JP4112146B2 - 人工肘関節装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、人工関節装置、特にモジュール型の人工肘関節装置に関する。
【０００２】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ヒトの肘には３つの自由度が存在している。すなわち、屈曲−伸展、内反−外反（運搬角）、及び軸の回転である。ヒト生体肘関節との置換物として従来から種々の人工肘関節装置が作られてきた。周知の人工肘関節装置には連結型と非連結型という２つの基本的タイプが知られている。連結型の人工肘関節装置では、人工肘関節装置の構成部品によって人工肘関節部分が機械的に合わさって保持される。そのような人工肘関節装置は、例えば米国特許第５，３７６，１２１号（Huene ら）、米国特許第３，７０８，８０５号（Scalesら）、米国特許第３，９３９，４９６号（Lingら）、及び米国特許第４，２２４，６９５号（Grundei ら）に開示されている。非連結型の人工肘関節装置では、人工肘関節部分が患者の生体軟組織を介して連結保持される。そのような人工肘関節装置は、米国特許第４，２９３，９６３号（Goldら）に開示されている。上記２種類の人工肘関節装置は、いずれの場合も装置の一部分が患者の上腕骨に移植され、他の部分が尺骨に移植される。次に、２つの部分を何らかの方法で嵌め合わせることで関節接合が可能となる。米国特許第４，２２４，６９５号（Grundei ら）では、人工肘関節装置の追加部分が患者の橈骨に移植される。
【０００３】
外科医は、連結型の人工肘関節装置または非連結型の人工肘関節装置のどちらが患者にとって役に立つかを手術前に常時判断できるとは限らない。したがって、連結型または非連結型のどちらでも利用可能な人工肘関節装置を提供することが求められている。
【０００４】
また、移植後ある一定期間に亘って使用した際に、非連結型の人工肘関節装置を連結型のものに、あるいはその逆に変換する必要性が生ずる場合がある。そのような場合に対応するために、一般的には上腕骨及び尺骨に移植された人工肘関節装置の部分を取り除き、連結型または非連結型のいずれかと人工肘関節装置全体を置換する必要がある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
この発明は、連結型または非連結型の様式のいずれでも利用することが可能な人工肘関節装置を提供する。この発明の人工肘関節装置は、患者の体内に移植した後に連結型から非連結型へ、あるいは非連結型から連結型へ変換することが可能である。この発明のある特定の態様では、３つの自由度、すなわち屈曲−伸展、内反−外反（運搬角）、及び軸の回転を可能とする人工肘関節装置も提供する。
【０００６】
これらの特徴は、第１のステム、第２のステム及び３つの軸受構成部品を有するモジュール式の人工肘関節装置を提供することによって達成される。第１のステムは、第１の端部、第２の端部及び該端部に接続した本体を有する。また、本体にはスロットが形成されている。第１の軸受構成部品は、上記スロットと嵌合するように構成されたフランジを有する。第２のステムの一端部からは一対のアームが延びている。第２の軸受構成部品は、第２のステムのアームの間に適合（フィット（fit)）するように形成されており、また第１の軸受構成部品の軸受面に嵌合するように構成されている。第３の軸受構成部品は、第１の軸受構成部品及び第２の軸受構成部品と交換可能であって、第２のステムのアームの間に適合するように形成されている。また、第３の軸受構成部品は、上記スロットに嵌合するように構成されたフランジを有する。
【０００７】
この発明の第１の態様によれば、人工肘関節装置は各々のアームに形成された開口部、第２の軸受構成部品に形成された開口部、及びアームの開口部と第２の軸受構成部品の開口部とを貫通するピンを有する。
【０００８】
この発明の第２の態様では、人工肘関節装置は各々のアームに形成された開口部、第３の軸受構成部品に形成された開口部、及びアームの開口部と第３の軸受構成部品の開口部とを貫通するピンを有する。
【０００９】
この発明の第３の態様では、第１の軸受構成部品の軸受面は凹面形であり、第２の軸受構成部品は凸面を有する。
【００１０】
この発明の第４の態様によれば、モジュール型の人工肘関節装置は、第１の端部及び第２の端部を有し、かつ第１の端部はヒト尺骨の骨髄管の中に適合するように形成されているステムを有する尺骨側構成部品と、第１の端部を有し、かつ第１の端部がヒト上腕骨の骨髄管の中に適合するように形成されているステムを有する上腕骨側構成部品と、尺骨側構成部品に係合するように形成された第１の軸受構成部品と、上腕骨側構成部品に係合するように形成され、かつ肘の軟組織によって所定の位置に保持されるようにして第１の軸受構成部品と嵌合する第２の軸受構成部品と、第１の人工肘関節装置及び第２の人工肘関節装置と交換可能な第３の人工肘関節装置とを有し、該第３の人工肘関節装置は尺骨側構成部品と係合するように形成され、かつ上腕骨側構成部品によって所定の位置に保持される。
【００１１】
この発明の第５の態様では、尺骨側構成部品はスロットを有し、第１の軸受構成部品はスロットに嵌合するように形成されたフランジを有する。上腕骨側構成部品は１対のアームを有し、また第２の軸受構成部品は上腕骨側構成部品のアームの間に適合するように構成されている。各々のアームと第２の軸受構成部品には開口部がそれぞれ形成されており、ピンはアームの開口部と第２の軸受構成部品の開口部とを貫通するように構成されている。
【００１２】
この発明の第６の態様では、上腕骨側構成部品は一対のアームを有し、第３の軸受構成部品はアームの間に適合するように構成されている。開口部は各々のアームと第３の軸受構成部品とに形成されている。ピンはアームの開口部と第３の軸受構成部品の開口部とを貫通するように構成されている。
【００１３】
この発明の第７の態様では、スロットは尺骨側構成部品に形成されており、またフランジは第３の軸受構成部品に接続され、かつスロットと係合するように構成されている。別の態様では、スロットは尺骨側構成部品に形成されており、フランジは第１の軸受構成部品に接続され、かつスロットと係合するように構成され、さらに別のフランジは第３の軸受構成部品上に形成され、かつスロットと係合するように構成されている。
【００１４】
