JP4106370B2 - 直交変調装置の校正方法、直交変調装置および無線端末試験装置 - Google Patents

直交変調装置の校正方法、直交変調装置および無線端末試験装置 Download PDF

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Description

本発明は、キャリア周波数可変の広帯域な直交変調装置から精度の高い直交変調信号を発生させるための技術に関する。
例えばデジタル方式の携帯電話機のような無線端末の試験を行う無線端末試験装置では、所望の変調信号で変調された直交変調信号を生成して無線端末に送信し、無線端末から出力された信号を復調して、無線端末の動作を解析している。
図10は、上記のような直交変調信号を生成する装置に用いられている直交変調器1の構成を示している。直交変調器1は、2つのミキサ1a、1b、移相器1cおよび加算器1dにより構成され、変調用の同相成分信号Iとローカル信号Lとを一方のミキサ1aで混合し、ローカル信号Lを移相器1cでπ/2(90°)移相したローカル信号L′と直交成分信号Qとを他方のミキサ1bで混合し、両ミキサ1a、1bの出力信号を加算器1dで加算している。
加算器1dから出力される信号Xは、ローカル信号L、L′の周波数をf(=ω/2π)、位相差が正確にπ/2、振幅が正確に1で一致していれば、
X=I・cos ωt+Q・sin ω
となる。
しかし、直交変調器1をアナログ回路で構成した場合、2つのミキサ1a、1bの利得差、移相器1cの移相誤差、利得誤差およびミキサ1a、1bの直流オフセット誤差等が生じる。
これらの直交変調器1の誤差により、直交変調器1の出力信号には、所望の主信号成分の他に、イメージ成分やキャリア漏れ成分が発生し、精度の高い直交変調信号を得ることができず、試験を正しく行うことができない。
この問題を解決する方法として、直交変調器の各誤差を入力信号の補正により相殺する技術が知られている。
即ち、図11に示しているように、直交変調器1の前段に利得調整器5、オフセット調整器6、位相調整器7を設け、直交変調器1の利得誤差を入力信号に対する利得補正で相殺し、直交変調器1の直流オフセット誤差を入力信号に対する直流オフセット補正で相殺し、直交変調器1の位相誤差を入力信号に対する位相補正で相殺する。
実際には、直交変調器1の各誤差はイメージ成分とキャリア漏れ成分を生じさせるので、図11に示しているように、出力信号Xをスペクトラムアナライザ10に入力して、主信号成分aの他にイメージ成分のスペクトラムbとキャリア漏れ成分のスペクトラムcを調べ、そのスペクトラムb、cが最小となるように、前記各調整器5〜7を調整していた。
しかし、上記のようにスペクトラムアナライザのような外部装置を用いて、イメージ成分とキャリア漏れ成分が小さくなるように調整する方法では時間と手間がかかる。
即ち、直交変調信号に含まれるキャリア漏れ成分は主に直流オフセット誤差に起因して発生するが、イメージ成分は振幅誤差と位相誤差の双方に起因して発生するので、振幅調整と位相調整を何度も繰り返し最小となるように追い込み作業をしなければならない。
しかも、ローカル信号の周波数をそのままキャリア周波数として大幅(例えば数100MHz〜数GHzの範囲)に可変するダイレクト変換方式の直交変調装置では、そのキャリア周波数毎に調整最良点が異なるため、上記方法ではキャリア周波数の全帯域について高い変調精度を維持するために、所定の周波数毎に上記のような追い込み作業が繰り返し必要となるという問題がある。
また、スペクトラムアナライザの代わりに直交復調装置を用い、その復調信号に基づいてキャリア周波数毎の補正値を求めて記憶しておき、実際に使用するときのキャリア周波数に対応した補正値を用いることも考えられる。
しかし、外部の直交復調装置で得られる復調信号には、装置間の周波数誤差や直交復調器の誤差等、別の誤差要因が含まれ、しかもそれらが周波数特性を有しているために、上記のようにダイレクト変換方式の直交変調装置に対して補正値を正確に得ることは困難である。
また、次の特許文献1には、直交変調装置を有する送信機に直交復調器を設けて送信信号を直交復調し、その復調出力に基づいてオフセット調整を行う技術も提案されているが、オフセット調整だけではキャリア漏れ成分しか抑圧できず、復調されたときに主信号成分と同一周波数となるイメージ成分を抑圧できず、高い変調精度を維持することは困難である。また、特許文献1の技術は、アナログ型の直交復調器を用いているため、この直交復調器で生じる位相誤差や振幅誤差の影響を受けてしまい、送信する直交変調信号の変調精度を高くすることは困難である。
特許第3400736号公報
本発明は、上記問題を解決し、ダイレクト変換方式のようにローカル信号の周波数を大きく可変する場合であっても、イメージ成分を広い周波数範囲において簡単に抑圧でき、高い変調精度を維持することができる直交変調装置の校正方法、直交変調装置およびこれを用いた無線端末試験装置を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の直交変調装置の校正方法は、
アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、所定の基準信号源に基づいて生成された周波数可変の第1ローカル信号とともに直交変調器に入力して、前記第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調装置の利得誤差および位相誤差の補正を、前記同相成分信号と直交成分信号とに対する利得補正および位相補正により行う直交変調装置の校正方法において、
(a)同一周波数、同一振幅で且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として入力する段階(S2)と、
(b)前記校正用信号に対する前記直交変調器の出力信号を、前記基準信号源に基づいて生成され且つ前記キャリア周波数に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号により前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する段階(S4)と、
(c)前記中間周波数帯に変換した信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、同相成分信号と直交成分信号とを復調する段階(S5)と、
(d)前記復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する段階(S6)と、
(e)前記算出した利得誤差および位相誤差を相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出し、前記キャリア周波数に対応づけて記憶する段階(S7、S8)と、
(f)前記キャリア周波数を変更する段階(S10)とを含み、
前記(b)〜(f)の処理を繰り返し、キャリア周波数毎の利得の補正値および位相の補正値を求めることを特徴としている。
また、本発明の請求項2の直交変調装置の校正方法は、請求項1記載の直交変調装置の校正方法において、
