接する単位発光領域EU(i+1)との間には、両領域EU(i)、EU(i+1)を隔離するように、ただ1本の第2隔壁50が第1方向D1に沿って延在されている。この場合、第2隔壁50を以下の条件で設けることによって、隣り合う両単位発光領域EU(i)、EU(i+1)について、次の効果が得られる。
(1) 任意形状・任意寸法の第2隔壁50を設ける。このとき、当該隔壁50に向かって進行してくる励起原子等は第2隔壁50に衝突してそのエネルギーを失い、放電もれが、全く発生しない(第1隔壁29、第2隔壁50が同一高さのとき)か、十分に低減される(Hsub<Hmain)。
(2) 第2隔壁50を、可視光を反射しうる材質、例えば、第1隔壁29と同質のものとする。このとき、第2隔壁50付近に伝播してきた蛍光は第2隔壁50の側面部で反射され、発光もれが、完全に抑止される(Hsub=Hmainのとき)か、又は十分に抑止される(Hsub<Hmain)。
(3) 第2隔壁50の第3、第4側面部50CW3、50CW4上に、Hsub<Hmai
nのときは、更にその第2頂上部50T上に、蛍光体28を固着させる。このとき、第2隔壁50近傍の蛍光は蛍光体28の表層で反射されるので、蛍光体28は発光もれの低減化に寄与すると共に、第2隔壁50近傍の紫外線はより早く蛍光体28に吸収されるので、紫外線損失の低減化を図ることができる。
ここで、特開平8−152865号公報の図6と段落(0003)とには(又は、ヨーロッパ特許出願の公開公報EP0704834A1のFig.1A、1Bには)、同一高さの格子状の隔壁が示されている。しかし、上記の文献の隔壁上には蛍光体が全く設けられておらず、しかも、上記の文献には、本願で問題としているような課題認識が存在せず、本願において述べているような事柄は示唆及び記述されてはいない。従って、同文献に示された隔壁は実施の形態1〜3の第1、第2隔壁29、50(50C)と本質的に異なるものであると考える。ましてや、同文献の図6の構造からは、本願の図24に示す構造を採用しうる余地はない。
この点で、図24のPDPは、同先行文献の図6の構造よりも、優位な効果を有する。
(変形例その4)
図25の平面図に模式的に示すように、隣り合う第1隔壁29(291、292)と、隣り合う第2隔壁50とによって囲まれる領域内における単位発光領域EUの数が任意数となるように、隣り合うべき、一方の第2隔壁50(50i-1)から第2方向D2へ向けて他方の第2隔壁50を見たときに、第i番目の単位発光領域EUiから数えて第j番目の単位発光領域EUjと次の隣りの単位発光領域EU(j+1)との間に、他方の第2隔壁50(50j)を設けても良い。この場合、他方の第2隔壁50(50j)は一方の第2隔壁(50i)と同一材質、同一形状、同一寸法としても良いし、異なるようにしても良い。又、他方の第2隔壁50jの側面部等に蛍光体28を設けても良いし、設けなくても良い。いずれにせよ、他方の第2隔壁50jで隔離された両単位発光領域EUj、EU(j+1)に関しても、上記変形例その3で述べた効果(1)〜(3)が得られる。
特に、1つの単位発光領域EUの一方側のみ規則的に第2隔壁50が周期的に設けられる場合(図25に示す2つの第2隔壁50i-1、50jが第2方向D2に沿って繰返し配設されている場合)には、図25の一方の単位発光領域EU(i−1)、EUi間及び他方の単位発光領域EUj、EU(j+1)間で輝度の向上等が得られ、これらの単位発光領域EU(i−1)、EUi、EUj、EU(j+1)と比べて、その間の単位発光領域EU(i+1)〜EU(j−1)では輝度の向上は得られないこととなるので、これまでの実施の形態1〜3において述べた構成によって得られる物理的な特性効果としては目減りするが、第2隔壁50の総数が実施の形態1〜3と比べて少ない分だけ、プロセス的には有利である。即ち、画素密度が大きくなるにつれて単位発光領域が小さくなってくるので、任意数の単位発光領域毎に第2隔壁を設けていくことにより、寸法上の制限という問題点を克服しやすくなる。勿論、その点は、PDPの輝度等の特性との相関で決まる。
(変形例その5)
変形例その4で、j=2とした場合で且つ、第2方向D2に隣り合う画素EG1、EG2の各単位発光領域のX電極XEを共通化した場合を、図26〜図29に示す。尚、図27〜図29に示す記号BL1は境界線を示す。
この場合には、2画素毎に第2隔壁50が設けられることになり、各第2隔壁50毎に、当該第2隔壁50を設けたことにより得られた効果が同様に得られると共に、隣り合う2画素がX電極XEを共有しているので、画素密度を高める際に物理的に有利である。しかも、図4や図22等では、電圧を高めにすると隣り合う画素のそれぞれのX電極XEとY電極YEとの間に放電が生じてしまうのを、図26〜図29の本変形例(及び後述する図30〜図32に示す変形例その6)では回避することができる。また、本変形例では、両基板11、21の張り合わせの際の位置合わせマージンを実施の形態1〜3の場合よりも大きくすることも可能である。
(変形例その6)
図30〜図32は、変形例その5の変形例であり、変形例その5に対して、2画素間で共通使用するX電極XEの直下に、もう一つ、更に別の第2隔壁50を追加したものである。従って、図25におけるiが1の場合であり、且つ2画素毎に1本のX電極XEが設けられているケースである。
尚、図30〜図32に示されている記号BL2は、境界線を示す。
これにより、X電極XEを共有し合う2画素の内の一方の画素のX電極XEと、他方の画素のY電極YEとの間で生じうる放電もれをも、共通のX電極XEの直下に追加した第2隔壁50によって防止することができる。
(変形例その7)
図33は、実施の形態1の図4のPDP1Aに対して、実施の形態2における考え方を組合わせたPDPの1画素分を示す斜視図である。即ち、図33では、第1隔壁29と同一高さの第2隔壁50の第3及び第4側面部50W3、50W4を貫通する(縦寸法a×横寸法b)の断面面積を有する、流路孔が形成されている。当該流路孔の寸法a、b、Lも、実施の形態2で示した形状因子βと表示光の輝度との相関関係に基づき決定される。
