JP4097535B2 - 導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板および電気接点ばね材料 - Google Patents

導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板および電気接点ばね材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板および電気接点ばね材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気・電子機器に使用される電気接点ばねには、それ自体が導電体となって通電を担う機能とともに、通電状態において接触相手部材と容易に外れないよう接触点において自らを相手部材に強固に押しつける機能が要求される。したがって、その材料には良好な導電性とばね特性が求められる。
【0003】
従来より、電気接点ばね材料には導電性とばね特性のバランスに優れる「りん青銅」が多く使用されている。りん青銅は、例えばSn:3.5〜9.0質量%,P:0.03〜0.35質量%を含む銅合金であり、導電率は概ね12〜18%IACSを呈する。素材形状としては、電気接点においては平面同士が接触する仕組みである方が接触不良が少ない上に接触抵抗も小さいので、板材が多用されている。この板材は、通常、ばね限界値250MPa以上のばね特性を有するものが使用される。
【0004】
一方、線材用途として、下記特許文献1には、高炭素鋼線の表面にCuめっきとNiめっきを施した電池押さえばね用鋼線が示されている。これは、Cuめっきによって従来の電池押さえばね用鋼線の導電性を改善したものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−158353号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
電気・電子機器部品には材料を含む低コスト化,小型化,軽量化が求められている。
従来から使用されているりん青銅は、特性バランスに優れている反面、高価な材料である。りん青銅を、これと同等の性能を有する安価な材料で代替することができれば、電気・電子機器部品のコスト低減に貢献できる。
【0007】
しかし、特許文献1の材料は線材であるため接触抵抗の観点から上記の板材接点用途に適用することはできない。一方、従来のばね用鋼板にCuめっきを施して導電率を改善する手法も考えられるが、この場合、鋼板自体が導電性に劣るため、全体として十分な導電率を得るにはかなり厚目付のCuめっき層を形成する必要がある。このため、めっきによるコスト増およびばね特性劣化を考慮するとりん青銅の代替として使用することは困難である。
【0008】
本発明は、上記の電気接点用りん青銅の板材に匹敵する「ばね特性」と「導電率」を具備する低廉な材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、りん青銅に匹敵するばね特性と導電性を有する低廉な材料を実現するには、素材自体にそのような優れた特性を持たせた「単独材料」を開発するよりも、高いばね特性を有する基材の表面に、Cu,Al,Ag,Auといった高導電性の金属を被覆した「複合材料」を開発する方が合理的であるとの見解を得た。
【0010】
この場合、基材としては「ばね特性」と「低廉さ」を重視すると鋼材が有利になる。しかし、既存のばね用鋼板は導電性が低いため、これを補うためにはCu等の被覆を厚く形成する必要があり、その結果、基材の特長である「ばね特性」および「低廉さ」は没却されてしまう。このため、鋼板を基材に用いるのであれば、「ばね性」を維持したまま鋼材の「導電性」を向上させる技術の確立が望まれる。ところが、そのような積極的な研究は未だ十分になされていないのが現状である。
【0011】
そこで発明者らは、鋭意研究を行った結果、化学組成と金属組織を厳しく限定したうえ、冷間圧延と時効処理を組み合わせた適切な組織制御を行えば鋼材に良好な導電性と優れたばね特性を同時に付与できることを見出した。そして、そのような鋼板を基材とした場合に、個々の基材鋼板の特性に応じてCuめっき層の厚さを適切に制御すれば、ばね特性の劣化やコスト高騰を避けながら更なる導電性の向上が実現できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0012】
