JP4093714B2 - 酸性シリカゾルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤注入用材として有用な酸性シリカゾルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
土木工事において、掘削等により崩壊のおそれのある地盤、湧水などにより掘削が困難な地盤などに対して、外部より地盤改良材を注入して地盤を改良する薬液注入工法が汎用されている。
【0003】
現在使用される地盤改良材は種々のものが知られているが水ガラスを主剤とする地盤注入剤が安価であり、ゲルタイムの調節も容易であることから主流を占めている。
【0004】
最近では注入による固化物の強度が高くその耐久性に優れること、注入液が一液でありゲルタイムの調節も容易で取り扱いに便利なこと、また改良すべき地盤の土質の応用範囲が広く、更に地盤改良後の固化物から溶出する異物の種類は限られ環境に与える影響が小さいといった特徴を有する、水ガラスを酸により処理して酸性にして硬化能力を付与させたものを主材とする非アルカリ系シリカゾル地盤改良注入材が多く用いられている。
【0005】
しかし、この非アルカリ系地盤改良注入材に用いられる水ガラス中にはアルカリ金属元素あるいはアルカリ金属塩が多く含まれており、該非アルカリ系地盤改良注入材を用いて得られる固結体の強度が低下したり、長期間のうちに固結体からアルカリあるいは塩が遊離ないし逸脱して固結体が収縮してその耐久性が低下するといった問題がある。
【0006】
このような欠点を改良するために、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液に酸を加えて調製したアルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾルからイオン交換膜電気透析法を用いてアルカリ金属を除去する方法が提案されている(特開平11−61124号公報)。該方法では、電解透析槽と、この槽内部の対向する両端面にそれぞれ配置された一対の陽極および陰極と、これら陽陰電極間の最も陽極側には陰イオン交換膜が、最も陰極側には陽イオン交換膜がそれぞれ位置して、交互に、かつ複数の区画を形成するように配置された陽および陰イオン交換膜とからなり、これら複数の区画のうち、陽極および陰極の位置する区画に水を填充するとともに、その他の区画にそれぞれ水ガラスと酸とを混合して得られる酸性シリカゾル水溶液(即ちアルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾル)、および水を交互に填充し、かつ陽陰電極間に電流を通電することにより、酸性シリカゾル水溶液中のNa+イオンが陽イオン交換膜を介して隣接する一方の側の区画に填充された水中に該膜を通して透過放出され、かつ酸根が陰イオン交換膜を介して隣接する他方の側の区画に填充された水中に該膜を通して放出され、これにより前記酸性シリカゾル水溶液が脱塩処理されて酸根含有量の少ない酸性水ガラス水溶液を得ている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記方法を実施したところ、透析時間の経過と共にイオン交換膜面にシリカを主成分とするスケールが発生し、電気透析を続けることが出来なくなることが分かった。
【0008】
そこで、本発明は、イオン交換膜電気透析法により酸性シリカゾルを製造する方法において、イオン交換膜面にシリカを主成分とするスケールが発生することを抑制し、長時間安定して電気透析を続けることが可能な方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねてきた。その結果、前記特開平11−61124号公報に記載された方法において塩が濃縮される区画(濃縮室)に供給する液(濃縮液)として水の代わりに酸の水溶液を供給したところスケールの発生が抑制されることがあるという知見を得るに至った。そして、該知見に基づき更に検討を行なったところ、スケールの発生は電気透析中における濃縮室内の濃縮液のpHに大きく影響を受けること、さらにこのときの濃縮液のpHを原料の酸性シリカヒドロゾルのpH以下にした場合には、スケールの発生が有効に抑制され、安定して連続運転を行なうことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、陽極と陰極との間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配置して、陽極側及び陰極側がそれぞれ陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜で仕切られた脱塩室、並びに陽極側及び陰極側がそれぞれ陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜で仕切られた濃縮室を交互に形成した電気透析装置を用い、前記脱塩室にアルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾルを供給して電気透析を行ない、脱塩された酸性シリカゾルを製造する方法において、前記濃縮室内に酸水溶液を供給して該室内の水溶液のpHを前記脱塩室内の上記酸性シリカヒドロゾルのpH以下にすることを特徴とする酸性シリカゾルの製造方法である。
