JP4093069B2 - 走行台車における走行用ベルトの張力調整装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、例えば自動倉庫におけるスタッカクレーンのような走行台車を走行駆動させるため、走行軌道に沿って張られた走行用ベルトの張力調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1に示すように、走行軌道1の両端部側面にベルト張力調整機構2が配設され、走行用ベルト3は、そのベルト張力調整機構2に一端が連結された状態で走行軌道1に沿って張られている。走行用ベルト3は、その途中部分を、走行台車4の車体に設けられたモータ等の走行駆動源4bによって回転駆動されるプーリ5等に巻き掛け、プーリ5を回転させることで走行用ベルト3に沿って移動するベルト走行駆動方式の走行台車4が知られている。
【0003】
この種の走行台車4を設置する工事においては、走行台車4の走行駆動系を構成するプーリ5(歯付きプーリ)に走行用ベルト3(歯付きベルト)を巻き掛けた後、走行用ベルト3に適度な張力が付与される状態に固定する必要がある。
【0004】
従来、走行用ベルト3に適度な張力を付与するための張力調整装置として、例えば図6に示すものが知られている。図6は走行用ベルト3の張力調整機構2側を示すものである。走行用ベルト3は歯付きベルトであって、両端には、その歯と噛合する歯をもつ支持板と、平板とよりなるベルトクランプ7A、7Bによって挟持された状態で結合される。ベルトクランプ7A、7Bの端部は、2本のアジャストボルト8の結合部8aと連結しており、この結合部8aは、アジャストボルト8の一端部に軸回転可能に連結されている。
【0005】
アジャストボルト8は、基台9に立設された取付部材10a、10bに螺着され、ナット11を回すことによって取付部材10a、10bに対して走行用ベルト3の長手方向に位置決め可能である。張力調整機構2側の取付部材10a、10bに対するアジャストボルト8の螺着位置を変更し、該ボルト8で走行用ベルト3を引っ張ることで走行用ベルト3の張力が調整される(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−280434号公報(第3−4頁、第1−3図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように走行用ベルト3の両端が固定されていると、温度変化により伸び縮みしたり、長期間使用したときに走行用ベルト3が伸びたりしてベルトの張力が変化する。そこで、走行用ベルト3の張力を調整できるようにベルトの一端側に張力調整機構2が形成されているのであるが、ベルト走行駆動方式の走行台車4では、走行用ベルト3の張力調整に加え走行用ベルト3側とプーリ5側の歯が平行に噛み合うことが、耐久性、騒音低減の観点から重要である。そのためには、走行用ベルト3に与える張力が、ベルト幅方向で均一となるようにして走行用ベルト3に捩れが生じないようにすることが必要である。
【0008】
しかしながら、2本のアジャストボルト8で走行用ベルト3端のベルトクランプ7を引っ張ることでベルトの捩れを抑止し、それぞれのアジャストボルト8の螺着位置を調整してベルト張力がベルト幅方向で均一となるように調整していたが、2本のアジャストボルト8の引張力を揃えないと、ベルトクランプ7にアジャストボルト8同士の引張力の差によるモーメントが発生して、ベルト張力がベルト幅方向で不均一になり、走行用ベルト3に捩れが生じる可能性があり調整に手間がかかる。
【0009】
また、走行用ベルト3の張力調整は、ベルトの張り具合を人間の勘に頼って調整していたので、調整作業に熟練が必要であり、誰でも簡単に、かつ最適な状態に張力を調整できるものではなかった。
【0010】