(変形例その8)
第2隔壁50の高さHsubは、各第2隔壁50毎に異なっていても良いが、この場合には輝度向上の効果も変化する。但し、なだらかな輝度の変化(±10%程度)は実用上殆ど問題とはならず、寧ろこの場合の方がプロセス的に優位(排気、封入工程)となる。このように構成する場合、例えば、PDPの排気口側の第2隔壁50から順次に、その高さHsubを、その形状因子βが1.5E−4mm2に向けて変化してゆくように、段階的に大きくしてゆくことが考えられる。
又、PDPのパネル面の両端部には、蛍光体ペーストの塗布との関係で、一般に、ダミーの単位発光領域EUが複数個設けられている。かかるダミーの単位発光領域EUについては、又、そのダミーの単位発光領域EUと隣接する、真正の単位発光領域EUについては、第2隔壁50の高さHsubを第1隔壁29の高さHmainとほぼ同じように設定することもできる(Hsub≒Hmain)。
(変形例その9)
(a)PDPの全表示ラインの内で互いに隣り合う任意数の表示ラインのそれぞれは、第1方向に沿って2つの第2隔壁で囲まれており、(b)他の表示ラインは、2つの第2隔壁によって囲まれていないという、変形例を考えることも可能である。このような一例の模式的な透視平面図を、図34に示す。
同図34に示す変形例では、2つの第2隔壁50で囲まれる単位発光領域EUi〜EUjの全てについて、第2隔壁50を設けたことにより得られる効果、即ち輝度等の向上が得られる。単位発光領域EUi〜EUjの周辺の単位発光領域では、第2隔壁は配設されていない。
ここで、変形例その8で述べたダミーの単位発光領域を、図34に示すような、2つの第2隔壁で囲まれていない上記周辺の単位発光領域とすれば、全ての真正の単位発送領域において、第2隔壁を設けたことにより得られる既述した効果が得られる。
尚、図34に示す単位発光領域EUi〜EUjを所定の間隔をあけて繰り返し配置するようにしても良い。
(実施の形態4)
ここでは、実施の形態1で述べたPDP1Aの製造方法、特に、図4に示すように、第2基板21上に互いに格子状に交差し合う、同一材質・同一高さ、あるいは、ほぼ同一の材質・高さからなる第1及び第2隔壁29、50の製造方法のその1について、図4中の符号を適宜用いつつ、既述する。
図35は、PDP1Aの製造工程の概略を示すフローチャートである。本製造工程は、大別して3つの工程より、即ち、第1基板11ないしは前面パネルの製造工程FS1、第2基板21ないしは背面パネルの製造工程FS2及びアセンブリ工程FS3から成る。これらの工程中、工程FS1、FS3は既知の工程であり、この実施の形態にとって本質的な工程ではない。この実施の形態の特徴部分は工程FS2、特に、隔壁形成方法にある。ここで隔壁形成方法を概略すれば、次の通りである。先ず、(a)複数のA電極22を備える第2基板を準備する。それは、図4のもの(21)であっても良いし、変形例その1で述べたようなものでも良い。又、図4のように平行配置された第1隔壁29、29間の第1間隔bと、隣り合う第2隔壁50、50間の第2間隔とに基づいて定められた網目状のパターンを有する、マスクを準備する。更に、これらの隔壁の母材となる低融点ガラスペーストを準備する。(b)そして、次に、上記マスクに基づき第1、第2隔壁29、50を同時に第2基板11上に形成する。この「マスク」は、本実施の形態では、例えば後述するDFRにあたる。尚、他の実施の形態5、7では、このDFRと共に、リソグラフィ工程で用いるマスク(ガラスマスク等)をも含めて、「マスク」概念を形成している。(c)次に、各升形状空間内に、R、G、B色の対応する蛍光体28を付着させる。
以下、当該工程FS2の内の隔壁形成工程部分について詳述する。蛍光体28やA電極22の形成方法は周知の方法による。
尚、図35は、他の実施の形態5〜7についても共用される。
図36は、第2隔壁50を形成するためのフローチャートである。又、図37〜図42は、それぞれ図中の各ステップS1、S3、S4〜S7に対応した、図4中の第2方向D2から製作途上の第2基板21を含むPDP用背面パネルを眺めたときの縦断面図である。
同図36において、ステップS1は低融点ガラスペースト29Pを第2基板21の内面21S上に全面的に塗布する工程(図37参照)である。次に、ステップS2は、工程S1で塗布された低融点ガラスペースト29Pを乾燥する工程であり、ステップS3は塗布後乾燥して得られた低融点ガラス29Gが所定の厚さ(それは図4中の高さHに該当)に達したかどうかを判断する工程(図38参照)であり、低融点ガラス29Gの厚みが所定の厚さに達していなければ工程S1に戻り、低融点ガラス29Gの厚みが所定の厚さに達しているときは、次工程S4に移る。
ステップS4では、第1及び第2隔壁29、50の配置位置ないしはそれらの第1、第2間隔に応じた所定の網目状パターンを有するドライフィルムレジスト(以下、DFRと称す)400を形成する工程であり、そのための部材である感光性フィルムを低融点ガラスペースト29Gの上に貼り付ける。このDFR400は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリオレフィンとの間に感光材料を挟み込んだ上記感光性フィルムに、ここでは、例えば網目状の所定のマスクパターンを介して紫外光を照射した後、反応促進のために加熱を行うことにより、形成される。当該DFR400は、次工程でマスクとして機能するものである。その後、Na2CO3溶液を用いて感光性フィルムを現像する。この現像の後に、図39(a)、(b)に示すように、各網目ないしは各開孔部400Hがほぼ同一寸法・同一形状で形成された、網目状のDFR400が形成される(S4:DFR形成工程)。図39(b)中、各開孔部400Hの第1寸法d1、第2寸法d2は、それぞれ、第1、第2隔壁29、50の第1、第2間隔に対応付けられている。
