JP4112224B2 - 薄板積層コアおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電流検出用トランスコアやモータコア等に使用される積層タイプの磁性コアに関し、特に磁性薄帯層間に隙間を設けて一体化することにより、組み立て工程が簡略化され、かつ磁気特性が向上された薄板積層コアおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電流検出用のトランスコアやモータコア等は、優れた交流磁気特性を得るために、複数枚の磁性薄帯が積層されている。
【0003】
このようなコアに用いられる磁性薄帯としては、飽和磁束密度が高く、透磁率が高く、さらにヒステレシス損や渦電流損が少ない磁性薄帯が適しており、例えばパーマロイと呼ばれるNi−Fe系の軟磁性材、Si−Fe系のケイ素鋼板が用いられる。このような磁性薄帯には、渦電流による損失を抑制するため、その表面に絶縁層被覆が形成される場合もある。
【0004】
このような磁性薄帯は、例えば0.35mm程度の厚さに加工された後、プレス加工によりリング形、E字形、I字形、U字形等の所定形状に打抜かれてコア片となる。
【0005】
このコア片には加工時に蓄積された歪み等を除去するために、通常、磁性焼鈍が施される。磁性焼鈍が行われたコア片は複数枚積層され、樹脂成形したコアケースや巻線されたボビン等へ組み込まれてトランスコアとして機能させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トランスコアやモータコア等においては、さらに優れた特性が求められているとともに、渦電流損失の抑制、小型化、低価格化等についても改善が求められている。
【0007】
トランスコア等では感度を維持しながら容積を小さくするために、コア材としてパーマロイ等のNi−Fe系の高透磁率材を使用し、コア片の板厚を薄くすることが検討されている。
【0008】
しかしながら、一般にコア片の板厚が薄くなると、熱処理時に溶着しやすくなる傾向がある。例えば、上記パーマロイについては良好な磁気特性を引き出すために、水素等の還元雰囲気中、1000〜1200℃の高温で熱処理されているが、このような高温での熱処理によるコア片の溶着が問題となっている。このような熱処理時の溶着を抑制するため、アルミナ粉末等の溶着防止剤を1枚1枚のコア片に塗布することも検討されているが、工程数が増加するために工業上好ましくない。
【0009】
また、熱処理後の1枚1枚のコア片は非常に柔らかく、応力・衝撃により磁気特性が劣化しやすいため、樹脂製の保護ケース等へ収納しなければならない。しかも、1枚1枚のコア片を手作業により積層して保護ケースへ収納しなければならないため、コア片に過度の応力がかかりやすく、磁気特性が劣化しやすい問題があった。
【0010】
本発明は上述したような課題を解決するためになされたものであって、製造・組立が容易であり、磁気特性が改善された薄板積層コアおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄板積層コアは、打ち抜き加工された磁性薄帯がカシメ部により複数枚積層され、前記カシメ部が半カシメの状態で固定された薄板積層コアにおいて、前記カシメ部が半カシメの状態で固定されることにより前記各磁性薄帯層間に0.01mm以上0.2mm以下の層間隙間が形成され、かつ前記磁性薄帯の厚さが0.05mm以上0.75mm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記薄板積層コアの見かけ高さに占める全層間隙間の比率が1%以上、25%以下であることが好ましい。
【0013】
前記層間隙間は、前記磁性薄帯どうしの固定に用いられる前記カシメ部を除き、前記磁性薄帯の面方向の全てに渡って形成されていることが好ましい。また、前記カシメ部は複数箇所に施されていることが好ましく、以下の式で示される層間隙間のばらつきXが1以下であることが好ましい。
(式1)ばらつきX=(最大層間隙間−最小層間隙間)/層間隙間平均値
【0014】
