JP4100545B2 - 技能評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、技能評価方法に関し、特に、熟練技能者といわれる作業者の高度な熟練技能をデータベース化して後継者への伝承やロボットへの教示に使用することを可能にした技能評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化の進行に伴って、製造業における研究開発の根幹を支える熟練技能者の不足が取りだされるようになった。これは、効率優先の環境下で、熟練技能の伝承がなされなくなってしまったことによるとことが大きい。
【0003】
この対策のため、各企業では近年になって熟練技能者に対する資格制度の見直しや待遇改善に取り組んだり、各種研修制度を整備したりしている。
【0004】
また、熟練技能者の動作や技能をロボットに埋め込むことによりその動作や技能を伝承しようとする試みもなされており、例えば、特開2001−51712号公報には、熟練技能者の実作業中の作業工具の位置・姿勢のデータからその者の動作パターンを抽出してデータベースを構築し、このデータベースのデータを作業仕様に合わせてロボットに教示するロボットの技能教示方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、熟練技能者に対する資格制度の見直しや待遇改善、各種研修制度の整備は、意識付けとしての効果は期待できるものの、実際の熟練技能者の技能の伝承という観点からみると十分な取り組みとは言い難い。
【0006】
また、特開2001−51712号公報で提案されているものは、熟練技能者の動作や技能を抽出するものではあるが、予め決められた実作業中で熟練技能者の動作、作業工具の位置などを計測し、それにより得られる動作パターンと作業仕様とを関連付けたデータベースを構築しているにすぎない。
【0007】
俗に「達人」や「職人」などと称される熟練技能者の価値は、予め決められている定型作業においてではなく、新しい事態、あるいは予期せぬ事態への対応において真価が発揮されるものであり、予め決められている定型作業に対しての動作パターンを単に作業仕様に関連付けて抽出するだけでは本当の意味での熟練技能の所在を評価することはできない。
【0008】
したがって、上記公報に記載されている技能教示方法は、ロボットに対して同等の作業に対して同じ程度のことをこなす技能、すなわちコピー技術を教示しているにすぎず、高度な熟練技能を教示するものとはなり得ていない。
【0009】
熟練技能は、「繰り返しの訓練を通して体で覚える」とか、「先人のやり方を見て覚える」とか、「失敗の繰り返しの中から微妙な感覚を体得する」とかいう中で伝承されてきたものであり、いわゆる「解説しにくい勘所」、「変化に適切に対応する技量」というような、熟練技能者自身でも教示すべき内容を正確に把握しきれていない難しい微妙な項目である場合が多い。
【0010】
本発明は、以上の事情にかんがみなされたものであり、その目的は、いわゆる熟練技能といわれる、高度かつ微妙な技能の勘所を的確に評価してそのデータベース化を図ることができ、後継者の指導やロボットへの教示に有用な高度な熟練技能を抽出することを可能にする技能評価方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ある作業環境の下で作業者が行う作業工程の動作を測定して基準データを生成する基準データ生成工程と、作業者に無断で前記基準データ生成工程の作業環境と異なる作業環境を与えてこのときの作業者の動作を測定して変化データを生成する変化データ生成工程と、前記基準データと前記変化データとを作業経過時間を合わせるようにして対応付けし、前記基準データからの前記変化データの変化を表す熟練データを生成する熟練データ生成工程とを備え、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程を環境ルーム内で行う点に第1の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、ある作業環境の下で作業者が行う作業工程の動作を測定して基準データを生成する基準データ生成工程と、作業者に無断で前記基準データ生成工程の作業環境と異なる作業環境を与えてこのときの作業者の動作を測定して変化データを生成する変化データ生成工程と、前記基準データ、前記変化データ、および前記作業環境あるいはその変化分を作業経過時間を合わせるようにして対応付けし、