ステップS5はサンドブラスト工程である。例えば、図40に示すように、CaCO3を、露出面全体(網目状のDFR400およびDFR400に形成されている開孔400Hを介して露出している乾燥した低融点ガラスペースト29Gの表面)に吹き付けて、網目状のDFR400によってマスキングされた以外の部分29GEの直下の乾燥した低融点ガラスペースト29Gを除去する。これにより、上記部分29GEより低融点ガラスペースト29Gの内部に向かって、低融点ガラスペースト29Gは穿設される。
ステップS6はサンドブラスト工程S5によって乾燥した低融点ガラスペースト29Gを所定の深さ(即ち、図1の高さHに該当)まで除去できたかどうか、即ち低融点ガラスペースト29Gの穿設孔が第2基板21に到達したか否かを判断する工程であり、所定の深さまで低融点ガラスペースト29Gを除去できていないならば工程S5に戻りサンドブラストを続行し、所定の深さまで低融点ガラスペースト29Gを除去できたならば、残った網目状のDFR400を剥離して焼成工程S7に進む(図41参照)。
焼成工程S7においては、乾燥した低融点ガラスペースト29Gを加熱溶融することにより、第2基板21の内面21S上に、網目状の隔壁(第1隔壁29および第2隔壁50によって構成される隔壁)が完成される(図42参照)。
以後の工程(蛍光体形成工程や図34に示すアセンブリ工程FS3)の説明は、実施の形態5にゆずる。
このように、図39(b)に示すような規則正しい網目状のパターンを有するDFR400をリソグラフィ法を用いて準備することによって、従来より用いられているサンドブラスト法という方法をそのまま利用することが可能となり、特別な工程を新たに付加することなく、第1〜第2隔壁29、50を同時に形成することができる。
尚、感光性フィルムがネガがポジがに応じてリソグラフィ法で使用するマスクパターンの形状も設定する。この点は、他の実施の形態5〜7でも同様である。
(実施の形態5)
ここでは、図4のPDP1Aの第1及び第2隔壁29、50の別の形成方法(その2)を既述する。
図43〜図46は、製造方法のその2の各工程を記述するために示した、実施の形態4と同様に図4の第2方向D2から眺めたときの、製作途上の第2基板21を含むPDP用背面パネルの縦断面図である。
図43に示すように、第2基板21の内面21SとA電極22との上に均一厚さの感光性フィルム500(マスク部材)をほぼ全面的に貼り付け、ここでは、例えばドット状のパターン形成用マスク501(第1マスクと称す)のパターンを介して、紫外線を感光性フィルム500に照射する。その後、反応促進のために加熱(ポストベーク)を行い、図44に示すように、Na2CO3溶液を用いて感光性フィルム500を現像する。この現像の後に、上記第1マスク501のドット状のパターンが転写された、ドット状のDFR502(マスク)が形成される。
ドット状のDFR502が形成された後には、当該DFR502を含めて、図45に示すように、例えば100℃以下の温度で固化するパラフィンやアクリル樹脂等を外形形状の維持および剥離の際の保護のために含有する低融点ガラスペースト29Pを塗布し、低融点ガラスペースト29Pの乾燥のための加熱処理を行う。(この加熱処理後、乾燥した低融点ガラスペースト29Pの上面を研磨して、DFR502の上面が現われるようにして、乾燥したガラスペースト29Pの高さを均一となるようにしても良い。
その後、図46に示すように、DFR502のみを剥離すれば、網目状の乾燥した低融点ガラスペースト29Pが第2基板21上に残る。この残った低融点ガラスペースト29Pを焼成すれば、第1隔壁29および第2隔壁50が形成される。
この手法によれば、高い形成精度を有する第1、第2隔壁29、50を形成することが可能であり、第1、第2隔壁29、50のエッジ部が丸くならず、また第1、第2隔壁29、50の高さ変動も少ない、良好な第1、第2隔壁29、50を形成することができる。
上述のような方法により第1隔壁29および第2隔壁50を形成した後、隣り合う第1隔壁29、29のそれぞれの第1、第2側面部29W1、29W2と、隣り合う第2隔壁50、50のそれぞれの第3、第4側面部50W3、50W4と、予めA電極22が形成された第2基板21の内面とによって形成された、升形状の中に、蛍光体ペーストを注入した後、同ペーストを乾燥させる。その後、上記ペーストを加熱することによって、隣り合う第1隔壁29、29の対向し合う第1、第2側面部29W1、29W2上、隣り合う第2隔壁50、50の対向し合う第3、第4側面部50W3、50W4上、隣り合う第1隔壁29、29で挟まれた第2基板21の内面部分上およびA電極22の上面上を、それぞれ覆うように、蛍光体28が形成される。
なお、図35に示すアセンブリ工程FS3については、次の通りである。即ち、最終的には、第1基板11と第2基板21とを張り合わせ、それぞれの基板11、21の周辺部を低融点ガラス等で封止することによって、PDPが完成されることになる。しかし、実施の形態4、5では、第1及び第2隔壁29、50の高さH、hが等しいか又はほぼ等しく、それらの第1、第2頂上部29T、50Tが保護層18の表面に当接し、各放電空間30が完全に閉空間となってしまうため、封止にあたっては、例えば、第1基板11と第2基板21との全体を所定の放電ガス圧の雰囲気中に置いた上で、両基板11、12の周辺部を封止するようにする。これにより、図4に示した構成のPDP1Aを得ることができる。
