JP4101070B2 - リン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなるスクリュー固定用素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨にスクリューを固定するための素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
様々な骨疾患、例えば骨変形や骨折を治療するため、骨にスクリューを螺合することがある。骨が十分な強度を有する場合には、骨に設けた下穴に直接スクリューを螺合することにより、骨とスクリューとの十分な結合強度を得ることができる。ところが骨粗鬆症の患者を治療する場合、骨に空孔があるため、スクリューを螺合する際のスクリューと骨との固定強度が十分に得られないという問題がある。例えば脊椎後方固定術は、個々の椎体にスクリューを螺合し、これらのスクリューを上下の椎体に渡る矯正用プレートに結合するものであるが、スクリューと骨との結合強度が十分でないと、十分な矯正を行うことができない。このため骨(椎体)に形成した下穴に、アパタイト顆粒やリン酸カルシウム系セメント等の人工骨材料を詰めた後で、スクリューを螺合する試みがされている。しかし顆粒状、泥状の人工骨材料を詰める作業は非常に作業性が悪いのみならず、必要な量の人工骨材料を詰めることが困難であるという問題がある。
【0003】
特開平08-322850号はスクリュー用の下穴を有する柱状のスクリュー固定用素子を開示している(特許文献1)。このスクリュー固定用素子は靭性の小さいリン酸カルシウム系化合物の焼結体からなり、骨に形成した下穴にこの素子を挿入した後で、素子に設けられたスクリュー用の下穴にスクリューをねじ込むと、素子は壊れてスクリューの周囲に散らばるようになっている。このため粉末状及び/又は顆粒状のリン酸カルシウムをスクリューの周囲に万遍なく位置させることができ、スクリューを高い強度で固定できる。しかしながら、このスクリュー固定用素子はリン酸カルシウム系化合物の焼結体からなるため脆く、素子を骨の下穴に挿入する際に折れ易いという問題がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平08-322850号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、靭性及び耐衝撃性に優れたスクリュー固定用素子及びその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、(a) リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物(合成樹脂粒子 II の含有量は、合成樹脂粒子 I 及び合成樹脂粒子 II の合計量に対して5〜 80 質量%)を加圧加熱処理したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなるスクリュー固定用素子は靭性及び耐衝撃性に優れること、及び(b) このような素子は上記の混合物とともにスクリューを成形型内に入れ、混合物がスクリューを取り囲むように配置した状態で加圧加熱処理して成形体とすることにより得られることを発見し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち本発明のスクリュー固定用素子は、骨に形成した下穴に挿入した後で、素子に設けられたスクリュー用の穴にスクリューをねじ込むことによりスクリューを骨に固定するものであって、リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなることを特徴とする。
【0008】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合材中の合成樹脂粒子は、リン酸カルシウム粒子と密着しているのが好ましい。合成樹脂粒子I及び合成樹脂粒子IIは非水溶性アクリル系樹脂又はポリスチレン樹脂からなるのが好ましい。
【0009】
リン酸カルシウム粒子は焼成されているのが好ましい。またリン酸カルシウム粒子におけるカルシウム/リンのモル比は1.4〜2.0であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子は平均粒径0.001 mm〜1mmであって、多孔質であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子/合成樹脂粒子の質量比は1/9〜3/1であるのが好ましい。
【0010】
スクリュー固定用素子の形状は、中心軸に沿ってスクリュー用の穴を有する柱状体であるのが好ましい。また骨に係合するための係止部を有するのが好ましく、長手方向にスリットを有するのが好ましい。スクリュー固定用素子の肉厚は0.5 mm以上であるのが好ましい。