この発明の第８の態様では、人工肘関節装置は近位端部および遠位端部を持つ尺骨側構成部品と、近位端部および遠位端部を持つ上腕骨側構成部品とを有する。第１の軸受マウントが上腕骨側構成部品上に形成されており、それによって複数の軸受構成部品のうちの少なくとも２つと係合する。第２の軸受マウントが尺骨側構成部品上に形成されており、それによって複数の軸受構成部品のうちの少なくとも２つと係合する。一態様では、第１の軸受マウントは上腕骨側構成部品から延びる一対の離間したアームを有する。アームは上腕骨の遠位端部に位置していてもよい。本発明の別の態様では、第２の軸受マウントが尺骨側構成部品の近位端部に位置し、また尺骨側構成部品の一部分に形成されたスロットを有するものであってもよい。この発明の一態様では、第１の軸受マウント及び第２の軸受マウントは、複数の軸受構成部品の一つに同時に係合するように構成されている。
【００１５】
この発明の第９の態様によれば、モジュール式の人工肘関節装置は、軸受マウントを持つ上腕骨側構成部品と軸受マウントを持つ尺骨側構成部品とを有する。第１の軸受構成部品及び第２の軸受構成部品は、非連結型人工肘関節装置を形成するように、それぞれ上腕骨軸受マウント及び尺骨軸受マウントに係合するように構成されている。第３の軸受構成部品は、第１の軸受構成部品及び第２の軸受構成部品と交換可能であり、連結型人工肘関節装置を形成するように、上腕骨側構成部品及び尺骨側構成部品と係合するように構成されている。上腕骨軸受マウントは、互いに離間した一対のアームを有するものであってもよい。尺骨軸受マウントは、スロットを有するものであってもよい。第３の軸受構成部品は、開口部が形成された円筒状の本体を有するものであってもよく、またフランジが取り付けられていてもよい。フランジは、尺骨軸受マウントと接合する構成となっている。第１の軸受構成部品は、尺骨軸受マウントと接合するフランジを有するものであってもよい。第２の軸受構成部品は、開口部を有するものであってもよい。
【００１６】
この発明の第１０の態様では、モジュール式の人工肘関節装置は、上腕骨側構成部品、尺骨側構成部品、上腕骨側構成部品と尺骨側構成部品とを連結して連結型人工肘関節装置を形成するための第１の軸受、及び非連結型方式で上腕骨側構成部品を基準とした尺骨側構成部品の旋回運動を提供するために第１の軸受と交換可能な一組の軸受を有する。
【００１７】
この発明に基づく方法は、尺骨に人工肘関節装置の第１の構成部品を移植する工程と、上腕骨に人工肘関節装置の第２の構成部品を移植する工程と、３種類の軸受構成部品から、人工肘関節装置の第１の構成部品に連結される軸受構成部品と人工肘関節装置の第２の構成部品に連結される軸受構成部品の２種類の軸受構成部品を選択、あるいは残留する軸受構成部品を選択して人工肘関節装置の第１の構成部品及び第２の構成部品に対して確保しておく工程とを含む。
【００１８】
この発明の第１１の態様では、上記方法は、非連結型人工肘関節装置を形成するように、最初の２つの軸受構成部品を第１の構成部品及び第２の構成部品に連結する工程をさらに有する。別の態様では、上記方法は、連結型人工肘関節装置を形成するように、第３の軸受構成部品を第１の構成部品及び第２の構成部品に連結する工程をさらに有する。
【００１９】
この発明の第１２の態様では、人工肘関節装置は、第１の端部及び第２の端部を持つ第１のステムと、第１のステムに接続した本体と、該本体に形成されたスロットと、球形の軸受面を持つ第１の軸受構成部品と、第１の軸受構成部品に接続し、かつ上記スロットと嵌合するように構成されたフランジと、第１の端部及び第２の端部を持つ第２のステムと、該第２のステムの一端部から延びる一組のアームと、第２のステム設けられたアームの間に適合し、かつ第１の軸受構成部品と嵌合する第２の軸受構成部品とを有する。第２の軸受構成部品は球形の軸受面を有するものであってもよい。人工肘関節装置は、各々のアームに形成された開口部と、第２の軸受構成部品に形成された開口部と、アーム及び第２の軸受構成部品の開口部を貫通するピン及びスリーブとを有するものであってもよい。第１のステムの一部分及び（または）本体の一部分に隆起部を形成してもよい。第２の軸受構成部品に、少なくとも１本のアームに係合する窪み領域を設けてもよい。耳に似た位置・形状を呈する突起部を第２のステムに設けてもよい。小片を第１の軸受構成部品上に配置してもよく、またこの小片と係合する開口部を本体に形成してもよい。
【００２０】
この発明の第１３の態様では、人工肘関節装置は、第１の端部及び第２の端部を持ち、かつ第１の端部が尺骨の骨髄管内に適合するステムと、尺骨側構成部品と係合する第１の軸受構成部品と、上腕骨の骨髄管内に適合する第１の端部を持つステムを有する上腕骨側構成部品と、球面を持つ第２の軸受構成部品とを備え、さらに肘の軟組織によって所定の位置に保持されるように、第２の軸受構成部品は上腕骨側構成部品と係合し、第１の軸受構成部品と嵌合する。
【００２１】
この発明の第１４の実施態様では、人工肘関節装置は軸受マウントを持つ上腕骨側構成部品と、軸受マウントを持つ尺骨側構成部品と、各々が球形の軸面を持つ第１の軸受構成部品及び第２の軸受構成部品とを有するもので、第１の軸受構成部品は尺骨軸受マウントに係合し、第２の軸受構成部品は上腕骨軸受マウントに係合する。
【００２２】
この発明の第１５の態様では、人工肘関節装置は上腕骨側構成部品、尺骨側構成部品、及び上腕骨側構成部品を基準にして尺骨側構成部品の軸回転を与える複数の軸受とを有する。複数の軸受のうち少なくとも一つが球形の軸受面を有するものであってもよい。人工肘関節装置は、合わせて２つの自由度または３つの自由度を与えるものであってもよい。
【００２３】
この発明の第１６の実施形態例では、人工肘関節装置は、尺骨側構成部品と、上腕骨側構成部品と、上腕骨側構成部品を基準にして尺骨側構成部品の軸回転を与えるための手段とを有する。軸回転を与えるための手段は、球形の軸受面を有するものであってもよい。
【００２４】
この発明の第１７の実施形態例は、尺骨側構成部品と、上腕骨側構成部品と、尺骨側構成部品と上腕骨側構成部品との間で少なくとも３つの自由度を与えるための手段とを有する人工肘関節装置を提供する。
【００２５】
この発明の第１８の態様では、人工肘関節装置は、第１の端部及び第２の端部を持ち、かつ第１の端部が尺骨の骨髄管内に適合する尺骨側構成部品を有する。第１の軸受構成部品は、尺骨側構成部品と係合するようになっている。上腕骨側構成部品は、一対のアームと、上腕骨の骨随管内に適合する第１の端部を持つステムとを有する。第２の軸受構成部品は、上腕骨側構成部品と係合し、かつ第１の軸受構成部品と嵌合するように構成されている。第２の軸受構成部品は、上記アームに係合してテーパ状係止部を形成する一対のスロットを有する。
【００２６】
本発明の第１９の態様によれば、人工肘関節装置は、軸受マウントを持つ上腕骨側構成部品と、軸受マウントを持つ尺骨側構成部品と、尺骨側構成部品上で軸受マウントとテーパ状係止部を形成し、かつ上腕骨上に軸受マウントを係合するように構成された軸受構成部品とを有する。
【００２７】