尚、各基板11、21の大きさが大きくなると、上述した放電ガス圧の雰囲気中において封止することが困難になる。しかし、かかる場合には、例えば、第1基板11の周辺部と第2基板21の周辺部との間に図示しない所定形状のスペーサを介在させて両基板11、21を貼り合わせることによって、保護層18と第1隔壁29の第1頂上部29Tおよび第2隔壁50の第2頂上部50Tとの間に多少の隙間を確保した上で、上記の排気(真空引き)、放電ガス封入を順次行った後、上記の封止を行うことにより、図4に示すプラズマディスプレイパネルPDP1Aに対して、第1、第2隔壁29、50の各頂上部29T、50Tと保護層18の表面との間に隙間を設けたようなPDPを、得ることができる。但し、この場合には、第1方向D1に隣り合う単位発光領域間(例えばEUR−EUG間)で、既述した問題点1)〜3)が若干生じてしまうという難点がある。
(実施の形態6)
ここでは、図8に示したPDP1Bの製造方法、特に、高さの違う両隔壁29、50を同時に製造する方法について詳述する。当該製造方法は、実施の形態3、4において述べた方法と同様のものであるが、さらに図47〜図53を参照して説明する。
図47は、実施の形態6における、第1及び第2隔壁29、50を同時に形成するためのフローチャートである。図47において、ステップS21は、低融点ガラスペースト29Pを内面21S上に全面的に塗布する工程であり(図48)、ステップS22は、工程S21で塗布された低融点ガラスペースト29Pを乾燥する工程である。又、ステップS23は、塗布後乾燥した低融点ガラス29Gが所定の厚さに達したかどうかを判断する工程であり(図49参照)、低融点ガラス29Gが所定の厚さに達していなければ工程S21に戻り、所定の厚さに達したら、DFR600(マスク)を形成するために、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリオレフィンとの間に感光材料を挟み込んだ感光性フィルム(マスク用部材)を全面的に貼り付ける。ここでは、例えば、第1、第2隔壁29、50の第1、第2間隔に基づいて形成された網目状のマスクパターン(ガラスマスク等)を介して紫外光を照射した後(リソグラフィ法)、反応促進のために加熱を行うことにより、DFR600を形成する。その後、Na2CO3溶液を用いて感光性シートを現像する。この現像の後には、図50の(a)、(b)に示される網目状のDFR600が、即ち、第2方向D2に沿った、第1マスク幅Nを有する第1マスク部分601と、第1方向D1に沿った、第1マスク幅Nよりも小さい第2マスク幅M(<N)を有する第2マスク部分602とを有する、DFR600が形成される(S24:DFR形成工程)。上記第1マスク幅Nは第1隔壁29の幅寸法に対応して設定され、第2マスク幅Mは第2隔壁50の幅寸法Lに基づき設定される。
ステップS25は図51に示すサンドブラスト工程であり、例えばCaCO3を面全体(網目状のDFR600(マスク)および乾燥した低融点ガラスペースト29Gの露出表面)に吹き付けて、網目状のDFR600によってマスキングされた以外の乾燥した低融点ガラスペースト29Gを除去する。
ステップS26は、サンドブラスト工程S25によって、乾燥した低融点ガラスペースト29Gが所定の深さ(高さHに該当)まで除去できたかどうかを判断する工程であり(図53参照)、低融点ガラスペースト29Gが、所定の深さまで除去できていないならば工程S25に戻りサンドブラスト工程S25を続行し、低融点ガラスペースト29Gが、所定の深さまで除去できたならば、残った網目状のDFR600を剥離して焼成工程S27に進む。焼成工程S27において、乾燥した低融点ガラスペースト29Gを加熱溶融することにより、第2基板21上に網目状の隔壁(第1隔壁29および第2隔壁50によって構成される隔壁)が完成する(図53)。
この実施の形態6における上述した網目状のDFR600は、既述した通り、第1隔壁29に対応する部分(第1マスク部分601)と第2隔壁50に対応する部分(第2マスク部分602)とでそれぞれマスク幅が異なるように形成されている。すなわち、図50(b)に示すように、(第1隔壁29に対応する第1マスク部分601の第1マスク幅N)>(第2隔壁50に対応する第2マスク部分602の第2マスク幅M)なる関係となっている。このようにすると、サンドブラスト工程S25において、マスクされていない低融点ガラスペースト29Gが除去(研削)されるにつれてDFR600も除去(研削)されるが、第2隔壁50に対応する第2マスク部分602の第2マスク幅Mが第1隔壁29に対応する第1マスク部分601の第1マスク幅Nよりも狭いため、第2マスク部分602及び第1マスク部分601が共に研削されていくが、いずれは第2隔壁50に対応する第2マスク部分602が除去されてしまう。従って、第2マスク部分602のレジストが除去された後に更にサンドブラスト工程S25を続行すると、第2マスク部分602によって覆われていた部分に対応する低融点ガラスペースト29Gが研削されることになる。
以降、第1隔壁29に対応する第1マスク部分601のみが残った状態で、さらにサンドブラスト工程S25を進行する。これにより、第1隔壁29に対応する第1マスク部分601によって覆われた部分に対応する乾燥した低融点ガラスペースト29Gは、その高さ(H)を保った状態となるが、第2隔壁50に対応する第2マスク部分602によって覆われていた部分に対応する乾燥した低融点ガラスペースト29Gは部分的に除去されることになる。従って、最終的には、第2隔壁50が、第1隔壁29の高さよりも低い状態で形成されることになる。
以上より、本実施の形態によれば、図50の(a)、(b)に示す、網目状パターンを有するマスクとしてのDFR600を用いることにより、従来より採用されてきたサンドブラスト法をそのまま利用して図8に示すPDP1Bを製造することができ、新たな製造装置や工程を必要とすることなく、それぞれ高さの異なる第1隔壁29及び第2隔壁50を形成することができる。
(実施の形態7)
ここでは、PDP1Bの隔壁29、50の別の製造方法(その2)を説明する。図54〜図59は、その2の製造工程を示すための、製造途上にある第2基板21を含むPDP用背面パネルの縦断面図である。