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境あるいは両工程での作業環境の変化分とともに前記基準データからの前記変化データの変化を表す熟練データを生成する熟練データ生成工程とを備え、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程を環境ルーム内で行うる点に第2の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記熟練データ生成工程がさらに、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境の変化に対して、前記前記変化データが基準データから変化する部分と変化しない部分とを判別し、変化する部分を熟練変化データとして抽出する点に第3の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記熟練データ生成工程がさらに、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境の変化に対して、前記前記変化データが基準データから変化する部分と変化しない部分とを判別し、変化しない部分を熟練基本データとして抽出する点に第4の特徴がある。
【0015】
また、本発明は、前記熟練データ生成工程が、前記基準データと前記変化データとの差分である対応データを生成し、該対応データを前記変化データに代えてあるいはそれに加えて熟練データとする点に第5の特徴がある。
【0016】
また、本発明は、作業条件を前記作業環境のパラメータとして与えて前記変化データ生成工程を行う点に第6の特徴がある。
【0017】
また、本発明は、前記環境ルームは、少なくとも気象環境を操作可能であり、気象環境を前記作業環境のパラメータとして与えて前記変化データ生成工程を行う点に第7の特徴がある。
【0018】
また、本発明は、前記環境ルーム内には作業者の擬似的作業操作が可能な3次元表示装置が備えられており、作業者の前記擬似的作業操作によるデータに基づいて少なくとも前記変化データ生成工程を行う点に第8の特徴がある。
【0019】
さらに、本発明は、前記作業条件が、作業対象物の条件である点に第9の特徴がある。
【0020】
第1の特徴によれば、熟練技能といわれる、高度かつ微妙な技能の勘所を的確に評価してそのデータベース化を図ることができ、後継者の指導やロボットへの教示に有用な熟練技能を評価して抽出することができる。
【0021】
また、第2および第5の特徴によれば、作業環境による作業者の動作の変化を容易かつ的確に把握することができる。
【0022】
また、第3および第4の特徴によれば、作業環境に対して変化する動作と変化しない動作とを分けることにより、熟練技能を容易かつ正確に把握することが可能になる。
【0023】
また、第7の特徴によれば、気象環境を容易かつ的確に変化させることができ、短期間に、きめ細かい熟練データを評価して抽出することが可能になる。
【0024】
さらに、第8の特徴によれば、実際の作業を行うことなく、実際と同等の作業現場を再現したバーチャル空間で作業を行うことができるため、大掛かりな設備を設けることなく容易に熟練データを抽出することができ、また、ソフトを替えるなどして各種作業現場を容易に再現することが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、作業環境を変化させることのできる環境ルーム1の一例の概略図であり、この中で作業者は、各種作業設備を使用して作業を行うことができる。
【0026】
環境ルーム1は、例えば、空気送込用ファン装置2を備えた空調装置3、空気吸引装置4、複数のパネル状照明灯5、スピーカ6、6などを備え、外部コントロール装置により気温、湿度、気圧、風量、風速、照度などをパラメータとしてその内部の気候環境を変化させることができるようになっている。なお、気温、湿度、風量および風速は、空調装置3で変化させることができ、気圧は、空調装置3と空気吸引装置4とを共働させて変化させることができ、照度は、複数のパネル状照明灯5で変化させることができる。
【0027】
また、作業設備における作業条件、例えば大きさや厚さ、材質などをパラメータとして作業対象物の条件も変化させることができるようにもなっている。もちろん、上記パラメータは一例にすぎず、作業における通常の作業環境に応じた他のパラメータについての値も適宜設定、変更可能にされる。例えば、通常屋外で行われる作業の場合には降雨装置による雨量をパラメータとして加えることができ、また、スピーカ6による騒音などもパラメータとして加えることができる。
