JP4104365B2 - 加撚糸及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸及びその製造方法に関する。更に詳しくは、後加工性に優れ、特に、製織工程での糸切れが少なく、高い布帛品位を有するポリトリメチレンテレフタレート系サイドーバイーサイド型又は偏心鞘芯型複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTT、という)繊維は、J.Polymer Science:Polymer Phisics Edition Vol.14 P263ー274(1976)、及びChemical Fibers International Vol.45,April(1995)110ー111等の先行技術に記載されている。
【0003】
これらの先行技術には、PTT繊維の応力ー伸長特性についての基本特性が記載され、PTT繊維は初期モジュラスが小さく、弾性回復性に優れており、衣料用途やカーペット用途等に適していることが示唆されている。
特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開平2000−239927号公報、特開平2000−256918号公報、欧州特許出願公開第1059372号明細書等には、一方又は両方の成分がPTTからなるサイドーバイーサイド型の複合繊維が開示されている。
【0004】
これらの先行技術によれば、少なくとも一方の成分にPTTを用い、サイドーバイーサイド型又は偏心鞘芯型に複合した複合繊維(以下、PTT複合繊維と称す)は、潜在捲縮性を有し、熱処理することにより捲縮が顕在化し、良好なストレッチ性とソフトな風合いを呈することが開示されている。
しかし、本発明者らの研究によれば、上記のPTT複合繊維は、製品のストレッチ性やソフト性といった点では良好な性質を示すものの、特に、製織工程で以下の問題が発生することが明らかになった。
一般にサイドバイサイド型潜在捲縮糸を製織に用いる際には、表面品位及びピリング性改善のために撚糸を行う。ところが、PTT複合糸を撚糸して緯糸に使用した場合、製織時にガイド類に白粉が堆積し、糸切れが発生するトラブルが生じることがわかった。
【0005】
図1に、撚糸後スチーム熱セットしたPTT複合繊維の表面を走査型電子顕微鏡により観察した写真を示す。繊維表面に付着している直方体の物体が白粉である。
図2に、織機のテンサーガイドに付着した白粉を示差走査熱量測定(DSC)により測定した測定曲線を示す。この測定曲線によれば、約230℃と約250℃に吸熱ピークが観察される。約230℃のピークはPTTの融解温度に、約250℃のピークはトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの融解温度に合致する。
図2から示唆されるように、ガイド類に付着した白粉は、PTTや、その副生成物であるトリメチレンテレフタレート環状ダイマーである。このような白粉が発生する理由は、明らかではないが、以下のごとく推定される。
【0006】
すなわち、PTT複合繊維、中でも高いストレッチ性を有する複合繊維は、その捲縮が潜在性であるばかりでなく、熱処理以前にも捲縮が発現しており、顕在捲縮性を示すことが特徴である。このような顕在捲縮性を示すサイドーバイーサイド型複合繊維は、編織の準備工程でガイド類との接触抵抗が非顕在性の複合繊維に比較して著しく高くなるものと推定される。
顕在捲縮の捲縮率が高くなるほど、また撚糸回数が増すほど、PTT由来の白粉が増加する。また、撚糸セット温度が高温であるほどトリメチレンテレフタレート環状ダイマー由来の白粉が増加する。
【0007】
特開2001−40537号公報には、一方の成分にPTTを用いたサイドバイサイド型複合繊維の撚糸が開示されているが、これには、本発明の課題である製織工程での白粉については全く言及されていない。また、この繊維は熱収縮応力が高いため、本発明者らの検討によれば、この複合繊維はスナール係数が高く、解舒性に問題があった。
その他の先行技術にも、本発明を完成させる過程で明らかになった、撚糸製織時の白粉発生の問題の存在すら記載はなく、その解決方法については示唆もされていない。
【0008】
オリゴマーは、本発明者らの解析によれば、主成分はトリメチレンテレフタレートの環状ダイマーであることが明らかになった。PTT複合繊維に環状ダイマーの析出量が多い理由は明らかではないが、PTT複合繊維において、PTTの配向度が低いことが環状ダイマーの繊維表面への移動を容易にしているものと推定される。