この発明の第２０の態様によれば、モジュール式の人工肘関節装置は、スロットを持つ尺骨側構成部品と、テーパ状係止部を形成するようにスロットと嵌合するように構成されたフランジを持つ第１の軸受構成部品と、一対のアームを持つ上腕骨側構成部品と、上腕骨側構成部品のアームの間に適合し、かつ第１の軸受構成部品の一部を囲むように構成された第２の軸受構成部品とを有する。
【００２８】
この発明の他の特徴は、以下に説明する好ましい実施の形態例に関する詳細な説明と図面とによって明らかになるであろう。以下、本発明に基づく人工肘関節装置の具体例を説明する。
【００２９】
【発明の実施の形態】
図１は、非連結型様式で使用される本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の分解斜視図である。モジュール式の人工肘関節装置は、尺骨側構成部品１０、第１の軸受構成部品２０、上腕骨側構成部品３０、第２の軸受構成部品４０、及びピン５０を有する。
【００３０】
尺骨側構成部品１０は、第１の端部（または遠位端部）１２と第２の端部（または近位端部）１３とを持つステム１１を有する。ステム１１の第２の端部１３に近傍の部分は、ステムと尺骨との間における骨の内植を可能とする材料（骨内植用被覆材料）１４が被覆されていてもよい。コバルト−クロムあるいはチタン合金のような様々な周知の骨内植用被覆材料のいずれかを使用することができる。概略矩形状の本体１５はスロット１６を有し、また第２の端部１３に固定されている。本体１５及びスロット１６によって、以下に説明するように、複数の軸受構成部品のためのマウントが形成される。ステム１１は本体１５から所定の角度の傾きをもって延びている。隆起した係止部１７はステム１１と本体１５との接合部に形成されている。開口部１８は本体１５のスロット１６の底面に形成され、後述するように第１の軸受構成部品２０または第３の軸受構成部品６０に設けられた小片を受けるように構成されている。本体１５は、後述するように、小片を開口部１８に誘導するために利用される傾斜した窪み領域（またはノッチ）１８ａをさらに有する。尺骨側構成部品１０は、コバルト−クロムあるいはチタンのような外科用合金のいずれかから作製することができる。ステム１１以外の尺骨側構成部品１０の部分は、あるいはステム１１を含めた尺骨側構成部品１０の部分に、骨内植用被覆材料１４を設けてもよい。例えば、骨内植用被覆材料１４は本体１５の裏面１９に塗布してもよい。
【００３１】
第１の軸受構成部品２０は一般に台座２１を有するもので、該台座２１の底面に対して約９０度の角度で延びる係止部２２が台座２１に設けられている。フランジ２３は台座２１に設けられており、後述するように、尺骨側構成部品１０の本体１５に形成されたスロット１６と嵌合するように構成されている。小片２３ａはフランジ２３から突出している。第１の軸受構成部品２０は、凹形の軸受面（凹面）２４を有する。軸受面２４は、後述するように、モジュール式の人工肘関節装置が非連結型の様式で使用される場合、第２の軸受構成部品４０と嵌合する。
【００３２】
上腕骨側構成部品３０は、第１の端部（または近位端部）３３を持つ第１のセグメント３２と第２の端部（または遠位端部）３５を持つ第２のセグメント３４とを有するステム３１を備える。第２のセグメント３４は、第１のセグメント３２と一体成形されており、第１の端部３３から距離と共に広がる。互いに離間した一対のアーム３６は、第２の端部３５から突出して設けられ、かつステム３１の第２のセグメント３４に対して所定の角度をなす。各々のアーム３６には開口部３７が形成されている。アーム３６と開口部３７とによって、後述するように、複数の軸受構成部品に対するマウントが形成される。また、１つの開口部３７の周囲に締付リング３８が配置されている。上腕骨側構成部品３０もまたコバルト−クロム等の外科用合金から作製されたものであってよい。
【００３３】
第２の軸受構成部品４０は第１の端部４１及び第２の端部４２で外側に張り出す概略円筒状の部材である。また、第２の軸受構成部品４０の中間セグメント４３は、他の部分よりも径が大きくなって半径方向に隆起した凸状の外周面４４を有する。第２の軸受構成部品４０の外周面は、後述するように、モジュール式の人工肘関節装置が非連結型の様式で使用される際に第１の軸受構成部品２０の軸受面２４と嵌合する。第２の軸受構成部品４０は、中心開口部（またはボア）４５を有する。
【００３４】
ピン５０は概略円筒状の部材からなり、本体部分５１、第１の端部５２、及び第２の端部５３を有する。第１の端部５２は、締付リング３８と係合して、所定の位置にピン５０を固定するためのスロット５２ａを有する。第２の端部５３は、大径となった頭部（またはフランジ）５４を有する。頭部５４は、上腕骨側構成部品３０のアーム３６に形成された開口部３７よりも大径である。中心開口部（またはボア）が、ピン５０を貫くようにして開口している。
【００３５】
この発明の人工肘関節装置を非連結型の様式（図２及び図３）で使用するために、図２に示すように骨髄管内にステム１１が配置されるようにして尺骨側構成部品１０を尺骨に移植する。同様にして、図２に示すように骨髄管内にステム３１が配置されるようにして上腕骨側構成部品３０を上腕骨に挿入する。尺骨側構成部品１０及び上腕骨側構成部品３０は骨セメントの有無に関わらずそれぞれ尺骨及び上腕骨に適合することができる。第１の軸受構成部品２０は、フランジ２３が尺骨側構成部品１０の本体１５に形成されたスロット１６と隣接するようにして配置される。次に、第１の軸受構成部品２０を係止部１７方向に滑らせる。これによって、歯止め用の小片２３ａがノッチ１８ａに係合する。第１の軸受構成部品２０が尺骨側構成部品１０とさらに係合するように動くと、歯止め用の小片２３ａがノッチ１８ａを登るようにして移動するとともに該小片２３ａが接する面から圧力を受けるようになる。第１の軸受構成部品２０が尺骨側構成部品１０に完全に据えられると、歯止め用の小片２３ａは開口部１８上に位置することで、上記圧力から解放される。このようにして、歯止め用の小片２３ａは開口部１８内に挿入され、第１の軸受構成部品２０が本体１５のスロット１６の外側に引き戻されるのを防ぐ。第２の軸受構成部品４０は、開口部４５が開口部３７と同心的に配列するようにして、上腕骨側構成部品３０のアーム３６の間に置かれる。次に、ピン５０は、一つのアーム３６の開口部３７、第２の軸受構成部品４０の開口部４５、及び別のアーム３６の開口部３７を貫通する。この際、締付リング３８がピン５０に形成されたスロット５２ａに係合する。次に、互いの凹凸面が嵌合するようにして第２の軸受構成部品４０が第１の軸受構成部品２０に隣接して置かれる。第１の軸受構成部品２０及び第２の軸受構成部品４０は、肘の軟組織によって所定の位置に保持される。このようにして、第１の軸受構成部品２０及び第２の軸受構成部品４０は、該構成部品の軸受面を中心にして連結されて下腕部の動きを可能とする。
【００３６】