前記磁性薄帯の表面には絶縁層が形成されていることが好ましい。また、前記磁性薄帯はパーマロイまたはけい素鋼板であることが好ましい。さらに、上記したような薄板積層コアには、電気的な絶縁を目的とした樹脂コーティングによる外装が形成されていることが好ましい。このような本発明の薄板積層コアは、通信用トランス、変流器および零相変流器の中から選ばれる少なくとも一種に用いられることが好ましい。
【0015】
また、本発明の薄板積層コアの製造方法は、磁性薄帯をプレス加工することにより厚さが0.05mm以上0.75mm以下の所定形状のコア片を複数枚作製する工程と、前記コア片に1つ以上のエンボス部を形成する工程と、複数枚の前記コア片を前記エンボス部の位置が一致するように積層した後、半カシメの状態で固定することにより各コア片間に0.01mm以上0.2mm以下の層間隙間を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の薄板積層コアについて説明する。
【0017】
図1は本発明の薄板積層コア1について、一例として5枚の磁性薄帯を積層した場合の断面形状を示したものである。
【0018】
薄板積層コア1は、複数枚の磁性薄帯層2a〜2eがカシメ部3により固定されて一体化されている。磁性薄帯層2a〜2dのカシメ部3には、エンボス部4が形成されており、このエンボス部4は一方の面が凸部に形成され、他方の面が凹部に形成されている。磁性薄帯層2a〜2dまでの固定は、この凹部に凸部をはめ込むことにより行われる。
【0019】
例えば、磁性薄帯2aと磁性薄帯2bとの固定は、磁性薄帯2aの対向面に形成された凸部を、これに隣接する磁性薄帯層2bの対向面に形成された凹部にはめ込むことにより行われる。
【0020】
また、エンボス部4の凸部側に最後に配置される磁性薄帯層2eは、エンボス部4が形成される代わりに、空孔部5が形成されている。磁性薄帯層2dとこれに隣接する磁性薄帯層2eとの固定は、磁性薄帯層2dのエンボス部4の凸部を磁性薄帯層2eの空孔部5にはめ込むことにより行われる。
【0021】
このようにエンボス部4の凸部側に最後に配置される磁性薄帯層2eのカシメ部3を空孔部5とすることで、薄板積層コア1の表面に凸部が露出することを防ぐことができる。
【0022】
本発明は、このような構造の薄板積層コア1において、隣接する各磁性薄帯層2の間に、磁性薄帯層2どうしが密着しない部分である層間隙間6を有することを特徴とする。この層間隙間6は、磁性薄帯層2どうしの固定に用いられるカシメ部3を除き、磁性薄帯層2の面方向の全てにわたって形成されていることが好ましい。また全ての磁性薄帯層2a〜2e間に形成されていることが好ましい。
【0023】
このような層間隙間6は、磁性薄帯層2a〜2eを重ね合わせてカシメにより固定する際に、完全にカシメを行わずに半カシメの状態とすることで、各磁性薄帯層2どうしを密着させないことにより形成されるものである。
【0024】
本発明においては、各磁性薄帯層間に層間隙間が形成されているため、渦電流の発生を有効に抑制することができる。このため、従来のように磁性薄帯層に酸化皮膜等の絶縁被膜のみを形成する以上に、渦電流の発生についても有効に安定して抑制することが可能となる。
【0025】
また、磁性薄帯としてパーマロイ等を用いた場合、良好な磁気特性を引き出すための熱処理時に磁性薄帯が溶着するという問題があったが、本発明では磁性薄帯間に隙間が設けられているためこのような溶着も防ぐことが可能となり、溶着防止剤の塗布も省略することが可能となる。
【0026】
さらに、熱処理後のコア片は非常に柔らかく、応力・衝撃により磁気特性が劣化しやすく、取扱いには注意が必要であったが、本発明ではコア片が一体的に固定されているため熱処理後の取扱いも容易となる。
【0027】
本発明では、層間隙間6(d)を0.01mm以上とする。磁性薄帯層2間に少なくとも0.01mmの隙間が設けられていれば、熱処理を行った場合に磁性薄帯層2どうしが溶着することを有効に抑制することができる。また、この程度の隙間が設けられていることにより、積層方向への渦電流の発生も抑制することができ、磁気特性も向上させることができる。