すなわち、上記目的は、C,Si,Mnの含有量が質量%で下記(1)式および(2)式を満たし残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの冷間加工された金属組織を呈し、ばね限界値が300MPa以上である基材鋼板の表面に、下記(3)式を満たす厚さのCuめっき層を形成したばね限界値が250MPa以上、導電率が12%IACS以上である導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板によって達成される。
C≧0.1 ……(1)
17.53C+13.75Si+6.25Mn<24 ……(2)
0.19−0.016×Aw≦tc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27 ……(3)
ただし、Aw :基材鋼板の導電率(%IACS)
tw :基材鋼板の板厚(mm)
Kbw:基材鋼板のばね限界値(MPa)
tc :基材鋼板両面のCuめっき層合計厚さ(mm)
【0013】
ここで、(1)式および(2)式の元素記号の箇所には質量%で表された各元素の含有量が代入される。ばね限界値は、JIS H 3130に規定されるばね限界値試験法により求まるものである。導電率%IACSは、材料の導電性を、国際標準軟銅線(International Annealed Copper Standard)の電気抵抗率(1.7241×10-8Ω・m)に相当する導電率を100とした相対比(%)で表示したものである。(3)式中の「ln」は自然対数を表す。
【0014】
また本発明では、C,Si,Mnの含有量が質量%で上記(1)式および(2)式を満たし残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの金属組織に調整された鋼板に、冷延率15%以上好ましくは15〜90%の冷間圧延と、次いで600℃以下の時効処理好ましくは300〜500℃で1〜30時間保持する時効処理を施して得られる組織状態を有し、ばね限界値が300MPa以上である基材鋼板の表面に、上記(3)式を満たす厚さのCuめっき層を形成したばね限界値が250MPa以上、導電率が12%IACS以上である導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板を提供する。 このうち、特にCuめっきを施す基材鋼板の導電率が7%IACS以上であるものを提供する。
【0015】
さらに、上記の導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板のうち板厚が0.1〜0.6mmに調整されたものを用いた電気接点ばね材料を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明では、りん青銅と同等あるいはそれ以上のばね特性と導電性を両立するCuめっき鋼板を得るために、めっき基材となる鋼板の化学組成を厳しく限定する必要がある。
Cは、本来鋼の強度を確保する上で必須の元素であるが、本発明では後述する「冷間圧延+時効処理」によりばね特性を大幅に向上させるため、0.1質量%以上の含有量を確保する。Cが0.1質量%を下回ると、マルテンサイトが存在しないように調整された金属組織(後述)においては、基材鋼板自体に必要な最小限のばね限界値300MPa(後述)をクリアすることが困難になる。そこで、(1)式による規制を設けた。
C≧0.1 ……(1)
なお、Cの上限については後述の(2)式により制限される。
【0017】
基材鋼板に高い導電率を付与するためには、C,Si,Mnの含有量をいずれも低減することが重要である。本発明ではCuめっき後の導電率を12%IACS以上に向上させることを狙いとしているが、そのためにはCuめっきを施す基材鋼板自体の導電率を7%IACS以上に改善しておくことが望ましい。しかし、上述のようにCは0.1質量%以上を確保しなければならない。種々検討の結果、後述の適正な金属組織においては、C,Si,Mnの含有量を(2)式に従って厳しく制限することによって、0.1質量%以上のC量を維持しながら7%IACS以上の導電率が実現できることが明らかになった。
17.53C+13.75Si+6.25Mn<24 ……(2)
【0018】
(2)式によると、C,Si,Mnの含有量範囲の上限は以下のように制限される。
・Cの上限; (2)式にSi=0%とMn=0%を代入することにより、C<1.37%に制限される。
・Siの上限; (2)式にCの下限値0.1%とMn=0%を代入すると、Si<1.62%に制限される。
・Mnの上限; (2)式にCの下限値0.1%とSi=0%を代入すると、Mn<3.56%に制限される。
したがって、C,Si,Mnの含有量上限については、個々に規定しなくても(2)式による制限で十分である。
【0019】
C,Si,Mnの残部はFeおよび不可避的不純物で占められる。鋼の代表的な不純物であるPは0.030質量%まで、Sも0.030質量%まで許容できる。
