JP4096141B2 - エポキシ樹脂組成物の製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各成分が均一に分散されたエポキシ樹脂組成物の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子は、一般にエポキシ樹脂組成物を用いて封止され半導体装置化されている。この種のエポキシ樹脂組成物には、通常、エポキシ樹脂とともに、各種硬化剤、無機質充填剤、さらに、硬化促進剤が含有される。
【0003】
しかしながら、上記エポキシ樹脂組成物は、予め、硬化促進剤を配合しておくと、硬化反応が進行するために、通常は、使用する直前に硬化促進剤を混合して用いられる。このようなエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤を別に保存しておき必要に応じて配合し混合するが、混合後の可使時間が比較的短いため多量に混合することができず、従って、多量に使用する場合は、少量ずつ複数回に分けて配合しなければならず、作業能率が極めて悪いものである。
【0004】
一方、このような問題を解決するものとして、例えば、エポキシ樹脂をシェル部(壁膜)形成材料として用いたマイクロカプセル内に硬化促進剤を封入した、硬化促進剤含有マイクロカプセルを含有するエポキシ樹脂組成物が提案されている(特開平1−242616号公報)。さらに、上記マイクロカプセルのシェル部(壁膜)形成材料として、上記エポキシ樹脂以外に、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルトルエン、アクリルゴム等の各種重合体や、塩化ビニリデンやアクリロニトリル、メタクリル酸等のエチレン系単量体を主成分の単量体として得られる重合体を用いた硬化促進剤含有マイクロカプセルを含有するエポキシ樹脂組成物が種々提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような各種の硬化促進剤含有マイクロカプセルを他の成分とともに配合し混練してエポキシ樹脂組成物を製造する場合、その混練温度は、通常、100℃前後(樹脂温度)に設定されるため、系全体の粘度が高く充分な混練ができなかった。そのため、得られたエポキシ樹脂組成物は各成分の分散性に劣るという問題がある。特に、無機質充填剤の割合がエポキシ樹脂組成物全体の80重量%を超える高充填系のものにあっては、得られたエポキシ樹脂組成物は無機質充填剤の分散性が特に悪くなる。したがって、このようなエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止すると、ボイドが発生し、耐半田性が劣るという問題が生じる。
【0006】
そこで、混練温度を100℃よりも高くして系全体の粘度を下げ、混練を充分に行うことが考えられるが、混練温度を上げすぎると、上記硬化促進剤含有マイクロカプセルのシェル部(壁膜)が軟化もしくは溶解してしまい、内包された硬化促進剤が放出される。その結果、得られたエポキシ樹脂組成物に硬化促進剤が放出され、反応が進行してしまい、貯蔵時の保存安定性に劣るという問題が生じる。一方、混練温度を100℃よりも低くした場合は、上記シェル部(壁膜)の溶解の問題は解消できるが、系全体の粘度が高くなり、より一層充分な混練ができなくなるため、得られたエポキシ樹脂組成物における各成分の分散性に一層劣るという問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、各成分が均一に混合分散され、保存安定性に優れたエポキシ樹脂組成物の製法の提供をその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の製法、下記の構造式(1)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(1)〕と下記の構造式(2)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(2)〕モル比〔化合物(1)/化合物(2)〕80/20〜30/70の割合で混合し、これを硬化促進剤の油性溶液に溶解し、この溶解物を水相中に分散させてエマルジョンをつくり、このエマルジョンの水相に、多価アミンを添加し、油相中の上記混合物との間で界面重合させ、コア部が上記硬化促進剤からなり、シェル部が上記混合物と多価アミンとの反応によって形成されたポリウレアからなる、コア/シェル構造を有する硬化促進剤含有マイクロカプセル(C)をつくり、つぎに、このマイクロカプセル(C)と、少なくとも、エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B)とを加熱状態で混練し冷却工程を経由させエポキシ樹脂組成物を得るという構成をとる
【0009】
【化3】
Figure 0004096141
【化4】
Figure 0004096141
【0010】
本発明者らは、先に述べた従来の熱硬化性樹脂組成物が有する問題を解決するため、まず、硬化促進剤含有マイクロカプセルのシェル部(壁膜)形成材料を中心に研究を重ねた。そして、130℃前後の高温で溶融混合を行う場合でも、溶解することがなく、かつ、トランスファー成形の際(175℃)には、容易に溶解するシェル部(壁膜)形成材料を得るべく研究を続けた。その結果、上記構造式(1)で表されるイソシアネート化合物(以下「化合物(1)」という)と上記構造式(2)で表されるイソシアネート化合物(以下「化合物(2)」という)を、混合モル比で化合物(1)/化合物(2)=80/20〜30/70の範囲に設定したイソシアネート化合物の混合物を用いて形成された特殊なポリウレア(イ)をシェル部(壁膜)の形成に用いると、得られるポリウレアの破壊温度が150±15℃前後になることを突き止めた。すなわち、上記特定のイソシアネート化合物の混合物を用いて形成される特殊なポリウレア(イ)をシェル部(壁膜)形成材料として用いると、130℃程度の高温での溶融混合が可能となることから、系全体の粘度が低くなるため、混練が充分に行われ、各成分、特に無機質充填剤が均一に分散されたエポキシ樹脂組成物が得られることを見出した。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A成分)と、フェノール樹脂(B成分)と、特定の硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を用いて得ることができるものであって、通常、粉末状もしくはそれを打錠したタブレット状になっている。