図54に示すように、まずは、網目状のDFRを形成するため、第2基板21上に均一厚さ(第1厚み)の第1感光性フィルム700(マスク用部材)を全面的に貼り付け、ここでは、例えば、第1、第2間隔に対応したマスク幅を有する、メッシュ状の第1パターン形成用マスク701を第1感光性フィルム700の表面上に配置し、この第1パターン形成用マスク701を介して、紫外光を第1感光性フィルム700に照射した後、反応促進のために、第1感光性フィルム700の加熱を行う。その後、Na2CO3溶液を用いて第1感光性フィルム700を現像する。この現像の後には、不要な第1感光性フィルム700の部分(感光されなかった部分)が除去され、図55に示すように、第1パターン形成用マスク701のパターンが転写された、ドット状の第1DFR702が形成される。
次に、ストライプ状の第2DFRを形成するために、上述のドット状の第1DFR702の表面上に、均一厚さ(第2厚み)の第2感光性フィルム703(マスク用部材)を貼り付け、ストライプ状の第2パターン形成用マスク704(当該第2パターン形成用マスク704には、第1隔壁29の幅に応じた幅を有するストライプ状の複数の開孔が、第2方向に延び且つ第1間隔で以て配列されている)を第2感光性フィルム703の表面上に配置し、第2パターン形成用マスク704を介して、紫外光を第2感光性フィルム703に照射する(図56)。その後、反応促進のために第2感光性フィルム703の加熱を行う。その後、Na2CO3溶液を用いて、第2感光性フィルム703を現像する。この現像の後には、不要な第2感光性フィルム703の部分(感光されなかった部分)は除去され、ストライプ状の第2DFR705が、第1方向D1に沿って並んだドット状の第1DFR702の上に、第1方向D1に沿って形成される(図57)。
ドット状およびストライプ状の両DFR702、705が第2基板21の内面上に形成された後には、これらのDFR702、705をマスクとして、例えば100℃以下の温度で固化するパラフィンやアクリル樹脂等を外形形状の維持および剥離の際の保護のために含有する低融点ガラスペースト29Pを、第2基板上に塗布して、両DFR702、705と第2基板21の内面とで囲まれた空間を低融点ガラスペースト29Pで充填する。そして、低融点ガラスペースト29Pの乾燥のための加熱処理を行う(この加熱処理後、乾燥した低融点ガラスペースト上面を研磨してDFR上面が現われるようにし、乾燥したガラスペーストの高さを均一となるようにしても良い)(図58)。
その後、第1、第2DFR702、705を剥離すれば、網目状およびその上にストライプ状の乾燥した低融点ガラスペーストが第2基板21上に残る。この残った低融点ガラスペーストを焼成すれば、第1隔壁29、およびこの第1隔壁29よりも隔壁の高さが低い第2隔壁50が完成する(図59)。この場合、第1感光性フィルム700及び第2感光性フィルム703の第1、第2厚みの和は、ほぼ、第1隔壁の高さHに相当する。
この手法によれば、高い形成精度を有する隔壁を形成することが可能であり、第2隔壁50のエッジ部が丸くならず、また隔壁の高さ変動が少ない、良好な第1、第2隔壁29、50を形成することができる。
上述のような方法で第1隔壁29および第2隔壁50を形成した後は、隣り合う第1隔壁29、29の第1、第2側面部29W1、29W2と、隣り合う第2隔壁50、50の第3、第4側面部50W3、50W4と、両第2隔壁50、50の第2頂上部50T、50Tと、両第1隔壁29、29で挟まれた第2基板21の内面部分とによって形成された升形(箱形)状の中に、蛍光体ペーストを注入し、その後、蛍光体ペーストを乾燥させる。その後、蛍光体ペーストを加熱することによって、蛍光体28は、隣り合う第1隔壁29、29の対向する第1、第2側面部29W1、29W2上、隣り合う第2隔壁50、50の対向する第3、第4側面部50W3、50W4上、両第2隔壁50、50の第2頂上部50T、50T上、第1隔壁29、29で挟まれた第2基板21の内面上およびA電極22の上面に固着される。
(隔壁形成方法の変形例)
(i) また、第1隔壁29および第2隔壁50の形成方法の一つの変形例として、紫外線硬化樹脂をガラスペーストに混入しておき、そのようなガラスペーストに図39、図50のような網目状のマスクパターンを介して紫外線を照射することによって、両隔壁29、50を形成することもできる。
(ii) さらに、熱硬化樹脂をガラスペーストに混入しておき、図39、図50のような網目状のマスクパターンを介して、例えばレーザ光のような熱線を照射することによって、各隔壁29、50を形成しても良い。
(iii) また、図36、図47に示した製作プロセスのフローチャートに関して、塗布した低融点ガラスペースト29Pの厚みが所定の値に達したかどうか、あるいは、サンドブラスト工程によって除去される乾燥したガラスペースト29Gが所定の深さにまで研削されたかどうかを判断する工程を含む例について説明したが、あらかじめ所定の塗布回数だけ低融点ガラスペースト29Pを塗布することとして、上記判定工程を削除するか、あるいは、サンドブラスト工程をあらかじめ設定された時間だけ実行して上記判定工程を省略するようにしてもよい。
・発明の効果
この発明によれば、複数の第1隔壁に直交する第2隔壁を設けているので、第2隔壁で互いに隔離される、同色の可視光を発生する任意の放電空間同士について、次の効果(1)、(2)が得られる。