【0011】
本発明のスクリュー固定用素子の製造方法は、(a) スクリューの頭部にキャップを装着した状態でスクリューを成形型のキャビティ内に載置し、(b) リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIとの混合物を実質的に均一にキャビティ内に充填し、(c) 合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子と密着するように、成形型内の充填物を加圧加熱処理することにより、スクリュー用の穴を有するリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる成形体を形成することを特徴とする。
【0012】
加圧加熱処理により得られた成形体の外面に、機械加工により骨に係合するための係止部を設けるのが好ましい。また加圧加熱処理を真空中又は酸素を含まない雰囲気中で行うのが好ましい。リン酸カルシウム粒子は予め焼成するのが好ましく、焼成温度は500〜1300℃とするのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
[1] スクリュー固定用素子
(1) スクリュー固定用素子の構造
図1は、本発明のスクリュー固定用素子1の一例を示す。このスクリュー固定用素子1は円柱状の本体部2と、本体部2の中心軸線に沿って設けられたスクリュー用の穴1aと、本体部2の外壁に設けられた係止部3とからなっている。スクリューを骨に高い強度で固定するため、穴1aの深さ(長さ)Lはスクリュー固定用素子1の長さの1/3以上とするのが好ましく、2/3以上とするのがより好ましい。穴1aの内径は固定すべきスクリューの外径に応じて適宜設定する。係止部3は骨への挿入し易さと、抜けにくさとを考慮して、のこ歯ねじ状(スクリュー)になっている。
【0014】
図2は、スクリュー固定用素子1の別の例を示す。このスクリュー固定用素子1は、スリット4を有する以外図1に示す例とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。図2(a)に示すように、スリット4はスクリュー固定用素子1の長手方向に設けられている。スリット4を有することにより、スクリュー固定用素子1を骨に設けた下穴に、ねじ込み易くなる。スリット4の深さ(長さ)Dは、スクリュー固定用素子1の長さの1/2以下とするのが好ましい。図2(b)はスクリュー固定用素子1の側面図である。スリット4の幅dは本体部2の外径の1/5以下とするのが好ましい。スリット4の深さ及び/又は幅がこの範囲に無いと、スクリュー固定用素子1の強度が小さくなり過ぎるので好ましくない。なおスクリュー固定用素子1が十分な強度を有する限り、複数のスリット4を設けても良い。
【0015】
図3及び図4は、スクリュー固定用素子1のさらに別の例を示す。図3及び図4に示すスクリュー固定用素子1は、係止部3がくさび状になっている以外、図1及び図2に示す例とそれぞれ同じである。図3及び図4に示す例においては、高さの等しい4つのくさび状の係止部3が、本体部2の外壁に等間隔に設けられているが、本発明はこれに限定されない。
【0016】
本発明のスクリュー固定用素子1は、リン酸カルシウム、合成樹脂粒子I及びIIを加圧加熱処理したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる。図5は、スクリュー固定用素子1を示す部分拡大断面図である。加圧加熱処理により合成樹脂粒子IIは軟化するか溶融して各粒子の空隙に入り込んでおり、リン酸カルシウム粒子100及び合成樹脂粒子Iに密着している。合成樹脂粒子Iはある程度形状を保ったまま軟化して、リン酸カルシウム粒子100等に密着している。
【0017】
(2) スクリュー固定用素子の使用例
図6は、スクリュー固定用素子1及びスクリュー5を使用して、金属板等の骨補強材6を骨7に固定する方法の一例を示す。図6(a)に示すように、骨7に下穴7aをあけ、穴1aに挿入用具8を係合させたスクリュー固定用素子1を挿入する。スクリュー固定用素子1を骨7の内部に密接するため、骨7に開ける下穴7aはスクリュー固定用素子1の外径より僅かに小さくするのが好ましい。挿入用具8を取り外し、骨補強材6の開口部6aがスクリュー固定用素子1の穴1aに係合するように、骨補強材6を骨7に載置する(図6(b))。次いで骨補強材6の開口部6aからスクリュー固定用素子1の穴1aにスクリュー5をねじ込むと(図6(c))、スクリュー5はスクリュー固定用素子1に勘合し、骨補強材6はスクリュー5の頭部とスクリュー固定用素子1の上端に挟まれて骨7に固定される(図6(d))。
【0018】
[2] スクリュー固定用素子の製造
(1) リン酸カルシウム粒子
