JP4100201B2 - ポリエステル繊維の直接紡糸延伸法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル繊維の直接紡糸延伸法において、製編織段階での工程通過性に悪影響を与える原糸毛羽の少ないポリエステル繊維を操業性良くかつエネルギー消費量を少なくして得られる直接紡糸延伸法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維を製造する方法として、直接紡糸延伸法が広く採用されている。そして、衣料用ポリエステル繊維を製造する場合、溶融紡出糸条に油剤を付与し、加熱引き取りローラにより糸条をガラス転移点以上に予熱して引き取り、引き取りローラと延伸ローラとの間で延伸を行う方法が一般的である。この場合、ガラス転移点以上まで糸条を予熱する際、油剤に含まれる水分の付着斑により糸条の受熱量が単糸間で異なり、単糸切れ、ローラ巻き付き、延伸斑等が起こり易く、均一な糸条が得られないという問題があった。
【0003】
このような問題を解決する方法として、油剤を付与した糸条を引き取りローラの上流で加圧流体で処理し、糸条に交絡を付与するとともに水分を飛散させて付着水分量を少なくする方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。更に加温加熱流体で水分を均一に飛散させて染斑の少ない原糸を得る方法が提案されている(特許文献4参照)。これら従来技術は、屈曲点における擦過を避けるため極力糸道は屈曲させないように設備を設計するものであったものの、糸条が2km/分程度の低速度で糸条流体処理部を走行する場合には、逆に糸条に掛かる張力が極度に低くなることから安定性が失われ、流体処理による開繊/交絡が定常的に行われず、ひいては糸条の旋回運動や単糸の擦過が発生することから、結果として毛羽を誘発させたり、紡糸工程での糸切れの原因となっていた。また流体処理そのものに必要となる圧縮空気の使用量の極少化といった点についても配慮のなされたものではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−104512号公報(第3図)
【0005】
【特許文献2】
特開平2−61108号公報(第1図)
【0006】
【特許文献3】
特開平6−17312号公報(図1)
【0007】
【特許文献4】
特開2002−105791号公報(図2)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、製編織の段階での工程通過性に悪影響を与える原糸毛羽の少ないポリエステル繊維を操業性良く、かつエネルギー消費量を少なくして得られる直接紡糸延伸法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述したような従来技術では解決できなかった課題を解決するために鋭意検討し、特に糸条の走行速度が低速度である場合に、糸道を屈曲させ流体処理部を通過せしめることで糸条の揺れを抑えられ、上記目的が達成されることを見出し本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、溶融紡糸したポリエステル繊維糸条を冷却し、油剤を付与した後、速度が1000m/分以上2000m/分以下である加熱引取ローラーで引き取り、連続して加熱引き取りローラーと加熱延伸ローラーとの間で延伸する直接紡糸延伸法において、加熱引き取りローラーの上流部に、糸条流体処理部を設置し、かつ当該流体処理部の前後各々のガイドにより糸条に下記の条件(1)を満たす屈曲を与え、糸条走行位置を規制することを特徴とする糸条流体処理装置を設置することを特徴とするポリエステル繊維の直接紡糸延伸法を提案するものである。
(1)流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’(°)が(a)及び(a)’式を満足する。
【0011】
2° ≦ θ ≦ 10° … (a)
2° ≦ θ’≦ 10° … (a)’
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となるポリエステルとは特に限定されるものではなく、一般的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなど芳香族ポリエステルのほか、ポリ乳酸といった脂肪族ポリエステルであっても良い。またイソフタル酸等の共重合ポリエステルでも良く、また繊維の形態として、一部にポリエステルが使用されており、かつ直接紡糸延伸法を採用して製糸されるものであれば、芯鞘、海島、サイドバイサイドといった複合紡糸糸であっても対象内である。また酸化チタン等の粒子を練り込んでいてもかまわない。特にポリエチレンテレフタレート単成分に比べ一般に製糸が難しいとされているポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸、共重合ポリエステル、ポリエステル複合糸を本発明の製造方法に適用した場合に最も優位性を発揮できる。