【0028】
環境ルーム1内には作業現場が再現されており、作業者は、実際の作業現場と何ら変わりなく作業を行うことができるようになっている。また、環境ルーム1内には付属装置として少なくともモーションキャプチャ用カメラが配備されており、これにより作業者、作業対象物あるいは作業用具などにおける複数の特徴点の動きを抽出して作業者の動作を測定することができる。
【0029】
ここで測定する作業者の動作は、例えば、手や頭の位置と移動量と移動速度、指や腕の位置と移動量と移動速度、さらには足の位置と移動量と移動速度などである。また、環境ルーム1内には、作業対象物の表面温度を測定するためのサーモグラフィ用カメラを配備することもできる。
【0030】
次に、図2のフローチャートを参照して本発明の一実施形態を説明する。まず、準備段階として、環境ルーム1内の作業者などの動きをモーションキャプチャにより測定可能にし、さらに必要に応じて作業対象物などの表面温度をサーモグラフィ用カメラにより測定可能にする。
【0031】
次に、基準データを測定するために、オペレータの手操作入力により(S1)、記憶されている基本環境データから基準となる作業環境に関するデータを読み出し、環境ルーム1内をそれらデータに対応する作業環境に設定する。この作業環境は、作業者に予め知らされている基準作業環境であり、例えば、通常の作業で規定された気候環境、規定の作業条件を基準作業環境として設定する(S2)。
【0032】
この基準作業環境は、例えば、空調装置3、空気吸引装置4、複数のパネル状照明灯5などで気温、湿度、気圧、風量、風速、照度などをパラメータとして設定される気候環境を含み、また、厚さや大きさ、材質などをパラメータとした作業対象物の条件などの作業条件を含むこともできる。また、これらパラメータの内のいくつかの値を時間と共に変化させるように設定することもできる。
【0033】
このように設定した基準作業環境下で作業者は、通常のように作業を行い、このときの作業者、作業対象物あるいは作業用具などにおける複数の特徴点の動きを抽出して作業者の動作を測定する(S3)。
【0034】
次に、この測定データをディジタル化処理により数値化し(S4)、それを得たときの作業環境の各パラメータ値と関連付け(S5)た後、さらに均一化して(S6)基準データとする。なお、均一化(S6)は、複数回の測定で得られたデータを平均化する処理であり、この処理によりノイズなどの影響をなくして安定した基準データを得ることができるが、必ずしも必要なものではない。
【0035】
基準データは、それが得られたときの作業環境のパラメータ値、すなわち基準作業環境の各パラメータ値と関連付けて記憶・保存する(S7)。保存媒体は、例えば、コンピュータ、CD−ROM、HDD、FD、サーバなどのメディアとすることができる。
【0036】
以上のステップ(S1)〜(S7)は、基準となる、ある作業環境下で作業者が行う作業工程の動作を測定して基準データを生成する基準データ生成工程である。
【0037】
次に、変化データ生成工程に移る。変化データ生成工程は、基本的には、上記ステップ(S1)〜(S5)と同様であるが、作業者に無断でオペレータが作業環境を与える点において基準データ生成時とは異なる。すなわち、オペレータは、作業者に無断で基準データ生成時と同じ作業環境、例えば、作業対象物の厚さの変化を与え(S1′およびS2′)、この作業環境下での作業者の動作を測定する(S3′)。
【0038】
これによる測定データをディジタル化処理により数値化して(S4′)変化データとし、この変化データをそれを得たときの作業環境の各パラメータ値と関連付ける(S5′)。
【0039】
以上の変化データ生成工程は、作業者に無断で作業工程における作業環境を与えてこのときの作業者の動作を測定する工程である。なお、作業環境のどのパラメータの値をどのように与えるかは、作業内容や要求されるデータなどに応じて設定する。また、基準データ生成工程と変化データ生成工程とは、時間的に連続している必要はなく、変化データ生成の前に基準データが生成されていさえすればよい。
【0040】
次に、このようにして得られた変化データと以前に得られた基準データとを比較判断する(S)。この比較判断(S)により変化データのうちの基準データと相違する部分を生成し、これを基準データ、および必要に応じて作業環境あるいはその変化分と対応付けて熟練データとして記憶・保存する(S10)。なお、この保存媒体は、例えば、コンピュータ、CD−ROM、HDD、FD、サーバなどのメディアとすることができ、基準データを保存する保存媒体と同じであってもよい。