前記直交変調器の利得誤差を、前記デジタル直交復調処理により復調された同相成分信号と直交成分信号との振幅比に基づいて算出し、
前記直交変調器の位相誤差を、前記デジタル直交復調処理により復調された同相成分信号の所定のポイントを示す第1特定点と、前記デジタル直交復調処理により復調された直交成分信号の前記第1特定点に対応するポイントを示す第2特定点との時間差に基づいて算出することを特徴としている。
また、本発明の請求項3の直交変調装置は、
所定の基準信号源に基づいて周波数可変の第1ローカル信号を発生する第1ローカル信号発生器(25)と、
アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、前記第1ローカル信号とともに受け、該第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調器(24)と、
前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して利得補正および位相補正を行う補正部(22)と、
同一周波数、同一振幅で、且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として生成する校正用信号発生手段(21)と、
前記基準信号源に基づいて前記第1ローカル信号に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号を生成出力する第2ローカル信号発生器(31)と、
前記直交変調器の出力信号を受けて前記第2ローカル信号により前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する周波数変換器(30)と、
前記中間周波数帯に変換された信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(32)と、
前記A/D変換器で変換された前記デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、デジタルの同相成分信号と直交成分信号とを復調する直交復調器(33)と、
前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する誤差算出部(35)と、
前記算出された利得誤差および位相誤差を前記補正部で相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出する補正値算出手段(36)と、
前記利得の補正値および前記位相の補正値を記憶するためのメモリ(37)と、
前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた前記利得の補正値および前記位相の補正値を該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶する制御部(40)とを備えている。
また、本発明の請求項4の直交変調装置は、請求項3記載の直交変調装置において、
前記誤差算出部は、
前記直交復調器により復調された同相成分信号と直交成分信号との振幅比に基づいて、前記利得誤差を算出する利得誤差算出手段(35a)と、
前記直交復調器により復調された同相成分信号の所定のポイントを示す第1特定点と、前記直交復調器により復調された直交成分信号の前記第1特定点に対応するポイントを示す第2特定点との時間差に基づいて、前記位相誤差を算出する位相誤差算出手段(35b)とを有していることを特徴としている。
また、本発明の請求項5の直交変調装置は、請求項3または請求項4記載の直交変調装置において、
前記補正部は、前記直交変調器の直流オフセット誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して直流オフセット補正を行うオフセット補正手段(22b)を有し、
前記誤差算出部は、前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の直流オフセット誤差を算出するオフセット算出手段(35c)を有し、
前記補正値算出手段は、前記オフセット算出手段によって算出された直流オフセット誤差を前記補正部で相殺するために必要な直流オフセットの補正値を、前記利得の補正値および位相の補正値とともに算出し、
前記制御部は、前記キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた直流オフセットの補正値を、前記利得の補正値および位相の補正値とともに該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶することを特徴としている。
また、本発明の請求項6の直交変調装置は、請求項3〜5のいずれかに記載の直交変調装置において、
前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を校正するための校正モードと、所望の変調用信号によって変調された所望キャリア周波数の直交変調信号を前記直交変調器から出力する通常モードとのいずれかを指定するためのモード指定手段(38)を有し、
前記制御部は、前記校正モードが指示されたとき、前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた前記各補正値を該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶し、前記通常モードが指定されたときには、前記キャリア周波数を所望値に設定し、該キャリア周波数に対応した前記各補正値を前記メモリを参照して求めて前記補正部に設定するとともに、所望の変調用信号を前記補正部を介して前記直交変調器に入力させることを特徴としている。
また、本発明の請求項7の直交変調装置は、請求項3〜6のいずれかに記載の直交変調装置において、
前記校正用信号発生手段は、前記校正用信号の他に所望の変調用信号の出力が可能な変調用信号発生器(21)により構成されていることを特徴としている。
また、本発明の請求項8の無線端末試験装置は、
キャリア周波数可変の直交変調信号を試験対象の無線端末に送信し、該無線端末の出力信号を受信して直交復調する無線端末試験装置であって、
所定の基準信号源に基づいて周波数可変の第1ローカル信号を発生する第1ローカル信号発生器(25)と、
アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、前記第1ローカル信号とともに受け、該第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調器(24)と、
前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して利得補正および位相補正を行う補正部(22)と、
同一周波数、同一振幅で、且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として生成する校正用信号発生手段(21)と、
前記基準信号源に基づいて前記第1ローカル信号に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号を生成出力する第2ローカル信号発生器(31)と、
