JP4092756B2 - 熱可塑性炭化水素重合体製インシュレーターおよびコネクター - Google Patents

熱可塑性炭化水素重合体製インシュレーターおよびコネクター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波特性に優れたコネクター用インシュレーター、およびそれを用いた高周波コネクターに関し、さらに詳しくは接続部位での反射波の発生が少なく、耐屈曲性に優れたインシュレーターおよびそれを用いた高周波コネクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
衛星放送、衛星通信、ハイビジョン・テレビ放送、携帯電話などの普及によって、電波による高密度の情報の送受信が広く行われるようになり、また、使用周波数の高周波数化が進んでいる。高周波の定義についても、従来は、短波であるHF帯域の3MHz以上のものであったが、超短波であるVHF帯域の30MHz以上のもの、極超短波であるUHF帯域の300MHz以上のもの、さらには準マイクロ波帯域である1〜3GHz以上のものを意味するというように、徐々により高周波数のものへと変化しており、単に高周波といっても、どのような波長のものを意味しているのか必ずしも判然としなくなっている。
【0003】
いずれの高周波の範囲でも、伝送ロスを軽減するために、インシュレーターに使用する材料としては、誘電率と誘電正接、特に誘電正接の小さなものが好ましい。これらが大きいと高周波として与えられたエネルギーの一部が物質内部で分子内摩擦をおこし、熱として損失することになる。誘電率と誘電正接の小さな樹脂としては、ポリ四フッ化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリメチルペンテンなどがあり、これらの樹脂が高周波帯用インシュレーターに用いられている。また、近年、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を用いることが提案されている。
【0004】
すなわち、コネクター用のインシュレーターとしては、従来、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、ポリメチルペンテンから成形されたものが実用に供されている。これらの樹脂は射出成形が可能であり、1MHz〜10GHzの範囲における誘電正接が0.0003以下と小さく、また、誘電率も2.20以下と小さい。しかし、1GHz以上の周波数では、これらの樹脂から製造したインシュレーターではその電圧定在波比の値を1.40以下にすることは困難である。
【0005】
また、実用に供されているポリ四フッ化エチレンを用いたインシュレーターの場合は、1MHz〜10GHzの範囲における誘電正接が0.0004以下と小さく、また、誘電率も2.10以下と小さい。さらに、この周波数における電圧定在波比が1.20以下のインシュレーターをこの樹脂から得ることができる。しかし、この樹脂は射出成形することができず、切削により成形するため、量産が困難であるという問題があった。
【0006】
一方、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は射出成形が可能であり、1MHz〜10GHzにおける誘電正接が0.0004以下と小さく、また、誘電率も2.25以下と小さく、さらに電圧定在波比の値が1.20以下であり、接続部位で入力するエネルギーの反射が小さな高周波コネクター用インシュレーターの成形材料として好適である(特開平8−26930号公報、特開平8−213113号公報)。しかしながら、携帯機器としての使用、屋外での使用など、インシュレーターに対する使用条件は厳しくなりつつあり、従来から知られた熱可塑性ノルボルネン系樹脂からなるインシュレーターは、このように厳しい使用条件下では機械的強度や柔軟性に不足することがあり、ますます高度化する要求に耐えられない場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者の目的は、射出成形などにより容易に成形でき、1.4GHz以上の高周波領域において、誘電正接および誘電率が小さく、さらに、接続部位で入力するエネルギーの反射が小さく、機械的強度や柔軟性に優れた高周波コネクター用インシュレーターを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定のノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物と、特定のエラストマーを含有する組成物を成形材料として用いることにより、目的とする高周波コネクター用インシュレーターが得られることを見い出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
かくして、本発明によれば、2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物、および芳香族ビニル単量体と共役ジエン系単量体とのブロック共重合体の水素化物を含有してなる樹脂組成物を成形してなる、1KHz〜20GHzの範囲における誘電正接が0.0015以下である高周波コネクター用インシュレーターが提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、1.4GHz以上の高周波の伝達に用いるコネクターであって、上記樹脂組成物を成形してなる、上記のように誘電正接が小さいインシュレーターを具えてなる高周波コネクターが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
熱可塑性炭化水素重合体
本発明で成形材料として使用される熱可塑性炭化水素重合体は、繰返し単位中に単環または2環の脂環構造、すなわち、飽和または不飽和脂肪族炭化水素からなる単環または2環の環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体である。この脂環構造は、置換基として芳香族炭化水素環をもっていてもよい。そのような熱可塑性炭化水素重合体としては、(i)2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体またはその水素化物;(ii)ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの付加重合体またはその水素化物;(iii )繰返し単位の一部または全部が、1,4−結合および/または1,2−結合により連結される炭素−炭素5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体およびその水素化物;ならびに(iV)ビニル基含有環状炭化水素系単量体を重合してなる重合体の水素化物などが挙げられる。これらの熱可塑性重合体の中でも、誘電正接と誘電率が高度にバランスし、機械強度に優れることから、2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物が好ましい。
【0012】
(i)2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体またはその水素化物
本発明のコネクターの成形材料として好ましく用いられる2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物の分子量は、格別限定されないが、シクロヘキサン溶液(ノルボルネン系開環重合体の水素化物が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリイソプレン換算の数平均分子量(Mn)として通常3,000〜200,000、好ましくは5,000〜100,000の範囲である。分子量がこの範囲にある時に耐衝撃性などの機械的強度や成形加工性に優れるので好適である。
【0013】
本発明で用いられる2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物は、そのシクロヘキサンを溶媒とするGPCにより測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常1.5〜5.0、好ましくは1.7〜4.0、より好ましくは,1.8〜3.0の範囲である。
【0014】
上記2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物のガラス転移温度(Tg)は、適宜選択されればよいが、耐熱性の面から高い方が好ましく、また適正な範囲を越えて高過ぎると、樹脂が硬質なものとなり耐衝撃性などの機械強度が低下することから、適切な温度範囲にあることが好ましい。Tgは、通常50〜150℃以上、好ましくは60〜130℃である。
【0015】
一般に2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物は、副生物としてノルボルネン類の環状オリゴマー、特にシス構造を有する7量体を少量含む。そのような環状オリゴマーが含まれると機械的強度などの特性が低下するので、本発明で用いられる2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物は、そのような環状オリゴマーの含有量が少ないほうが好ましく、通常10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2%以下である。オリゴマー含有率が低いと、機械的強度に優れるのみならず、ペレットを射出成形または押出成形する際にホッパー下でブリッジが起きてペレットが詰まることがなく、従って成形作業性がよい。しかしながら、上記オリゴマーが極少量含まれると適度の柔軟性が付与される。すなわち、上記オリゴマーが0.2重量%以上含まれると、良好で、かつバランスした柔軟性、成形加工性および機械的強度が得られる。
【0016】
上記2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体およびその水素化物は、実質的にゲル分を含まないことが望ましい。ゲル分の含有量は、重合体溶液の濾過速度の大小により判定することができる。開環重合体を濃度5重量%のシクロヘキサン溶液とし、この溶液を孔径0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルター(47mmφ)で、0.2kgf/cm2 の窒素加圧で濾過した場合、40g/min以上、好ましくは70g/min以上、より好ましくは80g/min以上の濾過速度で濾過することができ、これにより、実質的にゲル分を含まないことがわかる。ノルボルネン系開環重合体は、ゲル分が少ないほど(前記の濾過速度が速いほど)、高品質であり、異物を取り除くことが容易であり、また、水素添加効率が良いので好ましい。
【0017】
2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物は、具体的には以下のように調製することができる。
【0018】
〈単量体〉
上記開環重合体の製造に用いられる2環体のノルボルネン類は、置換または非置換の非環状オレフィン類または非環状ジエン類とシクロペンタジエンの付加物であり、その具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどのノルボルネン誘導体、およびこれらのノルボルネン誘導体のハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基などの極性基により置換された置換体(例えば、5−メトキシ−カルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなど)を挙げることもできる。これらの中でも、誘電正接と誘電率が高度にバランスすることから、極性基を持たないノルボルネン誘導体が好ましい。
