JP4099386B2 - センサおよびセンサ製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定対象物の物理量(例えば、温度や特定ガスの濃度や濃度変化など)を検出するために、検出素子および筒状体を備えて構成されるセンサ、およびそのようなセンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、測定対象物の物理量を検出するセンサとしては、被測定領域に存在する測定対象物の温度を検出する温度センサや、被測定領域に存在する混合ガス中から特定ガス成分の濃度や濃度変化を検出するガスセンサ(酸素センサ、HCセンサやNOxセンサなど)などが知られている。
【0003】
ガスセンサとしては、例えば、図8に示すように、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子2と、検出素子2に電気的に接続されて検出信号の伝達経路を形成するリード線21と、検出素子2を保持すると共に開口嵌入部63を有するケーシング4と、リード線21を挿通するリード線挿通孔35が形成され、ケーシング4の開口嵌入部63に嵌入されるグロメット103(絶縁部材)と、を備えて構成される従来型ガスセンサ101がある。
【0004】
なお、図8では、左半分を外形として表し、右半分を断面として表した従来型ガスセンサ101の破断断面図を表している。
ケーシング4は、検出素子2を保持すると共にその先端側にある検出部25を排気管等の内部に突出させる主体金具5と、主体金具5の後端部(図8では上側の端部)に組み付けられ、検出素子2の後端側を覆うように形成される筒部材6とを備えて構成されている。なお、筒部材6は、内側筒部材17と外側筒部材18とを備えて構成されており、グロメット103は、外側筒部材18に嵌入されており、内側筒部材17は、グロメット103の軸方向における位置決めを行う保持部として機能している。
【0005】
そして、自動車の排気ガス中の酸素濃度を検出する従来型ガスセンサ101は、例えば、排気ガス管に配置されて、検出素子により排気ガス管を流れる排気ガス中の酸素濃度を検出する。
なお、近年、排気ガス中の酸素濃度を検出するためのガスセンサは、触媒後方の排気ガス管に装着されることが多く、車両の低い位置(路面からの距離が短い位置)に設置されることから、被水や水没する可能性が高くなる。
【0006】
このような被水し易い環境下に設置されるガスセンサは、水分などが内部に浸入することによる破損を防ぐために防水性を向上させる必要があり、リード線とリード線挿通孔(リード線挿通穴)との間における漏れを防止するためのガスセンサ(検出器)として、リード線挿通孔の内面にリブ部を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、弾性絶縁部材における複数のリード線挿通孔(リード線挿通穴)どうしの間隔寸法を規定し、さらに、リード線挿通孔のリブ部を設けることで、リード線挿通孔における防水性を向上させるガスセンサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−54063号公報(請求項1,第2図)
【特許文献2】
特開平9−229897号公報(請求項1、第3図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1および特許文献2ともに、リード線とリード線挿通孔との間の防水性を向上させる効果は期待できるものの、絶縁部材の側壁面と筒状体の内壁面との間の防水性確保については、筒状体の加締め加工によって達成する構成となっている以外に、何等記載が見られない。そのために、絶縁部材の側壁面と筒状体の内壁面との間の防水性を必ずしも満足する構成とはいえない。
【0010】
そこで、特許文献1および特許文献2に記載のセンサにおいて、絶縁部材の側壁面と筒状体の内壁面との間の防水性を向上させるべく、加締め加工による筒状体の径方向内側における変形率を高めることが考えられるが、絶縁部材の硬度や加締め作業の効率などを考慮すると、それには限界がある。
【0011】
一方、筒状体に上記加締め加工を行う前段階において、絶縁部材の外径寸法を筒状体の開口嵌入部の内側口径より大きく設定し、絶縁部材を開口嵌入部に嵌め込んで両者間に隙間を生じさせないようにすることも考えられる。しかし、このようにして絶縁部材を筒状体の開口嵌入部に嵌め込むようにすると、絶縁部材と筒状体との間の接触面積が大きくなるために、摩擦抵抗が大きくなり、嵌入作業が煩雑となる。
【0012】
また、特許文献1では、リブ部単独での高さ寸法が規定されているだけでリード線の外径寸法との関係が明確ではなく、また、特許文献2では、リブ部の寸法は規定されていないため、リード線の外径寸法によってはリード線挿通孔とリード線との間に隙間が生じる場合があり、必ずしも防水性を向上できるものではない。
【0013】
さらに、特許文献1および特許文献2ともに、リード線をリード線挿通孔に挿通する際の摩擦抵抗を軽減することの記載はないため、摩擦抵抗の増大に起因してリード線の挿入作業が煩雑になる虞がある。
つまり、上記の各特許文献によれば、センサにおける防水性を必ずしも満足できるものではなく、また、グロメット(絶縁部材)の筒状体への嵌入作業や、グロメット(絶縁部材)へのリード線の挿通作業などの、センサを組み立てるための作業が煩雑になるという問題がある。
【0014】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、防水性を向上させつつ、組み立て作業の煩雑さを解消できるセンサを提供すること、およびそのようなセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、検出素子に電気的に接続されて、検出信号の伝達経路を形成するリード線と、検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、筒状体の前記開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、開口嵌入部での絶縁部材の軸線方向における位置決めを行うために、筒状体の内部に配置される保持部と、を備えるセンサであって、絶縁部材は、リード線の個数と同数のリード線挿通孔を備えるとともに、リード線挿通孔の孔内壁面のうち少なくとも一部がリード線の外周に周方向にわたり当接する構成であり、筒状体における開口嵌入部の内壁面から径方向内側に突出して内壁面の周方向にわたり形成され、開口嵌入部の内壁面に対向する絶縁部材の側壁面に当接する第1嵌入用凸条部、または、絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して側壁面の周方向にわたり形成され、開口嵌入部の内壁面に当接する第2嵌入用凸条部のいずれかが、開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられていることを特徴とする。