前記直交変調器の出力信号または前記試験対象の無線端末の出力信号のいずれかを選択的に入力させるスイッチ(26、28)と、
前記スイッチを介して入力された信号を前記第2ローカル信号と混合し、前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する周波数変換器(30)と、
前記中間周波数帯に変換された信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(32)と、
前記A/D変換器で変換された前記デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、デジタルの同相成分信号と直交成分信号とを復調する直交復調器(33)と、
前記スイッチを介して前記直交変調器の出力信号が前記周波数変換器に入力されているときに、前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する誤差算出部(35)と、
前記算出された利得誤差および位相誤差を前記補正部で相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出する補正値算出手段(36)と、
前記利得の補正値および前記位相の補正値を記憶するためのメモリ(37)と、
前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を校正するための校正モードと、前記無線端末の試験を行う通常モードとのいずれかを指定するためのモード指定手段(38)と、
前記校正モードが指示されたとき、前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた利得の補正値と位相の補正値とを該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶し、前記通常モードが指定されたときには、前記キャリア周波数を所望値に設定し、該キャリア周波数に対応した前記各補正値を前記メモリを参照して求めて前記補正部に設定するとともに、所望の変調用信号を前記補正部を介して前記直交変調器に入力させ、該直交変調器の出力信号を前記試験対象の無線端末に送信し、該無線端末の出力信号を前記スイッチを介して前記周波数変換器に入力させる制御部(40′)とを備えたことを特徴としている。
このように本発明では、同一周波数、同一振幅で且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として第1ローカル信号とともに直交変調器に入力し、その出力信号を、第1ローカル信号と同一の基準信号源に基づいて生成された第2ローカル信号により中間周波数帯に変換し、その変換された信号をデジタル信号に変換してからデジタル直交復調処理を行い、同相成分信号と直交成分信号とを復調している。
したがって、この周波数変換処理と直交復調処理には原理的に誤差がないため、復調された同相成分信号と直交成分信号の振幅誤差と位相誤差は、直交変調器側の利得誤差と位相誤差を正確に表しており、しかも、これらの誤差は復調された同相成分信号と直交成分信号から独立に検出することができる。よって、この誤差を相殺するためにそれぞれ必要な各補正値をキャリア周波数毎に求めておき、通常の動作ときには、キャリア周波数に対応した各補正値で入力信号を補正することで、高い変調精度の直交変調信号を出力させることができる。
また、無線端末試験装置のように、直交変調信号を無線端末に送信するだけでなく、無線端末の出力信号を復調して解析する装置では、上記の周波数変換器から直交復調器までの構成を受信復調部として兼用することができ、小規模な構成で高い変調精度の直交変調信号を出力させることができるため、高精度な試験を行うことができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した直交変調装置20の構成を示している。
この直交変調装置20の変調用信号発生器21は、後述する制御部40からの指定により、デジタルの任意の変調用信号と校正のための変調用信号とを生成出力するものであり、この実施形態の校正用信号発生手段を兼ねている。また、任意の変調用信号は外部の他装置から受ける構成でもよく、その場合には校正用信号発生手段を内部に独立に設ける。
変調用信号発生器21が校正のために出力する変調用信号は、同一周波数f(例えばf=数10kHz)、同一振幅(例えば1)で、且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号I(=cos ωt)と直交成分信号Q(=sin ωt)とする(実際は離散信号であるが連続信号として表記する)。
変調用信号発生器21から出力された同相成分信号Iと直交成分信号Qは、補正部22を介して2チャネル構成のD/A変換器23に入力される。
補正部22は、利得補正手段22a、オフセット補正手段22b、位相補正手段22cとを有し、後述の直交変調器24の利得誤差、直流オフセット誤差および位相誤差を相殺するために、直交変調器24に入力される同相成分信号と直交成分信号の利得、直流オフセットおよび位相差を補正する。
なお、上記各補正のうち、利得補正およびオフセット補正は数値の乗算、加算であるのでデジタルの両成分信号に対して容易に且つ正確に実行できる。また、精度の点では不利であるがD/A変換器23でアナログ信号に変換してからアナログ演算回路で乗算、加算処理することも可能である。
また、位相補正に関しても、図1に示したようにデジタルの両成分信号に対して位相補正手段22cで位相補正する方法と、図2のように、D/A変換後のアナログの両成分信号に対して位相補正手段22cで位相補正する方法とがある。
デジタルの成分信号に対して位相補正する場合には、両成分信号をそれぞれ所定段数のシフトレジスタに入力し、一方のシフトレジスタに入力するクロックに対して、他方のシフトレジスタに入力するクロックの遅延時間を可変する構成や、2チャネルのD/A変換器23の一方のチャネルに入力するクロックに対して他方のチャネルに入力するクロックの遅延時間を可変する構成が可能である。ここで、クロックの遅延時間の可変は、成分信号に対して周波数が格段に高い高速クロックを用いて遅延時間を可変する方法や、クロックをアナログの可変遅延素子で可変する方法が採用できる。
また、図2に示したように、D/A変換後のアナログの成分信号に対して位相補正する場合には、位相補正手段22cをアナログの遅延素子で構成し、D/A変換器23によってアナログ信号に変換された両成分信号をそれぞれ遅延素子に入力し、一方の遅延素子の遅延時間に対して他方の遅延素子の遅延時間を可変して位相補正を行う。ただし、上記のように補正処理をアナログ回路で行う場合には、その補正手段の誤差も直交変調器24の誤差として扱う。
アナログ方式の直交変調器24は、図3に示すように、2つのミキサ(DBM)24a、24b、90°の移相器24cおよび加算器24dにより構成され、入力された両成分信号I′、Q′と、第1ローカル信号発生器25から出力された第1ローカル信号Laとに基づいて、第1ローカル信号Laの周波数をキャリア周波数fとする直交変調信号Xを生成する。
