JP4110453B2 - エアバッグ用高強力ポリアミド原着糸 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ用高強力原着糸に関し、更に詳しくは、自動車等に搭載されるエアバックにおいては、糸種、織組織等の違いにより様々な種類の基布が製造されており、そのような製造、組立て過程において、もし間違った基布を裁断、縫製しエアバックが作られた場合安全上大きな問題になる可能性がある。また、加工の段階で加工のための目印としてのマーキング繊維が必要とされている。そこで作業者がすぐに見分けられ間違いを防止するための識別等に使用され、間違った裁断等によるロスの発生を抑制することができる色付きの糸に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバックの基布の識別等にはチーズ染色により色糸を作り識別する方法があるが、この方法では染色時に糸の物性(強度、収縮)がかなり変化してしまい製織後精等の工程を経た際、他のエアバック原糸との収縮差から基布から浮いたような状態になりその部分から通気度が上がり問題であった。
【0003】
また、チーズ染色の方法ではラージパッケージ化が難しくせいぜい1〜2kgの捲き量しかとれずチーズ換え等の手間が多くなりコストアップになるだけでなくこのチーズ染色自体も手間がかかりコストアップの原因となり問題であった。また、原着繊維としてはNY6の原着糸があるが融点が低くインフレータでの高熱に対し耐えられない問題がある。またNY66繊維の原着もあるが強度が低くエアバックの様に高強度を求められるものには適していないものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エアバック用のマーキング繊維に色を入れることによる糸の物性の低下がなく、エアバッグ基布とした場合の基布特性、すなわち通気性、強度、耐熱性などの基本的な特性を落とすことなく使用できるエアバッグ用高強力ポリアミド原着糸を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段、即ち本発明の第1は、ポリマー段階もしくは製糸段階で色をつけた織物のマーキング用原着糸であり、硫酸相対粘度が3.0以上、ポリアミド66成分が90%以上であって、原糸強度がcN/dtex以上、原糸沸水収縮率が6.5%以上であるエアバック用高強力原着糸であり、
【0007】
その第は、第1に記載のエアバッグ用高強力原着糸が、 2 kg以上の捲き量で捲かれたエアバッグ用高強力原着糸パッケージであり、
【0008】
その第は、高強力原着糸の繊度が350dtex以下である第1に記載のエアバック用高強力原着糸であり、
【0009】
その第は、高強力原着糸のフィラメント数が72本以上であり、沸水収縮率が7%以上である請求項1またはに記載のエアバック用高強力原着糸である。
【0010】
現在エアバックの基布の素材にはインフレータからの強烈な高熱ガスから融点、比熱が比較的高く、強靭、かつ柔らかさがありコスト的にも安価であるポリアミド66が一般的でほとんどの車で採用されている。また強度面でも使用に耐えるため原糸の強度としては7〜9cN/dtex位の範囲の高強力糸としてほとんどが設定されている。また、沸水収縮率は5〜9%位の範囲で後の加工方法によりいろいろな設定がされている。
【0011】
このような高強力エアバック原糸が使われる中で数本~数十本であっても全体の糸本数からみると僅かであるため基布強力自体が極端に下がることはないが低強度糸が入ることはエアバックが展開した場合にその部分に応力集中がおこり破裂等の可能性を高めることになり好ましくなく色糸の原糸強度としては6cN/dtex以上が必要である。好ましくは強度としては7cN/dtex以上の強度であることが望ましい。
【0012】
また、捲き量はチーズ染色のように小さな捲き量では後加工での原糸替えの手間が増えるため好ましくなくなるべく大きな捲き量にすることがコスト面でも有利である。また、今日ではエアバックの収納性収納性から470dtex,350dtexの糸が主流になってきており、細い350dtexの繊度であることが好ましい。
【0013】
また、単糸繊度も細い方がさらにコンパクトで低通気の基布にすることができるため繊度が350dtex以下で72フラメント以上の低単糸繊度で有るほうが良いことから色糸についてもこのような低単糸繊度の構成で有ることが良い。
【0014】
また、生産性の面から高収縮の糸を後加工で収縮させ織物の密度を上げる方法が採用されているがこの場合にはエアバックの基布を構成する糸の沸水収縮率が8〜9%程度と高くなっており、このような場合に使う色糸では沸水収縮率が5%程度の低い糸を使うと後加工で織物を収縮させた際、色糸が浮いてしまい見苦しいだけでなく通気度アップの要因となってしまいこのような基布では色糸の沸水収縮率は6%以上である必要であり色糸を基布から浮かせないようにするには基布の主な構成をしている色の付いていない原糸の沸水収縮率と色付きの原着原糸の沸水収縮率との差が2%以下の沸水収縮率が必要であることがわかった。
【0015】
【実施例】
次に本発明を実施例により具体的に説明する。
【0016】
(実施例1)硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド66をベースにした黒色の原着マスターチップ3%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大195℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−48フィラメントで強度7.1cN/dTex、沸水収縮率8%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。この原着マルチフィラメントをポリアミド66の通常のエアバック原糸(350dtex−72フィラメント強度8.4cN/dtex、沸水収縮率9%)経糸に、この原着マルチフィラメント糸6本を入れビーミングした。このビームを使い緯糸には経糸と同じ通常のエアバック原糸をウォータージェットルームで580回/分にて平織り製織した。これを沸水にてオーバーフィードしながら収縮加工し、乾燥熱セットしてエアバック用基布を得た。この結果を表1に示す。
