JP4092017B2 - 中空状金属多孔質体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフィルター、特に、ガス用フィルター部材に用いられる中空状金属多孔質体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属多孔質体は、各種流体を濾過、精製するためのフィルターに使用され、このフィルターの濾過孔径は1〜100μmである。
半導体製造プロセスに用いられるガス用フィルターについて説明する。半導体製造プロセスにおいては、集積素子の集積度の高度化が急激に進み、集積素子のパターン幅はサブミクロンという微小間隔になってきた。このため、集積素子製造に用いられるプロセスガス(Ar、N2 、H2 、HCl、HF等)を高精度の濾過用フィルターの使用により、集積素子のパターン幅の1/10以上の径の不純物粒子(例えば、0.01μm程度以上の粒子)を除去することが不可欠となる。
一方、フィルター部材のハウジング後には、その製造、検査段階で使用された水分や有機溶媒の除去のためにベーキングが必要となり、フィルターの材質は高分子材料から金属材料へと移行が進み、粒径の小さな金属粉を用いた微細孔径の金属多孔質体が開発されてきた。
【0003】
金属粉は要求される化学組成、粒子径の金属をアトマイズ法で容易に得ることができ、金属の短繊維に比べて安価である。さらに、均一な充填が容易なため均一な孔径分布を持つ金属多孔質体を得ることが可能である。
しかしながら、前述したように、0.01μm程度以上の粒子を気体から捕捉するには、ミクロンオーダの金属粉を用いる必要があるが、この場合、金属多孔質体の空隙率は極めて小さくなり、通気性が著しく低下して、圧力損失が使用に耐えない程度に大きくなる問題がある。
微細孔径で、かつ高空隙率の多孔質体を得るには、その構成粒子の単一形状は微細、イレギュラーで比表面積が大なることが必須条件となる。
【0004】
発明者は、上記問題点を解決するために、構成粒子として採用した偏平粉は、偏平面(偏平部)の厚さがミクロンオーダとなり、比表面積は大きくなり、かつ、充填性が低くなるという知見を基に、偏平度(偏平粉の偏平面の厚さ/偏平粉の最大長さ)の平均値が0.05〜0.5の範囲となる金属偏平粉から成形された金属多孔質体を開発した(特願平9−38041号参照)。
この金属偏平粉から成形された金属多孔質体は微細な空隙を有すると共に、空隙率が大きくできるので、0.01μm程度以上の不純物粒子の捕捉率が向上すると共に、優れた通気性を有するものであり、ガス用フィルター部材として優れた特性を有することを明らかにした。
【0005】
さらに、金属偏平粉を金属多孔質体中におけるガスの通過方向に配向させた金属多孔質体は通気性がさらに改善できると共に、金属多孔質体の孔径を小さくでき、微細な不純物粒子の捕捉率を向上できることを明らかにした。
【0006】
この金属多孔質体は、実施例で使用する図6に示すような、半導体製造プロセスに用いられるガス用フィルター11(実際に使用される場合は、16のOリングの部分に溶接が施される)の部材として用いることが可能となった。このガス用フィルター11は、有底の中空状金属多孔質体であるフィルター本体12とガス出口側ハウジング13とガス入口側ハウジング14とから構成されている。フィルター本体の端部12aをガス出口側ハウジングのフィルター固定部13aにプレスにより圧入してメカニカルシールを行った。この金属多孔質体は、強度と変形能を有するため、メカニカルシールの際に破損することなく、確実にハウジングとフィルター本体との間をシールできた。
この金属多孔質体を用いたガス用フィルターは、微細な不純物粒子の捕捉が可能であり、優れた通気性を有していることを確認した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記金属多孔質体は、半導体用のガス用フィルターとして優れた特性を発揮してきたが、ガス用フィルターの使用条件の過酷化に伴い、すなわち、濾過ガスの処理量を増加させるための濾過ガス圧の昇圧および使用期間の長期化により、使用中にフィルター本体12とガス出口側ハウジングガス出口側13のメカニカルシール部15(図6参照)からガスリークの危険性が生じた。
ガスリークは、ガス用フィルターに要求される0.01μm程度以上の粒子の捕捉率が低下するだけでなく、メカニカルシール時に変形した金属偏平粉が剥離する問題が生じる可能性がある。
