JP4106739B2 - デジタル信号処理方法およびデジタル信号処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時分割処理に好適なデジタル信号処理方法およびデジタル信号処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、臨場感に溢れる音響効果を実現するために、再生すべき音楽ソースとしての楽音データに残響等を付与するためにフィルタリング等のデジタル処理を施すことが行われている。このデジタル処理には高速で積和算の演算を実行するDSP(Digital Signal Processor)が用いられることが多い。DSPは、命令を格納するレジスタ、データバッファ、乗算器および加算器を備えており、レジスタから読み出される命令に従って演算が実行される。
【0003】
現在最も普及しているステレオ再生用の音楽ソースは、Lch,Rchからなる独立した2チャンネル信号として与えられることが多いため、DSPは、Lch楽音データとRch楽音データを同時に処理する必要がある。この場合、DSPの演算ユニットを2チャンネル分設けることによりデジタル処理を2チャンネル平行して実行することが考えられるが、DSPの回路規模すなわちDSPのチップサイズが2倍になってしまう。一方、Lch楽音データとRch楽音データに対して行うべきフィルタリング等のデジタル処理は同一である。そこで、Lch楽音データとRch楽音データとを交互に1つの演算ユニットに供給し、DSPを時分割で動作させることにより、デジタル処理を行う手法が知られている。
【0004】
図5は、DSPを時分割で動作させる場合の概念図であり、図6は、そのタイミングチャートである。デジタル処理すべきLch入力楽音データL1,L2…とRch入力楽音データR1,R2…がスイッチSW1に入力されると、交互に選択されて図6(a)に示すようなデータ系列L1,R1,L2…が得られる。そして、このデータ系列L1,R1,L2…が演算ユニットUに順次入力されると、2チャンネルの入力楽音データが命令iに基づいて演算処理が実行され、処理済データ系列L1',R1',L2'…が順次出力される。スイッチSW2は、処理済データ系列L1',R1',L2'…を交互に選択して、Lch出力楽音データL1',L2'…とRch出力楽音データR1',R2'…を生成している。
【0005】
この場合、命令iは図6(b)に示すように、同一スロットには1個の命令が割り当てられる。これは、2チャンネルステレオ信号であるLch楽音データとRch楽音データの対称性を利用したものであり、同一のタイミングのデータには同一の処理を行えば良いからである。例えば、命令i2が、スロット1とスロット2の平均演算を指示するものであれば、L2'=(L1+L2)/2、R2'=(R1+R2)/2となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、音響効果を高めるべくデジタルサウンド処理においては、図7に示すようにLch楽音データとRch楽音データとを合成したデータを各チャンネルから出力したい場合がある。例えば、ゲームソフトにおいて飛行機が左から右に飛び去っていくような場面において、効果音の音源位置を左から右に移動させるような場合(ポジショニング効果)や、2チャンネルに対応したスピーカの、その配設位置のさらに外側やリスナの背後からもあたかも音が聞こえてくるような効果を発生させる場合(サラウンド効果)である。しかしながら、上述したDSPの一演算ユニットを時分割で使用する方法は、一方のチャンネルの演算処理を行う際には他方のチャンネルの楽音データを必要としない処理(以下、「定常処理」と称する)のみに用いられるものである。そのため、図6(a)に示されるようにスロットの前半はLch楽音データ、スロットの後半はRch楽音データといったようにデータ位置(データ配列)を固定している。したがって、図7に示されるような一方のチャンネルの演算処理する際に他方のチャンネルの楽音データを必要とする処理(以下、「非定常処理」と称する。)には対応することができない。