【0028】
また、層間隙間6(d)は、0.2mm以下とする。層間隙間6(d)は0.2mmあれば十分な溶着防止効果および渦電流抑制効果が得られ、これ以上層間隙間6(d)を広げるとカシメ部がはずれる可能性があり、またかえって磁気特性が低下し、コアの高さも高くなってしまう。各層間隙間6(d)は、0.02mm以上、0.1mm以下であればより好ましい。
【0029】
層間隙間の測定は、工具顕微鏡等を用いてコアの外周部分で行うものとする。測定箇所は各カシメ部の外周部分と、各カシメ部の中間に相当する外周部分について行うものとする。そして、各測定箇所における層間隙間の測定値が上記範囲内であることが好ましい。
【0030】
磁性薄帯層2は、軟磁性合金からなるものであれば特に限定されるものではないが、飽和磁束密度・透磁率が高く、さらにヒステレシス損や渦電流損が少ないもの、例えばPCパーマロイ(80Ni−5Mo−Fe)やPBパーマロイ(45Ni−Fe)、けい素鋼板等からなるものが好ましい。
【0031】
磁性薄帯層の厚さ(t)は0.05mm以上、0.75mm以下である。磁性薄帯層の厚さ(t)が0.05mm未満であるとカシメによる固定が困難となり、また0.75mmを超えると高周波域での透磁率が低下し、交流トランス等での使用が期待できなくなる。
【0032】
また、本発明では薄板積層コアの見かけ高さ(H)に対する全層間隙間(T)の比率(以下、「隙間率」という)が、1%以上、25%以下であることが好ましい。
【0033】
なお、全層間隙間(T)とは、薄板積層コアの同一円周部分における層間隙間6(d)を全て足し合わせたものである。見かけ高さ(H)とは、前記全層間隙間(T)と全部の磁性薄帯層2の厚さ(t)とを合計したものである。
【0034】
例えば、n枚の磁性薄帯を積層した場合、全層間隙間(T)、見かけ高さ(H)および隙間率は以下の式で示される。なお、d1〜dn−1は各層間隙間を表し、磁性薄帯層の厚さ(t)は一定とした。
【0035】
全層間隙間(T)= d1+d2+d3+…+dn−1
見かけ高さ(H)=(n×t)+ T
隙間率 =(T/H)×100
【0036】
隙間率が1%未満の場合には、薄板積層コア全体に占める隙間部分が少なくなるため、渦電流が発生しやすくなり、磁気特性が劣化しやすくなる。また、隙間率が25%を超える場合には、カシメ部がはずれる可能性があり、また磁気特性が低下するだけでなく、薄板積層コアの高さが不必要に高くなるため好ましくない。隙間率は、5〜15%であればなお好ましい。
【0037】
図2は、本発明の薄板積層コア1を積層方向から見た外観を示したものである。
カシメ部3の形成数は特に限定されるものではないが、好ましくは円周方向のカシメ部3どうしの間隔が均等となるように2〜10箇所、より好ましくは4〜8箇所設けることが好ましい。また、各カシメ部3は磁性薄帯層2の外径と内径との中央部分に位置するように形成されることが好ましい。
【0038】
また、本発明では、以下の式1で示される層間隙間(d)のばらつき(X)が、1以下であることが好ましい。ばらつき(X)が、1を超える場合、部分的な磁気特性の変化が大きくなるため好ましくない。
(式1)ばらつきX=(最大層間隙間−最小層間隙間)/層間隙間平均値
【0039】
なお、本発明においては少なくとも4箇所以上の部分において層間隙間(d)を測定することが好ましい。測定箇所は各カシメ部の外周部分、および各カシメ部の中間位置に相当する外周部分で行うものとする。そして、測定された層間隙間(d)のうち最も測定値が大きかったものを最大層間隙間とし、最も測定値が小さかったものを最小層間隙間とする。
【0040】
例えば、図2に示されるように、カシメ部が3a、3bおよび3cと3箇所に形成されている場合、層間隙間(d)の測定は各カシメ部の外周部分と各カシメ部の中間位置の外周部分との計6個所の部分について行われる。
【0041】
カシメ部3a、3bおよび3cにおける層間隙間の測定値をそれぞれda1〜dan、db1〜dbnおよびdc1〜dcn(但し、nは層間数)とし、カシメ部3a〜3b、3b〜3c、3c〜3aの中間位置における層間隙間の測定値をそれぞれdab1〜dabn、dbc1〜dbcnおよびdca1〜dcan(但し、nは層間数)とすると、層間隙間の平均値(dav)は、以下のようになる。