特許第3204399号明細書には、紡糸孔汚染抑制を目的として、オリゴマー含有量に言及したPTT繊維が開示されている。しかし、このPTT繊維のオリゴマー含有量は高く、この繊維の製織時の問題については何ら開示されていない。
【0009】
したがって、撚糸及び製織工程における糸切れトラブルを改良し、優れたストレッチ性及び高い布帛表面品位を有するPTT複合繊維からなるマルチフィラメント加撚糸及びその製造方法の出現が強く求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、 PTT複合繊維からなるマルチフィラメント加撚糸を緯糸に用いる製織工程において、繊維からの白粉の発生に伴なう糸切れ等、製織工程での障害発生を防止し、優れたストレッチ性及び高い布帛品位を有するPTT複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸及びその製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、繊維表面に付着している環状ダイマー量と集束形態特性を特定することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) 固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートがサイド−バイ−サイド型又は偏芯鞘芯型に貼り合わされた複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸であって、熱収縮応力が0.23cN/dtex以下、撚り係数(K)が1500〜15000、かつ、加撚糸表面に付着するトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの個数が5ヶ/1000(μm)2 以下、スナール係数が1以下であることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸。
但し、撚り係数Kは、下記式で示される値である。
T=K×[1/(0.9×D)1/2 ]
(式中、Tは、1m当たりの撚り数、Dは、複合繊維のデシテックスを示す)
【0012】
(2) 熱収縮応力が0.20cN/dtex以下である(1)に記載のポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸。
(3) 固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートがサイド−バイ−サイド型又は偏芯鞘芯型に貼り合わされた複合繊維からなり、熱収縮応力が0.23cN/dtex以下、かつ、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が2.5重量%以下の複合繊維マルチフィラメントを、撚り係数(K)1500〜15000で加撚し、50〜70℃で熱セットすることにより、スナール係数が1以下とすることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸の製造方法。
但し、撚り係数Kは、下記式で示される値である。
T=K×[1/(0.9×D)1/2 ]
(式中、Tは、1m当たりの撚り数、Dは、複合繊維のデシテックスを示す)
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のPTT複合繊維は、PTTホモポリマー又は10モル%以下のその他のエステル繰り返し単位を含む共重合PTTで構成されている。
共重合成分の代表例として以下のものがあげられる。酸性分としては、イソフタール酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸等である。グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等である。ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸も用いることができる。これらを複数用いた共重合体であってもよい。
【0014】
PTTは公知の方法で製造することができる。溶融重合のみで所定の固有粘度に相当する重合度をもったPTTを製造する1段階法や、一定の固有粘度までは溶融重合により重合度を上げ、続いて固相重合で所定の固有粘度に相当する重合度まで上げる2段階法等が用いられる。後者の、固相重合を組み合わせる2段階法が、環状ダイマーの含有率を減少させる上で好ましい。