このため、非定常処理と定常処理が混在するような場合には、従来の時分割手法は用いることができず、結局、LchとRchで別々の処理系統を設け、独立して動作させるしかなく、DSPのチップサイズが大きくなってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、非定常処理と定常処理を行うことができるデジタル信号処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明にあっては、タイムスロット毎に発行される、それぞれが前記タイムスロットを分割した第1チャンネル期間と第2チャンネル期間とで共用される複数の命令に対応した処理を周期的に繰り返すことによって、第1のデータのみを使用して第1チャンネルの出力データを演算するとともに第2のデータのみを使用して第2チャンネルの出力データを演算する定常処理と、前記第1のデータと前記第2のデータの両方を使って前記第1チャンネル及び前記第2チャンネルの出力データを演算する非定常処理とを実行するデジタル信号処理方法において、前記命令をタイムスロット毎に発行する第1の工程と、前記命令に基づいて第1のデータまたは第2のデータを選択して出力する第2の工程と、前記第2の工程において出力される出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行う第3の工程とを備え、前記第2の工程においては、前記定常処理を実行する際には、前記第1チャンネル期間に前記第1のデータを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第2のデータを出力し、前記非定常処理を実行する際には、前記複数の命令のうちの少なくとも1つの命令において、前記第1チャンネル期間に前記第2データを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第1データを出力し、前記第3の工程は、前記命令に従って生成される係数データと前記第2の工程において出力される出力データを乗算する乗算工程と、該乗算工程における乗算結果と前記第3の工程において出力される出力データを加算する加算工程と、前記加算工程における出力データを前記タイムスロットの自然数倍の時間だけ遅延させて前記加算工程の入力にフィードバックするとともに、遅延されたデータを前記演算工程における出力データとして出力する遅延工程とを有することを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明にあっては、前記第2の工程において、前記非定常処理を実行する際には、前記第1のデータ及び前記第2のデータを出力する周期を前記定常処理を実行する際に対して2倍の時間にすることを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため請求項に記載の発明にあっては、タイムスロット毎に発行される、それぞれが前記タイムスロットを分割した第1チャンネル期間と第2チャンネル期間とで共用される複数の命令に対応した処理を周期的に繰り返すことによって、第1のデータのみを使用して第1チャンネルの出力データを演算するとともに第2のデータのみを使用して第2チャンネルの出力データを演算する定常処理と、前記第1のデータと前記第2のデータの両方を使って前記第1チャンネル及び前記第2チャンネルの出力データを演算する非定常処理とを実行するデジタル信号処理装置において、前記命令をタイムスロット毎に発行する命令発行手段と、前記命令に基づいて第1のデータまたは第2のデータを選択して出力する選択手段と、前記選択手段からの出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行う演算手段とを備え、前記選択手段は、前記定常処理を実行する際には、前記第1チャンネル期間に前記第1のデータを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第2のデータを出力し、前記非定常処理を実行する際には、前記複数の命令のうちの少なくとも1つの命令において、前記第1チャンネル期間に前記第2データを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第1データを出力し、前記演算手段は、前記命令に従って生成される係数データと前記選択手段の出力データを乗算する乗算手段と、当該乗算手段の乗算結果と前記演算手段の出力データを加算する加算手段と、前記加算手段の出力データを前記タイムスロットの自然数倍の時間だけ遅延させて前記加算手段の入力にフィードバックするとともに、遅延されたデータを前記演算手段の出力データとして出力する遅延手段とを備えたことを特徴とする。
また、本願請求項4に記載の発明にあっては、前記選択手段は、前記非定常処理を実行する際には、前記第1のデータ及び前記第2のデータを出力する周期を前記定常処理を実行する際に対して2倍の時間にすることを特徴とする。
【0010】
また、請求項記載の発明にあっては、前記第1のデータと前記第2のデータとのうち、一方がLch楽音データであり、他方がRch楽音データであることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