【0020】
次に、金属組織については、導電性確保の観点からマルテンサイトを含まない組織に限定される。マルテンサイトが存在すると、同じ化学組成でも導電率は大幅に低下するのである。この現象は、例えば次のような実験で確かめられた。
すなわち、発明者らは、(1)式および(2)式を満たす化学組成の鋼を種々溶製し、焼入れ処理を行ってマルテンサイトを含む金属組織とした鋼板と、焼きが入らない処理を行ってフェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの金属組織とした鋼板を作った。これらを用いて板厚0.25mmで、ばね限界値が概ね300MPaと一定になるようにサンプルを用意した。ばね限界値の調整は、マルテンサイトを含むもの(焼入れ材)では焼戻し温度のコントロールにより行い、マルテンサイトを含まないものでは冷延率と時効温度を適切に組み合わせることにより行った。各サンプルの導電率を測定したところ、同じ組成の鋼ではいずれの場合も、マルテンサイトを含むものは、含まないものより大幅に導電率が低下した。
【0021】
本発明で規定する化学組成の鋼においてマルテンサイトを含まない金属組織を得るには、例えば、熱延鋼板または冷延鋼板に焼鈍処理を施すときA1点を超えない温度に加熱するようにすればよい。A1点を超える温度に加熱する焼鈍を施す場合でも、A1点から600℃までの冷却速度を1℃/秒以下にすればマルテンサイトが生成することはない。C含有量,冷却速度などにより、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの組織が得られる。これらいずれの組織に調整した場合においても、基材鋼板の段階でばね限界値300MPa以上、かつ導電率7%IACS以上の特性を得ることが可能である。したがって、本発明では、金属組織をフェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかに調整することを要件とした。
【0022】
以上の化学組成および金属組織に調整した鋼板をベースに、冷間圧延および時効処理を施して、基材鋼板に優れたばね特性を付与する。「冷間圧延+時効処理」の組み合わせにより歪み時効の現象が発現し、これがばね限界値の大幅な向上をもたらすものと考えられる。すなわち、冷間圧延により多数の可動転位が導入され、続く時効処理でC原子が転位を固着する位置に入り込む(コットレル効果)。その結果、変形するのに大きな力が必要となり、ばね限界値は上昇する。
冷間圧延率を増加すること、および、ある温度範囲で時効温度を高めることは、いずれもばね限界値を向上させる方向に働く。
【0023】
Cuめっきを施す基材鋼板は、300MPa以上のばね限界値を有することが必要である。これは、後述の(3)式に従う厚さでCuめっき層を形成させた場合に、りん青銅と同レベルの250MPa以上のばね限界値が安定的に得られるようにするためである。すなわち、Cuめっき層の形成はばね限界値の低下を伴うので、基材鋼板には少なくとも300MPa以上の高いばね限界値が要求される。
【0024】
発明者らの検討の結果、冷間圧延率を15%以上にすると、時効温度を最適化することで300MPa以上のばね限界値を基材鋼板に付与することが可能であった。冷間圧延率の上限は特に制限する必要はないが、あまり高いと製造性が低下するので90%程度以下の範囲で行うのが実用的である。
【0025】
時効処理については、150℃以上に加熱しないと積極的に歪み時効を起こさせることが難しく、冷間圧延率を高めても基材鋼板のばね限界値を安定的に300MPa以上にコントロールすることができない。200℃以上にすると種々の冷間圧延率のものに適応できるようになり好ましい。300℃以上とすることにより、一層高いばね限界値が得られる。ただし、500℃を超えるとばね限界値の上昇傾向はほとんど飽和し、さらに600℃を超えると冷間圧延組織が再結晶するためにばね限界値の急激な低下が生じるようになる。このため、600℃以下の温度で時効処理を行う必要がある。時効時間は0.5〜50時間とすることができる。
特に、15〜90%の冷間圧延を行い、次いで300〜500℃で1〜30時間保持する時効処理を施すことが望ましい。
【0026】
次に、Cuめっき層について説明する。
基材鋼板表面へのCuめっき層の形成は導電率の向上を目的として行う。基本的にAl,Ag,Au等、Cu以外の高導電性金属めっきを採用することも可能であるが、本発明では製造コストと性能を考慮してCuめっきを採用する。ただし、前記基材鋼板表面に単にCuめっきを施せば本発明の目的が達成されるわけではない。すなわち、Cuめっき層の形成はばね特性を低下させる。これは、Cuめっき層がばね特性の低い純銅に近い組成で構成されていることに大きく影響されているものと考えられる。また、基材鋼板の導電率やばね限界値は化学組成や製造履歴によって個々に変化する。板厚も製品仕様によって様々である。したがって、一律にCuめっき層の厚さを規定するだけでは、最終的にりん青銅に匹敵するばね限界値250MPa以上,導電率12%IACS以上の特性を安定して得ることはできない。