リン酸カルシウム粒子におけるカルシウム/リンのモル比は1.4〜2.0とするのが好ましい。リン酸カルシウムの具体例としては、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト等のアパタイト類の他、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム及びこれらの混合粉体等が挙げられる。
【0019】
リン酸カルシウム粒子は多孔質粒子であっても緻密粒子であっても良いが、多孔質であるのが好ましい。多孔質粒子の場合、気孔率は20〜70%であるのが好ましい。多孔質粒子の細孔は大小様々であるが、10〜2000 μmの径を有するのが好ましい。
【0020】
リン酸カルシウム粒子は、平均粒径が0. 001 mm〜1mmとなるように粒度調整するのが好ましい。リン酸カルシウム粒子のより好ましい平均粒径は0.01〜0.8 mmである。リン酸カルシウム粒子の平均粒径が1mm超であると、使用時にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体からリン酸カルシウム粒子が脱落しやすくなるので好ましくない。また0.001 mm未満であると、リン酸カルシウム粒子が凝集しやすくなるため分散性が悪化する上、コストが高くなる。
【0021】
リン酸カルシウム粒子は、加圧加熱処理前に焼成するのが好ましい。焼成温度は500〜1300℃が好ましく、700〜1200℃がより好ましい。焼成温度が500℃より低いと、加圧加熱処理中にリン酸カルシウム粒子が崩壊しやすくなる。特に多孔質のリン酸カルシウム粒子の場合、加圧により変形し、気孔がつぶれて気孔性が失われることがある。また仮焼結温度が1300℃より高いと、リン酸カルシウム系化合物の分解又は劣化が起こるので好ましくない。
【0022】
焼成時間(上記焼成温度を保持する時間)は、1〜10時間とするのが好ましい。焼成時間が1時間未満であると焼成によるリン酸カルシウム粒子の補強効果が十分に得られない。また10時間を超えて処理しても効果に変化が見られず、コスト高となるだけである。より好ましい焼成時間は2〜5時間である。焼成雰囲気は特に限定されないが、リン酸カルシウム粒子の分解を防止するため、大気中で行うのが好ましい。
【0023】
(2) 合成樹脂粒子
合成樹脂粒子は、予め少なくとも部分的に架橋した合成樹脂粒子I、及び架橋されていない合成樹脂粒子IIからなる。合成樹脂粒子I及びIIとしては、人体為害性のないものであれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。合成樹脂粒子I及びIIは非水溶性のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂等からなるのが好ましく、ポリメチルメタクリレートからなるのが特に好ましい。合成樹脂粒子I及びIIは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0024】
合成樹脂粒子I及びIIの平均粒径はいずれも0.05〜500 μmであるのが好ましく、0.1〜100 μmであるのがより好ましい。また合成樹脂粒子の平均粒径は、リン酸カルシウム粒子の平均粒径より小さいのが好ましい。
【0025】
合成樹脂粒子IIの含有量は、合成樹脂粒子I及びIIの合計量に対して5〜80質量%である。合成樹脂粒子IIの含有量が5質量%未満の場合、得られるリン酸カルシウム−合成樹脂複合材及び/又はスクリュー固定用素子の強度が低下するので好ましくない。また含有量が80質量%超の場合、リン酸カルシウム−合成樹脂複合材の加工性が低下する。
【0026】
(3) 加圧加熱処理装置
本発明は、リン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる成形体を製造するのに加圧加熱法を利用する。具体的には、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合材を製造する。このリン酸カルシウム−合成樹脂複合材を製造するのに好ましい加圧加熱法としては、熱源に接続した一対の成形型の間に、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物を入れ、加圧しながら加熱する方法が挙げられる。加圧加熱処理は真空中、又はN2、He、Ar等の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0027】
図7〜図9は、真空又は不活性ガス雰囲気中で加圧加熱処理を行う装置の一例を示す。図7に示すように、加圧加熱装置11は真空ポンプ17が設けられた真空チャンバ16と、その中に配置された固定型12と、固定型12内のキャビティ12aに加えられたリン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物13を加圧及び加熱する一対のパンチ14a,14bと、各パンチ14a,14bを駆動するラム15a,15bとを有する。固定型12内には、処理温度を測定するための熱電対(図示せず)が設けられている。またガスポンプ21にはガス導入口及びガスボンベ(図示せず)が設けられている。