このガスリークは、メカニカルシール部15において、濾過ガスのガス用フィルターを通過する際の微圧振動が長期間にわたり加わることにより、メカニカルシール部15のフィルター本体の端部12aが金属疲労により塑性変形し、端部12aとハウジングのフィルター固定部13aとの間に空隙が生じることにより起こるものと考えられる。
現在、使用されている条件は、濾過ガス圧0.5kgfG/cm2 (1.5×105 Pa)で数年にわたることが多く、また、メカニカルシール部の耐圧性は、常用ガス圧(0.5kgfG/cm2 )の10倍以上であることが望ましく、具体的には、5kgfG/cm2 (5.9×105 Pa)以上の耐圧性が要求される。
【0008】
そこで本発明は、金属偏平粉を用いて、フィルター本体とハウジングのメカニカルシール部のガスリークを防止でき、通気性に優れた中空状金属多孔質体を提供することを目的とするものである。特に、微細な不純物粒子を除去可能なガス用フィルターに用いる中空状金属多孔質体を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者は、前述した従来技術における問題点を解決すべく、フィルター本体に用いた中空状金属多孔質体とハウジングのメカニカルシール部のガスリークに及ぼす要因について、鋭意研究を重ねた。そして、ハウジングから中空状金属多孔質体を抜き出して観察したところ、金属偏平粉の偏平面が外表面に沿う方向に配向された金属偏平粉の比率の小さい金属多孔質体の端部ほど塑性変形量が多く、そして、端部の外表面部の金属偏平粉の偏平面の先端部の折り曲げ変形の傾向が顕著であることが観察され、表面粗度が粗くなっていることを見い出した。この結果より、ハウジングのフィルター固定部へ中空状金属多孔質体の端部を圧入する際に、表面粗度の粗くなる金属多孔質体ほど、圧入する際の摩擦抵抗増大して圧入荷重が大きくなり、金属多孔質体の端部の塑性変形量が多くなった状態で圧入されている。このため、ハウジングのフィルター固定部と中空状金属多孔質体の端部との間に生じる弾性歪量が低くなった結果、メカニカルシール部の金属多孔質体の端部の疲労特性が低下して、使用中にガスリークが生じる危険性があるという知見を得た。
【0010】
本発明は、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成されることにより、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善して、ハウジングのフィルター固定部へ中空状金属多孔質体の端部を圧入する際の摩擦力を低減させることにより、端部の塑性変形量を少なくし、弾性歪量を高く維持してメカニカルシール部のガスリークを防止が可能となる知見の基づき本発明を完成した。
【0011】
さらに、表面層において、中空状金属多孔質体の本体の外表面に沿って偏平面が配列される金属偏平粉の粒子数は厚さ方向に1個以上あればよく、中空状金属多孔質体の通気性を低下させることなく、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善できる。
さらにまた、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成されるために、適正な振動条件で金属偏平粉型へ充填することにより、上述の中空状金属多孔質体の集合体が得られるという知見の基づき本発明を完成した。
【0012】
本発明のうちで請求項1記載の発明は、偏平度の平均値が0.05〜0.5の範囲の金属偏平粉から成形された中空状金属多孔質体であって、 前記金属偏平粉の内の60vol%以上が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されてなるとともに、 前記中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成されてなることを特徴とするものである。ここで、金属偏平粉が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されているとは、金属偏平粉の偏平面の方向が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間となることを意味する。金属偏平粉の内の60vol%以上が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されてなる中空状金属多孔質体であることによって、通気性を改善できるとともに、孔径を小さくできることにより微細な不純物粒子の捕捉が可能となる。
