特許文献1に記載されたパターン形成法では、混練粉砕法により作成したトナーを使用しているので、樹脂と金属粒子を含む混練物を冷却・固化した後粉砕した時に粉砕された粒子の破断面に金属粒子が露出し易く、トナーの表面に金属粒子が存在するので、トナーの絶縁性が低下して精細な回路パターンを形成することができないという問題がある。特許文献2に記載された金属トナーは、金属粒子の表面が絶縁性樹脂で覆われているので、高い電気絶縁耐電圧を有する。しかるに絶縁性樹脂層はモノマーの直接重合法により形成するので、重合時に絶縁性樹脂層の内部に帯電性粒子を取り込むことができず、複合樹脂粒子の表面に帯電性粒子を添加し、高速ミキサーにより混合することが行われている。このように機械的表面処理法で帯電付与層を形成すると、個々の粒子間に帯電特性のばらつきが生じ易いという問題がある。特許文献3に記載された方法によれば、金属粒子の表面を被覆する樹脂層の内部に帯電制御物質を取り込むことは可能であるが、樹脂粒子はモノマー、重合開始剤、電荷制御剤及び界面活性剤を混合して乳化重合反応で作成されるため、重合反応後に残留する界面活性剤の影響で帯電性が低下し、特に高湿度の環境条件での帯電性低下が著しいという問題がある。特許文献4に記載された複合粉体は、充填剤を内包した熱可塑性樹脂中に帯電性物質が含まれていないので、トナー像の画像濃度が低く実用に供し得ない。特許文献5の実施例に記載されたトナーは、金属製核粒子の外表面を被覆する高分子被覆層に帯電制御剤を外添しており、個々のトナー粒子間に帯電特性のばらつきが生じ易いという問題がある。
また上記トナーを用いてトナー像を形成する場合、キャリアと混合して通常の磁気ブラシ現像装置(例えばスリーブ回転型)で現像を行うことが考えられるが、金属粒子を主体とする上記トナーは比重が重いので、現像磁極で磁気ブラシの穂立ちが形成される時に、スリーブの遠心力によりトナーが印字装置内に飛散し、画像を汚染するという問題が発生する。この対策として、磁石ロールの表面に直接トナーを吸着保持する型式の現像装置を使用することが考えられるが、このスリーブレスタイプの現像装置では、一旦磁石ロールの表面に吸着されたトナーはそこに留まり、トナーの入れ替わりがないため、印刷枚数の増加に伴い画質が低下するという問題がある。
本発明の目的は、高い電気絶縁耐電圧及び帯電性を具備した回路パターン形成用トナーを提供することである。
本発明の他の目的は、帯電量が高くかつ個々の粒子間の帯電量のばらつきが少ない回路パターン形成用トナーを得ることのできる製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、多数枚の印刷を行っても高精度で微細な回路パターンを形成することができる方法を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の回路パターン形成用トナーは、金属又はその酸化物からなる導電性粒子と前記導電性粒子より小粒径の無機酸化物粒子からなる、疎水化処理された混合粒子と、その表面を被覆する絶縁性樹脂層を含むトナー粒子からなり、前記絶縁性樹脂層は、所定極性に帯電する電気的性質を有すると共に、前記トナー粒子は非水エマルジョンによる相分離法で形成された粒子であることを特徴とするものである。
本発明の回路パターン形成用トナーにおいて、前記絶縁性樹脂層は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、極性基をもつ樹脂、金属錯体、アゾ化合物及びアジン化合物から選ばれた1種以上の荷電制御物質を含むことが好ましい。
本発明の回路パターン形成用トナーにおいて、前記絶縁性樹脂層は、130℃未満の軟化点を有する熱可塑性樹脂を主体とすることが好ましく、この熱可塑性樹脂は、オレフィン系樹脂とセルロース系樹脂との混合樹脂からなることがより好ましい。