【0028】
各ラム15a,15bは、加圧駆動機構19により駆動されて混合物13を加圧するとともに、給電端子(図示せず)を介して接続した電源18から電力の供給を受け、パンチ14a,14bを加熱する。制御部20は加圧駆動機構19、電源18、真空ポンプ17及び熱電対に接続しており、固定型12内の加圧力及び加熱温度、真空チャンバ16内の真空度等を制御する。
【0029】
図8に示すように、固定型12は環状構造を有し、断面が円形、小判形、長方形等のキャビティ12aを有する。各パンチ14a,14bは固定型12のキャビティ12a内を上下動するように、キャビティ12aより僅かに小さい断面を有する。各パンチ14a,14bはラム15a,15bに固定されている。
【0030】
(4) 充填
固定型12のキャビティ12aにスクリュー5を載置する。スクリュー5の頭部5aには、図10(a)に示すように、スペーサ22a,22bを嵌めておく。スペーサ22a,22bは、組み合わせることによりスクリュー5の頭部5a及び軸の付け根部5bに相補的な空孔を形成するようになっており、頭部5aと付け根部5bに気密に係合する(図10(b))。スペーサ22a,22bは成形後にスクリュー5から取り外すので、脱離しやすいように表面及び空孔にリン酸カルシウム粒子分散液等の離型剤を塗布しておくのが好ましい。
【0031】
図11に示すように、スペーサ22に嵌合している頭部5aが下側になるように、スクリュー5をキャビティ12a内に載置する。スクリュー5は成形後に成形体から取り外すので、離型剤を塗布しておくのが好ましい。リン酸カルシウム粒子100、合成樹脂粒子I及びIIの混合物13がスクリュー5の周囲を取り囲むように固定型12のキャビティ12aに充填する。また合成樹脂粒子I及びIIは、リン酸カルシウム粒子100を取り囲むように配置する。リン酸カルシウム粒子100/合成樹脂粒子I及びIIの重量比は1/9〜3/1であるのが好ましい。重量比が3/1超であると、リン酸カルシウム粒子100の周囲が合成樹脂粒子I及びIIで満たされず、リン酸カルシウム粒子100が脱落しやすくなる。一方1/9未満であると、リン酸カルシウムの割合が低すぎ、生体適合性が低下するので好ましくない。
【0032】
(5) 加圧加熱処理
図9に示すように、頭部5aにスペーサ22を嵌めたスクリュー5及び混合物13をキャビティ12aに充填し、成形部12を組立てる。次に真空チャンバ16を密閉して真空ポンプ17により脱気し、1Pa程度の真空度に保つ。脱気の後でN2やHe、Ar等の不活性ガスを導入してもよい。この処理で脱酸素(低濃度)状態にすることにより、合成樹脂の酸化分解を防止できる。
【0033】
制御部20により加圧駆動機構19が作動すると、ラム15a,15bの少なくとも一方が互いに近接する方向に移動し、これらに固定されたパンチ14a,14bは混合物13を加圧する。パンチ14a,14bによる加圧力は0.5〜50 MPaとするのが好ましく、1.0〜20 MPaとするのがより好ましい。加圧力が0.5 MPaより小さいと、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子100が複合体から脱落しやすくなる。また50 MPaより大きくしてもそれに見合う形態保持性の向上が得られず、かえってリン酸カルシウム粒子が崩壊する等の問題が生じるだけである。
【0034】
電源18によってパンチ14a,14bを加熱することにより、混合物13は加圧下で加熱される。混合物13の加熱は、予め設定した昇温プログラムに従って行うのがよい。その場合、固定型12に設けられた熱電対(図示せず)により混合物13の温度を検出し、熱電対の出力を制御部20に入力する。制御部20は入力した温度データに基づき昇温プログラム通りに昇温するための信号を作成し、それを電源18に出力する。電源18は制御部20からの命令に従い、適当な電流をラム15a,15bに供給する。
【0035】
加熱温度は130〜300℃とするのが好ましく、150〜250℃とするのがより好ましい。加熱温度が130℃未満だと、合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子100と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子100が複合体から脱落しやすい。また加熱温度が300℃超だと合成樹脂粒子Iが粒子形状を保てず、溶融して一体化してしまう場合があるので好ましくない。
【0036】
