JP3572975B2 - 対物レンズ移動機構付き内視鏡 - Google Patents

対物レンズ移動機構付き内視鏡 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用等として用いられる内視鏡の挿入部に設けられ、観察部を構成する対物光学系を構成し、観察深度、結像倍率、視野角等のうちの少なくとも1つを可変にするために、対物光学系を構成する少なくとも1個のレンズを遠隔操作により光軸方向に移動させるようにした対物レンズ移動機構付き内視鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医療用等として用いられる内視鏡は、一般に、術者が手で把持して操作する本体操作部に体腔内への挿入部及び光源装置等に着脱可能に接続されるユニバーサルコードを連設して設けることにより大略構成される。挿入部は、その構造及び機能上、先端側から先端部本体,アングル部及び軟性部で構成され、軟性部は本体操作部への連設部側から大半の長さを有するもので、挿入経路に沿って任意の方向に曲がる構造となっている。先端部本体には、その先端面に照明部,観察部等が設けられると共に、鉗子等の処置具を導出させる処置具導出部が開口しており、アングル部は、先端部本体を任意の方向に向けるために、本体操作部側からの遠隔操作で湾曲させることができるようになっている。
【0003】
以上のように、先端部本体には少なくとも照明部と観察部とが設けられるが、照明部には光学繊維束からなるライトガイドの出射端が臨んでおり、このライトガイドは挿入部から本体操作部を経てユニバーサルコード内にまで延在される。また、観察部には対物光学系が装着されるが、電子内視鏡として構成した場合には、この対物光学系における結像位置に固体撮像素子が配置される。ここで、観察部は、通常、先端部本体の縦断面におけるほぼ中心位置に配置され、照明部はこの観察部に近接した位置に1乃至複数箇所設けられる。これによって、挿入部の中心位置に観察視野が形成され、またこの観察視野を中心とした視野範囲の全体に照明光が照射される。とりわけ、挿入部の先端にフードを装着した時に、観察視野がこのフードによりけられるのを最小限に抑制される。
【0004】
観察部において、固体撮像素子を設ける場合には、この固体撮像素子を搭載した基板からは信号ケーブルが引き出されるが、基板は挿入部の中心位置近傍に設けられる関係から、信号ケーブルは少なくとも先端部本体からアングル部にかけての部位はほぼ中心位置を通ることになる。また、対物光学系にプリズムを組み込んで、その光軸を90°曲げる構成としたものもあり、この場合には固体撮像素子及びその基板は挿入部の中心からずれた位置に配置され、従って信号ケーブルの基板からの引き出し位置は挿入部の中心から離れるものの、アングル部における上下方向の湾曲中心線上乃至その近傍に配置されるのが一般的である。さらに、イメージガイドを用いた光学式の内視鏡にあっては、対物光学系の光軸方向にイメージガイドが延在されることから、このイメージガイドは少なくともアングル部の先端部分では挿入部の中心乃至その近傍位置に配置される。
【0005】
観察部に設けられる対物光学系としては対物レンズ群を備えているが、この対物レンズ群は複数枚のレンズで構成される。観察部位や治療の目的等によっては観察対象部に対する焦点深度や、結像倍率、さらに視野角等を変化させるようにするのが望ましい。そこで、対物レンズ群のうちの1乃至複数枚のレンズを光軸方向に移動可能な可動レンズとなし、この可動レンズを移動させることにより、焦点深度、結像倍率、視野角等を調整できるように構成したものは従来から知られている。このために、固定的に保持されるレンズは固定レンズ枠に設け、また可動レンズを可動レンズ枠に装着して、この可動レンズ枠を固定レンズ枠内に配置して、この固定レンズ枠をガイドとして可動レンズ枠を光軸方向に移動させるように構成する。
【0006】