【0019】
上記開環重合体の調製に用いられる3環体のノルボルネン類は、置換または非置換の環状オレフィン類または環状ジエン類とシクロペンタジエンの付加物であり、シクロペンタジエンの2量体であるトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、その部分水素添加物(またはシクロペンタジエンとシクロペンテンの付加物)であるトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;シクロペンタジエンとシクロヘキサジエンの付加物であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエンもしくはトリシクロ[4.4.0.12,5.]ウンデカ−3,8−ジエンまたはこれらの部分水素添加物(またはシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;シクロペンタジエンと脂環基または芳香環基を有するビニル化合物との付加物である5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの3環体のノルボルネン類などを挙げることができる。さらに、これらのノルボルネン類のハロゲン、水酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基などの極性基により置換された置換体(例えば、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルプロピオネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル−2−メチルオクタネイト、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−i−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどの酸素原子を含む置換基を有するノルボルネン誘導体;5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む置換基を有するノルボルネン誘導体など)であってもよい。これらの中でも、極性基をもたないものが好ましく、トリシクロ[4.3.12,5.01,6]デカ−3,7−ジエンが特に好ましい。
【0020】
これらの2環体のノルボルネン類と3環体のノルボルネン類は、それぞれ単独であるいは2種以上を組合せて用いる。特に3環体のノルボルネン類単独または3環体ノルボルネン類を多割合で含む2環体のノルボルネン類との混合物が好ましい。すなわち、2環体および3環体のノルボルネン類の合計量のうち3環体のノルボルネン類の量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、100重量%以下である。
ノルボルネン系単量体中の、これらの2環体および/または3環体のノルボルネン以外の単量体成分としては、は共重合可能なものであれば特に限定されないが、通常は4環体以上のノルボルネン類を用いることができる。
【0021】
4環体以上のノルボルネン類としては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ビニリテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エンなどのテトラシクロドデセン(4環体)構造を有する4環体のノルボルネン類;8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エンなどのテトラシクロドデセン環構造と脂環または芳香環をもつ5環体のノルボルネン類;テトラシクロ[7.4.0.110,13.02,7]−トリデカ−2,4,6,11−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.0.111,14.01,10]−テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンともいう)などのテトラシクロドデセン環以外のノルボルネン環構造と芳香環を有する5環体のノルボルネン類;シクロペンタジエンの3量体であって5環体の単量体であるペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−3,10−ジエンおよびペンタシクロ[7.4.0.13,6.110,13.02,7]ペンタデカ−4,11−ジエン;シクロペンタジエンの4量体以上の付加物などが挙げられる。4環体以上のノルボルネン類は、上記の4環体以上のノルボルネン類の極性基を有する誘導体(例えば、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エン、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−ドデカ−3−エンなどの酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン誘導体など)であってもよい。これらの4環体以上のノルボルネン類の中でも、誘電正接と誘電率が高度にバランスすることから、極性基を有さないものが好ましい。
【0022】
ノルボルネン類(2環体および/または3環体のノルボルネン類と所望により用いる4環体以上のノルボルネン類の合計)のうち、2環体および/または3環体のノルボルネン類は好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上であり、100重量%以下である。このような範囲にある時に誘導正接、耐衝撃性、耐熱性および伸びなどの特性が高度にバランスして良好である。
ノルボルネン系単量体(単量体の合計)のうちノルボルネン類(2環体および/または3環体と4環体以上との合計量)は、好ましくは60重量%、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、100重量%以下である。このような範囲にあるときに開環重合反応の活性が高く好適である。
【0023】
上記ノルボルネン系単量体は他の単量体と共重合することができる。共重合可能な他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2〜12からなるα−オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンなどのスチレン類;1,3−ブタジエン、1,4−ブタジエン、イソプレンなどの直鎖または分岐のジエン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン単環の環状オレフィン系単量体;1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの共役もしくは非共役の環状ジエン系単量体が挙げられる。
【0024】
ノルボルネン系単量体と共重合される単量体として、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−ブテン、2−ペンテン、1,4−ヘキサジエンなどの鎖状モノオレフィン類または鎖状の非共役ジエン類を用いると共重合体の分子量を調節することができる。このような分子量の調節に用いられる単量体の量は通常単量体全量に対して10モル%以下である。
【0025】
〈開環重合〉
上記のノルボルネン系単量体はメタセシス開環重合触媒系を用いて公知の方法により開環重合される。メタセシス開環重合触媒系は、主触媒と活性化剤からなり、必要に応じて反応調整剤を組合せて使用する。
【0026】
開環重合触媒としては、例えば、(1)ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる触媒系、(2)チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデン、レニウムなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒系を挙げられる。これらの中でも、メタセシス重合触媒(遷移金属化合物)と有機アルミニウム化合物(活性剤)とからなるメタセシス触媒系が好ましい。
【0027】
メタセシス重合触媒としては、例えば、WCl6 、WCl5 、WCl4 、WCl2 、WBr6 、WBr4 、WBr2 、WF6 、WF4 、WI6 、WI4 などのハロゲン化タングステン;WOCl4 、WOBr4 、WOF4 などのオキシハロゲン化タングステン;W(OC6 5 6 などのアルコキシ化タングステンまたはアリールオキシ化タングステン;WCl2 (OC6 5 4 などの部分ハロゲン化アルコキシ化タングステンまたは部分塩素化アリールオキシ化タングステン;W(CO)3 (CH3 CN)3 、W(OC2 5 2 Cl3 、(CO)5 WC(OCH3 )(CH3 )、(CO)5 WC(OC2 5 )(CH3 )、(CO)5 WC(OC2 5 )(C4 5 )などの(部分)カルボニル化、(部分)塩素化、(部分)ハロゲン化、(部分)アルコキシ化または(部分)アリールオキシ化されたタングステン化合物;これらのタングステン化合物と同様のモリブデン化合物〔例えば、MoCl5 、MoCl4 、MoCl3 、MoBr4 、MoBr3 、MoBr2 、MoF4 、MoOCl3 、MoOF3 、Mo(OC2 5 2 CI3 、Mo(OC2 5 5 、MoO2 (acac)2 、Mo(CO)6 、(CO)5 MoC(OC2 5 )(CH3 )〕;これらのタングステン化合物と同様のレニウム化合物〔例えば、ReCl3 、ReOCl3 、ReOBr3 、Re2 (CO)Cl6 、ReOBr3 ・P(C6 5 3 〕;これらのタングステン化合物と同様のバナジウム化合物(例えば、VCl4 、VOCl3 、VOBr3 );これらのタングステン化合物と同様のチタン化合物〔例えば、TiCl5 、TiCl4 、TiCl3 、TiBr4 、TiBr3 、TiBr2 、Ti(OC2 5 2 Cl3 〕などが挙げられる。
【0028】
これらのメタセシス重合触媒の中でも重合活性が高く、好ましい化合物としては、MoCl5 、Mo(OC2 5 2 Cl3 、WCl6 、W(OC2 5 2 Cl3 などのハロゲン化または部分アルコキシ化(またはアリールオキシ化)ハロゲン化されたタングステン化合物またはモリブテン化合物が挙げられる。これらの中でも、WCl6 、W(OC2 5 2 Cl3 などのハロゲン化または部分アルコキシ化(またはアリールオキシ化)ハロゲン化されたタングステン化合物は、重合活性が高く、高分子量の開環重合体およびその水素添加物が得やすい点で特に好ましい。
これらの遷移金属化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。その使用量は、モノマー全量100モルに対して、通常0.001〜10モル、好ましくは0.005〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルの範囲である。