【0013】
ここで、金属偏平粉が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されている状態について、図1のb図により説明する。図1は、本発明の中空状金属多孔質体の構造を説明する模式図であって、図bは図aの中空状金属多孔質体の断面図のイ部の拡大図である。
図bは、金属多孔質体の外表面近傍の断面状態を説明している。1aは外表面部であり、1bは金属多孔質体の本体部(金属多孔質体の内で表面層を除く部分)を例示している。
本発明の中空状金属多孔質体がフィルター本体として使用される場合、ガスが中空状金属多孔質体の厚さ方向、すなわち、外表面1cから内表面に通じる方向に流れることにより、金属多孔質体を通過する距離が短くなり、通気性が向上する。
そこで、本発明では、金属偏平粉が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されてなる部分、すなわち、図bのハ部の部分を金属偏平粉の低角度配向部と定義する。
一方、図bのロ部の部分は、金属偏平粉が中空状金属多孔質体の厚さ方向とより45°を越える角度で配向している部分であり、中空状金属多孔質体の本体1b中を通過するガスの流れを阻害する部分となる。
【0014】
そして、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成されてなる表面層により、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善できる。なぜなら、図1のc図に示すように、中空状金属多孔質体の外表面は、金属多孔質体の外表面に沿う方向に配列された金属偏平粉群、すなわち、平滑な中空状金属多孔質体の表面層部4aで覆われることとなり、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善されるのである。
この結果、ハウジングのフィルター固定部と中空状金属多孔質体の端部を圧入する際に生じる摩擦力を低減でき、メカニカルシールの中空状金属多孔質体の端部の疲労特性を改善できることにより、ガスリーク圧を高くでき、ガスリークを抑制できるものである。
なお、図1のc図の中空状金属多孔質体の外表面の4bは偏平粉端部が露出することとなり中空状金属多孔質体の表面粗度が悪化することとなる。
【0015】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記表面層が中空状金属多孔質体の外表面を覆う面積率、すなわち、外表面における偏平粉の偏平面が当該外表面に沿って配向する比率(以下、単に、「外表面の偏平面配向率」、という)を55%以上にすることを特徴とするものである。
外表面の偏平面配向率を55%以上にすることによって、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善でき、その結果、メカニカルシール部のリークが生じるガス圧を高くでき、ガスリークを抑制できるとともに、優れた通気度を保持できる。
なお、偏平面が表面層に配列された金属偏平粉の積層粒子数は1個以上あれば、中空状金属多孔質体の表面粗度を改善でき、ハウジングのフィルター固定部と中空状金属多孔質体の端部を圧入する際に生じる摩擦力を低減できる。一方、積層粒子数が10個を越えると通気性を低下させる。
さらになお、前記表面層が前記中空状金属多孔質体の本体の外表面を覆う部分が、メカニカルシールを行う中空状金属多孔質体の部位のみであってもよい。
【0016】
本発明の中空状金属多孔質体に使用する金属偏平粉は、偏平度(偏平粉の偏平面の厚さ/偏平粉の最大長さ)の平均値が0.05〜0.5の範囲、平均粒子径が3〜20μmの範囲であり、そして、本発明の中空状金属多孔質体の空隙率が40〜55vol%の範囲にすることが好ましい
偏平度の平均値が0.05〜0.5の範囲となる金属偏平粉の集合体とすることによって、中空状金属多孔質体の空隙率を向上させ、その結果、中空状金属多孔質体の通気性を改善する。偏平度の平均値が0.5を越えると、空隙率が減少して通気性が著しく悪化する。また、偏平度の平均値が0.5以下であれば良好な通気性が得られるが、金属微粉の偏平加工に限界があるとともに、加工コストが著しく高くなることより、偏平度の平均値は0.05以上が好ましい。
