JP4100556B2 - 屋根瓦 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、瓦桟や木ずりを必要とせず葺くことができる屋根瓦に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、屋根瓦の葺き方には大別して土葺と引掛桟葺とがある。土葺とは、野地板に練り土を盛り、その上に瓦を葺いていく工法である。この土葺は、重量が大きくなって屋根への負担が大きく、また経時的に練り土が痩せて瓦が落下しやすいという問題があった。この問題は関東大震災時に顕著に表れ、地震国である日本において耐震性を改善することを目的として考え出されたのが引掛桟葺であり、以降、この引掛桟葺が一般的な瓦葺工法として全国的に普及するに至っている。
【0003】
引掛桟葺とは、例えば特許文献1〜4に開示されているように、野地板等に釘打ちされた瓦桟(横桟)に対して瓦裏面の尻部(上端部)に突成された引掛け部を引掛け、該桟瓦を釘打ち固定する工法である。この工法によれば、重量を小さくでき、瓦がずれることもないという利点がある。また、桟木打ち工事時に、瓦桟を木ずりといわれる縦桟上に釘打ちすることも行われ、この工法によれば瓦桟を木ずりの高さだけ浮き上がらせることができるため、雨水を瓦桟に止めずに軒先まで流すことができ、瓦の打ち釘が雨水によって腐食するといった問題も軽減することができる。なお、引掛桟葺に使用される桟瓦には、J形(和瓦)、S形(洋瓦)、F形(平板瓦)がJISで定められているが、何れのタイプも基本的に同じ構造、方法によって屋根葺きされる。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−90258号公報
【特許文献2】
特開特開2001−146817号公報
【特許文献3】
特開特開2001−173160号公報
【特許文献4】
特開特開2001−207593号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、引掛桟葺は瓦桟を必要とする分、屋根葺き工事に手間と時間がかかる。つまり、屋根葺き工事から瓦桟や木ずりを省略できれば、瓦桟や木ずりの打ち込み工事を省略できることはもちろん、その前準備である地割り作業も不要となり、工期を大幅に短縮することができる。これは工費の低減にも直結する問題である。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、屋根葺き工事に瓦桟や木ずりを省略し、短い時間で屋根葺きすることができる屋根瓦を提供することである。また同時に、瓦の打ち釘への雨水接触を避け、防食性を発揮させることも目的の一つである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために本発明では、瓦尻側に形成された釘孔を通じて野地板や下地材に直接瓦を釘打ち固定することを前提とする。よって、瓦桟や木ずりといった桟木の打ち付け作業を省略でき、瓦葺きにかかる労力や工期、費用を大幅に軽減することができる。この前提の下、第一の手段として、瓦裏面に釘孔周囲に遮水枠を突成することとした。この遮水枠は、底面(本発明瓦を載置した場合の屋根側と接触する固定面を意味する)が瓦葺きに必要な瓦勾配と屋根勾配の角度差を吸収して野地面と密に接触する傾斜をもつ。ここでいう密に接触とは、野地面に対する遮水枠の接地面から野地面を伝って流れる雨水が入り込まない程度の接触圧をもって接触することをいう。そして、この遮水枠は平面視において少なくとも下側面(瓦の頭側)が開口するコ字状からなる。なお、ここでいうコ字状とは左右と尻側の三方から釘孔を囲繞する形状を示すが、この他、釘孔を四方から囲繞するようにロ字状とすることも本発明の範囲に含まれる。この点、コ字状とすればロ字状とする場合に比べて構成を簡素化することができる。そして、この第一手段によれば、仮に瓦裏面に雨水が入り込んだとしても、水は屋根勾配に従って上から下に流れるため、コ字状あるいはロ字状の遮水枠によって流れ落ちる水から釘を防護することができる。特に、遮水枠をロ字状とすれば、例えば暴風雨のように屋根勾配に逆らって瓦裏の水が上方に逆流したとしても、釘を水から確実に防護することができる。
【0008】
また本発明では、第二として、瓦表面の働き長さ位置にその瓦の上に葺かれる瓦の頭端部が係止されるずれ止めを突成するという手段を用いることとした。この第二手段によれば、瓦を葺く際、上の瓦は下の瓦のずれ止めに係止されるため、仮に前記上の瓦の打ち釘が腐食等により破損したとしても、これを原因とする瓦の脱落を防止することができる。また、該ずれ止めは予め働き長さ位置に形成されるので、地割り等の葺き合わせ調整作業を省略することができる。なお、働き長さとは、瓦葺き後における表側露出面のうち、頭先端からの距離をいう。
【0009】
