JP2004222806A - リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた加工性、生体適合性及び耐水性を有するとともに、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離することのないリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窓101を具備する金属部材100にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が充填されたリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法であって、(a) リン酸カルシウム粒子300と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体とし、(b) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を金属部材100に嵌合した状態で成形型に入れ、(c) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を窓101から露出させる方法及びこの方法により得られ、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子200及び金属部材100と密着しているリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体、及びその製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】窓101を具備する金属部材100にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が充填されたリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法であって、(a) リン酸カルシウム粒子300と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体とし、(b) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を金属部材100に嵌合した状態で成形型に入れ、(c) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を窓101から露出させる方法及びこの方法により得られ、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子200及び金属部材100と密着しているリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体、及びその製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた加工性、生体適合性及び耐水性を有するとともに、衝撃に強いリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウムは生体適合性に優れ、人口歯根、骨補強材、歯科用セメント等の生体材料として利用されているが、セラミックスであるため靭性に劣り、耐衝撃性を必要とする部分には使用できない。そのため人口歯根、骨補強材等としては、チタンやステンレススチール等、人体為害性のない金属材料が使用されている。しかしながら、生体適合性の観点からはリン酸カルシウム系化合物の方がはるかに優れているため、リン酸カルシウム系化合物、なかでもハイドロキシアパタイトを使用することが望まれている。
【0003】
このような事情の下、リン酸カルシウム系化合物をガラス材料、合成樹脂、金属材料と複合化することが試みられており、既に一部は実用化されている。ところがガラス材料と複合化した場合、ガラスが生体内で経時的に溶出するだけでなく、靭性が不足するという問題がある。
【0004】
溶融した合成樹脂とリン酸カルシウム粒子とを混練し、複合化する試みも行われているが、混練時にリン酸カルシウム粒子が崩壊しやすく、また複合体を成形加工する際に溶融した合成樹脂が、リン酸カルシウム粒子の表面を覆いやすいという欠点がある。さらに切削加工時にバリが生じるといった問題もある。
【0005】
このため本出願人は先に、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂の架橋粒子とを加圧加熱処理することにより、合成樹脂の架橋粒子同士を密着させることを提案した(特許文献1参照)。さらに架橋されていない合成樹脂粒子を用い、合成樹脂粒子同士を密着させることにより、水分に対して安定なリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を作製することを提案した(特願2001−343489号)。
【0006】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の生体適合性を向上させるため、上記複合体とリン酸カルシウムブロックを複合化させた例がある。しかしながら、この複合体は優れた加工性、生体適合性及び耐水性を有するが、補強材として合成樹脂を用いているため、複合体の耐衝撃性はそれほど高くない。
【0007】
また本出願人は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物と、金属部材とからなり、リン酸カルシウム粒子が複合体の表面の少なくとも一部に露出しているリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を開示した(特願2002−244690号)。この複合体は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物及び金属部材を成形型に入れ、加圧加熱処理することにより得られ、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム及び金属部材に密着している。この複合体はリン酸カルシウム粒子の露出により生体親和性を具備しており、金属部材を補強材とすることにより強度が向上している。しかしこのリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体においては、合成樹脂粒子が金属部材に密着することによりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材に密着しているものの、その強度は十分でなく、使用中の衝撃によりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から外れてしまうという問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−265795号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、優れた加工性、生体適合性、耐水性及び耐衝撃性を具備するとともに、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離しないリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、リン酸カルシウム粒子、合成樹脂粒子及び金属部材からなるリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法において、金属部材に窓を設け、リン酸カルシウム粒子と、合成樹脂粒子との混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体としたものを金属部材に嵌合させた状態で成形型に入れて加圧加熱処理すると、軟化したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が窓から露出するとともに、窓の形状となって金属部材に嵌合するため、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離しないリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法は、窓を具備する金属部材にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が充填されたリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法であって、(a) リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体とし、(b) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に嵌合した状態で成形型に入れ、(c) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を窓から露出させることを特徴とする。
【0012】
金属部材に入れたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加熱する温度は、130〜300℃であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子、合成樹脂粒子I及びIIの混合物を加熱する温度は130〜300℃であって、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の加熱温度以下であることが好ましい。リン酸カルシウム粒子/合成樹脂粒子の質量比は1/9〜8/2であるのが好ましい。
【0013】
リン酸カルシウム粒子は平均粒径0.001 mm〜10 mmの多孔質粒子であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子は焼成されているのが好ましく、焼成温度は500〜1300℃であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子におけるリン酸/カルシウムのモル比は、1.4〜2.0であるのが好ましい。
【0014】
