JP4101364B2 - コーティングフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い酸素ガスバリア性を付与することが可能なコーティングフィルム、およびその製造方法に関する。本発明は、延伸フィルムの製造工程中で塗布処理することができる製造方法たる、いわゆる「インライン・コーティング法」、および該コーティング法により得られるフィルムに、特に好適に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
近年、食生活の高度化・食品の多様化等に起因して、食品等の被包装物を、より長期にわたって変質や腐敗等を防止しつつ保存することの必要性が、年々高まりつつある。このような状況に伴い、包装材料に使用されるべきプラスチックフィルムに対しても、従来と比べて格段に高いガスバリア性が要求されるようになって来ている。
【0003】
従来より、熱可塑性樹脂の溶融押出し→冷却(未延伸フィルム)→周速差をつけた加熱ロール群による縦方向延伸(一軸延伸フィルム)→従来の水系材料のコート→乾燥→テンター(tenter;幅出し機)による横方向延伸(二軸延伸コーティングフィルム)→熱固定」といった、いわゆる、インライン・コーティング法によりコーティングフィルムを製造することが行われて来た。
【0004】
このインライン・コーティング法によれば、生産コストの上昇を抑制できるという利点がある。しかしながら、この方法により得られたフイルムは、一般に、極めて耐水性が悪く、コート層が剥離しやすいという欠点を有している。加えて、該フィルムを食品包装用として用いる場合、コート層の吸水によるバリア性低下のため、該フィルムからなる包装品のボイル処理やレトルト処理を行なうことは事実上不可能である。特公平4−22692号(特開昭60−19522号)には、耐水性が改善されたインライン・コーティングによるフィルムが開示されているが、フィルムに高い酸素ガスバリア性を付与させたものは得られていなかった。
【0005】
これに対して、近年、プラスチックフィルムにカスバリア性を付与する場合には、「コーティング工程→熱処理工程」といった別個の工程を経る方法(いわゆる、オフライン・コーティング法)で、該フィルム上にガスバリア性の樹脂層を形成することが行われるようになって来た。典型的には、ポリエチレンテレフタレートフィルム等からなる二軸延伸フィルム上に、コーティングによりポリビニルアルコール(PVA)の水溶液等を塗布し、次いで熱処理することにより、ガスバリア性の塗膜を形成することが行われている(特開平6-220221号、特開平7-102083号、特開平7-165942号、特開平8-41218号、等)。
【0006】
しかしながら、このオフライン・コーティング法により耐水性を改善し酸素ガスバリア性フィルムを製造する場合は、生産性を向上させることが容易ではないため、生産コストが高くなるという欠点がある。加えて、これらの公報に開示されている耐水性の改善された酸素ガスバリア性フィルムを製造する場合には、好適な耐水性および酸素ガスバリア性を共に達成可能な延伸温度や延伸速度の許容範囲が狭く、安定した製造条件を見出すことは困難である。
【発明が解決しようとする課題】
前記したオフライン・コーティング法は、インライン・コーティング法と比較して、一般に、▲1▼乾燥皮膜厚さが0.5μm以下での安定した薄膜塗布が困難である、▲2▼乾燥・熱固定の工程で高温下の処理が困難であるため、塗膜と基材との接着性が劣る、▲3▼乾燥時にフィルムの平面性が損なわれる、▲4▼工程数が多いため、汚れの混入する確率が高い、▲5▼2工程以上の工程を経るため工業的な生産性(経済性)に劣る、等の欠点がある。すなわち、従来のガスバリア性フィルム製造方法(オフライン・コーティング法)を用いた場合には、製造ステップがやや複雑となって生産性向上に難点があり、したがって製造されたフィルムの製造コストが高くなる傾向があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消したコーティングフィルム、およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の目的は、耐水性およびガスバリア性を実質的に維持しつつ、しかも生産性よく製造可能なコーティングフィルム、およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、被コーティングフィルムと、該フィルム上に形成されたコート層(少なくともポリマーと、該ポリマーに塑性を与えるための可塑剤とを含む)とからなるコーティング・フィルムを、該可塑剤を上記コート層中に残存させた状態で延伸することが、上記目的の達成に極めて効果的なことを見い出した。
【0010】
本発明のコーティングフィルムの製造方法は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、多価アルコールである可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;前記コート層中に可塑剤が存在し、かつ水系媒体が存在しない状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするものである。なお、前記延伸の直前の状態における下記式により定義される前記可塑剤の存在率Eは1〜35%である
E=[D/(A+D)]×100(%)
[式中、Aは水系塗工液を構成するポリマー固形分の重量(グラム)であり、Dは可塑剤の重量(グラム)である。]
【0011】
