JP4103217B2 - 対物レンズ移動機構付き内視鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用等として用いられる内視鏡の挿入部に設けられ、観察部を構成する対物光学系を構成し、観察深度、結像倍率、視野角等のうちの少なくとも1つを可変にするために、対物光学系を構成する少なくとも1個のレンズを遠隔操作により光軸方向に移動させるようにした対物レンズ移動機構付き内視鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療用等として用いられる内視鏡は、一般に、術者が手で把持して操作する本体操作部に体腔内への挿入部及び光源装置等に着脱可能に接続されるユニバーサルコードを連設して設けることにより大略構成される。挿入部は、その構造及び機能上、先端側から先端部本体,アングル部及び軟性部から構成され、軟性部は本体操作部への連設部側から大半の長さを有するもので、挿入経路に沿って任意の方向に曲がる構造となっている。先端部本体には照明部,観察部等が設けられると共に、鉗子等の処置具を導出させる処置具導出部が開口しており、アングル部は、先端部本体を任意の方向に向けるために、本体操作部側からの遠隔操作で湾曲させることができるようになっている。
【0003】
以上のように、先端部本体には少なくとも照明部と観察部とが設けられるが、照明部には光学繊維束からなるライトガイドの出射端が臨んでおり、このライトガイドは挿入部から本体操作部を経てユニバーサルコード内にまで延在される。一方、観察部には対物光学系が装着され、この対物光学系における結像位置には、電子内視鏡の場合には固体撮像素子が配置され、光学式内視鏡の場合には光学繊維束からなるイメージガイドの入射端を臨ませるように配置している。そして、固体撮像素子に接続した信号ケーブルまたはイメージガイドも、ライトガイドと同様、挿入部内に挿通される。なお、以下では電子内視鏡として構成したものとして説明するが、固体撮像素子と信号ケーブルに代えてイメージガイドを設ければ光学式内視鏡とすることができる。
【0004】
ここで、観察部に設けられる対物光学系としては対物レンズ群を備えているが、この対物レンズ群は複数枚のレンズで構成される。観察部位や治療の目的等によっては観察対象部に対する焦点深度や、結像倍率、さらに視野角等を変化させるようにするのが望ましい。そこで、対物レンズ群のうちの1乃至複数枚のレンズを光軸方向に移動可能な可動レンズとなし、この可動レンズを移動させることにより、焦点深度、結像倍率、視野角等を調整できるように構成したものは従来から知られている。このために、固定的に保持されるレンズは固定レンズ枠に設け、また可動レンズを可動レンズ枠に装着して、この可動レンズ枠を固定レンズ枠内に配置して、この固定レンズ枠をガイドとして可動レンズ枠を光軸方向に移動させるように構成する。
【0005】
可動レンズを光軸方向に移動させるための駆動手段としては、例えば圧電素子や形状記憶合金、さらには人工筋肉等を用いることが提案されているが、通常は制御ケーブルを用い、この制御ケーブルの先端を可動レンズに連結し、かつその基端部を本体操作部内にまで延在させるようになし、この制御ケーブルを遠隔操作することによって、可動レンズの光軸方向への移動を行わせるように構成される。そして、制御ケーブルの具体的な構成としては、可撓性のあるスリーブ内に伝達部材を挿通させたものとするが、伝達部材としては、押し引き操作用のワイヤか、または回転駆動される密着コイル等からなるフレキシブルシャフトが用いられる。
【0006】
