JP4099643B2 - ステッピングモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステッピングモータに関し、詳しくは、例えば、インクジェット式記録装置のキャリッジや紙送りローラを駆動させるために好適に使用されるステッピングモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
ステッピングモータは、ステータのマグネットワイヤーの巻線に電流を流すことによって生じる磁極とロータの磁石により与えられる磁極の反発によって間欠的に回転駆動することが可能なモータである。図4は、従来のステッピングモータ100の一例を示す分解斜視図である。このステッピングモータ100は、2つのリング状永久磁石45a、45b、一対のマグネットホルダ21a、21bおよびシャフト50により構成されるロータ20と、このロータ20を同軸上に内挿するとともに周方向に櫛状極歯部35を有する複数のヨーク33を備え、該ヨーク33の間にマグネットワイヤーを巻装(47a、47b)するステータ31と、このステータ31に外装されるケース11とを主要な構成としている。また、マグネットワイヤーの巻線47a、47bは、ハーネスユニット60と接続されている。
【0003】
ステッピングモータの組立時には、ロータ20およびステータ31をそれぞれ別個に組み立てた後、ステータ31内の空間にロータ20を嵌め込み、ケース11内に圧入して固定している。ロータ20のシャフト50は、軸受42を介してフランジ10の穴に挿通され、さらにシャフト50の一端にはプーリ41を装着する。
【0004】
以上のような構成のステッピングモータ100においては、マグネットワイヤーの巻線47a、47bに電流を流すと、起磁力が発生し、ロータ20を所定角度動かす。この際、ロータ20の起磁力とロータ20の反発および吸引力により、ステータ31とロータ20にスラスト方向の力が働く。また、櫛状極歯部35へも吸引力が発生し、その応力によりヨーク33の外周部が微小変形する。このとき、ケース11とヨーク33の励磁により振動が発生するという問題があった。すなわち、ヨーク33は完全な円弧ではないので、ケース11内にステータ31を圧入してステッピングモータ100を組み立てた場合、ケース11とヨークの間に僅かな空隙が生じ、ここに加振エネルギーが加わることにより、ヨーク33がケース11の内周面の不定箇所と接触を繰返し、耳障りな高い周波数の騒音が発生する。
【0005】
このため、▲1▼特開平10−108448号公報では、ケースとヨークの振動防止の目的で空隙部に合成樹脂やゴムなどを充填したステッピングモータが提案されている。また、▲2▼特開平11−235002号公報においては、同様の目的で、コイル部とケース部を合成樹脂等で一体成形したステッピングモータが提案されている。さらに、▲3▼特開平6−217519号公報では、ケースとして、短冊状の板材を断面C字形に丸めて加工したものを用いることにより、ケースにバネ力を持たせ磁気抵抗を少なくして騒音を低減する技術が提案されている。
【0006】
しかし、上記▲1▼の方法は、合成樹脂やゴムなどの充填材の費用がそのまま材料費に加算されるため、コスト増となる。上記▲2▼の樹脂モールドによる一体成形は、設備費用や精度管理に大きな投資が必要となる上、金型構造が複雑になり、大量生産には不向きな方法である。また、樹脂の寸法精度を確保しないと、ロータとの中心のずれが生じて異常振動や異常音の発生原因となってしまう。上記▲3▼の方法では、バネ力以上の加振エネルギーが加わった場合には、騒音低減効果が得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ケース内にステータを圧入して組み立てられるステッピングモータにおいて、簡易な構成でケースとヨークとに起因する騒音の発生を防止することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、第1の態様の発明は、永久磁石と該永久磁石を支持するマグネットホルダと、該マグネットホルダの中心に貫装されたシャフトと、からなるロータと、前記ロータを同軸上に内挿するとともに、周方向に複数の櫛状極歯部を有するヨークを備えており、該ヨーク間にマグネットワイヤーを巻装するステータと、該ステータの周部に外装されるケースと、を有するステッピングモータであって、前記ケースの内周面に、前記ヨークとの接点となる少なくとも3箇所の突起部を設けたことを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、ケースの内周面に、前記ヨークとの接点となる少なくとも3箇所の突起部を設けたことにより、ケース内でヨークがしっかりと支持されるので、ヨークがケースの内周面と接触を繰返すことによる騒音の発生を防止することができる。つまり、3箇所以上の突起部によってヨークとケースを接触させて固定することにより、ヨークとケースとが前記接触点以外の部分で接触することがなくなり、励磁による騒音が起こらなくなる。