第1ローカル信号発生器25は内部に高精度の基準信号源(図示せず)を有しており、この基準信号源に基づいて、例えば400MHz〜2.7GHzの範囲で周波数可変できる第1ローカル信号Laを生成するシンセサイザにより構成され、後述の制御部40から指定された周波数の第1ローカル信号Laを出力する。
ここで、同相成分信号に対する直交変調器24の利得をA、直交成分信号に対する利得をB、ミキサ24a、24bで生じる直流オフセット誤差の入力換算値をそれぞれC、Dとし、ローカル信号Laとそのローカル信号Laを移相器24cで移相したローカル信号La′の位相差を(π/2)−Δとして、前記した補正部22による補正がおこなわれずに、直交変調器24に校正用の正確な同相成分信号I=cos ωt、直交成分信号Q=sin ωtが入力された場合、出力信号Xは次のように表すことができる(途中計算省略)。
X=A・(C+cos ωt)・cos ω
+B・(D+sin ωt)・sin (ωt−Δ)
=(A/2)・cos (ω−ω)t
+(B/2)・cos [(ω−ω)t−Δ]
+(A/2)・cos (ω+ω)t
−(B/2)・cos [(ω+ω)t−Δ]
+A・C・cos ω
+B・D・sin (ωt−Δ) ……(1)
上記式(1)の、第1項、第2項は主信号成分、第3項、第4項はイメージ成分、第5、第6項はキャリア漏れ成分である。
また、上記式(1)で、直交変調器24に誤差がないと仮定すると、A=B、C=D=0、Δ=0であるから、出力信号Xは、
X=A・cos(ω−ω)t=A・cos
2π(fc−f)t
となり、イメージ成分とキャリア漏れ成分はなくなり、振幅A、周波数(fc−f)の正弦波の主成分のみとなる。
上記直交変調器24の出力信号Xは、通常モードのときには、スイッチ26を介して、出力端子20aに出力される。また校正モードのときには、スイッチ26を介して周波数変換器30に入力される。なお、この実施形態ではスイッチ26を介して直交変調信号Xを周波数変換器30に入力しているが、直交変調器24の出力信号をカプラなどの分岐回路を介して常時周波数変換器30に入力してもよい。
周波数変換器30は、図4に示すように、ミキサ30aとフィルタ(BPFまたはLPF)30bとを有し、入力された直交変調信号Xと、第2ローカル信号発生器31から出力された周波数(fc−fi)の第2ローカル信号Lbとをミキサ30aで混合し、その混合成分から周波数fi(例えば数MHz〜数10MHz)を中心とする中間周波数帯の信号のみをフィルタ30bにより抽出する。
また、第2ローカル信号発生器31は、第1ローカル信号発生器25が有する基準信号源に基づいて、第1ローカル信号Laに対して常に周波数fiの差のある第2ローカル信号Lbを生成出力するシンセサイザにより構成されている。なお、この第2ローカル信号Laの周波数は制御部40により設定される。また、ここでは、基準信号源が第1ローカル信号発生器25の内部に設けられている場合について説明するが、第1ローカル信号発生器25の外部に独立に設けられていてもよく、その場合には、基準信号源の出力信号を第1ローカル信号発生器25および第2ローカル信号発生器31に共通に入力すればよい。
したがって、直交変調器24から周波数変換器30の出力端までの利得をK、2π(fc−fi)=ω−ωとすると、校正モードにおけるフィルタ30bの出力信号Yは次のようになる。
Y=X・K・cos (ω−ω)t
=(A・K/4)・cos (ω−ω)t
+(B・K/4)・cos [(ω−ω)t−Δ]
+(A・K/4)・cos (ω+ω)t
−(B・K/4)・cos [(ω+ω)t−Δ]
+(A・C・K/2)cos ω
+(B・D・K/2)sin (ωt−Δ)
……(2)
上記式(2)の第1項および第2項は主信号成分、第3項および第4項はイメージ成分、第5項および第6項はキャリア漏れ成分である。
この信号Yは、A/D変換器32によってデジタル値に変換され、直交復調器33に入力される。
直交復調器33は、図5に示すように、デジタル型の乗算器33a、33bとデジタル型のLPF33c、33dを有し、以下のように、互いに位相が直交し同一振幅の周波数fiのローカル信号cos ωit、sin ωitを信号Yにそれぞれ乗算し、その乗算結果U、Vから中間周波数より十分低い変調周波数帯の成分をフィルタリング処理で抽出して、同相成分信号Iと直交成分信号Qを復調する。
U=Y・cos ωi
=(A・K/8)[cos (2ωi−ω)t+cos
ωt]
+(B・K/8){cos [(2ωi−ω)t−Δ]+cos
(ωt+Δ)}
+(A・K/8)[cos (2ωi+ω)t+cos
ωt]
−(B・K/8){cos [(2ωi−ω)t−Δ]+cos
(ωt+Δ)]
+(A・C・K/4)(1+cos 2ωit)
+(B・D・K/4)[sin (2ωit−Δ)−sin
Δ]……(3)
V=Y・sin ωi
=(A・K/8)[sin (2ωi−ω)t+sin
ωt]
+(B・K/8){sin [(2ωi−ω)t−Δ]+sin
(ωt+Δ)}
+(A・K/8)[sin (2ωi+ω)t−sin
ωt]
−(B・K/8){sin [(2ωi+ω)t−Δ]−sin
(ωt+Δ)}
+(A・C・K/4)(sin 2ωit)
+(B・D・K/4)[cos (2ωit−Δ)+cos
Δ]……(4)
上記式(3)、(4)において、角周波数2ωiを含む項は、LPF33c、33dで除去されるので、直交復調器33からは次の信号I、Qが出力される。
=(A・K/4)・cos ωt
+(A・C・K/4)−(B・D・K/4)・sin Δ
=Ga・cos ωt+E ……(5)
=(B・K/4)・sin (ωt+Δ)
+(B・D・K/4)・cos Δ
=Gb・sin (ωt+Δ)+F ……(6)
ただし、
Ga=(A・K/4)
E=(A・C・K/4)−(B・D・K/4)・sin Δ
Gb=(B・K/4)
F=(B・D・K/4)・cos Δ
つまり、直交復調器33から出力される信号Iは、図6の(a)に示しているように、振幅Ga、周波数fの正弦波に直流Eが重畳されたものであり、信号Qは、図6の(b)に示しているように、振幅Gb、周波数fで信号Iに対してπ/2からΔだけ位相がずれた正弦波に直流Fが重畳されたものとなる。
上記式(5)、(6)から、両信号I、Qの振幅Ga、Gbの比Ga/Gbは、
Ga/Gb=(A・K/4)/(B・K/4)=A/B
となり、直交変調器24の利得比を示している。
また、両信号I、Qの位相誤差Δは、直交変調器24のローカル信号La、La′の位相誤差を示している。
一方、信号Iの直流分Eには、直交変調器24の同相側の直流オフセット誤差Cと利得Aの積に依存した成分だけでなく、直交側の直流オフセット誤差D、利得Bおよび位相差Δの正弦値の積に依存した成分が含まれており、しかも、直交変調器24から周波数変換器30までの利得Kにも依存している。
同様に、信号Qの直流分Fは、直交変調器24の直交側の直流オフセット誤差D、利得Bおよび位相差Δの余弦値の積に依存した成分となり、しかも、直交変調器24から周波数変換器30までの利得Kも含まれている。
したがって、両信号I、Qの波形から直交変調器24の直流オフセット誤差C、Dを直接求めることはできないが、以下の2つの方法のいずれかを用いることで、直流オフセット誤差C、Dを求めることができる。
