JP4097009B2 - 電子写真用感光体試験装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザープリンターや複写機等の画像形成装置に使用される電子写真感光体の検査装置であって、特にフレキシブルなベルト状の感光体等の検査に適する装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、感光体の特性値の測定を行う際、Al等で形成された剛性の有る円筒状基体の場合であれば、測定の際に回転させても変形や破壊が生じる可能性は低く、円筒状基体のまま特性値を測定することが可能である(例えば特開平4−26852号公報に開示されている感光体ドラムの感光特性測定装置等々)。しかしながら、Ni等の薄膜のベルト状の感光体に関しては、非常に慎重な取り扱いが必要である。すなわち、通常の測定の際には回転させなければいけないが、回転させることによって感光体に変形や破壊等が生じ、感光体周辺の帯電装置、露光用光源、表面電位計、除電用光源等に接触し、感光体に傷や損傷を与えてしまうため、ベルト状のまま測定することは非常に困難であった。
【0003】
そのため、ベルト状の感光体の特性値測定を行う際は、ある大きさに切断し、その試料片で測定できる専用の測定装置を用意して特性値測定を行い、特性値と判断していた。しかしながら、この方法では、感光体を破壊しなければいけないため、実機での劣化度合い確認のための評価を途中で行うことができないことや、また切断しなければいけないため、測定に費やす時間も長くなり、効率が悪いという問題が生じていた。
【0004】
そこで、ベルト状の感光体に関しても、Alを媒体とする剛性の有る円筒状基体と同様に破壊せずに特性値を測定できる感光体用試験装置が要望されていた。そこで、本願出願人は、被試験体である電子写真用感光体の端部を支持部材により支持するとともに、周囲に配置される帯電装置、露光用光源、表面電位計、試料通過電流検出器、除電用光源と、被試験体の感光体を回転駆動させる回転制御装置とを備え、感光体の回転に応じて、帯電、露光、表面電位測定、試料通過電流測定、除電のプロセスにしたがって感光体の電気特性を検査する電子写真用感光体試験装置において、ベルト状の感光体の測定する際、感光体端部以外を保持する保持部材を備えてなる電子写真用感光体試験装置を提案した。
【0005】
これにより、Ni等の薄膜のベルト状基体を測定することが可能となったが、感光体内面を保持する部分に、受側保持部材や感光体内面保持部材の接合部が存在するため、受側の保持部材と感光体内面の保持部材の接合部に隙間や段差が無い場合は、測定する際特に問題は無いが、接合部の精度がよほど良くない限り、隙間や段差が発生してしまうのが現状であった。隙間や段差がある場合、感光体を内面保持部材に挿入してセットする際、ベルト状の感光体の端部が段差に当たり、感光体に変形や破壊が生じる可能性が有り、受側の保持部材と感光体内面の保持部材の接合部には必ず加工が必要であった。また、受側の保持部材と感光体内面の保持部材の接合部に良い精度を持たせなければいけないため、取り扱いに関しても慎重に取り扱わなければいけなかった。そこでこれらを解決するNi等の薄膜基体の感光体用試験装置が要望されていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る電子写真用感光体試験装置は、上記目的を達成するために、被試験体である感光体の周囲に配置する帯電手段、露光手段、表面電位計、試料通過電流検出器、除電手段、上記感光体を回転駆動する回転制御手段を備え、上記感光体の回転に応じて、帯電、露光、表面電位測定、試料通過電流測定、除電のプロセスにしたがって上記感光体の電気特性を検査する電子写真用感光体試験装置において、上記感光体を測定する際に該感光体内面を段差の無い一つの保持部材によって直接保持する手段を有し、上記保持部材の上記感光体端部を受ける部位に、上記感光体を挿入する側から挿入方向先側に向かって外径が大きくなっていくテーパー面を形成してなることを特徴とする。
【0007】
同請求項2に係るものは、上記目的を達成するために、請求項1の電子写真感光体試験装置において、上記感光体の上記保持部材へ挿入する反対側端部へ差込む差込側保持部材が、挿入側の逆方向に向かって外径が大きくなっていくテーパー面を形成してなることを特徴とする。
【0008】
同請求項3に係るものは、上記目的を達成するために、請求項1または2の電子写真用感光体試験装置において、上記保持部材は、上記感光体を挿入する側の端部の外径が奥側のテーパー面以外の部位の外径よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0009】
同請求項4に係るものは、上記目的を達成するために、請求項1ないし3のいずれかの電子写真用感光体試験装置において、上記保持部材の少なくとも上記感光体内面を保持する部位が中空であることを特徴とする。
【0010】