図４は、連結型の様式で使用される本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の分解斜視図である。この様式では、尺骨側構成部品１０、上腕骨側構成部品３０、及び非連結型構造のピン５０を第３の軸受構成部品６０と一緒に使用する。第３の軸受構成部品６０は、概略円筒状の部材６１を有する。この部材６１は、第１の端部６２、第２の端部６３、及び第１の端部６２から第２の端部６３に貫いて開口した開口部（またはボア）６４を有する。また、円筒状の部材６１は、台座６５に接続されている。フランジ６６は、円筒状の本体６１とは反対側の台座６５に接続している。フランジ６６は、第１の軸受構成部品２０に関して既に説明した場合と同様に本体１５のスロット１６と嵌合するように構成されている。歯止め用の小片６６ａがフランジ６６上に形成されている。第１の軸受構成部品２０、第２の軸受構成部品４０、及び第３の軸受構成部品６０は外科用金属またはプラスチック、例えば超高分子量ポリエチレンから作られたものであってもよい。
【００３７】
連結式の様式にある本発明のモジュール式の人工肘関節装置を移植する際、ステム１１が図５に示すように骨髄管内に配置されるように、尺骨側構成部品１０を尺骨に移植する。同様に、上腕骨側構成部品３０のステム３１を図示したように上腕骨の骨髄管内に置く。次に、歯止め用の小片６６ａが開口部１８に係止されるまで本体１５のスロット１６にフランジ６６を滑り込ませることによって、第３の軸受構成部品６０を尺骨側構成部品１０の本体１５に固定する。次に、第３の軸受構成部品６０の円筒状の本体６１を、開口部６４がアーム３６の開口部３７と同心的に配列するようにして上腕骨側構成部品３０のアームの間に配置する。さらに、締付リング３８がピン５０のスロット５２ａと係合するように、アーム３６の開口部３７、第３の軸受構成部品６０の開口部６４、及び残りのアーム３６の開口部３７にピン５０を貫通させる。このようにして、第３の軸受構成部品６０はアーム３６の間のピン５０を中心にして関節をなすことができる。第３の軸受構成部品６０は、肘の軟組織よりはむしろピン５０とアーム３６とによって所定の場所に保持される。
【００３８】
したがって、本発明によれば、連結型または非連結型の人工肘関節装置の手術時の移植を可能とするモジュール式の人工肘関節装置キットが提供される。また、非連結型人工肘関節装置を連結型の構成に変える必要があるならば、本発明によって、尺骨側構成部品及び上腕骨側構成部品を取り除くことなく移植後の変更が可能である。そのような場合、腕が外科的に開かれ、ピン５０及び第２の軸受構成部品４０は上腕骨側構成部品３０のアーム３６から取り除かれる。第１の軸受構成部品２０は、歯止め用の小片２３ａを押圧し、フランジ２３をスロット１６の外側へ滑らせることによって、尺骨側構成部品１０から取り除かれる。次に、フランジ６６をスロット１６に挿入することによって、第３の軸受構成部品６０を尺骨側構成部品１０に固定する。次に、開口部６４がアーム３６の開口部３７と同心的に配列するようにして円筒状の本体６１をアーム３６の間に置く。次に、ピン５０をアーム３６の開口部及び第３の軸受構成部品６０の開口部に貫通させ、締付リング３８で所定の場所に固定する。このようにして、外科手術開始後に連結型または非連結型の人工肘関節装置を使用するかどうかを外科医が判断することを可能とさせるモジュール式の人工肘関節装置キットが外科医に提供される。さらに、本発明は患者から尺骨側構成部品及び上腕骨側構成部品を除去することなく連結型から非連結型の構成に、あるいはその逆で非連結型から連結型に変更することが可能な人工肘関節装置を提供する。
【００３９】
図６及び図７は、上腕骨側構成部品３０に取り付けられる第２の軸受構成部品の別の実施態様を示す図である。第２の軸受構成部品１４０は第１の端部１４１及び第２の端部１４２を持つ概略円筒状の部材を有する。第２の軸受構成部品１４０の中間セグメント１４３は凸状の外面１４４を有する。第２の軸受構成部品１４０の外面は、モジュール式の人工肘関節装置が非連結型の様式で使用される場合、第１の軸受構成部品２０の軸受面２４に嵌合する。また、軸受構成部品１４０は第１の端部１４１から第２の端部１４２を貫くように開口した中心開口部（またはボア）１４５を有する。第２の端部１４２に隣接する領域は、大径となった胴体部（または頭部）１４６である。一対のスロット（または開口部）１４７が軸受構成部品１４０に形成されている。
【００４０】
軸受構成部品１４０を上腕骨側構成部品３０に固定するために、アーム３６の開口部３７が軸受構成部品１４０の開口部（またはボア）１４５と同心的に配列するようにして、アーム３６がスロット１４７に挿入される。開口部３７は、軸受構成部品１４０を上腕骨側構成部品３０に固定するために、ねじ１５０が螺合するためのねじ山が設けられていてもよい。あるいは、上述したように、ピンと締付リングとを取り合わせて用いることも可能である。軸受構成部品１４０を上腕骨側構成部品３０に固定する別の方法を用いてもよい。
【００４１】
図８は、非連結型の様式で使用する本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の別の実施態様の分解斜視図である。モジュール式人工肘関節は、尺骨側構成部品２１０、第１の軸受構成部品２２０、上腕骨側構成部品２３０、第２の軸受構成部品２４０、ピン２５０、及びスリーブ２６０を有する。
【００４２】
尺骨側構成部品２１０は、第１の端部（または遠位端部）２１２と第２の端部（または近位端部）２１３とを持つステム２１１を有する。ステム２１１において、第２の端部２１３に隣接した部分はステム２１１と尺骨との間の骨内植を可能とする材料２１４によって被覆されたものであってもよい。コバルト−クロムあるいはチタン合金等、周知の骨内植用被覆材料のいずれも使用することができる。上記第２の端部２１３には、スロット２１６を有する概略矩形状の本体２１５が固定されている。本体２１５とスロット２１６とによって、後述するように、少なくとも一つの軸受構成部品を搭載するためのマウントが形成される。ステム２１１は本体２１５から所定の角度で傾いて延びている。隆起した係止部２１７がステム２１１と本体２１５との接合部に形成されている。開口部２１８が本体２１５に形成され、後述するように、第１の軸受構成部品２２０上の小片を受けるように構成されている。本体２１５は、後述するように、開口部２１８へ小片を誘導するために利用される傾斜した窪み領域（またはノッチ）２１８ａをさらに有する。尺骨側構成部品２１０は、ステム２１１と本体２１５の裏面２１９に形成された隆起部２１９ａをさらに有する。隆起部２１９ａは、回転を防ぐことによって尺骨の骨髄管内で尺骨側構成部品２１０が安定して配置されるのを助ける。尺骨側構成部品２１０は、任意の外科用合金、例えばコバルト−クロムあるいはチタンから作ることができる。ステム２１１以外の尺骨側構成部品の部分あるいはステム２１１を含めた尺骨側構成部品２１０の部分に骨内植用被覆材料を設けてもよい。例えば、本体２１５の裏面２１９に骨内植用被覆材料を塗布してもよい。