【0013】
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、エポキシ樹脂があげられる。例えば、半導体封止用材料としては、一般には、エポキシ樹脂が汎用されている。上記エポキシ樹脂としては、特に限定するものではなく、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ノボラックビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂等があげられる。なかでも、低粘度で低吸湿性を備えているという点から、下記の一般式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
【化5】
Figure 0004096141
【0015】
上記式(4)において、n=0で、かつR1 〜R4 として、水素原子、メチル基を有するものが、低吸湿性および反応性の点から一層好ましい。
【0016】
上記一般式(4)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量150〜350、軟化点50〜150℃のものが好ましい。
【0017】
上記エポキシ樹脂(A成分)とともに用いられるフェノール樹脂(B成分)としては、従来からエポキシ樹脂の硬化剤として作用する各種フェノール樹脂が用いられる。なかでも、フェノールアラルキル樹脂を用いることが好ましく、具体的には下記の一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0018】
【化6】
Figure 0004096141
【0019】
上記式(5)において、繰り返し数nは、0〜40の範囲が好ましく、特に好ましくは、n=0〜30の範囲である。
【0020】
上記一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂は、水酸基当量150〜220、軟化点40〜110℃が好ましく、より好ましくは水酸基当量150〜200、軟化点50〜90℃である。
【0021】
上記エポキシ樹脂(A成分)とフェノール樹脂(B成分)の配合割合は、上記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.8〜1.2当量となるように配合することが好適である。より好適なのは0.9〜1.1当量である。
【0022】
上記A成分およびB成分とともに用いられる特定の硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、硬化促進剤からなるコア部が、特定のポリウレア(イ)からなるシェル部で被覆されたコア/シェル構造を有するマイクロカプセルである。
【0023】
上記コア部として内包される硬化促進剤としては、特に限定するものではなく従来公知のものが用いられる。そして、この場合、マイクロカプセルを調製する際の作業性や得られるマイクロカプセルの特性の点から、常温で液状を有するものが好ましい。なお、常温で液状とは、硬化促進剤自身の性状が常温で液状を示す場合の他、常温で固体であっても任意の有機溶剤等に溶解もしくは分散させて液状にしたものをも含む。
【0024】
そして、上記硬化促進剤としては、例えば、アミン系、イミダゾール系、リン系、ホウ素系、リン−ホウ素系等の硬化促進剤があげられる。具体的には、エチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン等のアルキル置換グアニジン類、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等の3−置換フェニル−1,1−ジメチル尿素類、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン等のイミダゾリン類、2−アミノピリジン等のモノアミノピリジン類、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロピル)アミン−N′−ラクトイミド等のアミンイミド系類、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機リン系化合物、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン等のジアザビシクロウンデセン系化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の作製の容易さ、また取扱い性の容易さという点から、上記有機リン系化合物が好適に用いられる。
【0025】
また、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)のシェル部(壁膜)内に内包することができる有機溶剤としては、常温で液状であれば特に限定するものではないが、少なくともシェル部(壁膜)を溶解しないものを選択する必要がある。具体的には、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、塩化メチレン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン等の有機溶剤の他、フェニルキシリルエタン、ジアルキルナフタレン等のオイル類を用いることができる。
