JP2857494B2 - 積層濾材、及びこの積層濾材を用いたフィルタ - Google Patents

積層濾材、及びこの積層濾材を用いたフィルタ

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JP2857494B2 JP5506457A JP50645792A JP2857494B2 JP 2857494 B2 JP2857494 B2 JP 2857494B2 JP 5506457 A JP5506457 A JP 5506457A JP 50645792 A JP50645792 A JP 50645792A JP 2857494 B2 JP2857494 B2 JP 2857494B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、液体、気体などを高精度に濾過しうる積層
濾材、及びこの積層濾材を用いたフィルタの改良に関す
る。
背景技術 近年、高分子ポリマーなどの数μm程度の異物を除去
する液体の濾過とともに、例えば半導体を中心とする電
子分野で用いるプロセスガスにおいては、0.1μm程度
以下の異物を濾過する気体の濾過が必要となるなど、濾
過精度の向上が望まれ、また濾過に際して、圧力損失を
減じることが要請されている。
とくに前記半導体の製造においてプロセスガスの濾過
用として使用するものは、システムのベーキング処理の
ために耐熱性が必要となり、かつ腐蝕性ガスを用いるこ
とがあるため、耐蝕性も要求される。さらに靱性、可撓
性などの特性に加え、ハウジングへの取付性、後加工の
容易性なども望まれる。なおベーキング処理とは、フィ
ルタを含む濾過システム全体を、例えば200〜400℃程度
に加熱し、システム内に付着し、存在する有害な水分な
どを予め除去するものである。
ところで、フィルタの材質として、高分子材料、セラ
ミック、金属などが用いられているが、高分子材料から
なるものは、耐熱性、耐蝕性の理由により、使用範囲が
制限され、またセラミックを用いるものは、靱性、可撓
性に劣り、欠け、切損などが生じやすい。しかもガス濾
過用として用いるべくハウジングに収容するときにも溶
接をなしえないため、ハウジングとの接続部に高弾性ゴ
ムなどの非耐熱材を利用して封止しなければならないと
いう不都合もある。
さらに精密濾過用フィルタにおいては、ガス用、液体
用を問わずフィルタ自体からの不純物の発生を極力抑制
しなければならない。このような不純物は、濾過後の液
体、気体に混入し、濾過精度を著しく低下させる。また
かかる不純物として、高分子を素材としたフィルタ、パ
ッキン類を使用するときに生じるこの高分子材料自体か
らの水分、ハイドロカーボン等の他、とくに粉体、粒子
を用いてフィルタを成型するに際して、その保形のため
に混入する有機バインダなどの結合材が不純物の発生源
であることが見出された。
このような結合材は、成形された予備成形品の焼結、
焼成によって、大部分は気化し除去しうるとはいえ、成
形品の奥部のものは完全に除去されることなく残留し易
く、また焼結、焼成により結合材は炭化物として存在す
ることがあり、精密濾過用のフィルタ、特に前記プロセ
スガス濾過用のフィルタにおいては、かかる不純物のな
いことが不可欠の要件となっている。
他方、微細粒子を混合した懸濁液に多孔質からなる支
持体を浸漬し、かつ内圧を低下することによって支持体
の一面に粒子層を形成するいわゆる湿式吸引成形法が知
られている。
又この湿式吸引成形法について、例えば特公昭56−86
43号公報(以下前者という)、特公昭63−66566号公報
(以下後者という)などのものが提案されている。
前者は、粉体を懸濁液とすることなく粉体のまま用い
る場合の他、粉体を結合材を用いない懸濁液とし、支持
体に粉体層を形成することも示している。
しかしながら、この前者のものは、支持体として管体
を用いること、しかも支持体を回転し遠心力によって付