更に、本発明によれば、溶融押出された被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、多価アルコールである可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;前記コート層中に可塑剤が存在し、かつ水系媒体が存在しない状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法であって、前記延伸の直前の状態における下記式により定義される前記可塑剤の存在率Eが1〜35%である製造方法が提供される。
E=[D/(A+D)]×100(%)
[式中、Aは水系塗工液を構成するポリマー固形分の重量(グラム)であり、Dは可塑剤の重量(グラム)である。]
【0012】
更に、本発明によれば、被コーティングフイルムと、その少なくとも片面に配置されたコート層とからなり;且つ、前記コート層が、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、水酸基を有する化合物である可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工した後;該コート層中に可塑剤が存在している状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸して得られるコート層であることを特徴とするコーティングフィルムが提供される。
【0013】
上記構成を有する本発明によれば、被コーティングフィルムの後処理(熱固定化処理)と、ガスバリア性層を与えるためのコート層(塗工層)の熱処理とを、実質的に同時に行うことが可能となるため、耐水性およびガスバリア性を実質的に維持できるのみならず、コート層の亀裂発生を抑制し、しかもガスバリア性コート層と被コーティングフィルムとの一体性をも向上させることができる。加えて、本発明によれば、このように優れた性質を有するガスバリア性フィルムは、生産性よく製造することができる。
【0014】
工業的に生産性の優れた方法であるインラインコーティング法を用いて、水系媒体が存在している状態で、加熱しつつ延伸処理してなるコーティングフイルムが、非常に高い酸素ガスバリア性を有することが、先願たる特願平9−127554に号に開示されている。100℃より高温(例えば、120℃)でコート層を加熱・延伸した場合には、結果として得られるコート層の柔軟性の点、該コート層を有するコーティングフィルムを更に延伸あるいは収縮または緩和させた場合のコート膜における亀裂発生の可能性、ないし該亀裂に基づくコーティングフィルムのガスバリア性低下の可能性の点においては、本発明により製造されるべきコーティングフィルムは、先願たる特願平9−127554号のコーティングフィルムよりも更に優れた特性を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準とする。
【0016】
(コーティングフイルム)
図1は、本発明のコーティングフィルムの基本的な態様を示す模式断面図たである。図1を参照して、本発明のコーティングフィルム1は、被コーティングフイルム2と、該フィルム1の少なくとも一面上に配置されたコート層3とからなる。
【0017】
(被コーティングフイルム)
本発明においては、被コーティングフィルム上に塗工層を形成した後に、これらの熱処理を行うため、該被コーティングフィルムは、熱可塑性樹脂からなるフィルムであることが好ましい。
【0018】
本発明において、上記「熱可塑性樹脂」は、130〜380℃の結晶融点、または130〜380℃のビカット軟化温度の少なくとも一方を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱処理のラティチュード(許容範囲)を広くする点からは、上記の結晶融点は140〜380℃(更には150〜380℃)の範囲にあることが好ましい。また、上記ビカット軟化温度は、140〜380℃(更には150〜380℃)の範囲にあることが好ましい(このような結晶融点またはビカット軟化温度の詳細については、例えば、特開平7−266441号公報を参照することができる)。
【0019】
結晶融点が130℃未満あるいはビカット軟化温度が130℃未満では、熱処理を行う際に、被コーティングフィルムを構成する熱可塑樹脂が波打つ等の変形、延伸または熱処理時のフィルム固定用チャックへの粘着、あるいは該フィルム自体の熱劣化等が生ずるおそれが増大する。
【0020】
本発明においては、被コーティングフィルムとしては、未延伸または延伸フィルムのいずれも使用可能である。このようなフィルムは、通常、熱可塑性樹脂の溶融押出し、またはキャスト等の手段により得ることができる。
【0021】
このような熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が好適に使用可能である。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が好ましい。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン666等が好ましい。
【0022】
(結晶融点/ビカット軟化温度の測定方法)
上記した熱可塑性樹脂の結晶融点は、示差走査熱量計(DSC;例えば、パーキンエルマー社製、商品名:DSC−7)を用い、試料を25℃からTx℃まで10℃/分で昇温させた後、25℃まで急冷させ、再度Tx℃まで10℃/分で昇温させた際の結晶融解ピーク温度をいう。ここに、上記「Tx」℃とは、25℃から400℃まで10℃/分で昇温させた際の結晶融解ピーク温度Tp℃に、「30℃」を加えた温度を意味する。
