JP4109125B2 - 使用済み燃料貯蔵施設の保守方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は原子力発電施設から取り出された使用済み原子燃料(以下、単に「使用済み燃料」ともいう)の貯蔵施設のうち、使用済み燃料を収納したキャニスタ(収納容器)を輸送用キャスクから取り出し、これを建屋のコンクリートなどで周囲を囲まれた部屋で空気中に貯蔵する(ボールト方式の)乾式燃料貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のボールト貯蔵方式の中間貯蔵施設について図14(a)〜(c)を用いて説明する。従来のボールト貯蔵方式の中間貯蔵施設は、使用済み燃料を封入したキャニスタ1を複数個並べて貯蔵する貯蔵室2と、その上部に、キャニスタ1を貯蔵室2内の所定の位置に運搬するための搬送室3を設け、搬送室床(貯蔵室天井)33によって上下に区分した部屋構成としている。貯蔵室2内には格子状もしくは千鳥状にキャニスタ1を密集配置した一つの空間として建屋寸法を最小化するよう計画されている。なお、貯蔵室2が地面31以下の位置になるよう、中間貯蔵施設全体が半地下構造になっている。
【0003】
キャニスタ1は、収納管内に収納して貯蔵する方式と、直接貯蔵室2の床上のキャニスタ基礎5上に設置する方式などがある。図14(a)の例では、図14(b)のように、除熱のためにキャニスタ1の周囲に鋼管6を設置し、これを貯蔵室2床上の基礎5の上に直接設置する方法を示している。
【0004】
他の例として、図14(c)に示すように、内部にキャニスタ1を収納した収納管4の上端を貯蔵室2天井から支持して下端を貯蔵室2床で振れ止めした構造もある。
【0005】
使用済み燃料からの発熱に対し、これを冷却するため、貯蔵室2には一方の壁から給気を行ない、他方の壁から排気するよう外部に通じる開口を有する冷却風路を設置し、外気による自然循環によりキャニスタ1を冷却するように構成されている。
【0006】
すなわち、建屋外部に開口した給気口7から取り入れられた空気は、給気風路8を通って貯蔵室2の下部の貯蔵室入口50から貯蔵室2に導かれ、キャニスタ1からの発熱を冷却する。暖められて密度が小さくなった空気は、貯蔵室2の上部の貯蔵室出口52から排気風路9へ導かれ、排気風路9を上昇して排気口10から建屋外部に放出される。排気口10は吸気口7よりも高い位置にある。これによって、空気密度の差に基づく自然循環力(煙突効果)が生じる。この煙突効果により貯蔵室2内は自然換気により外気が供給され、冷却空気を確保する仕組みになっている。
【0007】
ここで収納管方式では、キャニスタ1からの発熱は収納管4を介して空気流で冷却される。冷却はファンなどにより強制換気とする方法もあるが、外部動力を必要とせず行なえる自然換気は、安全上および保守作業軽減や経済性上からも好ましい。
【0008】
さらに、貯蔵室2の周囲あるいは貯蔵室2の上部の搬送室3ならびに敷地周辺に対して、貯蔵室2内のキャニスタ1内部に封入している使用済み燃料から発する中性子およびガンマ線などの放射線を遮蔽するため、貯蔵室2の壁、および天井33は遮蔽性能を有する躯体で囲まれている。貯蔵室天井33にはキャニスタ1の搬出入のため、遮蔽性能を有するハッチカバー11を有する開口18を個々のキャニスタ1の直上位置に設置し、キャニスタ1の搬出入の際はハッチカバー11を開放する。
【0009】
また、貯蔵室2から外部に対して給気風路8、排気風路9を通じての放射線を遮蔽するため、それぞれの風路の途中に、遮蔽床12を交互に複数枚ラビリンス状に組み合わせて設置する方法が考えられる。
【0010】
また、前述の通り、キャニスタ搬送室床(貯蔵室天井)33には貯蔵可能なキャニスタ1の数だけ開口18が設けられており、搬送室床33は相当な量の開口18が設置されることになる。また、貯蔵室2の周囲壁が搬送室床33を支持するため、搬送室床33の支持スパンは長くなるのが一般的である。このため、搬送室床33は大きな上載荷重に対しては構造的に厳しく、搬送装置は、キャニスタ1の貯蔵部全体をまたぐ形に大型のクレーン13などを設置して主方向(図14(a)の紙面垂直方向)の移動をさせ、これと直角方向はクレーン13のガータ上を移動するトロリ14などで所定の貯蔵位置にキャニスタ1を運ぶ。
【0011】