この発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、走行用ベルト3の張力調整作業を簡易に、かつベルト張力がベルト幅方向で均一となるように正確に調整できるようにすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、走行台車を駆動するために走行軌道に沿って張られた走行用ベルトの張力を調整する走行台車における走行用ベルトの張力調整装置において、走行軌道の端部にあって、床面に固定された基台から立設する取付部材に嵌挿されて一端が走行用ベルト側へ延在する連結部材と、該連結部材の他端側にあって走行用ベルトの張力を調整する調整部材とを備えた張力調整機構を有し、前記連結部材は、アジャストボルト部とそのアジャストボルト部の一端に連結されるベルトジョイント部とよりなり、前記連結部材のアジャストボルト部は、前記走行用ベルトの長手方向略中心線と並列に複数本よりなり、各アジャストボルト部の一端は前記ベルトジョイント部と連結し、ベルトジョイント部および走行用ベルト端部には、前記走行用ベルトの長手方向略中心線上位置にそれぞれ貫通孔を形成し、両部材を前記枢着ピンにて結合していることを特徴とすることを要旨とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、張力調整機構の引張力を支持する連結部材と走行用ベルトの一端部とを分離して、両部材を、モーメントを伝えない単数の枢着ピンにて相互回動自由に連結保持しているため、張力調整部材により連結部材を引き寄せた際、連結部材の引張モーメントが走行用ベルトの長手方向中心線と異なる方向にあってもそのモーメントは、走行用ベルトとの枢着ピン部分の回動で逃げ、走行用ベルトには長手方向中心線上の引張力のみが伝達される。その結果、走行用ベルトにはその幅方向に均一な張力を与えることができる。
【0013】
複数本のアジャストボルト部による引張力を支持するベルトジョイント部と走行用ベルトの一端部とを分離して、両部材を単数の枢着ピンにて相互回転自由に連結保持しているため、張力調整部材によりアジャストボルト部を引き寄せた際、アジャストボルト部によるベルトジョイント部に対する引張力に差が生じても(ベルトジョイント部の左右端側に作用する引張力に差が生じても)、そのモーメントは、走行用ベルトとの枢着ピン部分の回動で逃げ、走行用ベルトには長手方向中心線上の引張力のみが伝達される。その結果、走行用ベルトにはその幅方向に均一な張力のみが伝達される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を自動倉庫システムのスタッカクレーンにおける走行用ベルトに適用した場合について図1〜図4に基づいて詳述する。
生産ライン等からコンベアにより搬送されてくる荷を倉庫の棚に自動的に収納し、また棚に収納されている荷を自動的に出庫するための自動倉庫システムは、荷を収納する複数の収納部を有する棚が対向配置され、その棚の間の走行軌道1(走行路)を走行台車(スタッカクレーン)4が移動し、荷を出し入れするように構成されている。
【0015】
走行台車4の車体は、荷物を載せて昇降するキャリッジ12を支持するマスト部4aと、該マスト部4a下端に一体形成されて前記走行軌道1に沿ってローラ駆動される走行部4cとより構成されている。該走行部4cには、走行駆動源4bが設置されており、走行駆動源4bにより正逆回転されるプーリ5に、走行軌道1の側面に沿って張られた走行用ベルト3の途中部分を巻き掛け、走行駆動源4bを駆動してプーリ5を回転させることで走行台車4は走行軌道1上を走行用ベルト3に沿って移動する。
【0016】
走行用ベルト3は歯付きベルトであって、その両端は、その歯と噛合する歯をもつ支持板7aと、平板7bとよりなるベルトクランプ7A、7Bの一端部によって挟持された状態で結合される。この走行用ベルト3一端側のベルトクランプ7Aは、走行軌道1の一端側における側面に配設された走行用ベルト3の張力調整機構20と連結しており、走行用ベルト3他端側のベルトクランプ7Bは、走行軌道1の他端側における側面に配設された走行用ベルト3の固定機構6と連結している。
【0017】
次に、走行用ベルト3の張力調整機構20の構造について図2、3を用いて説明する。張力調整機構20の基台9は床面にボルト等によって固定されており、基台9の上面には2個の取付部材10a、10bが前後に間隔をもって立設されている。各取付部材10a、10bには、走行用ベルト3の長手方向略中心線と並列にそれぞれ複数個(本実施態様ではそれぞれ2個)の貫通孔15a、15bが形成され、前後の貫通孔15a、15bには、後述する連結部材13を構成するアジャストボルト部13aが挿通されている。