【0017】
(実施例2)硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド6をベースにした黒色の原着マスターチップ5%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大195℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度7cN/dTex、沸水収縮率8%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。これを実施例1と同様に経糸に6本入れ平織り製織した。これを沸水にてオーバーフィードしながら収縮加工し、乾燥熱セットしてエアバック用基布を得た。この結果を表1に示す。
【0018】
(実施例3)
硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド6をベースにした黒色の原着マスターチップ3%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大210℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度7cN/dTex、沸水収縮率7%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。これを実施例1と同様に経糸に6本入れ平織り製織した。これを沸水にてオーバーフィードしながら収縮加工し、乾燥熱セットしてエアバック用基布を得た。この結果を表1に示す。
【0019】
(比較例1)硫酸相対粘度2.8のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド6をベースにした黒色の原着マスターチップ3%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大220℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度5.5cN/dTex、沸水収縮率5.5%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。これを実施例1と同様に経糸に6本入れ平織り製織した。これを沸水にてオーバーフィードしながら収縮加工し、乾燥熱セットしてエアバック用基布を得た。この結果を表1に示す。
【0020】
(比較例2)硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド6をベースにした黒色の原着マスターチップ3%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大230℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度7cN/dTex、沸水収縮率5.5%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。これを実施例1と同様に経糸に6本入れ平織り製織した。これを沸水にてオーバーフィードしながら収縮加工し、乾燥熱セットしてエアバック用基布を得た。この結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0004110453
【0022】
(実施例4)硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド66をベースにした赤色の原着マスターチップ3%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大220℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度7.1cN/dTex、沸水収縮率6.5%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。この原着マルチフィラメントをポリアミド66の通常のエアバック原糸(350dtex−72フィラメント強度8.4cN/dtex、沸水収縮率5.5%)経糸に、この原着マルチフィラメント糸6本を入れビーミングした。このビームを使い緯糸には経糸と同じ通常のエアバック原糸をレピア織機により平織り製織し精、乾燥、熱セットしエアバック用基布を得た。その結果を表2に示す。
【0023】
(比較例3)硫酸相対粘度3.2のポリアミド66ポリマーチップにポリアミド6をベースにした赤色の原着マスターチップ5%混合し溶融紡糸し紡糸後、最大195℃の加熱ローラを使いローラ群により多段直接延伸し、350dtex−72フィラメントで強度7cN/dTex、沸水収縮率8%のマルチフィラメントを巻取りパッケージとした。これを実施例4と同様に経糸に6本入れ平織り製織精、乾燥、熱セットしエアバック用基布を得た。その結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0004110453
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、エアバッグ用のマーキング繊維に色をいれても、糸の強度低下がなく、エアバッグ基布の特性、即ち、通気性、強度、耐熱性などの基本的な特性を落とすことなく、製織性が良く、色糸の浮きがなく、色糸部しわの発生のない高強力ポリアミド原着糸が提供できる。

Claims (4)

  1. ポリマー段階もしくは製糸段階で色をつけた織物のマーキング用原着糸であり、硫酸相対粘度が3.0以上、ポリアミド66成分が90%以上であって、原糸強度がcN/dtex以上、原糸沸水収縮率が6.5%以上であるエアバック用高強力原着糸。
  2. 請求項1に記載のエアバッグ用高強力原着糸が、 2 kg以上の捲き量で捲かれたエアバッグ用高強力原着糸パッケージ。
  3. 高強力原着糸の繊度が350dtex以下である請求項1に記載のエアバック用高強力原着糸。
  4. 高強力原着糸のフィラメント数が72本以上であり、沸水収縮率が7%以上ある請求項1またはに記載のエアバック用高強力原着糸。
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