着させることを要件としている。さらに懸濁液を用いる
ときには、粉体層の付着強度を高めるために、内部から
ゴム弾性体、静圧成型を用いて内部から加圧することが
必要であるとしている(同公報5欄33〜6欄39行)。
しかしながら、このようなものでは、管体、しかもそ
の内面に濾過層のあるものしか成形しえず、又工程が複
雑となる他、流れる懸濁液と接触するため、濾過層の厚
さが不均一となりやすく、また積層した粉体の再剥離が
生じる恐れもあり、しかも遠心力、加圧を作用させるた
め、粉体が互いに圧接されることにより、空隙率を減
じ、高能率のフィルタが得られにくい。
又後者のものは、実質的に支持体が管体からなるもの
を開示し、また、支持体に液体を含浸させたのち、流過
する懸濁液に接触させるものであり、工程が複雑である
他、この提案では有機質バインダを添加した懸濁液を用
いる(同公報5欄37〜39行)ことを前提としており、こ
のようなものでは結合材が残留するのは明らかである。
本発明は、結合材を用いることなく、しかも遠心力な
どを加えることなく単なる懸濁液への浸漬および真空引
きによって、焼結しうるに足る保形性をうること見出し
完成したものであり、従って本発明は、高精度、低圧損
かつ均質であって、結合材を用いない積層濾材、及びこ
の積層濾材を用いたフィルタの提供を目的としている。
発明の開示 本発明の積層濾材は、多孔質の金属からなる支持体
(2)に該支持体(2)の孔径より微細な粒子からなる
粒子層(3)を前記支持体(2)の少なくとも一つの面
に積層した積層濾材であって、支持体(2)の前記一つ
の面は凹凸(5)をなし、かつ前記粒子層(3)は、平
均アスペクト比2〜15の金属短繊維、又はこの金属短繊
維と金属粉との混合粉からなる前記粒子を、結合材を用
いることなく懸濁した懸濁液(15)に前記支持体(2)
を浸漬し、真空引きすることにより該支持体(2)の前
記一つの面に積層、形成されて前記凹凸面に沿うととも
に、支持体(2)と粒子層(3)とを一体に焼結しかつ
前記粒子層(3)は、空孔率を50〜80%としたことを特
徴としている。
本発明の積層濾材を用いるフィルタは、前記積層濾材
を、支持金具に固定したフィルタであって、一面が、前
記積層濾材を固定する該積層濾材の端面に接する金属性
の取付部を有する前記支持金具の前記取付部と前記端面
とを、前記取付部の他面側からしかも前記粒子層を溶融
する溶接によって固定したことを特徴としている。
積層濾材は、金属の焼結体からなるため、強度、耐熱
性、加工性、取付け性などに優れるとともに、粒子は、
支持体の凹凸に沿うため強固な結合が維持される。また
結合材を用いない懸濁液に支持体を浸漬しかつ真空引き
することにより、遠心力、加圧を作用させることなく形
成するため、空隙率を高め、圧力損失を減じ、かつ均質
化でき、濾過能率を向上するとともに、不純物の発生の
ない清浄な高精度濾過を可能とする。又支持体を用いる
ため、強度を維持でき、粒子層の厚さを低減しうる。
さらに粒子が金属短繊維又はそれと金属短繊維との混
合体からなるため、球状の粒子を用いる場合に比してこ
の金属短繊維が互いに接触する機会を増し又大きなから
み合いとともに支持体の一面が凹凸状となっていること
と相まって支持体と金属短繊維、及び金属短繊維間の付
着性、保持性を高め、吸着成形においても結合材を用い
ることなく粒子の保形性を向上できる。
フィルタは前記積層濾材によって形成され、濾過特性
に優れる他、支持金具とは、該支持金具の反対面から溶
接しているため、割れ、クラックがなく、強固な、しか
もパッキンなどの高分子材料を用いることなく、ハウジ
ングへ取付けでき、耐熱性を向上する。
図面の簡単な説明 図1は本発明の一実施例を示す断面図であり、図2は
境界面を例示する拡大断面図であり、図3は支持体と粒
子層を例示する顕微鏡拡大写真であり、図4は支持体の
他の例を示す斜視図であり、図5は支持体の他の例を示
す断面図であり、図6は支持体の他の例を示す断面図で