伝達部材としてワイヤを用いる場合には、このワイヤの先端を可動レンズ枠に直結して、このワイヤを押し引きして可動レンズを移動させる。ただし、ワイヤにより可動レンズを移動させるに当っては、実質的に一方向、つまり引っ張る方向にしか駆動力を作用することができないので、可動レンズを固定レンズに近接した前進位置に保持するためのばね等の付勢手段が必要となり、またワイヤが延びると、そのストロークが変化してしまう等といった問題がある。これに対して、フレキシブルシャフトを用いる場合には、このフレキシブルシャフトの先端にねじ軸を連結し、また可動レンズ枠にこのねじ軸を螺挿するナットを設けて、フレキシブルシャフトの回転を可動レンズの直進動作に変換する。このように、フレキシブルシャフトを用いると、その回転により可動レンズを前進位置と後退位置とに往復変位させることができ、またフレキシブルシャフトには伸び縮みする方向に力が作用しないので、作動が安定する等の見地から、制御ケーブルとしてはフレキシブルシャフトを用いる構成とする方が優れている。
【0007】
このように、フレキシブルシャフトを用いる場合には、回転運動を直進運動に変換する関係で、ねじ軸と、このねじ軸に嵌合させたナット部とからなる送りねじ機構を用いる。そして、ねじ軸は先端部本体内で回転自在で、軸線方向には動かないように支持する必要がある。このねじ軸の支持部としては、可動レンズと固定レンズとの光軸合わせを行う関係から、固定レンズ枠に連設する構成とするのが望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、可動レンズは固定レンズと常に光軸が一致させる必要があり、このために可動レンズ枠は光軸方向にのみ移動可能で、それ以外の方向にはみだりに位置ずれしないように位置決めする必要となる。この可動レンズの位置決めは、ねじ軸側で行うこともできるが、加工誤差や組み付け誤差等を排除するために、可動レンズ枠の外周面を固定レンズ枠の内周面に対して位置決めするのが望ましい。従って、可動レンズ枠は固定レンズ枠に対して実質的にがたがない状態に装着される結果、可動レンズ枠を移動させる時に大きな摺動抵抗が生じる。支持部に装着したねじ軸には可動レンズ枠に連結したナット部をねじ嵌合させるが、このねじ嵌合部分の寸法関係も厳格に設定すると、極僅かな加工誤差や組み付け誤差が生じても、可動レンズ枠の円滑な動きが損なわれ、甚だしい場合には可動レンズ枠がロックしてしまうおそれがある。このために、加工誤差,組み付け誤差等を吸収するために、ねじ嵌合部分にある程度の余裕、つまりバックラッシュなりがたなりを持たせなければならない。そうすると、可動レンズ枠と固定レンズ枠との間の摺動抵抗に起因して、ねじ軸の回転に対する可動レンズ枠の動きの追従性に遅れが生じることから、前述したがたに相当する分だけ可動レンズ枠が傾く方向の力が作用する。その結果、可動レンズ枠の移動に対する抵抗がさらに増大し、円滑な動きが阻害され、この抵抗が極端に大きくなると、可動レンズ枠がロックしてしまう可能性もある。
【0009】
前述したねじ嵌合部分におけるがたの影響を少なくして、ねじ軸の回転運動によりナット部をできるだけ直進的に移動させるには、ナット部のねじ軸へのねじ嵌合長を長くすることが考えられる。ここで、ねじ軸の必要な軸線方向の長さはナット部の移動ストロークとナット部の嵌合長さとの合計の長さになるから、ナット部のねじ嵌合長を長くすると、それだけねじ軸の全長が延びることになる結果、このねじ軸の先端が対物光学系の先端部分より突出してしまい、先端部本体に組み込めなくなる等といった問題点が生じる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、制御ケーブルによりねじ軸を回転させた時におけるナット部の移動の直進性を確保することにより、可動レンズを円滑かつ確実に光軸方向に移動させるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、レンズ支持枠内に装着され、このレンズ支持枠の内面に対して摺動する可動レンズ枠に装着した少なくとも1個の可動レンズを有する対物光学系を設けた観察部を挿入部の先端部本体に配置し、この可動レンズ枠にねじ軸に螺合させたナット部を連設し、このねじ軸を制御ケーブルにより遠隔操作で回転させることにより、前記可動レンズを光軸方向に移動可能とする構成において、前記ねじ軸は、ねじ杆部と回転軸部とを連設したもので構成し、また