複合繊維の製造に使用されるPTTは、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が2.5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下がより好ましい。
【0015】
本発明における複合繊維は、固有粘度の異なるPTTを、サイドーバイーサイド型又は偏心鞘心型に貼り合せて構成されていることが必要である。この構成により、延伸時に両成分の配向差による熱収縮率差が生じ、これを熱処理することにより、熱収縮率差に応じてコイル状の捲縮が発現してストレッチ性が得られる。優れたストレッチ性を発現させるためには、複合させる両PTT成分の固有粘度差は0.1〜0.4dl/gであることが好ましい。
【0016】
織物用途に耐える破断強度を得るためには、PTT複合繊維の平均固有粘度が0.8〜1.1dl/gであることが好ましい。
本発明の複合繊維における、固有粘度の異なるPTTの配合比率は、高粘度成分と低粘度成分の比率が40/60〜70/30(重量比)であることが好ましい。高粘度成分の比率が40重量%未満になると、糸の強度が低下し、引き裂き強度を要する分野での使用が制限される。高粘度成分の比率が70重量%を越えると捲縮性能が低下する傾向がある。
【0017】
本発明のPTT複合繊維の単糸繊度及びマルチフィラメントの加撚糸の繊度は限定されないが、通常、単糸繊度は0.5〜20dtex、加撚糸の繊度は20〜300dtexである。
PTT複合繊維の断面形状は、丸型、Y、W字状等の異型断面、中空断面形状等であってもよい。
複合繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で酸化チタン等のつや消し剤や、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料等の添加剤を含有又は共重合として含んでいてもよい。
本発明のPTT複合繊からなるマルチフィラメントの加撚糸(以下、複合繊維加撚糸、という)の撚り係数(K)は1500〜15000であることが必要であり、好ましくは4000〜7000である。撚り係数(K)が1500未満では集束性が不十分であり、布帛の表面品位が悪くなる。撚り係数(K)が15000を越えると撚糸時の糸へのダメージが大きくなるため、白粉の発生を十分に抑えることができない。
【0018】
本発明のPTT複合繊維加撚糸の熱収縮応力は0.23cN/dtex以下であることが必要である。熱収縮応力が0.23cN/dtexを越えると、後述する本発明の製法における熱セット温度において、スナール係数が1より大きくなり、製織時、糸の解舒が悪く糸切れを引き起こす。好ましい熱収縮応力は0.20cN/dtex以下である。
本発明のPTT複合繊維加撚糸の表面に付着するトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの個数は、5ヶ/1000(μm)2以下であることが必要であり、好ましくは3ヶ/1000(μm)2以下である。環状ダイマーの付着個数が5ヶ/1000(μm)2を越えると、製織時に、織機等のガイドやノズル等に、繊維から発生する白粉が詰まって連続運転が困難となる。
【0019】
次に、本発明のPTT複合繊維加撚糸の製造方法について説明する。
固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートがサイドーバイーサイド型又は偏心鞘芯型に貼り合わされた複合繊維からなるマルチフィラメントを、撚り係数(K)が1500〜15000で加撚し、熱セットするにあたり、用いるPTT複合繊維の熱収縮応力は0.23cN/dtex以下、好ましくは0.2cN/dtex以下である。熱収縮応力が0.23cN/dtexを越えると、撚糸のスナール係数を、熱セットによって1以下にすることができないために、製織時の解舒性及び布帛の品位が悪化する。
【0020】
本発明の複合繊維加撚糸の製造に際して、PTT複合繊維に含有されるトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率を2.5重量%以下、好ましくは2.2重量%以下としなければならない。トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が2.5重量%を越えると、熱セット後の繊維表面に付着するダイマーの個数が5ヶ/1000(μm)2を越えるため、製織時に、ガイドやノズル等に白粉が詰まって連続運転が困難となる。
【0021】