【0016】
このセンサにおいては、第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部のいずれかが、絶縁部材の開口嵌入部への嵌入方向に対して、少なくとも2個以上備えられており、これら嵌入用凸条部が開口嵌入部と絶縁部材との当接部分を形成する。これにより、絶縁部材と開口嵌入部との隙間のうち嵌入用凸条部が備えられる部分は、周方向にわたり形成された嵌入用凸条部(第1嵌入用凸条部および第2嵌入用凸条部のうち少なくとも一方)によって閉塞されることになる。この結果、絶縁部材と開口嵌入部との隙間における防水性を向上でき、被水による内部への水分等の浸入を防止できる。
【0017】
また、このセンサは、嵌入用凸条部が開口嵌入部と絶縁部材との当接部分を形成しており、絶縁部材の側壁面全体が開口嵌入部の内壁面に当接する構造ではないため、絶縁部材と開口嵌入部との当接面積は小さくなる。このため、絶縁部材と開口嵌入部との間に生じる摩擦抵抗を低減することができ、容易に嵌入作業を行うことができる。
【0018】
よって、本発明(請求項1)のセンサによれば、絶縁部材と筒状体(開口嵌入部)との間の防水性を向上させつつ、組み立て作業の煩雑さを解消することができるという有利な効果を得ることができる。
また、上記目的を達成するためになされた請求項2に記載の発明は、軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、検出素子に電気的に接続されて、検出信号の伝達経路を形成するリード線と、検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、筒状体の前記開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、を備えるセンサであって、絶縁部材は、リード線の個数と同数のリード線挿通孔を備えており、筒状体における開口嵌入部の内壁面から径方向内側に突出して内壁面の周方向にわたり形成され、開口嵌入部の内壁面に対向する絶縁部材の側壁面に当接する第1嵌入用凸条部、または、絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して側壁面の周方向にわたり形成され、開口嵌入部の内壁面に当接する第2嵌入用凸条部のいずれかが、開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられ、リード線挿通孔の孔内壁面から径方向内側に突出すると共に孔内壁面の周方向にわたり形成され、リード線の外面に当接する挿通用凸条部が、リード線の挿通方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられていることを特徴とする。
【0019】
このセンサは、請求項1に記載のセンサと同様に、絶縁部材と開口嵌入部との隙間が、周方向にわたり形成された嵌入用凸条部(第1嵌入用凸条部および第2嵌入用凸条部のうち少なくとも一方)によって閉塞されることから、絶縁部材と開口嵌入部との隙間における防水性を向上できる。また、このセンサは、嵌入用凸条部が開口嵌入部と絶縁部材との当接部分を形成することから、絶縁部材と開口嵌入部との当接面積が小さくなるため、嵌入作業時の摩擦抵抗を低減でき、嵌入作業の煩雑さを解消することができる。
【0020】
さらに、このセンサにおいては、挿通用凸条部が、リード線の挿通方向に対して、絶縁部材のリード線挿通孔に少なくとも2個以上備えられており、これら挿通用凸条部が、絶縁部材とリード線との当接部分を形成する。これにより、絶縁部材(詳細には、リード線挿通孔の孔内壁面)とリード線との隙間のうち、挿通用凸条部が備えられる部分は、孔内壁面の周方向にわたり形成された挿通用凸条部によって閉塞されることになる。この結果、絶縁部材とリード線との隙間における防水性を向上でき、被水による内部への水分等の浸入を防止できる。
【0021】
また、このセンサは、挿通用凸条部が絶縁部材(詳細には、リード線挿通孔の孔内壁面)とリード線との当接部分を形成することから、リード線挿通孔の孔内壁面全体がリード線の外表面に当接する構造ではないため、絶縁部材とリード線との当接面積は小さくなる。このため、リード線と絶縁部材との間に生じる摩擦抵抗が低減されることになり、リード線挿通孔へリード線を挿通する挿通作業の煩雑さを解消できる。
【0022】
よって、本発明(請求項2)のセンサによれば、絶縁部材と筒状体(開口嵌入部)との間の防水性の向上に加えて、絶縁部材とリード線との間の防水性の向上を図ることができ、防水性を更に向上させることができる。また、本発明のセンサは、開口嵌入部への絶縁部材の嵌入作業の煩雑さの解消に加えて、リード線の挿通作業の煩雑さを解消することができ、更にセンサの組み立て作業の煩雑さを解消できる。
【0023】
そして、上記(請求項1または請求項2)のセンサは、請求項3に記載のように、絶縁部材が弾性変形可能な弾性材料で構成され、筒状体が、開口嵌入部のうち第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部に対応する部分に外側から径方向内側に加締められる加締め部を備えるとよい。
【0024】
つまり、このような加締め部が開口嵌入部に備えられる筒状体は、加締め部を加締めることで開口嵌入部の内径寸法を縮小することができ、開口嵌入部の内壁面と絶縁部材との密着性を高めることができる。特に、加締め部の形成位置を、嵌入用凸条部に対応する部分に設定することで、開口嵌入部の内壁面と絶縁部材との隙間を確実に無くすことができ、防水性を高めることができる。
【0025】
また、加締め部を設ける場合、本発明では、開口嵌入部と絶縁部材との当接部分をなす嵌入用凸条部(第1嵌入用凸条部および第2嵌入用凸条部のうち少なくとも一方)に対応する部分を含むようにして加締め部を設けていることから、筒状体(開口嵌入部)の加締めによる変形率を小さく設定した場合でも、絶縁部材と開口嵌入部との密着性を良好に得ることが可能となり、加締め作業の煩雑さを解消することができる。
【0026】
さらに、絶縁部材が弾性変形可能な弾性材料で構成されることから、加締め部の加締めにより開口嵌入部の内壁面の形状が変形した場合においても、絶縁部材が開口嵌入部の内壁面の形状に応じて弾性変形することで、絶縁部材と開口嵌入部との密着性を維持することができ、防水性を向上させることができる。
【0027】
よって、本発明(請求項3)のセンサによれば、加締め部を設けることで防水性をより高めることができ、また、センサの組み立て作業の煩雑さを解消できるという効果を得ることができる。
なお、加締め部は、筒状体の開口嵌入部のうちで第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部のいずれかに対応する部分に形成されるものであればよい。具体的には、2個以上の嵌入用凸条部のそれぞれに対応する部分に加締め部を複数形成しても良いし、2個以上の嵌入用凸条部を包括する形態で(例えば、全ての嵌入用凸条部を包括するように)単一の加締め部を形成するようにしても良い。