前記レンズ支持枠と一体に支持部を設けて、この支持部に前記回転軸部を軸線方向には移動不能で、回転自在に挿通させて設けて、前記ねじ杆部は前記挿入部の先端方向に延在させ、かつ前記ねじ杆部に螺合させた前記ナット部を前記可動レンズ枠の端面から前記挿入部の基端側に向けて所定長さ張り出すように延在させて設け、前記支持部には前記ナット部の延在部分の少なくとも一部分を収容させる収容部を設け、前記ねじ軸はこの収容部の内部の位置から前記ねじ杆部とする構成としたことをその特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
そこで、以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明はこの実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0013】
まず、図1に内視鏡の全体の概略構成を示す。同図から明らかなように、内視鏡1は、本体操作部2に体腔内等への挿入部3を連設し、かつこの本体操作部2からユニバーサルコード4を引き出すことにより大略構成されるものである。本体操作部2に連設した挿入部3は、その機能及び構造上、先端側から順に、先端部本体3a,アングル部3b及び軟性部3cとに分かれている。
【0014】
先端部本体3aは、硬質の部材からなり、その先端面(または先端側面)には、図2に示したように、照明部10,観察部11,処置具導出部12,洗浄ノズル13が設けられ、さらにジェット送水部14が開口している。なお、図示した照明部10としては、観察部11を囲むように3箇所設ける構成としているが、この照明部10は任意の数だけ設け、またジェット送水部14は必ずしも設ける必要はない。アングル部3bは、先端部本体3aを所望の方向に向けるべく、本体操作部2に設けたアングルノブ5により上下,左右の各方向に湾曲操作できるようになっている。さらに、軟性部3cは挿入部3の大半の長さを占めるもので、この軟性部3cは曲げ方向に可撓性があり、かつ耐潰性を有する構造となっており、従って挿入経路に沿って任意の方向に曲がることになる。
【0015】
図3に挿入部3の先端側の部分の断面を示す。この図から明らかなように、先端部本体3aは、例えば金属製の本体ブロック20を有し、この本体ブロック20には所要箇所に軸線方向に貫通する透孔が形成されている。そして、この本体ブロック20の先端面には絶縁キャップ21が装着されて、止めねじ22により本体ブロック20に固定されている。アングル部3bは、多数のアングルリング23を枢着ピン24により順次枢着した節輪構造となっており、アングルリング23からなる節輪構造体の外周には金属ネットとフッ素ゴム、EPDM、ウレタンゴム等からなる外皮層とを含むカバー部材25が設けられる。そして、多数連結されたアングルリング23のうちの最先端に位置する先端リング23aは本体ブロック20に連結されている。従って、挿入部3においては、絶縁キャップ21の先端面から、アングル部3bのうちの先端リング23aとそれに枢着される他のアングルリング23との枢着部の位置までが硬質部分となっている。
【0016】
照明部10は、周知のように、ライトガイドに伝送される照明光を体腔内に向けて照射するものであり、この照明光下で、体腔内を観察することができる。この体腔内の観察は観察部11により行うが、この観察部11の構成を図4乃至図7に基づいて説明する。
【0017】
まず、図4において、30は対物光学系を構成するレンズアセンブリであり、このレンズアセンブリ30は本体ブロック20に設けた観察部取付部11a(図3参照)に設けた対物光学系を構成するレンズアセンブリ30を有し、光学式の内視鏡にあっては、イメージガイドの入射端がこのレンズアセンブリ30における結像位置に臨ませるが、図示のものは電子内視鏡として構成したものが示されている。このレンズアセンブリ30は、対物レンズ群31を有し、この対物レンズ群31からの光路はプリズム32により90°曲げられるようになっている。そして、対物レンズ群31の結像位置には、プリズム32に接合させた固体撮像素子33aとその基板33bとからなる固体撮像素子アセンブリ33が配置されている。なお、光学式内視鏡にあっては、固体撮像素子アセンブリ33に代えてイメージガイドが設けられる。また、固体撮像素子アセンブリ33の方向によっては、必ずしもプリズム32は設けなくても良い。また、対物レンズ群31とプリズム32との間には所望の特性を有するフィルタ34が設けられ、さらにこれらに加えて、絞り(図示せず)等が設けられる。