同請求項5に係るものは、上記目的を達成するために、請求項1ないし4のいずれかの電子写真用感光体試験装置において、上記感光体の基体の硬度h1と、上記保持部材の上記感光体と接触する部位のうち少なくとも上記感光体の内面と接触する部位の少なくとも表面の硬度h2の関係がh1<h2の関係であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下本発明の実施の形態及び実施例を図面を参照して説明するが、本発明は図示及び説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明に係る電子写真感光体試験装置の一実施形態の概略を示す概念図(A)、同感光体を装置にセットする際に用いる両端保持部材とその操作を示す概念図(B)である。図1の電子写真用の感光体1は、図中矢印の方向に回転し、電圧電源7から高圧電源が出力され、コロナ帯電器6によって帯電される。その後、感光体1中の通過電流は、信号処理回路5aに送られる。信号処理回路5aには図示せぬ平滑化回路が組み込んであり、この平滑化回路によって通過電流の平滑化を行う。その後、A/D変換器20によってデジタル信号に変換し、コントローラ21に送り、デジタル信号を演算処理する。
【0015】
また、電子写真感光体1の表面電位は、表面電位プローブ3からモニター部である表面電位計4に送ってモニターし、信号処理回路5bに送る。その後A/D変換器20によって変換し、次にコントローラ21に送り、演算処理する。
【0016】
また、感光体1の露光後電位は、露光装置2を使用することによって、測定し、感光体1の表面電位を取り除く場合は、除電用光源8を使用する。なお図1中の22はデジタル出力回路である。
【0017】
上述のように、図1(B)は本発明の第1実施形態に係る両端保持部材の構成を示す概略図である。感光体の内側に位置させるとともに感光体の両端を保持する両端保持部材は、感光体1の最初にセットする一端部(図2の左)を受ける受側保持部材10aと、感光体1の他端(図2の右)を保持する差込側保持部材10bと、これらを支持するシャフト11及び内面保持部材12からなる。
【0018】
両端保持部材を構成するには、差込側保持部材10bをシャフト11から取り外しておき、内面保持部材12をシャフト11上に被せるように挿入し、挿入方向先端側を受側保持部材10aに突き当て、次いで他端側で差込側保持部材10bをシャフト11に取り付け、内面保持部材12の他端に差込側保持部材10bを嵌入させ、これによって内面保持部材12を固定する。感光体1をこの両端保持部材10にセットするには、まず差込側保持部材10bをシャフト11から取り外しておき、感光体1を一端側から内面保持部材12上に被せるように挿入し、挿入方向先端側を受側保持部材10aに突き当て、感光体1の他端側で差込側保持部材10bをシャフト11に取り付け、内面保持部材12の他端に差込側保持部材10bを嵌入させ、これによって感光体1を固定する。その後、モータ9によって感光体1を回転させる。
【0019】
本発明の電子写真用感光体試験装置に係る第1実施形態は、上述のように感光体1の内面全面に段差の無い一つの内面保持部材12を通し、受側保持部材10aと差込側保持部材10bで感光体1の両端を保持している。
【0020】
<実施例1>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。測定の際に感光体を内面から保持する内面保持部材(全長:367mm、直径92.20mm)の材質はAlであり、表面に無電解ニッケル処理をしたものを用いた。なお材質がAlであり、表面に何も処理をしていない内面保持部材(全長:367mm、直径92.20mm)を利用した場合を比較例1とした。本発明の実施例1と比較例1それぞれについて、感光体を100本測定した後、感光体と内面保持部材、装置の状況について確認した結果を表1に示す。
【表1】
【0021】
上記表1から分かるように、比較例1では、内面保持部材に、その硬度が感光体の基体の硬度よりも低い材質(Al)を使用しているため、感光体を挿入する際に感光体と内面保持部材がこすれ、内面保持部材が削れてしまい、それによって装置内にAl片が落ち、内面保持部材の長期使用によって感光体の保持にガタツキ等が生じ、感光体への破損の可能性が生じてしまう。一方、本発明の実施例1のように表面に感光体基体よりも硬度の高い材質(無電解Ni)の内面保持部材を使用すれば、内面保持部材に損傷が生じることが無い状態で装着、測定することが可能になり、内面保持部材の寿命も延びる。また、表面だけでなく内面保持部材自体の材質を感光体の基体の硬度よりも高くすることによっても同様の効果は得られる。さらに、内面保持部材には段差がないため、内面保持部材が感光体内へ挿入される際に、内面保持部材の表面での引っ掛かりは100本中1本も発生せず、感光体を破損させることなく測定することができた。
【0022】
<実施例2>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、感光体内面全面を保持し(全長367mm、直径92.20mm)、材質はAlで内側が空洞(厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、装置から取り外すことが可能な構造のものとした。一方、内側が空洞でない内面保持部材(全長367mm、直径92.33mm、Al製、表面に無電解ニッケル処理)で、装置から取り外すことができないものを使用した場合を比較例2とした。それぞれの重量を表2に示す。