合成樹脂粒子I及び前記合成樹脂粒子IIは、非水溶性アクリル系樹脂又はポリスチレン樹脂からなるのが好ましい。また合成樹脂粒子IIの含有量は、合成樹脂粒子I及び合成樹脂粒子IIの合計量に対して0.2〜50質量%であるのが好ましい。金属部材はチタン、チタン合金又はステンレススチールからなるのが好ましい。
【0015】
本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子からなるリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が、窓を具備する金属部材内に実質的に隙間無く充填し、かつ窓からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が露出しており、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子及び金属部材と密着していることを特徴とする。またリン酸カルシウム−合成樹脂複合体は金属部材内に気密に嵌合しており、金属部材から脱離しないのが好ましい。
【発明の実施の形態】
【0016】
[1] 原料
(1) リン酸カルシウム粒子
リン酸カルシウム粒子におけるカルシウム/リンのモル比は1.4〜2.0とするのが好ましい。リン酸カルシウムの具体例としては、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト等のアパタイト類の他、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム及びこれらの混合粉体等が挙げられる。
【0017】
リン酸カルシウム粒子は多孔質粒子であっても緻密粒子であっても良いが、多孔質であるのが好ましい。多孔質粒子の場合、気孔率は20〜70%であるのが好ましい。多孔質粒子の細孔は大小様々であるが、10〜2000 μmの径を有するのが好ましい。
【0018】
リン酸カルシウム粒子は、平均粒径が0.001〜10 mmとなるように粒度調整するのが好ましい。リン酸カルシウム粒子のより好ましい平均粒径は0.01〜6mmである。リン酸カルシウム粒子の平均粒径が10 mm超であると、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の使用時に、リン酸カルシウム粒子に強度がかかることにより、粒子が破損及び/又は脱落しやすくなるので好ましくない。また0.001 mm未満であると、リン酸カルシウム粒子が凝集しやすくなるため分散性が悪化する上、コストが高くなる。
【0019】
リン酸カルシウム粒子は、加圧加熱処理前に焼成するのが好ましい。焼成温度は500〜1300℃が好ましく、700〜1200℃がより好ましい。焼成温度が500℃より低いと、加圧加熱処理中にリン酸カルシウム粒子が崩壊しやすくなる。特に多孔質のリン酸カルシウム粒子の場合、加圧により変形し、気孔がつぶれて気孔性が失われることがある。また仮焼結温度が1300℃より高いと、リン酸カルシウム系化合物の分解又は劣化が起こるので好ましくない。
【0020】
焼成時間(上記焼成温度を保持する時間)は、1〜10時間とするのが好ましい。焼成時間が1時間未満であると焼成によるリン酸カルシウム粒子の補強効果が十分に得られない。また10時間を超えて処理しても効果に変化が見られず、コスト高となるだけである。より好ましい焼成時間は2〜5時間である。焼成雰囲気は特に限定されないが、リン酸カルシウム粒子の分解を防止するため、大気中で行うのが好ましい。
【0021】
(2) 合成樹脂粒子
合成樹脂粒子は、予め少なくとも部分的に架橋した合成樹脂粒子I、及び架橋されていない合成樹脂粒子IIからなる。合成樹脂粒子I及びIIとしては、人体為害性のないものであれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。合成樹脂粒子I及びIIは非水溶性のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂等からなるのが好ましく、ポリメチルメタクリレートからなるのが特に好ましい。合成樹脂粒子I及びIIは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0022】
合成樹脂粒子I及びIIの平均粒径はいずれも0.05〜500 μmであるのが好ましく、0.1〜100 μmであるのがより好ましい。また合成樹脂粒子の平均粒径は、リン酸カルシウム粒子の平均粒径より小さいのが好ましい。
【0023】
合成樹脂粒子IIの含有量は、合成樹脂粒子I及びIIの合計量に対して0.2〜50質量%であるのが好ましい。合成樹脂粒子IIの含有量が0.2質量%未満の場合、複合体は水分に対する十分な安定性を得ることができない。また含有量が50質量%超の場合、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物及び/又はリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加圧加熱処理する工程において、多孔性のリン酸カルシウム粒子内に合成樹脂粒子IIが侵入する恐れがあるのみならず、複合体の加工性も低い。
【0024】
(3) 金属部材
金属部材としては、複合体の補強材として働くための十分な強度を有し、人体為害性のないものであれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。好ましくは、純チタン、チタン合金、ステンレススチール等である。
【0025】
金属部材は(a)中空であって、(b)上端及び/又は下端が開放しており、(c)側壁に窓を具備しているのが好ましい。具体的には断面が円形、小判形、長方形等の筒状であって、側壁に窓を具備するものが使用できる。
【0026】
図2は金属部材100の一例を示す。この金属部材100は、断面長方形の筒状であって上端102及び下端103が開放しており、一対の側壁に窓101を2つずつ有している。図3は金属部材100の別の例を示す。この金属部材100は円筒状であって上端102及び下端103が開放しており、側壁に8個の窓101を等間隔に具備している。
【0027】
金属部材100の厚さは、0.5 mm〜20 mmであるのが好ましい。金属部材100の厚さが0.5 mm未満であると強度が十分でなく、また20 mm超であると、得られるリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の生体適合性が低い。金属部材100に設けられる窓101の数は特に限定されないが、直方体のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の場合、実用的には一面あたり0〜5程度であり、好ましくは1〜4程度である。各側壁の面積に占める窓101の合計面積の割合は、5〜80%程度とするのが好ましい。窓101の面積の割合が80%以上であると、複合体の補強材として十分な強度が得られず、5%未満であるとリン酸カルシウムが表面に露出する面積が少なく、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の生体適合性が低くなる。合成樹脂との密着力を向上させるため、加圧加熱処理前に予め金属部材100の表面にアンカリング等の加工をしてもよい。
【0028】
[2] リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体
図4はリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の一例を示す。図4(a)に示すように、窓101からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が露出している。図4(b)は図4(a)のA−A断面図である。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200は加圧加熱処理により軟化して変形し、金属部材100内に隙間なく充填するとともに窓101に嵌合している。図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200は窓101の他、金属部材100の上端102及び下端103からも露出している。
【0029】
図5は金属部材100内に充填したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の拡大断面図である。図5に示すように、後述する加圧加熱処理により合成樹脂粒子IIは軟化するか溶融して各粒子の空隙に入り込んでおり、リン酸カルシウム粒子300及び合成樹脂粒子Iに密着している。合成樹脂粒子Iはある程度形状を保ったまま軟化して、リン酸カルシウム粒子300等に密着している。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体中のリン酸カルシウム粒子300は、合成樹脂粒子I及びIIによって表面を覆われることなく露出している。このためリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は生体親和性を示す。
【0030】
[3] 加圧加熱処理装置
本発明は、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造するのに加圧加熱法を利用する。具体的には、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を製造した後で、得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に入れたものを加圧加熱処理し、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する。これらの複合体を製造するのに好ましい加圧加熱法としては、熱源に接続した一対の成形型の間に、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物、又はリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に嵌めたものを入れ、加圧しながら加熱する方法が挙げられる。加圧加熱処理は真空中、又はN2、He、Ar等の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0031】