【0028】
次に、上述(請求項1から請求項3のいずれか)のセンサにおける第2嵌入用凸条部は、例えば、絶縁部材とは別体の略環状形状に形成し、環状内部に絶縁部材を挿通することで、絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出するよう構成することができる。しかし、このように第2嵌入用凸条部を構成する場合には、絶縁部材を開口嵌入部に嵌入する際に、絶縁部材に対する第2嵌入用凸条部の相対位置がずれてしまう場合があり、第2嵌入用凸条部を目的とする位置に配置できない虞がある。
【0029】
そこで、上述(請求項1から請求項3のいずれか)のセンサは、請求項4に記載のように、第2嵌入用凸条部が絶縁部材と一体成型されて構成されているとよい。
これにより、第2嵌入用凸条部と絶縁部材との相対位置が変化するのを防止でき、開口嵌入部に対して絶縁部材を嵌入する際に、第2嵌入用凸条部を目的とする位置に配置することが可能となる。
【0030】
よって、本発明(請求項4)のセンサによれば、第2嵌入用凸条部を目的とする位置に配置できることから、第2嵌入用凸条部の位置が移動することに起因して絶縁部材と筒状体(詳細には、開口嵌入部)との間に隙間が生じるのを確実に防止でき、防水性を向上させることができる。
【0031】
また、上述(請求項1から請求項4のいずれか)のセンサは、請求項5に記載のように、第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部は、断面形状が略三角形状に形成されているとよい。
第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部の断面形状を略三角形に形成することで、弾性部材を嵌入方向に沿って移動するときに、絶縁部材と開口嵌入部の内壁面との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑えることができる。
【0032】
よって、本発明(請求項5)のセンサによれば、嵌入作業の煩雑さをより解消できると共に、第1嵌入用凸条部または第2嵌入用凸条部が摩擦抵抗に耐えられずに破損するのを防止することができる。
次に、上記目的を達成するためになされた請求項6に記載の発明方法は、軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、検出素子に電気的に接続されて、検出信号の伝達経路を形成するリード線と、検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、を備えるセンサの製造方法であって、絶縁部材は、リード線の個数と同数のリード線挿通孔を備えるとともに、リード線挿通孔の孔内壁面のうち少なくとも一部がリード線の外周に周方向にわたり当接する構成であり、センサは、開口嵌入部の内壁面に対向する絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して側壁面の周方向にわたり形成される嵌入用凸条部を備え、絶縁部材は、側壁面における外径寸法が、筒状体の開口嵌入部の内側口径よりも小さく形成され、嵌入用凸条部は、開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように、少なくとも2個以上形成されると共に、開口嵌入部への嵌入前における径方向最大寸法が開口嵌入部の内側口径の110%以上に形成されており、絶縁部材と開口嵌入部とが嵌入用凸条部を介して当接する状態で、絶縁部材を前記開口嵌入部に嵌入することを特徴とする。
【0033】
このセンサ製造方法では、側壁面における外径寸法が開口嵌入部の内側口径よりも小さく形成され、径方向最大寸法が開口嵌入部の内側口径の110%以上に形成された嵌入用凸条部を有する絶縁部材とを用いており、絶縁部材と開口嵌入部とが嵌入用凸条部を介して当接する状態で、絶縁部材を開口嵌入部に嵌入する作業を実行する。このため、絶縁部材と開口嵌入部との当接部分の面積が縮小されることになり、嵌入時に絶縁部材と開口嵌入部との間に生じる摩擦抵抗を減少させることができ、嵌入作業の煩雑さを解消することができる。
【0034】
また、このセンサ製造方法により製造されたセンサでは、嵌入用凸条部が、開口嵌入部と絶縁部材との当接部分を形成することから、絶縁部材と開口嵌入部との隙間のうち嵌入用凸条部が備えられる部分は、周方向にわたり形成された嵌入用凸条部によって閉塞される。特に、嵌入用凸条部は、絶縁部材の開口嵌入部への嵌入方向に対して、少なくとも2個以上形成されることから、確実に隙間を閉塞することができる。この結果、絶縁部材と開口嵌入部との隙間における防水性を向上でき、被水による内部への水分等の浸入を防止できるセンサを製造することができる。
【0035】
よって、本発明方法(請求項6)のセンサ製造方法によれば、防水性に優れたセンサを製造することができると共に、絶縁部材を開口嵌入部に嵌入する際の作業の煩雑さを解消することができるという利点がある。
そして、上述(請求項6)の発明方法においては、請求項7に記載のように、嵌入用凸条部が一体成形された絶縁部材を開口嵌入部に嵌入するとよい。
【0036】
これにより、嵌入用凸条部と絶縁部材との相対位置が変化するのを防止でき、開口嵌入部に対して絶縁部材を嵌入する際に、嵌入用凸条部の位置ズレに対して特別な注意を払うことなく、嵌入用凸条部を目的とする位置に配置することが可能となる。
【0037】
よって、本発明方法(請求項7)によれば、特別な注意を払うことなく容易に嵌入用凸条部を目的とする位置に配置できることから、嵌入作業の煩雑さを解消することができる。また、嵌入用凸条部を目的位置に確実に配置できることから、このセンサ製造方法により製造したセンサは、絶縁部材と筒状体(詳細には、開口嵌入部)との間に隙間が生じるのを確実に防止でき、防水性に優れたセンサを製造することができる。
【0038】
また、上述(請求項6または請求項7)のセンサ製造方法においては、請求項8に記載のように、嵌入用凸条部の断面形状が略三角形状に形成された絶縁部材を開口嵌入部に嵌入するとよい。
つまり、嵌入用凸条部の断面形状を略三角形に形成することで、弾性部材を嵌入方向に沿って移動するときに、絶縁部材と開口嵌入部の内壁面との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑えることができる。
【0039】
よって、本発明方法(請求項8)のセンサ製造方法によれば、嵌入作業の煩雑さをより解消できると共に、嵌入用凸条部が摩擦抵抗に耐えられずに破損するのを防止することができる。
なお、断面形状が略三角形となるように嵌入用凸条部(第1嵌入用凸条部、第2嵌入用凸条部)を形成することで、嵌入用凸条部が一体に形成された絶縁部材を製造するにあたり、絶縁部材を成型用型枠から取り出す際に嵌入用凸条部と成型用型枠との間に生じる摩擦抵抗を低減でき、絶縁部材の取り出し作業が容易になるという利点がある。
