JP4094492B2 - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源としてエンジンとモータを有するハイブリッド車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低燃費化、排出ガスの低公害化を目的とするハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両は、エンジン出力とモータ出力とを合成して駆動輪に伝達するもので、2輪車や、3輪車、4輪車などにも適用されている。2輪車におけるハイブリッド車両では、スロットル開度が増大してエンジン回転数が所定回転数以上となった時点からモータがクランク軸を回転駆動させ、クランク軸の出力トルクを増大させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−103384号公報(段落番号0014および0071、第2図、第14図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種のハイブリッド車両ではモータ出力を補助動力として用いることで、車両全体としての最大出力を大きく設定することができるので、定格出力が大きいモータを用いることが考えられる。しかしながら、定格出力が大きいモータは大型で、かつ大重量であることが多い。そのため、そのようなモータを車体に配置する場合には、レイアウトの困難性や、車体フレームの強化が必要になるという課題が生じることがある。よって、このような場合には設計上のコストおよび製造上のコストが高くなる可能性がある。さらに、エネルギの効率利用という観点からも、モータの効率利用の向上化が望まれている。
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、足回りやフレームを強化せずに、必要な出力を効率良く得られるようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する本発明の請求項1にかかる発明は、エンジン(例えば、実施形態のエンジン20)からのエンジン出力(例えば、実施形態のエンジン出力PE)とモータ(例えば、実施形態のモータ21)からのモータ出力(例えば、実施形態のモータ出力PM)とを合成して駆動輪(例えば、実施形態の後輪WR)に伝達可能な構成を有し、前記エンジンのエンジン回転数(例えば、実施形態のエンジン回転数Ne)に対応させて前記モータ出力を制御する制御手段(例えば、実施形態の制御ユニット7)を備えたハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記エンジン回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%に達するまでは、前記モータ出力をエンジン回転数に対応して上昇させると共に、前記エンジン回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%を越えて増加するときには、前記エンジン回転数の上昇と反比例して前記モータ出力を漸減させることにより、前記エンジン出力と前記モータ出力とを合成した合成出力がエンジン最大出力を越えないようにしたことを特徴とするハイブリッド車両とした。
【0006】
このハイブリッド車両によれば、エンジン回転数が小さく、エンジンをモータでアシストした場合の合成出力がエンジンの最大出力を超えない領域では、モータがエンジンをアシストする。そして、エンジン回転数が増加してエンジン出力が増大した結果、合成出力がエンジンの最大出力を超える場合には、モータの出力を低下させるか、モータの出力をゼロにする。エンジンの最大出力を超えないようにモータでエンジンをアシストするので、定格出力の小さいモータを用いることができる。そのため、モータの小型化が可能になり、車体に配置する際の配置スペースの効率化が可能になると共に、車体フレームの変更が不要になる。よって、製造上のコストを減少させることも可能になる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記エンジン出力が最大出力に至る前に前記モータ出力がゼロになるように制御することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記モータ出力が上昇から漸減に転じるときの回転数におけるモータ出力が前記モータの最大出力に相当するように設定することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両において、前記制御手段は、前記エンジンの回転数がエンジンの最大出力となる回転数の70〜80%に到達したときには前記エンジンの回転数に漸減用係数を乗じて前記モータ出力を設定することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、この実施形態におけるハイブリッド車両は、2輪車両であって、車両前方に前輪WFを軸支するフロントフォーク1を有する。