1.実施形態の構成
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係わるデジタル信号処理装置の構成を説明する。図1は、デジタル信号処理装置の構成を示すブロック図である。図において、まず、LchRAM10とRchRAM20は、Lch楽音データLとRch楽音データRとを各々格納するバッファとして機能し、命令iが指示するアドレスに対応する記憶領域からデータが読み出されるようになっている。
【0012】
次に、選択回路30は、Lch,RchRAM10,20から各々読み出されたLch楽音データLとRch楽音データRとを制御信号CTLに基づいて選択出力するように構成されている。具体的には、制御信号CTLがハイレベルのときはLch入力楽音データLを選択出力し、一方、ローレベルのときはRch入力楽音データRを選択出力する。
【0013】
次に、排他的論理和回路40には、選択信号LRSELと処理状態信号CROSSとが供給されるようになっており、そこでは両者の排他的論理和が演算され制御信号CTLが生成されるようになっている。選択信号LRSELは、1スロットを1周期とするトグル信号である。また、処理状態信号CROSSは、非定常処理期間中にハイレベルとなり、定常処理期間中にローレベルとなる。これらの信号は命令iに基づいて図示せぬ信号発生回路によって生成されるようになっている。これにより、定常処理期間中には選択信号LRSELと一致する制御信号CTLを生成し、非定常処理期間中には選択信号LRSELを反転した制御信号CTLを生成することができる。したがって、定常処理期間中は、選択回路30からLch楽音データLとRch楽音データRとが交互に出力され、非定常処理期間中はそれらの出力順序が反転することとなる。
【0014】
次に、係数発生器50はROM等で構成されており、命令iに基づいて乗算に用いる係数データKを発生しこれを乗算回路60に出力する。また、乗算回路60は、選択回路30から出力されるLch楽音データLまたはRch楽音データRと、係数データKとを乗算するように構成されている。
【0015】
次に、加算回路70は、乗算回路60の乗算結果とDフリップフロップ90の出力データとを加算して、Dフリップフロップ80に出力するように構成されている。Dフリップフロップ80および90は遅延回路として動作し、Dフリップフロップ90から最終出力が得られるようになっている。
【0016】
以上の構成において、デジタルフィルタ等のデジタル処理は、乗算回路60、加算回路70およびDフリップフロップ80,90等で構成される演算手段によって実行される。ここで、Dフリップフロップ80,90は、加算処理を行うフィードバックループ内に設けられており、これにより、乗算回路60の出力データが1データおきに加算されることになる。したがって、乗算回路60からLch楽音データLとRch楽音データRとを交互に出力させれば、Lch楽音データL同士の加算とRch楽音データR同士の加算を交互に行って最終出力を得ることができる。上述したように選択回路30は、定常処理期間中にLch楽音データLとRch楽音データRとを交互に出力させるので、定常処理にあっては、Lch楽音データLとRch楽音データRとを時分割で演算することができる。一方、非定常処理期間中にあっては、乗算回路60から出力されるデータの順序が逆転するから、定常処理と非定常処理と境界で同一種類のデータが連続する。この場合にはLch楽音データLとRch楽音データRとの間で演算処理が行われる。
【0017】
2.実施形態の動作
次に、図面を参照しつつ、本実施形態に係わるデジタル信号処理装置の動作を定常処理と非定常処理に分かち説明する。
【0018】
2−1:定常処理
図2は、定常処理におけるデジタル信号処理装置の動作を示すタイミングチャートである。LchRAM10から図2(a)に示すLch楽音データL1,L2…が読み出され、RchRAM20から図2(b)に示すRch楽音データR1,R2…が読み出され、選択回路30に供給される。
【0019】
選択信号LRSELは、上述したようにトグル信号であるから、図2(c)に示す波形で与えられる。また、定常処理においては、図2(d)に示すように処理状態信号CROSSは常にローレベルである。したがって、選択信号LRSELと処理状態信号CROSSの排他的論理和は、選択信号LRSELと一致する。この結果、選択回路30の出力データ系列は、図2(e)に示すように、L1,R1,L2,R2,L3,R3…といったようにLchとRchとが交互に出力されることになる。この結果、Lch楽音データLとRch楽音データRが時分割されて、後段の乗算回路60や加算回路70に供給されることになる。