図6〜図8は、真空又は不活性ガス雰囲気中で加圧加熱処理を行う装置の一例を示す。以下リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の製造の場合を例としてこの加圧加熱処理装置を説明するが、この装置はリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造にも使用可能である。図6に示すように、加圧加熱装置1は真空ポンプ7が設けられた真空チャンバ6と、その中に配置された成形型2と、成形型2内のキャビティ2aに加えられたリン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物3を加圧及び加熱する一対のパンチ4a,4bと、各パンチ4a,4bを駆動するラム5a,5bとを有する。成形型2内には、処理温度を測定するための熱電対(図示せず)が設けられている。またガスポンプ11にはガス導入口及びガスボンベ(図示せず)が設けられている。
【0032】
各ラム5a,5bは、加圧駆動機構9により駆動されて混合物3を加圧するとともに、給電端子(図示せず)を介して接続した電源8から電力の供給を受け、パンチ4a,4bを加熱する。制御部10は加圧駆動機構9、電源8、真空ポンプ7及び熱電対に接続しており、成形型2内の加圧力及び加熱温度、真空チャンバ6内の真空度等を制御する。
【0033】
図7に示すように、成形型2は環状構造を有し、断面が円形、小判形、長方形等のキャビティ2aを有する。各パンチ4a,4bは成形型2のキャビティ2a内を上下動するように、キャビティ2aより僅かに小さい断面を有する。各パンチ4a,4bはラム5a,5bに固定されている。
【0034】
なおリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造に使用する場合には、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を嵌めた金属部材100を加圧加熱処理するため、成形型2の内径を金属部材100の外径より0.1〜5.0 mm大きくするのが好ましい。成形型2の内径が金属部材100の外径より5.0 mm以上大きいと、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が金属部材100の窓101から溢れ出過ぎ、金属部材100の上部に隙間ができるおそれがあるので好ましくない。
【0035】
[4] リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の製造
(1) リン酸カルシウム及び合成樹脂粒子の充填
図9に示すように合成樹脂粒子I及びIIがリン酸カルシウム粒子300を取り囲むように、リン酸カルシウム粒子300、合成樹脂粒子I及びIIの混合物を成形型2のキャビティ2aに充填する。リン酸カルシウム粒子300/合成樹脂粒子I及びIIの重量比は1/9〜8/2であるのが好ましい。重量比が8/2超だと、リン酸カルシウム粒子300の周囲が合成樹脂粒子I及びIIで満たされず、リン酸カルシウム粒子300が脱落しやすくなる。一方1/9未満だと、リン酸カルシウムの割合が低すぎ、生体適合性が低下するので好ましくない。
【0036】
(2) 加圧加熱処理
図8に示すように混合物3をキャビティ2aに充填し、成形部12を組立てた後、真空チャンバ6を密閉して真空ポンプ7により脱気し、1Pa程度の真空度に保つ。その後N2やHe、Ar等の不活性ガスを導入してもよい。この処理で脱酸素(低濃度)状態にすることにより、合成樹脂の酸化分解を防止できる。
【0037】
制御部10により加圧駆動機構9が作動すると、ラム5a,5bの少なくとも一方が互いに近接する方向に移動し、これらに固定されたパンチ4a,4bは混合物3を加圧する。パンチ4a,4bによる加圧力は0.5〜50 MPaとするのが好ましく、1.0〜20MPaとするのがより好ましい。加圧力が0.5 MPaより小さいと、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子300が複合体から脱落しやすくなる。また50 MPaより大きくしてもそれに見合う形態保持性の向上が得られず、かえってリン酸カルシウム粒子が崩壊する等の問題が生じるだけである。
【0038】
電源8によってパンチ4a,4bを加熱することにより、混合物3は加圧下で加熱される。混合物3の加熱は、予め設定した昇温プログラムに従って行うのがよい。その場合、成形型2に設けられた熱電対(図示せず)により混合物3の温度を検出し、熱電対の出力を制御部10に入力する。制御部10は入力した温度データに基づき昇温プログラム通りに昇温するための信号を作成し、それを電源8に出力する。電源8は制御部10からの命令に従い、適当な電流をラム5a,5bに供給する。
【0039】
加熱温度は、130〜300℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。加熱温度が130℃未満だと、合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子300と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子300が複合体から脱落しやすい。また加熱温度が300℃超だと合成樹脂粒子Iが粒子形状を保てず、溶融して一体化してしまう場合があるので好ましくない。
【0040】
加熱時間(加熱温度を保持する時間)は1〜30分間とするのが好ましい。加熱時間が1分より短いと合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子300と十分に密着できなくなり、また30分より長くしても密着力は向上しないので好ましくない。より好ましい加熱時間は3〜10分間である。
【0041】
加圧加熱処理終了後のリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を室温まで放冷し、キャビティより取り出す。複合体の表面にリン酸カルシウム粒子が十分露出していない場合は、表面を研削してもよい。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200はフライス盤等により容易に研削できる上、加熱により軟化して変形する。
【0042】
[4] リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造
(1) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材の充填
図10に示すように、金属部材100にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を嵌め、成形型2のキャビティ2aに入れる。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の体積は、金属部材の容積の1.1〜3.0倍にするのが好ましい。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の体積が1.1倍未満であると、後述する加圧加熱処理により金属部材内に隙間無く充填するのが困難である。また3.0倍以上としても、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が窓から金属部材外に溢れ出て無駄となるだけである。
【0043】
(2) 加圧加熱処理
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体と金属部材100を加圧加熱処理する方法は、リン酸カルシウム粒子300と合成樹脂粒子I及びIIの混合物3の場合とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。図1に示すように、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を金属部材100に嵌めたものをキャビティ2aに入れて成形部12を組立てた後、真空チャンバ6内を1Pa程度の真空度に保つ。制御部10により加圧駆動機構9が作動すると、パンチ4a,4bはリン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を加圧する。パンチ4a,4bによる加圧力は0.5〜50 MPaとするのが好ましく、1.0〜20 MPaとするのがより好ましい。
【0044】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200及び金属部材100を加圧下で加熱する。加熱温度は、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の作製温度と同じかそれ以上であって、かつ130〜300℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。加熱により得られるリン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度は加熱温度に比例して増大するため、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度を大きくすることができる。
【0045】
加熱時間は1〜30分間とするのが好ましい。加熱時間が1分より短いとリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が金属部材内100に十分に充満せず、また30分より長くすると、軟化したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が窓101から溢れ出すぎるので好ましくない。より好ましい加熱時間は3〜10分間である。
【0046】