【0027】
発明者らは詳細な研究を重ねた結果、使用する基材鋼板の導電率,ばね限界値および板厚をパラメータにして、ばね限界値250MPa以上,導電率12%IACS以上の特性を安定して得るために必要なCuめっき層厚さを(3)式を用いて特定することに成功した。
0.19−0.016×Aw≦tc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27 ……(3)
ただし、Aw :基材鋼板の導電率(%IACS)
tw :基材鋼板の板厚(mm)
Kbw:基材鋼板のばね限界値(MPa)
tc :基材鋼板両面のCuめっき層合計厚さ(mm)
ここで、Cuめっき層は高導電性(好ましくは導電率60%IACS以上)を有する被覆層であることが必要である。そのようなCuめっき層は公知の電気めっき法によって形成可能である。tcは鋼板片面当たりのCuめっき層厚さではなく、一方の面のCuめっき層厚さと他方の面のCuめっき層厚さを合計したものである。一方の面と他方の面でCuめっき層厚さが異なっていても構わない。
【0028】
(3)式のうち0.19−0.016×Aw≦tc/twの部分は、12%IACS以上の導電率を得るためには基材鋼板の導電率に応じてCuめっき層厚さと基材鋼板厚さの比率を一定以上に大きくする必要があることを表したものである。また(3)式のうちtc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27の部分は、250MPa以上のばね限界値を得るためには基材鋼板のばね限界値に応じてCuめっき層厚さと基材鋼板厚さの比率を一定未満の値にする必要があることを表したものである。
【0029】
以上のようにして得られる導電性に優れたばね用鋼板は、所定の寸法に切断し、所定の形状に加工して、各種電気接点ばね材料に好適に使用できる。特に板厚を0.1〜0.6mmに調整したものは、りん青銅を用いた従来の電気接点ばね材料の代替として多くの用途を有し汎用性が高い。
なお、電気接点ばね材料の用途によっては、特にその表面において低い接触抵抗などの特性を求められることがあるが、本発明の導電性に優れたばね用めっき鋼板はNiめっきやSnめっき等の表面処理を施してから用いても良い。
【0030】
【実施例】
〔実施例1〕
質量%で、C:0.05〜1.06%,Si:0.02〜1.67%,Mn:0.24〜0.88%の範囲でこれらの元素を含み残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼(不純物のP,Sはともに0.03%以下)を溶製し、板厚2〜3mmの熱延板を得た。これを用いて下記の3通りの工程にて板厚0.25mmの薄板サンプルを合計24種類作製した。
〔工程A〕焼鈍→「冷間圧延→焼鈍」→最終冷延(10〜90%)→時効処理(300〜500℃×1〜30時間)
〔工程B〕研削による薄肉化→最終冷延(15〜90%)→時効処理(300〜500℃×1〜30時間)
〔工程C〕焼鈍→「冷間圧延→焼鈍」→最終冷延(10〜90%)→焼入れ→焼戻し
ここで、工程AおよびCの「冷間圧延→焼鈍」は1回または必要に応じて2回以上行った。
【0031】
その後、これらの鋼板サンプルを基材にして、その表面に電気めっき法によりCuめっき層を形成した。めっき層厚さは一方の面と他方の面の合計厚さが20μmとなるようにした。この場合、前記(3)式中のtc/twの値は0.080となる。なお、Cuめっきは、前処理として酸洗・脱脂を行った後、浴組成:CuSO4;200g/L,H2SO4;50g/Lの電解浴を用いて浴温40℃,電流密度5A/dm2の条件下で行った。めっき後、ベンゾトリアゾールを用いてめっき層表面の変色防止処理を行った。
【0032】
各サンプルの化学組成,工程,金属組織,および後述の各種試験結果を表1にまとめてある。表1中の「K値」は前記(2)式の左辺「17.53C+13.75Si+6.25Mn」の値、「L値」は前記(3)式左辺「0.19−0.016×Aw」の値である。なお、工程A〜Cの最終冷延前には、いずれもフェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかを呈していた。また、工程AおよびBの時効処理は高いばね限界値が得られる好ましい条件で実施した。
【0033】