【0020】
この場合、命令iは、図2(f)に示すようにL1,R1のスロット1に対してi1、L2,R2のスロット2に対してi2、L3,R3のスロット3に対してi3といったように、各スロットに同一の命令iを割り当てる。これは、定常処理にあっては、Lch楽音データLとRch楽音データRに同一のデジタル処理を施すため、同一タイミングのデータに対しては、同一の命令iを実行すればよいからである。
【0021】
ここで、図2(f)に示すように各命令i1,i2 ,i3が、係数データK1,K2,K3を発生すること指示するものとすれば、乗算回路60の出力データ系列は図2(g)に示すものとなる。また、Lch楽音データLの演算処理がL1から開始され、Rch楽音データRの演算処理がR1から開始されるものとし、初期状態におけるDフリップフロップ80,90の出力データが「0」を指示するものとすれば、加算回路の出力データ系列は、図2(h)に示すものとなる。Dフリップフロップ80,90の各出力データ系列は、加算回路の出力データ系列を1クロック周期、2クロック周期各々遅延したしたものとなるから、図2(i),(j)に示すものとなる。
【0022】
これにより、加算回路70は各スロットの前半でLch楽音データLの加算処理を行い、各スロットの後半でRch楽音データRの加算処理を行うことができ、時分割で動作することになる。例えば、スロット2の前半では、乗算回路60の出力データK2L2(図2(g)を参照)とDフリップフロップ90の出力データK1L1(図2(j)を参照)とを加算する。この加算処理を繰り返し行うことによって所望のデジタルフィルタを実現することができる。
【0023】
積和演算の結果は、Dフリップフロップ90の出力データ系列として出力される。この場合、各スロットの前半にはLch楽音データLが、後半にはRch楽音データRが常に位置するように時分割で出力される。
【0024】
このように、定常処理にあっては、加算回路70の後段に2段のDフリップフロップ80,90を設けて、加算回路70に入力されるデータの位相を揃えるようにしたので、LchとRchとで本来個別に設ける必要がある乗算回路60および加算回路70を兼用することが可能となる。
【0025】
2−2:非定常処理
図3は、非定常処理におけるデジタル信号処理装置の動作を示すタイミングチャートである。なお、この例では図4に示すミキシング回路と等価な機能を実現するものとする。この場合、Lch,Rch楽音データL,Rは、係数X,Yと乗算され加算器1からはXL+YRが、加算器2からはYL+XRが出力されることになる。
【0026】
まず、Lch,RchRAM10,20から命令i(読出アドレスの指定)に従って図3(a),(b)に示すLch,Rch楽音データL,Rが読み出される。この場合、スロット1とスロット2では、同一のデータが読み出される。また、図3(c)に示す選択信号LRSELは、図2(c)に示すものと同様である。ただし、スロット2において処理状態信号CROSSは図3(d)に示すように当該期間においてハイレベルになる。したがって、制御信号CTLは、図3(e)に示すように、スロット2において選択信号LRSELを反転したものとなり、他の期間においては選択信号LRSELと一致する。
【0027】
ここで、選択回路30は、上述したように制御信号CTLがハイレベルの期間にLch楽音データLを選択し、それがローレベルの期間にRch楽音データRを選択するので、選択回路30の出力データ系列は、図3(f)に示すようにL1,R1,R1,L1,L2,R2…となる。この場合、スロット2の前半にはRch楽音データR1が、その後半にはLch楽音データL1が位置することになる。すなわち、非定常処理においては、後段の演算回路(乗算回路60や加算回路70等)に供給される楽音データの出力順序がスロット2において逆転する。
【0028】
次に、命令iは、図3(g)に示すように、各スロットに同一の命令i1,i2,i3…を各々割り当てる。この点で、スロット2においても定常処理を行う場合と同様である。すなわち、非定常処理を実行する際にスロットの前半と後半で異なる命令iを発行するといった必要がなく、同一の命令発行方法で両方の処理に対応することができ、アーキテクチャーを簡略化することができる。
【0029】