可動レンズを光軸方向に移動させるための駆動手段としては、例えば圧電素子や形状記憶合金、さらには人工筋肉等を用いることが提案されているが、通常は制御ケーブルを用い、この制御ケーブルの先端を可動レンズに連結し、かつその基端部を本体操作部内にまで延在させるようになし、この制御ケーブルを遠隔操作により可動レンズを光軸方向に移動させるように構成される。そして、制御ケーブルの具体的な構成としては、可撓性のあるスリーブ内に伝達部材を挿通させたものとするが、伝達部材としては、押し引き操作用のワイヤか、または回転駆動用のフレキシブルシャフトが用いられる。
【0007】
伝達部材としてワイヤを用いる場合には、このワイヤの先端を可動レンズ枠に直結して、このワイヤを押し引きして可動レンズを移動させる。また、フレキシブルシャフトを用いる場合には、このフレキシブルシャフトの先端にねじ軸を連結し、また可動レンズ枠にこのねじ軸を螺挿するナットを設けて、フレキシブルシャフトの回転を可動レンズの直進動作に変換する。伝達部材としてワイヤを用いると、制御ケーブルの外径を細くできるが、駆動は一方向、つまりワイヤを引っ張る方向にしか作用させることができず、従って可動レンズを前進させる方向にはばね等の付勢手段を作用させなければならない。これに対して、フレキシブルシャフトは金属線材を密着螺旋状に巻回した密着コイルで構成され、正逆方向に回転させる場合には、コイルを内外2重に形成するのが一般的である。フレキシブルシャフトをスリーブ内で軸回りに回転させると、その回転力が確実に先端にまで伝達され、可動レンズを前進位置と後退位置とに往復変位させることができ、また回転中にはフレキシブルシャフトには伸び縮みする方向に力が作用しないので、作動が安定する等の見地から、フレキシブルシャフトの方が制御性に優れている。ただし、フレキシブルシャフトを用いると、制御ケーブルが多少太径化すると共に曲げ方向においてはワイヤを用いる場合より多少硬くなるのは否めない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
いずれにしろ、制御ケーブルの先端は可動レンズ枠に連結されるが、この制御ケーブルは挿入部内から本体操作部にまで延在される。この制御ケーブルが連結される可動レンズ枠は固体撮像素子等と共に観察部を構成するから、制御ケーブルは固体撮像素子から引き出された信号ケーブル(またはイメージガイド)に近接した位置に配置される。従って、これら制御ケーブルと信号ケーブルとが相互に干渉しないように引き出さなければならない。これらはいずれも曲げ方向に可撓性があり、挿入部におけるアングル部の基端側から軟性部にかけての部位は任意の方向に向けることができるので、配設スペースを確保する上では格別困難ではないが、アングル部と先端部本体との連設部の近傍位置では観察部の位置に規制されることから、相互に近接した位置から引き出されることになる。
【0009】
アングル部は遠隔操作で上下及び左右方向に湾曲できるようになっており、制御ケーブルと信号ケーブルとが近接していると、この湾曲操作時にそれらが当接する可能性がある。制御ケーブルと信号ケーブルとにおける曲げ方向の硬さを比較すると、通常は制御ケーブルの方が硬く、湾曲させた時に信号ケーブルは湾曲に対して容易に曲がるものの、制御ケーブルの曲げに対する抵抗により制御ケーブルが信号ケーブルに圧接されることになる。その結果、信号ケーブルを構成する配線が断線する可能性がより高くなる。しかも、アングル部の上下及び左右の湾曲方向において、特に上下方向の湾曲は180°乃至それ以上というように大きく湾曲することから、上下方向に制御ケーブルと信号ケーブルとが並んでいると、相互に極めて大きな圧迫力が作用することになる。