【表2】
【0023】
表2から分かるように、内面保持部材の内側を空洞化にすることにより軽量化が可能となり、少ない力で内面保持部材を回転させることができ、大きなモータ力を必要としなくなる。また、内面保持部材を装置から取り外すことが可能な構造であるため、感光体内径の違うものに関しても、内面保持部材のみを交換することによって測定でき、また軽量化されていることにより内面保持部材の交換が容易になる。
【0024】
<実施例3>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、材質はAlで内側が空洞(全長367mm・直径92.20mm・厚さ10mm)のものとし、表面は無電解ニッケル処理を施し、感光体を受ける受側保持部材と一体化している構成とした。一方、受側保持部材と内面保持部材が別になっているもの(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm、Al製、表面に無電解ニッケル処理)を利用した時を比較例3とした。装置を、内径が60mmの感光体用にセッティングされていた状態から、(株)リコー製のIPSIO COLOR5000用感光体に変更して測定までに費やした準備時間を表3に示す。
【表3】
【0025】
表3から分かるように、受側保持部材と内面保持部材が一体化している方が、測定までに費やす準備時間が短くなる。また、一体化していることにより、取り付けミス、設定ミスの発生を防ぐことができた。
【0026】
<実施例4>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、材質がAlで内側が空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、取り外すことが可能な構成で、Al等で形成された剛性のある感光体基体で使用している内面保持部材に、被せるようにして内面保持部材を取り付けることが可能なものとした。すなわち、図2において12aは剛性のある感光体基体(内径60mm)で使用している内面保持部材、12が本実施形態の内面保持部材である。一方、内面保持部材が受側保持部材と一体化されて容易に取り外すことができないもの(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm、Al製、表面に無電解ニッケル処理)で測定したときを比較例4とした。装置を、内径が60mmの感光体用にセッティングされていた状態から、(株)リコー製のIPSIO COLOR5000用感光体に変更して測定するまでに費やした準備時間を比較した結果を表4に示す。
【表4】
【0027】
表4から分かるように、実施例4ではAl等で形成された剛性のある感光体基体で使用する内面保持部材12aにベルト用の内面保持部材12を被せるだけであるため、用意する保持部材は感光体内面を保持する保持部材だけで良い。また、内面保持部材を容易に取り外すことが可能であるため、測定準備時間が短く済み、測定が容易にできる。比較例4では、感光体の受側保持部材、内面保持部材、差込側保持部材の全ての交換が必要となるため、コストも掛かり、また測定準備時間に関しても実施例4と比較すると時間が掛かる。
【0028】
<実施例5>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、図3に示すように、装置から取り外し可能で、材質はAl、内側は空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、奥側(感光体の装着方向先側)にテーパー面12bを形成してあるものを使用した。一方、内面保持部材の奥側には何らの加工もしていないもの(長さ367mm、直径92.20mm、厚さ10mm、Al製、表面に無電解ニッケル処理)を使用して測定した場合を比較例5とした。感光体100本を測定したときの、感光体の破損状況を表5に示す。なお以下の説明において、破損とは、変形や傷等、画像を出力した場合に画像欠陥として表れてしまうものをいう。
【表5】
【0029】
表5から分かるように、内面保持部材の奥側にテーパー面を形成することによって、感光体と内面保持部材を密着させることができ、感光体の破損を防いで測定することが可能となる。
【0030】
<実施例6>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、図4に示すように、装置から取り外し可能で、感光体内面全面を保持し、材質はAl、内側が空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、奥側にテーパー面を形成してあり、感光体を挿入する側の端部12cの外径が奥側のテーパー面以外の部位の外径よりも小さくなっている(直径80mm)ものを使用した。一方、奥側にテーパー面を形成しただけの保持部材(長さ367mm、直径92.20mm、厚さ10mm、Al製、表面に無電解ニッケル処理)を使用して測定した場合を比較例6とした。感光体300本を測定したときの、感光体の破損状況を表6に示す。