【0041】
比較判断(S)において、変化データのうちの基準データと同じ部分は、ステップS6での均一化処理のデータの一部として使用することができる。ステップSでの比較判断は、ある閾値をもって行われるものであり、ステップSで同じと判断した変化データをステップS6での均一化処理に使用することにより、作業者など動きの僅かな変化を反映させて基準データを更新することができる。
【0042】
上記実施形態は、変化データそのものを熟練データとして保存媒体に保存する例であるが、基準データと変化データとの差分である対応データを生成し、この対応データを、変化データに代えてあるいはそれに加えて保存するようにすることもでき、このように対応データにして保存すれば、作業環境による作業者など動きの変化を容易かつ的確に把握することができるようになる。
【0043】
また、作業環境に対して、変化データが基準データから変化する部分と変化しない部分とを判別し、変化する部分を熟練変化データとして抽出したり、変化しない部分を熟練基本データとして抽出したりすることもでき、このようにすれば作業環境に対して変わらない動作と変わる動作、すなわち通常の行動パターンと環境に対応した高度な熟練技能パターンとを区別することができ、技能の伝承やロボットへの教示に好都合である。さらに、保存媒体に保存した熟練データは、ネットワークを介して広く流通させることもできる。
【0044】
さらに、以上では変化データを生成する際にオペレータが手操作入力で作業環境を与えるものとして説明したが、図2のS9で示すように、記憶・保存された基準データからのデータに基づいて基準データ生成時と同じ作業環境を自動的に環境ルーム1内に設定するようにすることもできる。
【0045】
次に、本発明の具体例について説明する。図3および図4は、図3(a)に示す断面形状の母材Aを作業対象物とし、図3(b)に示す溶接装置による溶接作業を環境ルーム内で行う場合の例であり、図4は、各部データおよび測定された作業者の動作を示している。母材Aは、図3(a)および図4に示すように溶接方向で板厚が、例えば1mmから3.2mmまで連続的に変化している部分を有する。
【0046】
溶接装置は、図3(b)に示すように、TIG溶接機7を備え、その電流設定値および電圧設定値は、それぞれ電流・電圧計8で測定される。作業者Cは、母材A溶接部分の溶融池9の溶融具合を観察しつつトーチ10の移動速度およびスイッチ11のオン/オフを適当に調整して溶接作業を行うことができる。トーチ10の先端にはモーションキャプチャ用マーカ12を付加し、このマーカ12をモーションキャプチャ用カメラ13で撮像し、また、溶融池9をサーモグラフィ用カメラ14で撮像する。
【0047】
モーションキャプチャ用カメラ13およびサーモグラフィ用カメラ14の出力をデータ処理用パソコン15に入力し、トーチ10の移動速度および溶融池9の温度の測定値を得る。さらに、作業者Cによるスイッチ11のオン/オフをオン/オフセンサ18で検出し、この検出出力もデータ処理用パソコン15に入力する。なお、データ処理用パソコン15には保存媒体16やキーボード17が接続されている。
【0048】
このような設備を使用して作業者Cの熟練技能を取得する場合、まず、環境ルーム内の作業環境を基準の気候環境および図3(a)の母材Aに設定し、作業者Cにこの作業環境を知らせ、溶接作業を開始させる。すなわち作業者Cが予め母材板厚およびその変化を知っている状態で、作業者Aに溶接作業を開始させる。この時の母材板厚の変化に対するトーチ10の移動速度およびスイッチ11のオン/オフ回数をモーションキャプチャ用カメラ13、オン/オフセンサ18およびデータ処理用パソコン15で測定する。この測定により得られる動作データは、作業者Cが予め母材Aの板厚およびその変化を知っているため、図4に一点鎖線で示すように、比較的なだらかなものとなる。この動作データを、例えば、溶融池9の温度(溶融温度)とトーチ10の移動速度、溶融温度とスイッチ11のオン/オフ回数、スイッチ11のオン/オフ回数とトーチ10の移動速度をそれぞれ関連付けて基準データとして保存媒体16に記憶・保存する。
【0049】