加圧加熱処理後、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を室温まで放冷し、キャビティ2aより取り出す。加圧加熱処理により金属部材内にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が充填するとともに、金属部材100の窓101からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が溢れ出た状態となっている。この溢れ出たリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を削り取ることにより、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得られる。
【0047】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
1200℃の大気炉で焼成した4.0 gの多孔質リン酸カルシウム粒子300(粒径0.2〜0.6 mm、カルシウム/リンのモル比1.67)、1.6 gの架橋アクリル粉体I(平均粒径3.0 μm、ケミスノーMX−300、綜研化学(株)製)、及び0.40 gの非架橋アクリル粉体II(平均粒径1.5 μm、ケミスノーMP−1400、綜研化学(株)製)を混合した。
【0049】
多孔質リン酸カルシウム粒子300と、合成樹脂粒子Iと、合成樹脂粒子IIとの混合物を図6〜図8に示す加圧加熱装置の成形型(内径17.0 mm×21.0 mm)に充填した。成形型中の混合物を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を160℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0050】
得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体をフライス盤で加工し、5.9 mm×15.8 mm×20.0 mmの複合体200を得た。図4に示す構造のリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を得るために、図2に示す金属部材100(チタン製、外径20.0 mm×10.0 mm、窓5.0 mm×8.0 mm、厚さ2.0 mm)と複合体200を、図1に示すように成形型(内径10.1 mm×20.1 mm)に充填した。成形型中の金属部材100と複合体200を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を200℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0051】
金属部材100の各窓101から、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が溢れ出ていた。溢れ出たリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を、フライス盤を用いて取り除き、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得た。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体は窓101に嵌合しており、金属部材100から脱離しなかった。また窓101から露出したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、リン酸カルシウムがアクリル樹脂に覆われることなく表面に良好に露出していた。
【0052】
実施例2
1000℃の大気炉で焼成した6.0 gの多孔質リン酸カルシウム粒子300(粒径0.1〜0.3 mm、カルシウム/リンのモル比1.67)、5.85 gの架橋アクリル粉体I(平均粒径15.0 μm、ケミスノーMP−1500H、綜研化学(株)製)、及び0.15 gの非架橋アクリル粉体II(平均粒径0.4 μm、ケミスノーMP−1000、綜研化学(株)製)を混合した。
【0053】
多孔質リン酸カルシウム粒子300と、合成樹脂粒子Iと、合成樹脂粒子IIとの混合物を図6〜図8に示す加圧加熱装置の成形型(断面円形、内径17.0 mm)に充填した。成形型中の混合物を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を200℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0054】
得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を旋盤で加工し、外径17.8 mm、高さ20.0 mmの円柱状とした。図3に示す円筒状の金属部材100(SUS316L、外径20.0 mm×高さ13.5 mm、窓2.0 mm×7.5 mm、厚さ2.0 mm)とリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を、図1に示すように成形型(断面円形、内径20.1 mm)に入れた。成形型中の金属部材100と複合体200を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を250℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0055】
金属部材100の各窓101から溢れ出ていたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を旋盤により取り除き、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得た。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体は窓101に嵌合しており、金属部材100から脱離しなかった。また窓101から露出したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、リン酸カルシウムがアクリル樹脂に覆われることなく表面に良好に露出していた。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の製造方法により、金属部材を補強材として耐衝撃性を具備するとともに、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が露出することにより生体親和性を備え、かつリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離することの無いリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造することができる。またリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を比較的高温で加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度を増加させる効果が得られる。本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は、使用中の衝撃等によりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から外れることが無いため、耐衝撃性と生体親和性を兼ね備えた材料として、人口歯根、骨補強材等の生体材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための真空加圧加熱装置の成形部に、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を入れた状態を示す縦断面図である。
【図2】金属部材の一例を示す斜視図である。
【図3】金属部材の別の例を示す斜視図である。
【図4】本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を示し、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図5】リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の方法を実施するための真空加圧加熱装置の構成を示す概略図である。
【図7】図6に示す真空加圧加熱装置の成形部を示す分解図である。
【図8】図6に示す真空加圧加熱装置の成形部にリン酸カルシウムと合成樹脂粒子との混合物を充填した状態を示す縦断面図である。
【図9】リン酸カルシウムと合成樹脂粒子との混合物を示す拡大断面図である。
【図10】リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を真空加圧加熱装置の成形部に充填する工程を示す組立図である。
【符号の説明】
1・・・加圧加熱装置
2・・・成形型
2a・・・成形型のキャビティ
3・・・リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIとの混合物
4a・・・上パンチ
4b・・・下パンチ
5a,5b・・・ラム
6・・・真空チャンバ
7・・・真空ポンプ
8・・・電源
9・・・加圧駆動機構
10・・・制御部
11・・・ガスポンプ
12・・・成形部
100・・・金属部材
101・・・窓
102・・・上端
103・・・下端
200・・・リン酸カルシウム−合成樹脂複合体
300・・・リン酸カルシウム粒子
I、II・・・合成樹脂粒子
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた加工性、生体適合性及び耐水性を有するとともに、衝撃に強いリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウムは生体適合性に優れ、人口歯根、骨補強材、歯科用セメント等の生体材料として利用されているが、セラミックスであるため靭性に劣り、耐衝撃性を必要とする部分には使用できない。そのため人口歯根、骨補強材等としては、チタンやステンレススチール等、人体為害性のない金属材料が使用されている。しかしながら、生体適合性の観点からはリン酸カルシウム系化合物の方がはるかに優れているため、リン酸カルシウム系化合物、なかでもハイドロキシアパタイトを使用することが望まれている。
【0003】