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、制御ケーブルを固体撮像素子から引き出される信号ケーブル等と干渉したり圧迫し合うようなことがなく、その配線等の脆弱部材を有効に保護できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、固定レンズ枠に装着した固定レンズと、この固定レンズ枠の内面に対して摺動する可動レンズ枠に装着した少なくとも1個の可動レンズとを有する対物光学系を設け、この可動レンズ枠にねじ軸に螺合させたナット部を連設し、このねじ軸を制御ケーブルにより遠隔操作で回転させることにより、前記可動レンズを光軸方向に移動可能とした観察部をアングル部に連設した先端部本体に設けた内視鏡において、前記固定レンズ枠に支持部を一体に設けて、この支持部にねじ軸を回転自在で軸線方向には移動不能に挿通させて設け、かつこれら固定レンズ枠と支持部との間及び前記可動レンズ枠と前記ナット部との間にはそれぞれアーム部を連設し、このアーム部の延在方向を前記アングル部の上下方向の湾曲中心線に対して所定角度だけオフセットさせる構成としたことをその特徴とするものである。
【0012】
ここで、両アーム部をアングル部の上下方向及び左右方向の湾曲中心線に対してほぼ等しい角度だけオフセットさせる構成とすると、上下及び左右のいずれの方向に湾曲操作しても、信号ケーブルと駆動ケーブルとが圧迫し合うのを防止できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
そこで、以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明においては、固体撮像素子を用いた電子内視鏡として構成し、かつ対物光学系の光軸をプリズムで90°曲げるようにしたものとして説明するが、対物光学系の結像位置にイメージガイドを配置した光学式内視鏡にも適用でき、また固体撮像素子を用いたものであっても、プリズムを組み込まないタイプの電子内視鏡にも適用できるものである。
【0014】
まず、図1に内視鏡の全体の概略構成を示す。同図から明らかなように、内視鏡1は、本体操作部2に体腔内等への挿入部3を連設し、かつこの本体操作部2からユニバーサルコード4を引き出すことにより大略構成されるものである。本体操作部2に連設した挿入部3は、その機能及び構造上、先端側から順に、先端部本体3a,アングル部3b及び軟性部3cとに分かれている。
【0015】
先端部本体3aは、硬質の部材からなり、その先端面には、図2に示したように、照明部10,観察部11,処置具導出部12,洗浄ノズル13が設けられ、さらにジェット送水部14が開口している。なお、図示した照明部10としては、観察部11を囲むように3箇所設ける構成としているが、この照明部10は任意の数だけ設ければ良く、またジェット送水部14は必ずしも設ける必要はない。アングル部3bは、先端部本体3aを所望の方向に向けるべく、本体操作部2に設けたアングルノブ5により上下,左右の各方向に湾曲操作できるようになっている。さらに、軟性部3cは挿入部3の大半の長さを占めるもので、この軟性部3cは曲げ方向に可撓性があり、かつ耐潰性を有する構造となっており、従って挿入経路に沿って任意の方向に曲がることになる。
【0016】
図3に挿入部3の先端側の部分の断面を示す。この図から明らかなように、先端部本体3aは、例えば金属製の本体ブロック20を有し、この本体ブロック20には所要箇所に軸線方向に貫通する透孔が形成されている。そして、この本体ブロック20の先端面には絶縁キャップ21が装着されて、止めねじ22により本体ブロック20に固定されている。アングル部3bは、多数のアングルリング23を枢着ピン24により順次枢着した節輪構造となっており、アングルリング23からなる節輪構造体の外周には金属ネットとフッ素ゴム,EPDM,ウレタンゴム等からなる外皮層とを含むカバー部材25が設けられる。さらに、アングル部3bの内部から軟性部3cに向けて4本の操作ワイヤ26が延在されており、これら操作ワイヤ26は上下と、左右とでそれぞれ対をなし、上下の対の操作ワイヤの一方を引っ張り、他方を繰り出すと、アングル部3bは上下方向に湾曲し、また左右の対の操作ワイヤの一方を引っ張り、他方を繰り出すと、アングル部3bは左右方向に湾曲する。
【0017】