金属偏平粉の平均粒子径が3〜20μmの範囲とすることによって、微細な不純物粒子の捕捉が可能となる。このとき、金属偏平粉の平均粒子径は体積粒子径を用いる。体積粒子径とは、この粒子が持つ体積を粒子が球形と仮定して求めた粒子径である。金属偏平粉の平均粒子径が3μm未満では充填性が著しく低下し、さらにこの多孔質体の空隙の閉空隙に比率が高まり通気性を著しく低下する。また、金属偏平粉の平均粒子径が20μmを越えると微細な不純物粒子の捕捉率が低下する。
【0017】
また請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の中空状金属多孔質体が、金属偏平粉を振動充填により型に充填された金属偏平粉の集合体を焼結して製造されてなることを特徴とするものである。
適正な振動条件で金属偏平粉を型へ充填することにより、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層を有する集合体が得ることができる。
このときの振動条件として、中空状金属多孔質体の形状や寸法により、周波数(28〜100kHz)、振動時間(10秒〜2分)の範囲で、適宜選択することにより、本発明の中空状金属多孔質体の集合体を効率よく得ることができる。
【0018】
また請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3に記載の中空状金属多孔質体に用いられるガス用フィルター部材である。本発明の中空状金属多孔質体をガス用フィルター部材に用いることにより、通気性が向上し、微細な不純物粒子の捕捉が可能となり、耐久性の向上が可能となる。特に、半導体製造プロセスに用いられるガス用フィルターとして優れた特性を発揮する。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を説明する。
実施例の説明に先立ち、中空状金属多孔質体のバブルポイント圧、ガス流量、リーク圧および外表面の偏平面配向率、並びに金属偏平粉の低角度配向部の比率(体積率)の測定方法について説明する。
(1)中空状金属多孔質体のバブルポイント圧およびガス流量の測定方法
バブルポイント圧は種々の多孔質体の孔径の測定に用いられるもので、このバブルポイント圧が低いほど多孔質体の孔径が小さいものとなる。
バブルポイント圧の測定は図5の図aに示す試験装置により、純水を用いて行った。予め、純水に浸した測定対象フィルター9、すなわち、図6の図aに示されるハウジング13にメカニカルシールしたフィルター本体12(有底の中空状金属多孔質体)を水平にして、タンク10内に取り付ける。次に、タンク10内に純水をいれ、その水面を測定対象フィルター9の上端から15mmの高さにする。
そして、測定対象フィルター9内部に空気を空気源5より送り、測定対象フィルター9より最初に気泡(バブル)が発生したときの空気圧PA (初期バブルポイント圧)を圧力計8により読み取る。
さらに、空気流量を増加させて、空気流量と空気圧の変化率が一定になるまで継続する。その値をグラフに表すと、図5の図bに示すようになり、空気流量と空気圧の変化率が一定となった直線と、初期バブルポイント圧Paからの直線との交点の圧力(PB :バブルポイント圧)を求める。
【0020】
図3、図4における中空状金属多孔質体のガス流量は、空気圧が1kgfG/cm2 (2.0×105 Pa)になった時の、空気流量を流量計7により読み取り、測定したものである。
【0021】
(2)中空状金属多孔質体のリーク圧の測定方法
リーク圧の測定は、前記バブルポイント圧を測定した測定対象フィルター9を乾燥させた後、実用下でのメカニカルシール部の安全性に対する促進試験を行った後に実施した。この促進試験は空気流量300Nl/分に固定し、常用空気圧の10倍に相当する試験空気圧5kgfG/cm2 (5.9×105 Pa)以上で、100日間連続運転させたものである。
この促進試験後の供試材について、メカニカルシールを行ったフィルター本体12とハウジング13の隙間を残して、測定対象フィルター9のフィルター本体12の外表面全体をウレタンでコーティングした。
その後、前記バブルポイント圧の測定方法と同様に、測定対象フィルター9をタンク10内の純水中へ浸漬して、空気を空気源5より送り、測定対象フィルター9のメカニカルシール部からの最初に気泡の発生した空気圧PC (リーク圧)を圧力計8により読み取る。
【0022】
(3)中空状金属多孔質体の外表面の偏平面配向率の測定方法