【0040】
次に、上記目的を達成するためになされた請求項9に記載の発明方法は、軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、検出素子に電気的に接続されて、検出信号の伝達経路を形成するリード線と、検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、を備えるセンサの製造方法であって、絶縁部材は、リード線の個数と同数のリード線挿通孔を備えており、絶縁部材の前記リード線挿通孔は、孔内壁面による内径寸法がリード線の外径寸法よりも大きく形成され、絶縁部材は、リード線挿通孔の孔内壁面から径方向内側に突出すると共に孔内壁面の周方向にわたり環状に形成される挿通用凸条部を備え、挿通用凸条部は、リード線の挿通方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられると共に、環状の内径寸法がリード線の外径寸法の90%以下に形成され、リード線とリード線挿通孔とが挿通用凸条部を介して当接する状態で、リード線を前記リード線挿通孔に挿通することを特徴とする。
【0041】
このセンサ製造方法では、環状の内径寸法がリード線の外径寸法の90%以下に形成された挿通用凸条部を用いており、リード線とリード線挿通孔とが挿通用凸条部を介して当接する状態で、リード線をリード線挿通孔に挿通することで、リード線とリード線挿通孔との当接部分の面積を縮小できる。これにより、挿通時にリード線とリード線挿通孔との間に生じる摩擦抵抗を減少させることができ、リード線挿通作業の煩雑さを解消することができる。
【0042】
また、このセンサ製造方法により製造されたセンサでは、挿通用凸条部が、リード線挿通孔とリード線との当接部分を形成することから、リード線挿通孔とリード線との隙間のうち挿通用凸条部がが備えられる部分は、周方向にわたり形成された挿通用凸条部によって閉塞される。特に、挿通用凸条部は、リード線の挿通方向に対して少なくとも2個以上形成されることから、隙間を確実に閉塞することができる。この結果、リード線挿通孔とリード線との隙間における防水性を向上でき、被水による内部への水分等の浸入を防止できるセンサを製造することができる。
【0043】
よって、本発明方法(請求項9)のセンサ製造方法によれば、防水性に優れたセンサを製造することができると共に、リード線を絶縁部材のリード線挿通孔に挿通する際の作業の煩雑さを解消できるという利点がある。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を適用したセンサの実施例を図面と共に説明する。
本実施例は、ガスセンサの一種である酸素センサ1であり、図1に酸素センサ1の全体構成を表す断面図を示す。
【0045】
なお、以下の説明においては、酸素センサ1のうち、図1における下端側が「ガスセンサの先端側」に相当し、同様に、酸素センサ1の図1における上端側が「ガスセンサの後端側」に相当する。また、酸素センサ1は、例えば、車両に備えられる内燃機関の排気ガス間に備えられて、排気ガス中の酸素濃度を検出するために用いられる。
【0046】
図1に示すように、酸素センサ1は、チタニア(TiO2 )を主成分とする略長軸状の板型に形成された検出素子2,酸素センサ1の内部構造物を収容すると共に酸素センサ1を排気管等の取付部に固定するケーシング4などを備えて構成されている。
【0047】
検出素子2は、先端側(図中の下側)に測定対象物(排気ガス)にさらされる検出部25を有し、後端側(図中の上側)に排気ガス中の酸素濃度に応じた検出信号を出力する電極端子27を有して構成されている。なお、チタニアは、酸素濃度に応じて電気抵抗値が変化する特性を有しており、検出素子2の電気抵抗値に応じた電流値の検出信号が電極端子27から出力される。
【0048】
ケーシング4は、検出素子2を保持すると共にその先端側にある検出部25を排気管等の内部に突出させる主体金具5と、主体金具5の後端部(図1では上側の端部)に組み付けられ、検出素子2の後端側を覆うように形成される筒部材6とを備えて構成されている。
【0049】
主体金具5は、検出素子2を挿通するよう先端側から後端側にかけて貫通する素子挿通孔50を有する略円筒型形状に形成されており、検出部25および電極端子27が素子挿通孔50の外部に露出する状態で検出素子2を保持可能に構成されている。なお、主体金具5にて検出素子2を保持するにあたり、素子挿通孔50の内部には、検出素子2を挟み込む状態で支持するセラミックス材料からなる支持部材51と、検出素子2の周囲を覆うように支持部材51の内部に充填される充填部材52が配置される。
【0050】
また、酸素センサ1は、主体金具5の後端部を覆う略円筒状の筒部材6を備えている。筒部材6は、内側筒部材17と外側筒部材18とを備えて構成されると共に、検出素子2および後述する端子部8を収容可能な内部空間を形成している。
【0051】
内側筒部材17は、特許請求の範囲における保持部に相当するものであり、具体的には、その軸方向後端部に、径方向寸法が先端側よりも拡径することで後端側に対向するよう形成された後端対向部61を備えており、後端対向部61は、後述するグロメット7の先端側係止部37を係止可能に形成されている。すなわち、内側筒部材17は、外側筒部材18の開口嵌入部63でのグロメット7の軸方向における位置決めを行うものとなる。
【0052】
外側筒部材18は、その軸方向後端部の径方向寸法が先端側よりも縮径することで先端側に対向する先端対向部62が形成されると共に、内部から外部に通じる開口嵌入部63が後端に形成されている。なお、先端対向部62は、後述するグロメット7の後端側係止部39を係止可能に形成されている。
【0053】
外側筒部材18の開口嵌入部63には、検出素子2の電極端子27に夫々接続される4本のリード線21を外部から筒部材6(酸素センサ1)の内部に導入すると共に、筒部材6の内部への水分や油分の侵入を防止するグロメット7が配置される。
【0054】
次に、左半分を外形として表し、右半分を断面として表したグロメット7の破断断面図を図2に示す。
図2に示すように、グロメット7は、外側筒部材18の開口嵌入部63に嵌入可能な略円筒形状に形成されており、嵌入方向と円筒の軸線方向(図2における上下方向)が同一方向となる状態で開口嵌入部63に嵌入配置される。また、グロメット7は、側壁面31から径方向外側に突出して側壁面31の周方向にわたり周設される嵌入用凸条部33と、軸線方向の先端近傍部分(図2では下側部分)に先端側に対向する先端側係止部37と、軸線方向の後端近傍部分(図2では上側部分)に後端側に対向する後端側係止部39と、を備えて構成されている。なお、グロメット7は、電気的絶縁性を有すると共に弾性変形可能な材料で構成されている。
【0055】
嵌入用凸条部33は、グロメット7の軸線を含んで軸線方向に平行となる面における断面形状が略三角形状に形成されており、略円筒形状のグロメット7と一体成形されている。なお、本実施例の酸素センサ1においては、グロメット7の嵌入方向における位置がそれぞれ異なる2個の嵌入用凸条部33が備えられている。