また、アングル部3bを構成する多数連結されたアングルリング23のうちの最先端に位置する先端リング23aは本体ブロック20に連結されている。従って、挿入部3においては、絶縁キャップ21の先端面から、アングル部3bのうちの先端リング23aとそれに枢着される他のアングルリング23との枢着部の位置までが硬質部分となっている。
【0018】
照明部10は、周知のように、ライトガイドに伝送される照明光を体腔内に向けて照射するものであり、この照明光下で、体腔内を観察することができる。この体腔内の観察は観察部11により行うが、この観察部11は挿入部3の先端部本体3aの先端面において、概略その中心位置に配置されている。これによって、挿入部3の中心位置が観察視野の中心とほぼ一致することなり、この挿入部3の体腔内への挿入操作等の点で有利であると共に、例えば先端部本体3aにフードを被着させた場合等においては、観察視野のけられが最小限に抑制される。このように、先端部本体3aの先端に設けた観察部11の構成について図4乃至図7に基づいて説明する。
【0019】
まず、図4において、30は対物光学系を構成するレンズアセンブリであり、このレンズアセンブリ30は本体ブロック20に設けた観察部取付部11a(図3参照)に設けた対物光学系を構成するレンズアセンブリ30を有し、このレンズアセンブリ30は対物レンズ群31を備えたものであり、この対物レンズ群31からの光路はプリズム32により90°下方に向けて曲げられるようになっている。そして、対物レンズ群31の結像位置にはプリズム32に接合させた固体撮像素子33aとその基板33bとからなる固体撮像素子アセンブリ33が配置されている。また、対物レンズ群31とプリズム32との間には所望の特性を有するフィルタ34が設けられ、さらにこれらに加えて絞り(図示せず)等が設けられる。
【0020】
図5及び図6からも明らかなように、対物レンズ群31を構成する一部(1個または複数個)のレンズ31aは、光軸方向に移動可能な可動レンズで、残りのレンズ31bは固定レンズとなっている。固定レンズ31bは固定レンズ枠を構成するレンズ支持枠35に固定的に装着され、このレンズ支持枠35はプリズム32の表面に接合されている。また、可動レンズ31aは可動レンズ枠36に装着されて、この可動レンズ枠36をレンズ支持枠35の内面に沿って摺動させることによって、可動レンズ31aが光軸方向に移動することになる。
【0021】
可動レンズ31aと固定レンズ31bとの光軸を正確に一致させるために、可動レンズ31aを設けた可動レンズ枠36はレンズ支持枠35内において、光軸方向には移動可能で、それ以外の方向、つまり光軸と直交する方向及び倒れ方向には固定的に保持されている。しかも、光軸方向に移動する際の摺動抵抗を最小限に抑制するために、可動レンズ枠36の外周面の少なくとも2箇所に摺接面部36aが形成されて、この摺接面部36aだけをレンズ支持枠35の内面に当接させることによって、可動レンズ枠36とレンズ支持枠35との間の接触面積を少なくしている。而して、図示のものにあっては、摺接面部36aは2箇所設けられ、それらは相互に180°の位置関係にあり、しかも円周方向に所定の幅を持っている。また、可動レンズ枠36にはアーム部37が連設されており、このアーム部37はレンズ支持枠35に光軸方向に向けて設けたスリット35aを介して外部に導出され、その先端部にはナット部38が連設されている。ここで、アーム部37の幅方向の寸法はスリット35aの溝幅とほぼ一致しており、これにより可動レンズ枠36の回転方向の動きが規制される。
【0022】
以上の構成により、可動レンズ枠36は光軸方向以外の動きがほぼ完全に規制される。そして、このナット部38を光軸と平行な方向に移動させることによって、可動レンズ枠36が光軸方向に移動することになる。このように、可動レンズ31aを光軸方向に移動可能としたのは、観察深度、結像倍率、視野角等のうちの少なくとも1つを可変にするためのものである。ここで、可動レンズ枠36は少なくともその両移動ストローク端位置で位置決めされるが、結像倍率等を任意に設定するために、その中間位置に配置することもできる。
【0023】