また、搬送室3内を搬送中のキャニスタ1からの放射線を遮蔽するため、遮蔽体内にキャニスタ1を収納して移動させ、キャニスタ1の貯蔵位置では遮蔽体で開口18を覆ってハッチカバー11を開放したのちキャニスタ1を貯蔵室2内に下ろして貯蔵し、ハッチカバー11を閉じて搬送を完了する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
乾式貯蔵方式はまだ歴史が浅く、我が国でもキャスクに密封したキャニスタ1を貯蔵する、一般にキャスク貯蔵という方式が主流である。ボールト方式は、キャスクに代えて、建屋内の貯蔵室2を堅牢に遮蔽してこの中にキャニスタ1を貯蔵する方式で、各種の概念が提案されている。
【0013】
ボールト貯蔵方式では、使用済み燃料からの中性子やガンマ線などにより放射線量が非常に高い。このため、一旦貯蔵室2内にキャニスタ1を貯蔵すれば、人員が直接この部屋内に入ることは被ばくの観点で好ましくない。一方、貯蔵室2内の冷却は外気による自然換気としているため貯蔵室2内は結露なども懸念され、貯蔵室2内の各種設備だけでなく建屋の床や壁の塗装なども長期間にわたって放置すれば劣化が懸念される。
【0014】
また貯蔵室2に面する給気風路8や排気風路9内、あるいは貯蔵室2の搬送室床33の開口部18やハッチカバー11の保守・点検でも同様の課題があった。このため、キャニスタ1の貯蔵期間中に貯蔵室2およびこれにつながる給排気風路内の建屋の床・壁・天井や設備の点検・保守時、あるいは点検で判明した不具合の補修時に作業者の受ける線量を抑制する方策が強く望まれていた。
【0015】
また、キャニスタ1は耐候性に優れた材料で強固に製作されるものの、万一の漏洩に対し監視する方策が検討されている。その一つが、キャニスタ1を収納した収納管4の一つずつから内部ガスをモニタリングする方法であるが、この場合は収納管4だけでなく、配管やファンなどの内部ガスの循環装置が必要であり、また一つ一つの収納管4の点検が常時必要なことから、経済性に優れかつ監視作業の負担も小さい代案が望まれていた。
【0016】
また、前述のように、貯蔵室2から給気風路8および排気風路9を通じての放射線を遮蔽するため、各風路に遮蔽床12を交互にラビリンス状に設置する方法が考えられる。しかしながら、ガンマ線だけでなく、床を回り込む中性子の遮蔽のためにも、組み合わせる遮蔽床12の枚数が多くなるのが一般的であり、このため風路の遮蔽が必要な壁も相当の高さになる。
【0017】
一方、この遮蔽床12の枚数は少ないほど冷却空気の流れによる圧力損失は小さくできるため、冷却性能上は床の枚数が少ないことが必要な冷却空気量の確保、あるいは排気風路9と給気風路8の高さ差を少なくでき、結果として排気風路9の高さが低減できるため好ましい。さらに、高さの高い排気風路9や遮蔽の必要な床・壁により重心が高い構造となるため、耐震設計上も風路の高さの短縮や軽量化が強く望まれていた。
【0018】
さらに貯蔵室2上部の搬送室3の搬送装置は、前述のように、多くの開口18があり大スパンになる搬送室床33に荷重をかけないため、貯蔵室2をまたぐ位置に壁や柱を設けて支持するクレーン13にすることが考えられる。この場合は、キャニスタ1やハッチカバー11の開閉装置をワイヤで吊ることとなり、位置決めに人手を介する必要がある。また、搬送室床33をまたぐブリッジタイプの装置とする例もあるが、スパンが大きいと強度的に必要なブリッジ高さが高くなる。このため貯蔵キャニスタの列数を少なくして貯蔵室2のスパンを抑制するなどの工夫がなされているが、その場合は貯蔵室2が細長くなり建屋の耐震性が悪化するだけでなく、経済性も悪くなり、合理的な搬送概念が求められていた。
【0019】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、▲1▼使用済み燃料貯蔵施設の貯蔵室および貯蔵室につながる風路内の設備・構造物や貯蔵室天井や開口まわりなど、設備や建屋の保守点検・補修時の貯蔵キャニスタからの放射線量を低減し、作業者が受ける線量を低減し、▲2▼万一のキャニスタからの漏洩に対し、収納管や多くの配管・ファンなどの附帯設備を必要としない簡便なモニタリングを可能とする乾式燃料貯蔵施設を提供することを目的とする。また、好ましくは、▲3▼給排気風路の遮蔽高さを低減し、かつ点検保守時の作業者の受ける線量低減も可能な構成とした乾式燃料貯蔵施設を提供する。