上記目的を達成するために、本発明の回路パターン形成用トナーは、金属又はその酸化物からなる導電性粒子と前記導電性粒子より小粒径の無機酸化物粒子からなる混合粒子を疎水化処理し、荷電制御物質と絶縁性樹脂とを、この樹脂と相溶性がない分散媒に添加し、前記絶縁性樹脂及び前記分散媒の軟化点以下の温度で加熱混練し、前記分散媒を溶解除去して得られた樹脂被覆混合粒子の表面に流動化剤を添加することにより製造されることを特徴とするものである。
本発明の回路パターン形成用トナーの製造方法において、前記荷電制御物質として、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、極性基をもつ樹脂、金属錯体、アゾ化合物及びアジン化合物から選ばれた1種以上の物質を含むことが好ましい。
本発明の回路パターン形成用トナーの製造方法において、前記絶縁性樹脂として、オレフィン系樹脂とセルロース系樹脂を使用することが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明の回路パターン形成方法は、上記トナーと磁性キャリアからなる現像剤を所定方向に回転する磁石ローラに巻回された非磁性ベルトの表面に保持して、所定の回路パターンに対応する静電荷像を保持した像担持体と前記非磁性ベルトとの間に形成された現像領域に搬送し、前記像担持体の表面に形成されたトナー像をセラミックグリーンシート上に転写後焼結して導体からなる回路パターンを形成することを特徴とするものである。
本発明の回路パターン形成方法において、前記トナー像を前記セラミックグリーンシート上に熱転写後、550〜650℃の温度で5〜30分間焼結することが好ましい。
本発明のトナーによれば、金属粒子は高い絶縁性と帯電性が付与されているので、電子写真法によりセラミック基板上に精細な回路パターンを形成することができる。
本発明の回路パターン形成用トナーの製造方法によれば、非水系エマルジョンで相分離法により、金属粒子の表面が所定極性に帯電する性質を有する樹脂で被覆されるので、帯電性が高くかつ個々の粒子間の帯電量のばらつきが少ないトナーが得られる。
本発明の回路パターン形成方法によれば、現像領域を通過後の現像剤は非磁性ベルトから掻き落とされて現像剤容器内の新たなトナーと混合された後、再び非磁性ベルトに吸着されるといった現像剤の入れ替えが可能となるので、多数枚の印刷を行っても高品質の画像を得ることができる。また現像剤は、磁石ロールに巻回された非磁性ベルト上に保持されて現像領域において磁気ブラシが磁極とともに移動するので、磁気ブラシの穂立ちに起因する現像剤の飛散が防止され、画像の汚染が防止される。
以下本発明の実施の形態を説明する。本発明においては、回路パターンを形成する導電性粒子として、銀、銅、ニッケル、タングステン等の金属粒子もしくは酸化ルテニウムなどの金属酸化物粒子を用い得る。これらの粒子の粒径(体積平均粒径)は、2〜10μmの範囲にあることが好ましく、粒子の形状は球形あるいは不定型のいずれでもよい。導電性粒子として、3μm以下の微粒子を使用する場合は、1次粒子が凝集した会合粒子(凝集体)が使用される。また表面の性状はスポンジ状などポーラスである必要はなく、むしろ高密度であることが望ましい。上記の金属粒子または金属酸化物粒子は、トナー画像から絶縁性樹脂を除去した後に、金属粒子のセラミックスに対する被着性を高めるために、無機酸化物粒子と混合され、かつ絶縁性樹脂との親和性を高めるために疎水化処理を施しておくことが望ましい。無機酸化物粒子としては、金属粒子よりも小粒径であるガラス粉末(PbO−SiO2−B2O3等)を使用すればよい。無機酸化物粒子の平均粒径は、小さすぎると基板との接着性が低下し、大きすぎると焼結後の導電性が低下するので、0.1〜5μmの範囲が好ましい。無機酸化物粒子と導電性粒子との混合比率は、無機酸化物粒子が少なすぎると基板との接着性が低下し、無機酸化物粒子が多すぎると焼結後の導電性が低下するので、質量比で1:99〜20:80の範囲が好ましい。導電性粒子とそれより小粒径の無機酸化物粒子からなる混合粒子を疎水化処理する方法としては、混合粒子をジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル、オクチルメトキシシラン、直鎖脂肪酸等の疎水化剤を溶媒(例えばアルコール)に溶かした溶液と混合し、加熱、乾燥する方法を採用することができる。これらの疎水化剤の内では、セラミックグリーンシート上に形成されたトナー像を短時間で燒結するために、低融点の化合物を使用することが好ましく、例えば直鎖脂肪酸、特にオレイン酸(融点:13.4℃)が好適である。