【0026】
そして、上記シェル部(壁膜)を形成する特定のポリウレア(イ)は、化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物を用いて形成されたものである。
【0027】
上記化合物(1)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、トリメチロールプロパン1モルとキシリレンジイソシアネート3モルを酢酸エチル中にて付加反応させることにより容易に作製することができる。
【0028】
また、上記化合物(2)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、トリメチロールプロパン1モルと2,4−トリレンジイソシアネート3モルを酢酸エチル中にて付加反応させることにより容易に作製することができる。この場合、ウレタン化触媒として錫系の触媒を少量用いてもよい。
【0029】
上記化合物(1)と化合物(2)の両者のモル比〔化合物(1)/化合物(2)〕は80/20〜30/70に設定される必要がある。特に好ましくは両者のモル比〔化合物(1)/化合物(2)〕が70/30〜50/50の範囲である。すなわち、化合物(1)が80を超える(化合物(2)が20未満)と、シェルの破壊開始温度が135℃以下になり、混練が不充分になったり、場合により内包する触媒が作用し反応してしまうからであり、逆に、化合物(1)が30を下回る(化合物(2)が70を越える)と、シェルの破壊開始温度が165℃以上の高温となり、半導体素子の成形時の硬化反応が劣るからである。
【0030】
そして、上記化合物(1)と化合物(2)のモル比を上記範囲内に設定することにより、シェル部(壁膜)の破壊温度を好適な範囲(150±15℃)に設定することが可能となる。例えば、上記化合物(1)と化合物(2)の両者のモル比〔化合物(1)/化合物(2)〕が70/30〜50/50の場合は、シェル部(壁膜)の破壊温度を150〜160℃付近に設定することが可能となる。そのため、前記A〜C成分を配合してエポキシ樹脂組成物を作製する際に、従来まで困難であった130℃程度の高温での溶融混合が可能となり、系全体の粘度が低く、かつ剪断力も小さくなり、混練が充分に行われる結果、得られたエポキシ樹脂組成物は、各成分、特に無機質充填剤が均一に混合分散されたものとなる。
【0031】
上記化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物により形成されるポリウレア(イ)としては、下記の一般式(3)で表される繰り返し単位を主要構成成分とするものが好適である。
【0032】
【化7】
Figure 0004096141
【0033】
上記のように、式(3)において、R1 ,R2 としては、水素原子または1価の有機基であり、Rは2価の有機基が好ましく、特に好ましくは、R1 ,R2 がともに水素原子の場合である。
【0034】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位を主要構成成分とする特定のポリウレア(イ)は、一般には、上記化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物と、水との反応によって得られる。すなわち、化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物の加水分解によってアミンが形成され、このアミンが未反応のイソシアネート基と反応(いわゆる自己重付加反応)することによって形成される。なお、上記特定のポリウレア(イ)の作製は、このような自己重付加反応に限定されるものではなく、例えば、上記化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物と、多価アミン類との重付加反応によっても得ることができる。
【0035】
上記多価アミン類としては、分子内に2個以上のアミノ基を有する化合物であればよく、具体的にはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、メンタンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、イソホロンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、スピロアセタール系ジアミン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかで、形成されたマイクロカプセル壁膜の隔離能力(保護能力)の点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが好ましい。
【0036】
上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、マイクロカプセル化することができるならば特に限定するものではなく従来公知の各種方法にて調製することができる。特に界面重合法を用いて、シェル部(壁膜)を形成しマイクロカプセル化することが、シェル部(壁膜)の均質化や壁膜厚みの調整という観点から好ましい。
【0037】
上記界面重合法による硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、例えば、つぎのようにして得られる。すなわち、液状の硬化促進剤をコア成分として、これに化合物(1)と化合物(2)からなるイソシアネート化合物の混合物を溶解させる。このようにして得られる溶液は油状であって、これを水相中に油相として油滴状に分散させてO/W型(油相/水相型)のエマルジョンを作製する。このとき、分散した各油滴の粒径は0.05〜50μm、好ましくは0.05〜20μm程度とすることが、重合中のエマルジョンの安定性の点から好ましい。