【0011】
本発明の製造方法によれば、長時間連続して安定に電気透析を続けることが出来、酸性シリカゾル効率よく製造することが可能となる。
【0012】
本発明は、理論に拘束されるものではないが、本発明の製造方法においてスケールの発生が抑制されるのは、次のような機構によるものと考えられる。即ち、イオン交換膜電気透析法においてはイオン交換膜の近傍において僅かに水が電気分解され、従来の方法ではこの時発生する水酸化物イオンの影響を受けてシリカコロイドが不安定化してシリカの析出が起こるのに対し、本発明の製造方法では、脱塩室の外側が強い酸性であるため、発生した水酸化物イオンが直ちに中和されて消失するため、シリカの析出が起こりにくくなるものと考えられる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、透析時において濃縮室内の水溶液のpHを脱塩室内の水溶液のpH以下にすること以外は、従来のイオン交換膜電気透析法による、アルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾルから塩を除去する方法と特に変わる点はない。
【0014】
即ち、電気透析装置としては、例えば特開平11−61124号公報に開示されているような、陽極および陰極の間に陽イオン交換膜(以下、CE膜ともいう。)と陰イオン交換膜(以下、AE膜ともいう。)を交互に位置して、陽極側及び陰極側がそれぞれ陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜で仕切られた脱塩室と陽極側及び陰極側がそれぞれ陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜で仕切られた濃縮室とを交互に形成した電気透析装置が何ら制限なく使用できる。
【0015】
また、上記のような装置を構成するのに必要な部材である電極及び各イオン交換膜についても従来の電気透析装置で使用されているものが特に制限はなく使用される。
【0016】
即ち、本発明で使用する陽極及び陰極としては、水電解や食塩電解などの電気化学工業で採用されている電極が制限なく用いられる。例えば、陽極材料としてはニッケル、鉄、鉛、チタン、白金、黒鉛などが、また、陰極材料としてはニッケル、鉄、ステンレススチール、白金、チタンなどが好適に用いられる。
【0017】
本発明で使用する陰イオン交換膜(以下、AE膜ともいう。)は、陰イオン交換基が結合した樹脂からなる陰イオン選択透過性を有する膜であれば特に制限さず公知の陰イオン交換膜が使用できる。陰イオン交換基としては、水溶液中で正の電荷となり得る官能基が特に制限なく採用できる。具体的には、1〜3級アミノ基、ピリジル基、4級アンモニウム塩基、4級ピリジニウム塩基、さらにこれらのイオン交換基が混在したものなどが挙げられる。AE膜としては、重合型、縮合型、均質型、不均質型等の区別無く使用することができ、さらに、補強のために使用する補強材の有無や、イオン交換基が結合する樹脂の材質(通常、炭化水素系樹脂またはフッ素系樹脂が使用されている)も特に制限されない。なお、本発明の製造方法においては、装置メンテナンスの関係上、運転終了後に脱塩室または濃縮室内に水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を通液することがあるため、耐アルカリ性のAE膜を使用することが望ましい。
【0018】
本発明で使用する陽イオン交換膜(以下、CE膜ともいう。)は、陽イオン交換基が結合した樹脂からなる陽イオン選択透過性を有する膜であれば特に制限さず公知の陽イオン交換膜が使用できる。陽イオン交換基としては、水溶液中で負の電荷となり得る官能基が特に制限なく採用できる。具体的には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、さらにこれらのイオン交換基が混在したものなどが挙げられる。CE膜としては、重合型、縮合型、均質型、不均質型等の区別無く使用することができ、さらに、補強のために使用する補強材の有無や、イオン交換基が結合する樹脂の材質(通常、炭化水素系樹脂またはフッ素系樹脂が使用されている)も特に制限されない。なお、本発明の製造方法においては、装置メンテナンスの関係上、運転終了後に脱塩室または濃縮室内に水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を通液することがあるため、耐アルカリ性のCE膜を使用することが望ましい。