(1) 上記任意の放電空間同士について、放電もれに起因するセル間放電を低減ないしは完全に抑止することができる。即ち、任意の放電空間のそれぞれに於ける放電によって励起された、紫外線の発光源たる放電ガス内の原子や分子等の内で、上記第2隔壁へ向けて進行して来たものは、当該第2隔壁に衝突してその運動エネルギーを第2隔壁に与えることとなり、このエネルギー損失のために、励起状態にあった衝突原子等はその基底状態に戻ることとなる。従って、(a)第1及び第2隔壁の高さが同一であり、且つ第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接しているときには、隣の放電空間側へ進行しようとする励起原子等にとって第2隔壁が障害物となるため、当該励起原子等は全て第2隔壁と衝突してそのエネルギーを損失する結果、第2隔壁で仕切られた両放電空間の間では完全に放電もれが防止される。他方、(b)第1隔壁の高さが第2隔壁の高さよりも高い場合、又は、第1及び第2隔壁の高さが同一であっても、第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接していないときには、励起原子等は第2隔壁を乗り越えて隣の放電空間側へ進行しようとするが、その多くは第2隔壁と衝突してそのエネルギーを損失するので、第2隔壁を乗り越えて隣の放電空間へ進入してしまう励起原子等の数を第2隔壁を有しない従来技術よりも格段に低減することができ、これにより、第2隔壁を介して隣り合う放電空間の間に於ける放電もれを格段に低減することができる。
(2) 更に、放電もれに起因するセル間放電を確実に低減ないしは完全に抑止することができるときには、第2隔壁を介して隣り合う任意の放電空間同士に関して、その電極間ピッチを狭くすることもできることとなり、当該第2隔壁に沿って画素密度を高めることができる。従って、例えば当該第2隔壁をパネル全面にわたる領域内に設けるときには、高精細なパネルを実現することができる。
また、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士について、一方の放電空間で生じた可視光の他方の放電空間への発光もれを完全に抑止または十分に低減化することができ、当該第2隔壁に沿った画素に関して、色バランスへの影響を完全にまたは十分に抑え、且つ、色にじみの無いかまたは殆ど無い、より鮮明な画像を表示することができ、画質の向上を図ることができるという効果を奏する。従って、例えば当該第2隔壁をパネル全面にわたる領域内に設けるときには、高輝度の画質の極めて良いパネルを実現することができる。
即ち、本発明により、任意の放電空間同士のそれぞれは、隣り合う第1隔壁の内の一方の第1側面部と、他方の第2側面部と、第2隔壁の第3または第4側面部とで囲まれた領域となっているので、任意の放電空間同士のそれぞれの単位発光領域で生じた可視光は、当該単位発光領域を挟む、隣り合う第1隔壁の一方の第1側面部、及び他方の第2側面部のみならず、第2隔壁の第3または第4側面部においても反射されることとなり、観視者側へ向かう可視光の光量が格段に増加する。従って、一方の単位発光領域から他方の単位発光領域へ進入しようとする可視光の伝搬は、(a)第1及び第2隔壁の高さが同一であり、且つ第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接しているときには、当該可視光の第2隔壁の第3または第4側面部における反射によって、確実に阻止されるし、(b)第1隔壁の高さが第2隔壁の高さよりも高い場合、又は、第1及び第2隔壁の高さが同一であっても、第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接していないときには、当該可視光の多くは第2隔壁の第3または第4側面部によって反射されるので、高い確率で以て阻止されることとなる。これにより、一方の単位発光領域から他方の単位発光領域への発光もれによる影響を抑止または十分に低減しつつ、観視者側へ向かう可視光の光量を増加させて、より高輝度のプラズマディスプレイパネルを実現することも可能となる。
また、蛍光体が、第1隔壁の第1及び第2側面部上のみならず、第2隔壁の第3及び第4側面部上にも付着されているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士のそれぞれの単位発光領域について、次の2つの効果(1)、(2)を奏する。
(1) 紫外線を可視光に変換する発光効率を従来装置よりも向上させることができ、その結果、輝度の向上を図ることが可能となる。
即ち、任意の放電空間同士のそれぞれについて、第1及び第2基板と垂直な縦断面がU字状となるように蛍光体が付着されているので、放電によって生じる紫外線を受ける蛍光体の面積をより大きくする事ができる。従って、放電の繰返し回数が増えることによって紫外線の損失がより大きくなる前に、あるいは、紫外線の伝搬の進行距離が長くなって誘電体による紫外線吸収に起因した紫外線の損失がより大きくなる前に、紫外線をより早く且つより多く蛍光体に照射することが可能となり、紫外線の損失量を格段に低減することができる。
(2) しかも、放電を包み込むように蛍光体を設けることになるので、一方の単位発光領域で生じた可視光の他方の単位発光領域への発光もれの抑止にも十分に寄与することができるのである。即ち、一方の単位発光領域における蛍光体より生じた可視光は、当該単位発光領域に於ける第1及び第2側面部及び第3または第4側面部、並びに第1及び第2側面部上の蛍光体で反射されるのみならず、更に第3または第4側面部上の蛍光体によっても反射されることとなるので、より一層多くの可視光を観視者側へ伝搬させることができ、他方の単位発光領域へ伝搬する可視光の光量をより一層低減させることができる。
また、第1隔壁の第1高さと第2隔壁の第2高さとは略等しいので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士について、隣り合う第1隔壁の存在により得られる効果を従来技術と同様に発揮させつつ、更に、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を重畳的に奏することが出来る。