【0038】
一方、固体状の硬化促進剤を有機溶剤に溶解してコア成分とする場合には、S/O/W(固相/油相/水相)タイプのエマルジョンとなる。また、このエマルジョンタイプは硬化促進剤が親油性の場合であり、硬化促進剤が親水性を有する場合には上記エマルジョンタイプに形成され難いが、この場合には溶解度の調整を行うことによりO/O(油相/油相)型のエマルジョンタイプや、S/O/O(固相/油相/油相)型のエマルジョンタイプとして界面重合を行えばよい。
【0039】
ついで、上記エマルジョンの水相に、多価アミンを添加することによって、油相中の混合イソシアネート化合物との間で界面重合させ重付加反応を行い、上記特定のポリウレア(イ)をシェル部(壁膜)とする、硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)が得られる。
【0040】
このようにして得られた硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、コア/シェル構造の形態をとり、シェル部(壁膜)内にコア成分として硬化促進剤を内包してなるものである。そして、この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)は、従来からの公知の手段、例えば、遠心分離後に乾燥したり、噴霧乾燥したりする手段によって単離することができる。また、上記熱硬化性樹脂や硬化剤中に溶解混合させることができる。この際、必要に応じてマイクロカプセル中の有機溶剤を減圧乾燥等の手段を併用して除去することもできる。
【0041】
この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の平均粒径は、後述のように、エポキシ樹脂組成物の製造の際に加わる剪断力を考慮して0.05〜20μm、好ましくは0.1〜4μmの範囲に設定することがマイクロカプセルの安定性および分散性の点から好ましい。なお、本発明において、この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の形状としては球状が好ましいが楕円状であってもよい。そして、このマイクロカプセルの形状が真球状ではなく楕円状や偏平状等のように一律に粒径が定まらない場合には、その最長径と最短径との単純平均値を平均粒径とする。
【0042】
この硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)において、内包される硬化促進剤の量は、マイクロカプセル全量の5〜70重量%に設定することが好ましく、特に好ましくは10〜50重量%である。すなわち、硬化促進剤の内包量が5重量%未満では、硬化反応の時間が長過ぎて、反応性に乏しくなり、逆に硬化促進剤の内包量が70重量%を超えるとシェル部(壁膜)の厚みが薄過ぎて内包される硬化促進剤(コア成分)の隔離性や機械的強度に乏しくなる恐れがあるからである。
【0043】
また、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の粒径に対するシェル部(壁膜)の厚みの比率は3〜25%に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜25%に設定される。すなわち、上記比率が3%未満ではエポキシ樹脂組成物製造時の混練工程において加わる剪断力(シェア)に対して充分な機械的強度が得られず、また、25%を超えると内包される硬化促進剤の放出が不充分となる傾向がみられるからである。
【0044】
そして、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の配合量は、エポキシ樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して0.1〜30部に設定することが好ましい。特に好ましくは7〜20部の割合である。すなわち、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)の配合量が、0.1部未満では、硬化速度が遅過ぎて強度の低下を引き起こし、逆に30部を超えると、硬化速度が速過ぎて流動性が損なわれるからである。
【0045】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、その用途に応じて、上記A〜C成分とともに無機質充填剤を適宜に配合することができる。上記無機質充填剤としては、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等があげられる。なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適に用いられる。
【0046】
上記無機質充填剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物全体の70〜95重量%に設定することが好ましい。特に好ましくは80〜95重量%である。
【0047】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分および無機質充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。
【0048】
上記他の添加剤としては、例えば、難燃剤、ワックス等があげられる。
【0049】
上記難燃剤としては、ノボラック型ブロム化エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0050】