また、ケースの突起部形成は、構造簡単にしてパンチによる3点突きなどの通常の金属加工方法を利用して行えるため、製造コストも低く押さえることができる。さらに、ステッピングモータの組立前に突起形状を成形する場合は、ケース全体でなく、突起部3箇所の位置精度を確保すればよいので、従来よりも製造コストを低減できる。
【0010】
第2の態様の発明は、第1の態様において、前記突起部の頂点は同心円上に位置することを特徴とする。
この特徴によれば、突起部の頂点が同心円上に位置することにより、ロータ、ステータおよびケースの同軸度を容易に確保できる。つまり、突起部の頂点が同心円上に位置するようにすれば、ケース全体の精度を上げなくてもステッピングモータの同軸度を精度よく保つことが容易になる。
【0011】
第3の態様の発明は第1または第2の態様において、前記突起部の高さは、0.02〜0.05mmであることを特徴とする。
この特徴によれば、突起部の高さを、0.02〜0.05mmとすることで、確実に騒音の発生を防止することができる。つまり、突起部の高さが上記範囲であれば、突起部以外の部位でケース内周面とヨークの周部とが接触することを防止できる。また、突起が高すぎると、ケース内周面とヨークとの空隙が広がり磁気抵抗を悪化させて騒音を発生させる原因となるが、突起部の高さが上記範囲であれば、かかる弊害は生じない。
【0012】
第4の態様の発明は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記突起部の幅は、1.5mm以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、突起部の幅を、1.5mm以下とすることによって、同軸度を保ちながら、ケースとヨークを確実に支持し、騒音の発生を防止することができる。
【0013】
第5の態様の発明は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記突起部は、前記ケースの幅の80%以上にわたって形成されていることを特徴とする。
この特徴によれば、突起部をケースの幅の80%以上にわたって形成することにより、同軸度を保ちながら、ケースとヨークを確実に支持し、騒音の発生を防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明ステッピングモータ101の一実施形態の断面構造を示す図面である。このステッピングモータ101の構造は、ケース12を除き前記図4と略同様であるため、適宜図4も参照しながら説明を行う。
ロータ20は、マグネットホルダ21a、21bの周部に支持されるリング状のマグネット45a、45bを備えており、マグネットホルダ21a、21bの中心には、シャフト50が挿通されている。シャフト50は、フランジ10に装着された軸受42、およびステータ31に装着された軸受49によって支持されている。ロータ20の側部には、ワッシャ43、44、46が配備されており、フランジ10およびステータ31との間でロータ20の位置を固定している。
【0015】
ステータ31は、櫛状極歯部35をそれぞれ備えたヨーク33a、33b、33c、33dを備え、左右1対のマグネットワイヤーからなる巻線47a、47bが施されている。
【0016】
ケース12は、ロータ20を挿入したステータ31を嵌め込んだ状態で、背部がフランジ10と接着されている。この状態で、ステータ31はケース12中に圧入され、被覆樹脂部51が露出するようにカバー53が装着されている。また、ロータ20はワッシャ43、44を介してフランジ10の軸受42に押し当てられるように支持されている。
【0017】
図2は、図1のステッピングモータ101におけるケース12の詳細を示す図面である。図2(A)は、平面図(図4のステータ方向から表した状態)であり、図2(B)は(A)のIIB−IIB線矢視の断面構造を示している。このケース12は、内周面の3箇所に突起部81a、81b、81cを有している。ここでは、各突起部81a、81b、81cは、頂点が同心円上に位置するように配置され、中心からの角度θが約120°となるように均等に配置されている。
【0018】
図2において、突起部81a、81b、81cの高さ(L1)は、ケース12の内周面を結ぶ円の半径をr1、各突起部81a、81b、81cの頂点を結ぶ円の半径をr2としたとき、L1=r1−r2で表される。この高さL1としては、ヨーク33a、33b、33c、33dとの接点を確保し、騒音の発生を防止するために、0.02〜0.05mm程度とすることが好ましい。なお、突起部81a、81b、81c以外のケース12の内周面とヨーク33a、33b、33c、33dの周部との空隙は大きいと磁気抵抗を悪化させ、騒音を発生させるため0.03mm程度にすることが望ましい。
【0019】