このような事情の下、リン酸カルシウム系化合物をガラス材料、合成樹脂、金属材料と複合化することが試みられており、既に一部は実用化されている。ところがガラス材料と複合化した場合、ガラスが生体内で経時的に溶出するだけでなく、靭性が不足するという問題がある。
【0004】
溶融した合成樹脂とリン酸カルシウム粒子とを混練し、複合化する試みも行われているが、混練時にリン酸カルシウム粒子が崩壊しやすく、また複合体を成形加工する際に溶融した合成樹脂が、リン酸カルシウム粒子の表面を覆いやすいという欠点がある。さらに切削加工時にバリが生じるといった問題もある。
【0005】
このため本出願人は先に、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂の架橋粒子とを加圧加熱処理することにより、合成樹脂の架橋粒子同士を密着させることを提案した(特許文献1参照)。さらに架橋されていない合成樹脂粒子を用い、合成樹脂粒子同士を密着させることにより、水分に対して安定なリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を作製することを提案した(特願2001−343489号)。
【0006】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の生体適合性を向上させるため、上記複合体とリン酸カルシウムブロックを複合化させた例がある。しかしながら、この複合体は優れた加工性、生体適合性及び耐水性を有するが、補強材として合成樹脂を用いているため、複合体の耐衝撃性はそれほど高くない。
【0007】
また本出願人は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物と、金属部材とからなり、リン酸カルシウム粒子が複合体の表面の少なくとも一部に露出しているリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を開示した(特願2002−244690号)。この複合体は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物及び金属部材を成形型に入れ、加圧加熱処理することにより得られ、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム及び金属部材に密着している。この複合体はリン酸カルシウム粒子の露出により生体親和性を具備しており、金属部材を補強材とすることにより強度が向上している。しかしこのリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体においては、合成樹脂粒子が金属部材に密着することによりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材に密着しているものの、その強度は十分でなく、使用中の衝撃によりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から外れてしまうという問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−265795号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、優れた加工性、生体適合性、耐水性及び耐衝撃性を具備するとともに、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離しないリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、リン酸カルシウム粒子、合成樹脂粒子及び金属部材からなるリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法において、金属部材に窓を設け、リン酸カルシウム粒子と、合成樹脂粒子との混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体としたものを金属部材に嵌合させた状態で成形型に入れて加圧加熱処理すると、軟化したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が窓から露出するとともに、窓の形状となって金属部材に嵌合するため、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離しないリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0011】
すなわち本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法は、窓を具備する金属部材にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が充填されたリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法であって、(a) リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体とし、(b) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に嵌合した状態で成形型に入れ、(c) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を窓から露出させることを特徴とする。
【0012】
金属部材に入れたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加熱する温度は、130〜300℃であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子、合成樹脂粒子I及びIIの混合物を加熱する温度は130〜300℃であって、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の加熱温度以下であることが好ましい。リン酸カルシウム粒子/合成樹脂粒子の質量比は1/9〜8/2であるのが好ましい。
【0013】
リン酸カルシウム粒子は平均粒径0.001 mm〜10 mmの多孔質粒子であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子は焼成されているのが好ましく、焼成温度は500〜1300℃であるのが好ましい。リン酸カルシウム粒子におけるリン酸/カルシウムのモル比は、1.4〜2.0であるのが好ましい。
【0014】
合成樹脂粒子I及び前記合成樹脂粒子IIは、非水溶性アクリル系樹脂又はポリスチレン樹脂からなるのが好ましい。また合成樹脂粒子IIの含有量は、合成樹脂粒子I及び合成樹脂粒子IIの合計量に対して0.2〜50質量%であるのが好ましい。金属部材はチタン、チタン合金又はステンレススチールからなるのが好ましい。
【0015】
本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子からなるリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が、窓を具備する金属部材内に実質的に隙間無く充填し、かつ窓からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が露出しており、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子及び金属部材と密着していることを特徴とする。またリン酸カルシウム−合成樹脂複合体は金属部材内に気密に嵌合しており、金属部材から脱離しないのが好ましい。
【発明の実施の形態】
【0016】
[1] 原料
(1) リン酸カルシウム粒子
リン酸カルシウム粒子におけるカルシウム/リンのモル比は1.4〜2.0とするのが好ましい。リン酸カルシウムの具体例としては、ハイドロキシアパタイト、フッ素アパタイト等のアパタイト類の他、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム及びこれらの混合粉体等が挙げられる。
【0017】
リン酸カルシウム粒子は多孔質粒子であっても緻密粒子であっても良いが、多孔質であるのが好ましい。多孔質粒子の場合、気孔率は20〜70%であるのが好ましい。多孔質粒子の細孔は大小様々であるが、10〜2000 μmの径を有するのが好ましい。
【0018】
リン酸カルシウム粒子は、平均粒径が0.001〜10 mmとなるように粒度調整するのが好ましい。リン酸カルシウム粒子のより好ましい平均粒径は0.01〜6mmである。リン酸カルシウム粒子の平均粒径が10 mm超であると、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の使用時に、リン酸カルシウム粒子に強度がかかることにより、粒子が破損及び/又は脱落しやすくなるので好ましくない。また0.001 mm未満であると、リン酸カルシウム粒子が凝集しやすくなるため分散性が悪化する上、コストが高くなる。
【0019】
リン酸カルシウム粒子は、加圧加熱処理前に焼成するのが好ましい。焼成温度は500〜1300℃が好ましく、700〜1200℃がより好ましい。焼成温度が500℃より低いと、加圧加熱処理中にリン酸カルシウム粒子が崩壊しやすくなる。特に多孔質のリン酸カルシウム粒子の場合、加圧により変形し、気孔がつぶれて気孔性が失われることがある。また仮焼結温度が1300℃より高いと、リン酸カルシウム系化合物の分解又は劣化が起こるので好ましくない。
【0020】
焼成時間(上記焼成温度を保持する時間)は、1〜10時間とするのが好ましい。焼成時間が1時間未満であると焼成によるリン酸カルシウム粒子の補強効果が十分に得られない。また10時間を超えて処理しても効果に変化が見られず、コスト高となるだけである。より好ましい焼成時間は2〜5時間である。焼成雰囲気は特に限定されないが、リン酸カルシウム粒子の分解を防止するため、大気中で行うのが好ましい。
【0021】
(2) 合成樹脂粒子