各サンプルについて、Cuめっき前および後のばね限界値と導電率を求めた。
ばね限界値は、JIS H 3130で規定されるばね限界値試験法により求め、その値が250MPa以上のものを○印、それ未満を×印で示した。導電率はJIS H 0505で規定される導電率測定法に基づいて求め、その値が12%IACS以上を○印、それ未満を×印で示した。
【0034】
【表1】
Figure 0004097535
【0035】
化学組成(C,Si,Mn含有量およびK値)が本発明の規定を満たし、金属組織がフェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかを呈し、「冷間圧延+時効処理」を上述の適正条件として作製したばね限界値が300MPa以上の基材鋼板の表面に、L値≦tc/twの条件((3)式)を満たした膜厚でCuめっき層を形成した本発明例は、いずれも250MPa以上の優れたばね限界値と、12%IACS以上の高い導電率を呈し、電気接点ばね材料に適したものであった。
【0036】
これに対し、比較例No.1はC含有量が低く(1)式を満たさないためばね特性が悪かった。No.2,6は時効処理前の冷間圧延率が低すぎたため基材鋼板のばね限界値が300MPaに未達であり、Cuめっき後に250MPa以上のばね限界値が得られなかった。No.13〜16はK値が高く(2)式を外れるため、またNo.23,24はマルテンサイト組織であるため、これらはいずれも基材鋼板の導電率が低くなり、その結果、L値≦tc/twの条件を満たさなかったため、Cuめっき後に12%IACS以上の導電率が得られなかった。なお、No.13〜16,23,24は、Cuめっき厚をさらに増大すれば導電率についても満足できる特性を付与することが可能であると考えられる。しかしその場合、表1に示した本発明例のものよりめっきコストが高騰し、不利となる。
【0037】
〔実施例2〕
表1に示したNo.3,7,9,10,12,17,19,20,22の基材鋼板(いずれも本発明で規定する化学組成,金属組織,ばね限界値を満たす)を用いて、その表面に実施例1と同様の方法でCuめっきを施し、両面のCuめっき層合計厚さが10〜80μmの範囲になるように調整した。各サンプルについてばね限界値と導電率を測定した。これらの測定法および評価基準は実施例1と同様とした。表2に結果を示す。表2中、「K値」は前記(2)式の左辺「17.53C+13.75Si+6.25Mn」の値、「U値」は(3)式の右辺「0.093×ln(Kbw)−0.27」の値を意味する。
【0038】
【表2】
Figure 0004097535
【0039】
表2より、Cuめっき層厚さが増すに伴い導電率が向上し、ばね限界値が低下する傾向がわかる。tc/tw<U値の条件((3)式)を満たした膜厚でCuめっき層を形成した本発明例のものは、250MPa以上のばね限界値を呈した。これに対し、tc/tw<U値の条件((3)式)を満たさなかった比較例のものはばね限界値が250MPaを下回った。
【0040】
〔実施例3〕
質量%で、C:0.57〜0.88%,Si:0.18〜0.22%,Mn:0.31〜0.65%の範囲でこれらの元素を含み残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼(不純物のP,Sはともに0.03%以下)を溶製し、板厚2〜3mmの熱延板を得た。これを用いて基材No.25〜27は下記工程A、基材No.28,29は下記工程Bにて板厚0.1〜0.6mmの薄板サンプルを作製した。
〔工程A〕焼鈍→「冷間圧延→焼鈍」→最終冷延(50〜80%)→時効処理(350〜650℃×5〜10時間)
〔工程B〕研削による薄肉化→最終冷延(20〜60%)→時効処理(250〜400℃×1〜30時間)
ここで、工程Aの「冷間圧延→焼鈍」は1回または必要に応じて2回以上行った。
その後、これらの鋼板を基材にして、その表面に実施例1と同様の方法でCuめっきを施し、両面のCuめっき層合計厚さが4〜90μmの範囲になるように調整した。各サンプルについてばね限界値と導電率を測定した。これらの測定法および評価基準は実施例1と同様とした。表3に結果を示す。表3中の「K値」「L値」「U値」は実施例1,2と同様のものである。
【0041】
【表3】
Figure 0004097535
【0042】
基材鋼板の化学組成,金属組織,ばね限界値が本発明の規定を満たし、かつめっき層厚さが前記(3)式で規定される「L値≦tc/tw<U値」を満たす本発明例のものは、いずれもりん青銅に匹敵する250MPa以上のばね限界値と12%IACS以上の導電率を呈し、電気接点ばね材料に適したものであった。