また、突起部81a、81b、81cの幅(L2)は、ステータ31とケース12との同軸度を確保する上で1.5mm以下とすることが好ましい。また、突起部81a、81b、81cは、ケース12の幅[図2(B)のL3]に対して80%以上設けられている。このように、ケース12の幅L3に対して80%以上の長さで突起を設けることにより、ケース21とステータ31とが固定され、ステータ31のガタの発生を防止し、ステータ31とケース12との同軸度を容易に確保できる。
【0020】
突起部81a、81b、81cは、例えば▲1▼ステータ31の組立後に加工して設ける方法、▲2▼ケース単品の状態で加工して設ける方法、▲3▼ケースの加工成形時に同時に成形する方法、等によって加工成形できる。▲1▼〜▲3▼のどの場合においても、公知の成形技術により行うことができる。図3は、上記▲1▼、▲2▼の場合を例に挙げたものであり、ケース12に突起部81a、81b、81cを加工する方法の一例を概念的に示す図面である。ケース12’(従来のケース11と同じもの)を固定した状態で、図3(A)中に矢印で示すように3方向からパンチ等の成形具を所定の力で押し当てることにより、突起部81a、81b、81cを設けることができる[同図(B)]。
【0021】
以上述べたように、ケース12の内周面に、ヨーク31の周部との接点となる少なくとも3箇所の突起部を設けることにより、ケース12内でヨーク31がしっかりと支持され、ヨーク31とケース12とが突起部81a、81b、81c以外の部分で接触することがなくなり、励磁による騒音が起こらなくなる。
【発明の効果】
本発明によれば、ケースの内周面に、ヨークとの接点となる少なくとも3箇所の突起部を設けたことにより、ケース内でヨークがしっかりと支持されるので、ヨークがケースの内周面と接触を繰返すことによる騒音の発生を防止することができる。つまり、3箇所以上の突起部によってヨークとケースを接触させて固定することにより、ヨークとケースとが前記接触点以外の部分で接触することがなくなり、励磁による騒音が起こらなくなる。
また、ケースの突起部形成は、構造簡単にしてパンチによる3点突きなどの通常の金属加工方法を利用して行えるため、製造コストも低く押さえることができる。さらに、ステッピングモータの組立前に突起形状を成形する場合は、ケース全体でなく、突起部の位置精度を確保すればよいので、従来よりも製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ステッピングモータの断面構造の説明に供する図面。
【図2】ケースの説明に供する図面であり、(A)は平面図、(B)は(A)のIIB−IIB線矢視の断面図である。
【図3】ケースに突起部を加工する方法の説明に供する図面であり、(A)は加工前のケース、(B)は加工後のケースを示す。
【図4】従来のステッピングモータを説明に供する分解斜視図。
【符号の説明】
10 フランジ
11、12 ケース
20 ロータ
21a、21b マグネットホルダ
31 ステータ
33a、33b、33c、33d ヨーク
42 軸受
43、44、46 ワッシャ
45a、45b マグネット
47a、47b 巻線
49 軸受
50 シャフト
81a、81b、81c 突起部
100、101 ステッピングモータ
Claims (5)
- 永久磁石と該永久磁石を支持するマグネットホルダと、該マグネットホルダに貫装されたシャフトと、からなるロータと、
前記ロータを同軸上に内挿するとともに、周方向に複数の櫛状極歯部を有し、該櫛状極歯部が対になるように軸方向に複数配置されたヨークを備えており、該ヨーク間にマグネットワイヤーを巻装するステータと、
該ステータの周部に外装されるケースと、を有し、
前記ケースの内周面に、前記ヨークとの接点となる少なくとも3箇所の突起部を周方向に均等に設け、該突起部の先端のみが前記ヨークと接触し、前記突起部の先端がそれぞれ前記ヨークを支持し、前記突起部以外の箇所において、前記ケースの内周と前記ヨークとの間に空隙を発生させる構成である、ステッピングモータ。 - 請求項1に記載のステッピングモータにおいて、複数の前記突起部の頂点は、前記ケースの内周の中心を中心とした同一円上に位置することを特徴とする、ステッピングモータ。
- 請求項1または請求項2に記載のステッピングモータにおいて、前記突起部の高さは、0.02〜0.05mmであることを特徴とする、ステッピングモータ。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のステッピングモータにおいて、前記突起部の周方向の長さである幅は、1.5mm以下であることを特徴とする、ステッピングモータ。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステッピングモータにおいて、前記突起部は、軸方向における前記ケースの長さの80%以上にわたって形成されていることを特徴とする、ステッピングモータ。
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