PTT複合繊維からなるマルチフィラメントを加撚した後の熱セット温度は50〜70℃、好ましくは50〜63℃である。熱セット温度が70℃を越えると、撚糸表面の析出ダイマー量が多くなり、製織時に、ガイドやノズル等に白粉が詰まって連続運転が困難となる。また、50℃未満の場合、撚糸セットが不十分となり、解舒性が悪くなるとともに布帛の表面品位も悪くなる。
【0022】
本発明のPTT複合繊維加撚糸の製造方法を図面により説明する。
PTT複合繊維は、公知の2軸押出機を有する複合紡糸用設備を用いて製造することができる。
図3に本発明のPTT複合繊維の製造工程を、図4に、本発明のPTT複合繊維からなるマルチフィラメントの延伸、巻き取り工程の一例を示す。
図3において、まず、PTT複合繊維の一方の成分となる、乾燥機1で20ppm以下の水分率までに乾燥されたPTTペレットを240〜280℃の温度に設定された押出機2に供給し溶融する。他方のPTT成分も同様にして、乾燥機3及び押出機4により溶融する。
【0023】
溶融したPTTの二種の成分は、それぞれ、ベンド5及び6を経て240〜280℃に設定されたスピンヘッド7に送液され、ギヤポンプで別々に計量される。その後、スピンパック8に装着された複数の孔を有する紡糸口金9で二種の成分が合流し、サイドーバイーサイドに貼り合わされた後、マルチフィラメント10として紡糸チャンバー内に押し出される。
紡糸口金として、図5に示す紡口を用いることが好ましい。図5において、固有粘度の異なるA及びB成分からなるPTTは、それぞれ、分配板(イ)から紡口(ロ)に供給される。紡口(ロ)で、両者が合流した後、鉛直方向に対してθ度の傾斜を有した吐出孔より吐出される。吐出孔の孔径はD、孔長はLで示される。
【0024】
本発明においては、この吐出孔の孔径(D)と孔長(L)の比が2以上であることが好ましい。固有粘度の異なる2種のPTTが合流した後に、両成分の接合状態が安定するには、吐出孔の孔径(D)と孔長(L)の比は2以上であることが好ましい。吐出孔の孔径と孔長の比が2未満では、接合が不安定となり、孔から吐出する際にポリマーの溶融粘度差に起因する揺らぎが生じ、繊度変動値が不良となり、布帛の品位が悪くなる。吐出孔の孔径と孔長の比は大きい程好ましいが、孔の製作が困難となることから2〜8であることが好ましい。より好ましくは、2.5〜5である。
【0025】
本発明に用いる紡糸口金の吐出孔は、鉛直方向に対し10〜40度の傾斜を有していることが好ましい。吐出孔の鉛直方向に対する傾斜角とは、図5のθ(度)を指す。鉛直方向に対して孔が傾斜していることは、固有粘度の異なるPTTを吐出する際に、溶融粘性差に起因する糸曲りを解消する重要な要件である。吐出孔が傾斜を有していない場合には、例えば、PTTどうしの組み合わせの場合に、固有粘度差が拡大する程、吐出直後のフィラメントが固有粘度の高い方向へ曲がる、いわゆるベンデイング現象が発生し、安定した紡糸が困難となる。
【0026】
図5においては、固有粘度の高いPTTをA側に、固有粘度の低いPTTをB側に供給して吐出することが好ましい。例えば、PTTの両成分の固有粘度差が0.1以上ある場合、ベンデイングを解消して、安定した紡糸を実現するには、吐出孔が鉛直方向に対して少なくとも10度以上傾斜していることが好ましい。固有粘度差がさらに大きい場合には、傾斜角度を更に大きくすることが好ましい。しかし、傾斜角度が40度を越えると、吐出部が楕円形となり安定した紡糸が困難となる。また、孔の製作そのものにも困難を伴う。好ましい傾斜角度は15〜35度、より好ましくは20〜30度である。
本発明では、この傾斜角度は、吐出孔の孔径と孔長の比が2以上の組み合わせの場合に、より有効に効果を発揮する。吐出孔の孔径と孔長の比が2未満では、傾斜角度をいかに調整しても吐出の安定効果を得ることは難しくなる。
【0027】
図3において、紡口から吐出されたマルチフィラメント10は、紡口直下に設けた非送風領域11を通過した後、冷却風12によって室温まで冷却されて固化し、所定の速度で回転する引取ゴデットロール13、14によって所定の繊度の未延伸糸パッケージ15として巻き取られる。未延伸糸15は、引取ゴデットロール13に接する前に、仕上げ剤付与装置16によって仕上げ剤が付与される。未延伸繊維に付与する仕上げ剤は、水系エマルジョンタイプが使用される。仕上げ剤の水系エマルジョンの濃度は、通常、15重量%以上、好ましくは20〜35重量%である。
【0028】
未延伸糸の製造において、巻取速度を3000m/分以下で巻き取ることが好ましく、より好ましくは1000〜2000m/分、最も好ましくは1200〜1800m/分である。