このフロントフォーク1はヘッドパイプ2に枢支されており、ハンドル3の操作によって操舵可能である。ヘッドパイプ2からは後方、かつ下方に向けてダウンパイプ4が取り付けられており、このダウンパイプ4の下端からは中間フレーム5が略水平に延設されている。さらに、中間フレーム5の後端からは後方、かつ上方に向けて後部フレーム6が形成されている。このように構成された車体フレーム10には動力源を含むパワーユニット11の一端が枢着されている。このパワーユニット11は、その後方の他端側に駆動輪である後輪WRが回転可能に取り付けられると共に、後部フレーム6に取り付けられたリヤクッション12により吊り下げられているので、枢着部分を中心として揺動が可能である。さらに、車体フレーム10の外周は車体カバー13で覆われ、車体カバー13の後方かつ上面には搭乗者が着座するシート14が固定されている。シート14よりも前方には搭乗者が足を置くステップフロア15を形成している。
【0012】
図3のブロック図に示すように、パワーユニット11は、可燃性の混合気を燃焼させて出力を得る内燃機関であるエンジン20を有すると共に、発動機または発電機として機能するモータ21をエンジン20のクランク軸22と同軸上に配設してあり、エンジン20の出力と、モータ21の出力の少なくとも一方の出力をクランク軸22に連結した無段変速機23を介して後輪WRに伝達する構成を有する。
【0013】
エンジン20は、車体幅方向と平行な軸線を有するクランク軸22に、コンロッド24を介して連結されたピストン25を備える。ピストン25はシリンダブロック26に設けたシリンダ27内を摺動可能である。このシリンダブロック26はシリンダ27の軸線が略水平にして配設されており、シリンダブロック26の前面にはシリンダヘッド28が固定されている。シリンダヘッド28およびシリンダ27ならびにピストン25により形成される空間は、混合気を燃焼させる燃焼室20aである。
【0014】
シリンダヘッド28には、燃焼室20aに混合気を吸気するバルブおよび排気を行うバルブ(共に不図示)と、点火プラグ29とが配設してある。バルブの開閉は、シリンダヘッド28に軸支されたカム軸30の回転により制御する。カム軸は一端側に従動スプロケット31を備え、従動スプロケット31とクランク軸22の一端に設けた駆動スプロケット32との間には無端状のカムチェーン33を掛け渡してある。このため、カム軸30はクランク軸22の回転に連動して回転する。また、カム軸30の一端には、エンジン20を冷却するウォータポンプ34を設けてある。ウォータポンプ34は、その回転軸35がカム軸30と一体に回転するように取り付けてあるので、カム軸30が回転するとウォータポンプ34が稼動する。
【0015】
なお、ウォータポンプ34は、回転軸35と共に回転するロータ36の内周に複数のマグネット37を配設すると共に、ステータを構成するハウジング38側にも複数のマグネット39を配設し、ロータ36の回転をアシストするようにしてある。ロータ36とハウジング38が形成する空間は、ロータ36に取り付けたインペラ40により冷却水を加圧する加圧室41である。冷却水は一端側の吸入口42から加圧室41に導入され、他端側の吐出口43からエンジン20に供給される。吐出口43の前段に設けてあるサーモスタット44は、冷却水の温度に応じて冷却水の通流を断続させるもので、シール部材45内のワックス46が膨張すると、シール部材45がバネ47に抗して移動し、冷却水の流路が確保される。
【0016】
モータ21は、クランク軸22を軸支するクランクケース48の車幅方向の一端に連結してあるステータケース49内に形成されている。このモータ21は、アウターロータ型のモータであり、そのステータは、ステータケース49に固定されたティース50に導線を巻き掛けたコイル51からなる。一方、ロータ52は、クランク軸22に固定されており、ステータの外周を覆う略円筒形状を有する。ロータ52の内周面にはマグネット53を配設してある。また、ロータ52にはモータ21を冷却するファン54が取り付けられている。このファン54がクランク軸22の回転に伴って回転すると、ステータケース49のカバー55の側面55aに形成された冷却風取入口から冷却用の空気を取り入れることができる。
【0017】