次に、作業者Cが溶接作業を行っている状態において、作業者Cに無断で母材板厚を、基準データ生成時と同様に図3(a)に示すように変化させる。母材板厚が厚くなると溶融池9の温度は低くなるが、この溶融具合を観察しつつ溶接作業を行っている熟練技能者である作業者Cは、その変化に対しても良好な溶接が維持されるように最適な対応をする。溶接作業の場合、この対応は、一般的にはトーチ10の移動速度やスイッチ11のオン/オフの調整である。
【0050】
このときの母材板厚の変化に対してトーチ10の移動速度およびスイッチ11のオン/オフ回数を測定することにより得られた結果が、図4の実線であり、作業者Cが母材板厚の変化を予め知って溶接作業を行った場合とは相違している。この相違が、予期せぬ事態への熟練技能者の対応、いわゆる熟練技能である。このようにして得た動作データを、例えば、溶融温度とトーチ10の移動速度、溶融温度とスイッチ11のオン/オフ回数、スイッチ11のオン/オフ回数とトーチ10の移動速度を関連付けて変化データを生成し、先に保存媒体16に保存されている基準データと比較する。この比較の結果、変化データのうちの基準データと異なる部分は、基準データ、および必要に応じて作業環境あるいはその変化分と対応付けて熟練データとして保存媒体16に記憶・保存する。
【0051】
以上では母材板厚を変化させる場合について説明したが、これに限らず他の環境条件、例えば温度を変化させるようにすることもでき、また、環境条件を次々に変化させて動作データを得るようにしてもよい。
【0052】
本発明は、上記実施態様に限られず、種々の変更を加えることができる。例えば、環境ルーム内に再現される作業現場は、実際的なものでもよいが、特開平10−20914号公報に記載されているような、ディスプレイ装置や作業に応じた操作子を配置し、コンピュータグラフィックスによる3次元立体視などの技術を用いてバーチャル(virtual)に再現されたものでもよい。これによれば環境ルーム内に大掛かりな設備を設けることなく、実際と同等の作業現場を再現することができ、また、作業現場の変更や作業条件の変更をきめ細かく容易に実行することができ、さらに、作業者の動作や作業対象物に関するデータの取得が容易になる。
【0053】
以上では、環境ルーム内にモーションキャプチャ用カメラおよびサーモグラフィ用カメラを配備して作業者の動作および作業対象物の表面温度を測定する実施形態について説明したが、サーモグラフィ用カメラにより作業者の体温や設備の温度を測定し、また、ロードセルなどの他の測定器を配備して可動部の荷重などを測定してそれら測定データを関係付けて保存するようにすることもできる。さらに、ビデオカメラを設置して作業者の動作を動画像として得、この動画像を熟練データと共に保存するようにすれば、熟練技能の内容の詳細をより把握しやすい形態で取得し、伝承することができる。
【0054】
さらに、環境ルーム1内に視点測定装置を配備し、作業者Aの視点についても基準データおよび変化データ、あるいは対応データを作成するようにすれば、作業環境に対する作業者の対応をより正確に表す熟練データを取得することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、いわゆる熟練技能といわれる、高度かつ微妙な技能の勘所を効率的かつ的確に評価してそのデータベース化を図ることができ、後継者への伝承やロボットへの教示に有用な高度な熟練技能を抽出することができる。
【0056】
また、熟練技能を抽出するに際して変化させるパラメータを細分化することにより、作業者のカン、経験により変化させていた作業内容をデータとして論理的に説明することができるようになり、表現し難かったカン、経験の部分は、論理的データの組み合わせで表現することができるようになり、ロボットへの教示に対応できる内容になる。また、オペレータによる気象環境などの作業条件設定の操作量や作業者による擬似的操作量をそのまま計測データとして利用できる。
【0057】
本発明により作業環境の各パラメータの変化に対して得られた各測定ポイントのデータはデジタル化して記憶することができるため、長期保存での劣化は殆ど問題にならず、将来に亘ってのロボットのプログラミング用、人に動きを教示する装置のプログラミング用、VTRでの教示内容表示のためのデータ、3Dシミュレーション装置のデータ、さらには音声教示装置などのデータに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で使用できる環境ルームの概念図である。
【図2】 本発明の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図3】 本発明を適用した具体例の概略構成図である。
【図4】 図3の各部データのタイムチャートである。