ここで、図3(g)に示すように各命令i1,i2,i3が、係数データX,Y,Xを順次 発生すること指示するものとすれば、乗算回路60の出力データ系列は図3(h)に示すものとなり、加算回路70の出力データ系列は図3(i)に示すものとなり、Dフリップフロップ80,90の各出力データ系列は、図3(j),(k)に示すものとなる。ここでスロット2に着目すると、加算回路70はその前半でXL1とYR1とを加算し、その後半でYL1とXR1とを加算する。このため、Dフリップフロップ90は、スロット3においてXL1+YR1とYL1+XR1とを時分割で出力する。すなわち、スロット3の前半のデータは、図4に示す加算器1の出力データに相当し、その後半のデータは加算器2の出力データに相当する。
【0030】
このように非定常処理にあっては、選択回路30においてLch楽音データLとRch楽音データRとの出力順序をスロット2において反転させるようにしたので、加算回路70は、Lch楽音データLとRch楽音データRとを加算することができる。
【0031】
3.実施形態の効果
(1)上述した実施形態によれば、乗算回路60や加算回路70等で構成される演算手段において、加算結果を1タイムスロットだけデータを遅延するDフリップフロップ80,90を介して加算回路70の入力にフィードバックするようにしたので、演算手段を時分割で動作させることができる。この結果、演算手段が1系統で済み、デジタル信号処理装置をIC化する際にチップサイズを大幅に削減することができる。
【0032】
(2)また、定常処理と非定常処理の切換は、処理状態信号CROSSのレベルを切り替えるだけで行えるので、簡易な構成で定常処理と非定常処理が混在するシステムを実現することができる。
【0033】
(3)また、命令iは、Lch楽音データLとRch楽音データRといたっように二種類のデータに対して、一つのスロットに一つ発行すればよく、しかも定常処理と非定常処理で命令の発行タイミングを同一にできるので、命令の発行方法を簡略化することができる。
【0034】
4.変形例
以上、本発明に係わる実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。
▲1▼上述した実施形態にあっては、Dフリップフロップ80,90によって1タイムスロット分の遅延を行ったが、これは、定常処理において同一種類のデータ同士の演算を行うためであった。ここで同一種類のデータはスロットの自然数倍の間隔で発生するから、データの遅延時間はスロットの整数倍になるようにしてもよい。
【0035】
▲2▼上述した実施形態においては、Lch楽音データLとRch楽音データRにデジタル処理を施したが、本発明はこれに限定されるものではなく、複数系統のデータにデジタル処理を施すものであれば、いかなるのもにも適用することができる。例えば、ギターやピアノといった各種の音色に対応する複数系統の楽音データを必要に応じてミキシングして出力する場合に適用することができる。また、映像データにこれを適用することもできる。例えば、デジタル効果装置において2系統の映像データをクロスフェードする場合に適用してもよい。
【0036】
▲3▼上述した実施形態においては、乗算回路60は加算回路70の前段に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、実行する演算の種類によっては、加算回路70の後段に乗算回路60を設けるようにしてもよい。要は、積和算を実行するために、演算結果を加算回路の入力にフィードバックし、そのフィードバックループ内にスロットの整数倍の時間だけ遅延させる遅延回路を設けるようにすればよい。
【0037】
▲4▼上述した実施形態にあっては、選択回路30において、処理状態信号CROSSがハイレベルになると、Lch楽音データLとRch楽音データRの配列を逆転させて出力することにより、非定常処理に対応した。これは、加算回路70における加算の対象となるデータの種類を、同一のものにするか、あるいは異なるものにするかを選択回路30で行うものであった。本発明はこれに限定されるものではなく、通常処理では同一種類のデータ同士で演算を実行し、非定常処理にあっては異なる種類のデータ間で演算処理を行えるように時間調整を行うようにしてもよい。この場合、デジタル信号処理装置は、例えば、図8に示すように構成される。
【0038】
図8に示すデジタル信号処理装置は、選択回路30の制御入力に制御信号CTLを供給する替わりに選択信号LRSELを供給する点、Dフリップフロップ80,90の出力を選択回路31で選択して加算回路70の一方の入力にフィードバックする点が、図1に示すデジタル信号処理装置と相違する。この場合、選択回路31は、処理状態信号CROSSに基づいて動作し、処理状態信号CROSSが通常処理を示す場合にはDフリップフロップ90の出力信号を選択し、非定常処理を示す場合には、Dフリップフロップ80の出力信号を選択するように構成されている。ここで、各Dフリップフロップ80,90はタイムスロットの1/2の期間、データを遅延するように構成されているので、非定常処理においてLch楽音データLとRch楽音データRとの間で加算処理を行うことが可能となる。