上記導電性粒子を被覆する絶縁性樹脂(体積固有抵抗が1012Ω・cm以上)としては、種々の熱可塑性樹脂あるいは縮合系樹脂を使用することが可能であるが、トナー像形成後の焼結工程で容易に加熱分解し、短時間で金属粒子の表面から除去されるようにするために、130℃未満の軟化点を有する熱可塑性樹脂であることが好ましく、特に120℃以下の軟化点を有する熱可塑性樹脂であることがより好ましい。樹脂の軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所社製CFT−500)を使用して、孔径1mm、長さ10mmのダイスから、30Kg/cm2の圧力、3℃/minの昇温速度で1cm3の試料を流出させた時の流出開始点から流出終了点の高さの中間点に相当する温度として測定したものである。このような軟化点の低い樹脂としては、例えばセルロース系樹脂が挙げられる。セルロース系樹脂は、セルロースを化学的にエステル化またはエーテル化することによって得られる誘導体(主原料)に可塑剤などの添加剤を配合して製造される樹脂である。このセルロース誘導体としては、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルやエチルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
セルロース系樹脂は一般に発火し易く、取扱が難しいので、比較的軟化点の低い熱可塑性樹脂と混合して使用することが好ましい。具体的な熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂が挙げられ、低密度ポリエチレン(軟化点(ASTM D1525による測定値、以下も同様):85〜95℃)、中密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレン(軟化点:115〜125℃)の中から適宜選定することができる。低軟化点の熱可塑性樹脂とニトロセルロース樹脂との混合比率は、重量比で1:9〜9:1の範囲で選定することができる。
本発明で使用できる縮合系樹脂としては、例えば、多価アルコールと多塩基酸との重縮合体であるポリエステル樹脂、エポキシ樹脂(1分子中にエポキシ基を2個以上もつ分子量300〜8000程度のプレポリマー)、主鎖中にアミド結合をもつ線状ポリマーであるポリアミド樹脂、フェノール類とホルムアルデヒドとの付加重合で得られるフェノール樹脂、水分子も生じない重付加により合成されるウレタン樹脂などが挙げられ、本発明では、これらの樹脂を単独もしくは2種以上混合して使用できる。これらの樹脂のうちでは、画像品質の点から特に不飽和脂肪酸、二塩基酸、グリコール及びビニルモノマーの重縮合体である不飽和ポリエステル樹脂が好ましく、また環状ラクタムの開環重合又はアミノカルボン酸の重縮合反応により得られるナイロンn及び線状ジアミンと線状ジカルボン酸、またはその塩の重縮合反応により得られるナイロンnmも有効に使用できる。
上記の絶縁性樹脂の被覆厚さは、0.2〜1μmの範囲にあることが好ましい。絶縁性樹脂の被覆厚さが0.2μm未満であると、金属粒子が表面に露出して帯電性が低下し、樹脂の被覆厚さが1μmを超えると、トナー像の形成後の焼結工程で、加熱分解(消失)し難く、金属粒子の表面に残留し、回路パターンの抵抗が高くなるので不都合である。このような被覆厚さとするためには、金属粉末を、金属粉末100質量部当たり5〜30質量部の樹脂と混合することが好ましい。