第1の方法は、両信号I、Qの波形から算出された位相誤差Δにより、その正弦値と余弦値を算出する。
Δの正弦値が判れば、直流分Fの式から、
(B・D・K/4)=F/cos Δ
の値が既知となり、これを直流分Eの式に代入すると、
E=(A・C・K/4)−(B・D・K/4)・sin Δ
=(A・C・K/4)−F/cos Δ
となる。
上記式で、直流分Eは直流オフセット誤差Cを変数とする傾き(A・K/4)の直線となるから、補正部22により直流オフセット誤差Cを既知の値αだけ変化させて、そのときの直流分E′を測定すれば、傾き(A・K/4)が判る。
即ち、
E′=(A・K/4)(C+α)−F/cos Δ
=(A・C・K/4)−F/cos Δ+α・(A・K/4)
=E+α・(A・K/4)
よって、
(A・K/4)=(E′−E)/α
したがって、直流オフセット誤差Cは、
C=α・(E−F/cos Δ)/(E′−E)
により算出できる。
また、直交側の直流分Fについては、直流オフセット誤差Dを変数とする傾き(cos Δ・B・K/4)の直線であるから、直流オフセット誤差Dを既知の値βだけ変化させたときの直流分F′を測定すれば、傾きが判る。
即ち、
F′=(cos Δ・B・K/4)・(D+β)
=F+β・(cos Δ・B・K/4)
よって、
(cos Δ・B・K/4)=(F′−F)/β
これを元の式に代入すれば、
F=(cos Δ・B・K/4)・D=D・(F′−F)/β
となる。したがって、直流オフセット誤差Dは、
D=β・F/(F′−F)
によって算出できる。
また、第2の方法は、位相誤差Δが得られた時点で、補正部22によりこの位相誤差を補正してから直流オフセット誤差を算出する方法である。
即ち、位相誤差Δが0になれば、その正弦値は0、余弦値は1となるから、直流分E、Fは、
E=(A・C・K/4)
F=(B・D・K/4)
となる。
上記直流分Eの式は、直流オフセット誤差Cを変数とする傾き(A・K/4)の直線であり、同様に直流分Fの式は、直流オフセット誤差Dを変数とする傾き(B・K/4)の直線である。
したがって、この状態から前記方法と同様に直流オフセット誤差C、Dに既知の値α、βをそれぞれ加えたときの直流分E′、F′を測定すれば傾きが判る。
即ち、
E′=E+(A・K/4)α
(A・K/4)=(E′−E)/α
F′=F+(B・K/4)β
(B・K/4)=(F′−F)/β
そして、上記得られた傾きの値を元の式に代入すれば、
E=(A・C・K/4)=C・(E′−E)/α
F=(B・D・K/4)=D・(F′−F)/β
となり、次のように、直流オフセット誤差C、Dを算出できる。
C=αE/(E′−E)
D=βF/(F′−F)
誤差算出部35は、図6のように得られた正弦波の復調信号I、Qに基づいて、上記誤差を算出するものであり、利得誤差算出手段35aは、信号I、Qの振幅Ga、Gbをそれぞれ求め、その比を利得誤差h(dB)として算出する。
ただし、図6の信号I、Qには直流分E、Fが重畳しているので、各信号I、Qの最大値(ピーク)I(max)、Q(max)と最小値(ボトム)I(min)、Q(min)をそれぞれ求めて、次の演算を行う。
h=20・log
[|I(max)−I(min)|
/|Q(max)−Q(min)|]
また、位相誤差算出手段35bは、信号Iの所定のポイントを示す第1特定点と、信号Qの前記第1特定点に対応するポイントを示す第2特定点との時間差に基づいて、両信号I、Qの位相誤差を求める。
ここで、第1特定点、第2特定点のポイントは、両信号I、Qの位相差を特定できる点であれば任意であり、ピーク値とボトム値の中心値(直流分の電圧)を所定方向に横切る点、電圧ゼロを所定方向に横切る点(ゼロクロス点)、ピーク値となる点、あるいはボトム値となる点等を採用できるが、ここでは、ピーク値とボトム値の中心値を所定方向に横切る点を第1特定点、第2特定点とする場合について説明する。
即ち、両信号I、Qに直流分がない場合には、両信号I、Qのゼロクロスタイミングを求めて、その位相差とπ/2との誤差を求めることができるが、前記したように、両信号I、Qには、直流分E、Fが重畳している。これらの直流分は各信号I、Qのピーク値とボトム値の中心値であり、次の演算で求めることができる。
E=[I(max)+I(min)]/2
F=[Q(max)+Q(min)]/2
そして、図6のように、信号Iが電圧Eを所定方向に横切る点を第1特定点A1としてその時刻tを求め、同様に、信号Qが電圧Fを信号Iと同一方向に横切る点を第2特定点A2としてその時刻tを求める。
また、次の演算、
′=I+E
′=Q+F
により信号I、Qをそれぞれの直流分E、F分だけ補正し、その補正した信号I′、Q′が、同一方向にゼロ点を横切る点をそれぞれ第1特定点A1、第2特定点A2として、その時刻t、tをゼロクロスタイミングとしてもよい。
そして、位相誤差Δを次の演算により求める。
Δ=[1/(4f)]−(t−t
なお、前記したように、位相誤差Δは、両信号I、Qがピーク値あるいはボトム値となる点の時間差から算出することも可能であり、この場合直流分E、Fに無関係に位相誤差Δを求めることができる。ただし、正弦波のピークあるいはボトムの付近の電圧変化は非常に緩慢であるため、その領域の電圧変化から特定点を決定する方法では、上記方法に比べて精度的に不利となる。したがって、この場合には、信号のピークあるいはボトムの付近から離間し電圧変化が急な領域で共通の電圧を横切り、且つピーク値あるいはボトム値を挟む2つの点を求め、その2点の中間のタイミングを特定点の時刻とすればよい。
また、両信号I、Qに直流オフセット誤差がある状態であっても、両信号I、Qの振幅誤差が無い場合、例えばピーク値(またはボトム値)から一定値だけ低い(または高い)電圧を所定方向に横切る点を前記特定点とすることができる。また、振幅誤差だけでなく、直流オフセット誤差も無い場合には、両信号I、Qに共通の任意の電圧を所定方向に横切る点を前記特定点とすることができる。
上記のようにして位相誤差Δが得られた後に、オフセット算出手段35bは、復調された両信号I、Qの直流分E、Fを前記同様に求め、前記した2つの方法のいずれかにより、直交変調器24の直流オフセット誤差C、Dを算出する。
ただし、前記した第1の方法で直流オフセット誤差C、Dを算出する場合、補正部22のオフセット補正手段22bに対し既知の直流値α、βに対応した補正値を設定する必要がある。
また、前記した第2の方法で直流オフセット誤差C、Dを算出する場合には、算出された位相誤差Δを相殺するための補正値を補正部22の位相補正手段22cに対して設定し、さらにオフセット補正手段22bに対して既知の値α、βに対応した補正値を設定する必要がある。
これらの処理をオフセット算出手段35cが独立に行うことも可能であるが、補正値算出手段36の補正値算出機能と制御部40の補正値設定機能を利用して行う方が構成上有利であるので、図1、2では、オフセット算出手段35cの要求に対して補正値算出手段36が既知の値α、βに対応した補正値を求めて制御部40に通知し、制御部40が位相誤差Δを相殺するための補正値(これはメモリ37に記憶されている)と補正値算出手段36から通知された既知の値α、βに対応する補正値とを補正部22に設定するようにしている。