このモータ21は、エンジン20を始動させる際や、エンジン20の出力をアシストする際に発動機として機能する他に、クランク軸22の回転を電気エネルギに変換し、図2には不図示のストレージ電池に充電する充電器(ジェネレータ)としても機能する。モータ21を制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号や、回生時の電力は、端子56から入出力する。なお、このモータ21は、後に詳細を説明するように、この種の一般的なハイブリッド車両が有するモータに比べて最大出力が小さいモータを用いている。
【0018】
また、ステータケース49にはロータ52の回転数を検出するロータセンサ57が取り付けられている。このロータセンサ57は、ロータ52が回転したときに周期的なパルス信号を出力する構成を有し、ロータ52にはパルス信号を出力させるための突起が回転方向に沿って周期的に形成されている。ロータ52はモータ21の稼動状態に係わらずクランク軸22と共に回転するので、ロータセンサ57を用いるとクランク軸22、すなわちエンジン回転数Neを検出することができる。
【0019】
クランク軸22の回転を後輪WRに伝達する役割を担う無段変速機23は、クランクケース48から突出するクランク軸22の他端に連結された駆動側伝動プーリ58と、クランク軸22と平行な軸線を持って変速機ケース59に軸支された従動軸60に遠心クラッチ61を介して装着してある従動側伝動プーリ62との間に無端状のVベルト63を巻き掛けたベルト式の無段変速機である。
【0020】
駆動側伝動プーリ58は、クランク軸22に固着した固定プーリ半体58aと、遠心機構58bによりクランク軸22の軸方向に摺動可能な可動プーリ半体58cとを有し、対向する固定プーリ半体58aおよび可動プーリ半体58cが形成する溝に無端状のVベルト63を挿入してある。
一方、従動側伝動プーリ62は、従動軸60に回転自在に取り付けた固定プーリ半体62aと、スプリング64で固定プーリ半体62aに向けて付勢した可動プーリ半体62bとからなり、固定プーリ半体62aと可動プーリ半体62bとが形成する溝にVベルト63を挿入してある。
【0021】
なお、クランク軸22の回転速度が増大すると、駆動側伝動プーリ58において遠心機構58bの遠心ウエイトに遠心力が可動プーリ半体58cを固定プーリ半体58a側に摺動させる。可動プーリ半体58cが摺動した分だけ固定プーリ半体58aに近接して駆動側伝動プーリ58の溝幅が減少するので、駆動側伝動プーリ58とVベルト63との接触位置が駆動側伝動プーリ58の半径方向外側にずれ、Vベルト63の巻き掛け径が増大する。また、これに伴い、従動側伝動プーリ62の固定プーリ半体62aおよび可動プーリ半体62bが形成する溝幅が増加する。このように、クランク軸22の回転数に応じて連続的にVベルト63の巻き掛け径を変化させることで、無段変速機23は、クランク軸22の回転に応じて変速比を自動的に、かつ無段階に変化させる。
【0022】
また、無段変速機23の変速機ケース59にはキックペダルに連結されたキック軸66と、キックペダルの踏み込み操作に応じたキック軸66の回動をクランク軸22に伝達するキック式始動装置67とが配設される。
【0023】
さらに、無段変速機23と後輪WRの車軸68との間には減速ギヤ列69を介在させている。減速ギヤ列69は、変速機ケース59の後端に連なる伝達室70内のギヤ71,72を有し、従動軸60の回転を、これと平行に軸支された車軸68に伝える。
【0024】
このようなエンジン20およびモータ21は、図3の模式的なブロック図に示す制御ユニット7により制御する。制御ユニット7は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有する制御手段である。制御ユニット7は、スロットルバルブの開度を検出するスロットルバルブセンサ8や、車速センサ9、ロータセンサ57などの情報を受けて、モータ21を回転させるドライバ回路や、エンジン20の点火プラグ29(図2参照)を作動させる点火装置73に所定の制御信号を出力する。この実施形態において制御ユニット7は、エンジン回転数Neをパラメータとしてモータ21の制御を行う。具体的には、所定の回転数まではエンジン回転数Neの増加に対応してモータ21の出力を増加させ、所定の回転数を超えたらエンジン回転数Neの増加に対応してモータ21の出力を減少させる。
【0025】
ここで、ストレージ電池74は、放電によりモータ21に電力を供給する電力供給手段であり、例えば、ニッケル水素電池から構成される。このストレージ電池74への充電はモータ21で発電させた回生エネルギを利用することができる。さらに、このハイブリッド車両は外部充電器75からもストレージ電池74に充電できる。モータ21で発生させる回生エネルギだけではストレージ電池74に充分に蓄電できない場合には、この外部充電器75を用い、家庭用のコンセントなどから電気エネルギをストレージ電池74に充電する。なお、外部充電器75は、ハイブリッド車両の構成要素であっても良いし、必要に応じてハイブリッド車両に着脱される別体の装置でも良い。