可動レンズ31aは本体操作部2側での遠隔操作により移動されるようになっている。このために、レンズ支持枠35には突出部35bが連設されており、この突出部35bには概略筒状に形成した軸支部材39が連設されており、この軸支部材39は可動レンズ枠36の駆動手段を保持する支持部として機能する。駆動手段は、アーム部37の先端に連設したナット部38と、ねじ軸40とを備え、さらにこのねじ軸40を回転駆動するための制御ケーブル41とから構成される。ねじ軸40はねじ杆部40aと回転軸部40bとからなり、回転軸部40bは軸支部材39に穿設した挿通孔39aに回転自在で軸線方向に移動不能に挿嵌されている。また、ねじ杆部40aは軸支部材39から所定の長さ前方に向けて所定の長さ突出しており、ナット部38はこのねじ杆部40aの突出部分に螺合されている。
【0024】
制御ケーブル41は、可撓性を有するスリーブ42内に2重の密着コイルからなるフレキシブルシャフト43を挿通させたものから構成される。フレキシブルシャフト43の先端は連結部材44によりねじ軸40に連結され、またスリーブ42の先端は接続リング45で軸支部材39に固定される。従って、フレキシブルシャフト43の基端部をスリーブ42内で軸回りに回転させると、その回転がねじ軸40にまで伝達されて、このねじ軸40が回転することにより、ナット部38及びそれに連結した可動レンズ枠36が移動する。そして、ナット部38の移動ストローク範囲を規制するために、ねじ杆部40aには、その先端部にストッパ部材46が螺挿されると共に、基端側にストッパ段差40cが設けられている。従って、ナット部38はストッパ段差40cに当接する図4の前進位置と、ストッパ部材46に当接する図6の後退位置との変位可能となっている。これによって、対物レンズ群31の焦点深度や結像倍率、さらには視野角を変化させることができる。例えば、可動レンズ31aを装着した可動レンズ31aは、それに連設したナット部38がストッパ段差40cと当接する図4の位置にすると、結像倍率が小さくなり、ストッパ部材46に当接する位置に図6の配置すると、結像倍率が大きくなると共に視野角が狭くなる。しかも、可動レンズ31aのこれら各位置での焦点深度も変化する。
【0025】
制御ケーブル41は、挿入部3から本体操作部2内に延在されており、そのフレキシブルシャフト43の基端部は回転軸47に連結され、またスリーブ42の基端部は本体操作部2のケーシング等に固定的に保持される。回転軸47には従動ギア48が連結して設けられ、この従動ギア48にはモータ49の出力軸に設けた駆動ギア50と噛合しており、モータ49により駆動ギア50を回転駆動すると、従動ギア48がそれに追従して回転することになる結果、回転軸47及びそれに連結したフレキシブルシャフト43が軸回りに回転して、このフレキシブルシャフト43に連結したねじ軸40が遠隔操作により回転駆動されて、可動レンズ31aが光軸方向に移動することになる。そして、このモータ49の作動を制御するために、本体操作部2にはトグルスイッチ5が設けられ、このトグルスイッチ5を操作することにより、モータ49のON,OFF制御が行われる。
【0026】
以上のことから、対物レンズ群31を構成する可動レンズ31aの駆動機構は、制御ケーブル41と、この制御ケーブル41のフレキシブルシャフト43に連結して設けたねじ軸40と、可動レンズ31aに連結して設けられ、ねじ軸40と螺合するナット部38とから構成される。フレキシブルシャフト43を回転させると、その回転がねじ軸40に伝達され、このねじ軸40が回転することによりナット部38が軸線方向に移動する。従って、ねじ軸40とナット部38とは回転運動を直進運動に変換する手段を構成する。
【0027】