上記ワックスとしては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等の化合物があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0051】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記他の添加剤以外にシリコーンオイルおよびシリコーンゴム、合成ゴム等の成分を配合して低応力化を図ったり、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的としてハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等のイオントラップ剤を配合してもよい。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。まず、先に述べたように、界面重合法にて、硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を作製する。
【0053】
ついで、上記硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)とともに、残りの他の成分を全て混合した後、ミキシングロール機等の混練機にかけ加熱状態で混練りして溶融混合する。この混練時の温度設定を従来よりも高く設定することができる。そして、このとき、硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)には熱と剪断力が働くが、マイクロカプセルのシェル部(壁膜)の破壊温度が従来よりも高いため、この段階では熱安定性が良好であり、混練温度も高くマイクロカプセルにかかる剪断力も小さくできる。このマイクロカプセルには、エポキシ樹脂組成物を用いた樹脂封止成形時に簡単にシェル部(壁膜)が熱により破壊される性質を有する特定のポリウレア(イ)がシェル部(壁膜)形成材料として用いられている。また、マイクロカプセルに加わる剪断力に対しては、マイクロカプセルの平均粒径を0.05〜20μm、好ましくは0.1〜4μmの範囲に設定することがマイクロカプセルの安定性および分散性の点から好ましい。
【0054】
つぎに、これを室温にて冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程を経由することにより目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0055】
本発明において、上記エポキシ樹脂組成物を用いてなる半導体素子の封止は、特に限定するものではなく、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができる。
【0056】
このようにして得られる半導体装置は、硬化促進剤からなるコア部が、特定のポリウレア(イ)からなるシェル部(壁膜)で被覆されたコア/シェル構造を有する硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)を用いたエポキシ樹脂組成物によって樹脂封止されているため、各成分が均一に分散されたエポキシ樹脂組成物による樹脂封止によって、ボイドの発生が抑制され、耐半田性に優れた半導体パッケージが得られる。
【0057】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0058】
実施例に先立ち、下記に示す方法に従って硬化促進剤含有マイクロカプセルを作製した。
【0059】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC1〕
前述の界面重合法にて作製した。すなわち、より詳しく述べると、前記化合物(1)10.5部および前記化合物(2)6.6部と、硬化促進剤であるトリフェニルホスフィン6.7部および酢酸エチル4.8部とを均一に溶解させて油相を調製した。なお、上記化合物(1)と化合物(2)のモル比は、〔化合物(1)/化合物(2)〕=6/4である。また、蒸留水95部とポリビニルアルコール5部からなる水相を別途調製し、このなかに上記調製した油相を添加してホモミキサー(8000rpm)にて乳化しエマルジョン状態にし、これを還流管、攪拌機、滴下ロートを備えた重合反応器に仕込んだ。
【0060】
一方、トリエチレンテトラミン3部を含む水溶液13部を調製し、これを上記重合反応器に備えた滴下ロート内に入れ、反応器中のエマルジョンに滴下して70℃で3時間重合を行い、マイクロカプセルを作製した。このようにしてトリフェニルホスフィンを内包したポリウレアシェル(粒径に対するシェル厚み比率20%)構造のマイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度150℃)。
【0061】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC2〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=7/3に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度140℃)。
【0062】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC3〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=1/9に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度175℃)。