未延伸糸は、次に延伸工程に供給され、図4に示す延伸機で延伸される。延伸工程に供給するまでに、未延伸糸の保存環境は、雰囲気温度を10〜25℃、相対湿度75〜100%に保っておくことが好ましい。また、延伸機上の未延伸繊維は延伸中を通してこの温度、湿度に保持することが好ましい。
【0029】
未延伸糸パッケージ15は、45〜65℃に設定された供給ロール17上で加熱され、供給ロール17と延伸ロール20との周速度比を利用して所定の繊度まで延伸される。繊維は延伸後又は延伸中に、100〜150℃に設定されたホットプレート19に接触しながら走行し、緊張熱処理を受ける。延伸ロールを出た後、スピンドル21によって数回程度の撚りをかけられながら、延伸糸パーン22として巻取られる。供給ロール温度は、好ましくは50〜60℃、より好ましくは52〜58℃である。
【0030】
必要に応じて、延伸ロール17とホットプレート19の間に延伸ピン18を設け、延伸を行ってもよい。この場合には、延伸ロール温度を50〜60℃、より好ましくは52〜58℃になるように厳密に管理することが好ましい。
延伸ロール19を出た延伸糸は、トレベラーガイド21によりバルーンを形成しつつ延伸糸パーン22に巻き取られる。
撚糸に用いるPTT複合繊維は、紡糸並びに延伸を別工程で行う、上記の2段階法、及び紡糸並びに延伸を連続して行う1段階法のいずれも用いることができる。
撚糸には公知のダブルツイスター、イタリー撚糸機等を用いることができる。撚糸速度は、張力及び摩擦抵抗を低減させるために、20m/分以下が好ましい。製織は、公知のウオータージェット、エアージェット製織機が用いられる。
【0031】
【発明の実施形態】
以下に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
本発明の用いられる物性の測定方法及び測定条件は、以下の通りである。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηrー1)/C
C→0
式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したPTTの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cは、g/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0032】
(2)トリメチレンテレフタレート環状ダイマー含有率
1H−NMR法によりトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率を測定する。
測定装置、条件は以下の通りである。
測定装置 : Bruker社製 FT−NMR DPX−400
溶媒 : 重水素化トリフロロ酢酸
試料濃度 : 2.0重量/vol%
測定温度 : 25℃
化学シフト基準: tetramethylsilane(TMS)を0ppmとする
積算回数 : 256回
待ち時間 : 3.0秒
【0033】
繊維を水洗した後、室温で24時間乾燥したものを試料とし、各測定試料の1H−NMRスペクトルを測定する。
トリメチレンテレフタレート環状ダイマーのベンゼン環由来のシグナルを用いて、PTT及び/又は他のポリエステルのベンゼン環由来のシグナルとの積分値の比率より、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率を求める。
各試料について3回サンプリングを行って測定し、その平均値を求める。
【0034】
(3)スナール係数
計測器工業株式会社製の撚り戻り試験機を用い、10回サンプリングを行って測定し、その値の平均値を求める。
(4)撚糸表面に付着するオリゴマーの個数
撚糸及び熱セットを行った後、繊維表面を電子顕微鏡で倍率3000倍で観察する。30μm×40μmの視野で10箇所写真撮影し、糸表面に付着している縦横比2以上で長辺の長さが2μ以上のダイマーの個数を数え、1000(μm)2当たりの個数に換算する。
(5)破断強度,破断伸度
JIS−L−1013に基づいて測定する。
(6)交絡度
JIS−L−1013に基づいて測定する。
【0035】
(7)負荷時伸縮伸長率
糸を周長1.125mの検尺機で10回かせ取りし、沸騰水中で30分1.8×10-3cNの荷重をかけた状態で熱処理した後、乾熱180℃で15分同荷重下で処理する。処理後、以下の式から伸縮伸長率を測定する。
伸縮伸長率%=(L2−L1)/L1×100