【0019】
本発明で使用する電気透析装置においては、互いに対向するように配置された陽極と陰極の間に、AE膜とCE膜とを交互に配置して、陽極側及び陰極側がそれぞれAE膜及びCE膜で仕切られた(すなわち陽極側の隔膜がAE膜であり陰極側の隔膜がCE膜である)脱塩室と、該脱塩室と隣り合うように、陽極側及び陰極側がそれぞれCE膜及びAE膜で仕切られた(すなわち陽極側の隔膜がCE膜であり陰極側の隔膜がAE膜である)濃縮室とが形成されている。以下、本発明で使用する電気透析装置の構成について、図1に示す電気透析装置1を用いて、具体的に説明する。図1に示す電気透析装置1においては、互いに対向するように配置された陽極2と陰極3との間に、陽極側から順にCE膜5とAE膜4とが交互に配列されて、陽極室6、陰極室7、脱塩室8、及び濃縮室9が構成されている。
【0020】
なお、ここで、脱塩室とは、電気透析時において該室に塩の水溶液を供給した場合に塩に由来するアニオンが陽極側のAE膜を透過して拡散すると共に、塩に由来するカチオンが陰極側のCE膜を透過して拡散し、結果として該室内の塩濃度が低下する室を意味する。また、濃縮室とは、同様にして電気透析を行なったときにAE膜及びCE膜からそれぞれ隣接する脱塩室に供給された塩由来のアニオン及びカチオンが各膜を透過して流入し、結果として該室内の塩濃度が増大する室を意味する。
【0021】
図1には、脱塩室および濃縮室がそれぞれ複数形成されたものを示したが、各室の数はそれぞれ1であってもよい。但し、工業的な規模での実施をする場合には、製造効率の観点から、電気透析装置における膜の配列は、陽極−(CE膜−AE膜)n−CE膜−陰極(但し、nはAE膜とCE膜の配列の繰り返し数である。)で示したときにnが5〜200とするのが好適である。特に、各室を形成するための切欠部を中央に有する室枠を介して前記した好適なnの範囲となるように各膜を配列し、両端より締め付ける、いわゆるフィルタープレス型の構造とするのが好適である。
【0022】
なお、各室内には、流路を確保するためのスペーサーや液を均等配流するための配流板が設けられていてもよい。これらスぺーサーや配流板の形状については、特に限定されないが、シリカを主成分とするスケールが発生しにくく、スケールが発生した場合においても容易にこれを除去出来る構造のも、例えばトンネル型構造のものを使用するのが好適である。
【0023】
本発明の製造方法においては、前記の脱塩室に原料としてアルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾルを供給して電気透析を行なう。
【0024】
この時、上記酸性シリカヒドロゾルとしては、アルカリ金属塩を含む酸性コロイダルシリカ水溶液であれば特に限定されず、公知の方法で調製されたものを使用することができる。一般的には、調製の容易さから、一般式xX2O・ySiO2(但し、Xはアルカリ金属を表し、xおよびyはそれぞれX2O及びSiO2のモル数を表す。)で表されるケイ酸アルカリ金属塩の水溶液、特にSiO2濃度が1〜10重量%であり、SiO2/X2Oモル比(すなわち、y/x)が1.5〜5であり、pH12以上の水溶液に鉱酸を混合して得られる、アルカリ金属と鉱酸の酸根との塩を含むpH1.5〜2.5の酸性シリカヒドロゾルを用いるのが一般的である。上記ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液としては、工業的に容易に入手できるという観点から、ケイ酸アルカリ金属塩の水溶液としてはJIS規格3号水ガラス水溶液等を水で希釈したものが好適に使用でき、鉱酸としては硫酸、塩酸、又は硝酸が、特に硫酸が好適に使用できる。
【0025】
本発明の製造方法においては、電気透析を行なう際に、濃縮室内の溶液のpHを脱塩室内の酸性シリカヒドロゾルのpH以下に保つ必要がある。濃縮室内の溶液のpHが原料酸性シリカヒドロゾルのpHより高い場合には、比較的短時間でシリカの析出が起こり、連続して電気透析を行なうことができなくなる。たとえば、濃縮液として水、又は中性の電解質水溶液を供給した場合には、運転時間の経過に比例してシリカを主成分とするスケールがイオン交換膜間に付着し、長期に安定した操業ができない。スケール発生防止効果の観点から、濃縮室内の溶液のpHは、脱塩室内の酸性シリカヒドロゾルのpHより0.05以上、特に0.1以上低いことが好ましい。