【0023】
Tx(℃)= Tp(℃)+30℃
一方、上記「ビカット軟化温度」は、ASTM (American Society for Testing Materials)D−1525に基づいた測定により求めることができる。すなわち、被測定試料を、予想される軟化温度より50℃低い温度から、毎時間50℃の割合で加熱昇温し、断面1×1mmの正方形状、または直径1mmの円形断面の鋼針に1kgの負荷をかけた際に、該針の先端が垂直に1mm試料中に侵入する温度を、ビカット軟化温度とする(このような測定方法の詳細については、「化学大辞典」第7巻第304頁、(1964年)共立出版を参照することができる)。
【0024】
(水系塗工液)
本発明において、上記した被コーティングフィルム上にコート層を形成する水系塗工液は、(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水溶液または水系分散液である。これらの水溶液または水系分散液は、溶液、懸濁液、コロイドあるいはラテックス等の状態で使用することができる(以下に述べる水系塗工液の各成分の詳細については、例えば、特開平8−41218号公報を参照することができる)。
【0025】
(ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー)
ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーは、カルボキシル基を1分子内に2個以上含有するポリマーである。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの具体例としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0026】
中でも、アクリル酸のホモポリマー、メタアクリル酸のホモポリマー、またはアクリル酸とメタアクリル酸との共重合体が好適に使用可能である。特に、アクリル酸のホモポリマー、またはアクリル酸とメタアクリル酸との共重合体であって、該共重合体を構成するアクリル酸のモル数がメタアクリル酸のモル数より多い共重合体が、ガスバリア性の点で特に好適に使用できる。
【0027】
本発明に使用可能なポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの分子量は、特に制限されないが、コート層を形成する際の塗工溶液の塗工性の点からは、数平均分子量が1×103〜4×106(更には1×103〜1×106)の範囲のものが好適に使用可能である。
【0028】
本発明で使用可能なポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物であってもよい。このようなポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、前記ポリ(メタ)アクリル酸を適当なアルカリ、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物やアンモニア水で適宜中和することによって得ることが出来る。ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の中和度は、後述するような樹脂Aからなる熱水難溶性樹脂層を形成する際の生産性の観点からは、0を越え20%以下(更には0を越え18%以下、特に1%以上15%以下)であることが好ましい。ここで「中和度」は以下の式により求められる。
【0029】
中和度=(A/B)×100(%)
A:部分中和されたポリ(メタ)アクリル酸1g中の、中和されたカルボキシル 基のモル数。
【0030】
B:部分中和されるべき(メタ)アクリル酸1g中の、部分中和前のカルボキシル基の全モル数。
【0031】
上記した「カルボキシル基のモル数」は、アクリル酸については、アクリル酸のモノマー単位である分子量72g/モルを用いて、アクリル酸系ポリマーの質量からモル数を求め、メタクリル酸については、メタクリル酸のモノマー単位である分子量86g/モルを用いて、メタクリル酸系ポリマーの重量からモル数を求めるものとする。
【0032】
(ポリアルコール系ポリマー)
ポリアルコール系ポリマーとは、1分子内に2個以上の水酸基を持つポリマーである。このポリアルコール系ポリマーの具体例としては、ポリビニルアルコール、糖類等が挙げられる。
【0033】
(ポリビニルアルコール)
ポリビニルアルコールとしては、従来より公知のものを用いることが可能であるが、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとの組み合わせにおいて好適な酸素バリア性を発揮する点からは、ケン化度が通常95%以上であって、平均重合度が300〜2500(更には、300〜1500)の範囲のものが好適に使用可能である。
【0034】
(糖類)
一方、上記した「糖類」の具体例としては、単糖類、オリゴ糖類、多糖類やそれらの還元性末端をアルコール化して得られる糖アルコール類、更に、前記それぞれを化学修飾してなるものが挙げられる。ポリビニルアルコール同様、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとの組み合わせにおいて好適な酸素バリア性を発揮する点からは、マルトオリゴ糖、水溶性澱粉、それらの糖アルコール、ソルビトール、デキストリン、プルラン等が更に好適に使用可能である。
【0035】
(組成比)
