JP4111567B2 - 抵抗素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度によって抵抗値が変化する性質を備えた抵抗素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の抵抗素子は、Mn,Ni,Co,Fe等の金属酸化物の粉末を含有する導体ペーストをスクリーン印刷等の手法によって基板上に塗布しこれを焼成することにより製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の製造方法では、ペースト塗布厚を管理することが難しく、焼成によって得られた抵抗膜の厚みを小さくするにも50μmが限界であると共に、得られた抵抗膜の抵抗値が数百MΩと高く、且つ微少な温度変化に対して大きな抵抗値変化を得ることができない問題点があった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、厚みが薄く、且つ微少な温度変化に対して大きな抵抗値変化が得られる抵抗素子の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る抵抗素子の製造方法は、Zn,Mn,Fe,Niから選択された少なくとも2種でその1種がZnである金属薄膜を基板上に順に重ねて成膜して多層薄膜を形成する工程と、該多層薄膜を酸化性雰囲気中で且つ隣接する薄膜相互で金属が個溶する温度条件で焼成して金属複合膜を形成する工程とを備えたことをその主たる特徴としている。
【0006】
この抵抗素子の製造方法によれば、少なくとも2種の金属薄膜から成る多層薄膜を酸化性雰囲気中で高温焼成することにより、これを酸化し半導体化させて所期の抵抗素子を得ることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る抵抗素子の一製造方法を示すもので、以下、同図を参照してその製造方法を説明する。
【0010】
まず、図1(a)〜(c)に示すように、真空蒸着装置中でアルミナ基板1上にZn薄膜2とMn薄膜3とFe薄膜4とを順に重ねて成膜して多層薄膜を形成する。各薄膜2,3,4の大きさは同一であり、厚みは薄膜相互の金属成分比及び焼成段階での蒸発等を考慮して決定する。
【0011】
次に、図1(d)に示すように、アルミナ基板1上に形成された多層薄膜を空気等の酸化性雰囲気中で焼成する。図2に示すように、この焼成工程は昇温,温度保持,降温の3ステップで実施し、温度保持ステップは1000℃で3時間とし、降温勾配は昇温勾配よりも小さくした。ちなみに、焼成温度として1000℃を選択した理由は、Zn,Mn,Feのうち沸点が最も小さなZn(沸点907℃)の蒸発を防ぎながら多層薄膜をゆっくりと焼成するためである。
【0012】
Zn薄膜2とMn薄膜3とFe薄膜4とから成る多層薄膜は温度保持ステップにおける長時間高温保持により酸化されて、隣接する薄膜相互で金属が個溶し、この結果、図1(e)に示すような半導体化された金属複合膜(抵抗膜)5が形成される。この抵抗膜5の厚みは1〜2μmで、その金属成分の重量比はZn:Mn:Fe=50〜65:30〜45:5〜10で好ましくは59:35:6である。
【0013】
次に、図1(f)に示すように、上記同様の真空蒸着装置中でアルミナ基板1上に電極用の一対のAg薄膜6を抵抗膜5の端部と重なるように形成する。以上で図1(g)に示すような抵抗素子、即ち、電極6付きの抵抗膜5がアルミナ基板1上に形成された抵抗素子を得ることができる。
【0014】
図3には上記抵抗膜5の抵抗値・温度特性を、湿度条件別(湿度50%R.H.と湿度70%R.H.)に示してある。同図から分かるように、湿度70%R.H.のときの抵抗値は湿度50%R.H.のときに比べて全体的に低くなる傾向があるが、何れの場合もほぼ一定の負の温度係数を有しており、微少な温度変化に対して大きな抵抗値変化を得ることができる。図示を省略したが、Zn含有の上記抵抗膜5は安定した抵抗率(Ω・cm)を有している。
