JP4112225B2 - 排気管構造 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関の排気管構造に関する。特に、排気管内に保持されている触媒の耐久性を向上させる排気管構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
排気管内には排気ガスを浄化するための触媒が設置されている。この触媒はある一定以上の温度(約500度以上)において排気ガスを浄化する作用を高効率的に奏する。したがって、内燃機関の始動直後の一定時間の間は、触媒の温度が低く、排気ガスの浄化率が低い。そこで、触媒昇温を早期に行うため、触媒の配置を排気ガス温が比較的高い内燃機関側に近づけるようにしたものが公知である。
【0003】
しかしながら、内燃機関側に触媒を近づけて配置すると、各排気ポートから排出される排気ガスが拡散する前に触媒に達することから、排気ガスが触媒に均一に当たらなくなるため、触媒に局部的に高温部が生じることになり、触媒内に熱応力が発生する。このような場合には、熱応力の影響で触媒に歪みが生じたり、局部的な高温部に排気ガス浄化機能の低下が見られるおそれがある。
そこで、特開平08−68316には、上記問題を解決するための排気管構造として、内燃機関の排気ポートに接続される各排気通路の出口方向を、排気ガスが触媒担体に均一に当たるように各排気通路毎に調整したものが開示されている。かかる排気管構造では、円筒状の触媒担体の周方向に見れば、均一に排気ガスが触媒担体に当たっているが、半径方向に見れば、温度分布が均一でない。これは、各排気ポートから排出される排気ガスが十分に拡散する前に触媒担体に達することに起因する。したがって、依然触媒担体内に熱応力が発生しているため、上記問題を完全に解決するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらのことから、本発明は、触媒担体の暖機性能を低下させることなく、触媒担体に当たる排気ガスの分布を均一にすることを、その課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に係る通り、内燃機関の複数の排気ポートに接続する複数の排気通路及びその集合する集合部が内外二重構造であり、集合部の下流に排気ガスを浄化する触媒担体が設置されている排気管構造において、前記集合部の内管コーンは各排気通路の内管より大なる容積を有し、前記排気通路の内管から排出される排気ガスが前記内管コーンの内壁に衝突するように構成され、前記触媒担体の保持部と前記内管コーンとの間に排気ガスを拡散させるための空間を有する排気ガス拡散部を介設し、前記内管コーンの下流端部を前記排気ガス拡散部の上流端部と前記集合部の外管の下流端部とにより挟み込んだことを特徴とする排気管構造である。
【0006】
また、請求項2に係る発明では、請求項1の排気管構造において、前記集合部の外管の下流端部の内側であって前記内管コーンの下流端部の下流側に、該内管コーンの下流端部より板厚が厚く、外径が同内管コーンの下流端部の外径と略同一の内管リングを固定し、下流側から前記排気ガス拡散部の上流端部を前記内管リングに嵌挿し、前記集合部の外管及び前記内管リング及び前記排気ガス拡散部を接合したことを特徴とする排気管構造である。これは、請求項1の二重管構造排気管の組付け性を高めるための手段である。
【0007】
【作用】
上記の構造を有する排気管であれば、排気通路から流れてくる排気ガスは、排気通路の集合部において、排気通路出口に対面する集合部の内管コーンの内壁に衝突する。集合部の内管コーンは一定の容積を有するため、衝突後の排気ガスの流れ方向が一方向に定まらず排気管内全体に拡散し始める。そして、集合部下流に設けられた空間で、排気ガスが十分に管全体に拡散することができる。この結果、排気ガスは偏り無く触媒担体に当たる。また、排気通路及び集合部が二重管構造であるため、二重管構造の断熱機能により排気ガスの温度低下が抑制され、触媒担体の暖機性能が維持される。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、内管リングは集合部の内管コーンの端部と外径が略同一であり、内径が小さいため、排気ガス拡散部の上流端部を集合部の内管コーンへ挿入する際に、内管コーンの端部を集合部下流の排気ガス拡散部の上流側端部でかつぐ心配がない。従って、集合部とその下流の排気管の組付け性が向上する。