このように、制御ケーブル41を操作してねじ軸40を回転させることにより可動レンズ31aを移動させるが、この可動レンズ31aは常に対物レンズ群31全体の光軸に沿って、つまり固定レンズ31bと光軸が一致した状態を保つようにしなければならない。可動レンズ枠36の摺接面部36aをレンズ支持枠35の内面に沿って摺動させるのはこのためであり、従って2箇所設けられる摺接面部36aは共にレンズ支持枠35に対して実質的に面接触状態とする。また、可動レンズ31aが移動中にみだりに回転方向に変位しないように保持する必要もあり、このためにアーム部37は、その幅方向において、つまり回転方向において、レンズ支持枠35のスリット35aに対してほぼ隙間のない状態にして挿通されている。その結果、可動レンズ31aは極めて正確に位置決めされ、光軸方向以外の動きはほぼ完全に規制される。
【0028】
ところで、可動レンズ31aの駆動力は、可動レンズ枠36から延在させた1本のアーム部37に連設して設けたナット部38に作用することになる。前述したように、可動レンズ枠36は光軸以外の動きが規制されているので、その駆動側であるナット部38とねじ軸40との間のねじ嵌合部分に多少のがた、つまりバックラッシュを持たせることにより、加工誤差,組み付け誤差等をこのねじ嵌合部側で吸収するようにしている。しかも、ナット部38とねじ軸40との間における軸線のずれを最小限に抑制するために、ねじ嵌合部分の長さを長くすることによって、可動レンズ枠36の移動時の摺動抵抗等によりナット部38の動きに対して追従の遅れに起因する可動レンズ枠36に倒れ方向の力が生じないように規制する。このために、可動レンズ枠36におけるアーム部37に連設したナット部38に張り出し部38aを設けて、ナット部38の全長を長くしている。また、この張り出し部38aの軸線方向の長さは可動レンズ31aが固定レンズ31bから離間した位置に配置した時に、ストッパ段差40cと当接することになり、従って可動レンズ31aの後退側の位置決め部としても機能する。そして、ねじ軸40におけるねじ杆部40aの基端側の部位は、この軸支部材39内にまで入り込むようになっており、このために軸支部材39には回転軸部40bが位置する挿通孔39aに連設して、この挿通孔39aより大径のねじ杆部40aが収容可能な収容部39bが形成されている。ただし、前述したバックラッシュによる軸線のずれが生じない場合等においては、必ずしもこのナット部38に張り出し部38aを連設する必要はない。
【0029】
軸支部材39は硬質部材であり、従って挿入部3における先端の硬質部分の内部に配置する必要がある。ここで、挿入部3の先端においては、先端部本体3aに加えて、アングル部3bを構成する先端リング23aと、その次のアングルリング23とを連結する枢着ピン24の位置までは外力等により曲がらない硬質部分である。また、観察部11を構成する固体撮像素子ユニット33は硬質の部材であり、この固体撮像素子ユニット33を保護するために、その基板33bの基端部までの部位は硬質部分内に位置していなければならない。この基板33bの端部は、レンズ支持枠35のプリズム32への接合部よりかなり後方に位置している。従って、レンズ支持枠35の基端部から前述した硬質部分の端部まではかなりの距離があり、軸支部材39をアングル部3b側に延在させて、この基板33bの端部位置まで延在させる。
【0030】
制御ケーブル41は、その先端が可動レンズ枠36の駆動手段としてのねじ軸40及びこのねじ軸40を支持する軸支部材39に連結されて、アングル部3b及び軟性部3cを経て本体操作部2内にまで延在されるが、この制御ケーブル41の先端部は概略固体撮像素子アセンブリ33の基端部近傍に配置されている。ここで、固体撮像素子アセンブリ33を構成する基板33bには多数の配線が接続されており、これらの配線は、基板33bからの引き出し部乃至その近傍位置ではシール材で固めた配線引き出し部51となっている。また、この配線引き出し部51から導出された各配線は薄膜状のテープまたはチューブ内に挿通させて1本化した信号ケーブル52となり、この信号ケーブル52は少なくともアングル部3b内では緩く結束されている。この結果、信号ケーブル52は可撓性が極めて良好になり、アングル部3bの湾曲動作に対する抵抗が小さくなる。
【0031】