【表6】
【0031】
表6から分かるように、内面保持部材の感光体挿入側の外径が、内面保持部材の奥側に形成されているテーパー面以外の外形よりも小さくなっていることによって、感光体を内面保持部材に挿入しやすくなり、感光体の破損を防いで測定することが可能となった。
【0032】
<実施例7>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、装置から取り外し可能で、感光体内面全面を保持し、材質はAl、内側が空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、さらに差込側保持部材にAl材で表面に無電解ニッケル処理をしたものを用いた。一方、差込側保持部材の表面に何らの処理もせずにAl材のままとした場合を比較例7(内面保持部材は同一物を使用)とした。それぞれ感光体100本を測定した後、差込側保持部材及び装置の状況について確認した結果を表7に示す。
【表7】
【0033】
表7から分かるように、差込側保持部材の材質が感光体基体の硬度よりも低い材質を使用すると、差込側保持部材を感光体に挿入する際、感光体と差込側保持部材がこすれるため、差込側保持部材が削れてしまう。それによって、装置に差込側保持部材のAl片が落ちる。また、差込側保持部材の長期使用によって感光体保持にガタツキなどが生じ、感光体への破損の可能性が生じてしまう。しかし、差込側保持部材の表面に感光体基体よりも硬度の高い材質のものを使用すれば、差込側保持部材に損傷無く測定することが可能になり、差込側保持部材の寿命も延びる。また、表面だけでなく差込側保持部材全ての材質を感光体基体の硬度よりも高くすることによっても同様の効果が得られる。
【0034】
<実施例8>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、装置から取り外し可能で、感光体内面全面を保持し、材質はAl、内側が空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理を施し、奥側にテーパー面を形成したものを使用し、さらに図5に示すように、差込側保持部材10bの表面に無電解ニッケル処理を施し、テーパー面10cを形成しているものを利用した。一方、奥側にテーパー面を形成していない内面保持部材を用い、差込側保持部材の端部のみにテーパー面を形成したものを使用した場合を比較例8aとし、差込側保持部材の端部、内面保持部材の奥側の両方ともテーパー面になっていないものを使用した場合を比較例8bとした。両比較例とも、上記以外の条件は実施例8と同様とする。それぞれ感光体300本を測定した時の感光体の破損状況を表8に示す。
【表8】
【0035】
表8から分かるように、差込側保持部材の端部をテーパー面に形成することにより、感光体と差込側保持部材が密着するため、測定中に感光体の破損を防ぐことができた。さらに、内面保持部材の奥側をテーパー面にし、両端をテーパー面にすることにすれば、より感光体と保持部材が密着するため、測定中に感光体の破損をより防ぐことができる。
【0036】
<実施例9>
図1のような装置構成になっている株式会社リコー製の試験装置を用いて、感光体の特性値を測定した。試験対象とする感光体には、株式会社リコー製のプリンタ(型式:IPSIO COLOR5000)用の感光体(周長:290.3mm≒92.39mm×π、幅:367mm、肉厚:30μm、基体:Niシームレスベルト)を用いた。内面保持部材は、装置から取り外し可能で、感光体内面全面を保持し、材質はAl、内側が空洞(全長367mm、直径92.20mm、厚さ10mm)、表面に無電解ニッケル処理をし、奥側にテーパー面を形成したものを使用し、さらに差込側保持部材の表面に無電解ニッケル処理を施し、テーパー面を形成しているものを使用した。そして、このような保持部材の外径の水準を振り、それぞれ感光体100本を測定した時の、感光体基体の破損状況を表9に示す。
【表9】
【0037】
表9から分かるように、感光体基体の内径d1(mm)と保持部材の外径の関係d2(mm)が、d1>d2≧d1−1であることにより、測定中に感光体周辺に配置されている帯電装置、露光用光源、表面電位計、除電光源等に接触したり、変形によって感光体基体に損傷を与えることを防ぐことができた。
【0038】
【発明の効果】
請求項1に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、Ni等の薄膜のシームレスベルト状の感光体を測定する際に、感光体内面全面を段差や継ぎ目の無い一つの保持部材によって保持して測定する構成としたため、シームレスベルト状の感光体が測定中に変形するのを防ぐことができ、また一つの保持部材で保持するため、感光体の内面を保持する内面保持部材に段差、隙間が無く、感光体を保持部材に挿入する際に、引っ掛かりによる感光体の変形を防ぐことができるという効果が得られる。
【0039】
