JP4095775B2 - 油圧配管のフラッシング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タービンの潤滑ラインである油圧配管のフラッシング方法に関し、特に、発電プラントの施工後の油圧配管の洗浄において、タービン油圧配管中の異物を短期間で取り除くことができるフラッシング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発電プラントのタービン等の油圧配管においては、設備の配管施工が完了した後には、オイルを流入させて、プラント設置工事の際に発生する異物の除去・回収を行うためのフラッシングを行う。これは、配管建設中には、ゴミや溶接の際の異物等が配管内に混入してしまうために必要になる。その場合、通常、配管の一部にフィルターを設置して、そこで異物等が回収されるようにオイルを循環させる。そして、定期的に異物量や異物の大きさなどを計測して、異物の混入が認められなくなった時点で終了する。
従来、このようなタービン油圧配管のフラッシングでは、配管施工後、直ちに作動油によるオイルフラッシングが実施され、配管系統内の清浄度によって所要時間は異なるものの、通常は長期間を要していた。そして、このオイルフラッシングによる洗浄を終了して、新しいオイルを注入した後でなければ、最終的に設備を運転可能な状態にすることはできない。
【0003】
このような従来の油圧配管のフラッシングでは、配管に油を充填して、このオイルのみを用いて洗浄されるまで何回も洗浄し続けるオイルフラッシング方法が採用されており、水系の洗浄液を用いることは行われていなかった。オイルのみを用いるフラッシング方法では、洗浄完了までには通常約2〜4ヶ月程度要するが、フラッシング期間はプラント施工時の配管内の状態に左右されやすく、長い場合には約6ヶ月を要していた。そして、この洗浄を終了しなければ、タービンを運転することはできないので、発電プラント運転までの工期短縮の要請に反していた。なお、一回の油圧配管のオイル充填量は、約30トン程度であり、洗浄後に廃棄する場合にはその油の量も膨大であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、発電プラントの工期短縮の要請に沿った、フラッシングに要する洗浄期間の大幅な短縮が可能となる方法であって、配管中の錆の発生防止、洗浄時の作業性の向上、配管内異物の搬送能力の向上、を図ったフラッシング方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、オイルフラッシングの前に洗浄液として水系の洗浄液によるプレフラッシングを行うことによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0005】
すなわち、本発明は、タービン油圧配管のフラッシング方法において、水フラッシング工程、中性除錆剤を用いて行う除錆フラッシング工程、防錆フラッシング工程および乾燥工程を含むプレフラッシング工程の後、オイルフラッシングを行うことを特徴とする油圧配管のフラッシング方法を提供するものである。また、前記防錆フラッシング工程においては、界面活性剤を含む洗浄液を用いて循環洗浄する工程を含むことが、効果的なスマッド除去の観点からは好適である。
【0006】
上記のような本発明の方法によれば、水系洗浄液を用いたプレフラッシングを行うことによって、配管内異物の搬送能力の著しい向上、洗浄時の作業性の向上とともに、配管中の錆の発生防止が可能となる。よって、フラッシングに要する洗浄期間の大幅な短縮が可能となり、発電プラントの工期短縮の要請に沿ったフラッシングを行うことができる。
本発明に係るフラッシング方法を実施するための具体的な形態について説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1には、主に火力発電プラントにおける水系配管を示す。水は復水器に供給されてから、給水加熱器に送られる。低圧給水加熱器6は熱交になっており、水を徐々に加熱していく。脱気器5では、防食のために蒸気を噴霧させながら溶存酸素を抜いていく。ボイラ1に導入する前に、高圧給水加熱器7によってさらに水に熱を加える。ボイラ1には、エコノマイザーとスーパーヒータ(過熱器)等があり、これを経た蒸気は、蒸気タービン2に送られてタービン翼を高速回転させる。使用した蒸気は、もう一度利用するために、再熱器に送ってさらに加熱してから、タービン2に返送される。