また、本発明に用いる水系塗工液を得るために必要な、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の群からなるポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーの組成比(質量比)は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー:ポリアルコール系ポリマー=95:5〜10:90の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー:ポリアルコール系ポリマー=90:10〜20:80の範囲であり、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー:ポリアルコール系ポリマー=90:10〜40:60の範囲にあることが更に好ましい。
【0036】
(可塑剤)
本発明における可塑剤としては、公知の可塑剤から適宜選択して使用することが可能である。水系媒体が存在しない状態での製造性の点からは、該可塑剤は、融点が80℃以下(更には75℃以下、特に70℃以下)の有機化合物であることが好ましい。さらには、該可塑剤は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー、ポリアルコール系ポリマー、ないし水系媒体に対し、相溶性を有する、あるいは、可溶であることが好ましい。
【0037】
塗工フィルムの加熱・延伸において可塑剤をコート層中に効果的に残存させる点からは、この可塑剤の沸点をTp、この加熱・延伸時の加熱温度をThとした場合、 Tp− Thは6℃以上であることが好ましく、更には8℃以上(特に10℃以上)であることが好ましい。
【0038】
水系媒体への溶解性の点からは、該可塑剤としては、水酸基を含む化合物(特に多価アルコール)が好適に使用可能である。該多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の2価アルコール;トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価アルコールを例示することができる。これらは必要に応じて、2種以上を組み合わせないしは混合して用いてもよい。中でも、ガスバリア性ないし製造性の点からは、グリセリンが特に好ましい。
【0039】
本発明において、熱処理後のコート層のひび割れを効果的に防止する点からは、上記した水系塗工液における可塑剤の量は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーとの合計100重量部に対して、1〜50重量部、更には2〜40重量部(特に5〜30重量部)程度であることが好ましい。
【0040】
(水系媒体)
本発明において、上記「水系媒体」は、水または含水媒体(aqueous medium)の両者を包含する。後者の含水媒体の場合には、ポリマーの溶解性の点からは、水を30%以上(更には50%以上)含有する媒体であることが好ましい。
【0041】
含水媒体の場合、水と組み合わせるべき媒体は、水と相溶性がある(compatible)媒体である限り特に制限されない。このような水と相溶性の媒体の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等が挙げられる。
【0042】
(可塑剤の存在率)
可塑剤の存在率は、水系塗工液(溶液または分散液)を構成するポリマー固形分(ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー+ポリアルコール系ポリマー)の重量をAグラムとし、可塑剤の重量をDグラムとした場合に、該水溶液又は水系分散液中の水系媒体の重量百分率、すなわちE=[D/(A+D)]×100(%)で定義する。
【0043】
本発明においては、加熱時の延伸性の点からは、被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを延伸する直前の状態における上記可塑剤の存在率Eの範囲は、約1〜35%程度、更には1〜30%程度(特に1〜25%程度)であることが好ましい。
【0044】
(水系媒体の存在率)
水系媒体の存在率は、水系塗工液(溶液または分散液)を構成するポリマー固形分(ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー+ポリアルコール系ポリマー)の重量をAグラムとし、水系媒体の重量をBグラムとした場合に、該水溶液又は水系分散液中の水系媒体の重量百分率、すなわちC=[B/(A+B)]×100(%)で定義する。
【0045】
本発明においては、延伸後のコート層表面の平滑性の点からは、被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを延伸する直前の状態においては実質的に水が存在しない方が好ましい。より具体的には、上記水系媒体の存在率Cの範囲は、約75%以下、更には50%以下(特に25%以下)程度であることが好ましい。
【0046】
(塗工厚み)
本発明においては、水系塗工液を被コーティングフィルム上に塗工した直後の状態(wet)における塗工厚み(wet)は、0.4〜2000μm、更には0.4〜600μm(特に2〜100μm)であることが好ましい。他方、該塗工層を、加熱下で延伸した際の塗工厚み(dry)は、0.1〜100μm、更には0.1〜30μm(特に0.5〜5μm)であることが好ましい。
【0047】
(添加剤)