本発明においては、トナーに適切な帯電性を付与するために、上記の金属粒子又は金属酸化物粒子を被覆する絶縁性樹脂が、例えば水酸基やアミノ基などの極性基をもち、正極性又は負極性に帯電し易い樹脂であるか、あるいは正極性または負極性の電荷を付与する荷電制御物質が添加された樹脂であることが好ましい。正の荷電制御物質としては、例えば、ニグロシン塩基類及びその誘導体、四級アンモニウム塩、ナフテン酸又は高級脂肪酸塩類、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、トリフェニルメタン染料、側鎖にこれら正極性物質をもつオリゴマーあるいはポリマー、四級ピリジニウム、高級脂肪酸の金属塩を用い得る。負の荷電制御物質としては、含金属(Cr又はFe)アゾ錯体染料、サリチル酸又はその誘導体のクロム・亜鉛・アルミニウム・ホウ素錯体を用い得る。但し、これらの荷電制御物質は被覆樹脂と分散媒に対して溶解度の差があり、絶縁性樹脂に対する溶解度が高い材料又は樹脂に分散した際の親和性が高い材料を使用することが望ましい。荷電制御性物質の含有量は、絶縁性樹脂10質量部当たり0.5〜2質量部の範囲にあることが好ましい。荷電制御物質の含有量が0.5質量部未満であると帯電量が不足し、一方その含有量が2質量部を超えると地かぶりが増大する。
絶縁性樹脂には、荷電制御物質と共に、必要に応じ、例えば着色剤を含有することができる。着色剤としては、公知の無機顔料、有機顔料又は染料を使用できる。赤色着色剤としては、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、黄色着色剤としては、クロムエロー、セラミックエロー、緑色着色剤としては、クロムグリーン、フタロシアニングリーン、青色着色剤としては、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルーなどが挙げられる。これらの着色剤は樹脂との相溶性を考慮して選定することが望ましい。
またトナーの流動性を付与させるために、トナー粒子の表面に、流動化剤、例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤やシリコーンオイルなどで疎水化処理された無機微粉末(シリカ、チタニア、アルミナ等)を添加することが好ましい。その添加量は、トナー粒子100質量部当たり0.3〜1質量部の範囲にあることが好ましい。添加量は、0.3質量部未満であると効果が無く、一方含有量が1質量部を超えるとトナー粒子の表面から離脱し易くなり、画像を汚す。
本発明の製造方法は、金属又は金属酸化物からなる導電性粒子と前記導電性粒子より小粒径の無機酸化物粒子からなる混合粒子を疎水化処理する第一工程と、疎水化処理された混合粒子と荷電制御物質と絶縁性樹脂とを、この樹脂と相溶性がない分散媒に添加し、前記樹脂及び前記分散媒の軟化点以下の温度で加熱混練し、前記分散媒を溶解除去する第二工程と、樹脂被覆混合粒子の表面に流動化剤を添加する第三工程に大別される。
第一工程で得られた混合粒子と、荷電制御性物質を含む絶縁性樹脂と、この樹脂に相溶性のない分散媒との混合物を準備した後、第二工程が行われる。すなわち、この混合物をニーダやミキサーなどでこれを樹脂の軟化点より低い温度で加熱しながら混練することにより、混合粒子を樹脂中に分散させて混合粒子の表面を樹脂で被覆する。上記混合物の加熱温度は、低いと微粒子に分散されず、高いと樹脂の熱分解が生じ易くなるので、樹脂の軟化点よりも10〜30℃低い温度に設定することが望ましい。この混練物を熱水中に投入し、攪拌することにより分散媒を溶解させてから、例えば遠心分離機により樹脂被覆金属粒子を分離する。次いでこの樹脂被覆金属粒子を洗浄(例えば水洗及びアルコール洗浄)、乾燥した後、粒子の表面に流動化剤を添加混合することにより、金属粒子が熱可塑性樹脂で被覆されかつ被覆樹脂中に荷電制御性物質が添加された金属粒子からなるトナー粒子が製造される。