L1=1×10-3cN/dtex荷重付加時のかせ長
L2=0.18cN/dtex荷重付加時のかせ長
【0036】
(8)熱収縮応力
熱収縮応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用いて測定する。
測定する繊維の20cmを切り取り、10cmの周長になるよう両端を結んで輪をつくり測定器に装填する。初荷重0.05cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で測定し、熱収縮応力の温度変化をチャートに書かせ、熱収縮応力曲線の最大値Aを読みとる。熱収縮応力は以下の式より求める。
熱収縮応力=((A−B)×0.981)/(D×2)
A:熱収縮応力曲線の最大値(g)
B:初荷重(g)
D:測定する繊維のデシテックス
【0037】
(9)撚糸製織時白粉発生評価
公知のダブルツイスターを用いて20m/分の速度で撚糸した後、SBR型スチームセッターを用いて40分間撚り止めセットを行う。
この加撚糸を緯糸に用いて、以下のような条件で製織を行い、2日間連続で製織した時のフィーダー部、ノズル部、筬廻りの白粉の発生状況を判定する。
【0038】
(製織条件)
経糸に56dtex/24fのPTT延伸糸(「ソロ」(登録商標)、旭化成社製)を用い、緯糸に本発明のPTT複合繊維加撚糸を用いて平織物を作成する。
【0039】
(白粉発生の評価)
◎ :白粉の付着は少ない
○ :白粉の付着はあるが、糸切れなし
× :白粉の付着が著しく、糸切れ発生
【0040】
(10)布帛表面品位・風合い評価
得られた生機を、拡幅リラックス精練後、染色、仕上、幅だし熱セットの一連の処理を行う。得られた布帛を、熟練した検査技術者が検査し、緯の品位及び風合いを以下のように判定する。
(品位)
◎ :表面の平滑性が高く、極めて良好
○ :表面の平滑性が高く、良好
× :表面のでこぼこ感があり、不良
(風合い)
◎ :風合いがソフトで、極めて良好
○ :風合いがソフトで、良好
× :風合いが固く、不良
【0041】
(11)総合評価
◎ :後加工性及び布帛品位共に極めて良好
○ :後加工性及び布帛品位共に良好
× :後加工性及び布帛品位共に不良
【0042】
【実施例1〜3、比較例1、2】
本実施例では、撚り係数一定で、撚糸セット温度を変化させ、スナール係数、加撚糸表面に付着したダイマーの個数と製織での工程性、白粉発生量、布帛品位にどう対応するかを評価した。
本実施例で用いたPTT複合繊維の製造条件及びその物性は、以下の通りである。撚糸及び製織条件は、前記の撚糸製織白粉発生評価法の通りである。
【0043】
(紡糸条件)
原料ポリマー固有粘度(高固有粘度/低固有粘度) 1.26/0.92
原料ポリマー中の環状ダイマー含有率(高固有粘度/低固有粘度)0.9/1.0%
ペレット乾燥温度及び到達水分率 110℃、15ppm
押出機温度(A,B軸) 250℃
スピンヘッド温度 265℃
ポリマー配合比率(高固有粘度/低固有粘度) 50/50
ポリマー吐出量 延伸糸の繊度が84デシテックスとなるように各条件ごとに設定
非送風領域 125mm
紡口ヒーター 280℃
冷却風条件 温度 22℃、相対湿度 90%
速度 0.5m/sec
仕上げ剤 ポリエーテルエステルを主成分とする水系エマルジョン(濃度20重量%)
引取速度 1500m/分
【0044】
(未延伸糸)
繊度 延伸後の繊度が84デシテックスとなるように設定
水分含有率 0.5重量%
保管温度 22℃
(延伸条件)
延伸速度 800m/分
スピンドル回転数 8000回/分
延伸ロール温度 55℃
ホットプレート温度 130℃
バルーニング張力 0.07cN/dtex
【0045】
(原糸物性)
デシテックス/フィラメント 84/24
糸平均固有粘度 0.92
環状ダイマー含有率 2.2重量%
破断強度 2.6cN/dtex
破断伸度 37%
熱収縮応力 0.21cN/dtex
負荷時伸縮伸長率 33%
交絡度 11ヶ/m
PTT複合加撚糸の製造条件及びその評価結果を表1に示す。
【0046】
表1から明らかなように、撚糸セット温度、撚り係数、スナール係数、撚糸表面付着ダイマー量が本発明の範囲内のものは、良好な製織性及び布帛品位を示した。一方、比較例1は撚糸熱セット温度が高く、撚糸表面付着環状ダイマー量が多いため、製織時白粉が多量に発生し、連続運転が困難であった。比較例2は撚糸熱セットを行っておらず撚り止めセットがなされていないため、スナール係数が高く解舒性が悪いとともに布帛の表面品位が悪いものであった。
【0047】
【実施例4〜6、比較例3、4】