【符号の説明】
1・・・環境ルーム、2・・・空気送込用ファン装置、3・・・空調装置、4・・・空気吸引装置、5・・・パネル状照明灯、6・・・スピーカ、7・・・TIG溶接機、8・・・電流・電圧計、9・・・溶融池、10・・・トーチ、11・・・オン/オフスイッチ、12・・・モーションキャプチャ用マーカ、13・・・モーションキャプチャ用カメラ、14・・・サーモグラフィ用カメラ、15・・・データ処理用パソコン、16・・・保存媒体、17・・・キーボード、18・・・オン/オフセンサ、A・・・母材、B・・・溶接装置、C・・・作業者

Claims (9)

  1. ある作業環境の下で作業者が行う作業工程の動作を測定して基準データを生成する基準データ生成工程と、
    作業者に無断で前記基準データ生成工程の作業環境と異なる作業環境を与えてこのときの作業者の動作を測定して変化データを生成する変化データ生成工程と、
    前記基準データと前記変化データとを作業経過時間を合わせるようにして対応付けし、前記基準データからの前記変化データの変化を表す熟練データを生成する熟練データ生成工程とを備え
    前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程を環境ルーム内で行うことを特徴とする技能評価方法。
  2. ある作業環境の下で作業者が行う作業工程の動作を測定して基準データを生成する基準データ生成工程と、
    作業者に無断で前記基準データ生成工程の作業環境と異なる作業環境を与えてこのときの作業者の動作を測定して変化データを生成する変化データ生成工程と、
    前記基準データ、前記変化データ、および前記作業環境あるいはその変化分を作業経過時間を合わせるようにして対応付けし、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境あるいは両工程での作業環境の変化分とともに前記基準データからの前記変化データの変化を表す熟練データを生成する熟練データ生成工程とを備え
    前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程を環境ルーム内で行うことを特徴とする技能評価方法。
  3. 前記熟練データ生成工程はさらに、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境の変化に対して、前記前記変化データが基準データから変化する部分と変化しない部分とを判別し、変化する部分を熟練変化データとして抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の技能評価方法。
  4. 前記熟練データ生成工程はさらに、前記基準データ生成工程と前記変化データ生成工程での作業環境の変化に対して、前記前記変化データが基準データから変化する部分と変化しない部分とを判別し、変化しない部分を熟練基本データとして抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の技能評価方法。
  5. 前記熟練データ生成工程は、前記基準データと前記変化データとの差分である対応データを生成し、該対応データを前記変化データに代えてあるいはそれに加えて熟練データとすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の技能評価方法。
  6. 作業条件を前記作業環境のパラメータとして与えて前記変化データ生成工程を行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の技能評価方法。
  7. 前記環境ルームは、少なくとも気象環境を操作可能であり、気象環境を前記作業環境のパラメータとして与えて前記変化データ生成工程を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の技能評価方法。
  8. 前記環境ルーム内には作業者の擬似的作業操作が可能な3次元表示装置が備えられており、作業者の前記擬似的作業操作によるデータに基づいて少なくとも前記変化データ生成工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の技能評価方法。
  9. 前記作業条件は、作業対象物の条件であることを特徴とする請求項6に記載の技能評価方法。
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