【0029】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−イソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジ−i−ブチルアルミニウム−モノ−i−ブチルオキシド、ジ−n−プロピルアルミニウムモノクロリドなどが挙げられる。
【0030】
これらの有機アルミニウム化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組合わせて用いることができる。有機アルミニウム化合物の使用量は、反応条件に応じて適宜選択されるが、遷移金属化合物:有機アルミニウム化合物の金属原子比で、通常1:1〜1:1000、好ましくは1:2〜1:100、より好ましくは1:5〜1:50の範囲である。
【0031】
上記開環重合においては、低分子量成分(オリゴマー、特に環状オリゴマー)の生成を抑制するために、特定の反応調整剤を使用することが好ましい。すなわち、ニトリル、ケトン、エーテルおよびエステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を反応調整剤として、反応系に存在させることが好ましい。
ニトリルは、式RCNで表される化合物であり、Rは、アルキル基やアリール基などの炭化水素基である。アルキル基としては、炭素原子数が1〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは4〜10のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、例えば、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、アルキル置換フェニル基(例えば、トリル基、キシリル基)、ナフチル基、アルキル置換ナフチル基などが挙げられる。ニトリルの好ましい具体例としては、t−ブチルニトリル、ベンゾニトリルなどが挙げられる。
【0032】
ケトンは、式R1 −C(=O)−R2 で表される化合物であり、R1 及びR2 は、アルキル基やアリール基などの炭化水素基である。アルキル基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10である。アリール基としては、フェニル基が好ましい。ケトンの好ましい具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルフェニルケトンなどが挙げられる。
エーテルは、式R1 OR2 で表される化合物であり、R1 及びR2 は、アルキル基やアリール基などの炭化水素基である。アルキル基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10である。アリール基としては、フェニル基が好ましい。エーテルの具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルフェニルエーテル、イソプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
エステルは、式R1 COOR2 で表される化合物であり、R1 およびR2 は、アルキル基やアリール基などの炭化水素基である。アルキル基の炭素原子数は、通常1〜20、好ましくは1〜10である。アリール基としては、フェニル基が好ましい。エステルの具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが挙げられる。
これらの反応調整剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。反応調整剤の使用量は、反応条件に応じて適宜選択されるが、単量体全量100モルに対して、好ましくは0.001〜10モル、より好ましくは0.005〜5モル、さらに好ましくは0.01〜2モルの範囲である。
【0034】
メタセシス重合活性調整剤(反応調整剤)として、さらにアルコールを併用することができる。アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。これらの中でも、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、フェノールなどが好ましい。
【0035】
これらのアルコールは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。アルコールの使用量は、反応条件に応じて適宜選択されるが、メタセシス重合触媒;アルコールのモル比で、通常1:0〜1:100、好ましくは1:0〜1:10、より好ましくは1:0〜1:6の範囲である。アルコールは、メタセシス重合触媒の重合活性を低下させる効果があるので、メタセシス重合触媒の種類に合わせてアルコールの使用量を選択する必要がある。
また、反応活性剤の有機アルミニウム化合物とアルコールとは、容易に反応してアルコキシ化するため、予め一部がアルコキシ化された有機アルミニウム化合物を使用することと、アルコキシ化されていない有機アルミニウム化合物とアルコールを反応系に添加して使用することとは、同様の効果となる。
反応調整剤は、開環重合触媒とは別個に加えてもよいし、予め両者を混合して使用してもよい。
【0036】
開環重合は、溶媒を用いなくても可能であるが、不活性有機溶媒中で実施することが好ましい。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;スチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。
【0037】
オリゴマー(特に環状オリゴマー)の生成を抑制するために、開環重合温度を特定の範囲内に調整することが好ましい。すなわち、重合温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは40〜70℃である。重合温度が低すぎると、重合率が上がらない。重合温度が高すぎると、オリゴマーの生成量が増大するため好ましくない。
重合圧力は、通常、0〜50kg/cm2 、好ましくは0〜20kg/cm2 である。
【0038】
開環重合反応の溶剤は、好ましくはn−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、デカリンなどの脂環族炭化水素;またはこれらのハロゲン化物(クロロホルム、ジクロロエタンなど)である。上記2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体は、これらの溶剤に溶けるため、反応中に生成ポリマーが析出することなく重合する。さらに、これらの溶剤を用いると、開環重合後に溶剤を置換することなく、引き続いて水素添加反応を効率よく行うことができるので好ましい。
【0039】
開環重合は、常法に従って行うことができるが、ノルボルネン系単量体を反応中に逐次添加しながら行う方法(以下、「分割逐次添加方法」という)が好ましい。この方法は、(1)反応器中に、単量体の一部(好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは2〜30重量%程度)、不活性有機溶媒、有機アルミニウム化合物および反応調整剤を仕込み、(2)次いで、反応系内の温度を前記範囲内に調整しながら、単量体の残部と、遷移金属化合物とを、それぞれ別個に連続的に滴下する方法である。開環重合反応中、通常、反応系の攪拌を継続する。
【0040】
上記の製造方法によれば、生成するノルボルネン系開環重合体中の低分子量成分(オリゴマー、特に7量体などの環状オリゴマー)の含有量を、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下にまで抑制することができる。多くの場合、低分子量成分の含有量を1重量%以下にまで、大幅に減少させることが可能である。特に、分割逐次添加法による場合、低分子量成分の含有量を抑制することが可能である他に、実質的にゲル分を含まず、好ましい分子量分布を持ったノルボルネン系樹脂とすることが可能である。
【0041】
<水素添加>
開環重合の結果得られるノルボルネン系開環重合体は分子中に不飽和結合が残留するため、その不飽和結合により、ノルボルネン系開環重合体の耐候安定性や熱安定性が低下することがある。従って、長期間の安定した使用が困難となる場合があり、さらに、電気特性上、誘電率や誘電正接が大きくなり易い。これを改良することを目的として、水素添加することにより不飽和結合の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上を飽和化させて用いる。
【0042】
水素添加触媒としては、例えば、次のようなものが挙げられる。均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせが挙げられる。不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の触媒系が挙げられる。
【0043】
水素添加反応は、通常、不活性有機溶媒中で実施する。有機溶媒としては、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、炭化水素系溶媒が好ましく、環状炭化水素系溶媒がより好ましい。このような炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。水素添加効率の点から、有機溶媒として、n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、トクロヘキサン、デカリンなどの脂環族炭化水素;またはこれらのハロゲン化物(例えば、クロロホルム、ジクロロエタンなど);テトラヒドロフランなどの環状エーテルが好ましい。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して使用することができる。有機溶媒は、通常は、重合反応溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素添加触媒を添加して反応させればよい。
【0044】
水素添加反応は、使用する水素添加触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、通常、−20℃〜200℃の温度範囲で、0.1〜50kg/cm2 の水素圧力下で行う。特に、比較的低温低圧の条件、例えば、−20℃〜150℃、好ましくは0〜130℃の温度範囲、0.1〜30kg/cm2 、好ましくは1〜20kg/cm2 の水素圧力範囲で水素添加反応を行うことにより、水素添加効率を高めることができる。
【0045】
側鎖にアルキリデン基などの非共役の不飽和結合を有する置換基がある場合には、主鎖および5員環中の不飽和結合の水素添加時に、これらの置換基の不飽和結合も同時に水素添加される。
水素添加反応後、水素添加物を含む溶液から、必要に応じて、常法により水素添加触媒を脱灰し、次いで、乾燥により溶媒を除去して、水素添加物を回収することができる。乾燥方法としては、凝固分別して乾燥する方法、あるいは溶媒を直接除去する直接乾燥法などがある。
【0046】
ノルボルネン系開環重合体およびその水素化物は、それぞれ単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
ii )ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの付加重合体およびその水素化物
ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの付加重合体およびその水素化物としては、シクロヘキサン溶液のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリイソプレン換算の数平均分子量(Mn)が、通常5,000〜500,000、好ましくは10,000〜200,000であり、また、ガラス転移温度(Tg)が通常50〜200℃、好ましくは60〜180℃のものが用いられる。
【0047】
上記付加重合体の調製に用いられるノルボルネン系単量体は、前項(i)の2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体の調製に用いられるものとして列挙したものの中から選ぶことができる。ノルボルネン系単量体としては、極性基をもたないものが好ましい。鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなど単素数2〜12のα−オレフィンなどが用いられる。付加重合体の代表的な例としては特開昭60−168708号公報に記載される1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類とエチレンとのランダム付加共重合体が挙げられる。ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの共重合比(モル比)は通常10/90〜90/10、好ましくは20/80〜85/15の範囲である。
【0048】
ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの共重合は公知の触媒を用い常法に従って行なうことができる。触媒としては、例えば、特開昭60−168708号公報に記載されるようなハロゲン化バナジウム、オキシハロゲン化バナジウムおよび式VO(OR)n3-n(Rは炭化水素基、nは3以下の数)で表わされるバナジウム化合物が挙げられる。この触媒は通常アルキルアルミニウム共触媒とともに用いられる。付加重合体の水素化物も上記(i)の開環重合体の場合と同様に、公知の触媒を用いて常法に従って製造することができる。
【0049】
iii )繰返し単位中に5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体およびその水素化物
繰返し単位の一部または全部が1,4−結合および/または1,2−結合により連結される炭素−炭素5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体としては、特開平7−258362号公報に記載されるような重合体およびその水素化物が挙げられる。そのような重合体およびその水素化物の好ましい具体例としては、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの5〜8員炭素環をもつ環状共役ジエンの重合体および共重合体ならびにそれらの水素化物が挙げられる。
【0050】
5〜8員炭素環を有する環状共役ジエンと共重合可能な他の単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの鎖状共役ジエン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ビニルピリジンなどのビニル芳香族系単量体、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、α−シアノアクリル酸メチルなどの極性ビニル系単量体もしくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトン、環状ラクタム、環状シロキサンなどの極性単量体、あるいはエチレン単量体およびα−オレフィン系単量体が挙げられる。これら共重合可能な単量体の割合は50重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0051】
上記5〜8員炭素環を有する環状共役ジエンの重合体および共重合体の水素添加方法、水素添加触媒については公知のものを採用することができる。
水素化物の分子量は1,2,4−トリクロロベンゼン溶液のGPC法で測定したポリスチレン換算平均分子量として通常5,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜500,000である。
【0052】
iv )ビニル基含有環状炭化水素系単量体の重合体の水素化物
さらに、熱可塑性炭化水素重合体の他の例は、特開平6−199950号公報に記載されるビニル基含有環状炭化水素系単量体の重合体またはその水素化物である。
この重合体を得るために用いられるビニル基含有環状炭化水素系単量体としては、例えば、ビニルシクロペンタン、イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体などのビニル基含有5員環炭化水素系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−フェニルスチレンなどのスチレン系単量体、ビニルシクロヘキサン、3−メチルイソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘセン系単量体、d−テルペン、1−テルペン、ジテルペンなどのテルペン系単量体などのビニル基含有6員環炭化水素系単量体;ビニルシクロヘプタン、イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体、4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体などのビニル基含有炭化水素系単量体などが挙げられる。なかでも、6員環炭化水素系単量体が好ましい。ただし、後述のように芳香環を含有しない単量体が好ましく、芳香環を含有するスチレン系単量体を用いる場合は、水素添加反応により、芳香環が実質的に残らないようにすることが好ましい。
【0053】
また、ビニル基含有環状炭化水素系単量体以外の単量体を少割合(通常、重合体中の繰返し単位が10重量%未満となる範囲)共重合させてもよい。共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン系単量体;シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−ジメチルシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエン系単量体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエンなどの環状オレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、フラン、チオフェン、1,3−シクロヘキセンなどの共役ジエン系単量体;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、トリオキサン、ジオキサン、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル系単量体;メチルビニルエーテル、N−ビニルカルバゾール、N−ビニル−2−ピロリドンなどの複素環含有ビニル化合物系単量体などが挙げられる。
【0054】
ビニル基含有環状炭化水素系単量体またはビニル基含有環状炭化水素系単量体と共重合可能な単量体との重合方法および水素添加方法は、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。また、得られる重合体や重合体水素添加物を特開平3−95235号公報などに開示されている公知の方法により、α,β−不飽和カルボン酸および/またはその誘導体、スチレン系炭化水素、オレフィン系不飽和結合および加水分解可能な基を持つ有機ケイ素化合物、不飽和エポキシ単量体等を用いて変性させてもよい。
【0055】
上記ビニル基含有環状炭化水素系単量体の重合体の水素化物の分子量は、使用目的に応じて適宜選択することができるが、上記2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体の水素化物について記載したものと同程度であってよい。
単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体は、炭素、水素以外の元素を含有する置換基、いわゆる極性基を有しているモノマーの使用割合が低いほど好ましく、一般に、その使用割合は70モル%以下、より好ましくは30モル%以下であり、全く使用しないものが特に好ましい。極性基を多く変動させ、さらに誘電率を高くするなどの点で電気特性上の問題を有し、高周波帯での絶縁材料に適していない。
【0056】
熱可塑性炭化水素重合体の分子量が過度に小さいと機械的強度が充分でなく、場合によっては成形体としての形状を保たなくなり、逆に、過度に大きいと成形加工性が充分でなく、いずれも好ましくない。また、熱可塑性炭化水素重合体の分子量分布は、格別な限定はないが、シクロヘキサン(またはトルエンまたは1,2,4−トリクロロベンゼン)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が、通常5.0以下、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下であるときに、加工性が高度に高められ好適である。
【0057】
熱可塑性炭化水素重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30〜300℃、好ましくは50〜250℃、より好ましくは100〜200℃の範囲が好適である。
上記の熱可塑性炭化水素重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
併用する熱可塑性樹脂、エラストマー
本発明のインシュレーターの成形材料としては、上述の単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体を単独で、または2種以上を組合せて用いることができ、さらに、他の熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーを併用してもよい。併用する他の熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーの種類および量は、本発明の目的が損なわれないように選定されるべきである。一般に、その量は上述の熱可塑性炭化水素重合体100重量部に基づき1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部である。
【0059】
〈他の熱可塑性ノルボルネン樹脂〉
上述の熱可塑性炭化水素重合体に併用する熱可塑性樹脂の例としては、2環体および/または3環体のノルボルネン類の開環重合体以外の熱可塑性ノルボルネン樹脂が挙げられる。そのような熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開平1−168725号公報、特開平1−190726号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報、特開平4−63807号公報などで公知の樹脂であり、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加型重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加型重合体などが挙げられる。
【0060】