上記のように非水系エマルジョンによる相分離法によりトナー粒子が作成されることにより、絶縁性樹脂中に添加物(例えば荷電制御性物質)が均一に分散される。相分離とは、2種以上の成分からなる均一な混合物が平衡条件(温度、圧力、濃度など)に応じて2つ以上の相に分離することであると定義されるが、本発明では、導電性粒子と前記導電性粒子より小粒径の無機酸化物粒子からなる、疎水化処理された混合粒子と荷電制御性物質を含む樹脂を水以外の溶媒に分散させてから相分離を行うので、非水系エマルジョンによる相分離法によりトナー粒子が得られることになる。
上記の非水系エマルジョンによる相分離法を実施する場合、熱可塑性樹脂に相溶性のない分散媒としては、その樹脂を実質的に膨潤もしくは溶解しない溶剤を使用することが好ましい。すなわち樹脂の溶解度パラメータ{SP値(MJ/m3)1/2}と離れたSP値を有する溶剤を選定すればよい。具体的な溶剤としては、ポリエチレンオキサイド、エチレングリコール(SP値:29.1)、プロピレングリコール、ポリビニールアルコールなどが挙げられる。分散媒を溶解除去し易くするために、これらの溶剤の内では、軟化点が低い(130℃以下)のもの、例えばポリエチレングリコール(エチレングリコールの重合体または酸化エチレンの重合体でその両末端にヒドロキシル基をもつ化合物)が好ましい。ポリエチレングリコールは、水溶性でかつ樹脂の溶融温度又は粘度を低下させる機能を有するので、本発明において有効に使用することができる。また、樹脂のSP値は、例えばポリスチレン:18.7(理論値、以下も同様)、ポリプロピレン16.6、エポキシ:約22.5、ポリアミド(ナイロン66):27.8、PTFE:12.7、ニトロセルロース:21.4である。なお、上記の各SP値は、「大石:高分子材料の耐久性、第74頁、工業調査会(1993)」に記載された値である。溶剤の使用量は、樹脂100質量部に対して、120〜200質量部の範囲が好ましい。
本発明のトナー粒子は、体積平均粒径が2〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が2μm未満であると、地かぶりが多くなり、また平均粒径10μmを超えると精細な画像が得られなくなるので、好ましくない。好ましい粒径の範囲は、4〜8μmである。上記の平均粒径は、コールターマルチサイザー(コールターカウンター社製)により測定した粒度分布から算出した値である。上記トナー粒子は、鮮明なトナー像を得るために、トナーの体積固有抵抗は、並行平板セルにてDC1、000V/cmの電界で測定した時に1014Ωcm以上の体積固有抵抗を有するような絶縁性を示すことが好ましく、また焼成後のトナー像は、電気回路を形成するために、106Ωcm以下の体積固有抵抗を有するような導電性を示すことが好ましい。さらにトナー粒子は、鮮明な画像を得るために、絶対値で10〜30μc/gの範囲にある摩擦帯電量を有することが好ましい。この摩擦帯電量は、トナーをフェライトキャリア(平均粒径100μm、Cu−Zn系フェライト)と混合し(トナー濃度5質量%)、容器内で振動させて摩擦帯電させた後、市販のブローオフ粉体帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−500)により測定した値である。
本発明においては、上記のトナーを使用して、例えば次のような工程にしたがって回路パターンを形成することができる。感光体の表面を一様帯電後露光する(回路パターンを書き込む)ことにより形成した静電荷像を、上記のトナーを用いて現像することにより、トナー像を形成する。本発明のトナーは非磁性で、かつ比重が大きく、具体的には、トナーの嵩密度は、1.5〜3×103kg/m3の範囲にあり、樹脂と着色剤(顔料)を主体とする通常のトナーの3倍以上の値を示す。このように比重が大きい非磁性トナーを磁性キャリアと混合して、磁気ブラシ現像法で静電荷像を現像する場合、図1に示す構造を有する二成分現像装置により画像形成を行うことが好ましい。