本発明は、上記タービン2の潤滑油ラインであるタービン油圧配管に好適に用いられるものであり、油圧配管と上記水系配管とは全く別系統として構成されている。
【0008】
タービン油圧配管(ライン)は、高速回転するタービンを潤滑させるための配管設備である。潤滑油の油圧配管の形状は特に定められていないが、通常、タービン本体への行きのラインと帰りのラインの2系統が一本の配管の中に配置される二重管構造になっており、行きは内部の細管を勢い良く流れ、帰りは外管中を流速が低いまま流れてくる構造になっている。
タービンは回転体なので、軸受けの中にオイルを存在させるが、その部分の循環ラインには配管施工・製作時の異物や汚れがそのまま付着している。タービンを運転する場合には極めて高速回転するので、極めて微細な異物であっても軸に損傷を与えることがあり、タービン運転前には、このような施工時に発生した異物を取り除くためにフラッシングが行われる。異物の種類には、主に、砂塵、切り粉(鉄破片)、溶接部のスラグ、繊維、錆、塗膜の剥離片などが含まれ、これらの異物を満遍なく取り除く洗浄が必要とされる。
【0009】
本発明のフラッシング方法では、プレフラッシング工程において、上記の各異物をいずれも満遍なく洗浄・除去することが可能であり、後段のオイルフラッシング工程における洗浄除去の負担を著しく軽減するものである。そして基本的には主要な全ての異物について、プレフラッシング工程にて取り除くことが可能であり、後段のオイルフラッシング工程においては、フィルターを用いた異物検査等の特段の洗浄除去作業を行うことなく運転を開始することが可能である。
本実施の形態では、プレフラッシング工程は、水フラッシング工程、除錆フラッシング工程、防錆フラッシング工程および乾燥工程からなる。このプレフラッシング工程の後、オイルフラッシングを行う。以下、プレフラッシング工程について詳細に説明する。
【0010】
プレフラッシング工程の最初には、水のみによる水フラッシング工程を、通常半日〜4日間、好ましくは1〜2日間、実施する。この水フラッシング工程においては、上記したような油圧配管の二重管構造のために、配管内部には細管が設けられているので、配管ラインのジェット洗浄ができる。水による洗浄においては、特に効果的なジェット洗浄を実施することが可能であり、通常50〜200kg/cm2、好ましくは130〜180kg/cm2程度の圧力でジェット洗浄することにより、洗浄効果を確認しながら異物を排出できる。
本発明のプレフラッシング工程で水系洗浄液を用いるのは、まず、オイルに比べて水の比重が大きいので異物全体の搬送能力が高いためである。また、水は粘度の関係で液膜が薄くなるので、配管表面に付着した小さな砂塵等の異物までも洗浄する効果がある。特に繊維や塗膜剥離片に対しては、これらを配管内面から浮遊させて取り除くのに、ジェット水洗がオイル洗浄よりも優れている。そして水系フラッシングでは、水がオイルより粘度が低いので、流速自体も上がり、汚れを洗浄する力が格段に大きく、異物の排出効果が大きいのである。
具体的には、水フラッシングはオイルフラッシングに比べ流速が同じ場合、搬送能力は約1.14倍である。そして液膜の厚さが約1/2となるため、排出効果はより大きなものとなる。また、ジェット洗浄によって塗膜へ悪影響が与えられることもない。
【0011】
次に、本実施の形態では除錆フラッシング工程によって、主に鉄系の切り粉等の洗浄を行う。この工程では、洗浄剤入りの中性水を洗浄液として使用するので、異物の鉄系物質の一部は溶解し、溶解しないものも細粒化させて、取り除くことができる。この工程を、通常約3〜20時間、好ましくは5〜15時間程度、実施する。洗浄液の流速は、約1m/s以上で行うのが好ましい。