【0039】
また、この変形例から以下の発明が把握される。第1のデータおよび第2のデータに対して個別にデジタル処理を施す定常処理と、一方のデータ処理に他方のデータを用いてデジタル処理を施す非定常処理とを各々時分割で命令に従って実行するデジタル信号処理方法において、入力された前記第1のデータを格納する第1のメモリと、入力された前記第2のデータを格納する第2のメモリと、前記命令によって指示されるアドレスに従って、前記第1および第2のメモリから前記第1のデータと前記第2のデータとを各々読み出す読出手段と、タイムスロットの前半で前記第1のデータをその後半で前記第2のデータを各々選択出力する選択手段と、前記選択手段からの出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行うとともに、前記命令が前記通常処理を指示する場合には前記フィードバックループ内でハーフタイムスロットの偶数倍の時間だけデータを遅延させ、前記命令が前記非定常処理を指示する場合には前記ハーフタイムスロットの自然数倍の時間だけデータを遅延させることを特徴とするデジタル信号装置。
【0040】
▲5▼また、上述した実施形態から以下の発明が把握されることは勿論である。第1のデータおよび第2のデータに対して個別にデジタル処理を施す定常処理と、一方のデータ処理に他方のデータを用いてデジタル処理を施す非定常処理とを各々時分割で命令に従って実行するデジタル信号処理装置において、入力された前記第1のデータを格納する第1のメモリと、入力された前記第2のデータを格納する第2のメモリと、前記命令によって指示されるアドレスに従って、前記第1および第2のメモリから前記第1のデータと前記第2のデータとを各々読み出す読出手段と、前記命令が前記定常処理を指示する場合にはタイムスロットの前半で前記第1のデータをその後半で前記第2のデータを各々選択出力し、前記命令が非定常処理を指示する場合には前記第1のデータと前記第2のデータとの選択順序を前記定常処理に対して逆転させて出力する選択手段と、前記選択手段からの出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行うとともに、前記フィードバックループ内で前記タイムスロットの自然数倍の時間だけデータを遅延させる演算手段とを備えたことを特徴とするデジタル信号処理装置。
【0041】
上述したように本発明に係る発明特定事項によれば、定常処理と非定常処理を時分割で実行することができ、装置全体の回路規模を大幅に削減することができる。また、いずれの処理を実行する場合にもタイムスロット単位で命令を発行するから、いずれの処理を実行する場合にも命令発行タイミングは異なることがないので、命令発行方法を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係わるデジタル信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 同実施形態に係わるデジタル信号処理装置における定常処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】 同実施形態に係わるデジタル信号処理装置における非定常処理を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】 同実施形態に係わるデジタル信号処理装置の非定常処理で実現される等価回路を示すブロック図である。
【図5】 従来のDSPを時分割で動作させる場合の概念図である。図6は、そのタイミングチャートである。
【図6】 従来のDSPを時分割で動作させる場合のタイミングチャートである。
【図7】 非定常処理を説明するための概念図である。
【図8】 変形例に係わるデジタル信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
L…Lch楽音データ(第1のデータ)、R…Rch楽音データ(第2のデータ)、10…LchRAM(第1のメモリ)、20…RchRAM(第2のメモリ)、30…選択回路(選択手段)、60…乗算回路(演算手段)、70…加算回路(演算手段)、80,90…Dフリップフロップ(演算手段)。

Claims (5)

