JP4101531B2 - ３枚式スライドゲートの下プレート - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、３枚式スライドゲート（スライディング・ゲート）の下プレートに係り、特に、種類の異なる溶融金属の連々鋳に使用するため、プレート本体に溶湯鋳込み用孔と溶湯排出用孔の２つを有している３枚式スライドゲートの下プレートに関する。
【０００２】
【従来の技術】
３枚式スライドゲートは、連続鋳造のため、タンディッシュからモールドに供給される溶融金属の流量を制御するもので、タンディッシュの排出孔としての上ノズルに取り付けられる上プレートと、上プレートの下面に摺接して直線的に往復移動し、上プレートのノズル孔を開閉する中プレートと、ノズル孔を上プレートのノズル孔と同軸的に合わせて中プレートの下面に摺接される下プレートとから構成されており、下プレートの下面には、溶融金属をモールド内に導く浸漬ノズルが取り付けられるものである。
【０００３】
従来、３枚式スライドゲートの下プレートは、図４に示すように、中プレート（図示せず）の移動方向（図４においては左右方向）を長手方向とする矩形の保持枠３１内に、上記移動方向へ離隔して溶湯鋳込み用孔３２と、種類の異なる溶融金属を連々鋳すべく上プレートのノズル孔を閉鎖した際に中プレートのノズル孔内に残留されている溶融金属を排出するための溶湯排出用孔３３とを設けたほぼ矩形状のプレート本体３４が、その両端部における前記移動方向の両側面（図４においては左右両端部における上、下の両側面）に設けたほぼ４５°の角度のテーパー３５、換言すると、前記移動方向の寸法ａ′と前記移動方向と直交する方向の寸法ｂ′との比がほぼ１：１であるテーパー３５を、保持枠３１内の四隅に配置した片楔形の押さえ金具３６の傾斜面３７と当接して保持されているものである。
図４において３８は耐火物からなるプレート本体３４の外周に焼き嵌めした金属製のバンド、３９は溶湯鋳込み用孔３２側の押さえ金具３６を押し込むためのボルトである。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の３枚式スライドゲートの下プレートでは、その使用時（鋳込み中）に、図５に示すように、溶湯排出用孔３３側からこれと溶湯鋳込み用孔３２とを結ぶようにしてプレート本体３４に亀裂４０が発生し、かつ、拡大する不具合がある。
この亀裂４０の発生、拡大は、溶湯鋳込み用孔３２を溶融金属が通過することにより、プレート本体３４が膨張して熱応力が発生するが、この熱応力を解析したところ、図６に示すように、亀裂４０を拡大する方向（中プレートの移動方向と直交して互いに離反する方向）の引張り応力４１が溶湯鋳込み用孔３２と溶湯排出用孔３３との間のプレート本体３４において溶湯排出用孔３３の近傍で大きくなる。
このように、下プレートに亀裂が発生し、拡大すると、図７に示すように、下プレートＡと浸漬ノズルＢとの目地部Ｃが溶損され、漏湯Ｄが発生する不具合がある。
上記亀裂の拡大により漏湯に至るメカニズムは、先ず、下プレートＡの亀裂拡大につれて目地部Ｃの亀裂が拡大し、この目地部Ｃの亀裂拡大に伴いエアーの吸引が起こる。
次に、亀裂部位に沿って浸漬ノズルＢ（主にＡｌ₂Ｏ₃−Ｃ材質）の組織が酸化され、この酸化された組織に酸化された溶湯（ＦｅＯ）が接触して組織の溶損が進行する。
そして、目地部Ｃの損傷が進行して漏湯に至るものである。
【０００５】
そこで、本発明は、溶湯排出用孔と溶湯鋳込み用孔とを結ぶ亀裂の発生、拡大を抑制し得る３枚式スライドゲートの下プレートを提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の３枚式スライドゲートの下プレートは、中プレートの移動方向を長手方向とする矩形の保持枠内に、上記移動方向へ離隔して溶湯鋳込み用孔と溶湯排出用孔とを設けたプレート本体が、その両端部における前記移動方向の両側面に設けたテーパーを保持枠内の四隅に配置した片楔形の押さえ金具の傾斜面と当接して保持されている３枚式スライドゲートの下プレートにおいて、前記プレート本体の両側面における溶湯排出用孔側のテーパーが、前記移動方向と直交しかつ溶湯排出孔の内壁に接する２本の直線によって囲まれた領域と重畳し、又、溶湯排出用孔側の押さえ金具の傾斜面の少なくとも一部が上記領域におけるプレート本体のテーパーと当接して設けられていることを特徴とする。
前記溶湯排出用孔側における押さえ金具の傾斜面及びプレート本体のテーパーの前記移動方向の寸法と前記移動方向と直交する方向の寸法との比は、１：１〜５：１であることが好ましい。
【０００７】
上記３枚式スライドゲートの下プレートにおいては、溶湯の鋳込み時に、溶湯排出用孔と溶湯鋳込み用孔とを結ぶ亀裂を発生させ、かつ拡大させる方向（中プレートの移動方向と直交して互いに離反する方向）の引張り応力が働かない（認められない）一方、亀裂を打ち消す方向の圧縮応力が働く。
【０００８】
溶湯排出用孔側における押さえ金具の傾斜面及びプレート本体のテーパーの移動方向の寸法と移動方向と直交する方向の寸法との比が、１：１より移動方向の寸法が小さくなると、亀裂を拡大させるベクトルが働きやすい。又、５：１より移動方向の寸法が大きくなると、押さえ金具が使用中の熱応力等による楔効果でかみ込みが発生し、使用後に押さえ金具を外すとき、外ずれない場合が多くなる。
【０００９】