さらに▲4▼搬送装置を小型化し、搬送室をコンパクトにする構成を提供するものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を鑑みてなされたものであって、請求項1に記載の発明は、使用済み原子燃料を収納する複数のキャニスタを空気中で収納し、放射線遮蔽機能を有する壁に囲まれた貯蔵室と、前記貯蔵室内に空気を取り入れる給気風路と、前記貯蔵室内の空気を排出する排気風路と、前記貯蔵室を放射線遮蔽仕切り壁により区画して形成され、それぞれが前記給気風路および排気風路の両方に接続されている複数のセルと、前記貯蔵室の上部に配置され、前記複数のキャニスタを前記貯蔵室内の所定位置に搬送する搬送装置を備えるキャニスタ搬送室と、を有する使用済み燃料貯蔵施設の保守方法において、前記複数のセルのうち一つのセルを予備セルとし、前記複数のセルのうち一つのセル内のキャニスタを前記予備セルに移動する移動工程と、移動後の前記一つのセル内の保守を行う保守工程と、保守後に前記予備セル内のキャニスタを移動前の前記一つのセルに戻す工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設またはその保守方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、従来技術と共通もしくは類似の部分、または実施の形態相互に共通もしくは類似の部分には同じ符号を付して、重複説明は省略する。
【0024】
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態について、図1〜4を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の立断面図、図2は図1の台車20を取り除いた状態におけるA−A線矢視平断面図、図3は図1のB−B線矢視平断面図である。貯蔵室2は遮蔽機能を有する相互に平行な複数の直立の仕切り壁15によって、複数のセル35a〜35dに区切られている。図1で、仕切り壁15の給気風路8側上端15aは給気風路8の下端位置付近にある。また、仕切り壁15の排気風路9側上端15bは排気風路9の下端位置付近にある。給気風路8から取り込まれた冷たい外気は、各セル35a〜35dに流入して、その内部に貯蔵されているキャニスタ1からの発熱を冷却した後、排気風路9から放出される。
【0025】
図2に示すように、この例では3列のキャニスタ1ごとに仕切り壁15を配置している。しかし、列数は3列に限定されるものではない。
また各セル35a〜35dの排気風路9の入口付近に該セルの排気の放射性物質を検出できるよう、検出装置につながるサンプリング配管16を設けており、万一のキャニスタ1からの漏洩で内部の放射性物質が漏洩した時に速やかに検知しできるようにしている。
【0026】
本実施の形態では貯蔵室2が複数のセル35a〜35dに分割され、各セル毎にサンプリングを行なうことで、漏洩が生じたキャニスタ群を該セル内のものに限定することができ、その後に行なう、漏洩が生じたキャニスタの特定作業を容易にしている。
【0027】
図1に示すように、貯蔵室天井33の上にはレール19が配置され、このレール19の上に台車20が載置されて、これらにより、貯蔵室2内のキャニスタ1を、搬送室3を通して移動することができる。
【0028】
図3は、貯蔵室2上部に配置されたキャニスタ1の搬送室の床33の上のレール19の配置などを示す。ただし、この図では台車20の図示を省略している。床33には下部の貯蔵室2のキャニスタ配置に合わせて開口18が設けられ、開口18は遮蔽機能を持つ開閉可能なハッチカバー11で塞がれている。図3からわかるように、床33はその下方の仕切り壁15で支持されることになり、1辺のスパンが大きく短縮され、この結果、床33の強度が向上する。したがって、仕切り壁15と垂直な方向に搬送装置のレール19を配置することで、搬送装置の台車20の荷重を床33などが容易に支持することができる。
【0029】
レール19は各ハッチの間に設置し、台車20が直接床33の上の任意の列を走行できるようになっている。この結果、搬送装置の位置決めが容易となり、作業性が大きく向上する。また、搬送装置の台車20は、貯蔵室2全体をまたぐクレーン13(図14(a))、あるいはブリッジタイプの装置に比べて高さを低減でき、施設全体をコンパクトにすることができる。