また、第2隔壁の第2高さは第1隔壁の第1高さよりも低く設定されているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士について、隣り合う第1隔壁の存在により得られる効果を従来技術と同様に発揮させつつ、更に、次の効果(1)、(2)を得ることができる。
(1) プラズマディスプレイパネルの製作時の各放電空間の排気及び各放電空間への放電ガスの封入を容易に実現可能としつつ、放電動作の安定化を図ることによって、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を重畳的に奏することができる。
(2) 任意の放電空間同士のそれぞれに対して、プライミング放電を同時に且つ確実に発生させつつ、それぞれの放電空間に於ける放電動作の安定化を図ることによって、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を重畳的に得ることができる。
また、第2隔壁の第2頂上部上にも蛍光体が付着されているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士について、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化及び2)発光漏れの抑止という効果を更に一層向上させることができる。即ち、第2隔壁の第2頂上部と誘電体の表面との間隙に伝搬してきた紫外線が第2頂上部上の蛍光体により吸収される場合が発生し、又、当該間隙に伝搬してきた可視光が第2頂上部上の蛍光体の表層によって観視者側に反射される場合も発生する結果、上記の効果1)、2)がより一層促進される。
また、排気コンダクタンスと表示光の輝度との相関関係に基づき第1高さと第2高さの高低差が設定されているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士について、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止を図ると共に、4)プラズマディスプレイパネルの製作時における各放電空間の排気及び各放電空間への放電ガスの封入の容易化を図ることが可能となる。
また、形状因子βを1.5E−4mm2以上とし、且つ、(Hmain・b)2/((Hmain+b)・L)で与えられる値よりも小さくしているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士に於いて、プラズマディスプレイパネルの製作時の各放電空間の排気及び各放電空間への放電ガスの封入を容易に且つ確実に実現可能としつつ、放電動作の安定化をも図ることができる。特に形状因子βを1.5E−4mm2に近づける程、放電動作の安定化をより一層図ることができ、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を最大限発揮させることが可能となる。
また、複数の放電空間の全てがプライミング放電を起こし得る最小のプライミング電圧に基づき、第1高さと第2高さの高低差が設定されているので、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士に於いて、それぞれの放電空間に対してプライミング放電を同時に且つ確実に発生させつつ、それぞれの放電空間に於ける放電動作の安定化を図ると共に、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を重畳的に得ることができる。
また、第2隔壁で互いに隔離される任意の放電空間同士に於いて、各放電空間に対してプライミング放電を同時に且つ確実に発生させ得る最小のプライミング電圧を最適化することができるので、次の効果(1)〜(4)を奏することができる。
(1) プライミング電圧が高過ぎることにより生じる、i)暗輝度の上昇、ii)パネル中の表示領域外における放電の発生、iii)パネルと外部の駆動回路とを電気的に接続する端子間の絶縁性の劣化、という問題点を未然に確実に防止することができる。
(2) プライミング電圧を発生させるための外部の駆動回路側の耐電圧特性の劣化を未然に確実に防止することができる。
(3) 耐電圧の特に高い能動素子をプライミング電圧を発生させるための外部の駆動回路内の素子として用いる必要性を無くして、汎用性のある能動素子を利用可能とする。
(4) 誘電体の耐電圧特性の劣化を未然に確実に防止することができる。
また、第2隔壁の前記第3側面部が、第1表示電極の帯状透明導電膜の内で金属電極が形成されていない部分に対面する、第2基板の対向面内の第2領域内に位置しているので、次の効果(1)、(2)を奏する。
(1) 任意の放電空間同士の内で第2隔壁の第3側面部で隣りの放電空間と隔離される側の放電空間に関して、第1表示電極の金属電極に於ける放電を抑えて消費電力の低減化を促進することが可能となり、より効率の良い面放電型プラズマディスプレイパネルを実現することができる。即ち、第1表示電極の金属電極に対面する第1領域内の第2隔壁と当該金属電極に対面する誘電体の部分との間における放電空間では、(a)第1及び第2隔壁の高さが同一であり、且つ第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接しているときには、隣りの放電空間へ向けて伝搬してきた励起原子等の全てが第2隔壁に衝突してそのエネルギーを損失することとなるので、当該放電空間で生じうる輝度に寄与しない放電を完全に不発生とすることができ、(b)他方、(a)でないときには、隣りの放電空間へ向けて伝搬してきた励起原子等の多くが第2隔壁に衝突しうることとなるので、上記の不要な放電の発生を従来技術よりもより低減することが可能となるのである。