なお、上記各誤差の算出は、異なる複数のポイントを用いてその平均処理を行うことで、精度を高くすることができる。
補正値算出手段36は、上記のようにして得られた振幅誤差h、位相誤差Δおよび直流オフセット誤差C、Dを相殺するために必要な補正部22の各補正部22a〜22cの補正情報を算出する。
つまり、利得補正手段22aにおいて、振幅誤差hを相殺するためには、同相成分信号Iをh(dB)減衰すればよく、その減衰に必要な補正情報J(h)を求める。
また、オフセット補正手段22bにおいて、直流オフセット誤差C、Dを相殺するためには、同相成分信号Iから直流電圧Cを減算し、直交成分信号Qから直流電圧Dを減算すればよく、その減算に必要な補正情報J(C)、J(D)を求める。
同様に、位相補正手段22cにおいて、位相誤差Δを相殺するためには、同相成分信号Iに対して直交成分信号Qを誤差Δ分遅延すればよく、その誤差Δ分の遅延に必要な補正情報J(Δ)を求める。
このようにして得られた各補正情報は、制御部40の処理により、そのときのキャリア周波数fcに対応付けされてメモリ37に記憶される。
モード指定手段38は、所望の変調用信号によって変調された所望キャリア周波数の直交変調信号を直交変調器24から出力する通常モードと、校正モードのいずれかを指定するためのものであり、例えば図示しない操作部の操作、タイマー動作あるいは外部装置からの指示を受けて動作モードを指定する。
制御部40は、モード指定手段38によって指示されたモードに基づいて、装置の制御を行う。
図7は、校正モードが指定されたときの制御部40および装置全体の動作の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて、制御部の動作およびこの直交変調信号の校正方法を説明する。
校正モードが指定されると、制御部40は、キャリア周波数fcを初期値f1(例えば可変範囲の下限周波数)に設定し、校正用信号を直交変調器24に入力させ、スイッチ26を周波数変換器30側に接続する(S1〜S3)。
この校正用信号に対する直交変調器24の出力信号Xは、スイッチ26を介して周波数変換器30に入力され、キャリア周波数fc=f1から周波数fiの差のある第2ローカル信号Lbと混合されて、中間周波数帯の信号Yに変換される(S4)。
そして、この中間周波数帯の信号Yは、A/D変換器32によりデジタル信号に変換され、直交変調器33で直交復調される(S5)。
この直交復調器33はデジタル方式であるので、直交変調器24の誤差分のみを正確に含む正弦波の信号Ir、Qrが復調され、誤差算出部35により、この復調信号の振幅誤差h、位相誤差Δおよび直流オフセット誤差C、Dが前記したように算出される(S6)。
そして、この算出された各誤差を補正部22で相殺補正するために必要な各補正値が算出され、メモリ37に記憶される(S7、S8)。
以下、キャリア周波数fcをΔf(例えばΔf=100MHz)ステップで上限周波数まで順次変更しながらS4〜S8までの処理を繰り返し、可変帯域の下限から上限までの各キャリア周波数毎の補正値をメモリ37に記憶し、校正モードを終了して通常モードに移行する(S9、S10)。
なお、上記校正モードで使用する各キャリア周波数(校正用キャリア周波数)は、例えば、キャリア周波数の可変帯域全体を直交変調器24の各誤差がほぼ一定と見なせる幅(前記Δf)の周波数帯域に分割し、その分割された各周波数帯域のほぼ中心となるように設定すればよく、この場合、周波数帯域毎の補正値を求めていることになる。
通常モードに移行した場合、図8に示すように、スイッチ26を出力端子20a側に切換え、指定された変調用信号を変調用信号発生器21から補正部22に入力させる。
さらに、第1ローカル信号Laを、指定されたキャリア周波数fcに設定するとともに、そのキャリア周波数fcに対応する各補正値を、メモリ37に記憶されている補正値を参照して求め、補正部22に設定する(S11〜S14)。
ここで、指定されたキャリア周波数が、いずれかの校正用キャリア周波数を含む幅Δfの帯域内にあれば、その校正用キャリア周波数に対応する補正値をメモリ37から読み出して設定すればよい。
なお、ここでは、直交変調器24の誤差がほぼ一定と見なせる周波数帯域のほぼ中心を校正用キャリア周波数とし、周波数帯域毎の補正値をそれぞれ求めておき、指定されたキャリア周波数が含まれる周波数帯域に対応する補正値を用いて変調用信号を補正する場合について説明したが、これは本発明を限定するものではない。
例えば、キャリア周波数の変化に対して直交変調器24の誤差の変化がほぼ一定と見なせる周波数帯域の境界を校正用キャリア周波数として補正値を求めておき、指定されたキャリア周波数が含まれる周波数帯域の両端の校正用キャリア周波数に対応する補正値同士の間を補間処理し、指定されたキャリア周波数に対応する補正値を算出して設定することも可能である。
これにより、直交変調器24には、指定されたキャリア周波数fcにおける直交変調器24の各誤差を相殺するように補正された変調用信号が入力され、直交変調器24からは元の変調用信号(補正前の変調用信号)に対して精度よく変調された直交変調信号Xが生成され、スイッチ26を介して出力端子20aから出力される。
また、この状態から例えばキャリア周波数の変更が指定されると、処理S13に戻り、そのキャリア周波数が変更され、そのキャリア周波数に応じた補正値が補正部22に設定されて、前記同様に、元の変調信号に対して精度よく変調された直交変調信号Xが生成出力される(S15)。また、この通常モード中に校正モードが指定された場合には前記図7の処理に移行する(S16)。
このように実施形態の直交変調装置20および校正方法では、同一周波数、同一振幅で位相が正確に直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として用い、この校正用信号と第1ローカル信号とに基づいて直交変調器24で生成された直交変調信号Xを、第1ローカル信号と同一の基準信号源に基づいて生成された第2ローカル信号により中間周波数帯に変換し、これをデジタル信号に変換してからデジタル直交復調処理を行って、直交変調器24の各誤差が正確に含まれた復調信号を得ている。
そして、この復調信号から算出された各誤差をそれぞれ相殺補正するための補正値をキャリア周波数毎に求めてメモリ37に記憶しておき、所望の変調用信号で変調された所望キャリア周波数の直交変調信号を出力する際には、そのキャリア周波数に対応した補正値により、変調用信号を補正して直交変調器24に入力させ、直交変調器24の各誤差が相殺された精度の高い直交変調信号を出力している。
このため、別装置でイメージ成分やキャリア漏れ成分のスペクトラムを観測しながら補正値を追い込み調整するという煩雑な作業をすることなく、広帯域なダイレクト変換方式の直交変調装置の校正を極めて短時間に且つ正確に行うことができる。
前記した直交変調装置20は、直交変調信号を受信する各種機器の試験や通信等に用いることができ、また、その対象機器から出力される直交変調信号を受信し、復調してその動作を解析する試験装置にも適用できる。
図9は、携帯電話機のような無線端末の試験を行う無線端末試験装置50の構成例を示している。