【0015】
上述の製造方法によれば、Zn薄膜2とMn薄膜3とFe薄膜4とから成る多層薄膜を酸化性雰囲気中で高温焼成することにより、これを酸化し半導体化させて所期の抵抗膜5を得ているので、金属粉末を含有する導体ペーストを基板上に塗布しこれを焼成して抵抗膜を得る従来法に比べて、抵抗膜5の厚みを格段薄くできると共に、導体ペーストを調製したりペースト塗布厚を管理する面倒を排除して製造手順を簡略化できる。
【0016】
また、金属薄膜の1つとしてZn薄膜2を用いることにより、焼成後の抵抗膜5の温度依存性をより顕著なものとし、常温付近での抵抗値が数10MΩと比較的低く、且つ微少な温度変化に対して大きな抵抗値変化が得られる抵抗素子を得ることができる。
【0017】
図4は本発明に係る抵抗素子の他の製造方法を示すもので、以下、同図を参照してその製造方法を説明する。
【0018】
まず、図4(a)〜(c)に示すように、真空蒸着装置中でアルミナ基板11上にNi薄膜12とMn薄膜13とFe薄膜14とを順に重ねて成膜して多層薄膜を形成する。各薄膜12,13,14の大きさは同一であり、厚みは薄膜相互の金属成分比及び焼成段階での蒸発等を考慮して決定する。
【0019】
次に、図4(d)に示すように、アルミナ基板11上に形成された多層薄膜を空気等の酸化性雰囲気中で焼成する。この焼成工程は図2に示したものと同様に昇温,温度保持,降温の3ステップで実施し、温度保持ステップは1000℃で30〜300分とし、降温勾配は昇温勾配よりも小さくした。図5及び図6に示すように、温度保持時間を30分とすると抵抗率が最も小さな抵抗膜を得ることができる。
【0020】
Ni薄膜12とMn薄膜13とFe薄膜14とから成る多層薄膜は温度保持ステップにおける長時間高温保持により酸化されて、隣接する薄膜相互で金属が個溶し、この結果、図4(e)に示すような半導体化された金属複合膜(抵抗膜)15が形成される。この抵抗膜15の厚みは0.6〜1.5μmで、その金属成分の重量比は全体と6とし、各成分が1〜4の値をとるとした場合においてNi:Mn:Fe=2以上:4以下:2以下である。
【0021】
次に、図4(f)に示すように、上記同様の真空蒸着装置中でアルミナ基板11上に電極用の一対のAg薄膜16を抵抗膜15の端部と重なるように形成する。以上で図1(g)に示すような抵抗素子、即ち、電極16付きの抵抗膜15がアルミナ基板11上に形成された抵抗素子を得ることができる。
【0022】
図5には金属成分の重量比をNi:Mn:Fe=3:1:2とした上記抵抗膜15の湿度50%R.H.における抵抗値・温度特性を、焼成温度保持時間別(30分と120分と300分)に示してある。また、図6には金属成分の重量比をNi:Mn:Fe=3:2:1とした上記抵抗膜15の湿度50%R.H.における抵抗値・温度特性を、焼成温度保持時間別(30分と120分と300分)に示してある。同図から分かるように、焼成温度保持時間が短くなるに従って抵抗値が全体的に低くなる傾向があるが、何れの場合もほぼ一定の負の温度係数を有しており、微少な温度変化に対して大きな抵抗値変化を得ることができる。図示を省略したが、Ni含有の上記抵抗膜15は安定した抵抗率(Ω・cm)を有しており、該抵抗率の値はZn含有の抵抗膜に比べて1桁以上低い。
【0023】
上述の製造方法によれば、Ni薄膜12とMn薄膜13とFe薄膜14とから成る多層薄膜を酸化性雰囲気中で高温焼成することにより、これを酸化し半導体化させて所期の抵抗膜15を得ているので、金属粉末を含有する導体ペーストを基板上に塗布しこれを焼成して抵抗膜を得る従来法に比べて、抵抗膜15の厚みを格段薄くできると共に、導体ペーストを調製したりペースト塗布厚を管理する面倒を排除して製造手順を簡略化できる。
【0024】