(2) 任意の放電空間同士の内で第2隔壁の第3側面部によって隔離される側の放電空間に関して、第3側面部およびその上に付着された蛍光体が当該放電空間の内側へより一層に張り出した状態が実現されている結果、第1表示電極の帯状透明導電膜の内で金属電極が形成されていない部分に対面する、第2基板の対向面の部分及び誘電体の部分間における放電空間で生じた紫外線が、より早く第3側面部上の蛍光体及び当該第2隔壁に到達することができることとなり、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果をより一層発揮させることが出来る。
また、第2隔壁の前記第4側面部もまた、第2表示電極の帯状透明導電膜の内で金属電極が形成されていない部分に対面する、第2基板の対向面内の第4領域内にあるので、更に次の効果(1)、(2)を奏する。
(1) 任意の放電空間同士の内で第2隔壁の第4側面部によって隔離される隣りの放電空間に関しても、第2表示電極の金属電極に於ける放電を抑えて消費電力の低減化を促進することが可能となり、より効率の良い面放電型プラズマディスプレイパネルを実現することができる。即ち、第2表示電極の金属電極に対面する第1領域内の第2隔壁と当該金属電極に対面する誘電体の部分との間における放電空間では、(a)第1及び第2隔壁の高さが同一であり、且つ第1及び第2隔壁の各頂上部が誘電体の表面と当接しているときには、他方の放電空間へ向けて伝搬してきた励起原子等の全てが第2隔壁に衝突してそのエネルギーを損失することとなるので、当該放電空間(隣りの放電空間)で生じうる輝度に寄与しない放電を完全に不発生とすることができ、(b)他方、(a)でないときには、他方の放電空間へ向けて伝搬してきた励起原子等の多くが第2隔壁に衝突しうることとなるので、上記の不要な放電の発生を従来技術よりも、より低減することが可能となるのである。
(2) 任意の放電空間同士の内で第2隔壁の第4側面部によって隔離される隣りの放電空間に関しても、第4側面部およびその上に付着された蛍光体が当該放電空間の内側へより一層に張り出した状態が実現されているので、第2表示電極の帯状透明導電膜の内で金属電極が形成されていない部分に対面する、第2基板の対向面の部分及び誘電体の部分間における放電空間で生じた紫外線が、より早く第4側面部上の蛍光体及び当該第2隔壁に到達することができることとなり、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度化、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を更により一層発揮させることが出来る。
また、第j番目の単位発光領域と第(j+1)番目の単位発光領域との間に他の第2隔壁を更に設けているので、当該他の第2隔壁によって隔離される第j番目の単位発光領域と第(j+1)番目の単位発光領域とについても、第2隔壁を設けたことにより任意の単位発光領域同士で得られる効果、即ち、放電漏れの低減化または完全防止という効果が同様に得られる。
また、第j番目の単位発光領域と第(j+1)番目の単位発光領域との間に設けられた他の第2隔壁の上にも蛍光体が付着しているので、当該他の第2隔壁で隔離される第j番目の単位発光領域と第(j+1)番目の単位発光領域とについても、第2隔壁及びその上に付着された蛍光体を共に設けたことにより任意の単位発光領域同士で得られる全ての効果が同様に得られる。
また、任意の画素の単位発光領域について、同様の効果が得られる。
また、隣接する画素の同色の単位発光領域同士を含む領域に対して、共通の第1表示電極を設け、且つ隣合う第1隔壁と直交する2つの第2隔壁を設けているので、次の効果(1)〜(4)を奏する。
(1) 2つの画素が第1表示電極を共有できる点において高画素密度化、従って高精細化に寄与することが出来る。
(2) 隣接する画素の同色の単位発光領域同士を含む領域に対して段落(0273)記載と同様の効果を奏することが可能となる。
(3) 2つの画素が第1表示電極を共有できる点より、当該共有の第1表示電極が無い場合の問題点、即ち、隣接する画素の同色の単位発光領域同士のそれぞれの隣接する第1、第2表示電極間で生じ得る放電による影響を無くすことが出来る。
(4) 第2方向に関して2画素毎に第2隔壁を設ければよいので、第1及び第2基板の貼り合わせ工程時に於ける位置合わせマージンをより大きくすることができる。
また、第i番目の単位発光領域と前記第(i+1)番目の単位発光領域との間の前記第2基板上に更に別の第2隔壁を設けているので、段落(0276)〜(0278)に記載の効果(1)、(2)、(3)に加えて、更に、(4)共通の第1表示電極と、更に隣接する他の画素に於ける第2表示電極との間で生じ得る放電もれを完全にまたは十分に低減することが出来る。
また、本発明の面放電型プラズマディスプレイパネルにおいて得られる効果を奏することが可能な面放電型プラズマディスプレイ装置を実現することが出来る。
また、2つの隣合う第1隔壁と、2つの隣合う第2隔壁とで囲まれた升形状の放電空間毎に蛍光体が付着された第2基板を実現することができる。従って、1)紫外線の損失を低減することによる高輝度可、2)発光漏れの抑止、3)放電漏れの抑止という効果を全て同時に奏する面放電型プラズマディスプレイパネルを実現することも可能となる。
また、網目状パターンを備えるマスクに基づいて、容易に複数の第1隔壁と複数の第2隔壁とを同時に形成することができる。
また、従来用いられてきたサンドブラスト法をそのまま踏襲して、同一高さの第1隔壁と第2隔壁とを同時に形成することができる。
また、従来用いられてきたサンドブラスト法をそのまま踏襲しつつ、第1隔壁とそれよりも低い第2隔壁とを同時に形成することができる。
また、隔壁エッジ部が丸くならず、且つ隔壁の高さ寸法の変動も少ない、良好な第1隔壁と第2隔壁とを、高精度で以て同時に形成することができる。
11 第1基板、21 第2基板、41 透明電極、42 金属電極、XE X電極、YE Y電極、EU 単位発光領域、EG 画素、29 第1隔壁、50 第2隔壁、28 蛍光体、22 A電極。