これらの重合体の調製に使用されるノルボルネン系単量体としては、前述の2環体、3環体および4環体以上のノルボルネン類が挙げられ、それらの使用量は、重合体中の2環体と3環体との合計量が50重量%未満である。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、トルエン溶媒によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法で測定したポリスチレン換算値で、10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上、200,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下のものである。
【0061】
熱可塑性ノルボルネン系樹脂のうち、ノルボルネン系単量体の開環重合体のように主鎖構造に不飽和結合を有する場合は、前記単環または2環飽和炭化水素基含有熱可塑性炭化水素重合体の場合と同様に水素添加することにより、主鎖構造を飽和させることが好ましい。
また、熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、極性基を有しているモノマーなどの使用割合が低いほど好ましく、一般には70モル%以下のものが用いられ、30モル%以下のものがより好ましい。
さらに、熱可塑性ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(以下、Tgという)は、110℃以上のものが好ましく、120℃以上のものがより好ましく、130℃以上のものが特に好ましい。
【0062】
〈シリコーン変性ポリオレフィン−摺動化剤〉
単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体に併用する好ましい熱可塑性樹脂の他の例としてシリコーン変性ポリオレフィンが挙げられる。シリコーン変性ポリオレフィンを配合することにより、摺動性を改良することができる。特にコネクターの接続と解放を繰り返す場合には、容易に接続、解放ができる点で、シリコーン変性ポリオレフィンを配合した成形材料を用いることが好ましい。
【0063】
シリコーン変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンブロックとポリシロキサンブロックからなる重合体である。ポリオレフィンブロックは、数平均分子量がGPC法で測定したポリスチレン換算値で通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上、通常200,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下のものである。分子量が小さいと本発明の成形品の強度や摺動性に問題を生じ、大き過ぎると熱可塑性炭化水素重合体中に均一に分散し難くなる。また、均一分散性という見地から、エチレン、プロピレン、スチレンなどのオレフィン類に由来する繰り返し構造単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有しているものが用いられ、また、分岐構造を有しているものであっても構わないが、一般には直鎖状のものが好ましい。
【0064】
ポリオレフィンブロック一つに対し、一つ以上結合しているポリシロキサンブロックは、数平均分子量がGPC法で測定したポリスチレン換算値で3,000以上、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,000以上、通常200,000以下、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下のものである。分子量が小さいと本発明の成形品の摺動性に問題を生じ、大き過ぎると熱可塑性ノルボルネン系樹脂中に均一に分散し難くなる。重合に用いられるモノマーとしては、オクタメチルテトラシロキサン、オクタエチルテトラシロキサン、オクタプロピルテトラシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ヘキサエチルトリシロキサン、ヘキサプロピルトリシロキサンなどが挙げられる。
【0065】
シリコーン変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンブロック100重量%部に対し、ポリシロキサンブロックが通常1重量部以上、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上であって、通常200重量部以下、好ましくは180重量部以下、より好ましくは160重量部以下の割合で結合しているものが挙げられる。ポリオレフィンブロック一つに対し、ポリシロキサンブロックが2つ以上結合していてもよい。ポリシロキサン量が少な過ぎると成形品としたときの摺動性が劣り、多すぎるとインシュレーターの製造が困難となり生産性が低下する。
【0066】
また、シリコーン変性ポリオレフィンは数平均分子量がGPC法で測定したポリスチレン換算値で好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、特に好ましくは40,000以上、好ましくは400,000以下、より好ましくは200,000以下、特に好ましくは100,000以下のものである。分子量が小さいと本発明の成形品の摺動性に問題を生じ、大きすぎると熱可塑性ノルボルネン系樹脂中に均一に分散し難くなる。
【0067】
シリコーン変性ポリオレフィンは、予めポリオレフィンを製造しておいて、別に製造しておいたポリシロキサンブロックをグラフト結合させても、ポリオレフィンの存在下にシロキサンモノマーをグラフト重合させたものでもよい。また、末端にオレフィン類と共重合可能な構造を有するポリシロキサンブロックを高分子コモノマーとしてポリオレフィンを重合したものでもよい。前者の場合、ポリオレフィンのシリコーンブロックと結合する部分には、結合できる構造が必要であり、一般的には極性基が導入される。導入する方法は特に限定されず、末端変性などの変性、極性基を有するコモノマーを使用するなどの方法による。また、後者の場合は、例えば、シロキサンモノマーをリビングアニオン重合法で重合し、末端にシリルブロミドなどを結合し高分子コモノマーとし、ポリオレフィンと共重合すればよい。
【0068】
シリコーン変性ポリオレフィンとしては、市販のシリコーン変性ポリオレフィン、例えば、スミカセンSP300、スミカセンSP310(両者共住友化学製シリコーン変性ポリオレフィン)なども好適に使用できる。
単環または2環の脂環構造を有する炭化水素重合体100重量部に対して、シリコーン変性ポリオレフィンの配合量は、0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、50重量部以下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下配合したものである。配合量が少なすぎると、摺動性が劣り、逆に、配合量が多すぎると電気特性が低下するという問題を生じる。
【0069】
〈その他の熱可塑性樹脂〉
その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0070】
〈熱可塑性エラストマー〉
単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体に熱可塑性エラストマーを配合することにより柔軟性、屈曲性、耐衝撃性をさらに向上することができ、特に、コネクターの接続と解放を繰り返す場合や電線のようにぐるぐるとまるめて長期間保存した後に真っ直に伸ばした場合に、インシュレーターが歪や衝撃を受け難く、ひび割れを生じることがないので好ましい。
【0071】
熱可塑性エラストマーは、特に限定されず、耐衝撃性に優れることから40℃以下のTgを有するものが好ましい。ブロック共重合体では、2点以上のTgを有するものもあるが、そのうち一点が40℃以下であれば、好ましく用いることができる。また、その分子量は好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、特に好ましくは30,000以上、好ましくは200,000以下である。分子量が小さすぎると機械的特性が劣り、高すぎると製造が困難である。また、熱可塑性炭化水素重合体との相溶性の点から、非極性のもの、すなわち、炭素と水素のみから構成されたものが好ましい。
【0072】
熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン−ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−ランダム共重合体などの芳香族ビニル・モノマーと共役ジエン系モノマーのランダムまたはブロック共重合体;ポリイソプレンゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィンゴム;エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、α−オレフィン−ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、イソブチレン−ジエン共重合体などのジエン系共重合体;ノルボルネン系単量体とエチレンまたはα−オレフィンの共重合体、ノルボルネン系単量体とエチレンとα−オレフィンの三元共重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体などのノルボルネン系ゴム質重合体;などが挙げられる。また、これらを水素添加したものでもよい。金属元素量を低減させやすい点で芳香族ビニル・モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体が好ましく、ブロック共重合体が特に好ましく、さらに耐候性に優れる点からその水素添加物が好ましい。
【0073】
熱可塑性エラストマーの配合量は、熱可塑性炭化水素重合体100重量部に対して、1重量部以上、好ましくは2重量部以上、より好ましくは3重量部以上であって、100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下配合したものである。配合量が多すぎると耐熱性、耐薬品性などの熱可塑性ノルボルネン系樹脂の優れた性質が失われる。
【0074】
〈その他の任意成分〉
単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体には、上記樹脂および/またはエラストマー成分の他に、必要に応じて、滑剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの配合剤を添加することができる。
【0075】
(1)滑剤
滑剤としては、一般に無機微粒子が用いられる。ここで、無機微粒子としては、周期表の1族、2族、4族、6族、7族、8〜10族、11族、12族、13族、14族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩およびそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物、天然鉱物などの粒子が挙げられる。
【0076】