【0018】
図5及び図6からも明らかなように、対物レンズ群31を構成する一部(1個または複数個)のレンズ31aは、光軸方向に移動可能な可動レンズで、残りのレンズ31bは固定レンズとなっている。固定レンズ31bは固定レンズ枠を構成するレンズ支持枠35に固定的に装着され、このレンズ支持枠35はプリズム32の表面に接合されている。また、可動レンズ31aは可動レンズ枠36に装着されて、この可動レンズ枠36をレンズ支持枠35の内面に沿って摺動させることによって、可動レンズ31aが光軸方向に移動することになる。
【0019】
可動レンズ31aと固定レンズ31bとの光軸を正確に一致させるために、可動レンズ31aを設けた可動レンズ枠36はレンズ支持枠35内において、光軸方向には移動可能で、それ以外の方向、つまり光軸と直交する方向及び倒れ方向には固定的に保持されている。しかも、光軸方向に移動する際の摺動抵抗を最小限に抑制するために、可動レンズ枠36の外周面の少なくとも2箇所に摺接面部36aが形成されて、この摺接面部36aだけをレンズ支持枠35の内面に当接させることによって、可動レンズ枠36とレンズ支持枠35との間の接触面積を少なくしている。而して、図示のものにあっては、接触面部36aは2箇所設けられ、それらは相互に180°の位置関係にあり、しかも円周方向に所定の幅を持っている。また、可動レンズ枠36にはアーム部37が連設されており、このアーム部37はレンズ支持枠35に光軸方向に向けて設けたスリット35aを介して外部に導出され、その先端部にはナット部38が連設されている。ここで、アーム部37の幅方向の寸法はスリット35aの溝幅とほぼ一致しており、これにより可動レンズ枠36の回転方向の動きが規制される。
【0020】
以上の構成により、可動レンズ枠36は光軸方向以外の動きがほぼ完全に規制される。そして、このナット部38を光軸と平行な方向に移動させることによって、可動レンズ枠36を光軸方向に移動することになる。このように、可動レンズ31aを光軸方向に移動可能としたのは、観察深度、結像倍率、視野角等のうちの少なくとも1つを可変にするためのものである。
【0021】
可動レンズ31aは本体操作部2側での遠隔操作により移動されるようになっている。このために、レンズ支持枠35には概略筒状に形成した軸支部材39が連設され、この軸支部材39に可動レンズ枠36の駆動手段が保持される支持部として機能する。駆動手段は、アーム部37の先端に連設したナット部38と、ねじ軸40とを備え、さらにこのねじ軸40を回転駆動するための制御ケーブル41とから構成される。ねじ軸40はねじ杆部40aと回転軸部40bとからなり、回転軸部40bは軸支部材39に穿設した挿通孔39aに回転自在で軸線方向に移動不能に挿嵌されている。また、ねじ杆部40aは軸支部材39から所定の長さ前方に向けて所定の長さ突出しており、ナット部38はこのねじ杆部40aの突出部分に螺合されている。
【0022】