溶湯鋳込み用孔側における押さえ金具の傾斜面及びプレート本体の移動方向の寸法と移動方向と直交する方向の寸法との比は、１：１〜３：１が望ましい。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図１は本発明に係る３枚式スライドゲートの下プレートの実施の形態の一例を示す平面図である。
図中１は金属からなる矩形の保持枠で、この保持枠１は、中プレート（図示せず）の移動方向（図１においては左右方向）を長手方向としている。
保持枠１内には、前記移動方向へ適宜に離隔して溶湯鋳込み用孔２と、種類の異なる溶融金属を連々鋳すべく上プレート（図示せず）のノズル孔を閉鎖した際に中プレートのノズル孔内に残留されている溶融金属を排出するための溶湯排出用孔３とを設けた耐火物からなるほぼ矩形状のプレート本体４が、その両端部における前記移動方向の両側面（図１においては左右両端部における上、下の両側面）に設けたテーパー５，６を、保持枠１内の四隅に配置した片楔形の押さえ金具７，８の傾斜面９，１０と当接して保持されている。
【００１１】
プレート本体４における溶湯排出用孔３側のテーパー６は、溶湯排出用孔３の内壁に接しかつ前記移動方向と直交する２本の直線Ｌ₁，Ｌ₂によって囲まれた領域Ａ１ と完全に重畳している一方、溶湯排出用孔３側の押さえ金具８の傾斜面１０は、上記領域Ａ₁におけるプレート本体４のテーパー６と当接して設けられている。そして、溶湯排出用孔３側における押え金具８の傾斜面１０及びプレート本体４のテーパー６の前記移動方向の寸法Ａ（図２参照）と前記移動方向と直交する方向の寸法Ｂとの比は、１：１〜５：１となるように設けられている。
【００１２】
他方、プレート本体４における溶湯鋳込み用孔２側のテーパー５は、溶湯鋳込み用孔２の内壁に接しかつ前記移動方向と直交する２本の直線ｌ₁，ｌ₂によって囲まれた領域ａ₁と一部が重畳している一方、溶湯鋳込み用孔２側の押さえ金具７の傾斜面９は、上記領域ａ₁におけるプレート本体４のテーパー５から外れて設けられている。
そして、溶湯鋳込み用孔２側における押さえ金具７の傾斜面９及びプレート本体４の前記移動方向の寸法ａと前記移動方向と直交する方法の寸法ｂとの比は、１：１〜３：１となるように設けられている。
【００１３】
図１において１１はプレート本４の外周に焼き嵌めした金属製のバンド、１２は溶湯鋳込み用孔２側の押さえ金具７を押し込むためのボルトである。
【００１４】
上記構成の３枚式スライドゲートの下プレートにおいては、溶湯の鋳込み時における熱応力のベクトル解析をしたところ、図３に示すように、亀裂を打ち消す方向の圧縮応力１４が働く。
【００１５】
ここで、上記構成の下プレートを有する３枚式スライドゲートを実機使用し、約７時間４０分かけて４００トンの溶鋼を連続鋳造した結果、従来の下プレートに比べて溶湯排出用孔と溶湯鋳造用孔とを結ぶ亀裂の発生を抑制できると共に、亀裂の拡大を従来の６０％に縮少することができ、亀裂の伸長、拡大による浸漬ノズルとの目地部の溶損、漏湯の発生を回避することができた。
【００１６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の３枚式スライドゲートの下プレートによれば、溶湯の鋳込み時に、溶湯排出用孔と溶湯鋳込み用孔とを結ぶ亀裂を発生させ、かつ拡大させる方向の引張り応力が働かない一方、亀裂を打ち消す方向の圧縮応力が働くので、従来に比べて溶湯排出用孔と溶湯鋳込み用孔とを結ぶ亀裂の発生、拡大を格段に抑制することができ、ひいては漏湯の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る３枚式スライドゲートの下プレートの実施の形態の一例を示す平面図である。
【図２】図１の下プレートのプレート本体の平面図である。
【図３】図１の下プレートの使用時に働く圧縮応力の説明図である。
【図４】従来の３枚式スライドゲートの下プレートの平面図である。
【図５】図４の下プレートの使用に伴って生ずる亀裂の説明図である。
【図６】図４の下プレートの使用時に働く引張り応力の説明図である。
【図７】図４の下プレートの使用に伴って生ずる漏湯の説明図である。
【符号の説明】
１ 保持枠
２ 溶湯鋳込み用孔
３ 溶湯排出用孔
４ プレート本体
５ テーパー
６ テーパー
７ 押さえ金具
８ 押さえ金具
９ 傾斜面
１０ 傾斜面

Claims (2)

1. 中プレートの移動方向を長手方向とする矩形の保持枠内に、上記移動方向へ離隔して溶湯鋳込み用孔と溶湯排出用孔とを設けたプレート本体が、その両端部における前記移動方向の両側面に設けたテーパーを保持枠内の四隅に配置した片楔形の押さえ金具の傾斜面と当接して保持されている３枚式スライドゲートの下プレートにおいて、前記プレート本体の両側面における溶湯排出用孔側のテーパーが、前記移動方向と直交しかつ溶湯排出孔の内壁に接する２本の直線によって囲まれた領域と重畳し、又、溶湯排出用孔側の押さえ金具の傾斜面の少なくとも一部が上記領域におけるプレート本体のテーパーと当接して設けられていることを特徴とする３枚式スライドゲートの下プレート。
2. 前記溶湯排出用孔側における押さえ金具の傾斜面及びプレート本体のテーパーの前記移動方向の寸法と前記移動方向と直交する方向の寸法との比が、１：１〜５：１であることを特徴とする請求項１記載の３枚式スライドゲートの下プレート。

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