JP4106123B2 - レーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数種類の板金加工機械を用いた複合加工においては、それぞれの加工機械の加工原点および座標系が同一になっている必要がある。例えば、パンチプレスとレーザ加工機の複合加工においては、パンチプレスの加工原点および座標系とレーザ加工機のそれとが同一に合わされていなければならない。
【0003】
上述のパンチプレスとレーザ加工機の複合加工時における、原点および座標系を合わせる手段として、パンチプレスによって被加工材に加工された二つの抜き穴A1 、A2 を基準として、レーザ加工機の加工原点と座標系をパンチプレスの加工原点および座標系に一致させる手段が、本願出願人の発明である特公平8−11310号公報に開示されている。
【0004】
特公平8−11310号公報に開示されている手段の要点は次の様なものである。
【0005】
レーザ加工機に被加工材を撮影する撮影装置(例えばCCDカメラ)と画像処理装置とを設け、パンチプレスで板金(ワーク)に加工された抜き穴A1 、A2 を、この撮影装置によって撮像し、その抜き穴A1 、A2 の画像を画像処理装置で処理して、抜き穴A1 の重心P1 ’(x1 ’,y1 ’)と、A2 の重心P2 ’(x2 ’,y2 ’)を演算によって求める。
【0006】
上述の、P1 ’(x1 ’,y1 ’)と、P2 ’(x2 ’,y2 ’)をベクトル[B]で表わし、また、前記抜き穴A1 およびA2 の正規な重心を学習によって求め、その座標がP1 (x1 ,y1 )およびP2 (x2 ,y2 )であるとき、このP1 、P2 をベクトル[A]で表わせば、ベクトル[A]とベクトル[B]との夾角θは次の式で表わされる。
【0007】
【数1】
COSθ=([A]・[B])/(|[A]|*|[B]|)
=(AxBx+AyBy)/{(Ax2 +Ay2 )1/2 }*{(Bx2 +By2 )1/2 }
上式において、「[A]・[B]」はベクトルの内積、「|[A]|*|[B]|」はベクトル[A]、[B]の絶対値の積、「Ax、Bx」と「Ay、By」は、それぞれ、ベクトル[A]、[B]のX成分とY成分である。
【0008】
上記式からベクトル[A]と[B]の夾角θを演算によって求めることができる。一方、ベクトル[A]、[B]が交差する側に近い抜き穴をA1 とするとき、抜き穴A1 の重心P1 ’(x1 ’,y1 ’)の正規な中心座標からの偏り、Δx(x1 ’−x1 )と、Δy(y1 ’−y1 )も演算によって求めることができる。
【0009】
こうして求めた、Δx,Δy、および夾角θの値がレーザ加工機の制御装置にフィードバックされ、ベクトル[A]とベクトル[B]との方向が同じになるように座標系が修正されると共に、ベクトル[A]とベクトル[B]の始点が一致するように修正し、レーザ加工機の座標系とワークの加工原点をパンチプレスの座標系とワークの加工原点に一致させるものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術(特公平8−11310号公報)の手段においては、基準となる2個の穴A1 、A2 の位置精度が良くない場合には、座標合わせの精度が低下することになる。また、基準穴A1 、A2 に傷がある場合、或いは穴A1 もしくはA2 にごみが付着した場合、同様に座標合わせの精度が低下することになる。
【0011】
しかし、上述の従来の方法においては、基準穴A1 、A2 の位置精度不良およびごみ等の付着を認識しないので、座標合わせの不具合を検出できずに複合加工が実施され、製品の総合的加工精度が低下するということも生じる。
【0012】
本発明は上述の如き問題を解決するために成されたものであり、本発明の目的は、座標合わせが不良の場合、その原因が複合加工の前工程の基準穴に存在するのか、後工程の座標合わせ装置自体に在るのかを判別可能な座標合わせ方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決する手段として、請求項1に記載のレーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法は、パンチプレスによって打抜加工されたワーク(半製品)にレーザ加工を行うレーザ・パンチ複合加工において、前記ワーク(半製品)をレーザ加工機の加工テーブルの加工原点位置に装着し、前記ワーク(半製品)に打抜加工された打抜き穴の中から適宜に離隔した2個の打抜き穴を座標合わせ計測用の基準穴に設定し、該2個の基準穴の位置をレーザ加工機に設けた座標合わせ装置で計測して前記パンチプレスの加工原点と座標系に前記レーザ加工機の加工原点と座標系を一致させるレーザ加工機の座標合わせ方法にして、前記座標合わせの後に前記ワーク(半製品)の外部の適宜な位置に前記レーザ加工機により計測用捨て穴(C)を加工して、該計測用捨て穴(C)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離を前記座標合わせ装置により測定し、前記捨て穴(C)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離の誤差を演算して求めて前記座標合わせの良否を判断し、該座標合わせの良否判断において座標合わせ不良と判断された場合、前記2個の基準穴間の距離を測定して該基準穴の加工精度の良否の判断を行い、該基準穴が良好の場合には、前記計測用捨て穴(C)を用いてレーザ加工点の位置と前記座標合わせ装置の撮影装置の画像中心位置との誤差を測定して該座標合わせ装置のキャリブレーションを実施した後に、新たに前記ワーク(半製品)の外部の適宜な位置に前記レーザ加工機により計測用捨て穴(C’)を再加工して、該再加工した計測用捨て穴(C’)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離を測定し、その加工誤差を演算して求めて前記座標合わせの良否の再判断をするこを要旨とするものである。