上記したように、本発明において用いる水系塗工液は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含むが、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤(染料ないし顔料)、無機塩等の公知の添加剤が挙げられる。該無機塩としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム等を添加することが特に好ましい。該無機塩の添加量は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーとの合計量(100重量部)に対して、20重量部以下であることが好ましい。
【0048】
(塗工厚みの測定方法)
上記した塗工厚み(wet)は、塗工速度を一定とした際の、単位時間における塗工液の「平均減少量(体積)」Vを、単位時間における塗工面積(塗工巾×フィルムの移動距離)Sで除した値(V/S)として計算できる。
【0049】
他方、上記した塗工厚み(dry)は、該厚みが5μmを越える場合には、 オリンパス光学工業(株)製、透過ノルマルスキー微分干渉顕微鏡を用い、フィルム断面から実測した値を用いる。また、該厚みが5μm以下の場合には、大塚電子(株)製、瞬間マルチ測光システムMCPD-2000を用いて測定した値を用いる。
【0050】
<微分干渉顕微鏡の測定条件>
上記した透過ノルマルスキー微分干渉顕微鏡を用いた厚み測定においては、下記の測定条件が好適に使用可能である。
【0051】
厚さ0.1〜1mmの範囲のフィルム断面片を作成し、透過光により被コーティングフィルムと、コート層とを識別する。
【0052】
<マルチ測光システムの測定条件>
上記した瞬間マルチ測光システムを用いた厚み測定においては、下記の測定条件が好適に使用可能である。
【0053】
光学的反射干渉法に基づき、450〜650nmの測定波長領域で測定する。
【0054】
(水系塗工液の粘度)
本発明においては、水系塗工液を被コーティングフィルム上に塗工する直前の状態における該塗工液は、下記の粘度を有することが好ましい。ここに、下記粘度としては、ハーケ社製ビスコテスター VT-500(サーレ型粘度計)を用いて、温度25℃、シェアレート(剪断速度)200s-1における粘度を測定した値を用いる。
【0055】
上記塗工液は、測定温度25℃、シェアレート200s-1において、1〜12000mPa・s、更には1〜5000mPa・s(特に1〜1000mPa・s)の粘度を有することが好ましい。
【0056】
上記した好適な粘度は、水系塗工液を構成する固形分の濃度によっても、若干異なる。
【0057】
(1)濃度(固形分)5%の場合、
好ましい粘度:1〜50mPa・s、更には1〜20mPa・s、特に1〜15mPa・s;
(2)濃度(固形分)10%の場合、
好ましい粘度:1〜200mPa・s、更には2〜100mPa・s、特に2〜50mPa・s;
(3)濃度(固形分)15%の場合、
好ましい粘度:2〜600mPa・s、更には3〜400mPa・s; 特に3〜250mPa・s
(4)濃度(固形分)20%の場合、
好ましい粘度:3〜3000mPa・s、更には4〜2000mPa・s、特に4〜1000mPa・s;
(5)濃度(固形分)25%の場合、
好ましい粘度: 4〜12000mPa・s、更には5〜10000mPa・s、 特に5〜5000mPa・s。
【0058】
(塗工速度)
本発明における水系塗工液の塗工速度(ライン速度)は、1〜500m/min、更には10〜200m/min、特に30〜150m/minであることが好ましい。
【0059】
(塗工方法)
本発明においては、公知の塗工方法が特に制限なく使用可能であるが、塗工安定性の点からは、該塗工液中の固形分濃度が15%以下の場合には、オフセットグラビア方式が好ましく、また該濃度が10%以上の場合、ダイリップ方式が好ましい。また、塗工面は、被コーティングの片面でも、両面でもよい。
【0060】
(延伸)
延伸は、従来より公知の方法を特に制限なく用いることができる。例えば、該延伸は、1軸方向でも、2軸方向でもよく、また、逐次に行う延伸でも、同時に行う延伸でもよい。
【0061】
本発明においては、逐次延伸の場合には、縦方向(フィルムの走行方向)に延伸後コーティングを行い、次いで、加熱下で横方向(フィルムの走行方向と垂直の方向)に延伸することが好ましい。更に、該フィルムを縦方向に加熱下で延伸してもよい。
【0062】
また、同時延伸の場合は、加熱下で、縦方向および横方向への2方向に同時に延伸すればよい。
【0063】
本発明において、延伸は、被コーティングフィルム上に水系塗工液を塗工したコート層中に可塑剤が存在している状態で加熱下に行われることに特徴がある。
【0064】
本発明においては、フィルムの寸法安定性やガスバリア性の向上等の点からは、前記した「加熱下の延伸」は、塗工フィルムを延伸し、次いで該延伸フィルムを熱処理することにより行うことが好ましい。
【0065】
(延伸装置)
図2に、本発明の延伸に使用可能な延伸装置の一態様を示す模式斜視図を示す。この図2においては、溶融押出された被コーティングフイルムの片面に、上記した水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;前記コート層中に可塑剤が存在している状態で、該塗工フイルムを延伸し;次いで該延伸フイルムを熱処理する方法(いわゆるインライン・コーティング方法)を示している。
【0066】
図2を参照して、PET樹脂等からなる耐熱性樹脂が、T−ダイ方式等によって溶融押出されて未延伸フィルムが製膜され、次いで、必要に応じて、この未延伸フィルムが、周速の異なる一対のロール間を通す等の手段により縦方向(フィルムの走行方向)に延伸される。