【0013】
一般的なポリエステル繊維の直接紡糸延伸法は図1のような構成をとり、本発明では加熱引き取りローラの上流に糸条流体処理装置を設置されるのが特徴である。糸条流体処理装置は一般的に走行糸条の横方向から圧縮空気を吹き付ける方式であり、圧縮空気を吹き付ける孔の個数、吹き付け角度等多数の種類があり、いずれの種類のものも適用できるが、使用する圧縮空気の使用量が減らせることから、孔の数は1〜3個/糸条であるものが好ましい。
【0014】
また本発明における、糸条流体処理装置の前後ガイドG1、G1’における屈曲角θ、θ’はそれぞれが2°以上10°以下である必要がある(図2参照)。2°未満では糸条の走行位置が不安定となり開繊/交絡が定常的に行われず糸条の旋回運動が起こり流体処理装置内部で単子の擦過が発生、出来上がった原糸に毛羽を誘発させたり、紡糸工程での糸切れ原因となる。また10°を越えると流体処理部前後のガイドG1及びG1’上において擦過が発生、出来上がった原糸に毛羽を誘発させたり、紡糸工程での糸切れ原因となる。そして該屈曲角θ、θ’は同じ値であっても、異なっていても良い。また該屈曲角は、それぞれ5°以上7°以下であると好ましい。
【0015】
また該流体処理部の前後において、最も内側のガイドG1及びG1’間の距離L1(mm)を50mm≦L1≦150mmとすると糸条の旋回運動を極力抑制することができ好ましく、更には70mm≦L1≦90mmであるとより好ましい。またガイドG1の上流側とガイドG1’の下流側に各々ガイド(G2、G2’)を設け当該ガイド上でもθ、θ’の屈曲角で屈曲させて、かつL1−30mm≦L2≦L1−40mm、及びL1−30mm≦L2’≦L1−40mmの構成をとると、糸を糸条流体処理部に掛ける際、より効率良く作業を行うことができ好ましい。
【0016】
また糸条流体処理部の孔から噴出する圧空圧力P(MPa)は、0.03MPa以上0.15MPa以下とすると加熱引き取りローラ上での糸条の開繊を抑制しかつ加熱引き取りローラと加熱延伸ローラ間で延伸斑が発生しない程度の軽交絡をかけることができるため好ましく、0.07MPa以上0.09MPaであるとより好ましい。また糸条流体処理装置内を走行する糸条の速度を1000m/分以上2000m/分以下とすると糸条の走行位置が安定し定常的な開繊/交絡が行われるため好ましい。更にまた使用するガイドの表面粗度(Ra)を0.1μm以上0.9μm以下とすると単糸毛羽を抑制できるため好ましい。
【0017】
以下、実施例において本発明を具体的に説明する。
【0018】
【実施例】
実施例または比較例中における屈曲角の測定、及び毛羽の評価の基準は以下の通りである。
A.屈曲角の測定
ガイド内に糸を通し、G1、G1’間に張られた糸とG1、G2間及びG1’、G2’間に張られた糸との角度を分度器を用いて測定し、180°から除することにより屈曲角θ及びθ’を求めた。
B.毛羽の測定
巻き取った糸条の毛羽の検知には東レ株式会社製フライカウンタ(商品名)を用い、一定速度500m/分で糸条を走行させながら毛羽の検知を行い、試長10万mで検知された毛羽の個数を以下に示す3段階で評価した。なお、このうち△以上の評価を合格と判定した。
○○ :毛羽1個以下
○ :毛羽2〜4個
× :毛羽5個以上
実施例1
酸化チタンを0.3重量%含有するポリプロピレンテレフタレートを溶融紡糸し、一旦冷却後、2km/分の速度で加熱引き取りローラに引き取り、その後一旦巻き取ることなく、加熱引き取りローラと加熱延伸ローラとの間で延伸、加熱延伸ローラで熱処理した後に巻き取り56dtex、24フィラメントのポリエステルフィラメントを得た。図3の4aの位置に本発明の流体処理装置を設置した。流体処理部の前後にはガイドをそれぞれ2個ずつ用い、図2及び図3で示した例と全く同様とした。流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’は6°、内側のガイドG1及びG1’間の距離L1は80mm、G1/G2間の距離L2及びG1’/G2’間の距離L2’は45mm、噴出するエアーの圧力Pは0.08MPaとした。これにより品位の上で毛羽の無い良好なパッケージを得ることができた。
【0019】
実施例2