従来の塩酸等を用いる化学洗浄では、防錆剤を加えて、母材を溶かさずに、対象とする酸化物のみを溶解させるようにしている。しかしこのような方法では、プレフラッシング工程における切り粉等の溶解除去が妨げられ、異物として残留してしまう。
よって本工程では、配管母材と同材質の切り粉なども溶解させるため、中性の除錆剤を含む水洗浄液用いて、防錆剤を加えずに、除錆フラッシングを行う。切り粉等も全部溶解させる必要から、配管母材が溶解しないような洗浄剤では優れた洗浄効果が期待できないからである。通常、該洗浄液には酸化防止剤も加えない。中性除錆剤の種類は特に限定されないが、具体的には、例えば特殊有機酸塩、比重(20℃)約1.2程度、pH6.0〜7.0、無色〜微黄色透明液体のもの等が好適に用いられる。また、中性除錆剤の濃度についても特に限定されるものではなく、配管内の状態等によって任意に選択されるが、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度で用いられる。
錆、切り粉、溶接部スラグ等の異物については、中性の除錆剤を用いる本除錆フラッシング工程にて、微細化あるいは溶解することで効果的に洗浄除去される。
【0012】
ここで、本発明でのフラッシング効果を一層高めることができる、配管の溶接部等へのハンマリングについて説明する。
配管の溶接部は、特にスラグ等が異物として残留しやすい。そこで本発明では、かかる溶接部の配管について外部からハンマーで叩いて(ハンマリング)、配管内部(打撃部の内面および非打撃部の内面の両方を含む)の異物を、効果的に取り除くことができる。特に、上記した水フラッシング工程や除錆フラッシング工程においては、切り粉や金属酸化物等の異物に対して溶解除去、微細化除去を行うのに効果的である。
このハンマリングを行う場合には、例えば洗浄液を配管内部に循環させながら、実施することが好ましい。溶接箇所に対する8時間(1時間当り10分程度)のハンマリングによって、管内部の異物はほぼ完全に取り除くことができる。
【0013】
次に、本実施の形態では除錆フラッシング工程に続いて、防錆フラッシング工程を実施する。防錆フラッシング工程においては、防錆剤入りの水で洗浄することによって、以後の錆付きを防止する。具体的には、上記除錆フラッシング工程の後に、乾燥工程を実施する際には、配管内には錆が発生する場合がある。そこで、このような錆の発生を防止するために、防錆フラッシング工程を実施することによって異物である錆の発生を効果的に防止するものである。用いられる防錆剤の種類等については特に限定されるものではないが、例えばMK-9(芳香族系カルボン酸塩)や、アンモニウム系防錆剤等を好適に用いることができ、MK-9の場合、400〜5000ppmの範囲で添加して用いる。この工程を、通常約30分〜10時間、好ましくは1〜5時間程度、実施する。
また、本実施の形態では、防錆フラッシング工程中に、界面活性剤を含む洗浄剤を用いて循環洗浄する工程を含む。
上記した除錆フラッシング工程で用いる水洗浄液には、中性の除錆剤が加えられているが酸化防止剤を加えていないので、配管である母材自身の一部も溶解させてしまう。このため、鋼中のカーボンが配管内に発生しまうことがある。これらのカーボンは配管中において、電気的に繋がっているので、洗浄剤の流速だけでは除去されにくく、いわゆるスマッドを形成している。よって、防錆フラッシング工程にて、界面活性剤を加えた洗浄液を用いてスマッドを除去することが効果的である。
【0014】
このような防錆フラッシング工程は、防錆剤を含む水溶性の洗浄液を循環させることによって、任意に実施することができるが、具体的には第1、第2および第3の防錆フラッシング工程からなる態様が挙げられる。これら各防錆フラッシング工程は、例えばそれぞれが30分〜2時間の範囲で行われる。
第1の防錆フラッシング工程では、上記除錆フラッシング工程にて用いられた洗浄液中に、防錆剤を添加してそのまま循環洗浄することができる。この防錆剤の添加によって、その後のフラッシングにより母材が溶解することはなくなる。そして、第2の防錆フラッシング工程では、金属表面のスマッドを洗浄除去するため、防錆剤にさらに界面活性剤を添加した洗浄液にて、循環洗浄する。但し、スマッド除去の方法としては、界面活性剤を添加すること以外に、十分なハンマリングを行うことによっても、同様の効果が得られる場合がある。界面活性剤の種類についても特に限定されるものではないが、例えばアニオン系界面活性剤等を好適に用いることができる。