【0056】
また、グロメット7は、自身の内部を軸線方向に貫通する4個のリード線挿通孔35を備えており、リード線挿通孔35は、グロメット7の軸線方向に垂直な面において軸線を中心とする周方向に均等に配置されて、4本のリード線21と各リード線21に電気的に接続された端子部8とを収納する。
【0057】
リード線挿通孔35は、後端側(図2における上側)部分の孔内後端内径寸法Gがリード線21の外径寸法よりも僅かに小さい寸法に形成されており、リード線21が挿通されるとリード線挿通孔35の周囲部分が弾性変形して、リード線21の外周面とリード線挿通孔35の後端側部分の孔内壁面とが隙間無く密着するよう構成されている。なお、本実施例の酸素センサ1では、リード線挿通孔35の後端側(図2における上側)部分の孔内後端内径寸法Gは、リード線21の外径寸法に対する95%値である。
【0058】
嵌入用凸条部33は、グロメット7の軸線方向に垂直な面における径方向最大寸法A(図2参照)が開口嵌入部63の内側口径C(図1参照)の110%値に相当する寸法となるように形成されている。また、グロメット7は、軸線方向に垂直な面のうち側壁面31に相当する部分の外径寸法B(図2参照)が、開口嵌入部63の内側口径C(図1参照)の90%値に相当する寸法となるように形成されている。
【0059】
筒部材6を構成する内側筒部材17および外側筒部材18は、主体金具5の後端部に組みつけられた後、それぞれの下端開口端部が径方向内側に加締められることにより、主体金具5に対して固定されている。
ここで、酸素センサ1の製造方法のうち、主体金具5に対する筒部材6(内側筒部材17および外側筒部材18)の装着方法、および筒部材6に対するグロメット7の装着方法について説明する。
【0060】
まず、リード線21(端子部8)が接続された検出素子2を支持部材51などと共に主体金具5の素子挿通孔50に挿通し、検出素子2を保持する状態の主体金具5に対して、内側筒部材17の内部にリード線21を挿通しつつ、内側筒部材17を主体金具5の後端に取り付けて加締めにより固定する。次に、リード線21をグロメット7のリード線挿通孔35に挿通しつつ、グロメット7の先端側係止部37が内側筒部材17の後端対向部61に当接するように、グロメット7を内側筒部材17の後端部に配置する。
【0061】
続いて、リード線21を外側筒部材18の内部に挿通しつつ、また、グロメット7と外側筒部材18の内壁面(開口嵌入部63)とが嵌入用凸条部33を介して当接する状態で、外側筒部材18を主体金具5の後端に取り付ける。このとき、同時に、グロメット7を外側筒部材18の開口嵌入部63に嵌入する作業が実行される。
【0062】
このような手順で作業を行うことで、内側筒部材17および外側筒部材18を主体金具5に装着できると共に、グロメット7を外側筒部材18の開口嵌入部63に嵌入することができる。この結果、図1に示すように、弾性変形した嵌入用凸条部33が、開口嵌入部63とグロメット7(絶縁部材)との当接部分を形成することになる。
【0063】
他方、主体金具5の下端側外周には、検出素子2の突出部分(検出部25)を覆うと共に、測定対象ガスを導入するための複数の孔部を有する金属製のプロテクタ81が溶接によって取り付けられている。
なお、本実施例の酸素センサ1においては、グロメット7が特許請求の範囲に記載の絶縁部材に相当し、ケーシング4が筒状体に相当し、嵌入用凸条部33が嵌入用凸条部(第2嵌入用凸条部)に相当する。
【0064】
以上に説明したように、本実施例(以下、第1実施例ともいう)の酸素センサ1は、嵌入用凸条部33が開口嵌入部63とグロメット7との当接部分を形成することから、グロメット7と開口嵌入部63との隙間のうち嵌入用凸条部33が備えられる部分は、周方向にわたり形成されると共に弾性変形する嵌入用凸条部33によって閉塞される。この結果、グロメット7と開口嵌入部63(外側筒部材18)との間に隙間が生じるのを抑制でき、防水性を向上できることから、被水による内部への水分等の浸入を防止できる。
【0065】
また、酸素センサ1は、嵌入用凸条部33が開口嵌入部63とグロメット7との当接部分を形成することから、グロメット7の側壁面31全体が開口嵌入部63(外側筒部材18)の内壁面に当接する構造ではない。このため、グロメット7と開口嵌入部63との当接面積は小さくなり、グロメット7と開口嵌入部63との間に生じる摩擦抵抗が低減されることから、グロメット7を外側筒部材18に嵌入する際の作業の煩雑さを解消できる。
【0066】
よって、本実施例の酸素センサ1によれば、グロメット7と筒部材6(詳細には、外側筒部材18であり、更に詳細には、開口嵌入部63。)との間の防水性を向上させつつ、組み立て作業の煩雑さを解消できるという効果を得ることができる。
【0067】
また、嵌入用凸条部33は、グロメット7と一体成型されており、嵌入用凸条部33とグロメット7との相対位置が変化するのを防止できることから、開口嵌入部63に対してグロメット7を嵌入する際に、嵌入用凸条部33を目的とする位置に配置することが可能となる。これにより、グロメット7と筒部材6(詳細には、外側筒部材18、開口嵌入部63)との間に隙間が生じるのを確実に防止でき、防水性を向上させることができる。
【0068】
次に、第2実施例として、内向嵌入用凸条部43が備えられる第2ケーシング41と、リード線挿通孔35に挿通用凸条部47が形成される第2グロメット45を備える第2酸素センサ11について説明する。なお、第2酸素センサ11は、第1実施例の酸素センサ1と比べて、筒部材およびグロメットに相当する部分が異なっており、その他の部分は酸素センサ1と同様の構成であることから、酸素センサ1との相違点を中心に説明する。
【0069】
図3に、左半分を外形として表し、右半分を断面として表した第2酸素センサ11の後端部分の破断断面図を示す。なお、図3では、リード線21および端子部8の図示を省略している。
第2ケーシング41は、内側筒部材17と第2外側筒部材42とを備えて構成されている。内側筒部材17は第1実施例と同様の構成であり、第2外側筒部材42は、第1実施例の外側筒部材18に対し、開口嵌入部63の内壁面から径方向内側に突出して内壁面の周方向にわたり形成される内向嵌入用凸条部43を備えて構成されている。
【0070】
内向嵌入用凸条部43は、第2外側筒部材42の軸線方向に垂直な面における最小内径寸法Dが、開口嵌入部63の内側口径C(図3参照)の85%値に相当する寸法となるように形成されている。また、第2実施例の第2酸素センサ11においては、第2外側筒部材42の軸線方向における位置がそれぞれ異なる2個の内向嵌入用凸条部43が備えられている。
【0071】
第2グロメット45は、弾性変形可能な材料からなり、第1実施例のグロメット7から嵌入用凸条部33を取り除いた略円筒形状に形成されており、軸線方向に垂直な面のうち側壁面31に相当する部分の外径寸法B(図3参照)が、開口嵌入部63の内側口径C(図3参照)の90%値に相当する寸法となるように形成されている。