【0030】
さらに、クレーン13のスパンが貯蔵室2のスパンを制約することもなく、合理的な幅の貯蔵室2、ひいては建屋寸法として計画できる。さらに保守を行なうセル35a〜35d内のキャニスタ1を別のセルに移動する際、各セルが同じ配置であれば、同一レール19上の台車20の移動で目的のキャニスタ1を別のセルに移動させることができ、作業性が大きく向上する。
【0031】
キャニスタ1を乗せた状態の台車20は重心が高いので、転倒を避けるため、台車20は幅を大きく設計されており、図1の例では、同時に4本のレールに台車20の車輪(図示せず)が乗って走行するようになっている。このようにするとキャニスタを乗せた台車20の重量を分散して支持することができるため、レール19を支持する構造の補強を少なくすることができる。キャニスタ1を乗せた状態の台車20の転倒を防止する観点からは、台車20の中央よりの2つのレールに乗っている車輪を設けなくてもよい。
【0032】
なお、図1では、台車20が一番端のキャニスタ1の位置に来たときに外側の車輪がレール19に乗らないように見えるが、これは単に両端のレールの図示を省略しているものである。
【0033】
また、台車20をレール19の方向と垂直な方向(図1〜3の左右方向)に移動するときは、台車20をレール19の端の位置に移動したうえで、図示しない横移動用レールに載置された横移動台車に乗せてこの横移動用レールに沿って横移動を行なう。
【0034】
図4(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の搬送装置のレール19と床33の関係の異なる例を模式的に示す。図4(a)は直接レール19を床33の上に設置した例である。図4(b)は、床33の上に型鋼43を配置し、この型鋼43の上にレール19を設置した例である。この場合は床33または型鋼43で荷重を受けるが、下部の貯蔵室2のセルを区切る仕切り壁15がそれぞれの支持をしているのは同様である。また、図4(c)は床33内に型鋼43を埋設し、その型鋼上にレール19を配置した例である。
【0035】
さらに、図4(d)は床33内に床強度を負担する型鋼43を埋設した例であり、この場合は、床強度を型鋼43と床33の鉄筋コンクリートが複合して負担することが可能となる。このため、床33の強度を負担する部分の幅を小さくすることが可能となり、キャニスタ搬出入用の開口18の間隔も小さくすることができる。そして、貯蔵室2内の収納キャニスタ1の間隔を小さくして施設の小型化を図ることができる。
【0036】
次に、この使用済み燃料貯蔵施設の保守方法について説明する。使用済み燃料貯蔵施設では、セル35a〜35dの内部のキャニスタ基礎5や鋼管6などの設備や構造物、床壁の躯体の清掃や排水装置、貯蔵室天井33の開口18やハッチカバー11などの点検・清掃・補修など(以下、併せて「保守」と呼ぶ)を行なうために、作業者がセル35a〜35d内に立ち入る必要がある。このとき、作業者の受ける線量をなるべく低く抑えることが好ましい。なお、図14(c)に示すようなキャニスタ1を収納した収納管4の上端を貯蔵室2天井から支持し下端を貯蔵室2床で振れ止めした構造にあっては、収納管4や収納管の振れ止めなどの設備も保守対象に含まれる。
【0037】
図2は、一つのセル35bの保守を行なうために、このセル35bのキャニスタ1をすべて他のセル35a、35c、35dに移動した状態を示している。すなわち、セル35b内にあるキャニスタ基礎5や除熱のための鋼管6などの設備や構造物、床壁の躯体の清掃や排水装置、貯蔵室天井33の開口18やハッチカバー11などの保守を行なうために作業員がセル35b内に入っても、他のセル35a、35cなどの貯蔵キャニスタ1からの線量は、遮蔽機能を有する仕切り壁15により遮蔽されており、作業者の受ける線量は低減され、安全な作業が可能である。
【0038】
また、セル35bの保守が完了したら、例えばセル35cの保守を行なう。このときは、セル35cに貯蔵されていたキャニスタ1を、保守が完了したセル35bに移動する。これにより、セル35c内のキャニスタ1をなくすことができ、セル35bの保守と同様に、作業者の受ける線量は低減され、安全な作業が可能である。このようにキャニスタを移動して、セル毎に順次保守を行なえば、貯蔵室2全体が保守可能となり、長期間にわたって健全な貯蔵施設全体の管理が容易に可能となる。