なお、上述した第一と第二の手段を併用すれば、釘に対する水からの防護機能と瓦の脱落防止機能が同時に得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1、図2、図3は、本発明の一実施形態に係る屋根瓦の平面、底面、側面を示したものである。この実施形態では、F形瓦に本発明を適用した例を示している。図中、1は瓦裏面2に尻側釘孔3を囲繞するように突成された遮水枠、4は瓦表面5の所定位置に突成されたずれ止めである。遮水枠1は、下側面(瓦の頭側)を開口してなる平面視コ字状の形状を呈し、その底面1aは図3に示されるように、側面視で野地面と密に接触する傾斜角度をもって形成されている。つまり、一般に瓦葺きに必要な瓦勾配は屋根勾配よりも緩傾斜であるため、その角度差に関係なく瓦を通法に従って葺いていくと、遮水枠が浮き上がり、野地面との隙間から水が入り込む恐れがある。そこで、本発明では底面1aの傾斜角度を瓦勾配と屋根勾配の角度差を吸収する角度に設定し、底面1aを野地面に対して密に接触させるようにしている。一方、ずれ止め4は、その立ち上がり面4aが働き長さα位置となるように、また上に葺かれる瓦の頭端部を係止可能な立ち上げ高さとなるように突成されている(特に図1、図3を参照)。なお、瓦表面5において釘孔3の周囲を一段高く盛り上げて水返し6を形成し、該水返しによって釘孔3から雨水等の侵入を防止している。その他、瓦表面5に尻部水返し7や係合爪8、導水路9、爪受け10を形成するなど、他の構造は従来の屋根瓦と同じものを採用することができる。
【0011】
上記構成の屋根瓦の施工方法を図4に従って説明すると、先ず、軒先側から瓦を横に葺いていく。ここで瓦は野地面11(ルーフィング処理後を含む)に直接載置し、釘孔3を利用して釘打ち固定する。次に、上の瓦をその頭側が下の瓦の尻側と一部重なるように横に葺いていくのであるが、このとき上の瓦の頭端部を下の瓦の前記ずれ止め4に係止させる。この係止後、やはり上の瓦も野地面11に直接釘打ち固定する。このように瓦を直に野地面11に釘打ち固定すること、上の瓦を下の瓦のずれ止め4に係止すること以外は、従来の瓦葺き工法と何ら変わるところはなく工事を進行させることができる。
【0012】
続いて、上記構成による本発明の作用効果について説明すると、先ず瓦裏面2に釘孔3を囲繞するように遮水枠1を突成し、且つ、この遮水枠1の底面1a(接地面)は瓦勾配と同じ角度で形成され、もって該底面1aが野地面11と密着した状態にあるので、仮に上下の瓦の葺き合わせ部分から雨水が浸入し、これが屋根勾配に従って野地面11を伝うようなことがあったとしても、その雨水は遮水枠1の外側を回って下方へ流れ落ち、打ち釘に直接雨水が接触することがない。従って、打ち釘の腐食が防止される。さらに、瓦表面5の働き長さα位置には、葺き合わせた上の瓦の頭端部が係止可能なずれ止め4を設けているので、仮に打ち釘の打ち込みが甘かったり、該釘が腐食や経時的な疲労等によって折損したとしても、前記ずれ止め4によってその瓦の脱落が防止され、同時に他の瓦の連鎖的な脱落も防止される。また、このずれ止め4は、その形成位置が働き長さα位置に設定されるため、地割り等の葺き合わせ調整を行うことなく施工することができる。従って、熟練や技量を要しない作業員でも比較的容易に瓦葺き工事を遂行することができる。
【0013】
さらに、この実施形態では、遮水枠1を瓦裏面2の尻側角部12を起点として勾配調整しているため、全体として不要な厚みがなく、該瓦を設置したとき前記尻側角部12(遮水枠1の尻側角部でもある)が野地面11と接するように瓦葺きできるため、瓦の葺き厚みを低く抑えることができると共に、打ち釘に対する防護機能をより高めることができる。
【0015】
また、上記実施形態では、頭側に開口したコ字状の遮水枠を例示したが、これは釘孔の四方を完全に囲繞するロ字状とすることもできる。この場合、暴風雨によって、仮に野地面を伝う雨水が逆流したとしても、該雨水から打ち釘を防護することができる。さらに、上記実施形態ではF形瓦への本発明適用を例示したが、S形やJ形等、その他の瓦への適用も本発明に含まれることはもちろんである。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば瓦裏面に釘孔を囲繞する遮水枠を設けたので、瓦桟や木ずり等の桟木の打ち込み作業という大掛かりな工事を省略し、打ち釘を雨水から防護した状態で瓦を必要十分に固定することができるから、労力や工期、工費を大幅に低減することができる。また、瓦表面の働き長さ位置にずれ止めを設けたので、該ずれ止めが従来の瓦桟(横桟)と同じ機能を発揮し、もって瓦を強固に固定でき、さらに打ち釘に折損等が発生しても瓦の不用意な脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る屋根瓦の平面図
【図2】同屋根瓦の底面図
【図3】同屋根瓦の左側面図
【図4】同屋根瓦の葺き合わせ態様を示した左側面図
【符号の説明】
1 遮水枠
2 瓦裏面
3 釘孔
4 ずれ止め
5 瓦表面
Claims (3)
- 瓦裏面に尻側釘孔の少なくとも下側面を除いた三方を囲い、底面が瓦葺きに必要な瓦勾配と屋根勾配の角度差を吸収して野地面に密に接触する傾斜をもつ遮水枠を突成したことを特徴とする屋根瓦。
- 遮水枠は瓦の頭側が開口するコ字状に形成された請求項1記載の屋根瓦。
- 瓦表面の働き長さ位置に、その瓦の上に葺かれる瓦の頭端部を係止可能なずれ止めを突成した請求項1または2記載の屋根瓦。
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