JP4096587B2 - 低温貯蔵施設 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、穀物などの貯蔵物を大量に備蓄するのに好適な低温貯蔵施設に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば政府備蓄米は、15度Cに保たれた低温備蓄倉庫が用いられている。この温度保持方法としては、電気冷蔵庫が一般的であるが、電気代などの維持費用が高いものとなる。これに代えて、最近では寒冷地における雪を冷熱源として利用した貯蔵倉庫が提案されているが、この場合には年間を通じての冷熱源の蓄熱に有機断熱材などが使用されるなど、その蓄熱手段や温度管理などの点において問題があり、特に小規模施設では、熱容量不足となり、寒冷地であったとしても、夏季の温度によっては冷熱源が消費し尽されるおそれがある。
【0003】
なお、例えば北海道農業試験場は、以下の表に示すように、12ヶ月貯蔵した米の特性を各温度域毎に比較し、その結果を発表した。
【0004】
この表に示す結果からは米の貯蔵温度を0〜5度Cで保存することにより、食味を含む各種特性を低下することなく備蓄することが可能となる。ところで、実際には、実用的、経済的理由から温度10〜15度C、湿度70〜80%とし、高温の夏季を中心とするおよそ6ヶ月間をこの条件下におくことが規定されている。
【0005】
ところで、近年では緊急時、あるいは農業生産量などの変動に対応すべく、国際備蓄の重要性が問われ、米、麦などの大規模長期備蓄構想が浮上している。この構想によれば、穀物を五年程度備蓄することが求められており、また緊急時を前提の一つとしているため、管理のための電力などは全て自家発電システムを用いることが必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記表からは、現状の保存方法では、五年間保存には不適合である。その反面、五年もの間穀物の食味や、酸化を防止し、植物活性を維持しつつ大量の穀物を0〜5度Cに保ちながら備蓄するためには、寒冷地であっても莫大な量の冷熱源を必要とするため、電気冷凍システムに頼らざるを得ず、電力費用などの維持コストが莫大なものとなる。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するものであって、その目的は、冬季における寒冷地の冷熱を蓄熱し、夏季にこれを放熱することで、電力コストを大幅に削減しつつ、穀物を新鮮な状態に保存できるようにした大規模備蓄に好適な低温貯蔵施設を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、アーチ状の金属構造体からなる外殻体と、該外殻体が配置される床版の下面に設置された製氷水槽と、前記外殻体の内側においてその長手方向に沿って同心状に配置された密封式の貯蔵用タンクと、前記外殻体を覆う覆土と、該覆土内に埋設配管されて外気を導入する覆土凍結用の多数の送風管とを備えたことを特徴とするものである。従って、本発明にあっては、冬季の冷気によって作られた氷、あるいは凍土化された覆土によって夏季においてはこれらの潜熱によりタンク内を低温に保つことができる。特に断熱層として覆土を用いることで、有機断熱材が不要となり、環境的にも好適である。
【0009】
また、前記外殻体がコルゲートチューブの半分割体であることにより、安価に構築でき、かつ、その上部に覆土される土圧に十分抗することができるほか、熱伝達効率も高いものとなる。
【0010】
また、本発明の貯蔵用タンクは、前記貯蔵用タンクは、アーチ型断面の屋根部と、略矩形状断面の中央隔壁と、該中央隔壁の底辺と屋根部の底辺とを結び、かつ中央隔壁に向けて湾曲状断面に傾斜した左右の底板とを備え、前記中央隔壁の内側を運搬車通路としたことにより、貯蔵物運搬車を通路内に乗入れてその搬出入作業を行うことができる。
【0011】
さらに、本発明の前記貯蔵用タンクにおける中央隔壁の天井部を貯蔵物の取入口とし、中央隔壁の側壁下部を取出し口とし、貯蔵物の充填後、内部に不活性ガスを満たした状態で封止するものであることにより、搬出入作業の合理化を図ることができるとともに、貯蔵状態では不活性ガスにより、貯蔵物の酸化防止と、活性低下防止を図ることができる。
【0012】
また、前記貯蔵用タンクは、前記貯蔵用タンクは、前記外殻体の内部に長手方向に所定間隔をあけて複数配列されたものであり、タンクの長手方向に隣接するタンクとタンクとの間において、前記外殻体とタンクとの間に形成された空間部に、外気導入用の複数の軸流ファンを配置することにより、寒冷期における冷気導入を図ることができ、内部の保冷状態を確保する上で好適である。
【0013】