【0039】
また、順次保守の完了したセルに次に保守を行なうセルのキャニスタを移動する代わりに、予備セルを設定しておき、保守を行なうセルに貯蔵されたキャニスタをその予備セルに移動し、保守が完了したら予備セルからキャニスタを元のセルに戻して貯蔵する方法により保守を行なってもよい。
【0040】
例えば、予備セルをセル35aとすると、セル35bに貯蔵されているキャニスタ1をセル35aに移動し、セル35bの保守を行なう。そして、セル35bの保守が完了した後に、セル35aのキャニスタ1を元のセル35bに移動させる。セル35cを保守する場合も同様に、保守を行なう間、セル35cに貯蔵されているキャニスタ1をセル35aに一時的に移動させる。
【0041】
このようにすると、各セルには保守の前後を通じて同一のキャニスタが貯蔵されることになる。このため、どの使用済み燃料がどのセルに貯蔵されているか容易に把握することができ、使用済み燃料の管理を容易とすることができる。
【0042】
また、各セルに貯蔵できるキャニスタの量を同じにしておくことにより、保守時に過不足なくキャニスタをセル間で移動することができ、貯蔵施設の空間を無駄なく使用することができる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。この実施の形態は第1の実施の形態に類似しているが、遮蔽機能を有する仕切り壁15を貯蔵室2だけでなく、給気風路8、および排気風路9の遮蔽が必要な範囲にまで延ばしたものである。すなわち、仕切り壁15の給気風路8側上端15aは給気風路8の上端位置にあり、仕切り壁15の排気風路9側上端15bは排気風路9の上端位置にある。
【0044】
このように給気風路8および排気風路9の仕切り壁15を貯蔵室2の仕切り壁15と連続して配置する。これにより、給気風路8から貯蔵室2、排気風路9に至る一連の貯蔵および冷却が可能な区画とすることができ、前記貯蔵室2と同時に風路も保守することで作業者の受ける線量は低減され、安全な作業が可能である。また、長期間にわたって健全な貯蔵施設全体の管理が容易に可能となる。さらに、キャニスタ1の漏洩に対する排気のサンプリングも排気風路9内で行なうことができる。
【0045】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について、図6を参照して説明する。この実施の形態は第1および第2の実施の形態に類似しているが、給気風路8および排気風路9がこれらの実施の形態と異なる。すなわちこの実施の形態では、給気風路8および排気風路9の各下部に、相互に平行な複数枚の遮蔽板17が配置され、その上方に、ラビリンスを構成する遮蔽床12が給気風路8および排気風路9それぞれに2枚だけ配置されている。図示のように、各遮蔽板17は、直立するように配置され、給気風路8および排気風路9と貯蔵室2または搬送室3との境界の壁37、39に平行に、すなわち使用済み燃料貯蔵施設の外壁41に平行に配置されている。
【0046】
風路の圧力損失を小さく抑えながら遮蔽効果を確保するために、相互の間隔の小さい平行な複数枚の遮蔽板17にしてあり、これにより風路の高さも低減できる。遮蔽板17の上方に複数の遮蔽床12をラビリンス構造で配置し、かつこの遮蔽床12に屋根と同様の防水と排水を行なうことで、下部の遮蔽板17や風路、貯蔵室2内に入り込む雨水を抑制し、あるいは外部から異物が進入して風路を塞ぐ不具合を抑制することができる。
【0047】
例えば、図7および図8に示すように、最上部の遮蔽床12およびその下の遮蔽床12の上面に防水塗装またはアスファルト60を敷いて防水するとともに一方に傾斜するように設定し、遮蔽床12の上面が傾斜して低くなった側に側溝62を設置し、側溝62内の雨水集める集水ファンネルと集水ファンネルから雨水を排水する排水管64を設置して雨水の排水を行なうようにする。
【0048】
なお、遮蔽板17のさらに上方の床にも遮蔽機能を持たせることで遮蔽板17自体の高さもさらに低減でき、全体として遮蔽の必要な風路の高さを低くすることができる。この実施の形態では、遮蔽の必要な高さを、搬送室3の屋根と同等以下にすることで、排気風路9の高さを低減できるだけでなく、上部は軽量な構造とすることができ、風路の耐震性を向上することができ、より安全な施設を安価に提供することができる。