【0063】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC4〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=9/1に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度120℃)。
【0064】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC5〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=2/8に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度170℃)。
【0065】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC6〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=3/7に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度165℃)。
【0066】
〔硬化促進剤含有マイクロカプセルC7〕
前記化合物(1)と化合物(2)のモル比を、〔化合物(1)/化合物(2)〕=8/2に設定した。それ以外は、実施例1と同様にして硬化促進剤含有マイクロカプセルを製造した(平均粒径2μm、シェル部の破壊温度135℃)。
【0067】
一方、下記に示す各成分を準備した。
【0068】
エポキシ樹脂A1〕
4,4′−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3′,5,5′−テトラメチルビフェニル
【0069】
エポキシ樹脂A2〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量198)
【0070】
フェノール樹脂B1〕
前記一般式(5)で表されるフェノールアラルキル樹脂(水酸基当量175:式(5)中、n=0〜21)
【0071】
フェノール樹脂B2〕
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量105)
【0072】
〔無機質充填剤〕
平均粒径15μmの破砕状溶融シリカ
【0073】
〔ブロム化エポキシ樹脂〕
エポキシ当量275でブロム含有量36%
【0074】
【実施例1〜7、比較例1〜4】
下記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、ミキシングロール機で混練りして冷却した後粉砕することにより目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物を得た。なお、上記混練温度を下記の表1および表2に併せて示した。
【0075】
【表1】
Figure 0004096141
【0076】
【表2】
Figure 0004096141
【0077】
このようにして得られた実施例および比較例の各粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いて下記に示す評価試験(175℃におけるゲルタイム、175℃で60秒後の硬度、保存性)に供した。これらの結果を後記の表3および表4に併せて示す。
【0078】
〔175℃におけるゲルタイム〕
175℃におけるゲルタイムを熱板式ゲルタイムに従って測定した。
【0079】
〔175℃で60秒後の硬度〕
175℃×60秒の条件で成形した直後、ショアーD硬度計を用いて、熱時の硬度を測定した。
【0080】
〔保存性〕
まず、粉末状エポキシ樹脂組成物をタブレット状(直径24.5mm×厚み20mm)に予備成形した。このタブレットを予め規定温度(175±5℃)に加熱した渦巻状のスパイラルフロー用金型のポットの奥まで挿入し、型締めして型締め圧力を210±10kg/cm2 まで上げた。つぎに、型締め圧力が210±10kg/cm2 に達した時点で、プランジャーでエポキシ樹脂組成物を注入し、注入圧力70±5kg/cm2 に到達した後、1分50秒注入圧力をかけた。ついで、トランスファー成形機のプランジャー圧力を抜き、さらに型締め圧を抜いて金型を開いた。そして、成形物の渦巻長さを最小2.5mmまで測定することによりスパイラルフロー値を得た(EMMI 1−66に準ずる)。これを初期のスパイラルフロー値(初期SF値)とした。
【0081】
一方、上記と同様にして粉末状エポキシ樹脂組成物をタブレット状(直径24.5mm×厚み20mm)に予備成形し、このタブレットを30℃の温度条件で3日間放置した。この放置後のタブレットを用い、上記初期SF値の測定と同様にしてスパイラルフロー値を得た。これを3日間保存後のスパイラルフロー値(保存後SF値)とした。
【0082】
上記初期SF値と保存後SF値から、下記の式によりスパイラルフロー保持率(%)を算出した。
【0083】
【数1】
スパイラルフロー保持率(%)=(保存後SF値)/(初期SF値)×100
【0084】
〔離型性〕
まず、図1に示すような3層構造(上型10,中型11,下型12)の成形型を用いて、175℃×60秒の条件で成形を行い、エポキシ樹脂組成物硬化体における離型時の荷重を測定した。図において、13はカル、14はスプルー、15はランナー、16はキャビティーである。離型時の荷重の測定は、図2に示すように、成形型の中型11を支持台17上に載置し、プッシュプルゲージ18を用いて上方から中型11内のエポキシ樹脂組成物硬化体19を脱型した。このときの荷重値を測定した。
【0085】
さらに、上記各実施例および比較例で得られた粉末状のエポキシ樹脂組成物を用いてタブレット状(直径24.5mm×厚み20mm)に予備成形し、このタブレットを30℃の温度条件で3日間放置した。ついで、この放置したタブレットを用いて半導体装置〔80ピン四方向フラットパッケージ:QFP−80(14mm×20mm×厚み2.7mm)、リードフレームMF202、半導体素子(8mm×8mm×厚み0.37mm)〕をトランスファー成形(条件:175℃×2分)にて作製した。