本発明では、前記送風管に対する外気導入用のファンモータ、軸流ファンの駆動電力及び、温度管理用の制御動力として、自家電力発電設備を近隣に配備したことにより、ランニングコストを低減できるほか、非常時などに十分に対応できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1,2は本発明に係る大規模低温貯蔵施設の全体を示すものである。この実施の形態に係る貯蔵施設は、寒冷地に構築されるもので、例えば、間口幅約800m、奥行約200mの敷地面積を専有する備蓄貯蔵庫1と、これに輸送用幹線道路2を隔てた敷地内に構築され、貯蔵庫1に駆動用電力を供給するとともに、通風制御などを行う自家電力発電設備3とからなっている。
【0015】
備蓄貯蔵庫1は、一方の面が幹線道路2に面して配置され、多数の搬出入口横列した一対の外壁4と、外壁4間に多数横列した金属製コルゲートチューブの半分割体からなる外殻体5と、各外殻体5の内部に沿って同心状に設けられ、所定間隔離して直線配備された3つの備蓄タンク6と、外殻体5の上部に覆土された覆土7と、覆土7の上部にさらに積層された除排雪8とからなっており、例えば、外殻体5の1本あたりで5000トン、全体で250000トン程度の種籾を備蓄できるようになっている。
【0016】
なお、外殻体5としてコルゲートチューブを用いたのは、その材料自体が安価に供給でき、土圧、積雪圧力に十分対抗できるアーチ状であることに加え、冷熱の伝熱面積を増すことができるからである。
【0017】
また、覆土7及び除排雪8それ自体が断熱材として機能し、十分な容量であるため、夏季における融解潜熱を利用して外殻体5及びその内部を冷却保存できる。特に、除排雪8は、冬季に敷地内に降り積った雪のほか、近隣地域などで雪かきなどにより発生した排雪を運び込んで、ここに集積し敷き均すだけでよいため、これらの有効利用を図ることができる。
【0018】
自家電力発電設備3は、複数の風力発電機9を配置した風力発電設備ゾーン10と、引込道路11を介してゾーン10に隣接して構築された各種発電施設及び管理棟12の設置ゾーン14とからなっている。
【0019】
各種発電施設としては、熱落差を利用した温度差発電施設15、バイオマス発電施設16、燃料電池施設17、太陽熱を利用したソーラ発電施設18などがあり、管理棟12では前記風力発電機9及び各種発電施設で発電した電力を集計または切替え管理などを行うことにより、各施設の弱点を補い、得られる電力の安定化を図り、通年で一定した電力を得るとともに、この電力を利用して貯蔵庫1内の冷気通風及び、温度制御を行う。
【0020】
図3は、前記貯蔵庫1の正及び側断面図、図4は要部を拡大して示す正断面図である。図において、各外殻体5はコンクリート基礎19上に立設された土台20に両側部を設置されている。また土台20上に床版21を設置し、根太22によって床版21を支持している。
【0021】
各外殻体5の前後に配置される外壁4の頂部近傍まで前記覆土7で覆われており、覆土7の表面と外壁4間には排水溝23が形成され、覆土7の上部で融雪した除排雪8をこの排水溝23を通じて排水するようになっている。
【0022】
前記各外壁4の複数の開口部(図1参照)及びこれを開閉する断熱扉は、各外殻体5毎に設けられている。
【0023】
前記各外殻体5の床下に形成される凹部は製氷水槽24であり、夏季においてこの水槽24に蓄えられた氷25の融解潜熱によって内部を冷却している。また、外殻体5の上部を覆う凍土7内には多数の送風管26が埋設され、冬季においては図示しないファンにより各送風管26内に外気を通風することによって、覆土7を凍土化するとともに、氷25を再結氷させるサイクルが繰返される。
【0024】
外殻体5の内部に配置されるつの籾貯蔵タンク6はステンレス板を曲成した密封貯蔵式であって、アーチ型の屋根部6aと、略矩形状断面に形成された中央隔壁6bと、中央隔壁6bの底辺と屋根部6aの底辺とを結ぶ左右の底板6c及び前後鏡板とからなる密封構造であり、これらで囲われた内部に籾27を備蓄し、また中央隔壁6bの内側を運搬車通路28としている。
【0025】
そして、左右の底板6cは中央隔壁6bに向けて湾曲状に傾斜し、内部に投入された籾27がその自重により中央隔壁6b側に向けて集積されるようになっている。
【0026】
さらに、タンク6の内側の左右には湾曲状の投入ガイド6dが設けられており、これは冷却フィンの役割をになう。さらに、図示しないが密封開閉式の取入口を中央隔壁6bの天井部に設け、同じく密封開閉式の取出し口を中央隔壁6bの側壁下部に設けている。
【0027】
運搬車通路28は、籾搬出入用の運搬車29が走行可能な通路であり、搬入する場合には、外壁4の開口部をあけて幹線道路2より右または左折した運搬車29が外壁にあけられた開口部を通過し、通路28内を走行可能となっている。
【0028】