【0072】
このため、第2外側筒部材42の開口嵌入部63に第2グロメット45を嵌入する作業を行う際には、第2グロメット45の側壁面31は、内向嵌入用凸条部43と当接する状態となり、開口嵌入部63の内壁面全体に当接する場合よりも接触面積が小さくなる。
【0073】
第2外側筒部材42の開口嵌入部63に第2グロメット45が嵌入されると、第2グロメット45が弾性変形し、第2グロメット45(側壁面31)と内向嵌入用凸条部43とが周方向にわたり隙間無く当接する状態となる。この結果、内向嵌入用凸条部43が、開口嵌入部63と第2グロメット45との当接部分を形成することになる。
【0074】
また、第2グロメット45は、リード線挿通孔35の孔内壁面から径方向内側に突出すると共に孔内壁面の周方向にわたり略環状に形成される挿通用凸条部47を備えて形成されている。挿通用凸条部47は、リード線挿通孔35のうち内径寸法がリード線21の外径寸法よりも僅かに大きく形成された縮径部分に形成されており、本実施例では、縮径部分の内径寸法(孔内縮径部内径寸法E)はリード線21の外径寸法に対する102%値である。
【0075】
挿通用凸条部47は、環状の内側空間における最小径である環状内径寸法Fがリード線21の外径寸法の90%値となるように形成される。また、第2酸素センサ11は、リード線挿通孔35の挿通方向における位置がそれぞれ異なる2個の挿通用凸条部47を備えて構成されている。
【0076】
このため、第2グロメット45のリード線挿通孔35にリード線21を挿通する作業を行う際には、リード線挿通孔35の縮径部分では、リード線21の外周面が挿通用凸条部47と当接する状態となり、リード線挿通孔35の縮径部分における孔内壁面全体に当接する場合よりも接触面積が小さくなる。
【0077】
そして、第2グロメット45のリード線挿通孔35に対するリード線21の挿通作業時には、リード線挿通孔35の縮径部分のうち、内径寸法が最小となる挿通用凸条部47において、リード線21の外周面との間に生じる圧力が最も大きくなる。なお、リード線挿通孔の縮径部分全体の内径寸法(孔内縮径部内径寸法E)がリード線21の外径寸法の90%値で形成されるグロメット(以下、縮径部分90%値グロメットという)においては、リード線21の外周面との間に生じる圧力が第2グロメット45の挿通用凸条部47と同等となる部分の面積は、第2グロメット45に比べて大きくなる。
【0078】
このため、第2グロメット45は、縮径部分90%値グロメットに比べて、リード線21との間に生じる摩擦力を低減でき、リード線挿通作業の煩雑さを軽減できる。また、第2グロメット45は、挿通用凸条部47においてリード線21に対して周方向にわたり密着することから、縮径部分90%値グロメットとほぼ同等の防水性を備えている。
【0079】
第2グロメット45のリード線挿通孔35にリード線21が挿通されると、第2グロメット45のうち挿通用凸条部47が弾性変形し、第2グロメット45(挿通用凸条部47)とリード線21とが周方向にわたり隙間無く当接する状態となる。この結果、挿通用凸条部47が、リード線21と第2グロメット45との当接部分を形成することになる。
【0080】
なお、本第2実施例の第2酸素センサ11においては、第2グロメット45が特許請求の範囲に記載の絶縁部材に相当し、内向嵌入用凸条部43が嵌入用凸条部(第1嵌入用凸条部)に相当する。
以上に説明したように、第2実施例の第2酸素センサ11は、内向嵌入用凸条部43が第2外側筒部材42(開口嵌入部63)と第2グロメット45との当接部分を形成することから、第2グロメット45と開口嵌入部63との隙間のうち内向嵌入用凸条部43が備えられる部分は、周方向にわたり内向嵌入用凸条部43によって閉塞される。この結果、第2グロメット45と開口嵌入部63(第2外側筒部材42)との間に隙間が生じるのを抑制でき、防水性を向上できることから、被水による内部への水分等の浸入を防止できる。
【0081】
また、第2酸素センサ11は、内向嵌入用凸条部43が開口嵌入部63と第2グロメット45との当接部分を形成することから、第2グロメット45の側壁面31全体が開口嵌入部63(第2外側筒部材42)の内壁面に当接する構造ではない。このため、第2グロメット45と開口嵌入部63との当接面積は小さくなり、第2グロメット45と開口嵌入部63との間に生じる摩擦抵抗が低減されることから、第2グロメット45を外側筒部材に嵌入する際の作業の煩雑さを解消できる。
【0082】
さらに、第2酸素センサ11においては、2個の挿通用凸条部47が、第2グロメット45のリード線挿通孔35に備えられており、挿通用凸条部47は、第2グロメット45とリード線21との当接部分を形成する。これにより、第2グロメット45(詳細には、リード線挿通孔35の孔内壁面)とリード線21との隙間のうち、挿通用凸条部47が備えられる部分は、孔内壁面の周方向にわたり形成された挿通用凸条部47によって閉塞されることになる。この結果、第2グロメット45とリード線21との隙間における防水性を向上でき、被水による内部への水分等の浸入を防止できる。
【0083】
また、第2酸素センサ11は、挿通用凸条部47が第2グロメット45(詳細には、リード線挿通孔35の縮径部分の孔内壁面)とリード線21との当接部分を形成することから、リード線挿通孔35の孔内壁面全体がリード線21の外表面に当接する構造ではないため、第2グロメット45とリード線21との当接面積は小さくなる。このため、リード線21と第2グロメット45との間に生じる摩擦抵抗が低減されることになり、リード線挿通孔35へリード線21を挿通する挿通作業の煩雑さを解消できる。
【0084】
よって、第2酸素センサ11によれば、第2グロメット45と第2ケーシング41(詳細には、第2外側筒部材42であり、更に詳細には、開口嵌入部63)との間の防水性の向上に加えて、第2グロメット45とリード線21との間の防水性の向上を図ることができ、防水性を更に向上させることができる。また、第2酸素センサ11は、開口嵌入部63への第2グロメット45の嵌入作業の煩雑さの解消に加えて、リード線21の挿通作業の煩雑さを解消することができ、更にセンサの組み立て作業の煩雑さを解消できる。
【0085】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
例えば、第1実施例の酸素センサ1においては、図4に示すように、筒部材6(詳細には、外側筒部材18)の開口嵌入部63のうち嵌入用凸条部33に対応する部分に、外側から内側に加締められる加締め部71を備えてもよい。
【0086】
なお、図4は、加締め部71を備える酸素センサ1の後端部分の破断断面図を示しており、左半分は筒部材6の断面およびグロメット7の外形を示し、右半分は筒部材6の断面およびグロメット7の断面を示している。
つまり、図4に示すような加締め部71が開口嵌入部63に備えられる筒部材6は、加締め部71を加締めることで開口嵌入部63の内径寸法を縮小することができ、開口嵌入部63の内壁面とグロメット7との密着性を高めることができる。