測定対象の中空状金属多孔質体の外表面を、走査型電子顕微鏡により20視野撮影し、撮影した走査型電子顕微鏡写真(倍率:200倍)について画像解析を行い、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層(図1の図cに示す表面層部4aが相当する。)の面積率、すなわち、外表面の偏平面配向率を測定した。
【0023】
(4)中空状金属多孔質体の金属偏平粉の低角度配向部の比率(体積率)の測定方法
中空状金属多孔質体のガス流量を測定後のフィルター本体(中空状金属多孔質体)を、中空状金属多孔質体の長手方向と、長手方向に直角方向(厚さ方向)に、それぞれ切断し、各断面を研摩後、中空状金属多孔質体の本体の断面研摩部を光学顕微鏡により各20視野撮影し、撮影した光学顕微鏡写真(倍率:400倍)について画像解析を行い、中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向(低角度配向)されている金属偏平粉の面積率を画像解析により測定した。この金属偏平粉の面積率により、金属偏平粉の低角度配向部の比率(体積率)とした。
【0024】
(第1実施例)
次に、本発明の第1実施例を、図2と図3により説明する。第1実施例は、平均粒子径(体積粒子径)11μmのステンレス鋼微粉(SUS316L)を偏平化処理により製造した偏平粉(偏平度:0.11)を用いて、外表面の偏平面配向率を約40〜100%の範囲に変化させた中空状金属多孔質体のリーク圧、バブルポイント圧およびガス流量に及ぼす外表面の偏平面配向率の影響について調査した結果である。このときの前記中空状金属多孔質体の空隙率は51±2vol%の範囲、金属偏平粉の低角度配向部の比率は80±5vol%の範囲にした。
なお、本実施例に使用した中空状金属多孔質体の外表面の表面粗度は外表面の偏平面配向率の増加と共に、目視によって改善されていることを確認した。さらに、確認のために、表面粗さ計で測定した外表面の偏平面配向率が43%の金属多孔質体の平均粗さ(RA )は11μmであり、外表面の偏平面配向率が75%の金属多孔質体の平均粗さ(RA )は6μmであった。
【0025】
図2に示されるように、外表面の偏平面配向率の増加とともに、リーク圧は高くなり、外表面の偏平面配向率が55%以上で、リーク圧は5kgfG/cm2 (5.9×105 Pa)以上となることが判明した。この5kgfG/cm2 のリーク圧は常用のガス圧0.5kgfG/cm2 の10倍の安全率である。
このとき、リーク圧は外表面の偏平面配向率が75%まで急激に増加することが判明した。
前述したように、金属多孔質体の表面粗度が改善されたことにより、メカニカルシールのために金属多孔質体の端部をハウジングに圧入する際の摩擦力を小さくでき、メカニカルシール部の金属多孔質体の端部の疲労特性を改善して、ガスリークの安全性を向上できた。
さらに、パブルポイント圧は、外表面の偏平面配向率の増加とともに増加し、多孔質体の孔径を小さくでき、微細な不純物粒子の捕捉率を増加させることがが判明した。
【0026】
一方、図3に示されるように、ガス流量は外表面の偏平面配向率の増加とともに低下するが、その低下比率はわずかであり、外表面の偏平面配向率が99%の本発明の多孔質体のガス流量は50Nl/分以上であり、実用上問題がないことが判明した。
【0027】
本発明の第1実施例の供試材の詳細な製造方法およびガス用フィルターとしての特性の測定手順について、以下に詳しく説明する。
本実施例の供試材の金属偏平粉は、アトマイズ法で製造した、平均粒子径11μm(体積粒子径)のステンレス鋼微粉(SUS316L)をボールミル中に装入して処理したステンレス鋼偏平粉(偏平度:0.11)である。ボールミルはN2 雰囲気中で乾式混合して行った。
このステンレス鋼偏平粉を底付きのステンレス鋼(SUS304)製円筒状金型(充填部長さ:40mm、充填部外径:20mm、充填部内径:17mm、充填底部厚さ:2mm)に充填した。この充填の際に、この円筒状金型を立てて、超音波振動装置にセットした後、超音波振動装置の振動条件を変化させて、外表面の偏平面配向率を約40〜100%の範囲に変化させるとともに、金属偏平粉の低角度配向部の比率が約80vol%となるように、ステンレス鋼偏平粉の集合体を製造した。
このとき、超音波振動装置の振動条件は、
・周波数 :28〜100kHz
・振動時間:10秒〜2分
の範囲で、適宜変化させて、前記ステンレス鋼偏平粉の集合体を製造した。
【0028】