これに対し、比較例No.26-1は時効温度が高すぎたため基材鋼板のばね限界値が300MPaに到達せず、またCuめっき層厚さがL値≦tc/twを満たさなかったことから、ばね特性,導電性ともに不十分であった。No.25-1,27-1,28-1はばね特性は良好であるものの、L値≦tc/twを満たさなかったため導電性が劣化した。No.25-3,28-4はばね特性は良好であるものの、tc/tw<U値を満たさなかったため導電性が不十分であった。
【0043】
【発明の効果】
以上のように、本発明では銅合金に比べて安価な「鋼」という素材を基材として、従来から広く使用されているりん青銅に匹敵する「ばね特性」と「導電性」とを同時に付与することを可能にした。本発明のCuめっき鋼板は、高価なりん青銅の代替として使用することができる。また、基材は鋼板であるためりん青銅よりも強度が高く、部品の薄肉化が可能になる。したがって本発明は、電気・電子機器の小型化・低コスト化に寄与するものである。

Claims (5)

  1. C,Si,Mnの含有量が質量%で下記(1)式および(2)式を満たし残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの冷間加工された金属組織を呈し、ばね限界値が300MPa以上である基材鋼板の表面に、下記(3)式を満たす厚さのCuめっき層を形成したばね限界値が250MPa以上、導電率が12%IACS以上である導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板。
    C≧0.1 ……(1)
    17.53C+13.75Si+6.25Mn<24 ……(2)
    0.19−0.016×Aw≦tc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27 ……(3)
    ただし、Aw :基材鋼板の導電率(%IACS)
    tw :基材鋼板の板厚(mm)
    Kbw:基材鋼板のばね限界値(MPa)
    tc :基材鋼板両面のCuめっき層合計厚さ(mm)
  2. C,Si,Mnの含有量が質量%で下記(1)式および(2)式を満たし残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの金属組織に調整された鋼板に、冷延率15%以上の冷間圧延と、次いで600℃以下の時効処理を施して得られる組織状態を有し、ばね限界値が300MPa以上である基材鋼板の表面に、下記(3)式を満たす厚さのCuめっき層を形成したばね限界値が250MPa以上、導電率が12%IACS以上である導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板。
    C≧0.1 ……(1)
    17.53C+13.75Si+6.25Mn<24 ……(2)
    0.19−0.016×Aw≦tc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27 ……(3)
    ただし、Aw :基材鋼板の導電率(%IACS)
    tw :基材鋼板の板厚(mm)
    Kbw:基材鋼板のばね限界値(MPa)
    tc :基材鋼板両面のCuめっき層合計厚さ(mm)
  3. C,Si,Mnの含有量が質量%で下記(1)式および(2)式を満たし残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト+球状セメンタイト組織,フェライト+パーライト組織,パーライト組織のいずれかの金属組織に調整された鋼板に、冷延率15〜90%の冷間圧延と、次いで300〜500℃で1〜30時間保持する時効処理を施して得られる組織状態を有し、ばね限界値が300MPa以上である基材鋼板の表面に、下記(3)式を満たす厚さのCuめっき層を形成したばね限界値が250MPa以上、導電率が12%IACS以上である導電性に優れたばね用Cuめっき鋼板。
    C≧0.1 ……(1)
    17.53C+13.75Si+6.25Mn<24 ……(2)
    0.19−0.016×Aw≦tc/tw<0.093×ln(Kbw)−0.27 ……(3)
    ただし、Aw :基材鋼板の導電率(%IACS)
    tw :基材鋼板の板厚(mm)
    Kbw:基材鋼板のばね限界値(MPa)
    tc :基材鋼板両面のCuめっき層合計厚さ(mm)
  4. Cuめっきを施す基材鋼板の導電率が7%IACS以上である請求項1〜3に記載のばね用Cuめっき鋼板。
  5. 板厚が0.1〜0.6mmに調整された請求項1〜4に記載のCuめっき鋼板を用いた電気接点ばね材料。
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