信号ケーブル52は緩く結束されているので、その断面形状が大きくなり、また大きな圧迫力が作用すると、内部に挿通させた配線に断線が生じる可能性がある。一方、制御ケーブル41は、信号ケーブル52と同様に、観察部11から引き出されている。制御ケーブル41は、回転の伝達を正確に行うために、ある程度の剛性を有するものである。アングル部3b内で、これら制御ケーブル41と信号ケーブル52とが接近した位置に配置されていると、アングル部3bを湾曲操作した時に、制御ケーブル41と信号ケーブル52との曲げ方向における抵抗の差によって、その間に相対的な動きを生じることになり、制御ケーブル41と信号ケーブル52とが接触し、湾曲角度が大きくなればなるほど相互に圧接される。この時に生じる圧迫力に起因して、信号ケーブル52を構成する配線に断線が生じるおそれがある。そして、この圧迫を避けるか、または緩和するためには、両ケーブル41,52を相互に離間させる必要があるが、そうすると挿入部3の内部スペースを広くしなければならない。
【0032】
ところで、アングル部3bは上下及び左右に湾曲するようになっているが、観察視野の方向は、このアングル部3bの湾曲方向に依存する。図7に示したように、観察視野における上下方向は上下の操作ワイヤ26,26を結ぶ線Y−Yに沿う方向であり、この線はアングル部3bの上下方向の湾曲中心線である。また、左右方向は左右の操作ワイヤ26,26を結ぶ線X−Xに沿うものであり、この線はアングル部3bの左右方向のほぼ湾曲中心線となる。対物レンズ群31における光軸中心はプリズム32により90°曲げられるが、これにより光軸中心はほぼ上下方向の湾曲中心線Y−Y上で下方に向けられる。従って、固体撮像素子アセンブリ33における基板33bから引き出される信号ケーブル52は、少なくともアングル部3bの先端側においては、上下方向における湾曲中心線Y−Y上乃至その近傍に配置されることになる。
【0033】
以上のことから、レンズ支持枠35と軸支部材39とを連設するために、このレンズ支持枠35からの突出部35b及び可動レンズ枠36とナット部38とを結ぶアーム部37の軸線Aを、中心位置Cから上下方向の湾曲中心線Y−Yに対して所定角度θだけ傾けることによって、制御ケーブル41をこの湾曲中心線Y−Yに対して回転方向にオフセットさせる構成としている。このオフセット量は、軸線Aの長さとの関係で設定されるが、制御ケーブル41を上下方向の湾曲中心線Y−Yと平行な方向に投影させた時に、信号ケーブル52に対する重なり合う部分をできるだけ少なくし、望ましくは殆ど重なり合わないか、または全く重なり合わない位置となるように設定する。
【0034】
また、これと同時に、制御ケーブル41を左右方向の湾曲中心線X−Xと平行な方向に投影させても、それが信号ケーブル52にできるだけ重なり合わないようにする。ここで、図示したように、プリズム32を用いて光軸を曲げている場合には、左右方向では、制御ケーブル41の左右方向における投影部が信号ケーブル52と重なり合う可能性は小さいが、制御ケーブル41と信号ケーブル52との距離をできるだけ大きく取るという点では、制御ケーブル41が左右方向の湾曲中心線X−Xの近くにまで回転方向にオフセットさせないようにする。従って、この湾曲中心線X−Xを基準として、制御ケーブル41は、信号ケーブル52とは反対側の位置であって、湾曲中心線X−X及びY−Yに対してほぼ同じ量乃至それより湾曲中心線Y−Y方向に僅かに偏寄した位置にまでオフセットさせるのが最も望ましい。
【0035】
而して、プリズム32は先端部本体3aにおける縦断面方向においては、概略正方形または長方形の形状となっているが、その角隅部は割れや欠けを防止するために面取り部32aが設けられている。従って、制御ケーブル41をこの面取り部32aの近傍位置に配置することによって、制御ケーブル41を円滑に引き出すことができるようになる。
【0036】