【0009】
【発明の実施形態】
図1から図4を参照して、本発明に係る実施例について説明する。排気管1は、エンジンのシリンダヘッド(図示しない)に取付けられるために、その上流に取付けフランジ3を有している。該フランジ3にはシリンダヘッドと排気管1を締結するためのボルト穴5が形成されている。また、排気管1には各シリンダの排気ポート(図示しない)に接続するそれぞれ分岐した排気通路7a、7b、7c、7dが形成されている。排気通路7a〜7dはその断面が略円形状のパイプからなる内管9とそれを覆う外管11とからなる。各排気通路7a〜7dの内管9はその下流側端部に設けられた1部品からなる内管コーン13に夫々嵌挿されて、集合する。前記各内管9と内管コーン13の外側を一定の空間を挟んで外管11が覆っている。この外管11はプレス加工などによって形成された上側部品12と下側部品14を溶接してなり、モナカ形状をしている。この集合部15において排気管1は各排気通路7a〜7dと集合部下流の排気管とが略直交するように形成されている。排気管1には屈折部下流に排気ガスを拡散するための所定の空間部17が設けられている。該空間部17の下流に排気ガスを浄化するセラミックス製のモノリス構造の触媒担体19が設置されている。空間部17の軸方向長さは触媒暖機性及び、排気ガスの拡散効果を考慮して決定する。また、空間部17の径は触媒担体19の径と同等かそれ以上が望ましい。本実施例では、前記空間部17は、触媒担体19と略同径、同長の容積を有している。
より詳細に排気管1の構造を説明する。前記内管9と内管コーン13を覆う外管11は外管上部21と外管下部A23、外管下部B25の3部品から構成される。そして、外管上部21と外管下部A23は、外管上部21の外周端部27を外管下部Aの外周端部29が覆うように嵌め合わさり、溶接されて接合されている。また、外管下部Aと外管下部Bは、外管下部Aに形成されている接続用穴16に外管下部Bを嵌挿し、該嵌挿部を溶接することで接合されている。内管9は内管コーン13にその側面から嵌挿され、内管コーン13の内側壁に内管から排出される高温、高圧の排気ガスが周期的に衝突する構造になっている。そのため、内管コーン13には排気ガスの衝突により発生する周期的な応力に耐え得る構造として、一枚の金属板を絞り加工することによって得られる1ピース部品が採用されている。これにより、集合部の内管に溶接構造を採用した場合に生じていた溶接部からの亀裂、溶接部からの排気ガス漏れに起因する外管11の亀裂等が抑制される。
内管コーン13と外管上部21には空燃比センサ(図示しない)を取付けるための開口33が設けられている。該開口33は、およそ各内管の管軸が交わる点に空燃比センサが位置する位置に設けられている。この位置に空燃比センサを設置することで、各排気ポートから排出される排気ガスの空燃比センサへのガス当たりが良好となり、より正確な空燃比の測定が可能となる。したがって、空燃比制御の精度が向上するため、排気ガスの浄化性能が向上する。
内管コーン13の下流部は外管下部B25に挿入されている。内管コーン13の下流部端部35は拡径加工され、内管コーン13の外径は外管下部B25の内径と略同一に形成されている。一方、外管下部B25の上流部37に位置する内管コーンの外径は、内管コーンの拡径部35に比べて径が小さい。そのため、外管下部B25の上流部37と内管コーン13との間には空間39が存在する。該空間39の一部には、内管コーン13の振動を防止するためにワイヤメッシュリング41が介挿されている。該ワイヤメッシュリング41は、前記空間39に介挿された後、内管コーン13のワイヤメッシュリング41が当接する部位を拡径加工するか、又は外管下部B25のワイヤメッシュリング41が当接する部位を縮径加工することによって確実に、内管コーン13と外管下部B25に挟み込まれる。
そして、前記外管下部A23と外管下部B25とを溶接した溶接部43は、内管コーン13と外管下部B25とワイヤメッシュリング41に囲まれた空間45近傍に位置するように設計される。一般に、排気管内を高温の排気ガスが脈動的に流れるため、排気管は熱による収縮を繰返すことになる。かかる場合に、熱による収縮に伴い発生する熱応力が接合部である溶接部に集中することになり、溶接部に亀裂が生じる虞がある。前記空間部45は、排気ガスの脈動による内管コーン13の温度変化の外管下部A23と外管下部B25との接合部である溶接部43への伝達を遮断する機能を有する。そのため、外管下部A23と外管下部B25との接合部の信頼性が向上することになる。