dav={(da1+…+dan)+(db1+…+dbn)+(dc1+…+dcn)+(dab1+…+dabn)+(dbc1+…+dbcn)+(dca1+…+dcan)}/(n×6)
【0042】
例えば、層間隙間(da1)がもっとも大きく、層間隙間(dca1)がもっとも小さいと仮定すると、ばらつき(X)は、以下のようになる。
ばらつき(X)=(da1−dca1)/dav
【0043】
上記したような薄板積層コアには必要に応じて保護ケースまたは樹脂コーティング等により絶縁外装を施し、外装付き薄板積層コアとしてもよい。これらの絶縁体に用いられる材料は絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、好ましい材料としてはフェノール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等が挙げられる。
【0044】
上述した本発明の薄板積層コアは、例えば通信用トランス、CT(変流器)、ZCT(零相変流器)等に好適に用いることができる。
【0045】
次に、本発明の薄板積層コアの作製方法の一例について説明する。
薄板積層コアの用いられる磁性材料としては、軟磁性合金からなるものであれば特に限定されるものではないが、飽和磁束密度・透磁率が高く、さらにヒステレシス損や渦電流損が少ないもの、例えばPCパーマロイ(80Ni−5Mo−Fe)やPBパーマロイ(45Ni−Fe)、けい素鋼板等の軟磁性材料が挙げられる。
【0046】
この磁性材料に溶製、熱間加工・冷間加工を施し、磁性薄帯を作製する。この際、磁性薄帯の厚さを、0.05〜0.75mmとする。磁性薄帯の厚さが0.05mm未満であるとカシメによる固定が困難となり、0.75mmを超えると高周波域での透磁率が低下し、交流トランス等での使用が期待できなくなる。
【0047】
次に、この磁性薄帯の表面に、例えばマグネシア(MgO)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)等の金属酸化物の懸濁液を塗布乾燥することにより絶縁膜を形成する。ただし、積層コアの寸法・形状によっては、この絶縁処理は省略してもよい。
【0048】
このような磁性薄帯をプレス加工により打抜き、平面形状がリング状、E・I・U形状等の所定形状を有するコア片を作製する。得られた各コア片には、固定のために用いられるエンボス部または空孔部を1〜10箇所程度形成する。
【0049】
このようなコア片を複数枚用意し、エンボス部の凸部を他のコア片に形成されているエンボス部の凹部または空孔部に位置するように重ね合わせ、これをカシメによりコア片間に隙間が残存するようにはめ合わせて一体化させる。
【0050】
本発明では、カシメの圧着度を一般より弱くし、半カシメの状態でエンボス部をはめ合わせることにより、各コア片間の層間隙間を制御する。このカシメの際の圧着力は、磁性薄帯どうしの間に形成される層間隙間が0.01mm以上、0.2mm以下となるように制御すると共に、好ましくは薄板積層コアの見かけ高さに占める全層間隙間の比率が1%以上、25%以下となるように制御する。
【0051】
以上のように一体化したコア片には、必要に応じてアルミナ粉等を付着させて溶着防止を施した後、温度1000〜1200℃で0.5〜2時間の磁性焼鈍を行うことにより本発明に係る積層コアが製造される。
【0052】
本発明の薄板積層コアでは、各コア片の間に隙間が設けられているため上記磁性焼鈍の際の磁性薄帯どうしの溶着が抑制されるため、必ずしもアルミナ粉等を付着させる必要はなく、この粉体の付着工程を省略することも可能である。
【0053】
さらに、作製された薄板積層コアには電気的な絶縁を目的として必要に応じて保護ケースまたは樹脂コーティング等により絶縁外装を施し、外装付き薄板積層コアとしてもよい。これらの絶縁体に用いられる材料は絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、好ましい材料としてはフェノール樹脂、PET、PBT等が挙げられる。