無機微粒子の具体例としては、フッ化チリウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシウア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、炭酸バリウム、燐酸バリウム、硫酸バリウム、亜燐酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウムなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデンなどの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;ヨウ化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物、酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の微粒子が挙げられる。ここで用いる無機微粒子の平均粒径は、特に制限はないが、好ましくは0.01〜3μmの範囲で使用目的により適宜選択される。
滑剤の使用量は、熱可塑性炭化水素重合体100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜3重量部の範囲で使用目的により適宜選択される。
【0077】
(2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−、t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2、4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル アクリレートなどの特開昭63−179953号公報および特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスチリル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕]、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
【0078】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用されているものであれば格別な制限はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0079】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3′−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、熱可塑性炭化水素重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0080】
(3)紫外線防止剤
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベゾエート系紫外線吸収剤;などが挙げられる。
紫外線吸収剤の配合量は、熱可塑性炭化水素重合体100重量に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。
【0081】
(4)帯電防止剤
帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム塩および/またはアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などやステアリン酸のグリセリンエステルなどの脂肪酸エステルヒドロキシアミン系化合物等を例示することができる。
帯電防止剤の配合量は、熱可塑性炭化水素重合体100重量部に対して、通常0〜5重量部の範囲である。
【0082】
(5)その他の配合剤
その他の配合剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛などの塩酸吸収剤;顔料;染料;ブロッキング防止剤;難燃剤;結晶核剤などを挙げることができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0083】
(6)金属不純物
本発明に用いる熱可塑性炭化水素重合体を主成分とする成形材料には、不純物としての金属元素が、通常5ppm以下、好ましくは4ppm以下、より好ましくは3ppm以下含まれる。金属元素量が多すぎると、成形材料の誘電率や誘電正接などの電気特性が低下する。
【0084】
このような成形材料を得るには、(1)金属元素量の少ない熱可塑性炭化水素重合体に、必要に応じて金属元素量の少ない他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなど配合して成形材料を調製する方法、(2)成形材料の全成分を溶解する良溶媒を用いて成形材料溶液を調製し、これを吸着材で処理して金属元素を除去した後、成形材料の全成分を溶解しない貧溶媒中で成形材料を析出させる、(3)成形材料を良溶媒に溶解し、貧溶媒中に析出させる操作を繰り返す、などの方法がある。(1)の場合でも、一般に、熱可塑性炭化水素重合体、他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーなどは溶液にして、あるいは水素添加工程などで吸着材を処理して金属元素を除去するか、良溶媒への溶解と貧溶媒中での析出を繰り返すかして、金属元素量を低減させる。吸着材を使用する場合は、その種類は特に限定されないが、合成ゼオライト、天然ゼオライト、活性アルミナ、活性白土などのSiO2、Al23、またはこれらの結晶性、非晶性の混合組成物が好ましく、また、比表面積が好ましくは50m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、特に好ましくは200m2/g以上、好ましくは1000m2/g以下、細孔容積が好ましくは0.5cm3/g以上、より好ましくは0.6cm3/g以上、特に好ましくは0.7cm3/g以上、好ましくは1.5cm3/g以下のものが挙げられる。比表面積や細孔容積が小さすぎると吸着能力が劣り、大きすぎると製造が困難になる。
【0085】
〈配合および成形方法〉
インシュレーター成形材料として、熱可塑性炭化水素重合体に他の成分を配合する場合、配合方法は特に限定されず、溶液状態で混合して析出させる方法、二軸混練押出機を用いて混練する方法などが用いられる。
熱可塑性炭化水素重合体を主成分とする成形材料をコネクター用のインシュレーターに成形する方法は特に限定されず、インシュレーターの形状などに応じて適した方法を用いればよい。本発明に用いる成形材料は溶融成形できるものであり、射出成形、押出成形、圧空成形、熱プレス成形などが用いられる。中でも、射出成形は容易であり、また、寸法精度に優れた成形品が得られるという特徴を有する。
【0086】
インシュレーター
本発明のコネクター用インシュレーターの形状は、コネクターの形状、目的、性能に合わせて選択される。以下に、最も一般的なコネクターの形状である同軸ケーブル用コネクターについて説明する。同軸ケーブル用コネクターは、同軸ケーブルの中心導線と外周導線にそれぞれ接続された、または接続される中心導体および外部導体と、その中心導体を固定し、中心導体と外部導体を絶縁するインシュレーター、さらに全体を絶縁するガスケットから成るものが最も一般的である。
【0087】
同軸ケーブル用コネクターのインシュレーターは、通常、円柱または径の異なる円柱を中心軸を揃えて組み合わせた形状であり、その中心部に中心導体を固定するための貫通孔が開いている。同軸ケーブル用コネクターのインシュレーターの外周は、直径が好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、特に好ましくは5mm以上、40mm以下、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。特に高周波数の帯域での誘導率特性をよくするために、インシュレーターには前述の中心導体固定用の貫通孔以外の空隙を設けてもよい。空隙は一般に中心の貫通孔と平行な貫通孔であり、断面が円形であることが好ましい。ただ、貫通孔の外周同士の間、貫通孔とインシュレーターの外周の間に、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上の間隔を開ける。
【0088】
インシュレーターは、通常、軸方向と直向する断面積が大きいほど、また、高周波数のものほど接続部位への入力波に対して反射波が大きくなるため、伝送ロスが大きくなる。そのため、コネクター用インシュレーター、特に高周波用のものは、断面積が小さいものが好ましい。しかしながら、小さすぎると機械的強度が劣り、コネクターの接続、解放の際に破損し易くなる。また、コネクター自体が小さく持ちにくいなど使用しにくい原因となり、接続などの際に応力がかかり易く、やはり破損し易くなる。また、空隙を除くと同じ大きさ、同じ形状のインシュレーターでは、一般に、インシュレーターの空隙を含む体積に対して空隙の割合が大きいほど高周波での電圧定在波比が小さくなり、より高周波数の帯域でも使用できるようになる。しかし、空隙を開けすぎるとインシュレーターの強度が低下し、ケーブルの接続などの際に破損しやすくなる。そのため、空隙と空隙、空隙と外周、空隙と中心導体固定用の貫通孔の間には十分な厚さを設ける必要がある。
【0089】
本発明の高周波用インシュレーターは、1KHz〜20GHzの範囲における誘電正接が0.0015以下であることを特徴としている。誘電正接は、好ましくは0.0012以下、より好ましくは0.0010以下である。また、1KHz〜20KHzにおける誘電率は3.0以下、好ましくは2.60以下である。また、2〜3GHzの範囲において電圧定在波比の値が好ましくは1.20以下である。
【0090】
成形材料として上記熱可塑性炭化水素重合体に摺動化剤を配合した場合は、動摩擦係数が0.4以下、好ましくは0.3以下、摩耗容積が0.015cm3以下、好ましくは0.010cm3以下と摺動性に優れている。ヤング率は14,000kgf/cm2以上、好ましくは16,000kgf/cm2以上、引張破断強度が450kg/cm2以上、好ましくは500kgf/cm2以上、より好ましくは550kgf/cm2以上と機械的強度に優れている。引張破断強度は通常1,000kgf/cm2以下であり、また、引張破断伸びは好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは55%以上、通常100%以下である。また、成形品表面にブリードなどが生じにくく、外観が良好である。成形材料として上記熱可塑性炭化水素重合体に軟質重合体を配合した場合は、IZOD衝撃値が4.0kg・cm/cm以上、好ましくは4.5kg・cm/cm以上、より好ましくは5.0kg・cm/cm以上となる。
【0091】
コネクター
一般のコネクターには、オスとメス、またはプラグとジャックの2種類があり、それぞれ形状が異なる。同軸ケーブルの場合、通常、オス側の中心導体はインシュレーターから突出しており、メス側の中心導体はインシュレーター中央の貫通孔の奥にあり、メス側の貫通孔にオス側の中心導体を挿入することにより、中心導体同士が接触し、また、オス側中心導体がメス側のインシュレーターによって固定され、オスとメスが固定される。この時に、外部導体同士も接触する。外部導体同士の接触は、メス側のインシュレーターの側面を覆う外部導体の外周をオス側外部導体が覆うようにして接触するのが通常であり、これにより、オスとメスとの固定が強固になる。同軸ケーブル用コネクターの具体例としては、JIS C 5410、C 5411、C 5412などに記載されているものが例示され、例えば、C01形コネクター、C02形コネクターなどが挙げられる。また、中心導体や外部導体の材質についても導電性を有するものであれば特に限定されないが、上記のJISに記載されているものが例示され、例えば、銀メッキした黄銅、ニッケルメッキした黄銅、銀メッキしたリン青銅、銀メッキしたペリリウム銅、金メッキしたペリリウム銅などが挙げられる。