【0018】
前後の取付部材10a、10bにより走行用ベルト3の長手方向略中心線と並列して支持される前記連結部材13は、アジャストボルト部13aとベルトジョイント部13cとより構成されており、アジャストボルト部13aは、取付部材10a側のナット11および取付部材10b側の弾性部材16a、ナット16bよりなる調整部材28をそれぞれ回すことによって取付部材10a、10bに対するアジャストボルト部13aの螺着位置を変更し、前後方向(走行用ベルト3の長手方向)の位置決め調整(張力調整)すなわち走行用ベルト3を引っ張ることで走行用ベルト3の張力調整が行なわれる。
【0019】
アジャストボルト部13aの前端(走行用ベルト3側)には、該アジャストボルト部13aと軸回転可能に連結された結合部13bを介して板状のベルトジョイント部13cがピン13d結合されている。ベルトジョイント部13cの前端側における走行用ベルト3の長手方向略中心線上には、単数個の貫通孔14aが穿設されており、ベルトジョイント部13cの前端を、前記ベルトクランプ7Aの後端部に嵌合して、この貫通孔14aと、ベルトクランプ7Aの後端部における走行用ベルト3の長手方向略中心線上に穿設された貫通孔14bとを合致させて、1本の枢着ピン14を介して軸回転可能に遊嵌合連結する。
【0020】
次に、走行用ベルト3の固定機構6について図4を参照して説明する。固定機構6の基台17は、床面にボルト等によって固定されており、基台17の上面には2個の取付部材27a、27bが前後に間隔をもって立設されている。各取付部材27a、27bには、走行用ベルト3の長手方向略中心線と並列にそれぞれ複数個(本実施態様ではそれぞれ2個)の貫通孔21a、21bが形成され、前後の貫通孔21a、21bには、アジャストボルト部18aが挿通されている。
【0021】
前後の取付部材10a、10bにより走行用ベルト3の長手方向略中心線と並列して支持される前記アジャストボルト部18aは、取付部材27b側のナット19をそれぞれ回すことによって取付部材27a、27bに対するアジャストボルト部18aの螺着位置を変更し、前後方向(走行用ベルト3の長手方向)の位置決めが行なわれる。
【0022】
アジャストボルト部18aの前端(走行用ベルト3側)には、アジャストボルト部18aと軸回転可能に連結されたベルトジョイント部18cが取付けられており、各ベルトジョイント部18cの前端側は、走行用ベルト3端部のベルトクランプ7Bにおける走行用ベルト3の長手方向略中心線上を挟んで左右端側とピン22結合している。
【0023】
以上のような構成の張力調整装置を用いて走行用ベルト3の張力を調整するときの手順を説明する。最初に、固定機構6側の各ベルトジョイント部18cと、走行用ベルト3端部のベルトクランプ7Bとをピン22により結合し、ナット19を回して各アジャストボルト部18aの位置決め固定する。
【0024】
その後、張力調整機構20側の連結部材13を構成するベルトジョイント部13cと走行用ベルト3端部のベルトクランプ7Aとを走行用ベルト3の長手方向略中心線上において枢着ピン14を介して軸回転可能に連結する。次いで、調整部材28の弾性部材16aとナット16bによりアジャストボルト部13aを大きく移動させて走行用ベルト3を引き寄せ、走行用ベルト3の一次張力調整作業をする。
【0025】
次に、二次張力調整作業として、調整部材28のナット11を締め付けて各アジャストボルト部13aの位置を微小変化させることにより、走行用ベルト3に所望の張力を付与して張力を調整し、引張力を設定する事ができる。
この場合、各アジャストボルト部13aによるベルトジョイント部13cに対する引張力に差が生じ、ベルトジョイント部13cに作用する引張モーメントが走行用ベルトの長手方向中心線と異なる方向にあってベルトジョイント部13cが前後方向に傾動しても、そのモーメントは、ベルトクランプ7Aとの枢着ピン14の回転で逃げ、ベルトクランプ7Aには、該枢着ピン14を経由して長手方向中心線上の引張力のみが伝達される。
その結果、各アジャストボルト部13aによるベルトジョイント部13cに対する引張力に差があっても、走行用ベルト3にはその幅方向に均一な張力が与えられる。