【0049】
このとき、この遮蔽板17の高さや遮蔽床12の枚数は、キャニスタの貯蔵体数などによって決まる貯蔵室2内での発熱量や給気の温度によって適宜変更することができる。
【0050】
また、風路の仕切り壁上端15a、15bを遮蔽板17上部の遮蔽床12までとすることで、貯蔵室2および遮蔽板17などの風路の保守時などでの作業者の受ける線量を低減し、また適切な保守の結果、貯蔵施設全体の健全性が長期にわたり確保できるのは前述の通りである。
【0051】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について、図9および図10を参照して説明する。この実施の形態は第3の実施の形態に類似しているが、給気口7は、外気に開放する代わりに搬送室3と連絡しており、また、搬送室3には、外部と連絡する空気取り入れ口29が設けられている。
【0052】
貯蔵室2への給気は、空気取り入れ口29から一旦搬送室3に入り、さらにここから給気口7へ導かれ、給気風路8を経て貯蔵室2に供給される。給気ルートを、一旦搬送室3を通して給気することで、搬送室3の換気も自然換気できるため、貯蔵施設全体を自然力により換気でき、搬送室3用の換気設備が不要となり、経済性に優れる。さらに、雨水や異物が貯蔵室2に入りにくくなり、水や廃棄物に対する放射線管理上も好ましい。
【0053】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態について、図11を参照して説明する。この実施の形態は第4の実施の形態(図9、10)に類似しているが、遮蔽板17の配置方向を第4の実施の形態から90°回転させて、仕切り壁15に平行にしたものである。この場合も、遮蔽板17は空気の流れの方向(鉛直方向)に平行であり、第4の実施の形態と同様の効果が得られる。
また、第3の実施の形態(図6)の遮蔽板17を本実施の形態の遮蔽板17の配置方向と同じにしても、第3の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0054】
[第6の実施の形態]
次に、第6の実施の形態について、図12を参照して説明する。この実施の形態は第4の実施の形態(図9)に類似しているが、本発明の使用済み燃料貯蔵施設の保守時に、仮設の換気あるいは空調装置21を、例えば搬送室3内に設置し、貯蔵室2あるいは風路内の、保守対象となって作業者が入るセル内の換気、または換気空調を行なう。ただし、図12では、台車20の図示を省略している。図12の例では、貯蔵室2上部の搬送室3に仮設の換気あるいは空調装置21を設置し、開口18を通じて貯蔵室2内の空気を循環させ、埃などを除去しながら空調する。
【0055】
この場合、貯蔵室2内の空気の一部は換気されている。なお、仮設の換気あるいは空調装置21の吸込み側を搬送室2に開放し、図12の仮設の換気あるいは空調装置21の吸込み側になる開口18を閉じれば、搬送室3から貯蔵室2を通った空気が排気風路9を通じて排気されることになる。
【0056】
[第7の実施の形態]
次に、第7の実施の形態について、図13を参照して説明する。この実施の形態は第3の実施の形態(図6)に類似しているが、給気風路8の出口に仮設の換気あるいは空調装置21を設けている。この場合は給気風路8を通じて空気が強制的に供給され、排気風路9を通じて排気される。
【0057】
[その他の実施の形態]
キャニスタ1の配置は前述の実施の形態に限定されるものではなく、キャニスタ1の列数は冷却などの性能に対し自由度を増すことも可能である。あるいはキャニスタ1も正方配列ではなく、千鳥配置とすることもできる。また、キャニスタ1を鉛直方向に複数段積み重ねることも可能であり、積み重ね方として、複数段のキャニスタ1を直接積み重ねることもできるし、上下のキャニスタ1の間に水平支持板を配置してもよい。これらに対しても前述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上記実施の形態の特徴部分を種々に組み合わせることも可能である。例えば、第6、第7の実施の形態はそれぞれ、第4、第3の実施の形態に、仮設の換気あるいは空調装置21を適用する例を示しているが、他の実施の形態に適用することも可能である。