制御ケーブル41は、可撓性を有するスリーブ42内に2重の密着コイルからなるフレキシブルシャフト43を挿通させたものから構成される。フレキシブルシャフト43の先端は連結部材44によりねじ軸40に連結され、またスリーブ42の先端は接続リング45で軸支部材39に固定される。従って、フレキシブルシャフト43の基端部をスリーブ42内で軸回りに回転させると、その回転がねじ軸40にまで伝達されて、このねじ軸40が回転することにより、ナット部38及びそれに連結した可動レンズ枠36が移動する。そして、ねじ杆部40aには、ナット部38の移動ストローク範囲を規制するために、ねじ杆部40aには、その先端部にストッパ部材46が螺挿されると共に、基端側にはストッパ段差40cが設けられている。従って、ナット部38はストッパ段差40cに当接する図4の前進位置と、ストッパ部材46に当接する図7の後退位置との変位可能となっている。これによって、対物レンズ群31の焦点深度や結像倍率、さらには視野角を変化させることができる。例えば、可動レンズ31aを装着した可動レンズ31aは、それに連設したナット部38がストッパ段差40cと当接する位置にすると、結像倍率が小さくなり、ストッパ部材46に当接する位置に配置すると、結像倍率が大きくなると共に視野角が狭くなるようになる。しかも、可動レンズ31aのこれら各位置での焦点深度も変化する。
【0023】
制御ケーブル41は、挿入部3から本体操作部2内に延在されており、そのフレキシブルシャフト43の基端部は回転軸47に連結され、またスリーブ42の基端部は本体操作部2のケーシング等に固定的に保持される。回転軸47には従動ギア48が連結して設けられ、この従動ギア48にはモータ49の出力軸に設けた駆動ギア50と噛合しており、モータ49により駆動ギア50を回転駆動すると、従動ギア48がそれに追従して回転することになる結果、回転軸47及びそれに連結したフレキシブルシャフト43が軸回りに回転して、このフレキシブルシャフト43に連結したねじ軸40が遠隔操作により回転駆動されて、可動レンズ31aが光軸方向に移動することになる。そして、このモータ49の作動を制御するために、本体操作部2には制御ボタン5が設けられ、この制御ボタン5を押動することにより、モータ49のON,OFF制御が行われる。
【0024】
以上のことから、対物レンズ群31を構成する可動レンズ31aの駆動機構は、制御ケーブル41と、この制御ケーブル41のフレキシブルシャフト43に連結して設けたねじ軸40と、可動レンズ31aに連結して設けられ、ねじ軸40と螺合するナット部38とから構成される。フレキシブルシャフト43を回転させると、その回転がねじ軸40に伝達され、このねじ軸40が回転することによりナット部38が軸線方向に移動する。従って、ねじ軸40とナット部38とは回転運動を直進運動に変換する手段が構成される。
【0025】
このように、制御ケーブル41を操作して軸40を回転させることにより可動レンズ31aが移動するが、この可動レンズ31aは常に対物レンズ群31全体の光軸に沿って、つまり固定レンズ31bと光軸が一致した状態を保つようにしなければならない。可動レンズ枠36の摺動面部36aをレンズ支持枠35の内面に沿って摺動させるのはこのためであり、従って2箇所設けられる摺動面部36aは共にレンズ支持枠35に対して実質的に面接触状態とする。また、可動レンズ31aが移動中にみだりに回転方向に変位しないように保持する必要もあり、このためにアーム部37は、その幅方向において、つまり回転方向において、レンズ支持枠35のスリット35aに対してほぼ隙間のない状態にして挿通されている。その結果、可動レンズ31aは極めて正確に位置決めされ、光軸方向以外の動きはほぼ完全に規制される。
【0026】
一方、可動レンズ31aの駆動力は、可動レンズ枠36から延在させた1本のアーム部37に連設して設けたナット部38に作用する、所謂片持ち状態になっている。前述したように、可動レンズ枠36は光軸以外の動きが規制されているので、その駆動側であるナット部38とねじ軸40との間のねじ嵌合部分に多少のがた、つまりバックラッシュを持たせることにより、加工誤差,組み付け誤差等をこのねじ嵌合部側で吸収するようにしている。しかも、ナット部38とねじ軸40との間の軸線にずれを最小限に抑制するために、ねじ嵌合部分の長さを長くすることによって、可動レンズ枠36の移動時の摺動抵抗等によりナット部38の動きに対して追従の遅れに起因する可動レンズ枠36に倒れ方向の力が生じないように規制する。
【0027】