【0087】
なお、加締めの手法としては、多角加締め(六角加締めや八角加締めなど)、丸加締めおよびローリング加締めなど、筒部材(開口嵌入部)の周方向径寸法を縮径可能な加締め方法を用いることができる。
次に、第2酸素センサ11においても、図5に示すように、第2ケーシング41(詳細には、第2外側筒部材42)の開口嵌入部63のうち2個の内向嵌入用凸条部43を含む部分に、外側から内側に加締められる拡大加締め部73を備えてもよい。
【0088】
なお、図5は、拡大加締め部73を備える第2酸素センサ11の後端部分の破断断面図を示しており、左半分は第2ケーシング41の外形を示し、右半分は第2ケーシング41の断面および第2グロメット45の断面を示している。
第2酸素センサ11は、図5に示すように、2個の内向嵌入用凸条部43を含む広い範囲にわたり形成される拡大加締め部73を備えることで、内向嵌入用凸条部43の最小内径寸法をさらに小さくすることができる。これにより、第2グロメット45と開口嵌入部63との密着性を高めることができ、防水性を高めることができることから、加締め部71が形成された酸素センサ1と同様の効果を得ることができる。
【0089】
次に、図6に示す第3酸素センサ13のように、グロメット7に形成される2個の嵌入用凸条部33と、第2ケーシング41に形成される2個の内向嵌入用凸条部43とを、それぞれ備えるように、酸素センサを構成しても良い。
図6は、左半分を外形として表し、右半分を断面として表した第3酸素センサ13の後端部分の破断断面図であり、リード線21および端子部8の図示を省略している。
【0090】
2個の嵌入用凸条部33と2個の内向嵌入用凸条部43とを有する第3酸素センサ13では、開口嵌入部63の内壁面とグロメット7との間で周方向に連続した当接部分が4箇所形成されることから、より一層、隙間が生じ難くなり、防水性を高めることができる。
【0091】
また、第3酸素センサ13に備えられるグロメット7は、リード線挿通孔35に挿通用凸条部47が形成されており、挿通用凸条部47は第2グロメット45にそなえられているものと同様の形状である。このため、第3酸素センサ13は、リード線挿通孔35における防水性を向上できると共に、リード線挿通孔35へリード線21を挿通する挿通作業の煩雑さを解消できる。
【0092】
次に、グロメットは、上述したように、全体が一体成形されるものに限ることはなく、複数の部材が組み合わされて構成されるものでも良く、例えば、図7に示すように、グロメット本体部77とグロメット外周部79とを備えて構成される第3グロメット75を用いても良い。
【0093】
グロメット本体部77は、後端側(図7では上側)に対向する本体部係合面78を側面に有する略円柱状に形成されると共に、自身の内部を軸線方向に貫通するリード線挿通孔35を備えている。なお、リード線挿通孔35は、第2グロメット45に形成されるリード線挿通孔35と同様に、挿通用凸条部47を備えて形成されている。
【0094】
グロメット外周部79は、グロメット本体部77を収容可能な貫通孔を有する略円筒状に形成されると共に、グロメット本体部77の本体部係合面78と係合するよう先端側(図7では下側)に対向する外周部係合面80を貫通孔の内面に備えて構成されている。また、グロメット外周部79は、側壁面31から径方向外側に突出して側壁面31の周方向にわたり周設される2個の嵌入用凸条部33と、軸線方向の先端近傍部分(図7では下側部分)に先端側に対向する先端側係止部37と、軸線方向の後端近傍部分(図7では上側部分)に後端側に対向する後端側係止部39と、を備えて構成されている。なお、嵌入用凸条部33は、第1実施例のグロメット7に形成される嵌入用凸条部33と同様の構成である。
【0095】
本体部係合面78と外周部係合面80とが互いに係合するようにグロメット本体部77をグロメット外周部79の貫通孔に挿入することで、第3グロメット75が形成される。この第3グロメット75は、第1実施例のグロメット7と比べて同様の外観を呈するとともに同様のリード線挿通孔35を備えることから、グロメット7に代えて第3グロメット75を備える酸素センサは、防水性に優れると共に、グロメットを筒部材(ケーシング)に嵌入する作業の煩雑さを解消することが出来る。
【0096】
また、この第3グロメット75は、本体部係合面78と外周部係合面80とが互いに係合することで、グロメット本体部77とグロメット外周部79との軸線方向における相対位置が変化しないように構成されており、筒部材への嵌入作業時に相対位置が移動しないように配慮する必要が無くなるため、嵌入作業の繁雑さを解消することが出来る。
【0097】
なお、グロメット7および第3グロメット75は、第2グロメット45のような挿通用凸条部47を有するリード線挿通孔35を備えて形成されていることから、これにより、さらに防水性を高めることができると共に、リード線の挿通作業の繁雑さを解消することが出来る。
【0098】
また、本発明の適用対象となる酸素センサは、チタニアからなる検出素子を備える酸素センサに限ることはなく、例えば、ジルコニア(ZrO2 )を主成分とする固体電解質体により形成された検出素子を備える酸素センサに対して本発明を適用することもできる。
【0099】
なお、本発明が適用可能なセンサは、酸素を検出するための酸素センサに限ることはなく、本発明は、他の種類のガスを検出するガスセンサや温度を検出するための温度センサ等に適用することもできる。
また、嵌入用凸条部や挿通用凸条部は、2個に限ることはなく、3個以上備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酸素センサの全体構成を表す断面図である。
【図2】 グロメットの破断断面図である。
【図3】 第2酸素センサの後端部分の破断断面図である。
【図4】 加締め部を備える酸素センサの後端部分の破断断面図である。
【図5】 加締め部を備える第2酸素センサの後端部分の破断断面図である。
【図6】 第3酸素センサの後端部分の破断断面図である。
【図7】 第3グロメットの破断断面図である。
【図8】 従来型ガスセンサの破断断面図である。
【符号の説明】
1…酸素センサ、2…検出素子、4…ケーシング、5…主体金具、6…筒部材、7…グロメット、8…端子部、11…第2酸素センサ、13…第3酸素センサ、21…リード線、33…嵌入用凸条部、35…リード線挿通孔、41…第2ケーシング、43…内向嵌入用凸条部、45…第2グロメット、47…挿通用凸条部、63…開口嵌入部、71…加締め部、73…拡大加締め部。
Claims (9)
- 軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、
前記検出素子に電気的に接続されて、前記検出信号の伝達経路を形成するリード線と、
前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、