【００４３】
第１の軸受構成部品２２０は一般に台座２２１を有するもので、該台座２２１の底面に対して約９０度の角度で延びる係止部２２２が台座２２１に設けられている。フランジ２２３は台座２２１に設けられており、後述するように、尺骨側構成部品２１０の本体２１５に形成されたスロット２１６と嵌合するように構成されている。小片２２３ａはフランジ２２３から突出している。第１の軸受構成部品２２０は、円弧状の凹形の軸受面２２４を有する。軸受面２２４は、後述するように、モジュール式の人工肘関節装置が非連結型の様式で使用される場合、第２の軸受構成部品２４０と嵌合する。
【００４４】
上腕骨側構成部品２３０は、第１の端部（または近位端部）２３３を持つ第１のセグメント２３２と第２の端部（または遠位端部）２３５を持つ第２のセグメント２３４とを有するステム２３１を備える。第２のセグメント２３４は、第１のセグメント２３２と一体成形されており、第１の端部２３３から距離と共に広がる。耳に似た位置・形状を呈する一対の突起部２３５ａが上腕骨側構成部品２３０の遠位端部２３５に隣接して設けられている。突起部２３５ａは、回転を防ぐことで骨髄管内での上腕骨側構成部品２３０の配置が安定化するのを助ける。互いに離間した一対のアーム２３６は、第２の端部２３５から突出して設けられ、かつステム２３１の第２のセグメント２３４に対して所定の角度をなす。各々のアーム２３６には開口部２３７が形成されている。図示する実施形態例で注目すべきことは、開口部２３７の周囲に窪み領域２３７ａを設けることで開口部２３７についてアーム２３６の位置の合わせがなされる。アーム２３６と開口部２３７とによって、後述するように、少なくとも一つの軸受構成部品に対するマウントが形成される。上腕骨側構成部品２３０もまたコバルト−クロム等の外科用合金から作製されたものであってよい。
【００４５】
第２の軸受構成部品２４０は第１の端部２４１、第２の端部２４２、及び中間セグメント２４３を有する。第１の端部２４１及び第２の端部２４２は、概略アーム２３６の形状に合わせた窪み領域２４１ａ及び窪み領域２４２ａをそれぞれ有し、それらの領域によってアーム２３６に対する第１の端部２４１及び第２の端部２４２の位置合わせ及び動きの制限がなされる。これによって、アーム２３６を基準にした第２の軸受構成部品２４０の回転が防げる。第２の軸受構成部品２４０の中間セグメント２４３は、他の部分よりも径が大きくなって半径方向に隆起した凸状の球形の外周面２４４を有する。第２の軸受構成部品２４０の外周面２４４は、後述するように、モジュール式の人工肘関節装置が非連結型の様式で使用される際に第１の軸受構成部品２２０の軸受面２２４と嵌合する。また、第２の軸受構成部品２４０は中心開口部（またはボア）２４５を有する。
【００４６】
ピン２５０は、本体部分２５１、第１の端部２５２、及び第２の端部２５３を有する概略円筒状の部材である。第２の端部２５３は、大径となった頭部（またはフランジ）２５４を有する。頭部２５４は、上腕骨側構成部品２３０のアーム２３６に形成された開口部２３７よりも大径であり、さらに領域２３７ａの形状に概略一致する形状を有する。バーブ（係止部）２５５は本体部分２５１に設けられている。係止部２５５は、傾斜した第１のセグメント２５５ａ、本体部分２５１に対して概略平行な第２のセグメント２５５ｂ、傾斜した第３のセグメント２５５ｃ、及び傾斜した第４のセグメント２５５ｄを有する。係止部２５５は、後述するように、ピン２５０をスリーブ２６０に固定する。ピン２５０は好ましくは金属材料から作られる。しかし、他の材料も利用することが可能である。
【００４７】
スリーブ２６０は、概略円筒状の部材であり、ボア２６１、内壁２６２、外壁２６３、大径となった頭部２６４、及び縁部２６５を有する。頭部２６４は、上腕骨側構成部品２３０のアーム２３６に形成された開口部２３７の直径よりも大きい径を有し、領域２３７ａの形状に概略一致する形状を有する。ボア２６１は本体部分２５１の直径とほぼ同じであり、第２のセグメント２５５ｂよりも小径である。スリーブ２６０は、好ましくは超高分子量のポリエチレンから作られている。しかし、他の材料を利用することもできる。
【００４８】
非連結型の様式で本発明の人工肘関節装置を使用するために、ステム２１１が骨髄管内部に配置されるように尺骨側構成部品２１０を尺骨に移植する。同様にして、ステム２３１が骨髄管内部に配置されるように上腕骨側構成部品２３０を上腕骨に移植する。骨セメントの有無にかかわらず、尺骨側構成部品２１０及び上腕骨側構成部品２３０をそれぞれ尺骨及び上腕骨に固定することができる。尺骨側構成部品２１０の本体２１５に形成されたスロット２１６にフランジ２２３が隣接するようにして、第１の軸受構成部品２２０が配置される。次に、第１の軸受構成部品２２０は係止部２１７に向けて滑らせられる。これによって、歯止め用の小片２２３ａがノッチ２１８ａに係合する。第１の軸受構成部品２２０が尺骨側構成部品２１０とさらに係合するように動くと、歯止め用の小片２２３ａがノッチ２１８ａを登るようにして移動するとともに該小片２２３ａが接する面から圧力を受けるようになる。第１の軸受構成部品２２０が尺骨側構成部品２１０に完全に据えられると、歯止め用の小片２２３ａは開口部２１８ａの上に位置することで、上記圧力から解放される。このようにして、歯止め用の小片２２３ａは開口部２１８ａ内に挿入され、第１の軸受構成部品２２０が本体２１５のスロット２１６の外側に引き戻されるのを防ぐ。第２の軸受構成部品２４０は、開口部２４５が開口部２３７と同心的に配列し、かつアーム２３６が窪み領域２４１ａ及び窪み領域２４２ａの中に延びるようにして、上腕骨側構成部品２３０のアーム２３６の間に配置される。
【００４９】
次に、頭部２６４が窪み領域２３７ａに達するまで、スリーブ２６０が一つのアーム２３６に形成された開口部２３７と第２の軸受構成部品２４０に形成された開口部２４５とを貫通する。続いて、ピン２５０は、別のアーム２３６の開口部２３７を貫通し、頭部２５４が窪み領域２３７ａに達するまでスリーブ２６０のボア２６１に挿入する。ピン２５０がボア２６１に差し込まれるので、縁部２６５は第１のセグメント２５５ａに沿って隆起し、ボア２６１が広がるか、あるいは変形するので、係止部２５５を完全にボア２６１の中に配置させることができる。もし、スリーブ２６０からピン２５０を取り除こうとするならば、係止部２５０が内壁２６２を切り込むか、あるいは内壁２６２に係止するかによって取り除きに抵抗する。
【００５０】