ナット部38は可動レンズ枠36に連設されるが、この可動レンズ枠36の光軸方向の寸法、即ち幅寸法は、それに装着される可動レンズ31aの厚みやレンズ支持枠35の長さ寸法等に規制され、この可動レンズ枠36の幅寸法を無闇に大きくすることはできない。このために、可動レンズ枠36の円滑な動きを確保するためには、ナット部38とねじ軸40とのねじ嵌合部分の長さは、この可動レンズ枠36の幅方向の寸法程度では不足する。このために、可動レンズ枠36におけるアーム部37に連設したナット部38に張り出し部38aを設けて、可動レンズ枠36及びアーム部37の幅寸法より大きくする。ここで、この張り出し部38aを含めたナット部38の全長はは長ければ長いほど良く、好ましくはねじ軸40の外径の2倍以上とする。従って、ねじ軸40の全長としては、ナット部38の全長とその移動ストローク分との合計の長さとなり、このねじ軸40の全長も長くなる。
【0028】
ところで、軸支部材39はレンズ支持枠35と一体に設けたものであり、このレンズ支持枠35はプリズム32に接合されていることから、その基端部、つまりアングル部3b側の端面位置はこのプリズム32に規制される(なお、プリズムを設けない場合であっても、レンズ支持枠は固体撮像素子アセンブリに接合されるので同様のことが言える)。また、軸支部材39に作用する外力はレンズ支持枠35を介して先端部本体3aを構成する本体ブロック20に受承されることから、軸支部材39とレンズ支持枠35との間の連設部の厚みをあまり薄くできない。従って、軸支部材39の先端面の位置が定まり、それより後方に配置することができない。そこで、ねじ軸40が先端側に大きく突出するのを防止するために、ナット部38の張り出し部38aはアングル部3b側に向くようにしてねじ軸40に螺合される。しかも、ねじ軸40におけるねじ杆部40aの基端側の部位は、軸支部材39内にまで入り込むようになっており、このために軸支部材39には回転軸部40bが位置する挿通孔39aに連設して、この挿通孔39aより大径のねじ杆部40aが収容可能な収容部39bが形成されている。この収容部39bの長さは、ナット部38における張り出し部38aの長さ寸法と同じか、それより僅かに短いものとしている。
【0029】
従って、軸支部材39には、このナット部38における張り出し部38aを収容させる長さ相当する分だけ長尺化し、かつこの長尺化した部分はアングル部3b側に向けて延出されることになる。そして、軸支部材39は硬質部材であり、従って挿入部3における先端の硬質部分の内部に配置する必要がある。ここで、挿入部3の先端においては、先端部本体3aに加えて、アングル部3bを構成する先端リング23aと、その次のアングルリング23とを連結する枢着ピン24の位置までは外力等により曲がらない硬質部分となる。また、観察部10を構成する固体撮像素子ユニット33は硬質の部材であり、この固体撮像素子ユニット33を保護するために、その基板33bの基端部までの部位は硬質部分内に位置していなければならない。この基板33bの端部は、レンズ支持枠35のプリズム32への接合部よりかなり後方に位置している。従って、レンズ支持枠35の基端部から前述した硬質部分の端部まではかなりの距離がある。従って、軸支部材39をアングル部3b側に延在させて、この基板33bの端部位置まで延在させることは可能であり、従ってねじ軸40における回転軸部40bとの嵌合長にもよるが、前述したアングル部3b内の硬質部分のスペースを有効に活用することによって、軸支部材39をレンズ支持枠35との連結強度を保った上で、ナット部38に張り出し部38aを設けた分だけ、この軸支部材39を長尺化することは可能である。
【0030】
このように、ナット部38におけるねじ軸40へのねじ嵌合部分の長さを長くすることによって、ねじ軸40を回転させた時に、ナット部38の移動の直進性が確保されるようになり、可動レンズ枠36を円滑に変位する。従って、制御ケーブル41のフレキシブルシャフト42をモータ49の作動により軸回りに回転させることによって、可動レンズ31aを図4に示した前進位置と、図7に示した後退位置とに変位させる操作を円滑かつ確実に行うことができ、可動レンズ枠36のレンズ支持枠35に対する摺動抵抗が異常に高くなったり、ロックしたりするおそれはない。