【0054】
【実施例】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
重量比による組成が80%Ni−5%Mo−Feである磁性合金に熱間加工・冷間加工を施して、厚さ0.5mmの磁性合金薄帯を作製した。次に、磁性合金薄帯を所定幅にスリット加工後、プレス加工で打抜き加工することにより、25.5mm(外径)×19.0mm(内径)×0.5mm(厚さ)のリングコア片を多数作製した。
【0055】
実施例1〜3および比較例2については、得られたリングコア片を2点で固定するため、2箇所丸孔つきコア片1枚および2箇所エンボス付きコア片4枚を準備した。実施例4〜6および比較例3〜4については、得られたリングコア片を4点で固定するため、4箇所空孔部付きコア片1枚および4箇所エンボス付きコア片4枚を準備した。また、比較例1については、エンボス部および空孔部を設けないリングコア片を5枚準備した。なお、比較例4の薄板積層コアに使用する以外のリングコア片には、ZrO2をコーティングすることにより絶縁膜を形成した。
【0056】
これらリングコア片のエンボス部の凸部を他のリングコア片のエンボス部の凹部または空孔部に位置するように5枚重ね合わせ、一体の薄板積層コアを作製した。なお、実施例1〜6については、カシメの際の加圧力を調整することにより各コア片の間隔を調整した。また、比較例1については、カシメを行わずに積層するのみとした。
【0057】
次に、これらの薄板積層コアに、水素炉で温度1100℃、1時間の磁性焼鈍を行い、工具顕微鏡で層間隙間を測定した後、20ターンの巻線を施し、直流磁気特性および交流磁気特性を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0058】
表1から明らかなように、実施例1〜6の薄板積層コアはリングコア片どうしの溶着が抑制されているため、交流磁気特性に優れる結果となった。
【0059】
(実施例7〜10、比較例5)
実施例5と同様の薄板積層コアを樹脂ケースに挿入、またはフッ素コーティングあるいはエポキシコーティングすることにより、実施例7〜10の外装付きの薄板積層コアを作製した。また、比較のために、比較例1と同様の薄板積層コアをエポキシコーティングすることにより、比較例5の外装付きの薄板積層コアを作製した。
【0060】
次に、これらの薄板積層コアに20ターンの巻線を施し、直流磁気特性および交流磁気特性を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0061】
表2から明らかなように、実施例7〜10の薄板積層コアは直流磁気特性・交流磁気特性の低下が少なく、樹脂ケースへの挿入またはコーティングによる影響を受けにくいことが認められた。
【0062】
(実施例11〜13、比較例6)
重量比による組成が80%Ni−5%Mo−Feである磁性合金に熱間加工・冷間加工を施して、厚さ0.35mmの磁性合金薄帯を作製した。次に、磁性合金薄帯を所定幅にスリット加工後、プレス加工で打抜き加工することにより、コアサイズEE−19(電子情報技術産業協会規格)用のE字形コア片を多数作製した。
【0063】
実施例11〜13については、得られたE字形コア片を6点で固定するため、6箇所空孔部付きコア片1枚および6箇所エンボス付きコア片23枚を準備し、コア片のエンボス部の凸部を他のコア片のエンボス部の凹部または空孔部に位置するように24枚重ね合わせ、半カシメによりはめ合わせを行いE字形コアを作製した。E字形コアは各実施例につき2個ずつ作製し、これを1組とした。なお、各コア片どうしの間隔は、カシメの際の加圧力を調整することにより行った。
【0064】
また、比較例6として、エンボス部および空孔部を設けないE字形コア片24枚を積層して2個のE字形コア(コアサイズEE−19)を作製した。なお、実施例および比較例のE字形コア片には、マグネシアをコーティングすることにより絶縁膜を形成した。
【0065】