【0092】
コネクターとしては、同軸ケーブル用コネクターのほかにも、例えば、多数の導体を一括して接続するための、パーソナル・コンピューターのRC232Cコネクターや、画像情報の入出力に用いられるS端子のコネクターなど様々な形状のものが、用途に応じて使用される。これらの代表的なものは、同軸ケーブル用コネクターの中心導体に当たる導体端子を複数有しているのである。いずれにしろ、一般に、コネクターはオスとメスの対応する導体同士が接触して通電できるようになっている。また、通常は、導体は導線にハンダ付けなどの方法で接続され、その導線の先には別のコネクター、電気回路、アンテナなどが接続されている。しかし、コネクターの中心導体、外部導体は、必ずしも導線に接続されているとは限らない。コネクター同士の固定を堅固なものにするために用いられているだけでどこにも接続されていなかったり、配線板の回路に直接接続されコネクター自体が配線板上に固定されていたりする場合もある。一部には、接続できないオス同士、メス同士、または互いに異なる形のコネクター同士を間接的に接続できるように、メス形の接続部位が2つ一体になっている、オス形の接続部位が2つ一体になっている、または互いに異なる形のコネクターが2種類1組で一体になっており、導線と接続されていない場合もある。
【0093】
【実施例】
以下に、参考例、実施例、比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
成形品の特性は以下の方法に準拠して測定した。
(イ)動摩擦係数はASTM D−1894に従った。なお、動摩擦係数は55mm×90mmの板状試験片5枚について、横方向の縁からそれぞれ17.5mm、27.5mm、37.5mmの位置の縦方向に縁から10mmを除いた70mmの直線上で、動摩擦係数を測定した平均値で表した。
【0094】
(ロ)摩耗容積はASTM D−1242に従った。
(ハ)ヤング率、引張破断強度および引張破断伸びはJIS K−7113に従った。
(ニ)IZOD衝撃値はJIS K−7110に従った。
(ホ)誘電率、誘電正接はJIS K−6911に従い、周波数1MHzで測定した。
(ヘ)電圧定在波比はJIS C−5402の5.6に従って測定した。
(ト)金属元素量はサンプルを湿式灰化し誘導結合プラズマ発光分光分析法によって測定した。
【0095】
(チ)柔軟性は、8mmφの丸棒を220℃で押出成形し、この丸棒を円環状にまるめて直径1mの輪を作成し、平板上に載置して1週間放置後、輪の結合箇所を解放して、直線に戻るか否かを観察した。観察結果は、次の4段階により表示した。
◎:簡単に元に戻った。
○:やや抵抗があるものの、元に戻った。
△:ほぼ元に戻るが、やや曲がったままであった。
×:元に戻らず、クラックが生じていた。
【0096】
熱可塑性ノルボルネン系重合体の調製
参考例1
窒素雰囲気下、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(3環体ノルボルネン類、慣用名ジシクロペンタジエン、日本ゼオン製、純度95重量%、以下「DCP」と略す)100重量部を公知のメタセシス開環重合触媒系で重合し、次いで公知の方法で水素添加しDCP開環重合体水素添加物を得た。共重合組成から求めた2環の繰り返し単位の量の計算値は100%であった。このDCP開環重合体水素添加物は、シクロヘキサンを溶媒としたGPC法でポリイソプレン換算で測定される数平均分子量Mnは、13,000であった。このDCP開環重合体水素添加物を公知の方法で乾燥した。水素添加反応の前後で比較して水素添加率が99.8%以上、Tgは97℃であった。このペレット100重量部に対して0.2重量部のフェノール系老化防止剤ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−ターシャリ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を混合し、二軸混練機で混練し、ストランド(棒状の溶融樹脂)をストランドカッターを通してペレット(粒状)状の成形材料を得た。
【0097】
参考例2
DCP100重量部の代わりに、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(4環体ノルボルネン類、以下MTCDと略す)5重量部、ジシクロ[2.2.1]−ヘプト−2−エン(2環体ノルボルネン類、以下NBと略す)15重量部とDCP80重量部(計100重量部)を用いた他は、参考例1と同様にしてMTCD/NB/DCP開環共重合体水素添加物を得た。重合体中の各ノルボルネン類の共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、MTCD/NB/DCP(すなわち、3環/単環/2環)重量比=5/15/80でほぼ仕込組成に等しかった。このMTCD/NB/DCP開環重合体水素添加物は、Mnが14,000であり、水素添加率が99.8%以上、ガラス転移温度(Tg)は81℃であった。
【0098】
参考例3
DCP100重量部の代わりに、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(4環体ノルボルネン類、以下ETCDと略す)30重量部とDCP70重量部(計100重量部)を用いた他は参考例1と同様にしてETCD/DCP開環共重合体水素添加物を得た。重合体中の各ノルボルネン類の共重合比率を、重合後の溶液中の残留ノルボルネン類組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、ETCD/DCP=30/70でほぼ仕込組成に等しかった。このETCD/DCP開環重合体水素添加物は、Mn13,000であり、水素添加率が99.8%以上、ガラス転移温度(Tg)は110℃であった。
【0099】
参考例4
DCPの代わりに、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(ETCD,4環体ノルボルネン類)を用いた他は参考例1と同様にしてETCD開環重合体(ETCD、三環:100%)の水素添加物を得た。このETCD開環重合体水素添加物は、Mn28,000であり、水素添加率が99.8%以上、ガラス転移温度(Tg)は140℃であった。
【0100】
インシュレーターおよびコネクターの製造
実施例1
参考例1で調製した熱可塑性ノルボルネン系重合体のペレットを下記条件で射出成形して、JIS K 7113の1号試験片(ヤング率・引張破断強度・引張破断伸び測定用)、JIS K 7110の2号試験片(IZOD衝撃値測定用)、厚さ1mmの55mm×90mmの試験片(誘電率、誘電正接、動摩擦係数、摩耗容積測定用)5枚を得、これらの試験片を用いて動摩擦係数、摩耗容積、ヤング率、引張破断強度、引張破断伸び、IZOD衝撃値、誘電率、誘電正接を測定した。
成形機: 東芝機械株式会社製、IS−350FB−19A
型締め圧: 80t
樹脂温度: 280℃
金型温度: 固定側可動側共100℃
【0101】
また、このペレットを射出成形して得たインシュレーター、ニッケルメッキした黄銅からなる中心導体を用いた他は、JIS C 5412に規定されたCNC02 SPM2.5と同形、同寸のコネクターを製造して、電圧定在波比を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
このコネクターは高周波帯で良好に使用でき、また、インシュレーターの製造は容易であった。
【0102】
実施例2
参考例1において調製した熱可塑性ノルボルネン系重合体100重量部に摺動化剤としてシリコーン変性ポリエチレン(住友化学工業株式会社製、スミカセンSP310、低密度ポリエチレンにポリシロキサンをグラフトしたもの、低密度ポリエチレン40重量%、ポリシロキサン60重量%)5重量部、または10重量部を添加し、二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、TEM−35B)を用いて、240℃で溶融押し出しを行い、それぞれペレットを得た。
【0103】
これらのペレットの金属元素量を測定し、また、これらのペレットを用いて厚さ1mmの55mm×90mmの試験片を厚さを3mmに代える以外は実施例1と同様に試験片を成形して、動摩擦係数、摩耗容積、ヤング率、引張破断強度、引張破断伸び、IZOD衝撃値、誘電率、誘電正接を測定、さらに実施例1と同様にインシュレーターを成形してコネクターを製造し、かくして製造したコネクターを用いて電圧定在波比を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
これらのコネクターは高周波帯で良好に使用でき、また、インシュレーターの製造は容易であり、また、摺動性に優れていた。
【0104】
実施例3
シリコーン変性ポリエチレンに代えてフッ素樹脂粉末(ポリテトラフルオロエチレン、ルブロン L−5、ダイキン工業製、粒径0.5〜5μm)10重量部または20重量部を用いた他は実施例2と同様にペレット得、金属元素量を測定し、また、試験片を成形して、動摩擦係数、摩耗容積、ヤング率、引張破断強度、引張破断伸び、IZOD衝撃値、誘電率、誘電正接を測定、さらにインシュレーターを成形してコネクターを製造し、かくして製造したコネクターを用いて電圧定在波比を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
これらのコネクターは高周波帯で良好に使用でき、また、インシュレーターの製造は容易であった。
【0105】
実施例4
参考例1において調製した熱可塑性ノルボルネン系重合体100重量部に対し、水素添加スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン・ブロック共重合体ゴム(SEPS、セプトン2023、クラレ株式会社製、数平均分子量60,000、Tgは少なくとも40℃以下に一点あり、金属元素量約15ppm)を5重量部、10重量部、または15重量部添加し、二軸溶融押出機を用いて240℃で混練して、それぞれペレットを得た。
【0106】
これらのペレットの金属元素量を測定し、また、これらのペレットを用いて実施例1と同様に試験片を成形して、動摩擦係数、摩耗容積、ヤング率、引張破断強度、引張破断伸び、IZOD衝撃値、誘電率、誘電正接を測定、さらに実施例1と同様にインシュレーターを成形してコネクターを製造し、かくして製造したコネクターを用いて電圧定在波比を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
これらのコネクターは高周波帯で良好に使用でき、また、インシュレーターの製造は容易であり、また、摺動性に優れていた。
【0107】
実施例5
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM、三井EPT 1035、三井石油化学株式会社製、数平均分子量300,000、Tgは少なくとも40℃以下に一点あり、金属元素量約90ppm)20重量部をトルエン100重量部に溶解し、よく攪拌した後、500重量部のイソプロピルアルコールに注ぎ込んだ。析出したEPDMを瀘過により回収して、50℃、10torr以下に24時間放置して乾燥し、EPDMを回収した。この回収したゴム中の金属元素量は約45ppmであった。