【0067】
更に、縦方向に延伸されたフィルム上には、水系塗工液が塗工されて、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムが形成される。次いで、テンター等の延伸手段により、該塗工フィルムは、加熱下に横方向(フィルムの走行方向と垂直方向)に延伸され、更により高温で熱処理されて、上記コート層にガスバリア性が付与される。
【0068】
(延伸倍率)
本発明において、被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを延伸する際の延伸倍率(面積倍率)、すなわち延伸後フィルム面積を延伸前のフィルム面積で除した値は、1.2〜25倍(更には1.2〜16倍)が好ましい。
【0069】
(延伸等の加熱条件)
本発明において、コーティングフィルムを延伸処理する際の加熱条件は、該延伸処理を実質的に妨げない条件である限り、特に制限されない。本発明においては、通常は、以下のような温度条件が好適に使用可能である。
【0070】
<水系塗工液の塗工後、延伸前の乾燥>
乾燥温度(延伸前):50〜200℃(更には60〜180℃)
乾燥時間:1〜180秒(更には3〜120秒)程度
<可塑剤存在下での加熱・延伸>
延伸温度:50〜200℃、更には60〜180℃。
【0071】
加熱時間:1〜180秒(更には3〜120秒)程度
本発明においては、可塑剤の存在下で塗工フィルムを加熱下に延伸処理するため、延伸温度や延伸速度の許容範 囲は広く、特に、延伸温度においては100℃以上であってもよい。このように100℃以上の延伸温度を用いることによって、100cm3/m2・24h・atm以下(更には50cm3/m2・24h・atm以下、特に20cm3/m2・24h・atm以下)の酸素ガス透過度を有するフィルムを容易に、且つ良好な生産性で得ることができる。
【0072】
(コート層の熱処理)
本発明において、コート層の被コーティングフィルムへの熱固定、および該コート層自体の熱処理(ガスバリア性の付与)の目的で熱処理する際の熱処理条件は、これらの処理を実質的に妨げない条件である限り、特に制限されない。通常は、温度が、 150〜380℃、更には 150〜300℃(程度;熱処理時間が1秒〜10分(更には2秒〜5分)程度であることが好ましい。
【0073】
インラインコート方式で得られた直後のコーティングフィルムの厚みを(Ta)μmとし、そのフィルム を80℃の蒸留水中に投入し、10分間浸漬し、乾燥した後の該フィルムの厚みを(Tb)μm、熱可塑性樹脂層(コート層)の厚みを(Tc)μm とした場合に、次式:
{(Ta−Tb)/(Ta−Tc)}≦ 0.5(更には≦0.3)
が成立することが好ましい。
【0074】
(各層の厚さ)
本発明のコーティングフィルムを構成する各層の厚さは、該フィルムに付与すべき各種の物性(例えば、ガスバリア性、強度、シール性)、ないし各層の材料に応じて適宜選択することが可能であるが、通常は、下記のような厚さであることが好ましい。
【0075】
被コーティングフィルム2: 1〜50μm(更には5〜25μm)
ガスバリア層3: 0.1〜5μm(更には0.2〜5μm)
(酸素ガス透過度)
本発明の製法により得られるフィルムの酸素ガス透過度は、100cm3/m2・24h・atm以下、更には50cm3/m2・24h・atm以下、特に20cm3/m2・24h・atm以下であることが好ましい。
【0076】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0077】
【実施例】
以下の実施例においては、下記のような評価方法を用いた。
【0078】
(コート層の亀裂の評価)
本発明の製法(インラインコート方式)で得られたフィルムを30cm四方に切り出し、それを目視で観察した。このような観察の結果、コート層表面に亀裂が確認できなかった場合に、「亀裂無し」と評価した。
【0079】
(酸素ガス透過度測定)
Modern Control社製の酸素ガス透過度測定装置(商品名:OX-TRAN 2/20)を用いて、30℃、80%RHにおける酸素ガス透過度を測定した。
【0080】
(コート層の耐水性の評価)
本発明の製法(インラインコート方式)で得られた直後のコーティングフィルムの厚みを(Ta)μmとし、そのフィルム を80℃の蒸留水中に投入し、10分間浸漬し、乾燥した後の該フィルムの厚みを(Tb)μm、熱可塑性樹脂層(コート層)の厚みを(Tc)μm とした場合に、{(Ta−Tb)/(Ta−Tc)}の値が、 0.5以下(更には 0.3以下)であれば耐水性があるとした。
【0081】
製造例1
(コーティング用水溶液の作成例1)
ポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業(株)製、25wt%水溶液、粘度8〜12Pa・s[30℃]、数平均分子量 15×104)と澱粉類(和光純薬工業(株)製、可溶性澱粉)とを、各々、水で希釈して20wt%のPAA水溶液と、20wt%の澱粉類水溶液とを調製した。これらのPAA水溶液と澱粉類水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の20wt%水溶液を調製した。
【0082】