合成樹脂粒子は、予め少なくとも部分的に架橋した合成樹脂粒子I、及び架橋されていない合成樹脂粒子IIからなる。合成樹脂粒子I及びIIとしては、人体為害性のないものであれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。合成樹脂粒子I及びIIは非水溶性のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂等からなるのが好ましく、ポリメチルメタクリレートからなるのが特に好ましい。合成樹脂粒子I及びIIは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。
【0022】
合成樹脂粒子I及びIIの平均粒径はいずれも0.05〜500 μmであるのが好ましく、0.1〜100 μmであるのがより好ましい。また合成樹脂粒子の平均粒径は、リン酸カルシウム粒子の平均粒径より小さいのが好ましい。
【0023】
合成樹脂粒子IIの含有量は、合成樹脂粒子I及びIIの合計量に対して0.2〜50質量%であるのが好ましい。合成樹脂粒子IIの含有量が0.2質量%未満の場合、複合体は水分に対する十分な安定性を得ることができない。また含有量が50質量%超の場合、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子との混合物及び/又はリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加圧加熱処理する工程において、多孔性のリン酸カルシウム粒子内に合成樹脂粒子IIが侵入する恐れがあるのみならず、複合体の加工性も低い。
【0024】
(3) 金属部材
金属部材としては、複合体の補強材として働くための十分な強度を有し、人体為害性のないものであれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。好ましくは、純チタン、チタン合金、ステンレススチール等である。
【0025】
金属部材は(a)中空であって、(b)上端及び/又は下端が開放しており、(c)側壁に窓を具備しているのが好ましい。具体的には断面が円形、小判形、長方形等の筒状であって、側壁に窓を具備するものが使用できる。
【0026】
図2は金属部材100の一例を示す。この金属部材100は、断面長方形の筒状であって上端102及び下端103が開放しており、一対の側壁に窓101を2つずつ有している。図3は金属部材100の別の例を示す。この金属部材100は円筒状であって上端102及び下端103が開放しており、側壁に8個の窓101を等間隔に具備している。
【0027】
金属部材100の厚さは、0.5 mm〜20 mmであるのが好ましい。金属部材100の厚さが0.5 mm未満であると強度が十分でなく、また20 mm超であると、得られるリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の生体適合性が低い。金属部材100に設けられる窓101の数は特に限定されないが、直方体のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の場合、実用的には一面あたり0〜5程度であり、好ましくは1〜4程度である。各側壁の面積に占める窓101の合計面積の割合は、5〜80%程度とするのが好ましい。窓101の面積の割合が80%以上であると、複合体の補強材として十分な強度が得られず、5%未満であるとリン酸カルシウムが表面に露出する面積が少なく、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の生体適合性が低くなる。合成樹脂との密着力を向上させるため、加圧加熱処理前に予め金属部材100の表面にアンカリング等の加工をしてもよい。
【0028】
[2] リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体
図4はリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の一例を示す。図4(a)に示すように、窓101からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が露出している。図4(b)は図4(a)のA−A断面図である。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200は加圧加熱処理により軟化して変形し、金属部材100内に隙間なく充填するとともに窓101に嵌合している。図4(c)は図4(a)のB−B断面図である。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200は窓101の他、金属部材100の上端102及び下端103からも露出している。
【0029】
図5は金属部材100内に充填したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の拡大断面図である。図5に示すように、後述する加圧加熱処理により合成樹脂粒子IIは軟化するか溶融して各粒子の空隙に入り込んでおり、リン酸カルシウム粒子300及び合成樹脂粒子Iに密着している。合成樹脂粒子Iはある程度形状を保ったまま軟化して、リン酸カルシウム粒子300等に密着している。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体中のリン酸カルシウム粒子300は、合成樹脂粒子I及びIIによって表面を覆われることなく露出している。このためリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は生体親和性を示す。
【0030】
[3] 加圧加熱処理装置
本発明は、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造するのに加圧加熱法を利用する。具体的には、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物を加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を製造した後で、得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に入れたものを加圧加熱処理し、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する。これらの複合体を製造するのに好ましい加圧加熱法としては、熱源に接続した一対の成形型の間に、リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物、又はリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を金属部材に嵌めたものを入れ、加圧しながら加熱する方法が挙げられる。加圧加熱処理は真空中、又はN2、He、Ar等の不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0031】
図6〜図8は、真空又は不活性ガス雰囲気中で加圧加熱処理を行う装置の一例を示す。以下リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の製造の場合を例としてこの加圧加熱処理装置を説明するが、この装置はリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造にも使用可能である。図6に示すように、加圧加熱装置1は真空ポンプ7が設けられた真空チャンバ6と、その中に配置された成形型2と、成形型2内のキャビティ2aに加えられたリン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIからなる混合物3を加圧及び加熱する一対のパンチ4a,4bと、各パンチ4a,4bを駆動するラム5a,5bとを有する。成形型2内には、処理温度を測定するための熱電対(図示せず)が設けられている。またガスポンプ11にはガス導入口及びガスボンベ(図示せず)が設けられている。
【0032】
各ラム5a,5bは、加圧駆動機構9により駆動されて混合物3を加圧するとともに、給電端子(図示せず)を介して接続した電源8から電力の供給を受け、パンチ4a,4bを加熱する。制御部10は加圧駆動機構9、電源8、真空ポンプ7及び熱電対に接続しており、成形型2内の加圧力及び加熱温度、真空チャンバ6内の真空度等を制御する。
【0033】
図7に示すように、成形型2は環状構造を有し、断面が円形、小判形、長方形等のキャビティ2aを有する。各パンチ4a,4bは成形型2のキャビティ2a内を上下動するように、キャビティ2aより僅かに小さい断面を有する。各パンチ4a,4bはラム5a,5bに固定されている。
【0034】
なおリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造に使用する場合には、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を嵌めた金属部材100を加圧加熱処理するため、成形型2の内径を金属部材100の外径より0.1〜5.0 mm大きくするのが好ましい。成形型2の内径が金属部材100の外径より5.0 mm以上大きいと、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が金属部材100の窓101から溢れ出過ぎ、金属部材100の上部に隙間ができるおそれがあるので好ましくない。
【0035】
[4] リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の製造
(1) リン酸カルシウム及び合成樹脂粒子の充填
図9に示すように合成樹脂粒子I及びIIがリン酸カルシウム粒子300を取り囲むように、リン酸カルシウム粒子300、合成樹脂粒子I及びIIの混合物を成形型2のキャビティ2aに充填する。リン酸カルシウム粒子300/合成樹脂粒子I及びIIの重量比は1/9〜8/2であるのが好ましい。重量比が8/2超だと、リン酸カルシウム粒子300の周囲が合成樹脂粒子I及びIIで満たされず、リン酸カルシウム粒子300が脱落しやすくなる。一方1/9未満だと、リン酸カルシウムの割合が低すぎ、生体適合性が低下するので好ましくない。
【0036】
(2) 加圧加熱処理
図8に示すように混合物3をキャビティ2aに充填し、成形部12を組立てた後、真空チャンバ6を密閉して真空ポンプ7により脱気し、1Pa程度の真空度に保つ。その後N2やHe、Ar等の不活性ガスを導入してもよい。この処理で脱酸素(低濃度)状態にすることにより、合成樹脂の酸化分解を防止できる。