あり、図7は粒子層に球状の粉末を用いた場合を開示す
る顕微鏡拡大写真であり、図8は製造装置を例示する断
面図であり、図9は支持体の粉体の粒度と粒子層の厚さ
の関係を例示する線図であり、図10はフィルタの一実施
例を例示する断面図であり、図11は溶着部分を拡大する
断面図であり、図12は流量特性を例示する線図であり、
図13は粒子層の厚さと流量特性を例示する線図である。
発明を実施するための最良の形態 本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従
ってこれを説明する。
図1は、積層濾材1が有底カップ状をなす一実施例を
示し、積層濾材1は、本実施例では、支持体2の外側面
である一つの面に粒子層3を積層している。
前記支持体2は、圧力損失が少なく、十分な成形強度
を具え、かつ均一なしかも一面から他面まで連続した孔
を具えることが必要であり、本例では、金属粉末の焼結
体を用いている。
なお金属粉末として、前記粒子層3の粒子に対して、
その平均直径が20〜100倍程度の大きい直径の例えばア
トマイズド粉末を用いることにより、図2に示すよう
に、前記粒子にとっては、相対的に充分に大きい凹凸5
を、前記金属粉末の外形形状により形成する。そのため
例えば#140/200メッシュ〜200/250メッシュ程度のアト
マイズド粉末を採用している。支持体2の粉末の粒度
は、積層濾材の外表面の平滑さに影響し、粗いと粒子層
3の表面にも凹凸が生じがちであるため、外観上、また
表面への異物の付着を防ぐためにも平滑であるのがよ
く、200/250メッシュ程度の粉体が比較的好ましいもの
と考えられる。
さらに耐食性をうるためにステンレス鋼の粉末を用い
る。特に不定形な形状をもつ粉末は、支持体の空孔率を
高め、圧力損失の増加を抑えることができかつ粒子の付
着生を増しうる。
また支持体2の平均孔径は20〜100μm、かつ空孔率
を40〜50%程度とし、圧力損失を低下させる。なお支持
体2には、図2、3に示すように、粒子層3の粒子が内
部に入り込むことがあるが、この支持体への入り込み
は、特に問題ではない。
前記支持体2は、このような粉体を、結合材を用いる
ことなく、約1〜3tトン/cm2のプレス圧で冷間プレス
により成形し、かつ真空炉で例えば1100℃×60min程度
の焼結を行うことによって形成している。
なお支持体2は、前記ステンレス鋼の他、チタン、ハ
ステロイ(登録商標)合金などの金属を用いることもで
き、また粉末に代えて金属の短繊維、長繊維などを焼結
した成形品も使用しうる。さらに、粉末冶金、繊維冶金
とともに金属発泡品、線材メッシュなどの多孔体をも用
いうる。
又支持体2は、カップ型以外にも、板状とすること
も、例えば図4、5に示すように、円筒状、角筒状、ジ
ャバラ状とすることも、意識的に凹凸を形成すること
も、また球体、円錐などの錐体状とすることもできる。
さらに粉末分布に勾配をもたせ、2以上の異なる粉末を
混合しまたは複層構造とすることもできる。
さらに図6は、例えば金属繊維をランダムに配置し焼
結した焼結シートを帽子状に成形した支持体2を例示
し、強度、空孔特性などを容易に選択しうる。このと
き、ステンレス鋼の直径が4〜20μm程度の繊維からな
るシートを用いて、平均空孔径10μm程度、厚さ1〜3m
m程度の支持体2をうることができる。
又支持体2として金網であるメッシュを用いる場合、
一般に線材太さと空孔径との関係が相関しており、微細
空孔を得るには細い線材のメッシュを使用せざるを得
ず、従って強度が劣ることとなるため、同一のメッシュ
の他、例えば線径、目付ピッチなどが異なる複数のメッ
シュ(例えば2〜20枚、好ましくは2〜5枚程度)を一
体に積層した板体を形成した上、曲げ、溶接などの機械
加工により種々な形状に成形するのもよい。
次に粒子層3について説明する。
粒子層3の粒子として、金属短繊維の他、金属の粉末
を用いうる。また粒子は、好ましくは、支持体2と同種