【0014】
したがって、座標合わせの不良の原因が基準穴に起因するか否かを判別することができる。また、座標合わせの不良の原因が座標合わせ装置の調整不良に起因する場合には、これをキャリブレーションすることにより自動修復することができる。かつ座標合わせ装置のキャリブレーションの改善の良否を確認することができる。
【0015】
請求項2に記載のレーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法は、 請求項1に記載のレーザ加工機の座標合わせ方法において、前記座標合わせの良否判断において該座標合わせが良好と判断された場合には前記レーザ加工機によるレーザ加工を実施し、前記基準穴の加工精度の良否の判断において該基準穴の加工精度が不良と判断された場合には、前記基準穴が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させ、前記座標合わせの良否の再判断時において座標合わせが不良と判断された場合には、前記座標合わせ装置が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させることを要旨とするものである。
【0016】
したがって、基準穴の加工精度が不良と判断された場合には、前記基準穴が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させるので、このレーザ加工機の運転停止中にパンチプレスの保守点検や精度が出ている基準穴があれば、その穴を基準穴としてプログラムを設定しなおすこともできる。また、座標合わせの良否の再判断時において座標合わせが不良と判断された場合には、前記座標合わせ装置が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させるので、この運転停止中に座標合わせ装置の保守点検を実施することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面によって説明する。図1は本発明の座標合わせ方法をパンチプレスとレーザ加工機からなる複合加工に適用した場合の方法のプロセスを示すフローチャートである。図2はパンチプレスで加工されたワークの(半製品)一例である。
【0022】
図2に示すワークWは、パンチプレスによって、実線で示す如き丸穴または角穴他の打抜き加工が施された半製品を示したものである。このワーク(半製品)Wに、レーザ加工機で破線で示す如きラインをレーザ切断すれば複合加工製品Pが完成する。打抜き穴A1とA2は、レーザ加工機の加工原点および座標系をパンチプレスのとそれとを合わせるときに使用する基準穴である。
【0023】
次に、本発明の座標合わせ方法について図1により説明する。パンチプレスによって必要な打抜き加工をワークWに実施する(ステップ1)。なお、このとき、レーザ加工機の加工原点および座標系をパンチプレスのそれとを合わせるために使用する適宜な基準穴A1、A2を選択し、レーザ加工機を制御する図示しないNC制御装置に設定する。
【0024】
次に、レーザ加工機にワークWを取付け、前記従来技術の手段を用いてレーザ加工機の加工原点および座標系をパンチプレスのそれに合わせる、謂ゆる座標合わせを行う(ステップ2)。
【0025】
前記ワークWに製作する複合加工製品Pの外部の適宜な位置にレーザ加工機によって、計測用捨て穴Cの切断加工を実施する(ステップ3)。
【0026】
そして、撮影装置と画像処理装置からなる公知の座標合わせ装置を利用して、前記計測用捨て穴Cと前記基準穴A1またはA2との間の距離を測定し、穴Cと穴A1またはA2との間の距離の加工誤差を演算して求め、ステップ2において実施した座標合わせの良否を判断する(ステップ4)。なお、座標合わせの良否判断は、製品の要求加工精度から設定される適宜な判断基準に従ってなされる様になっている。
【0027】
ステップ4において、座標合わせの良否判断がOK(良好)の場合、レーザ加工を実施する(ステップ5)。
【0028】
また、ステップ4における良否判断がNG(不良)の場合には、前記基準穴A1、A2間の距離を測定して加工精度の良否の判断を行う(ステップ6)。
【0029】
ステップ6における良否判断がOK(良好)の場合には、前記計測用捨て穴Cを用いてレーザ加工点の位置と前記座標合わせ装置の撮影装置の画像中心位置との誤差を測定して、座標合わせ装置のキャリブレーションを実施する(ステップ8)。
【0030】
上述の座標合わせ装置のキャリブレーションを実施の後、ワークWに計測用の計測用捨て穴C’の再加工をレーザ加工機で実施する(ステップ9)。なお、再加工する捨て穴C’の位置は、複合加工製品Pの外部の適宜な位置に行うのが好ましい。
【0031】
前記キャリブレーションを実施の後、前記計測用の捨て穴C’と前記基準穴A1またはA2との間の距離を測定し、捨て穴C’と基準穴A1またはA2との間の距離の加工誤差を演算して求め、ステップ2において実施した座標合わせの良否を判断する(ステップ10)。
【0032】
ステップ10の座標合わせの判断において、良否判断がOK(良好)の場合には、前記座標合わせ装置のキャリブレーション不良が正確に補正されたことになるので、前記ステップ5に戻りレーザ加工を実施することになる。