【0037】
制御部10により加圧駆動機構9が作動すると、ラム5a,5bの少なくとも一方が互いに近接する方向に移動し、これらに固定されたパンチ4a,4bは混合物3を加圧する。パンチ4a,4bによる加圧力は0.5〜50 MPaとするのが好ましく、1.0〜20MPaとするのがより好ましい。加圧力が0.5 MPaより小さいと、合成樹脂粒子がリン酸カルシウム粒子と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子300が複合体から脱落しやすくなる。また50 MPaより大きくしてもそれに見合う形態保持性の向上が得られず、かえってリン酸カルシウム粒子が崩壊する等の問題が生じるだけである。
【0038】
電源8によってパンチ4a,4bを加熱することにより、混合物3は加圧下で加熱される。混合物3の加熱は、予め設定した昇温プログラムに従って行うのがよい。その場合、成形型2に設けられた熱電対(図示せず)により混合物3の温度を検出し、熱電対の出力を制御部10に入力する。制御部10は入力した温度データに基づき昇温プログラム通りに昇温するための信号を作成し、それを電源8に出力する。電源8は制御部10からの命令に従い、適当な電流をラム5a,5bに供給する。
【0039】
加熱温度は、130〜300℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。加熱温度が130℃未満だと、合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子300と十分に密着できず、リン酸カルシウム粒子300が複合体から脱落しやすい。また加熱温度が300℃超だと合成樹脂粒子Iが粒子形状を保てず、溶融して一体化してしまう場合があるので好ましくない。
【0040】
加熱時間(加熱温度を保持する時間)は1〜30分間とするのが好ましい。加熱時間が1分より短いと合成樹脂粒子IIがリン酸カルシウム粒子300と十分に密着できなくなり、また30分より長くしても密着力は向上しないので好ましくない。より好ましい加熱時間は3〜10分間である。
【0041】
加圧加熱処理終了後のリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を室温まで放冷し、キャビティより取り出す。複合体の表面にリン酸カルシウム粒子が十分露出していない場合は、表面を研削してもよい。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200はフライス盤等により容易に研削できる上、加熱により軟化して変形する。
【0042】
[4] リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造
(1) リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材の充填
図10に示すように、金属部材100にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を嵌め、成形型2のキャビティ2aに入れる。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の体積は、金属部材の容積の1.1〜3.0倍にするのが好ましい。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の体積が1.1倍未満であると、後述する加圧加熱処理により金属部材内に隙間無く充填するのが困難である。また3.0倍以上としても、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が窓から金属部材外に溢れ出て無駄となるだけである。
【0043】
(2) 加圧加熱処理
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体と金属部材100を加圧加熱処理する方法は、リン酸カルシウム粒子300と合成樹脂粒子I及びIIの混合物3の場合とほぼ同じであるので、相違点のみ以下に説明する。図1に示すように、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を金属部材100に嵌めたものをキャビティ2aに入れて成形部12を組立てた後、真空チャンバ6内を1Pa程度の真空度に保つ。制御部10により加圧駆動機構9が作動すると、パンチ4a,4bはリン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を加圧する。パンチ4a,4bによる加圧力は0.5〜50 MPaとするのが好ましく、1.0〜20 MPaとするのがより好ましい。
【0044】
リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200及び金属部材100を加圧下で加熱する。加熱温度は、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の作製温度と同じかそれ以上であって、かつ130〜300℃であるのが好ましく、150〜250℃であるのがより好ましい。加熱により得られるリン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度は加熱温度に比例して増大するため、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度を大きくすることができる。
【0045】
加熱時間は1〜30分間とするのが好ましい。加熱時間が1分より短いとリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が金属部材内100に十分に充満せず、また30分より長くすると、軟化したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が窓101から溢れ出すぎるので好ましくない。より好ましい加熱時間は3〜10分間である。
【0046】
加圧加熱処理後、リン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を室温まで放冷し、キャビティ2aより取り出す。加圧加熱処理により金属部材内にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が充填するとともに、金属部材100の窓101からリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200が溢れ出た状態となっている。この溢れ出たリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を削り取ることにより、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得られる。
【0047】
【実施例】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
1200℃の大気炉で焼成した4.0 gの多孔質リン酸カルシウム粒子300(粒径0.2〜0.6 mm、カルシウム/リンのモル比1.67)、1.6 gの架橋アクリル粉体I(平均粒径3.0 μm、ケミスノーMX−300、綜研化学(株)製)、及び0.40 gの非架橋アクリル粉体II(平均粒径1.5 μm、ケミスノーMP−1400、綜研化学(株)製)を混合した。
【0049】
多孔質リン酸カルシウム粒子300と、合成樹脂粒子Iと、合成樹脂粒子IIとの混合物を図6〜図8に示す加圧加熱装置の成形型(内径17.0 mm×21.0 mm)に充填した。成形型中の混合物を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を160℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0050】
得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体をフライス盤で加工し、5.9 mm×15.8 mm×20.0 mmの複合体200を得た。図4に示す構造のリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を得るために、図2に示す金属部材100(チタン製、外径20.0 mm×10.0 mm、窓5.0 mm×8.0 mm、厚さ2.0 mm)と複合体200を、図1に示すように成形型(内径10.1 mm×20.1 mm)に充填した。成形型中の金属部材100と複合体200を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を200℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0051】
金属部材100の各窓101から、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が溢れ出ていた。溢れ出たリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を、フライス盤を用いて取り除き、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得た。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体は窓101に嵌合しており、金属部材100から脱離しなかった。また窓101から露出したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、リン酸カルシウムがアクリル樹脂に覆われることなく表面に良好に露出していた。
【0052】
実施例2
1000℃の大気炉で焼成した6.0 gの多孔質リン酸カルシウム粒子300(粒径0.1〜0.3 mm、カルシウム/リンのモル比1.67)、5.85 gの架橋アクリル粉体I(平均粒径15.0 μm、ケミスノーMP−1500H、綜研化学(株)製)、及び0.15 gの非架橋アクリル粉体II(平均粒径0.4 μm、ケミスノーMP−1000、綜研化学(株)製)を混合した。
【0053】