この無線端末試験装置50は、前記した直交変調装置20に、無線端末試験用のカプラ27、スイッチ28を追加して構成されており、その他の構成要素は前記直交変調装置20と同等である。
無線端末試験装置50の制御部40′は、モード指定手段38により校正モードが指定された場合、校正用信号を直交変調器24に入力させ、直交変調器の出力信号Xをスイッチ26、28を介して周波数変換器30に入力させた状態で、キャリア周波数を順次可変させるとともに、そのキャリア周波数毎に補正値算出手段36によって得られた補正値をキャリア周波数に対応づけてメモリ37に記憶させる。
また、無線端末を試験するための通常モードが指定された場合、制御部40′は、キャリア周波数を試験に必要な所望値に設定し、そのキャリア周波数に対応した各補正値を、メモリ37に記憶されている各補正値を参照して求めて補正部22に設定するとともに、試験用の所望の変調用信号を補正部22を介して直交変調器24に入力させ、この直交変調器24の出力信号Xをスイッチ26およびカプラ27を介して試験対象の無線端末に送信する。
また、制御部40′は、無線端末の出力信号をカプラ27およびスイッチ28を介して周波数変換器30に入力させ、直交復調器33で復調された信号に対する解析処理を行い、無線端末の動作を確認する。
つまり、前記した直交変調装置20で校正のためだけに用いていた周波数変換器30から直交復調器33までの構成を、端末試験のための受信復調部として兼用することができ、小規模な構成で高精度な試験を行うことができる。
なお、ここでは復調された信号に対する解析処理を制御部40′で行うようにしていたが、解析処理を制御部40′と独立した解析処理部で行ってもよい。
本発明の実施形態の構成を示す図 A/D変換処理後に位相補正を行う場合の構成を示す図 実施形態の要部の構成図 実施形態の要部の構成図 実施形態の要部の構成図 実施形態の復調信号の波形を示す図 実施形態の校正モードの処理手順を示すフローチャート 実施形態の通常モードの処理手順を示すフローチャート 本発明の他の実施形態の構成図 直交変調器の構成図 直交変調器の誤差補正機能を有する直交変調装置の構成図
符号の説明
20……直交変調装置、21……変調用信号発生器、22……補正部、22a……利得補正手段、22b……オフセット補正手段、22c……位相補正手段、23……D/A変換器、24……直交変調器、25……第1ローカル信号発生器、26、28……スイッチ、27……カプラ、30……周波数変換器、31……第2ローカル信号発生器、32……A/D変換器、33……直交復調器、35……誤差算出部、35a……利得誤差算出手段、35b……位相誤差算出手段、35c……オフセット算出手段、36……補正値算出手段、37……メモリ、38……モード指定手段、40、40′……制御部、50……無線端末試験装置

Claims (8)

  1. アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、所定の基準信号源に基づいて生成された周波数可変の第1ローカル信号とともに直交変調器に入力して、前記第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調装置の利得誤差および位相誤差の補正を、前記同相成分信号と直交成分信号とに対する利得補正および位相補正により行う直交変調装置の校正方法において、
    (a)同一周波数、同一振幅で且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として入力する段階(S2)と、
    (b)前記校正用信号に対する前記直交変調器の出力信号を、前記基準信号源に基づいて生成され且つ前記キャリア周波数に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号により前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する段階(S4)と、
    (c)前記中間周波数帯に変換した信号をデジタル信号に変換し、該デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、同相成分信号と直交成分信号とを復調する段階(S5)と、
    (d)前記復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する段階(S6)と、
    (e)前記算出した利得誤差および位相誤差を相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出し、前記キャリア周波数に対応づけて記憶する段階(S7、S8)と、
    (f)前記キャリア周波数を変更する段階(S10)とを含み、
    前記(b)〜(f)の処理を繰り返し、キャリア周波数毎の利得の補正値および位相の補正値を求めることを特徴とする直交変調装置の校正方法。
  2. 前記直交変調器の利得誤差を、前記デジタル直交復調処理により復調された同相成分信号と直交成分信号との振幅比に基づいて算出し、
    前記直交変調器の位相誤差を、前記デジタル直交復調処理により復調された同相成分信号の所定のポイントを示す第1特定点と、前記デジタル直交復調処理により復調された直交成分信号の前記第1特定点に対応するポイントを示す第2特定点との時間差に基づいて算出することを特徴とする請求項1記載の直交変調装置の校正方法。
  3. 所定の基準信号源に基づいて周波数可変の第1ローカル信号を発生する第1ローカル信号発生器(25)と、
    アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、前記第1ローカル信号とともに受け、該第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調器(24)と、
    前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して利得補正および位相補正を行う補正部(22)と、
    同一周波数、同一振幅で、且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として生成する校正用信号発生手段(21)と、
    前記基準信号源に基づいて前記第1ローカル信号に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号を生成出力する第2ローカル信号発生器(31)と、
    前記直交変調器の出力信号を受けて前記第2ローカル信号により前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する周波数変換器(30)と、
    前記中間周波数帯に変換された信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(32)と、
    前記A/D変換器で変換された前記デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、デジタルの同相成分信号と直交成分信号とを復調する直交復調器(33)と、
    前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する誤差算出部(35)と、