【0086】
〔成形不良評価〕
まず、得られた半導体装置について、成形不良が発生した個数(120個中)を測定した。すなわち、自動成形機(TOWA社製、VPS−40)で上記QFP−80(14mm×20mm×厚み2.7mm)を10ショット成形して、未充填の発生、ボイドの形成を評価した。なお、上記ボイドの形成は、軟X線装置にて測定し、直径0.1mm以上のものが形成されたものを不良とした。また、得られた半導体装置を、121℃×2気圧×100%RH放置の条件に供し(PCTテスト)、パッケージ中のテストデバイスの通電試験を行い、ショートしたものを不良とした。
【0087】
〔耐半田クラック発生率〕
そして、得られた半導体装置を用い、120℃×1時間のプリベーク後、これを85℃/85%RH×168時間吸湿させた後、215℃のVapor Phase Soldering(VPS)で90秒の評価試験(耐クラック性)を行った。その結果を下記の表3および表4に併せて示す。
【0088】
【表3】
Figure 0004096141
【0089】
【表4】
Figure 0004096141
【0090】
上記表3および表4の結果から、全ての実施例品はスパイラルフロー保持率が高く保存性に優れていることがわかる。また、離型性にも優れ、成形物の不良発生率も0%であることから、実施例品のエポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性が高く、これを半導体装置の封止材料として用いるのに適していることがわかる。さらに、PCTテストおよび耐クラック性試験において良好な結果が得られた。このことから、実施例品のエポキシ樹脂組成物を半導体装置の封止材料として用いるとボイドの発生が抑制され信頼性の高い半導体装置が得られる。これに対して、比較例1,4品はスパイラルフロー保持率は高いものの、成形物の熱時硬度が低く、PCTテストおよび耐クラック性試験結果が悪かった。また、比較例2〜3品はスパイラルフロー保持率が低く、PCTテストおよび耐クラック性試験結果も悪かった。
【0091】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製法は、式(1)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(1)〕と式(2)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(2)〕とを特定の割合で混合し、これを硬化促進剤の油性溶液に溶解し、この溶解物を水相中に分散させてエマルジョンをつくり、このエマルジョンの水相に、多価アミンを添加し、油相中の上記混合物と の間で界面重合させ、コア部が上記硬化促進剤からなり、シェル部が上記混合物と多価アミンとの反応によって形成されたポリウレアからなる、コア/シェル構造を有する硬化促進剤含有マイクロカプセル(C)をつくる。つぎに、このマイクロカプセル(C)と、少なくとも、エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B)とを加熱状態で混練し冷却工程を経由させエポキシ樹脂組成物を製造する。すなわち、本発明では、上記特定の硬化促進剤含有マイクロカプセル(C成分)のシェル部(壁膜)形成材料として、上記特定の化合物(1)と(2)によるポリウレア(イ)を用いるため、形成されるシェル部(壁膜)の破壊温度が150±15℃前後になり、130℃程度の高温での溶融混合が可能となる。その結果、系全体の粘度が低くなり、混練が充分に行われるため、各成分が均一に混合分散されたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。特に、無機質充填剤の割合が、エポキシ樹脂組成物全体の80重量%を超える高充填系のものであっても、無機質充填剤が均一に混合分散されたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 離型性の評価方法に用いるエポキシ樹脂組成物硬化体の成形方法を示す説明図である。
【図2】 離型性の評価方法である荷重の測定方法を示す説明図である。

Claims (3)

  1. 記の構造式(1)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(1)〕と下記の構造式(2)で表されるイソシアネート化合物〔化合物(2)〕モル比〔化合物(1)/化合物(2)〕80/20〜30/70の割合で混合し、これを硬化促進剤の油性溶液に溶解し、この溶解物を水相中に分散させてエマルジョンをつくり、このエマルジョンの水相に、多価アミンを添加し、油相中の上記混合物との間で界面重合させ、コア部が上記硬化促進剤からなり、シェル部が上記混合物と多価アミンとの反応によって形成されたポリウレアからなる、コア/シェル構造を有する硬化促進剤含有マイクロカプセル(C)をつくり、つぎに、このマイクロカプセル(C)と、少なくとも、エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B)とを加熱状態で混練し冷却工程を経由させエポキシ樹脂組成物を得るエポキシ樹脂組成物の製法
    Figure 0004096141
    Figure 0004096141
  2. 上記エポキシ樹脂がビフェニル型エポキシ樹脂である請求項記載のエポキシ樹脂組成物の製法
  3. 上記フェノール樹脂がフェノールアラルキル樹脂である請求項または記載のエポキシ樹脂組成物の製法
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