【0108】
水素添加スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン・ブロック共重合体の代わりに上記のように回収したエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)を10重量部を用いた他は実施例4と同様にペレットを得、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0109】
実施例6
実施例5で得たエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)の代わりに市販のエチレン.プロピレン・ジエン三元共重合体ゴム(EPDM、三井EPT 1035)を5重量部、10重量部または15重量部用いた他は、実施例5と同様にペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0110】
実施例7
熱可塑性炭化水素重合体として参考例2で調製したMTCD/NB/DCP開環共重合体水素添加物を用いた他は、実施例1と同様にしてペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0111】
実施例8
熱可塑性炭化水素重合体として参考例2で得たMTCD/NB/DCPを用いた他は、実施例4と同様にしてSEPSを用い、ペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0112】
実施例9
熱可塑性炭化水素重合体として参考例2で得たMTCD/NB/DCP開環共重合体水素添加物を用いた他は、実施例5と同様にしてEPDMを用い、ペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0113】
実施例10
熱可塑性炭化水素重合体として参考例3で得たETCD/DCP開環共重合体水素添加物を用いた他は、実施例1と同様にペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
参考例4で調製したETCD開環重合体水素添加物を、二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、TEM−35B)にて、240℃で溶融押し出しを行い、ペレットを得た。
上記ペレットを用いた他は実施例1と同様に金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0115】
比較例2
参考例4で調製したETCD開環重合体水素添加物を用いた他は、実施例2と同様にシリコーン変性ポリエチレンを用い、ペレットを得、金属元素量を測定、試験片の成形、測定、インシュレーターの成形、コネクターの製造、測定を行った結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
Figure 0004092756
【0117】
【発明の効果】
本発明の高周波コネクター用インシュレーターは、射出成形などにより容易に成形でき、1kHz〜20GHzの高周波帯において誘電正接が0.0015以下であり、誘電率が小さく、電圧定在波比も小さく、接続部位で入力するエネルギーの反射が小さく、しかも、機械的強度や柔軟性に優れている。
【0118】
好ましい実施態様
本発明、すなわち、(1)「繰返し単位中に単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体を成形してなる、1kHz〜20GHzの領域における誘電正接が0.0015以下である高周波コネクター用インシュレーター」、および(2)「1.4GHz以上の高周波の伝達に用いるコネクターであって、上記のインシュレーターを具えてなるコネクター」の好ましい実施態様をまとめると以下のとおりである。
【0119】
(1)繰返し単位中に単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体は、(i)2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体またはその水素化物;(ii)ノルボルネン系単量体とオレフィン単量体との付加重合体;(iii )繰返し単位の一部または全部が、1,4−結合および/または1,2−結合により連結される炭素−炭素5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体およびその水素化物、ならびに(iv)ビニル基含有環状炭化水素系単量体を重合してなる重合体の水素化物の中から選ばれた少なくとも一種である。
【0120】
(2)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)の製造に用いる2環体のノルボルネン類が、置換または非置換の非環状オレフィン類または非環状ジエン類とシクロペンタジエン付加物であり、より好ましくは、極性基をもたない。
(3)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)の製造に用いる3環体のノルボルネン類が、置換または非置換の環状オレフィン類または環状ジエン類とシクロペンタジエン付加物であり、より好ましくは、極性基をもたない。
【0121】
(4)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)の製造に用いるノルボルネン系単量体が、2環体および/または3環体のノルボルネン類を50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%と4環体以上のノルボルネン類0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%とからなる。
(5)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)の製造に用いるノルボルネン系単量体のうち、2環体のノルボルネン類と3環体のノルボルネン類との割合は、両者の合計重量に基づき、2環体のノルボルネン類が0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%、3環体のノルボルネン類が50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%である。
【0122】
(6)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)の分子量は、シクロヘキサン(溶解しないときはトルエン)を溶媒とするGPC法で測定したポリイソプレン換算数平均分子量として3,000〜200,000、より好ましくは5,000〜100,000である。
(7)ノルボルネン系単量体の開環重合体およびその水素化物(i)のガラス転移温度(Tg)が50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。
(8)ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの付加重合体およびその水素化物(ii)の分子量は、シクロヘキサンを溶媒とするGPC法で測定したポリイソプレン換算数平均分子量として5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜200,000である。
【0123】
(9)ノルボルネン系単量体と鎖状オレフィンとの付加重合体およびその水素化物(ii)のガラス転移温度が50〜200℃、より好ましくは60〜180℃である。
(10)繰返し単位の一部または全部が、1,4−結合および/または1,2−結合により連結される炭素−炭素5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体(iii )が、1,3−シクロアルカジエン(炭素数5〜8)の単独重合体の水素化物または該シクロアルカジエンを50重量%以上含む共重合体の水素化物である。
【0124】
(11)炭素−炭素5〜8員環である脂環構造を有する炭化水素重合体(ii)の分子量が、1,2,4−トリクロロベンゼン溶液のGPC法で測定せるポリスチレン換算数平均分子量として5,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜500,000である。
(12)ビニル基含有環状飽和炭化水素系単量体の重合体、またはビニル基含有環状不飽和炭化水素系単量体の重合体の水素化物(iv)の製造に用いるビニル基含有環状飽和または不飽和炭化水素系単量体がビニル基を有する5〜7員炭素環炭化水素単量体の単独重合体または該単量体90重量%以上を含む共重合体
である。
【0125】
(13)インシュレーターが、繰返し単位中に単環または2環の脂環構造を有する熱可塑性炭化水素重合体100重量部にシリコーン変性ポリオレフィン0.5〜50重量部を配合した成形材料を成形して得られる。
(14)上記(13)のシリコーン変性ポリオレフィンがポリオレフィンブロック100重量部に対してポリシクロキサンブロックが1〜120重量部結合したものである。
(15)上記(10)または(11)を満足するインシュレーターは表面の動摩擦係数が0.3以下である。
【0126】
(16)上記(13)、(14)または(15)を満足するインシュレーターの摩耗容積が0.009cm3以下である。
(17)上記(13)〜(16)のいずれかを満足するインシュレーターのヤング率が15,000〜17,000kgf/cm2である。
(18)上記(13)〜(17)のいずれかを満足するインシュレーターの引張強度が500〜750kgf/cm2である。
【0127】
(19)インシュレーターが、繰返し単位中に単環または2環飽和炭化水素基を有する熱可塑性炭化水素重合体100重量部に対して熱可塑性エラストマー1〜100重量部、より好ましくは2〜50重量部を配合した成形材料を成形して得られる。
(20)上記(19)の熱可塑性エラストマーが40℃以下のガラス転移温度を有する。
【0128】
(21)上記(19)または(20)の熱可塑性エラストマーが数平均分子量が10,000〜400,000を有する。
(22)上記(19)、(20)または(21)を満足するインシュレーターのIZOD衝撃値が4.0kg・cm/cm以上である。
(23)インシュレーター成形に用いる成形材料の金属元素含有量が5ppm以下である。
(24)インシュレーターの2〜3GHzにおける電圧定在波比が1.20以下である。

Claims (3)

  1. 2環体および/または3環体のノルボルネン類を50重量%以上含むノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物、および芳香族ビニル単量体と共役ジエン系単量体とのブロック共重合体の水素化物を含有してなる樹脂組成物を成形してなる、1KHz〜20GHzの範囲における誘電正接が0.0015以下である高周波コネクター用インシュレーター。
  2. 前記の樹脂組成物中の不純物としての金属元素の含有量が5ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高周波コネクター用インシュレーター。
  3. 1.4GHz以上の高周波の伝達に用いるコネクターであって、請求項1または請求項2に記載のインシュレーターを具えてなるコネクター。
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