    前記算出された利得誤差および位相誤差を前記補正部で相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出する補正値算出手段(36)と、
    前記利得の補正値および前記位相の補正値を記憶するためのメモリ(37)と、
    前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた前記利得の補正値および前記位相の補正値を該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶する制御部(40)とを備えた直交変調装置。
  4. 前記誤差算出部は、
    前記直交復調器により復調された同相成分信号と直交成分信号との振幅比に基づいて、前記利得誤差を算出する利得誤差算出手段(35a)と、
    前記直交復調器により復調された同相成分信号の所定のポイントを示す第1特定点と、前記直交復調器により復調された直交成分信号の前記第1特定点に対応するポイントを示す第2特定点との時間差に基づいて、前記位相誤差を算出する位相誤差算出手段(35b)とを有していることを特徴とする請求項3記載の直交変調装置。
  5. 前記補正部は、前記直交変調器の直流オフセット誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して直流オフセット補正を行うオフセット補正手段(22b)を有し、
    前記誤差算出部は、前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の直流オフセット誤差を算出するオフセット算出手段(35c)を有し、
    前記補正値算出手段は、前記オフセット算出手段によって算出された直流オフセット誤差を前記補正部で相殺するために必要な直流オフセットの補正値を、前記利得の補正値および位相の補正値とともに算出し、
    前記制御部は、前記キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた直流オフセットの補正値を、前記利得の補正値および位相の補正値とともに該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶することを特徴とする請求項3または請求項4記載の直交変調装置。
  6. 前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を校正するための校正モードと、所望の変調用信号によって変調された所望キャリア周波数の直交変調信号を前記直交変調器から出力する通常モードとのいずれかを指定するためのモード指定手段(38)を有し、
    前記制御部は、前記校正モードが指示されたとき、前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた前記各補正値を該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶し、前記通常モードが指定されたときには、前記キャリア周波数を所望値に設定し、該キャリア周波数に対応した前記各補正値を前記メモリを参照して求めて前記補正部に設定するとともに、所望の変調用信号を前記補正部を介して前記直交変調器に入力させることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の直交変調装置。
  7. 前記校正用信号発生手段は、前記校正用信号の他に所望の変調用信号の出力が可能な変調用信号発生器(21)により構成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の直交変調装置。
  8. キャリア周波数可変の直交変調信号を試験対象の無線端末に送信し、該無線端末の出力信号を受信して直交復調する無線端末試験装置であって、
    所定の基準信号源に基づいて周波数可変の第1ローカル信号を発生する第1ローカル信号発生器(25)と、
    アナログの同相成分信号と直交成分信号とを、前記第1ローカル信号とともに受け、該第1ローカル信号の周波数をキャリア周波数とする直交変調信号を生成出力する直交変調器(24)と、
    前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を相殺するために、前記直交変調器に入力される同相成分信号と直交成分信号とに対して利得補正および位相補正を行う補正部(22)と、
    同一周波数、同一振幅で、且つ互いに位相が直交する正弦波の同相成分信号と直交成分信号とを校正用信号として生成する校正用信号発生手段(21)と、
    前記基準信号源に基づいて前記第1ローカル信号に対して所定周波数の差を有する第2ローカル信号を生成出力する第2ローカル信号発生器(31)と、
    前記直交変調器の出力信号または前記試験対象の無線端末の出力信号のいずれかを選択的に入力させるスイッチ(26、28)と、
    前記スイッチを介して入力された信号を前記第2ローカル信号と混合し、前記所定周波数を中心とする中間周波数帯に変換する周波数変換器(30)と、
    前記中間周波数帯に変換された信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(32)と、
    前記A/D変換器で変換された前記デジタル信号に対してデジタル直交復調処理を行い、デジタルの同相成分信号と直交成分信号とを復調する直交復調器(33)と、
    前記スイッチを介して前記直交変調器の出力信号が前記周波数変換器に入力されているときに、前記直交復調器で復調された同相成分信号と直交成分信号とに基づいて、前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を算出する誤差算出部(35)と、
    前記算出された利得誤差および位相誤差を前記補正部で相殺するためにそれぞれ必要な利得の補正値および位相の補正値を算出する補正値算出手段(36)と、
    前記利得の補正値および前記位相の補正値を記憶するためのメモリ(37)と、
    前記直交変調器の利得誤差および位相誤差を校正するための校正モードと、前記無線端末の試験を行う通常モードとのいずれかを指定するためのモード指定手段(38)と、
    前記校正モードが指示されたとき、前記校正用信号を前記直交変調器に入力させ、前記キャリア周波数を順次変更するとともに、該キャリア周波数毎に前記補正値算出手段によって得られた利得の補正値と位相の補正値とを該キャリア周波数に対応づけて前記メモリに記憶し、前記通常モードが指定されたときには、前記キャリア周波数を所望値に設定し、該キャリア周波数に対応した前記各補正値を前記メモリを参照して求めて前記補正部に設定するとともに、所望の変調用信号を前記補正部を介して前記直交変調器に入力させ、該直交変調器の出力信号を前記試験対象の無線端末に送信し、該無線端末の出力信号を前記スイッチを介して前記周波数変換器に入力させる制御部(40′)とを備えたことを特徴とする無線端末試験装置。
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