【0026】
次に、制御ユニット7により行われるエンジン20とモータ21の制御について図4を用いて説明する。なお、図4において横軸はエンジン回転数Ne(rpm)であり、縦軸はクランク軸22の軸出力(kW)および軸トルク(N・m)である。また、ラインLM1はモータ出力PMを示し、ラインLM2はモータ21の出力トルクTMを示す。ラインLE1はエンジン出力PEを示し、ラインLE2はエンジン20の出力トルクTEを示す。そして、ラインLC1はエンジン出力PEとモータ出力PMの合成出力PCを示す。
【0027】
図4のラインLE1に示すように、エンジン出力PEは、アイドル状態の低回転数N0(例えば、3000rpm〜4000rpm)からエンジン回転数Neの増加に伴って漸増する。そして、エンジン回転数Neが第一のエンジン回転数N1を越えて、第二の回転数N2(例えば、7500rpm〜8500rpm)に達すると最大出力PEmになる。エンジン20の出力トルクTEは、ラインLE2に示すように、第二の回転数N2よりも少ないエンジン回転数Neで極大値を迎える。なお、このエンジン20は、気筒休止を行わない。
【0028】
また、ラインLM1に示すように、モータ出力PMは、エンジン回転数Neが低回転数N0から第一の回転数N1に達するまではエンジン回転数Neの増加に従って漸増し、第一の回転数N1を超えると漸減に転ずる。モータ21の出力トルクTMは、第一の回転数N1までは変化量が少ないが、第一の回転数N1を超えると漸減する。そして、モータ出力PMおよびトルク出力TMは、エンジン回転数Neが第二の回転数N2に達する前にゼロになる。
【0029】
エンジン出力PEをモータ出力PMでアシストすると得られる合成出力PCは、ラインLC1に示すように、低回転数N0から第一の回転数N1に至るまでは、エンジン回転数Neと共に増加する。第一の回転数N1を越えて第二の回転数N2に至る間は、エンジン出力PEは増加するのに対して、モータ出力PMはエンジン回転数Neの増加に反比例して漸減する。したがって、合成出力PCの増加量は小さくなるか、ほとんど増加しなくなる。そして、エンジン出力PEが最大出力PEmとなる第二の回転数N2に至る前にモータ出力PMがゼロになるので、合成出力PCはエンジン20の最大出力PEmを超えることはない。
【0030】
制御ユニット7におけるモータ出力PMの設定処理は、例えば、エンジン回転数Neに所定の係数を乗じることがあげられる。この場合の係数は、第一の回転数N1以下の領域で使用する漸増用の係数と、第一の回転数N1を超える領域で使用する漸減用の係数を制御ユニット7のROMなどに格納しておく。制御ユニット7は、エンジン回転数NeをアドレスとしてROMを検索して必要な係数を取得する。ここにおいて、漸減用の係数は、第一の回転数N1以上のエンジン回転数Neのときに合成出力がエンジン20の最大出力PEm以下で、かつ最大出力PEmに近似した値になるようにあらかじめ設定された値を有する。
【0031】
また、第一の回転数N1は、搭乗者がスロットルグリップ(不図示)を回してアイドル状態から加速させたときに上昇するエンジン回転数Neに略相当し、例えば、第二の回転数N2の70%から80%までの間に相当するエンジン回転数である。このように設定することで、第一の回転数N1に相当するエンジン回転数Ne以下の回転領域(低回転領域または中回転領域)での加速特性を向上させることができる。また、第一の回転数N1がこれ以上の値になると合成出力がエンジン20の最大出力PEmを超えやすくなるので好ましくない。ここで、図4では、第一の回転数N1におけるモータ出力PMがモータ21の最大出力PMmに相当している。
【0032】
つまり、このハイブリッド車両のモータ21は、低回転領域および中回転領域においてエンジン20に対してアシストを行うのに充分な出力を有すれば良いので、この種の他のハイブリッド車両が有するモータよりも最大出力の小さいモータを用いることができる。これにより、モータ21の小型、軽量化が図れると共に、発動効率や、発電効率を向上できる。
【0033】
モータ21の発動効率や発電効率の具体例について、図5および図6を用いて説明する。図5および図6において横軸はモータの回転数を示し、縦軸は出力電流を示す。また、破線は発動効率曲線であり、二点鎖線は発電効率曲線である。図5には、この実施形態のハイブリッド車両に使用される低出力のモータ21の一例として、最大出力が0.6kWのモータの発動効率(ラインESM1)と、発電効率(ラインESM2)を示してある。これに対して、図6には、比較として、最大出力が3kWのモータにおいて、0.6kWのモータと同じ電流値を入力したときの発動効率(ラインELM1)と、0.6kWのモータと同じ電流を出力されるときの発電効率(ラインELM2)を示してある。