図1において、矢印で示す時計方向に回転する感光体(例えばOPCドラム)1の周囲には、現像装置2が配置されている。現像装置2は、トナーと磁性キャリアからなる現像剤20を収容する現像剤容器21と、感光体1の表面に接触又は近接して設けられ、バイアス電圧源23に接続された現像ローラ22と、現像ローラ22の表面に近接してトナーの薄層を形成する規制ブレード24と、現像ローラ22から掻き落とされた現像剤と新たなトナーを混合する攪拌ローラ25とを有する。現像ローラ22は、表面に複数個の磁極を有する一対の磁石ローラ26、27とこれらの外周面に巻回された非磁性ベルト28を有し、非磁性ベルト28を図示矢印で示す反時計方向に回動させるために、一方の磁石ローラ27はモータ等の駆動源(不図示)に接続されている。磁石ローラ27の代わりに金属製プーリーを使用することも可能である。上記の非磁性ベルトは、例えば、導電性を有しかつ非磁性体からなる、可撓性を有する無端状の薄板で形成される。
現像装置2によれば、攪拌ローラ25により混合されてから現像ローラ22の表面に供給された現像剤20は、規制ブレード24と非磁性ベルト28の表面との間に形成されたドクターギャップdgを通り抜けることにより、所定の厚さに規制されて現像領域に搬送される。次いで、帯電手段及び露光手段(いずれも不図示)により感光体1の表面に形成された静電荷像(不図示)が現像されてトナー像が形成される。非磁性ベルト28の表面に吸着された現像剤は、現像ギャップDgを通過した後、磁石ローラ26、27の中間で非磁性ベルト28から落下し、攪拌ローラ25により現像剤容器21内のトナーと混合されてから現像ローラ22の表面に供給されて、再び前記と同様の工程が繰り返される。このように上記の二成分現像方式により画像形成を行うことにより、現像剤は非磁性ベルト28の表面に保持された状態で磁極と共に現像ギャップDgを通過するので、磁気ブラシの立ち上がりがなく、磁気ブラシが立ち上がる時の遠心力によって現像剤が飛散するのを防止できる。しかも現像ギャップDgを通過した現像剤は一旦非磁性ベルト28から掻き落とされてから再度非磁性ベルト28の表面に吸着される、といった現像剤の入れ替えが行われることになり、多数枚の印字を行っても高品質の画像を維持することができる。
上記のトナー像をセラミック基板(グリーンシート)上に転写し、定着後絶縁性樹脂の分解温度以上の温度で焼結して、トナー像から絶縁性樹脂を除去する(脱バインダーする)ことにより、セラミック基板上に導体からなる回路パターンが形成される。トナー像の転写は、静電転写あるいはローラを用いた加圧転写などの公知の手法を用い得るが、特に熱転写によればセラミック基板上に容易に転写することが可能となる。導電性粒子を被覆する絶縁性樹脂を除去するために、焼結温度は、550〜650℃の範囲に設定し、また生産性の点から、燒結時間は30分以下とすることが好ましい。
上記のようにしてセラミック基板上に形成された回路パターンの導電性は、基板上にベタ黒画像を印字し、熱処理後、四端子法で抵抗値を測定することにより評価される。回路パターンとセラミック基板との密着性は、JIS D 0202−1988に準拠して、回路パターンのサンプルについての機能表面の碁盤目テープ剥離試験を行うことにより評価される。本発明においては、サンプルの機能表面にニチバン社製セロハンテープ「CT−24」を指の腹で密着させた後に剥離し、100のマス目の内剥離されないマス目をカウントし、未剥離のマス目/全マス目が、100/100の場合が密着性良好で、90〜95/100が密着性不良と判断される。
本発明を以下の実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。以下の説明で「部」は全て「質量部」を意味する。