次に触媒担体19を保持する触媒担体ケース47と前記外管及び内管コーン13の接続構造について説明する。触媒担体ケースは前述の通り、排気ガスを拡散するための拡散部49と触媒担体を保持するための触媒担体保持部51とからなる。排気ガス拡散部49の上流側端部53は、外管下部B25の下流端内側55に固設された内管リング57に嵌挿し、内管リング57の上流側に位置する内管コーン拡径部35に遊嵌される。ここで、内管リング57と内径コーン拡径部35の内径、及び外径の大小関係は、内管リング57の外径と内管コーン拡径部35の外径は略同一であり、内管リング57の内径の方が内管コーン拡径部35の内径より小さくなっている。前記の大小関係から、触媒担体ケース47を外管下部B25及び内管コーン13に下流側から挿入する際に、触媒担体ケース47の上流の軸方向端面59が内管コーン13下流の軸方向端面61を押し上げるという不具合が解消される。
このように、触媒担体ケース47と外管下部B25及び内管コーン13の接続構造は、内管コーン拡径部35と内管リング57を排気ガス拡散部49と外管下部B25とにより挟みこむ構造となる。そして、排気ガス拡散部49外側面と内管リング57下流端面、及び外管下部B25下流端面を溶接63して接続する。内管リング57は、内管コーン13とは異材質の材料からなり、具体的には、外管下部B25及び触媒担体ケース47の排気ガス拡散部49と同一の線膨張係数(例えば、SUS444T、線膨張係数=11.8×10-6cm/cm・℃)を有する材料か、又は、それに近い線膨張係数を有する材質からなる。また、外管11や触媒担体ケース47に比べて高温の排気ガスに曝される内管コーン13は、外管11や触媒担体ケース47と異なり、許容温度域の高い材質(例えば、SUSXM15J1、線膨張係数=18.8×10-6cm/cm・℃)を使用する必要がある。したがって、外管11や触媒担体ケース47と内管コーン13の材料の熱膨張係数の違いから、これらを直接溶接接合すると、両者の熱膨張差から接合部に亀裂が発生する虞があるが、前述した構造であれば、即ち、内管コーンの拡径部35が外管11及び触媒担体ケース47に固接されない構造であれば、外管11や触媒担体ケース47との熱膨張差によって生じる接合部63の亀裂の発生が抑制されることになる。また、内管リング57は外管11及び触媒担体ケース47と同一、又はそれに近い線膨張係数を有する材質からなるため、外管11及び触媒担体ケース47と直接溶接接合しても該接合部に熱膨張差による亀裂の発生などの問題が生ぜず、内管コーン13の支持機能、接合部63のシール機能を発揮することができる。
次に、上記排気管の構成において、排気通路7cから排出される排気ガスの拡散する様子について図3にて説明する。排気ガスは内燃機関の各気筒の各排気ポートから排出され、各排気通路7cを通って、排気通路集合部15へ流れる。集合部15へ流れ出た排気ガス67は、排気通路7c出口に対面する内管コーン13の内側壁65に略直角に衝突する。内管コーン13は円筒形状であることから、内管コーン13の内壁に略直角に衝突した排気ガス67は、衝突位置から両側に内管コーン13の内側壁に沿って流れることになる(矢印69a、69b)。これは、内管コーン13の容積が、排気通路7cの内管9の容積に比べて大きいために、即ち、排気通路7cの内管9によって方向ずれかれた排気ガス流れを衝突後に多方向に向けることができる容積を有するために、排気ガスが十分に拡散することができることを示す。したがって、内管コーン13は円筒形状に限らず、排気通路の内管と比べて大きな容積を有すればよい。また、排気通路の内管の断面積より、集合部の内管の軸方向断面積が大きい構成であってもよい。そして、集合部15の下流側に位置する空間部17は、その内径が触媒担体外径と略同一に形成され触媒担体19に至るまで径が細くなることはない。したがって、集合部15及び空間部17において十分に拡散した排気ガスが集約されて触媒担体に局所的に当たることがなく、触媒担体内部温度の均一化が図れる。この空間部17は、内管コーン13の内壁に衝突し、拡散し始めた排気ガスを集約しない形状であれば、実施例以外の形状でもよい。例えば、空間部17の一部に拡径部を設けた形状などである。