次に、これらのE字形コアに、水素炉で温度1100℃、1時間の磁性焼鈍を行い、工具顕微鏡で層間隙間を測定した後、所定の巻線を施したボビンに2個のE字形コアを突き合わせてトランスとし、インダクタンス値を測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0066】
表3から明らかなように、実施例11〜13の薄板積層コアはいずれもインダクタンス値に優れていることが認められた。
【0067】
【発明の効果】
本発明の薄板積層コアによれば、磁性薄帯を複数枚積層した場合においても、一層ごとにわずかな隙間が形成されているため、交流磁場中で高い透磁率が得られ、コイル部品としての高い性能を得ることができる。
【0068】
また、本発明の薄板積層コアは剛性が大きいので、熱処理後の組立の際に応力の影響を受けにくく、特性ばらつきを大幅に減少させることができる。さらに磁性薄帯を積層して形成される積層ブロックコアは取扱いが容易であり、複数枚のコアを重ねて取扱う場合と比較して、組立工数を削減できる。
【0069】
また、本発明の薄板積層コアによれば、従来品では困難であった樹脂コーティングによる外装も可能となり、コアケース金型費、ケース加工費、ケース詰め費等も削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄板積層コアを示した断面図
【図2】本発明の薄板積層コアを積層方向からみた平面図
【符号の説明】
1……薄板積層コア、2……磁性薄帯層、3……カシメ部
4……エンボス部、5……空孔部、6……層間隙間
Claims (9)
- 打ち抜き加工された磁性薄帯がカシメ部により複数枚積層され、前記カシメ部が半カシメの状態で固定された薄板積層コアにおいて、
前記カシメ部が半カシメの状態で固定されることにより前記各磁性薄帯層間に0.01mm以上0.2mm以下の層間隙間が形成され、かつ前記磁性薄帯の厚さが0.05mm以上0.75mm以下であることを特徴とする薄板積層コア。 - 前記薄板積層コアの見かけ高さに占める全層間隙間の比率が1%以上、25%以下であることを特徴とする請求項1記載の薄板積層コア。
- 前記層間隙間は、前記磁性薄帯どうしの固定に用いられる前記カシメ部を除き、前記磁性薄帯の面方向の全てに渡って形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の薄板積層コア。
- 前記カシメ部が複数箇所に形成されたものであって、以下の式で示される層間隙間のばらつきXが1以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の薄板積層コア。
(式1)ばらつきX=(最大層間隙間−最小層間隙間)/層間隙間平均値 - 前記磁性薄帯の表面には絶縁層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の薄板積層コア。
- 前記磁性薄帯がパーマロイまたはけい素鋼板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の薄板積層コア。
- 電気的な絶縁を目的とした樹脂コーティングによる外装が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の薄板積層コア。
- 通信用トランス、変流器および零相変流器の中から選ばれる少なくとも一種に用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の薄板積層コア。
- 磁性薄帯をプレス加工することにより厚さが0.05mm以上0.75mm以下の所定形状のコア片を複数枚作製する工程と、
前記コア片に1つ以上のエンボス部を形成する工程と、
複数枚の前記コア片を前記エンボス部の位置が一致するように積層した後、半カシメの状態で固定することにより各コア片間に0.01mm以上0.2mm以下の層間隙間を形成する工程と
を有することを特徴とする薄板積層コアの製造方法。
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