また、第1の実施の形態(図4)で説明した搬送室床33とレール19の組合せ構造は他の実施の形態にも適用できる。さらに、第1の実施の形態(図2)で説明した使用済み燃料貯蔵施設の保守方法も、他の実施の形態にも適用できる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ボールト貯蔵法式の使用済み燃料貯蔵施設において、貯蔵室内の構造物などの保守時の貯蔵キャニスタからの放射線量を低減し、作業者の受ける線量を低減することができ、万一のキャニスタの漏洩に対し、簡便なモニタリングが可能となる。これらにより、経済性、安全性、耐震性、長期健全性に優れた乾式燃料貯蔵施設、およびその保守方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第1の実施の形態の立断面図。
【図2】図1のA−A線矢視平断面図。
【図3】図1の台車を取り除いた状態におけるB−B線矢視平断面図。
【図4】図1の搬送室床およびレール部を拡大して示す立断面図であって、(a)〜(d)はそれぞれ異なる実施例を示す図。
【図5】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第2の実施の形態の立断面図。
【図6】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第3の実施の形態の立断面図。
【図7】図6のC部拡大立断面図。
【図8】図6のD部拡大立断面図。
【図9】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第4の実施の形態の立断面図。
【図10】図9の台車を取り除いた状態におけるE−E線矢視平断面図。
【図11】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第5の実施の形態の平断面図であって、図10に対応する図。
【図12】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第6の実施の形態の立断面図。
【図13】本発明に係る使用済み燃料貯蔵施設の第7の実施の形態の立断面図。
【図14】従来の使用済み燃料貯蔵施設を示す図であって、(a)は立断面図、(b)は(a)のキャニスタおよび鋼管を一部切り欠いて示す拡大斜視図、(c)はキャニスタの収納方法の他の例を示す部分拡大立断面図。
【符号の説明】
1…キャニスタ、2…貯蔵室、3…搬送室、4…収納管、5…キャニスタ基礎、6…鋼管、7…給気口、8…給気風路、9…排気風路、10…排気口、11…ハッチカバー、12…遮蔽床、13…クレーン、14…トロリ、15…仕切り壁、16…サンプリング配管、17…遮蔽板、18…開口、19…レール、20…台車、29…空気取り入れ口、31…地面、33…搬送室床(貯蔵室天井)、35a,35b,35c,35d…セル、37…境界壁、39…境界壁、41…外壁、43…型鋼、50…貯蔵室入口、52…貯蔵室出口、60…防水塗装またはアスファルト、62…側溝、64…排水管。
Claims (2)
- 使用済み原子燃料を収納する複数のキャニスタを空気中で収納し、放射線遮蔽機能を有する壁に囲まれた貯蔵室と、前記貯蔵室内に空気を取り入れる給気風路と、前記貯蔵室内の空気を排出する排気風路と、前記貯蔵室を放射線遮蔽仕切り壁により区画して形成され、それぞれが前記給気風路および排気風路の両方に接続されている複数のセルと、前記貯蔵室の上部に配置され、前記複数のキャニスタを前記貯蔵室内の所定位置に搬送する搬送装置を備えるキャニスタ搬送室と、を有する使用済み燃料貯蔵施設の保守方法において、
前記複数のセルのうち一つのセルを予備セルとし、前記複数のセルのうち一つのセル内のキャニスタを前記予備セルに移動する移動工程と、移動後の前記一つのセル内の保守を行う保守工程と、保守後に前記予備セル内のキャニスタを移動前の前記一つのセルに戻す工程と、を有することを特徴とする使用済み燃料貯蔵施設の保守方法。 - 前記保守を行うセルに仮設の換気装置または換気空調装置を設け、前記仮設の換気装置または換気空調装置によって当該セル内の換気または換気空調を行なう工程を、さらに有することを特徴とする請求項1記載の使用済み燃料貯蔵施設の保守方法。
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