加熱時間(加熱温度を保持する時間)は1〜30分間とするのが好ましい。加熱時間が1分より短いと合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子100と十分に密着できなくなり、また30分より長くしても密着力は向上しないので好ましくない。より好ましい加熱時間は3〜10分間である。
【0037】
加圧加熱処理終了後、形成したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる成形体を室温まで放冷し、キャビティ12aより取り出す。得られた成形体からスクリュー5を取り外すと、スクリュー用の穴1aとなっている。
【0038】
(6) 機械加工
成形体を切削し、係止部3を設ける。切削方法は特に限定されず、旋盤等一般的なものを使用することができる。またスリット4を設ける場合は、一般的な切断機を使用してスクリュー固定用素子1の該当する部分を切抜けばよい。係止部3及びスリット4を設ける順序は、特に限定されない。
【0039】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例1
1200℃の大気炉で焼成した4.0 gの多孔質リン酸カルシウム粒子100(粒径0.2〜0.6 mm、カルシウム/リンのモル比1.67)、2.0 gの架橋アクリル粉体I(平均粒径3.0 μm、ケミスノーMX-300、綜研化学(株)製)、及び2.0 gの非架橋アクリル粉体II(平均粒径1.5 μm、ケミスノーMP-1400、綜研化学(株)製)を混合した。
【0041】
図10に示すように、スクリュー5の頭部5aにスペーサ22を嵌め、スペーサ22が下側になるようにキャビティ12a内に載置し、スクリュー5、スペーサ40、及び多孔質リン酸カルシウム粒子100と、合成樹脂粒子Iと、合成樹脂粒子IIとの混合物を図7〜図9に示す加圧加熱装置の成形型(内径10 mm)に充填した。成形型中の混合物を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を200℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0042】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる一次成形体(外径10 mm、高さ70 mm)を旋盤で加工し、図1に示す構造のスクリュー固定用素子(外径8mm、内径3.5 mm、長さ65 mm)を作製した。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のスクリュー固定用素子はリン酸カルシウム粒子と、合成樹脂粒子I及び合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなることにより、靭性及び耐衝撃性に優れるため、骨に設けた下穴に挿入する際に折れるおそれが少なく、スクリューの固定に好適である。また本発明のスクリュー固定用素子は、上記の混合物を加圧加熱処理する際に、成形型内に混合物とともにスクリューを入れ、混合物がスクリューを取り囲むように配置し、形成したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる成形体を切削することにより容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスクリュー固定用素子の一例を示す縦断面図である。
【図2】 本発明のスクリュー固定用素子の別の例を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。
【図3】 本発明のスクリュー固定用素子のさらに別の例を示す縦断面図である。
【図4】 本発明のスクリュー固定用素子のさらに別の例を示す図であり、(a)は縦断面図であり、(b)は側面図である。
【図5】 本発明のスクリュー固定用素子を示す部分拡大断面図である。
【図6】 本発明のスクリュー固定用素子の使用方法の一例を示す図であり、(a)は骨に開けた下穴にスクリュー固定用素子を挿入する工程を示し、(b)は骨補強材を載置した状態を示し、(c)はスクリュー固定用素子の穴にスクリューをねじ込む工程を示し、(d)は骨補強材が固定された状態を示す。
【図7】 本発明の方法を実施するための真空加圧加熱装置の構成を示す概略図である。
【図8】 図7に示す真空加圧加熱装置の成形部を示す分解図である。
【図9】 図7に示す真空加圧加熱装置の成形部に入れた充填物を加圧加熱処理する工程を示す縦断面図である。
【図10】 スクリューにキャップを装着する工程を示し、(a)は組立図であり、(b)は装着した状態を示す側面図である。