前記リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、前記筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、
前記開口嵌入部での前記絶縁部材の前記軸線方向における位置決めを行うために、前記筒状体の内部に配置される保持部と、
を備えるセンサであって、
前記絶縁部材は、前記リード線の個数と同数の前記リード線挿通孔を備えるとともに、前記リード線挿通孔の孔内壁面のうち少なくとも一部が前記リード線の外周に周方向にわたり当接する構成であり、
前記筒状体における前記開口嵌入部の内壁面から径方向内側に突出して前記内壁面の周方向にわたり形成され、前記開口嵌入部の内壁面に対向する前記絶縁部材の側壁面に当接する第1嵌入用凸条部、または、前記絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して前記側壁面の周方向にわたり形成され、前記開口嵌入部の内壁面に当接する第2嵌入用凸条部のいずれかが、前記開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられていること、
を特徴とするセンサ。 - 軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、
前記検出素子に電気的に接続されて、前記検出信号の伝達経路を形成するリード線と、
前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、
前記リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、前記筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、
を備えるセンサであって、
前記筒状体における前記開口嵌入部の内壁面から径方向内側に突出して前記内壁面の周方向にわたり形成され、前記開口嵌入部の内壁面に対向する前記絶縁部材の側壁面に当接する第1嵌入用凸条部、または、前記絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して前記側壁面の周方向にわたり形成され、前記開口嵌入部の内壁面に当接する第2嵌入用凸条部のいずれかが、前記開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられ、
前記絶縁部材は、前記リード線の個数と同数の前記リード線挿通孔を備えており、
前記リード線挿通孔の孔内壁面から径方向内側に突出すると共に前記孔内壁面の周方向にわたり形成され、前記リード線の外面に当接する挿通用凸条部が、前記リード線の挿通方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられていること、
を特徴とするセンサ。 - 前記絶縁部材は、弾性変形可能な弾性材料で構成され、
前記筒状体は、前記開口嵌入部のうち前記第1嵌入用凸条部または前記第2嵌入用凸条部に対応する部分に外側から径方向内側に加締められる加締め部を備えること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ。 - 前記第2嵌入用凸条部は、前記絶縁部材と一体成型されていること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のセンサ。 - 前記第1嵌入用凸条部または前記第2嵌入用凸条部は、断面形状が略三角形状に形成されていること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のセンサ。 - 軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、
前記検出素子に電気的に接続されて、前記検出信号の伝達経路を形成するリード線と、
前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、
前記リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、前記筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、
を備えるセンサの製造方法であって、
前記絶縁部材は、前記リード線の個数と同数の前記リード線挿通孔を備えるとともに、前記リード線挿通孔の孔内壁面のうち少なくとも一部が前記リード線の外周に周方向にわたり当接する構成であり、
前記センサは、前記開口嵌入部の内壁面に対向する前記絶縁部材の側壁面から径方向外側に突出して前記側壁面の周方向にわたり形成される嵌入用凸条部を備え、
前記絶縁部材は、前記側壁面における外径寸法が、前記筒状体の前記開口嵌入部の内側口径よりも小さく形成され、
前記嵌入用凸条部は、前記開口嵌入部の嵌入方向における位置がそれぞれ異なるように、少なくとも2個以上形成されると共に、前記開口嵌入部への嵌入前における径方向最大寸法が前記開口嵌入部の内側口径の110%以上に形成されており、
前記絶縁部材と前記開口嵌入部とが前記嵌入用凸条部を介して当接する状態で、前記絶縁部材を前記開口嵌入部に嵌入すること、
を特徴とするセンサ製造方法。 - 前記嵌入用凸条部が一体成形された前記絶縁部材を、前記開口嵌入部に嵌入すること、
を特徴とする請求項6に記載のセンサ製造方法。 - 前記嵌入用凸条部の断面形状が略三角形状に形成された前記絶縁部材を、前記開口嵌入部に嵌入すること、
を特徴とする請求項6または請求項7に記載のセンサ製造方法。 - 軸線方向に延び、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する検出素子と、
前記検出素子に電気的に接続されて、前記検出信号の伝達経路を形成するリード線と、
前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒状をなし、自身の内部から外部に通じる開口嵌入部を有する筒状体と、
前記リード線を挿通するためのリード線挿通孔が少なくとも1個形成され、前記筒状体の開口嵌入部に嵌入される絶縁部材と、
を備えるセンサの製造方法であって、
前記絶縁部材は、前記リード線の個数と同数の前記リード線挿通孔を備えており、
前記絶縁部材の前記リード線挿通孔は、孔内壁面による内径寸法が前記リード線の外径寸法よりも大きく形成され、
前記絶縁部材は、前記リード線挿通孔の孔内壁面から径方向内側に突出すると共に前記孔内壁面の周方向にわたり環状に形成される挿通用凸条部を備え、
前記挿通用凸条部は、前記リード線の挿通方向における位置がそれぞれ異なるように少なくとも2個以上備えられると共に、環状の内径寸法が前記リード線の外径寸法の90%以下に形成され、
前記リード線と前記リード線挿通孔とが前記挿通用凸条部を介して当接する状態で、前記リード線を前記リード線挿通孔に挿通すること、
を特徴とするセンサ製造方法。
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