の金属を用いるのがよい。なおステンレス鋼を用いると
きには、耐蝕性の良いSUS316L、SUS317Lなどが良く、例
えば、Hcl、HFのような腐食性のガス、液体を濾過する
ときには、高耐食性のインコネル、モネル、ニッケル、
さらにはハステロイC系、X系(登録商標)などを採用
するのもよい。
なお金属短繊維としては、ステンレス鋼長繊維を機械
的に切断したものに加えて、本出願人が特公昭63−6364
5号公報によって提案した、ステンレス鋼長繊維の結晶
長さを調整し、その結晶粒界を薬品により選択的に腐食
し切断する化学的な方法で切断した金属短繊維を好適に
用いうる。この金属短繊維は全長に亘り同径しかも端部
にダレ、即ち長手軸と交わる向きの鉤状の突出部を有し
ない柱状をなしている。これにより金属短繊維間の絡ま
りを減じ、均質な濾過層を形成しうる。
また粒子は、その粒子径が支持体2の平均空孔径より
も微細であって、金属短繊維を用いるときには、繊維径
0.5〜15μm、好ましくは、0.5〜4μmのものを使用す
る。なお0.5μm以上かつ2μmよりの小の線径の金属
短繊維は近年の本出願人の研究開発によって得られたも
のである。
繊維径15μm以上のものは空孔が大となり、また相互
の付着性にも劣ることが考えられる。しかし細径のもの
が好ましいとはいえ0.5μm以下は製造が困難となる。
かかる細径の金属短繊維を用いることにより、微細な濾
過孔のフィルタが得られ、また空孔径分布を均一化しう
るとともに、支持体2との間、粒子間の金属間結合性を
向上しうることとなる。
なお図2、3で示しかつ前記したように、粒子層3の
支持体2との境界面は、前記支持体の凹凸5に沿い、か
つ支持体2の空孔6内に前記粒子が侵入し、その結果、
支持体2との付着性を増し、かつ焼結後の製品強さを向
上できる。
なお金属短繊維2の前記繊維径とは、各金属短繊維の
全長に亘って各位置、各向きで測定した直径の平均値で
あって、各部短繊維の各位置、向きで測定した値は、平
均値から30%程度の範囲で直径がバラツク程度の全長に
亘り同径のものを用いうる。又同様に、金属短繊維2に
は直径が20%程度異なるものを含むことも許容する。
また金属短繊維のアスペクト比を2〜15程度とする。
アスペクト比が15以上では分散が十分に行いにくく、い
くつかの短繊維が塊状に焼結したものが存在し、均一性
を損なう。また空孔特性の調整、立体的空孔の形成が困
難となる。2以下の場合には粉末に近づき空孔率を小と
し、圧力損失が増加し易い。好ましくは4〜8の範囲で
あって、これにより、金属短繊維が塊状となることを防
ぎ内部欠陥を無くしうる。
アスペクト比とは、短繊維の長さをその直径で除した
値であり、前記提案の化学的方法により切断する金属短
繊維では、正規分布状に長短のアスペクト比の金属短繊
維が混在し、従ってアスペクト比とはその平均値として
定義される。またアスペクト比を前記のように4〜8と
することにより、分布のバラツキを減じうる。
又粒子として、例えばアトマイズド法により製造され
るような球形あるいは不定形の粉末も使用できる。又こ
の場合、粒子径や形状などが異なる複数種類の粉末を混
在させることもできる。なお金属アトマイズド微細粉末
は、前記金属短繊維と同様に小径のもの、粒子径15μm
以下、好ましくは6μm以下のものを用いうる。なお球
形とすることにより、空孔分布を均一化することができ
るが、吸引法によって容易に積層させるには、見かけ密
度の大な粉末が好ましい。このような金属粉は金属短繊
維と混合した混合粉として用いる。なお、図7は参考迄
に粒子としての球状のアトマイズド粉末のみを用いた積
層濾材1の支持体2と粒子層3との境界部分を約800倍
に拡大して示しいる。
前記粒子層3は濾過を行う層であり、その空孔は連続
し、可能なかぎり小径から均一しかも空孔率を大にする
のが好ましい。そのため、空孔率を50%以上かつ80%以
下としている。このように粒子層3の空孔率を50%以上
とすることによって、流体の圧力損失を減じ濾過性能を