次に、この円筒状金型に充填したままの前記集合体を、Ar雰囲気中で焼結(1100℃−2時間)して、図1の図aに示すような有底の中空状金属多孔質体(フィルター本体)を製造した。
予め、この有底の中空状金属多孔質体の外表面を、走査型電子顕微鏡により写真撮影し、画像解析により、この中空状金属多孔質体の外表面の偏平面配向率を測定し、外表面の偏平面配向率が42〜99%となる供試材を得た。
さらに、この中空状金属多孔質体の空隙率を測定し、空隙率は51±2vol%の範囲となることを確認した。このとき、空隙率は中空状金属多孔質体の寸法と重量の測定を行い、計算により求めた。
【0029】
この中空状金属多孔質体(フィルター本体)を、図6のに示すように、フィルター本体の端部12aをガス出口側ハウジングのフィルター固定部13aにプレス(プレス荷重:200kgf)により圧入してメカニカルシールを行い、バブルポイント圧、リーク圧およびガス流量の測定対象フィルターを製造した。
【0030】
この測定対象フィルターについて、ガス流量およびバブルポイント圧を測定後、前述したように、空気流量300Nl/分に固定して、空気圧:5kgfG/cm2 (5.9×105 Pa)以上で、100日間連続運転した。その後、メカニカルシールを行ったフィルター本体12とハウジング13の隙間を残して、測定対象フィルター9のフィルター本体12の外表面全体をウレタンでコーティングした後、リーク圧を求めた。図2、図3は、これらの結果を基に作図したものである。
その後、リーク圧を測定した供試材の金属偏平粉の低角度配向部の比率の測定を行こない、供試材の金属偏平粉の低角度配向部の比率が80±5vol%の範囲となることを確認した。
【0031】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を、図4により説明する。第2実施例は、第1実施例と同じステンレス鋼偏平粉を用いて、金属偏平粉の低角度配向部の比率を約30〜90%の範囲に変化させた中空状金属多孔質体のガス流量に及ぼす金属偏平粉の低角度配向部の比率の影響について調査した結果である。このときの前記中空状金属多孔質体の空隙率は51±2vol%の範囲、外表面の偏平面配向率を75±5%の範囲にした。
【0032】
図4に示されるように、金属偏平粉の低角度配向部の比率の増加とともにガス流量は増加し、低角度配向部の比率が60vol%以上でガス流量は50Nl/分以上となることが判明した。
【0033】
本発明の第2実施例の供試材の詳細な製造方法およびガス用フィルターとしての特性の測定手順について、以下に詳しく説明する。
第1実施例と同じステンレス鋼偏平粉を、第1実施例と同じ円筒状金型に充填した。この充填の際に、この円筒状金型を超音波振動装置にセットした後、超音波振動装置の振動条件を変化させて、金属偏平粉の低角度配向部の比率を約30〜90vol%の範囲に変化させるとともに、外表面の偏平面配向率が約75%になるようステンレス鋼偏平粉の集合体を製造した。
この円筒状金型に充填したままの前記集合体を、第1実施例と同じ条件で焼結して、有底の中空状金属多孔質体(フィルター本体)を製造した。
予め、この有底の中空状金属多孔質体の外表面の偏平面配向率を測定し、外表面の偏平面配向率が75±5%範囲となることを確認した。
さらに、この中空状金属多孔質体の空隙率を測定し、空隙率は51±2vol%の範囲となることを確認した。
この中空状金属多孔質体(フィルター本体)を、第1実施例と同じ条件でガス流量を測定した。その後、ガス流量を測定した供試材の金属偏平粉の低角度配向部の比率の測定を行こなった。図4はこの結果を基に作図したものである。
【0034】
本発明の実施例は有底の中空状多孔質体をガス用フィルターに用いたが、本実施例に限定されることなく、液体用フィルターに用いることができる。さらに、底のない中空状多孔質体も容易に製造でき、この中空状多孔質体はガス又は液体用フィルターに用いることができる。
さらに、本発明の中空状金属多孔質体の充填の型にステンレス鋼(SUS304)を用いたが、他の耐熱金属材料等を用いることができる。そして、焼結雰囲気は、Ar雰囲気だけでなく、真空、非酸化性雰囲気、還元雰囲気を使用してもよい。