【0034】
図5に示す効率マップにおいて、4000rpmで回転させたときの発動効率はラインESM1と発動効率曲線とから約77%である。また、4000rpmにおける発電効率はラインESM2と発電効率曲線とから約35%である。同様に、6000rpmにおける発動効率は約65%であり、発電効率は約75%である。そして、7000rpmにおける発動効率は約60%で発電効率は約85%である。
【0035】
これに対して、図6に示す効率マップにおいて、4000rpmで回転させたときの発動効率はラインELM1と発動効率曲線とから60%である。また、4000rpmにおける発電効率はラインELM2と発電効率曲線とから約50%以下である。同様に、6000rpmにおける発動効率は約55%であり、発電効率は約53%である。そして、7000rpmにおける発動効率は約40%で発電効率は約60%である。
【0036】
定格出力の小さいモータ(図5参照)と、定格出力の大きいモータ(図6参照)とを比較すると、定格出力の小さいモータの方が、同じ電流を供給してモータを回転させる場合の発動効率が高い。さらに、定格出力の小さいモータの方が、発電により同じ電流値を得ようとする場合の発電効率が高い。つまり、定格出力の小さいモータを使用して、出力の限界に近い領域で使用する方がモータの発動効率および発電効率が高い。特に、定格出力の小さいモータでは、回転数が低い領域においても、発動効率および発電効率として実効的な大きな値が得られる。
【0037】
さらに、上記した定格出力が小さいモータを備えるハイブリッド車両の動作について説明する。
ハイブリッド車両のエンジン20が始動し、走行を開始すると、ロータセンサ57は、ロータ52の回転に伴って発生する周期信号を制御ユニット7に出力し、制御ユニット7はエンジン回転数Neを演算する。制御ユニット7はROMに格納してある第一の回転数N1と比較し、現在のエンジン回転数Neが第一の回転数N1以下であれば、エンジン回転数Neの増加に対応してモータ出力PMを漸増させるようにモータ21にPWM信号を出力する。モータ21はPWM信号に基づいてエンジン20をアシストする。
【0038】
すなわち、クランク軸22の回転に伴って回転するカム軸30によりバルブが開閉し、エンジン20の燃焼室20aに混合気が吸引されると、制御ユニット7が所定タイミングで点火装置73に制御信号を出力し、燃焼室20a内の混合気を燃焼させる。燃焼によってシリンダ27内を摺動させられるピストン25の直線運動はクランク軸22の回転運動に変換される。その一方で、制御ユニット7は、ストレージ電池74から端子56を介して電力をコイル51に供給させ、ロータ52の回転によりクランク軸22の回転をアシストさせる。モータ21によりアシストされたクランク軸22の回転は、無段変速機23および減速ギヤ列69を介して車軸68に伝達され、後輪WRを回転させる。このときのハイブリッド車両の出力は、図4のラインLC1に示す合成出力PCとなる。
【0039】
そして、搭乗者がスロットルグリップを開いてエンジン回転数Neが増加し、ロータセンサ57で検出するエンジン回転数Neが第一の回転数N1を超えたら、制御ユニット7は、エンジン回転数Neの増加に対応してモータ出力PMを漸減させるようにモータ21にPWM信号を出力する。モータ21はPWM信号に基づいてエンジン20をアシストする。この場合には、エンジン回転数Neが増加するにしたがってモータ出力PMは漸減し、合成出力PCの変化量は第一の回転数N1以下の領域に比べて小さくなる。そして、エンジン回転数Neが第二の回転数N2に達すると、制御ユニット7から出力されるモータ21の出力指令値はゼロになり、モータ21は発動を停止する。これ以上のエンジン回転数Neではハイブリッド車両はエンジン20の出力のみで走行することになる。
【0040】
このように、このハイブリッド車両は、最大出力PMmを抑えたモータ21を使用し、制御ユニット7は合成出力PCがエンジン20の最大出力PEmを超えないようにモータ21を制御するので、ハイブリッド車両の最大出力を適正な値に維持することができる。また、定格出力の大きいモータが不要になるので、車体フレーム10や、ブレーキなどの足回りを強化する必要がなくなり、重量増加を抑制することができる。したがって、従来から使用していた車体フレームの流用などが可能になるので設計コストや、製造コストが削減できるし、車体の軽量化や、配置スペースの効率化が図れる。さらに、このようなモータ21は、定格出力が大きいモータに比べて発動効率と発電効率が高いので燃費を向上できる。
【0041】