次に、第１の軸受構成部品２２０の凹面と第２の軸受構成部品２４０の凸面とが嵌合するようにして、第２の軸受構成部品２４０を第１の軸受構成部品２２０に隣接させて配置する。第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０は肘の軟組織によって所定の位置に保持される。このようにして、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０は軸受面を中心に連結して下腕の動きを可能とする。
【００５１】
図１２に示すように、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０は、屈曲−伸展と同様の動きを可能とするように連結し、このようにして第１の動作自由度を有する。
【００５２】
図１３及び図１４に示すように、本発明のこの実施形態例もまた軸受構成部品間の横方向の動きを可能とさせる。図１３はニュートラル位置にある肘を示している図である。すなわち、第１の軸受構成部品２２０は第２の軸受構成部品２４０を基準として中心に位置決めされている。図１４は、人工肘関節装置を構成する部品が図１４の矢印に示す方向に動く場合の第１の軸受構成部品２２０と第２の軸受構成部品２４０との相対的位置関係を例証する図である。図に示すように、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０は、互いの接触を保ちながら、かつ互いを基準にして位置をずらす。このようにして、人工肘関節装置は第２の動作自由度を見せる。
【００５３】
さらに、図１５乃至図１７に示すように、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０は軸回転を可能とさせる。それによって、第３の動作自由度が与えられる。図１５は、ニュートラル位置における第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０の相対的位置関係を示す図である。図１６及び図１７は、関節部分が矢印方向に軸回転を受けると、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０が図示するように位置をずらすことを示している図である。しかし、面２２４及び面２４４が球面をなすことから、軸回転の最中でも接触が維持される。
【００５４】
図１乃至図５に示す実施形態例と同様に、図８に示す実施形態例も連結型の様式で使用するための変更を行うことができる。そうするために、第１の軸受構成部品２２０及び第２の軸受構成部品２４０を除去し、第３の軸受構成部品６０と類似の軸受構成部品によって置換する。
【００５５】
図１８は、連結型の構成で使用される本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の別の実施形態例を説明するための図である。この実施形態例では、小片６６ａは軸受構成部品６０のフランジ６６から取り除かれている。ノッチ１８ａ及び開口部１８は尺骨構成部品１０から除去される。この実施形態例では、フランジ３６６及びスロット３１６は一般にモールステーパと呼ばれるテーパ状の係止部を形成するようにして構成されている。テーパ状係止部の構成は戻り止め（セルフロッキング(self-locking)）であり、フランジ３６６とスロット３１６との間の微動を減らすように意図されている。テーパ状係止部の構成は種々の許容されるテーパ角のいずれかを有するものであるが、１０度未満のテーパ角が好ましい。したがって、フランジ３６６がスロット３１６内に完全に据え付けられると、軸受構成部品６０は尺骨側構成部品１０に固定される。
【００５６】
図１９は、非連結型の構成で使用する人工肘関節装置の別の実施形態例を示す図である。この実施形態例は図８に示すものと類似している。図１９では、図８と対応する構成要素を示すために、符号の最初に「２」の代わり「４」が用いられている。この実施形態例では、上腕骨側構成部品４３０のアーム４３６は窪み領域４４１ａ及び窪み領域４４２ａに係合し、上記したテーパ状係止部と類似のテーパ状係止部を形成する。したがって、アーム４３６と窪み領域（またはスロット）４４１ａ及び窪み領域４４２ａとを完全に係合させることで、軸受構成部品４４０は上腕骨側構成部品４３０に固定される。ここで注目すべきことは、この実施形態例ではピン４５０及びスリーブ４６０も利用することで、軸受構成部品４４０と上腕骨側構成部品４３０との接続をよりいっそう確実なものにする。ピン４５０及びスリーブ４６０を使用することで、窪み領域４４１ａがアーム４３６から外れるような、万一の事態に備えた補強された係止機能が提供される。ここで留意すべきことは、ピン４５０をスリーブ４６０に固定するために追加の係止部（バーブ(barb)）４５５ａがピン４５０に設けられていることである。さらに留意すべきことは、尺骨側構成部品４１０に形成されたノッチ４１８ａ及び開口部４１８と小片４６６ａ（図示せず）が、図１８の実施形態例に示すように、軸受構成部品４２０から除去されている。このようにすることによって、上記したものと同様の方法で構成部品を固定するためのテーパ状の係止部が形成されるように、フランジ４２３と尺骨側構成部品４１０のスロット４１６とが配置される。
【００５７】
図２０は、連結型の構成で使用されるモジュール式の人工肘関節装置の別の実施形態例を示す図である。この実施形態例は、図１９のものと類似しており、符号が一致する場合は同様の構成要素を示す。この実施形態例では、軸受構成部品４２０及び軸受構成部品４４０が軸受構成部品５００及び軸受構成部品６００に置換されている。軸受構成部品５００は、一端から他端に貫いて開口した開口部５０２が形成された本体５０１を有する。また、本体５０１の底面上にフランジ５０３が形成されている。尺骨側構成部品４１０は、開口部４１８及びノッチ４１８ａを取り除くように変更が加えられている。尺骨側構成部品４１０に形成されたスロット５１６及び軸受構成部品５００上のフランジ５０３は、フランジ３６６とスロット３１６との間に形成されたテーパ状の係止部（図１８）と類似のテーパ状係止部を形成するように構成されている。したがって、フランジ５０３がスロット５１６に完全に挿入されることによって、軸受構成部品５００が尺骨側構成部品４１０に固定される。
【００５８】
軸受構成部品６００は、台座６０２から延びる一対のアーム６０１を有する。また、一対の開口部６０３がアーム６０１を貫くようにして形成されている。軸受構成部品６００は、上腕骨側構成部品４３０のアーム４３６間に適合することができるように構成され、かつそのような大きさに形成されている。突起部６０４が軸受構成部品６００の台座６０２上に形成されている。突起部６０４は、アーム４３６間に軸受構成部品６００が安定して置かれるように、上腕骨側構成部品４３０の第２の端部４３５に形成された対応するスロットまたは開口部（図示せず）に係合する。軸受構成部品６００の突起部６０４と上腕骨側構成部品４３０の第２の端部４３５に形成された開口部とがテーパ状係止部を形成するように構成され、それによって軸受構成部品６００と上腕骨側構成部品４３０との確実な接合が助けられる。