この20wt%水溶液に、反応促進剤として次亜りん酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、商品名:次亜りん酸ナトリウム一水和物)を、PAAと澱粉類とを合わせた固形分重量(合計:100重量部)に対し、12.25PHR(前記固形分100重量部に対する重量部)添如した水溶液を調製し、この水溶液に、グリセリン(水酸基含有可塑剤)を、PAAと澱粉類とを合わせた固形分重量に対し、10PHR(重量部)添加した水溶液を調製した。
【0083】
製造例2
(コーティング用水溶液の作成例2)
ポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業(株)製、25wt%水溶液、粘度8〜12Pa・s[30℃]、数平均分子量 15×104)と澱粉類(和光純薬工業(株)製、可溶性澱粉)とを、各々、水で希釈して20wt%のPAAの水溶液と、20wt%の澱粉類水溶液とを調製した。このPAAの20wt%水溶液100重量部に対し、水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、試薬一級品)1.1重量部を加え、溶解して中和度10%の部分中和PAA(PAANa)水溶液を調製した。
【0084】
このPAANa水溶液と、上記した澱粉類水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の20wt%水溶液を調製した。 この水溶液に、グリセリン(水酸基含有可塑剤)を、PAAと澱粉類とを合わせた固形分重量に対し、10PHR(重量部)添加した水溶液を調製した。
【0085】
製造例3
(コーティング用水溶液の作成例3)
ポリアクリル酸(PAA;和光純薬工業(株)製、25wt%水溶液、粘度8〜12Pa・s[30℃]、数平均分子量 15×104)と、PVA(クラレ(株)製、商品名:ポバール105)とを、各々、水で希釈してPAAの20wt%水溶液と、 PVAの20wt%水溶液とを調製した。
【0086】
このPAAの20wt%水溶液100重量部に対し、水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、試薬一級品)1.1重量部を加え、溶解して中和度10%の部分中和PAA(PAANa)水溶液を調製した。このPAANa水溶液と、上記したPVA水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の20wt%水溶液を調製した。
【0087】
この水溶液に、グリセリン(水酸基含有可塑剤)を、PAAと PVAとを合わせた固形分重量に対し、10PHR(重量部)添加した水溶液を調製した。
【0088】
実施例
(インラインコートフィルムの製造)
PET樹脂(東洋紡績(株)製、商品名:ユニペットRT−580)を270〜300℃でTダイ方式にて溶融押出しし、15℃の冷却ロールで冷却して厚さ120μmの未延伸フィルムを製膜し、この未延伸フイルムを周速の異なる87℃の一対のロール間で、縦方向(フィルム走行方向)に3倍延伸した。
【0089】
次いで、この一軸延伸フィルム上に、前記した製造例1〜3で得たコーティング用水溶液を、それぞれ、オフセットグラビア方式で塗布し、(株)市金製のテンターで90℃の熱風で乾燥し、120℃の炉内で横方向(フィルム走行方向と垂直方向)に3倍延伸し、さらに、240℃で40秒間熱処理し、厚さ13μmの二軸延伸コーティングPETフィルムを得た。
【0090】
実施例1
製造例1で得られたコーティング用水溶液を使用し、上記の「インラインコーティングフィルムの製造」を行なった。
【0091】
この方法により得られた二軸延伸コーティングPETフィルムは、コート層の亀裂がなく、酸素ガス透過度が10cm3/m2・24h・atmと酸素ガスバリア性に優れ、且つコート層の耐水性に優れていた。インラインコーティング方法、および高温(120℃)で塗工後の加熱・延伸を行ったことにより、この製造方法の単位時間当たりの生産性は非常に高かった。
【0092】
実施例2
製造例2で得られたコーティング用水溶液を使用し、上記の「インラインコーティングフィルムの製造」を行なった。
【0093】
この方法により得られた二軸延伸コーティングPETフィルムは、コート層の亀裂がなく、酸素ガス透過度が9cm3/m2・24h・atmと酸素ガスバリア性に優れ、且つコート層の耐水性に優れていた。インラインコーティング方法、および高温(120℃)で塗工後の加熱・延伸を行ったことにより、この製造方法の単位時間当たりの生産性は非常に高かった。
【0094】
実施例3
上記のコーティング用水溶液の製造例3で得られた水溶液を使用し、上記の「インラインコーティングフィルムの製造」を行なった。
【0095】
この方法により得られた二軸延伸コーティングPETフィルムは、コート層の亀裂がなく、酸素ガス透過度が7cm3/m2・24h・atmと酸素ガスバリア性に優れ、且つコート層の耐水性に優れていた。インラインコーティング方法、および高温(120℃)で塗工後の加熱・延伸を行ったことにより、この製造方法の単位時間当たりの生産性は非常に高かった。
【0096】
比較例1
コーティング用水溶液を塗布しなかった以外は、実施例1と同様の条件で二軸延伸PETフィルムの製造を行なった。
【0097】
この製造方法の単位時間当たりの生産性は非常に高かったが、この方法により得られた、二軸延伸PETフィルムの酸素ガス透過度は140cm3/m2・24h・atmと非常に大きく・酸素ガスバリア性フィルムとしては不充分なものであった。
【0098】
比較例2
グリセリン(可塑剤)を使用しなかった以外は、実施例1と同様の条件で二軸延伸PETフィルムの製造を行なった。この方法により得られた二軸延伸コーティングPETフィルムにおいては、コート層のひび割れが多数確認でき、透明性に劣り、満足なフィルムが得られなかった。したがって、この場合の生産性の評価は困難であった。