さらに、モータ21は、エンジン20の低速度領域(低回転領域)および中速度領域(中回転領域)においてエンジン20の出力をアシストするようにしたので、スロットルグリップの操作量が少なくても高い加速性能が得られ、目標速度までの到達時間を短縮化することができる。ここで、制御ユニット7が、モータ21による発電、つまり回生を第一の回転数N1以上の高速度領域における制動時に行わせると、燃費をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、ハイブリッド車両は、図1に示す2輪車の他に、3輪車や4輪車でも良い。
制御ユニット7は、実際のエンジン出力とエンジンの最大出力の偏差を演算し、この偏差量をゼロにするようにモータ21の出力を制御しても良い。また、制御ユニット7は、エンジン出力PEに所定の係数を乗算してモータ21の目標出力を演算しても良い。この場合には第一の回転数N1以下の漸増用の係数と、第一の回転数N1を超えた場合の漸減用の係数とを制御ユニット7のROMに格納しておくことが望ましい。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の請求項1によれば、エンジンの最大出力を超えないようにモータでエンジンをアシストさせるので、定格出力の小さいモータを用いることができる。これにより、車体の軽量化や、配置スペースの効率化が図れると共に、モータの発動効率および発電効率を向上できるので、低燃費化が図れる。制御手段は合成出力が最大出力を超えない限度において大きな出力となるようにモータを制御するので、定格出力の小さいモータを用いることができる。これにより、車体の軽量化や、配置スペースの効率化が図れる。エンジンの回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%に達するまでは、前記モータ出力をエンジン回転数に対応して上昇させると共に、前記エンジン回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%を越えて増加するときには、前記エンジン回転数の上昇と反比例してモータ出力を漸減させるので、低速度や中速度における加速特性が向上し、応答性が向上する。その一方で、モータによるアシスト力が過大になることを防止でき、車体の軽量化や、配置スペースの効率化が図れる。
請求項2によれば、合成出力がエンジン最大出力を超えることがなくなる。
請求項3又は請求項4によれば、モータの小型化が図れ、効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態におけるハイブリッド車両の側面透視図である。
【図2】 ハイブリッド車両のパワーユニットの平断面図である。
【図3】 ハイブリッド車両のブロック図である。
【図4】 エンジン回転数に対する軸出力および軸トルクを示す図である。
【図5】 定格出力の小さいモータの発動効率および発電効率を示す図である。
【図6】 定格出力の大きいモータの発動効率および発電効率を示す図である。
【符号の説明】
7 制御ユニット(制御手段)
20 エンジン
21 モータ
Ne エンジン回転数
N1 第一の回転数
WR 後輪(駆動輪)
PE エンジン出力
PM モータ出力
PC 合成出力
PEm 最大出力
Claims (4)
- エンジンからのエンジン出力とモータからのモータ出力とを合成して駆動輪に伝達可能な構成を有し、前記エンジンのエンジン回転数に対応させて前記モータ出力を制御する制御手段を備えたハイブリッド車両において、
前記制御手段は、前記エンジン回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%に達するまでは、前記モータ出力をエンジン回転数に対応して上昇させると共に、前記エンジン回転数がエンジン最大出力となる回転数の70〜80%を越えて増加するときには、前記エンジン回転数の上昇と反比例して前記モータ出力を漸減させることにより、前記エンジン出力と前記モータ出力とを合成した合成出力がエンジン最大出力を越えないようにしたことを特徴とするハイブリッド車両。 - 前記制御手段は、前記エンジン出力が最大出力に至る前に前記モータ出力がゼロになるように制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
- 前記制御手段は、前記モータ出力が上昇から漸減に転じるときの回転数におけるモータ出力が前記モータの最大出力に相当するように設定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
- 前記制御手段は、前記エンジンの回転数がエンジンの最大出力となる回転数の70〜80%に到達したときには前記エンジンの回転数に漸減用係数を乗じて前記モータ出力を設定することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
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