【００５９】
使用の際、軸受構成部品６００は、開口部６０３と開口部４３７とが同心的に配列されるように、アーム４３６の間に配置される。スロット５１６とフランジ５０３とがテーパ状係止部を構成して接合されることによって軸受構成部品５００は尺骨側構成部品４１０に固定される。次に、軸受構成部品６００のアーム６０１は、開口部６０３ｓと開口部５０２とが同心的に配列するようにして、本体５０１の周囲に配置される。次に、軸受構成部品６００と軸受構成部品５００とを所定の位置に固定するために、ピン４５０とスリーブ４６０とが使用される。
【００６０】
以上、本発明を詳細に図示及び記述したが、これらは例示するためのものであって限定することを目的としたものではない。本発明の範囲から逸脱することなく数多くの変更または修飾を上記した実施形態例に加えることは可能である。例えば、主な動作が保たれる限り様々な構成部品の形状を変えることができる。また、図１に示すようなピンと締付リングとを組み合わせた構成あるいは図８に示すピンとスリーブとを組み合わせた構成を、尺骨側構成部品及び上腕骨側構成部品と軸受とのいずれの組み合わせに対しても使用することができる。したがって、本発明は特許請求の範囲の記載にもとづいてのみ限定されるものである。
【００６１】
好ましい実施態様は以下の通りである。
（Ａ）人工肘関節装置であって、
軸受マウントを持つ上腕骨側構成部品と、
軸受マウントを持つ尺骨側構成部品と、
軸受構成部品とを備え、
該軸受構成部品は、前記尺骨側構成部品の前記軸受マウントとテーパロックを形成し、かつ前記上腕骨側構成部品の前記軸受マウントと係合するように構成されている人工肘関節装置。
（１）前記上腕骨側構成部品は、互いに離間した一対のアームを有する実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（２）前記尺骨側構成部品はスロットを有する実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（３）前記軸受構成部品はフランジを有する実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（４）前記フランジは、前記尺骨側構成部品と嵌合するように構成されている実施態様（３）に記載の人工肘関節装置。
（５）前記上腕骨軸受マウントは開口部を有する実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
【００６２】
（６）前記一対のアームを構成する各々のアームに形成された開口部と、前記軸受構成部品に形成された開口部と、前記アームの開口部と前記軸受構成部品の開口部とを貫通するピンとをさらに備える実施態様（１）に記載の人工肘関節装置。
（７）前記テーパ状係止部は、戻り止めである実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（８）前記テーパ状係止部は、前記軸受構成部品と前記尺骨側構成部品の前記軸受マウントとの間の微動を減少させる実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（９）前記テーパ状係止部は、１０度未満のテーパ角を有する実施態様（Ａ）に記載の人工肘関節装置。
（Ｂ）モジュール式の人工肘関節装置であって、
スロットを有する尺骨側構成部品と、
前記スロットと嵌合することによってテーパロックを形成するように構成されたフランジを有する第１の軸受構成部品と、
一対のアームを有する上腕骨側構成部品と、
前記上腕骨側構成部品の前記アームの間に適合し、かつ前記第１の軸受構成部品の一部を囲むように構成された第２の軸受構成部品とを備える人工肘関節装置。
（Ｃ）人工肘関節装置であって、
第１の端部と第２の端部とを持つステムを有し、前記第１の端部は尺骨の骨髄管内に取り付けられる尺骨側構成部品と、
前記尺骨側構成部品と係合する第１の軸受構成部品と、
一対のアームと第１の端部とを持つステムを有し、前記第１の端部は上腕骨の骨髄管内に取り付けられる上腕骨側構成部品と、
前記上腕骨側構成部品と係合し、かつ前記第１の軸受構成部品と嵌合する第２の軸受構成部品とを備え、さらに、
前記第２の軸受構成部品は、前記アームと係合してテーパロックを形成する一対のスロットを有する人工肘関節装置。
【００６３】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、連結型または非連結型の様式のいずれかで利用することが可能な人工肘関節装置、患者の体内に移植した後に連結型から非連結型へ、あるいは非連結型から連結型へ変換することが可能な人工肘関節装置、さらに３つの自由度、すなわち屈曲−伸展、内反−外反（運搬角）、及び軸の回転を可能とする人工肘関節装置を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に基づく人工肘関節装置の非連結型構成を説明するための分解斜視図である。
【図２】ヒトの腕に移植された図１に示す人工肘関節装置の長手方向断面図である。
【図３】図２の３−３線に沿う断面図である。
【図４】本発明に基づく人工肘関節装置の連結型構成を説明するための分解斜視図である。
【図５】ヒトの腕に移植された図４に示す人工肘関節装置の長手方向断面図である。
【図６】本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の構成部品を形成する別の第２の軸受構成部品の平面図である。
【図７】本発明のモジュール式の人工肘関節装置を構成する部品の一つである上腕骨側構成部品に対して図６に示す軸受構成部品が結合した場合を説明する平面図である。
【図８】非連結型構成を採用した本発明に基づくモジュール式の人工肘関節装置の別の実施形態例を説明するための分解斜視図である。
【図９】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置の一構成部品を形成するスリーブの部分断面側面図である。
【図１０】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置の一構成部品を形成するピンの側面図である。
【図１１】図１０に示すピンの周面上に設けられた係止部の細部を説明するためにピンの一部を拡大した側面図である。
【図１２】患者に移植された図８に示すモジュール式の人工肘関節装置を示す側面断面図であり、該人工肘関節装置によって許容された動作の１つの自由度を説明するための図ある。