多孔質リン酸カルシウム粒子300と、合成樹脂粒子Iと、合成樹脂粒子IIとの混合物を図6〜図8に示す加圧加熱装置の成形型(断面円形、内径17.0 mm)に充填した。成形型中の混合物を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を200℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0054】
得られたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を旋盤で加工し、外径17.8 mm、高さ20.0 mmの円柱状とした。図3に示す円筒状の金属部材100(SUS316L、外径20.0 mm×高さ13.5 mm、窓2.0 mm×7.5 mm、厚さ2.0 mm)とリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を、図1に示すように成形型(断面円形、内径20.1 mm)に入れた。成形型中の金属部材100と複合体200を上下から10 MPaの圧力で加圧しながら、温度を250℃として5分間保持した。その後冷却し、室温で加圧を開放した。
【0055】
金属部材100の各窓101から溢れ出ていたリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200を旋盤により取り除き、目的とするリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を得た。リン酸カルシウム−合成樹脂複合体は窓101に嵌合しており、金属部材100から脱離しなかった。また窓101から露出したリン酸カルシウム−合成樹脂複合体200の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、リン酸カルシウムがアクリル樹脂に覆われることなく表面に良好に露出していた。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の製造方法により、金属部材を補強材として耐衝撃性を具備するとともに、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が露出することにより生体親和性を備え、かつリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から脱離することの無いリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造することができる。またリン酸カルシウム−合成樹脂複合体を比較的高温で加圧加熱処理することにより、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体の強度を増加させる効果が得られる。本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体は、使用中の衝撃等によりリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が金属部材から外れることが無いため、耐衝撃性と生体親和性を兼ね備えた材料として、人口歯根、骨補強材等の生体材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための真空加圧加熱装置の成形部に、リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を入れた状態を示す縦断面図である。
【図2】金属部材の一例を示す斜視図である。
【図3】金属部材の別の例を示す斜視図である。
【図4】本発明のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を示し、(a)は正面図であり、(b)は(a)のA−A断面図であり、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図5】リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の方法を実施するための真空加圧加熱装置の構成を示す概略図である。
【図7】図6に示す真空加圧加熱装置の成形部を示す分解図である。
【図8】図6に示す真空加圧加熱装置の成形部にリン酸カルシウムと合成樹脂粒子との混合物を充填した状態を示す縦断面図である。
【図9】リン酸カルシウムと合成樹脂粒子との混合物を示す拡大断面図である。
【図10】リン酸カルシウム−合成樹脂複合体及び金属部材を真空加圧加熱装置の成形部に充填する工程を示す組立図である。
【符号の説明】
1・・・加圧加熱装置
2・・・成形型
2a・・・成形型のキャビティ
3・・・リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子I及びIIとの混合物
4a・・・上パンチ
4b・・・下パンチ
5a,5b・・・ラム
6・・・真空チャンバ
7・・・真空ポンプ
8・・・電源
9・・・加圧駆動機構
10・・・制御部
11・・・ガスポンプ
12・・・成形部
100・・・金属部材
101・・・窓
102・・・上端
103・・・下端
200・・・リン酸カルシウム−合成樹脂複合体
300・・・リン酸カルシウム粒子
I、II・・・合成樹脂粒子
Claims (13)
- 窓を具備する金属部材にリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が充填されたリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体を製造する方法であって、(a) リン酸カルシウム粒子と、少なくとも部分的に架橋されている合成樹脂粒子Iと、架橋されていない合成樹脂粒子IIとの混合物を加圧加熱処理してリン酸カルシウム−合成樹脂複合体とし、(b) 前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を前記金属部材に嵌合した状態で成形型に入れ、(c) 前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加圧加熱処理することにより、前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を前記窓から露出させることを特徴とする方法。
- 請求項1に記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記混合物を加熱する温度が前記複合体の加熱処理温度以下であることを特徴とする方法。
- 請求項1又は2に記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記金属部材に嵌合した前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体を加熱する温度が130〜300℃であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子/前記合成樹脂粒子の質量比が1/9〜8/2であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子が平均粒径0.001 mm〜10 mmの多孔質粒子であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子が焼成されていることを特徴とする方法。
- 請求項6に記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子の焼成温度が500〜1300℃であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記リン酸カルシウム粒子におけるリン酸/カルシウムのモル比が1.4〜2.0であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記合成樹脂粒子I及び前記合成樹脂粒子IIが非水溶性アクリル系樹脂又はポリスチレン樹脂からなることを特徴とする方法。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記合成樹脂粒子IIの含有量が前記合成樹脂粒子I及び前記合成樹脂粒子IIの合計量に対して0.2〜50質量%であることを特徴とする方法。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体の製造方法において、前記金属部材がチタン、チタン合金又はステンレススチールからなることを特徴とする方法。
- リン酸カルシウム粒子と合成樹脂粒子からなるリン酸カルシウム−合成樹脂複合体が、窓を具備する金属部材内に実質的に隙間無く充填されているリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体であって、前記窓から前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が露出しており、前記合成樹脂粒子が前記リン酸カルシウム粒子及び前記金属部材と密着していることを特徴とする複合体。
- 請求項12に記載のリン酸カルシウム−合成樹脂−金属複合体において、前記リン酸カルシウム−合成樹脂複合体が前記金属部材から脱離しないことを特徴とする複合体。
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-
2003
- 2003-01-20 JP JP2003011541A patent/JP2004222806A/ja not_active Withdrawn
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GB2392133B (en) * | 2002-07-09 | 2006-05-24 | Pentax Corp | Calcium phosphate-synthetic resin composite body containing calcium phosphate block and method for production |
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