高めうる。なお前記空孔率とは、積層濾材の体積、重量
から計算、又は画像解析によって算出され、焼結体の単
位体積あたり空隙体積を意味している。
かかる空孔率の粒子層3は、結合材を用いることなく
前記粒子を懸濁した懸濁液への前記支持体2の浸漬、真
空引きにより積層されることによって形成される。また
積層に際して、遠心力、静圧を用いないため、前記空孔
率を増大しうる。さらにこのように粒子層3を形成する
ため、前記のごとく、粒子層3の支持層2に向く境界面
を支持体の凹凸5に沿わせうる。
また粒子層3は、略同一の厚さとしている。なお粒子
層3の厚さは、好ましくは積層濾材1の厚さの1/2以
下、より好ましくは1/4以下かつ1/20よりも大であっ
て、例えば0.2〜2.0mm、好ましくは0.3〜0.5mm程度とし
ている。この程度の厚さとしたときにも、良好な濾過性
能を発揮しうることが判明している。なお粒子層3は、
異なる径の粒子を用いた複数層とすることもできる。
また支持体2と粒子層3とは焼結により一体化してい
る。
図8は、製造方法の一実施例を、前記カップ状の積層
濾材1を成形する場合を例にとり示している。
公知の方法、例えば冷間プレス成形により結合材を用
いることなく成形したカップ状の成形品を焼結すること
により、前記支持体2を準備する。
支持体2は、粒子層3に比して粒子径の大きい粉体を
用いることによって、その外表面である一つの面には凹
凸が形成され、また凹部には一つの面から他方の面に連
続する空孔が形成される。
支持体2の開口部を、吸引用の導管10が通るシリコン
ゴム等の栓体11により封止し、かつ昇降装置12に取りつ
ける。前記導管10には、真空ポンプPが接続される。
次ぎに懸濁液15を準備する。懸濁液15は、液体に粒子
層3形成用の粒子を懸濁させる。液体として、水、アル
コールを用いうる。水は可能な限り、純度の高い例えば
純水を用いるのがよい。またアルコールとして、イソプ
ロピルアルコールなどを採用しうる。さらに例えば樹脂
バインダーなどの何等の結合材をも混入しない。この懸
濁液15は支持体2を完全に浸漬する程度の深さの容器16
に収納させる。
前記した液体は、完全にかつ容易に除去できるもので
あるため、脱バインダーのための熱処理や高度の洗浄処
理を必要とせず、従って短い工程でかつ不純物のない清
浄な積層濾材1を生産しうる。
また懸濁液15の粒子の濃度を200g/リットル以上の高
濃度とする。これにより真空引きの時間も短縮され、欠
陥のない安定した品質のものが得られることを見出し
た。この濃度は、空孔径分布に大きく影響し、過度に低
濃度であるとき、粒子層にピンホールが発生するととも
に、焼結後の空隙率が大きくなり、空孔径が粗大側へ移
動する。
これは、支持体2の空孔径を粒子の大きさに比べて大
きくし、支持体を低圧損としているため、濃度が薄い
と、架橋によって堆積層が生じるまでに、他の面側に粒
子が抜け、粒子層3に前記ピンホールが生成すると考え
られる。従って、粒子の濃度を200g/リットル以上、好
ましくは、300g/リットル以上としている。なお上限
は、1000g/リットル程度と考えられる。
また濃度管理のために大容量の容器16を用いるととも
に、スターラ17による攪拌を行ない、かつ使用による懸
濁液の消費に伴う液面の低下に対しては、同一濃度の懸
濁液を補充する。
前記昇降装置12を動作し、支持体2を懸濁液15内に浸
漬する。昇降装置12は例えばエアシリンダを用いてお
り、急速に浸漬できる。また浸積時間はタイマにより正
確に制御される。
浸漬に先立ち、または浸漬後において、前記真空ポン
プPを作動し、懸濁液が接する外表面から、内表面に向
く減圧を行う。なお予め真空ポンプを作動しておくとき
にも、下降時間が短くしかも全体が浸漬されないときに
は、空気を吸引し全体を浸漬して初めて懸濁液を吸引す
るため、粒子層3の厚さのバラツキは比較的小さいもの
となる。
また吸引は0.9〜0.1kg/cm2(680〜76mmHg)、好まし