【図11】 図7に示す真空加圧加熱装置の成形部にキャップを嵌めたスクリューを載置した後で、リン酸カルシウムと合成樹脂粒子との混合物充填する工程を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1・・・スクリュー固定用素子
1a・・・穴
2・・・本体部
3・・・係止部
4・・・スリット
5・・・スクリュー
5a・・・頭部
5b・・・付け根部
6・・・骨補強材
6a・・・開口部
7・・・骨
7a・・・下穴
11・・・加圧加熱装置
12・・・固定型
12aキャビティ
13・・・混合物
14a、14b・・・パンチ
15a、15b・・・ラム
16・・・真空チャンバ
17・・・真空ポンプ
18・・・電源
19・・・加圧駆動機構
20・・・制御部
21・・・ガスポンプ
22a、22b・・・スペーサ
100・・・リン酸カルシウム粒子
I、II・・・合成樹脂粒子
Claims (16)
- 骨に形成した下穴に挿入するスクリュー固定用素子であって、リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理したリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなり、前記合成樹脂粒子 II の含有量は前記合成樹脂粒子 I 及び前記合成樹脂粒子 II の合計量に対して5〜 80 質量%であることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1に記載のスクリュー固定用素子において、前記合成樹脂粒子が前記リン酸カルシウム粒子と密着していることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1又は2に記載のスクリュー固定用素子において、前記合成樹脂粒子I及び前記合成樹脂粒子IIが非水溶性アクリル系樹脂又はポリスチレン樹脂からなることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、前記リン酸カルシウム粒子が焼成されていることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、前記リン酸カルシウム粒子におけるカルシウム/リンのモル比が1.4〜2.0であることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、前記リン酸カルシウム粒子が平均粒径0.001 mm〜1mmの多孔質粒子であることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、前記リン酸カルシウム粒子/前記合成樹脂粒子の質量比が1/9〜3/1であることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、中心軸に沿ってスクリュー用の穴を有する柱状体からなることを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、骨に係合するための係止部を有することを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、長手方向にスリットを有することを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のスクリュー固定用素子において、0.5 mm以上の厚さを有することを特徴とするスクリュー固定用素子。
- 請求項1〜11のいずれかに記載のスクリュー固定用素子を製造する方法において、(a) 前記スクリューの頭部にキャップを装着した状態で成形型のキャビティ内に載置し、(b) 前記リン酸カルシウム粒子と前記合成樹脂粒子I及びIIとの混合物を実質的に均一に前記キャビティ内に充填し、(c) 前記合成樹脂粒子が前記リン酸カルシウム粒子と密着するように、前記成形型内の充填物を加圧加熱処理することにより、前記スクリュー用の穴を有するリン酸カルシウム−合成樹脂複合材からなる成形体を形成することを特徴とする方法。
- 請求項12に記載のスクリュー固定用素子の製造方法において、前記成形体の外面に機械加工により係止部を形成することを特徴とする方法。
- 請求項12又は13に記載のスクリュー固定用素子の製造方法において、前記加圧加熱処理を真空中又は酸素を含まない雰囲気中で行うことを特徴とする方法。
- 請求項12〜14のいずれかに記載のスクリュー固定用素子の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子を焼成することを特徴とする方法。
- 請求項15に記載のスクリュー固定用素子の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子の焼成温度が500〜1300℃であることを特徴とする方法。
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