【図１３】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置の部分断面側面図であって、ニュートラルの位置にある状態を示す図である。
【図１４】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置によって第２の自由度にある状態を説明するための部分断面側面図である。
【図１５】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置によって第３の自由度にある状態を説明するための部分断面図である。
【図１６】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置によって第３の自由度にある状態を説明するための部分断面図である。
【図１７】図８に示すモジュール式の人工肘関節装置によって第３の自由度にある状態を説明するための部分断面図である。
【図１８】連結型様式で使用される本発明に基づく人工肘関節装置の別の実施形態例を説明するための分解斜視図である。
【図１９】非連結型様式で使用される本発明に基づく人工肘関節装置の別の実施形態例を説明するための分解斜視図である。
【図２０】連結型様式で使用される本発明に基づく人工肘関節装置の別の実施形態例を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
１０ 尺骨側構成部品
１１，２１１，２３１ ステム
１２，２１２ 第１の端部（または遠位端部）
１３，２１３ 第２の端部（または近位端部）
１４ 骨内植用被覆材料
１５，５１，２１５，５０１ 本体
１６，２１６，３１６，４１６，５１６ スロット
１７，２２，２１７，２２２，２５５ 係止部
１８，３７，２１８，２３７，４１８，５０２，６０３ 開口部
１９ 裏面
２０，２２０ 第１の軸受構成部品
２１，６５，２２１，６０２ 台座
２３，６６，２２３，３６６，４２３，５０３ フランジ
２４ 軸受面
３０ 上腕骨側構成部品
３３，２３３ 第１の端部（または近位端部）
３４，２３４ 第２のセグメント
３５，２３５ 第２の端部（または遠位端部）
３６，２３６，４３６，６０１ アーム
３８ 締付リング
４０ 第２の軸受構成部品
４１，５２，６２，１４１，２４１，２５２ 第１の端部
４２，５３，６３，１４２，２４２，２５３ 第２の端部
４３ 中間セグメント
４４ 外周面（凸面）
４５，５５，１４５ 中心開口部（ボア）
５０ ピン
５４ 頭部
６０ 第３の軸受構成部品
６１ 円筒状の部材
６４ 開口部（ボア）
１４３ 中間セグメント
１４４ 外面
１４６ 大径となった胴体部（または頭部）
１４７ スロット（または開口部）
１５０ ねじ ２１０ 尺骨側構成部品
２１４ 骨内植用被覆材料
２１９ 裏面
２２４ 軸受面（凹面）
２３０ 上腕骨側構成部品
２３２ 第１のセグメント
２４４ 外周面（凸面）
２５０，４５０ ピン
２５１ 本体部分
２５４ 大径となった頭部（またはフランジ）
２６０，４６０ スリーブ
２６１ ボア
２６２ 内壁
２６３ 外壁
２６４ 頭部
２６５ 縁部
４１０ 尺骨側構成部品
４２０ 軸受構成部品
４３０ 上腕骨側構成部品
４４０ 軸受構成部品
５５０，６００ 軸受
６０４ 突起部

Claims (7)

1. 人工肘関節装置において、
   第１の端部と第２の端部とを持つステムを有し、前記第１の端部は尺骨の骨髄管内に挿入されるように構成された、尺骨側構成部品（４１０）と、
   前記尺骨側構成部品（４１０）と係合するように構成された第１の軸受構成部品（４２０）と、
   一対のアーム（４３６）、および、上腕骨の骨髄管内に挿入されるように構成された第１の端部（４３３）を持つステム（４３１）を有する、上腕骨側構成部品（４３０）と、
   前記上腕骨側構成部品（４３０）と係合し、かつ前記第１の軸受構成部品（４２０）と嵌合するように構成された第２の軸受構成部品（４４０）と、
   を備え、
   前記第２の軸受構成部品（４４０）は、前記一対のアーム（４３６）と係合してそれらとテーパ状係止部を形成する一対の窪み領域（４４１ａ、４４２ａ）を有する、人工肘関節装置。
2. 請求項１に記載の人工肘関節装置において、
   前記上腕骨側構成部品（４３０）の前記一対のアーム（４３６）は、互いに離れて位置して軸受空間を画定する第１のアーム（４３６）と第２のアーム（４３６）とを含み、
   前記第２の軸受構成部品（４４０）は、（ｉ）前記窪み領域（４４１ａ）を有する第１の横方向軸受端部（４４１）と、（ｉｉ）前記窪み領域（４４２ａ）を有する第２の横方向軸受端部（４４２）を有し、
   前記第１のアーム（４３６）は、前記窪み領域（４４１ａ）に受け入れられて前記上腕骨側構成部品（４３０）と前記第２の軸受構成部品（４４０）との間に第１のテーパ状係止部を形成するように構成され、
   前記第２のアーム（４３６）は、前記窪み領域（４４２ａ）に受け入れられて前記上腕骨側構成部品（４３０）と前記第２の軸受構成部品（４４０）との間に第２のテーパ状係止部を形成するように構成されている、人工肘関節装置。
3. 請求項２に記載の人工肘関節装置において、
   ピン（４５０）をさらに備え、
   前記第２の軸受構成部品（４４０）はそれを貫通する軸受穴（４４５）を有し、
   前記第１のアーム（４３６）はそれを貫通する第１のアーム穴（４３７）を有し、
   前記第２のアーム（４３６）はそれを貫通する第２のアーム穴（４３７）を有し、
   前記ピン（４５０）は、前記軸受穴（４４５）、前記第１のアーム穴（４３７）、および前記第２のアーム穴（４３７）を貫通するように構成されている、人工肘関節装置。
4. 請求項３に記載の人工肘関節装置において、
   スリーブ（４６０）をさらに備え、
   前記スリーブ（４６０）は前記軸受穴（４４５）、前記第１のアーム穴（４３７）、および前記第２のアーム穴（４３７）を貫通し、
   前記ピン（４５０）は前記スリーブ（４６０）の中心路（４６１）の中に位置付けられるように構成されている、人工肘関節装置。
5. 請求項４に記載の人工肘関節装置において、
   前記ピン（４５０）は前記スリーブ（４６０）の中に固定されるように構成されている、人工肘関節装置。
6. 請求項２に記載の人工肘関節装置において、
   前記第１のテーパ状係止部と前記第２のテーパ状係止部との双方は、１０°未満のテー パ角を有する、人工肘関節装置。
7. 請求項２に記載の人工肘関節装置において、
   前記第１の軸受構成部品（４２０）は凹状の軸受面部分（４２４）を有し、
   前記第２の軸受構成部品（４４０）は凸状の軸受面部分（４４４）を有し、
   前記凹状の軸受面部分（４２４）は前記凸状の軸受面部分（４４４）と嵌合するように構成されている、人工肘関節装置。

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