【0026】
濃縮液のpHを上記のように調整する方法は特に限定されないが、脱塩液と濃縮液のpHをモニターして濃縮液に酸を添加してもよいが、電気透析時における脱塩室内の溶液(原料酸性シリカヒドロゾル)及び濃縮室内の溶液のpH変化は一般に小さいので、濃縮液として原料酸性シリカヒドロゾルのpH以下、特に該pHより0.1以上低いpHの酸の水溶液を供給することにより好適に行なうことができる。このときに使用する酸は特に制限されないが、原料の酸性シリカヒドロゾルの調整に用いたのと同じ鉱酸を使用するのが好適である。
【0027】
電気透析の方法は、一般的な電気透析法と同様に、陽極室および陰極室にそれぞれ導電性水溶液(電解液)を張り込み、連続的に又はバッチで脱塩室及び濃縮室にそれぞれ原料酸性シリカヒドロゾル及びpH調節された濃縮液を供給して両電極間に電流を印加すればよい。
【0028】
このようにして電気透析を行なうことにより、例えば図1に示す電気透析装置の脱塩室に、水ガラス水溶液に硫酸を加えて調製したアルカリ金属塩として硫酸ナトリウムを含む酸性シリカヒドロゾルを供給し、濃縮室に硫酸水溶液を供給して電気透析を行なった場合には、脱塩室に供給された原料溶液中に存在する硫酸ナトリウム起原のNa+イオンがCE膜を透過して該CE膜を介して隣接する濃縮室に拡散するとともに、同じく硫酸ナトリウム起原のSO2-イオンがAE膜を透過して該AE膜を介して隣接する濃縮室に拡散し、結果として原量酸性シリカヒドロゾル中の塩濃度が低下する。このとき、濃縮室では、両隣の脱塩室から拡散してきたNa+イオンSO2-イオンが閉じ込められ、硫酸ナトリウムの硫酸水溶液が得られる。
【0029】
以下に、上記のような系で酸性シリカゾルを連続的に製造する場合を例に、電気透析条件等を含めてその手順を詳しく説明する。
【0030】
図1に示す電気透析装置1には、前記したように、陽極2と陰極3の間に、陰イオン交換膜4と陽イオン交換膜5とが交互に配列されて、陽極室6、陰極室7、脱塩室8、及び濃縮室9が構成されている。また、各室枠には液供給口および液排出口が設けられ、各液供給口、液排出口は必要に応じて枝管を経由して主管に接続されている。更に、室枠内には、室枠の厚みを均一に維持すると共に、供給された液の流れを均一にするための配流作用を有するスペーサーを設けるのが一般的である。
【0031】
上記脱塩室8には、原料液である酸性シリカヒドロゾルを供給するための原料液供給路10が接続されており、原料液が連続的或いは断続的に供給できるようになっている。また、濃縮室9には濃縮液供給路11を通してpH調節された濃縮液である硫酸水溶液が連続的に供給できるようになっている。また、脱塩室8には脱塩された原料液を連続的又は断続的に抜き出すための生成液抜出し路12が接続されている。さらに、濃縮室には塩濃度が増大した濃縮液を連続的又は断続的に抜き出すための濃縮液抜出し路13が接続されている。また、陽極室2及び陰極室3にはそれぞれ陽極液供給路14および陰極液供給路15、並びに陽極液抜出し路16及び陰極液抜出し路17が接続されており、電解開始時に陽極液及び陰極液としての電解液が供給できるようになっていると共に、運転時においては水、酸水溶液、又はアルカリ水溶液を連続的又は断続的に供給し、酸根又はアルカリ金属濃度が増大した液を抜き出せるようになっている。
【0032】
電気透析を行なうに際しては、先ず陽極室6、陰極室7、脱塩室8、及び濃縮室9にそれぞれ陽極液、陰極液、原料液、及び濃縮液を供給する。次いで、陽極と陰極の間に電圧を印加し、電気透析を開始する。このとき、電気透析時の各種液の温度は、特に限定されないが、スケール発生防止効果をより高くするためには、20℃〜5℃、特に15〜5℃に制御するのが好適である。また、電気透析における電流密度は、特に制限を受けないが、一般には0〜10A/dm2、特に0〜5A/dm2が好適である。電気透析中においては、前記した各流路を利用して、原料液や濃縮液を連続的又は断続的に供給すると共に脱塩された原料液や塩濃度が蔵出した濃縮液を連続的又は断続的に抜き出せばよい。このとき、各イオン交換膜の電気抵抗の上昇を防止するために、各室内の溶液を撹拌しながら電気透析を行うことが好適である。上記撹拌の手段としては、各液を循環させるのが好適であり、そのためには各室の外部に液の種類ごとにタンク(例えば原料液タンク18、及び濃縮液タンク19)を設けて、各々の室と外部タンクとの間でポンプ等を用いて液を循環させるのが好適である。このような方式を採用することにより、生成物の酸性シリカゾルの脱塩状態を制御することも容易になる。
【0033】
なお、上には連続的又は断続的に電気透析を行う態様を示したが、電気透析はバッチで行うことも可能である。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0035】