また、各排気通路7a〜7dの内管9は内管コーン13へ各々異なる方向から挿入されているため、内管9から内管コーン13へ排出される排気ガスの方向も異なる。したがって、各排気通路7a〜7dの前述した内管コーン13内での排気ガスの拡散効果を考慮すると、内燃機関全体として排気ガスは触媒担体19に偏ることなく当たることになる。
また、別の実施例として、より排気ガスを拡散するために、排気ガスが衝突する内管コーンの内側壁に排気ガスの流動方向を排気ガスが拡散する方向へ導くリブや溝、凹凸を成形してもよい。また、触媒担体ケースの排気ガス拡散部の内側面にも同様の加工をすることで、より排気ガスの拡散を促進することができる。
ここで、本発明と排気集合管が単管構造であって、触媒担体が排気集合管の直下流に設置された排気管との触媒暖機性、及び、触媒担体内の温度分布について説明する。図5の横軸はエンジン始動からの時間を示しており、縦軸に触媒担体の中央温度を示している。本図によると、エンジン始動から40秒後には約50℃の差がでており、本発明のように触媒担体19を内燃機関から遠ざけて配置しても、排気集合管として二重管構造を採用することにより暖機性能が向上することが分かる。また、このとき、触媒担体内の最高温度と最低温度の差は、本発明がΔT=約60℃であるのに対して、比較対照の排気管構造ではΔT=約130℃であった。よって、触媒担体19に達する前に、触媒担体19の上流に設けられた空間部17において十分に拡散された排気ガスが触媒担体に均一の当たっていることが分かる。
【0010】
【発明の効果】
請求項1に係る発明を採用することにより、内燃機関の各気筒の各は粋ポートから排出される排気ガスは、集合部において、集合部内管の内側壁に直交して衝突し拡散し始め、集合管及びその下流の空間部において十分に拡散が行われ、触媒担体に均等に当たる。また、各排気通路及び集合部に二重管構造を採用したため、排気ガスは高温状態を維持したまま、触媒担体に均等に当たる。したがって、触媒昇温に係る時間を短縮又は維持したまま、触媒担体内の温度分布を均一にして熱応力を低減することができる。
【0011】
請求項2に係る発明を採用することにより、集合部下流の排気管と集合部を組付ける際に、集合部下流の排気管が集合部の内管コーンを担ぐことなく組付けることができる。よって、内管コーンが設計通りの位置に配置され排気管構造の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の側面図である。
【図2】本発明の実施例の正面図である。
【図3】本発明の実施例の上面図である。
【図4】本発明の実施例の集合部の側面図の断面図である。
【図5】本発明と従来技術との触媒暖機性の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
1…排気管、3…取付フランジ、5…ボルト穴、7…排気通路、9…内管パイプ、11…外管、13…内管コーン、15…集合部、17…空間部、19…触媒担体、21…外管上部、23…外管下部A、25…外管下部B、27…外管上部の外周端部、29…外管下部Aの外周端部、35…内管コーン下流の拡径部、37…外管下部Bの上流部、41…ワイヤメッシュリング、47…触媒担体ケース、49…排気ガス拡散部、51…触媒担体保持部、57…内管リング、59…触媒担体ケース上流の軸方向端面、61…内管コーン下流の軸方向端面、65…内管コーン内側壁
Claims (2)
- 内燃機関の複数の排気ポートに接続する複数の排気通路及びその集合する集合部が内外二重構造であり、集合部の下流に排気ガスを浄化する触媒担体が設置されている排気管構造において、前記集合部の内管コーンは各排気通路の内管より大なる容積を有し、前記排気通路の内管から排出される排気ガスが前記内管コーンの内壁に衝突するように構成され、前記触媒担体の保持部と前記内管コーンとの間に排気ガスを拡散させるための空間を有する排気ガス拡散部を介設し、前記内管コーンの下流端部を前記排気ガス拡散部の上流端部と前記集合部の外管の下流端部とにより挟み込んだことを特徴とする排気管構造。
- 請求項1に記載の排気管構造において、前記集合部の外管の下流端部の内側であって前記内管コーンの下流端部の下流側に、該内管コーンの下流端部より板厚が厚く、外径が同内管コーンの下流端部の外径と略同一の内管リングを固定し、下流側から前記排気ガス拡散部の上流端部を前記内管リングに嵌挿し、前記集合部の外管及び前記内管リング及び前記排気ガス拡散部を接合したことを特徴とする排気管構造。
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