【0099】
【表1】
Figure 0004101364
【0100】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、 被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;前記コート層中に可塑剤が存在している状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法が提供される。
【0101】
更に、本発明によれば、溶融押出された被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し; 前記コート層中に可塑剤が存在している状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法が提供される。
【0102】
更に、本発明によれば、被コーティングフイルムと、その少なくとも片面に配置されたコート層とからなり;且つ、前記コート層が、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工した後;該コート層中に可塑剤が存在している状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸して得られるコート層であることを特徴とするコーティングフィルムが提供される。
【0103】
本発明によれば、被コーティングフィルムの後処理(熱固定化処理)と、ガスバリア性層を与えるためのコート層の熱処理とを、実質的に同時に行うことが可能となるため、耐水性およびガスバリア性を実質的に維持するのみならず、コート層の亀裂発生が抑制され、しかもガスバリア性コート層と被コーティングフィルムとの一体性をも向上させたフィルムが得られる。加えて、本発明によれば、このような優れた性質を有するガスバリア性フィルムを生産性よく得ることができる。
【0104】
従来の方法、すなわち、樹脂をフィルムに加工、加工後のフィルムに塗工、塗工後の原反を熱処理するといった個々の工程を含む方法では、少なくとも2工程以上が必要となり、工業的に見た単位時間当たりの生産性に劣っていた。
【0105】
これに対して、本発明のインラインコート方式で生産されたフィルムは、樹脂からガスバリア性フィルムといった製品まで一貫して連続的にインラインで生産できるため、工業的に見ても、単位時間当たりの生産性を非常に高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコーティングフィルムの基本的な一態様を示す模式断面図である。
【図2】本発明において、フィルムの溶融押出と連続的に(インラインで)行う態様に使用可能な装置系の一例を示す模式斜視図である。
【符号の説明】
1…コーティングフィルム、2…被コーティングフィルム、3…コート層。

Claims (6)

  1. 被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、多価アルコールである可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;
    前記コート層中に前記可塑剤が存在し、かつ水系媒体が存在しない状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法であって、
    前記延伸の直前の状態における下記式により定義される前記可塑剤の存在率Eが1〜35%である製造方法。
    E=[D/(A+D)]×100(%)
    [式中、Aは水系塗工液を構成するポリマー固形分の重量(グラム)であり、Dは可塑剤の重量(グラム)である。]
  2. 溶融押出された被コーティングフイルムの少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと、ポリアルコール系ポリマーと、多価アルコールである可塑剤と、水系媒体とを少なくとも含む水系塗工液を塗工して、該被コーティングフイルム上にコート層が配置された塗工フィルムを形成し;
    前記コート層中に前記可塑剤が存在し、かつ水系媒体が存在しない状態で、該塗工フイルムを加熱下で延伸することを特徴とするコーティングフィルムの製造方法であって、
    前記延伸の直前の状態における下記式により定義される前記可塑剤の存在率Eが1〜35%である製造方法。
    E=[D/(A+D)]×100(%)
    [式中、Aは水系塗工液を構成するポリマー固形分の重量(グラム)であり、Dは可塑剤の重量(グラム)である。]
  3. 前記加熱下での延伸が、前記塗工フィルムを延伸し、次いで該延伸フイルムを熱処理することにより行われる請求項1または2記載のコーティングフィルムの製造方法。
  4. 前記熱処理後のコート層が、ガスバリア性の樹脂層である請求項1ないし3のいずれか一項に記載のコーティングフィルムの製造方法。
  5. 前記可塑剤が存在している状態での加熱下での延伸処理が、横方向(フィルムの走行方向と垂直方向)への延伸である請求項1ないし4のいずれか一項に記載のコーティングフィルムの製造方法。
  6. 前記可塑剤が存在している状態での加熱下延伸処理が、横方向(フィルムの走行方向と垂直方向)および縦方向(フィルムの走行方向)への2方向の延伸である請求項1ないし4のいずれか一項に記載のコーティングフィルムの製造方法。
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