また、金属薄膜の1つとしてNi薄膜12を用いることにより、焼成後の抵抗膜15の温度依存性をより顕著なものとし、常温付近での抵抗値が数十MΩと比較的低く、且つ微少な温度変化に対して応答性が良く、且つ大きな抵抗値変化が得られる抵抗素子を得ることができる。
【0025】
尚、図1及び図4に示した製造方法では、何れも多層薄膜を焼成した後に電極を形成するようにしたものを例示したが、図7に示すような手順にて電極を形成するようにしてもよい。つまり、同図(a)に示すように、アルミナ基板21上に金属薄膜22,23,24から成る多層薄膜を形成した後に、同図(b)に示すように、Ag粉末を含有した導体ペースト25を多層薄膜の端部と重なるように塗布しこれを130℃で10分間乾燥させてから、同図(c)に示すように、アルミナ基板21上の多層薄膜及び導体ペーストを空気等の酸化性雰囲気中で先の製造方法と同様に焼成するようにしてもよい。導体ペースト25は温度保持ステップにおける長時間高温保持により焼結して電極27となる。また、各金属薄膜、即ちNi薄膜22とMn薄膜23とFe薄膜24とから成る多層薄膜は温度保持ステップにおける長時間高温保持により酸化されて、隣接する薄膜相互で金属が個溶し、この結果、半導体化された金属複合膜(抵抗膜)26が形成される。
【0026】
また、図1及び図4に示した製造方法では、多層膜の焼成温度を1000℃としたが、1000℃以上の温度で焼成しても所期の抵抗膜を得ることは可能である。勿論、先に述べたように、抵抗率を低く抑えるためには1000℃付近で温度保持し焼成することが好ましい。
【0027】
さらに、図1,図4及び図7に示した製造方法では、3層構造の多層薄膜を形成したものを例示したが、2層または4層以上の多層薄膜を形成してこれを焼成するようにしてもよく、薄膜として形成する金属の種類はZn,Mn,Fe,Niから任意に選択できる。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る抵抗素子の製造方法によれば、金属粉末を含有する導体ペーストを基板上に塗布しこれを焼成して抵抗膜を得る場合に比べて、抵抗膜の厚みを格段薄くできると共に、導体ペーストを調製したりペースト塗布厚を管理する面倒を排除して製造手順を簡略化できる。また、焼成後の抵抗膜の温度依存性を顕著なものとし、微少な温度変化に対して応答性が良く、且つ大きな抵抗値変化が得られる抵抗素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る抵抗素子の一製造方法を示す図
【図2】 焼成工程における温度と時間との関係を示す図
【図3】 図1に示した抵抗素子の抵抗値・温度特性を示す図
【図4】 本発明に係る抵抗素子の他の製造方法を示す図
【図5】 図4に示した抵抗素子の抵抗値・温度特性を示す図
【図6】 図4に示した抵抗素子の抵抗値・温度特性を示す図
【図7】 抵抗素子の製造方法の変形例を示す図
【符号の説明】
1…基板、2…Zn薄膜、3…Mn薄膜、4…Fe薄膜、5…抵抗膜、6…電極、11…基板、12…Ni薄膜、13…Mn薄膜、14…Fe薄膜、15…抵抗膜、16…電極、21…基板、22,23,24…金属薄膜、25…導体ペースト、26…抵抗膜、27…電極。
Claims (2)
- Zn,Mn,Fe,Niから選択された少なくとも2種でその1種がZnである金属薄膜を基板上に順に重ねて成膜して多層薄膜を形成する工程と、
該多層薄膜を酸化性雰囲気中で且つ隣接する薄膜相互で金属が個溶する温度条件で焼成して金属複合膜を形成する工程とを具備した、
ことを特徴とする抵抗素子の製造方法。 - 多層薄膜がZn薄膜とMn薄膜とFe薄膜とから成る、
ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子の製造方法。
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