【0033】
ステップ10の座標合わせの判断において、良否判断がNG(不良)の場合には、座標合わせ装置不良のアラームを表示すると共に、レーザ加工機の運転を停止させる。そして、この停止中に座標合わせ装置の保守点検を実施する。
【0034】
前記ステップ6において、良否判断がNG(不良)の場合には、基準穴不良のアラームを表示すると同時にレーザ加工機の運転を停止させる。この停止中にパンチプレスの保守点検や精度の出ている基準穴があれば、その穴を基準穴としてプログラムに設定しなおすこともできる。
【0035】
なお、前記ステップ4において、基準穴A1とA2間のピッチ誤差を前述の座標合わせ装置によって測定によって求め、この基準穴A1とA2間のピッチ誤差と、この基準穴を加工したパンチプレスの加工精度と座標合わせ装置の測定精度との和との大小を比較して、基準穴A1とA2間のピッチ誤差の方が大きいときは、座標合わせに不具合が発生したものと判断して、レーザー加工前に座標合わせ不良のアラームを表示させてレーザー加工を中断させることもできる。
【0036】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、複合加工において、前工程が完了したワーク(半製品)に後工程の加工を加える前に、座標合わせの良否を判断するので、座標合わせの不良による総合精度不良の製品を加工することを事前に防止することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、座標合わせの不良原因が基準穴に起因するか否かを判別することができるので、基準穴不良の場合にはこの段階でレーザ加工機を停止させると同時に、前工程のパンチプレスの点検を実施するためのアラームを出すことが可能となる。また、座標合わせの不良原因が座標合わせ装置の調整不良に起因する場合には、このキャリブレーションにより自動修復することができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、座標合わせの不良の原因が座標合わせ装置の調整不良に起因する場合には、このキャリブレーションにより自動修復することができる。
【0039】
請求項4に記載の発明によれば、座標合わせ装置のキャリブレーションの改善の良否を確認し、その結果、なお座標合わせが改善されない場合には、座標合わせ装置の異常に原因があると判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の座標合わせ方法をパンチプレスとレーザ加工機からなる複合加工に適用した場合の方法のプロセスを示すフローチャート。
【図2】パンチプレスで加工されたワーク(半製品)の一例。
【符号の説明】
C、C’ 計測用捨て穴
A1、A2 基準穴
P 複合加工製品
W ワーク(半製品)
Claims (2)
- パンチプレスによって打抜加工されたワーク(半製品)にレーザ加工を行うレーザ・パンチ複合加工において、前記ワーク(半製品)をレーザ加工機の加工テーブルの加工原点位置に装着し、前記ワーク(半製品)に打抜加工された打抜き穴の中から適宜に離隔した2個の打抜き穴を座標合わせ計測用の基準穴に設定し、該2個の基準穴の位置をレーザ加工機に設けた座標合わせ装置で計測して前記パンチプレスの加工原点と座標系に前記レーザ加工機の加工原点と座標系を一致させるレーザ加工機の座標合わせ方法にして、前記座標合わせの後に前記ワーク(半製品)の外部の適宜な位置に前記レーザ加工機により計測用捨て穴(C)を加工して、該計測用捨て穴(C)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離を前記座標合わせ装置により測定し、前記捨て穴(C)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離の誤差を演算して求めて前記座標合わせの良否を判断し、該座標合わせの良否判断において座標合わせ不良と判断された場合、前記2個の基準穴間の距離を測定して該基準穴の加工精度の良否の判断を行い、該基準穴が良好の場合には、前記計測用捨て穴(C)を用いてレーザ加工点の位置と前記座標合わせ装置の撮影装置の画像中心位置との誤差を測定して該座標合わせ装置のキャリブレーションを実施した後に、新たに前記ワーク(半製品)の外部の適宜な位置に前記レーザ加工機により計測用捨て穴(C’)を再加工して、該再加工した計測用捨て穴(C’)と前記2個の基準穴のどちらか一方との間の距離を測定し、その加工誤差を演算して求めて前記座標合わせの良否の再判断をすることを特徴とするレーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法。
- 請求項1に記載のレーザ加工機の座標合わせ方法において、前記座標合わせの良否判断において該座標合わせが良好と判断された場合には前記レーザ加工機によるレーザ加工を実施し、前記基準穴の加工精度の良否の判断において該基準穴の加工精度が不良と判断された場合には、前記基準穴が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させ、前記座標合わせの良否の再判断時において座標合わせが不良と判断された場合には、前記座標合わせ装置が不良のアラームを表示すると同時に前記レーザ加工機の運転を停止させることを特徴とするレーザ・パンチ複合加工におけるレーザ加工機の座標合わせ方法。
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