実施例1
表1に示す仕様のトクヤマ社製の電気透析装置(TS2-10型)を用い、JIS規格3号水ガラス溶液をイオン交換水で希釈した溶液と希硫酸を混合して、SiO2含有量5wt%、pH2に調整した酸性シリカヒドロゾル(該ヒドロゾルには硫酸ナトリウムが60g/l溶解している。)珪酸塩溶液80(l)を28℃まで冷却した後、脱塩室に供給して脱塩処理を行なった。なお、濃縮室には1(mol/l)のNa2SO4水溶液に希硫酸を添加してpH1.5に調整した28℃の溶液を供給した。また、各電極室には1(mol/l)のNa2SO4水溶液を供給した。また、各液は、外部に設けたタンクからポンプを用いて循環供給した。
【0036】
0.5V/対の一定電圧で30時間電気透析を行なったところ、脱塩液組成は表2に示すような変化し、硫酸ナトリウムが減少していることが確認された。また、30時間後の原料液のpHは2.0であり、濃縮液のpHは1.9であった。さらに、運転中は、原料液及び濃縮液の透析槽入口圧力の上昇は全く無く、透析室及びイオン交換膜に沈殿物は全く観察されなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
なお、同一条件で電気透析を更に続けたところ、通算透析時間50時間を経過したときに原料液及び濃縮液の透析槽入口圧力が上昇し始めた。
【0040】
実施例2
実施例1において、循環供給する原料液及び濃縮液を冷却して温度が12℃になるように制御する他は、実施例と同様にして30時間連続して電気透析を行なったと。このときの原料液の組成変化は表2に示したのとほぼ同じであった。また、同一条件で電気透析を更に続け、通算透析時間60時間の電気透析を行なったが、原料液及び濃縮液の透析槽入口の圧力上昇はみられなかった。
【0041】
比較例1
実施例1において、濃縮液として1(mol/l)のNa2SO4水溶液(pH5)を用いる以外は同様にして電気透析を行なったところ、通電27時間後に透析槽入口圧力の上昇し、運転不能となった。透析槽を解体したところ、脱塩室に多量の沈積物が認められた。
【0042】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、イオン交換膜電気透析法により塩を含む酸性シリカヒドロゾルを脱塩して、地盤改良材として好適に使用できる脱塩酸性シリカゾルを製造するに際し、電気透析中にイオン交換膜の表面にシリカを主成分とするスケールが発生するのを有効に抑制することができる。このため、安定して長時間連続して電気透析を行う事が可能になる。
【0043】
したがって、例えば、現場で脱塩酸性シリカゾル製造し、それをそのまま地盤改良材としてその使用する工法において、特に、長期間の工期を有する場合に本発明の製造方法を適用するメリットは大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は、本発明の製造方法で使用できる代表的な電気透析装置の模式図である。
【符号の説明】
1・・・電気透析装置
2・・・陽極
3・・・陰極
4・・・陰イオン交換膜
5・・・陽イオン交換膜
6・・・陽極室
7・・・陰極室
8・・・脱塩室
9・・・濃縮室
10・・原料液供給路
11・・濃縮液供給路
12・・生成液抜出し路
13・・濃縮液抜出し路
14・・陽極液供給路
15・・陰極液供給路
16・・陽極液抜出し路
17・・陰極液抜出し路
18・・原料液タンク
19・・濃縮液タンク
Claims (3)
- 陽極と陰極との間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に配置して、陽極側及び陰極側がそれぞれ陰イオン交換膜及び陽イオン交換膜で仕切られた脱塩室、並びに陽極側及び陰極側がそれぞれ陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜で仕切られた濃縮室を交互に形成した電気透析装置を用い、前記脱塩室にアルカリ金属塩を含む酸性シリカヒドロゾルを供給して電気透析を行ない、脱塩された酸性シリカゾルを製造する方法において、前記濃縮室内に酸水溶液を供給して該室内の水溶液のpHを前記脱塩室内の上記酸性シリカヒドロゾルのpH以下にすることを特徴とする酸性シリカゾルの製造方法。
- 濃縮室内に鉱酸水溶液を供給して該室内の水溶液のpHを脱塩室内の酸性水溶液のpH以下とすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 電気透析中における脱塩室内の液温を20℃以下に保つことを特徴とする請求項2又は3に記載の製造方法。
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