  1. タイムスロット毎に発行される、それぞれが前記タイムスロットを分割した第1チャンネル期間と第2チャンネル期間とで共用される複数の命令に対応した処理を周期的に繰り返すことによって、第1のデータのみを使用して第1チャンネルの出力データを演算するとともに第2のデータのみを使用して第2チャンネルの出力データを演算する定常処理と、前記第1のデータと前記第2のデータの両方を使って前記第1チャンネル及び前記第2チャンネルの出力データを演算する非定常処理とを実行するデジタル信号処理方法において、
    前記命令をタイムスロット毎に発行する第1の工程と、
    前記命令に基づいて第1のデータまたは第2のデータを選択して出力する第2の工程と、
    前記第2の工程において出力される出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行う第3の工程と
    を備え、
    前記第2の工程においては、
    前記定常処理を実行する際には、前記第1チャンネル期間に前記第1のデータを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第2のデータを出力し、
    前記非定常処理を実行する際には、前記複数の命令のうちの少なくとも1つの命令において、前記第1チャンネル期間に前記第2データを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第1データを出力し、
    前記第3の工程は、
    前記命令に従って生成される係数データと前記第2の工程において出力される出力データを乗算する乗算工程と、
    該乗算工程における乗算結果と前記第3の工程において出力される出力データを加算する加算工程と、
    前記加算工程における出力データを前記タイムスロットの自然数倍の時間だけ遅延させて前記加算工程の入力にフィードバックするとともに、遅延されたデータを前記演算工程における出力データとして出力する遅延工程と
    を有することを特徴とするデジタル信号処理方法。
  2. 前記第2の工程において、前記非定常処理を実行する際には、前記第1のデータ及び前記第2のデータを出力する周期を前記定常処理を実行する際に対して2倍の時間にすることを特徴とする請求項1記載のデジタル信号処理方法。
  3. タイムスロット毎に発行される、それぞれが前記タイムスロットを分割した第1チャンネル期間と第2チャンネル期間とで共用される複数の命令に対応した処理を周期的に繰り返すことによって、第1のデータのみを使用して第1チャンネルの出力データを演算するとともに第2のデータのみを使用して第2チャンネルの出力データを演算する定常処理と、前記第1のデータと前記第2のデータの両方を使って前記第1チャンネル及び前記第2チャンネルの出力データを演算する非定常処理とを実行するデジタル信号処理装置において、
    前記命令をタイムスロット毎に発行する命令発行手段と、
    前記命令に基づいて第1のデータまたは第2のデータを選択して出力する選択手段と、
    前記選択手段からの出力データに対して、演算結果をフィードバックさせながら演算処理を行う演算手段と
    を備え、
    前記選択手段は、
    前記定常処理を実行する際には、前記第1チャンネル期間に前記第1のデータを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第2のデータを出力し、
    前記非定常処理を実行する際には、前記複数の命令のうちの少なくとも1つの命令において、前記第1チャンネル期間に前記第2データを出力するとともに前記第2チャンネル期間に前記第1データを出力し、
    前記演算手段は、
    前記命令に従って生成される係数データと前記選択手段の出力データを乗算する乗算手段と、
    当該乗算手段の乗算結果と前記演算手段の出力データを加算する加算手段と、
    前記加算手段の出力データを前記タイムスロットの自然数倍の時間だけ遅延させて前記加算手段の入力にフィードバックするとともに、遅延されたデータを前記演算手段の出力データとして出力する遅延手段と
    を備えたことを特徴とするデジタル信号処理装置。
  4. 前記選択手段は、前記非定常処理を実行する際には、前記第1のデータ及び前記第2のデータを出力する周期を前記定常処理を実行する際に対して2倍の時間にする
    ことを特徴とする請求項3記載のデジタル信号処理装置。
  5. 記第1のデータと前記第2のデータとのうち、一方がLch楽音データであり、他方がRch楽音データであることを特徴とする請求項3又は4に記載のデジタル信号処理装置。
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