【0026】
以上詳述したようにこの実施形態によれば以下の効果が得られる。
走行用ベルト3は、2本のアジャストボルト部13aにより保持されているため走行用ベルト3の捩れが抑止される。また張力調整機構20の引張力を支持するベルトジョイント部13cと走行用ベルト3のベルトクランプ7Aとは分離して、両部材13c、7Aを、モーメントを伝えない1本の枢着ピン14にて相互回動可能に連結保持されているため、アジャストボルト部13aによるベルトジョイント部13cに対する引張力の差によって発生するモーメントは、枢着ピン14との回動によつて吸収され、ベルトクランプ7Aには、走行用ベルト3の長手方向中心線上の引張力のみが作用して走行用ベルト3の幅方向に均一な張力が加わり、捩れのない走行用ベルト3の張設が可能となった。
【0027】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば次の様に変更してもよい。
○走行用ベルトの固定機構6の構成を、張力調整機構20と同じ構成にして走行用ベルト3の両端から張力調整を行ってもよい。
○連結部材13を構成する結合部13bは必ずしも必要とするものではなく、アジャストボルト部13aとベルトジョイント部13cとを一体結合してもよい。
○走行用ベルト3の両端に一体形成されたベルトクランプ7A、7Bを省略してベルト端部とベルトジョイント部13cとを長手方向中心線上において枢着ピン14を介して直接連結してもよい。
【0028】
○実施形態では、張力調整機構20の連結部材13を構成するアジャストボルト部13aは2本に限定されず3本であってもよい。
【0029】
【発明の効果】
張力調整機構の引張力を支持する連結部材と走行用ベルトの一端部とを分離して、両部材を、モーメントを伝えない単数の枢着ピンにて相互回動可能に連結保持しているため、張力調整部材により連結部材を引き寄せた際、連結部材の張力に差があっても、その張力に差によって発生するモーメントは吸収され、走行用ベルトには引張力のみが作用し、該ベルトはその幅方向に均一な張力で引っ張られてベルト捩れが抑止されるとともにベルト張力調整作業は、熟練を要しなくても誰もが容易にかつ最適な状態に張力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る走行台車における走行用ベルトの張力調整装置の概略斜視図。
【図2】同実施形態における走行用ベルトの張力調整機構側を示す平面図。
【図3】同実施形態における走行用ベルトの張力調整機構側を示す側面図。
【図4】同実施形態における走行用ベルトの固定機構側を示す平面図。
【図5】従来の走行用ベルトの張力調整機構側を示す平面図。
【符号の説明】
1 走行軌道
3 走行用ベルト
4 走行台車
10a、10b 取付部材
13 連結部材
13a アジャストボルト部
13c ベルトジョイント部
14 枢着ピン
14a、14b 貫通孔
20 張力調整機構
23 連結部材
23a アジャストボルト部
23c ベルトジョイント部
24a 貫通孔
25 規制部材
28 調整部材
Claims (1)
- 走行台車を駆動するために走行軌道に沿って張られた走行用ベルトの張力を調整する走行台車における走行用ベルトの張力調整装置において、走行軌道の端部にあって、床面に固定された基台から立設する取付部材に嵌挿されて一端が走行用ベルト側へ延在する連結部材と、該連結部材の他端側にあって走行用ベルトの張力を調整する調整部材とを備えた張力調整機構を有し、前記連結部材は、アジャストボルト部とそのアジャストボルト部の一端に連結されるベルトジョイント部とよりなり、前記連結部材のアジャストボルト部は、前記走行用ベルトの長手方向略中心線と並列に複数本よりなり、各アジャストボルト部の一端は前記ベルトジョイント部と連結し、ベルトジョイント部および走行用ベルト端部には、前記走行用ベルトの長手方向略中心線上位置にそれぞれ貫通孔を形成し、両部材を前記枢着ピンにて結合していることを特徴とする走行台車における走行用ベルトの張力調整装置。
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