くは228〜76mmHg程度で真空引きする。これによって、
懸濁液15中に分散している粒子は順次、支持体表面上に
吸引され層をなしてかつ支持体2の凹凸5に沿いまた空
孔6内部に侵入しつつ堆積し、粒子層3を形成する。
これにより、粒子層3は50〜80%程度の空孔率とな
る。吸引圧力は、粒子層3の成形圧力に相当しており、
吸引圧力を調整することで空孔率を変化させうるが、成
形後の水抜きの時に高い減圧を必要とすることから、前
記のように228〜76mmHgの程度まで吸引するのが好まし
い。また吸引圧力を高めることによって処理時間を短縮
しうる。
このように、支持体3の一つの面に粒子層3が形成さ
れる。なお懸濁液15は粒子を均一に混合し、しかも吸引
した液体はそのまま排出されるため、使用によっても懸
濁液の濃度は殆ど変化することなく、従って、懸濁液15
の補充のみにより所定の濃度を維持しうる。
吸引成形後、栓体11を取り外し、乾燥機内で液体を除
去する。なお懸濁液からの取り出し、栓体の取り外し、
液体の除去などの作業に際しても形状は保持され形崩れ
が生じず保形させうるのを見出している。
図9は粒子として繊維径2.5μm、アスペクト比6の
金属短繊維を使用し、濃度300g/リットル、吸引速度400
cc/分の条件で、メッシュ140/200と、200/250の粉末の
焼結品で成形した支持体において、処理時間と粒子層厚
さとの関係を示したものである。
粒子層3の厚さがある値以上であれば粒子捕捉性能は
大差ないが、厚さは圧力損失に影響することが考えられ
る。なお懸濁液15の濃度と吸引圧力を一定とするとき、
形成される粒子層3の厚さは吸引時間で調整できるが、
支持体2の粉体の粒度が細かいとき圧力損失が高く、ま
た粒子層3の厚さは薄くなると考えられる。他方、粒度
の細かい支持体2は、吸引開始直後では、架橋が速やか
に形成されるため、吸引時間が小の範囲では、粒度の細
かい支持体の粒子層3の厚さが大となっているのが判
る。従って、粒度の細かい支持体2の方が、吸引時間の
差異による影響を受けがたく安定しているのが、前記図
9から判る。
このように処理することによって、支持体2に、その
全周にわたって該粒子による粒子層3がほぼ均一な所定
厚さで形成した積層成形体7をうる。
なお積層処理は、粒子、液濃度の異なる複数の懸濁液
を用意し、順次処理を行うことによって粒子層3を複層
構造とすることができ、また懸濁液中に異なる2種類以
上の粒子を懸濁させておくこともできる。
積層成形体7は乾燥後、焼結される。焼結処理として
は、ステンレス鋼の場合には、例えば真空炉や不活性ガ
ス雰囲気炉,水素炉中で行なわれ、材質に応じて例えば
900〜1500℃の加熱温度で、5分〜6時間程度の保持を
する。なお20°/分、好ましくは10°/分をこえるをこ
える急激な温度の上昇を避けつつ昇温することにより、
積層により形成した比較的脆い粒子層3の割れなどを防
止しうるのが見出された。
この焼結によって、積層成形品7は粒子間、前記支持
体と結合し、強固な一体品となる。また焼結条件は、粒
子の材質、性状によって定める。
つぎにこの積層濾材を用いたフィルタについて説明す
る。フィルタFは、本例では、図10に示すごとく、前記
カップ状の積層濾材1を、ハウジングである支持金具20
に収納し、かつ固定している。
前記支持金具20は、積層濾材1を収納しうる筒状の基
部の一端にネジ部を有しかつ導孔を設けた第1の分割片
21と、一端にネジ部を有しかつ導孔を具えた第2の分割
片22と、第1、第2の分割片21、22間で挟持されかつ前
記積層濾材1の固定すべき端面1Aと当接する取付部24を
有するリング状の第3の分割片23とからなる。
前記第3の分割片23は、前記積層濾材1の前記端面1A
と接する取付部24の反対面から、プラズマ溶接により溶
接し固定する。これにより、溶接に伴い生じがちな、溶
接割れ、クラックの発生を抑制できる。
さらに図11に示すように、溶接に際して、少なくとも