本実施例では、撚り係数の効果について説明する。
実施例1と同一条件で撚り係数のみ変化させて、得られたPTT複合加撚糸の評価を行った。得られたPTT複合繊維加撚糸及びその後加工結果を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明の範囲内の撚り係数の場合は、良好な製織性及び布帛品位を示した。比較例3は、撚り係数が高く、糸表面へのダメージが大きいため製織時、白粉発生が多く工程性が不良であった。比較例4は撚り係数が低いため、布帛の表面品位が悪いものであった。
【0048】
【実施例7〜8、比較例5】
本実施例では、撚糸に用いるPTT複合繊維の環状ダイマー含有率の効果について説明する。
実施例1と同一条件でPTT複合繊維の環状ダイマー含有率が異なるものを撚糸し、評価を行った。得られたPTT複合繊維加撚糸及びその後加工結果を表3に示す。
表3から明らかなように、本発明の環状ダイマー含有率である実施例7、8は良好な製織性を示した。一方、本発明より環状ダイマー量が多い比較例5は製織時、白粉発生が多く連続した加工ができなかった。
【0049】
【実施例9〜10、比較例6〜7】
本実施例では、撚糸に用いるPTT複合繊維の熱収縮応力の効果について説明する。
実施例1と同一条件でPTT複合繊維の熱収縮応力が異なるものを撚糸し、評価をおこなった。得られたPTT複合繊維加撚糸及びその後加工結果を表4に示す。
表4から明らかなように本発明の範囲内の熱収縮応力であれば、スナール係数が低く良好な製織性を示した。一方、本発明より熱収縮応力の大きい比較例6及び7は、スナール係数が高く製織時、糸切れが発生し、また、布帛の品位も劣るものであった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、製織工程での糸切れトラブルを改良すると同時に、シボやしわのない良好な布帛表面を有するPTT複合繊維加撚糸及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】撚糸後、撚り止めセットした複合繊維の表面の走査電子顕微鏡写真。
【図2】織機に付着した白粉の示差走査熱量測定(DSC)測定チャート。
【図3】本発明のPTT複合繊維からなるマルチフィラメント製造工程の概略図。
【図4】本発明のPTT複合繊維加撚糸の製造工程の概略図。
【図5】本発明のPTT複合繊維からなるマルチフィラメント製造に用いる紡糸口金の吐出孔の模式図。
Claims (3)
- 固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートがサイド−バイ−サイド型又は偏芯鞘芯型に貼り合わされた複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸であって、熱収縮応力が0.23cN/dtex以下、撚り係数(K)が1500〜15000、かつ、加撚糸表面に付着するトリメチレンテレフタレート環状ダイマーの個数が5ヶ/1000(μm)2 以下、スナール係数が1以下であることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸。
但し、撚り係数Kは、下記式で示される値である。
T=K×[1/(0.9×D)1/2 ]
(式中、Tは、1m当たりの撚り数、Dは、複合繊維のデシテックスを示す) - 熱収縮応力が0.20cN/dtex以下である請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸。
- 固有粘度の異なるポリトリメチレンテレフタレートがサイド−バイ−サイド型又は偏芯鞘芯型に貼り合わされた複合繊維からなり、熱収縮応力が0.23cN/dtex以下、かつ、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が2.5重量%以下の複合繊維マルチフィラメントを、撚り係数(K)1500〜15000で加撚し、50〜70℃で熱セットすることにより、スナール係数が1以下とすることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート複合繊維からなるマルチフィラメントの加撚糸の製造方法。
但し、撚り係数Kは、下記式で示される値である。
T=K×[1/(0.9×D)1/2 ]
(式中、Tは、1m当たりの撚り数、Dは、複合繊維のデシテックスを示す)
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