以上のように構成することによって、アングル部3bを湾曲操作した時に、制御ケーブル41と信号ケーブル52とがアングル部3b内で相対的に動く際に、それらの曲げ方向における硬さの差に基づいて、相互に干渉する位置になることがなくなる。つまり、アングル部3bを上下方向に湾曲させた時に、信号ケーブル52は上下方向の湾曲中心線Y−Yに沿って上方または下方に変位するが、制御ケーブル41はこの位置から左右方向にオフセットしているので、その動きの方向としては、信号ケーブル52とほぼすれ違う方向に変位することになる。この結果、制御ケーブル41による信号ケーブル52の圧迫及びそれに起因して生じる信号ケーブル52を構成する配線の断線を確実に防止できる。また、アングル部3bを左右方向に湾曲させた場合も同様である。
【0037】
なお、前述した実施の形態においては、対物光学系にプリズムを組み込むようになし、また撮像手段として固体撮像素子を用いる構成としたが、プリズムを用いない場合、また対物光学系の結像位置にイメージガイドの入射端を臨ませる構成としたものにも適用することができる。この場合には、信号ケーブルやイメージガイドはアングル部においては概略その中心位置を通ることになるので、プリズムを用いて信号ケーブルの引き出し位置を上下方向の湾曲中心線Y−Y上において下方に変位させた場合と異なり、上下方向の湾曲中心線Y−Yに沿う方向と、左右方向の湾曲中心線X−Xに沿う方向とにおいて、制御ケーブルと信号ケーブルやイメージガイドとが干渉し合う可能性がそれだけ高くなるので、制御ケーブルを左右方向における湾曲中心線X−Xと平行な方向に投影されないように、つまり先端部本体の中心に対して斜め45°方向に延在させるのが望ましい。
【0038】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、制御ケーブルを固体撮像素子から引き出される信号ケーブル等と干渉したり圧迫し合うのを防止して、その配線等の脆弱部材を有効に保護できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示す内視鏡の概略構成図である。
【図2】図1の内視鏡の挿入部の先端面を示す外観図である。
【図3】挿入部の先端近傍の縦断面図である。
【図4】観察部と、その可動レンズの駆動機構を示す縦断面図である。
【図5】レンズアセンブリの分解斜視図である。
【図6】可動レンズを前進させた状態を示す図4と同様の断面図である。
【図7】挿入部における先端近傍部位の信号ケーブルと制御ケーブルとの位置関係を示す構成説明図である。
【符号の説明】
1 内視鏡 2 本体操作部
3 挿入部 3a 先端部本体
3b アングル部 3c 軟性部
10 照明部 11 観察部
12 処置具導出部 20 本体ブロック
30 レンズアセンブリ 31 対物レンズ群
35 レンズ支持枠 35a スリット
35b 突出部 36 可動レンズ枠
36a 摺接面部 37 アーム部
38 ナット部 38a 張り出し部
39 軸支部材 39a 挿通孔
39b 収容部 40 ねじ軸
40a ねじ杆部 40b 回転軸部
41 制御ケーブル 51 配線引き出し部
52 信号ケーブル

Claims (2)

  1. 固定レンズ枠に装着した固定レンズと、この固定レンズ枠の内面に対して摺動する可動レンズ枠に装着した少なくとも1個の可動レンズとを有する対物光学系を設け、この可動レンズ枠にねじ軸に螺合させたナット部を連設し、このねじ軸を制御ケーブルにより遠隔操作で回転させることにより、前記可動レンズを光軸方向に移動可能とした観察部をアングル部に連設した先端部本体に設けた内視鏡において、前記固定レンズ枠に支持部を一体に設けて、この支持部にねじ軸を回転自在で軸線方向には移動不能に挿通させて設け、かつこれら固定レンズ枠と支持部との間及び前記可動レンズ枠と前記ナット部との間にはそれぞれアーム部を連設し、このアーム部の延在方向を前記アングル部の上下方向の湾曲中心線に対して所定角度だけオフセットさせる構成としたことを特徴とする対物レンズ移動機構付き内視鏡。
  2. 前記両アーム部は、前記アングル部の上下方向及び左右方向の湾曲中心線に対してほぼ等しい角度だけオフセットさせる構成としたことを特徴とする請求項1記載の対物レンズ移動機構付き内視鏡。
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