流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’を実施例1から変更しかつθとθ’を異なるものとし、またG1及びG1’間の距離L1(mm)、流体処理部において噴出するエアーの圧力P(MPa)をそれぞれ変更する以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0020】
実施例3〜4
流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’を変更する以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0021】
比較例1〜4
流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’を表1のように変更する以外は実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
実施例5,6
流体処理部の前後において、最も内側のガイドG1及びG1’間の距離L1(mm)を変更する以外は実施例1と同様にして行った。上記実施例の結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
実施例7,8
流体処理部において、噴出するエアーの圧力P(MPa)を変更する以外は実施例1と同様にして行った。上記実施例の結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
【発明の効果】
ポリエステル繊維の直接紡糸延伸法において、従来、糸条流体処理部の糸道は極力屈曲させない設計であり、糸条走行速度が低速度である場合には、糸条に掛かる張力が極度に低くなることから毛羽や糸切れの原因となっていたことを鑑み、本発明では糸道を屈曲させるという従来技術とは逆の発想により、糸条走行速度が低速であっても流体処理部を通過する糸条の揺れを制御できることを見出したものである。これにより、糸条に効率的に交絡処理を施し、毛羽や弛みの無い品位の高いパッケージを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の糸条流体処理装置の側方から見た平面図である。
【図2】本発明の糸条流体処理装置の立体図である。
【符号の説明】
1:口金
2:冷却装置
3:給油装置
4a,b:糸条流体処理装置
5:加熱引き取りローラ
6:加熱延伸ローラ
7a,b:第1,2ゴデッドローラ
8:フリクションローラ
9:パッケージ
G1,G1’:ガイド
G2,G2’:ガイド
Claims (4)
- 溶融紡糸したポリエステル繊維糸条を冷却し、油剤を付与した後、速度が1000m/分以上2000m/分以下である加熱引取ローラーで引き取り、連続して加熱引き取りローラーと加熱延伸ローラーとの間で延伸する直接紡糸延伸法において、加熱引き取りローラーの上流部に、糸条流体処理部を設置し、かつ当該流体処理部の前後各々のガイドにより糸条に下記の条件(1)を満たす屈曲を与え、糸条走行位置を規制することを特徴とする糸条流体処理装置を設置することを特徴とするポリエステル繊維の直接紡糸延伸法。
(1)流体処理部前後のガイドG1及びG1’上の糸条屈曲角θ及びθ’(°)が(a)及び(a)’式を満足する。
5° ≦ θ ≦ 10° … (a)
5° ≦ θ’ ≦ 10° … (a)’ - 流体処理部の前後に設置したガイドの配置が下記の条件(2)を満たすことを特徴とする糸条流体処理装置を設置する請求項1記載の直接紡糸延伸法。
(2)流体処理部の前後において、最も内側のガイドG1及びG1’間の距離L1(mm)が(b)式を満足する。
50mm ≦ L1 ≦ 150mm …(b) - ガイドG1上流側及びガイドG1’の下流側にガイドG2及びガイドG2’を設けG1/G2間の距離をL2(mm)、G1’/G2’間の距離をL2’(mm)とした時にL2、L2’が(c)及び(c)’式を満足することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の直接紡糸延伸法。
L1−40mm ≦ L2 ≦ L1−30mm … (c)
L1−40mm ≦ L2’ ≦ L1−30mm … (c)’ - 流体処理部において、噴出するエアーの圧力P(MPa)が(d)式を満たすことを特徴とする糸条流体処理装置を設けた請求項1〜3のいずれか1項記載の直接紡糸延伸法。
0.03MPa ≦ P ≦ 0.15MPa … (d)
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