さらにまた、金属粉の組成についても、本実施例に限定されることなく、用途により変えることができる。例えば、耐食性を要求される用途では、本実施例のステンレス鋼粉だけでなく、Ti粉、Ni粉等を用いることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明の中空状金属多孔質体は、通気性を改善するために、金属偏平粉の内の60vol%以上が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されてなるとともに、中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成により、金属多孔質体の表面粗度を改善して、ハウジングのフィルター固定部へ中空状金属多孔質体の端部を圧入する際の摩擦力を低減させることにより、端部の塑性変形量を少なくして、メカニカルシール部のガスリークの抑制を可能とするものである。
【0036】
請求項2記載の発明は、金属偏平粉の偏平面が中空状金属多孔質体の外表面に沿う方向に配向されてなる表面層が、中空状金属多孔質体の外表面を覆う面積率(外表面の偏平面配向率)を55%以上にすることにより、金属多孔質体の表面粗度をさらに改善でき、メカニカルシール部のガスリークの抑制がさらに確実となる効果を有する。
請求項3記載の発明は、金属偏平粉を振動充填により型に充填された金属偏平粉の集合体を焼結することにより、本発明の中空状金属多孔質体を工業的に容易に製造することを可能とするものである。
請求項4記載の発明は、本発明の中空状金属多孔質体をガス用フィルター部材に用いることにより、通気性が向上し、微細な不純物粒子の捕捉が可能となり、耐久性の向上を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空状金属多孔質体の構造を説明する模式図であって、図aは中空状金属多孔質体の断面図であり、図bはイ部の拡大図であり、図cは中空状金属多孔質体の外表面の状態を説明する図である。
【図2】本発明の実施例の中空状金属多孔質体のリーク圧およびバブルポイント圧に及ぼす外表面の偏平面配向率の影響を示す図である
【図3】本発明の実施例の中空状金属多孔質体のガス流量と外表面の偏平面配向率との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例の中空状金属多孔質体のガス流量と金属偏平粉の低角度配向部の比率との関係を示す図である。
【図5】フィルター部のリーク圧およびバブルポイント圧の測定方法を説明する図であって、リーク圧およびバブルポイント圧の測定装置の模式図であり、図bはリーク圧およびバブルポイント圧を求めるための説明図である。
【図6】ガス用フィルターの構造を説明する模式図であって、図aはガス用フィルターの断面構造図であり、図bはメカニカルシール部15近傍の拡大図である。
【符号の説明】
1 中空状金属多孔質体
1a 外表面部
1b 中空状金属多孔質体の本体
1c 中空状金属多孔質体の外表面
2 中空状金属多孔質体の中空部
3 中空状金属多孔質体の底部
4 金属偏平粉
4a 中空状金属多孔質体の表面層部(金属多孔質体の外表面に沿って配列された金属偏平粉群)
4b 中空状金属多孔質体の外表面における偏平粉端部
5 空気源
6 空気フィルター
7 流量計
8 圧力計
9 測定対象フィルター
10 タンク
11 ガス用フィルター
12 フィルター本体(有底の中空状金属多孔質体)
12a フィルター本体の端部
13 ハウジング部(ガス出口側)
13a ハウジング部フィルター固定部
14 ハウジング部(ガス入口側)
15 メカニカルシール部
16 Oリング

Claims (4)

  1. 偏平度の平均値が0.05〜0.5の範囲の金属偏平粉から成形された中空状金属多孔質体であって、
    前記金属偏平粉の内の60vol%以上が中空状金属多孔質体の厚さ方向とこの方向から45°の間に配向されてなるとともに、
    前記中空状金属多孔質体の外表面の金属偏平粉の1部又は全部が、その金属偏平粉の偏平面を当該外表面に沿う方向に配向されてなる表面層に形成されてなることを特徴とする中空状金属多孔質体。
  2. 前記表面層が中空状金属多孔質体の外表面を覆う面積率が55%以上である請求項1記載の中空状金属多孔質体。
  3. 前記中空状金属多孔質体が金属偏平粉を、周波数:28〜100kHz、振動時間:10秒〜2分の条件で、振動充填することにより型に充填された金属偏平粉の集合体を焼結して製造されてなる請求項1又は2に記載の2層構造を有する中空状金属多孔質体。
  4. ガス用フィルター部材に用いられる請求項1又は2又は3に記載の2層構造を有する中空状金属多孔質体
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