そして、投入口位置で停車させ、荷台と取入口を吸引装置30で接続し、装置30の駆動により、籾は吸引されてタンク6内で左右に分れてバラ積みされ、中央隔壁26bの側壁の下部内側より順次集積される。
【0029】
タンク6内が籾27で満杯になった後は、窒素ガスなどの不活性ガスを内部に供給し投入口を密封すれば、備蓄状態となる。また、搬出する場合には側壁下部の取出し口をあければ籾27の取出しが可能となる。
【0030】
前後の外壁3とタンク6の間、及びタンク6同士の間において、外殻体5の内側であって、タンク6の外側との間に形成された空間部には複数の軸流ファン31が配置されている。この軸流ファン31は一部拡大して示すように、筒型のダクト31aの内部にモータ31b及びこれにより回転駆動されるプロペラ31cとからなっており、この軸流ファン31のうち前後の外壁21位置に位置する軸流ファン31は外壁3を貫通して外部に連通している。
【0031】
これら各軸流ファン31は寒冷期などに一斉に駆動することで、外気を一方の外壁21側から他方の外壁側に向けて加速しながら強制通風し、冷媒などに頼ることなく内部を効率的に冷却する。
【0032】
以上のごとく、発電設備3の電力は、寒冷期などにおける通風用のモータの回転駆動と、温度によるこれらの駆動制御に専ら使用されるため、冷凍施設などを用いる場合に比べてその電力は95%程度削減でき、維持費をきわめて低コストにできる。
【0033】
以上の温度制御方法としては、籾を五年間程度貯蔵する条件に合致すればよく、貯蔵温度は5度C以下、湿度70%以下に制御すればよい。
【0034】
また酸化防止のためには、前述のごとく籾27をタンク6内に充填後窒素ガスなどの不活性ガスを封入した上でタンク6を密封すればよい。
【0035】
なお、軸流ファン31及び通風管26の送風用ファンモータは厳冬期しか使用されないため、これらの使用停止による余剰電力を電力会社に売電したり、他の付帯施設などに用いる駆動電力として有効利用できる。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明による低温貯蔵施設によれば、冬季における寒冷地の冷熱を蓄熱し、夏季にこれを放熱することで、電力コストを大幅に削減しつつ、穀物を新鮮な状態に保存できるため、大規模備蓄施設として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る低温貯蔵施設の全体構成を示す俯瞰図である。
【図2】同平面図である。
【図3】同施設における低温貯蔵庫の正断面図及び側断面図である。
【図4】部分を拡大して示す正断面図である。
【符号の説明】
1 低温貯蔵庫
3 自家電力発電設備
4 外壁
5 外殻体(コルゲートパイプ)
6 密閉式貯蔵タンク
6a 屋根部
6b 中央隔壁
6c 底板
7 覆土
8 除排雪
21 床板
24 製氷水槽
25 氷
26 覆土凍結用送風管
27 籾(穀類)
28 運搬車通路
29 運搬車
31 軸流ファン
Claims (6)
- アーチ状の金属構造体からなる外殻体と、該外殻体が配置される床版の下面に設置された製氷水槽と、前記外殻体の内側においてその長手方向に沿って同心状に配置された密封式の貯蔵用タンクと、前記外殻体を覆う覆土と、該覆土内に埋設配管されて外気を導入する覆土凍結用の多数の送風管とを備えたことを特徴とする低温貯蔵施設。
- 前記外殻体がコルゲートチューブの半分割体であることを特徴とする請求項1に記載の低温貯蔵施設。
- 前記貯蔵用タンクは、アーチ型断面の屋根部と、略矩形状断面の中央隔壁と、該中央隔壁の底辺と屋根部の底辺とを結び、かつ中央隔壁に向けて湾曲状断面に傾斜した左右の底板とを備え、前記中央隔壁の内側を運搬車通路としたことを特徴とする請求項1または2に記載の低温貯蔵施設。
- 前記貯蔵用タンクにおける中央隔壁の天井部を貯蔵物の取入口とし、中央隔壁の側壁下部を取出し口とし、貯蔵物の充填後、内部に不活性ガスを満たした状態で封止するものであることを特徴とする請求項3に記載の低温貯蔵施設。
- 前記貯蔵用タンクは、前記外殻体の内部に長手方向に所定間隔をあけて複数配列されたものであり、タンクの長手方向に隣接するタンクとタンクとの間において、前記外殻体とタンクとの間に形成された空間部に、外気導入用の複数の軸流ファンを配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低温貯蔵施設。
- 前記送風管に対する外気導入用のファンモータ、軸流ファンの駆動電力及び、温度管理用の制御動力として、自家電力発電設備を近隣に配備したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低温貯蔵施設。
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