第3の防錆フラッシング工程では、上記界面活性剤を配管内から除去するために、防錆剤のみを含む水溶液を洗浄剤として、再び循環洗浄する。これによって、強制乾燥完了までの間の錆付きを防止することができる。
【0015】
最後に、本実施の形態では防錆フラッシング工程に続いて、強制乾燥による乾燥工程を実施して、配管内に残留する水分を取り除き、完全乾燥する。
乾燥工程では、配管が通常100mオーダーの長さなので、ブローするのに時間がかかるが、上記防錆フラッシング工程の防錆剤の作用によって、錆び付きが防止できる。乾燥させる際には異物が混入しないように、エアフィルターを通して空気を送ることが好ましい。
なお、本発明のプレフラッシング工程によって発生した廃液については、例えばCODの活性汚泥法等による廃液処理設備で処理することができる。
【0016】
以上の本実施形態によれば、プレフラッシング工程内における各工程において、砂塵、切り粉(鉄破片)、溶接部のスラグ、繊維、錆、塗膜の剥離片などの各異物を、短時間で極めて効果的に洗浄・除去することが可能であり、錆の発生等の弊害も除去できる。
本発明によるフラッシング方法の洗浄効果を明らかにするため、以下の実験例を実施例として示す。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0017】
【実施例】
実施例1
除錆フラッシング工程に用いる中性除錆剤として、特殊有機酸塩(バルチャー)を用いて、炭素鋼の滅肉厚みの実験を行ったところ、滅肉厚み5.1μm/24h(常温)であり、配管材として炭素鋼を使用できることがわかった。銅およびステンレス鋼については、減肉は認められなかった(<0.01μm/24h、常温)。よって、これらの材質からなる油圧配管には、本発明のフラッシング方法が好適に使用できる。
また、箱型容器による実機模擬試験では、除錆フラッシング工程における上記バルチャーの除錆効果良好であり、NaNO2およびMK-9(芳香族系カルボン酸塩)の防錆効果も良好であった(7日後、発錆なし)。
18時間の中性除錆剤入り洗浄剤での循環洗浄+ハンマリングを実施したところ、溶接部のスラグは完全に除去することができた(目視判定)。これに対して、30時間のオイルフラッシング+ハンマリングでは、スラグを完全に除去できなかった。
【0018】
【発明の効果】
本発明のフラッシング方法によれば、油圧配管のフラッシングに要する所要時間が大幅に短縮でき、従来のオイルフラッシング工程のみの場合の1/3以下になる。また、水系洗浄液を用いたプレフラッシング工程において、配管系統の異物・汚れをほとんど洗浄・除去でき、溶接部のスラグ等も除去できる。さらに、塗膜に対する中性除錆剤や防錆剤の影響を回避して、優れた洗浄効果を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフラッシング方法を好適に用いることができるタービンを有する、発電プラントの一例に示す構成図である。
【符号の説明】
1 ボイラ
2 蒸気タービン
3 発電器
4 復水器
5 脱気器
6 低圧給水加熱器
7 高圧給水加熱器
8 空気予熱器
9 集塵器
10 煙突
11 給水ポンプ
12 復水ポンプ
13 循環水ポンプ
14 冷却塔(クーリングタワー)
15 ボイラ給水配管
Claims (2)
- タービン油圧配管のフラッシング方法において、水フラッシング工程、中性除錆剤を用いて行う除錆フラッシング工程、防錆フラッシング工程および乾燥工程を含むプレフラッシング工程の後、オイルフラッシングを行うことを特徴とする油圧配管のフラッシング方法。
- 前記防錆フラッシング工程において、界面活性剤を含む洗浄液を用いて循環洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の油圧配管のフラッシング方法。
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