請求項2に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、Al等で形成された剛性のある感光体基体で使用する感光体内面を保持する第1の保持部材に、ベルト状感光体で感光体内面保持に使用する第2の保持部材を被せるように取り付ける構成としたので、上記共通の効果に加え、測定準備時間を短縮でき、容易にシームレスベルト状の感光体の測定ができるという効果を得られる。
【0040】
請求項3に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、保持部材の感光体を挿入する部位に、感光体を挿入する側から挿入方向先側に向かって外径が大きくなっていくテーパー面を形成しているため、上記共通の効果に加え、感光体と感光体の内面を保持する保持部材を密着させて感光体の変形や破壊を防ぐことができるという効果を得られる。
【0041】
請求項4に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、感光体の保持部材へ挿入する反対側端部へ差込む保持部材が、挿入側の逆方向に向かって外径が大きくなっていくテーバー面を形成しているため、上記共通の効果に加え、感光体端部の密着を向上させ、感光体の変形や破壊を防ぐ事が出来るという効果が得られる。
【0042】
請求項5に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、保持部材が、感光体の内面側に位置させる軸状部と、感光体の端部を受ける一対の受け部からなるので、上記共通の効果に加え、軸状部を受け部から容易に着脱可能に構成でき、感光体内面を保持する軸状部を交換するだけで内径の違う感光体に対応することが可能となり、装置を構成するためのコストの低減と測定までに費やす準備時間の短縮が実現できるという効果がある。
【0043】
請求項6に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、保持部材の感光体内面を保持する部位が中空であるものとしたので、上記共通の効果に加え、保持部材の軽量化が達成でき、交換作業も容易になるという効果が得られる。
【0044】
請求項7に係る電子写真用感光体試験装置は、以上説明してきたように、感光体の基体の硬度h1と、保持部材の感光体と接触する部位のうち少なくとも感光体の内面と接触する部位の少なくとも表面の硬度h2の関係がh1<h2の関係であるようにしたので、感光体との接触によって保持部材が削られるのを防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真感光体試験装置の一実施形態の概略を示す概念図(A)、同感光体を装置にセットする際に用いる両端保持部材とその操作を示す概念図(B)である。
【図2】本発明に係る電子写真感光体試験装置の実施例4の概略を示す概念図である。
【図3】本発明に係る電子写真感光体試験装置の実施例5の概略を示す概念図である。
【図4】本発明に係る電子写真感光体試験装置の実施例6の概略を示す概念図である。
【図5】本発明に係る電子写真感光体試験装置の実施例8の概略を示す概念図である。
【符号の説明】
1 電子写真用の感光体
2 露光装置
3 表面電位プローブ
4 表面電位計
5a、5b 信号処理回路
6 コロナ帯電器
7 電圧電源
8 除電用光源
9 モータ
10a 受側保持部材
10b 差込側保持部材
10c テーパー面
11 シャフト
12、12a 内面保持部材
12b テーパー面
Claims (5)
- 被試験体である感光体の周囲に配置する帯電手段、露光手段、表面電位計、試料通過電流検出器、除電手段、上記感光体を回転駆動する回転制御手段を備え、上記感光体の回転に応じて、帯電、露光、表面電位測定、試料通過電流測定、除電のプロセスにしたがって上記感光体の電気特性を検査する電子写真用感光体試験装置において、上記感光体を測定する際に該感光体内面を段差の無い一つの保持部材によって直接保持する手段を有し、上記保持部材の上記感光体端部を受ける部位に、上記感光体を挿入する側から挿入方向先側に向かって外径が大きくなっていくテーパー面を形成してなることを特徴とする電子写真用感光体試験装置。
- 請求項1の電子写真感光体試験装置において、上記感光体の上記保持部材へ挿入する反対側端部へ差込む差込側保持部材が、挿入側の逆方向に向かって外径が大きくなっていくテーパー面を形成してなることを特徴とする電子写真用感光体試験装置。
- 請求項1または2の電子写真用感光体試験装置において、上記保持部材は、上記感光体を挿入する側の端部の外径が奥側のテーパー面以外の部位の外径よりも小さくなっていることを特徴とする電子写真用感光体試験装置。
- 請求項1ないし3のいずれかの電子写真用感光体試験装置において、上記保持部材の少なくとも上記感光体内面を保持する部位が中空であることを特徴とする電子写真感光体用試験装置。
- 請求項1ないし4のいずれかの電子写真用感光体試験装置において、上記感光体の基体の硬度h1と、上記保持部材の上記感光体と接触する部位のうち少なくとも上記感光体の内面と接触する部位の少なくとも表面の硬度h2の関係がh1<h2の関係であることを特徴とする電子写真用感光体試験装置。
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