【0031】
しかも、可動レンズ31aの後退位置においては、長尺化したナット部38の張り出し部38aのほぼ全体または大半が収容部39bの内部に入り込み、軸支部材39の端面とナット部38に連設したアーム部37の端面とがほぼ一致する位置にまで配置されるから、ねじ軸40を先端側に大きく突出させる必要はない。また、軸支部材39に収容部39bを設けたことにより軸支部材39が長尺化するが、この軸支部材39をアングル部3bの領域であるが、なお硬質部分の内部に延在させている。従って、挿入部3における先端の硬質部分の長さを格別長くする必要がなくなる結果、挿入部3を体腔内に挿入する際における挿入操作性が悪化したり、患者に苦痛を強いる等のおそれもない。
【0032】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、制御ケーブルによりねじ軸を回転させた時におけるナット部の移動の直進性が確保されて、円滑かつ確実に可動レンズを光軸方向に移動させることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示す内視鏡の概略構成図である。
【図2】図1の内視鏡の挿入部の先端面を示す外観図である。
【図3】挿入部の先端近傍の縦断面図である。
【図4】観察部と、その可動レンズの駆動機構を示す縦断面図である。
【図5】レンズアセンブリの分解斜視図である。
【図6】レンズアセンブリの組み立て状態における斜視図である。
【図7】可動レンズを前進させた状態を示す図4と同様の断面図である。
【符号の説明】
1 内視鏡 2 本体操作部
3 挿入部 3a 先端部本体
3b アングル部 3c 軟性部
10 照明部 11 観察部
12 処置具導出部 20 先端ブロック
30 レンズアセンブリ 31 対物レンズ群
35 レンズ支持枠 36 可動レンズ枠
36a 摺動面部 37 アーム部
38 ナット部 38a 張り出し部
39 軸支部材 39a 挿通孔
39b 収容部 40 ねじ軸
40a ねじ杆部 40b 回転軸部
41 制御ケーブル
Claims (3)
- レンズ支持枠内に装着され、このレンズ支持枠の内面に対して摺動する可動レンズ枠に装着した少なくとも1個の可動レンズを有する対物光学系を設けた観察部を挿入部の先端部本体に配置し、この可動レンズ枠にねじ軸に螺合させたナット部を連設し、このねじ軸を制御ケーブルにより遠隔操作で回転させることにより、前記可動レンズを光軸方向に移動可能とした内視鏡において、
前記ねじ軸は、ねじ杆部と回転軸部とを連設したもので構成し、
また前記レンズ支持枠と一体に支持部を設けて、この支持部に前記回転軸部を軸線方向には移動不能で、回転自在に挿通させて設けて、前記ねじ杆部は前記挿入部の先端方向に延在させ、
かつ前記ねじ杆部に螺合させた前記ナット部を前記可動レンズ枠の端面から前記挿入部の基端側に向けて所定長さ張り出すように延在させて設け、
前記支持部には前記ナット部の延在部分の少なくとも一部分を収容させる収容部を設け、前記ねじ軸はこの収容部の内部の位置から前記ねじ杆部とする
構成としたことを特徴とする対物レンズ移動機構付き内視鏡。 - 前記可動レンズ枠と前記ナット部との間にアーム部が連設され、また前記レンズ支持枠に前記アームを挿通させるスリットが光軸方向に向けて形成され、前記アーム部はこのスリットを介して前記レンズ枠から導出されており、前記スリットにより前記可動レンズ枠の回転方向の動きを規制する構成としたことを特徴とする請求項1記載の対物レンズ移動機構付き内視鏡。
- 前記収容部の長さは、前記ナット部の張り出した部分と同じかまたはそれより僅かに短い寸法としたことを特徴とする請求項1記載の対物レンズ移動機構付き内視鏡。
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