平均粒径が7μmの銀粉100部と平均粒径が0.3μmで、実施例1と同様の組成を有するガラス粉末20部に、オレイン酸をイソプロピルアルコールに溶かした溶液10部を加えて混合処理した後、100℃の温度で2時間加熱処理を行った。この疎水性混合粉とポリエチレンワックス(三井化学社製ワックス200PF、軟化点:120℃)10部と熱分解性樹脂(ニトロセルロース樹脂)10部、負荷電制御剤(オリエント化学工業社製ボントロンE89)1部を高速ミキサー(ヘンシェルミキサー)により混合し、実施例1と同様に混練を行った。得られたペレットに分散媒としてポリエチレングリコール(軟化点:125℃)100部を加え、再び2軸型混練押出機により、130℃で回転数100rpmにて混練した。混練物を熱水中に攪拌しながら分散媒を溶解させた後、遠心分離機を用いて樹脂被覆混合粒子を分離した。この樹脂被覆混合粒子を水、メタノールで洗浄した後、減圧乾燥機を用いて70℃の温度で12時間乾燥した。得られた粉体に疎水性シリカ粉末(RX300、デグサ社製)1部を添加し、高速ミキサーで混合することにより、体積平均粒径が9.5μmのトナー粒子を作成した。いずれのトナー粒子も樹脂で均一に被覆され、不定形状を呈していた。このトナーの体積固有抵抗は、1×1014Ω・cmと絶縁性を示し、またその帯電量は−35μc/gを示した。
直径40mmのOPCドラム(負帯電型有機光導電体)1の周囲に図1に示す現像装置2を設けて、プロセス速度を200mm/secに設定した印字装置を構成し、現像装置に上記のトナーとマグネタイトキャリア(平均粒径が60μm)とをトナー濃度が6質量%になるように混合した現像剤を供給して、20℃、60%RHの環境条件で回路パターンに対応する画像を作成した。画像作成条件は次の通りである。現像装置2は、磁石ローラ26(外径30mmの円筒磁石に、対称10極の着磁を施し、表面磁束密度を800Gとした)にオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)からなる非磁性ベルト28を巻回して構成し、現像ギャップDgを0.8mm、ドクターギャップdgを0.5mmに設定し、また現像ギャップにおいてOPCドラム1と非磁性ベルト28が同方向に移動しかつ周速比が2になるように磁石ローラ27を駆動した。OPCドラム1の表面をコロナ帯電により一様帯電後LEDアレーで露光して静電荷像(表面電位:−480V)を形成し、現像ローラ2に−400Vの直流バイアス電圧を印加して反転現像を行うことによりトナー像を形成した。このトナー像を厚さ0.1mmのセラミックグリーンシート上にローラ転写した後、そのシートを200℃でオーブン定着した結果、トナー厚さが40〜70μmで、かぶりやちりのない鮮明なトナー画像が得られた。このグリーンシートを600℃の温度で10分間焼結し、脱バインダー処理を行った。これにより十分なる導電性を示しかつ基板との密着性の良い回路パターンが得られた。さらに、上記と同様の条件で5000枚の印刷後も、地かぶりや画像欠陥のない良質の画像が得られることが確認された。また上記の現像過程において、現像剤の飛散は、実用上問題のないレベルであることが確認された。
(比較例1)
銅粉とガラス粉末を疎水化処理しない以外は、実施例1と同様の条件でトナーを作成し、実施例1と同様の条件でトナー像の形成を行った。このトナーの体積固有抵抗は、109Ω・cmと低く、また得られたトナー像は、地かぶりの多い画像であった。
(比較例2)
実施例1の現像剤を用いて、1磁極(例えばN極)が現像キャップに位置するように磁石ロールを固定し、その周囲に直径32mmの非磁性スリーブを配置した現像装置を使用し、スリーブを半時計方向に周速比が2になるように回転した以外は実施例1と同様の条件でトナー像の形成を行った。現像剤が飛散し、画像汚れ及び機内汚染を生じることが確認された。
(比較例3)
ガラス粉末を含まない樹脂被覆混合粒子を水洗、洗浄、乾燥して得られた粉体に平均粒径が3μmのガラス粉末を5部添加し、高速ミキサーで攪拌した以外は、実施例1と同様の条件でトナーを作成し、実施例1と同様の条件でトナー像の形成を行った。このトナーはガラス粉末が外添されているので、帯電性が低下し、得られたトナー像は、高湿時において地かぶりの多い画像であった。