前記粒子層3の一部を溶融させる。これにより封止を確
実とし、濾過されない流体が出口から流出するのを防
ぐ。また溶接部分では、溶融深さDを溶融巾Wよりも小
とし、これによって、濾材の濾過面積減少を抑制しなが
らかつ広い幅で溶接できる。好ましくは前記溶融深さD
を5mm程度以下とする。
なお、第3の分割片23を用いることなく、積層濾材1
の端面1Aを、第2の分割片22に直接溶着することもで
き、また積層濾材1が例えば平板状であるときにも、か
かる方法により外周面を固定することによって、割れな
どを防止しうる。
(実施例) 繊維径2.5μm,平均アスペクト比6の316Lステンレス
鋼の金属短繊維を300g/リットルの濃度で水に懸濁させ
た懸濁液内で、図1に示す支持体を2.0秒間浸漬し、厚
さ0.4mmの粒子層を有する積層成形品を得た。なお支持
体はメッシュ200/250のステンレス鋼の粉体を用いて成
形しかつ焼結している。この積層成形品を乾燥したの
ち、1000℃×30minの条件にて真空雰囲気中で焼結し積
層濾材を形成した。これを実施例品と呼ぶ。実施例品
は、表面美麗であり、粒子層には微細な空孔が均一に形
成されている。
平均空孔径;1.8μm 平均空孔率;58% (比較例) 高精度濾過用として市販されている比較例品1、2お
よび3を購入した。比較例品1および2は、日本国内の
A社、B社により生産されたセラミック製のフィルタで
ある。また比較例品3は、米国のC社により製造された
全ステンレス鋼製のものであり、フィルタ部材を蛇腹状
に多段に重ねている。
〔テスト〕
前記実施例品、比較例品についてその濾過特性を測定
した。
〔テスト1〕 実施例品と比較例品とについて流量特性を測定した結
果を図12に示す。
N2ガス用いて、流量と差圧との関係を、二次側が大気
開放させた場合について測定している。
比較例品3は比較的圧力損失が低いが、セラミック製
の比較例品1、2は圧力損失が高く、実施例品は、いず
れの比較例品に比べても、圧力損失が小であって、低圧
損高精度のフィルタであることが判る。なお実施例品、
比較例品の濾過面積は、実施例品を1とすると、比較例
品1、2は1.5、比較例品は約2程度であり、実施例品
が最も小さい。
〔テスト2〕 粒子補足性能 DOP微粒子のエアロゾルを用いて、粒子捕捉性能につ
いて測定した。
測定条件 エアロゾル:DOP多分散粒子 粒径分布0.02〜0.3μm(推定) 流量:15リットル/min 粒子濃度:2.8×105/cc 測定時間:30分間の流出粒子数を、10秒単位で測定 合計流量は15×30=450リットル 粒子数の計測:凝縮核測定器(CNC)…1秒間当たり5cc
(合計9リットル) フィルター形状:いずれの試料も、継手を有するハウジ
ングに組み込んで測定 フィルターの前処理:清浄なIPAによる逆洗、乾燥状態 前記の9リットル流過時における流出粒子数は次ぎの通
りである。
実施例品 0 比較例品1 39 比較例品2 29 比較例品3 11 実施例品は流出粒子が殆どなく、極めて良好であるのが
わかる。
〔テスト3〕 通気抵抗とパブルポイント圧 実施例品の厚さを変えて、通気抵抗とバブルポイント
圧を測定した結果は以下のようであった(通気抵抗とは
1リットル/分の流量時の差圧)。
ここでバブルポイント圧とは、JIS規格B8536『濾過粒
度試験』において規定されイソプロピルアルコールを用
いて測定しており、初期バブルポイント圧とは最初に気
泡が発生した時の圧力を、また交点バブルポイント圧と
は圧と流量との関係を示すグラフから算出され、変化率
の大きい部分と小さい部分との交点で求められる圧力を
意味している。従って、交点/初期の値が1に近い程空
孔径の幅が狭いことを意味しており、フィルター部材と
して優れたものである。
また、バブルポイントの値も、各条件内で安定した値
を示しており、厚さの増加による上昇はあまり大きくな
い。交点の4500mmAq前後の値は、極めて高い値であり、
従来にない低圧損で高精度のフィルターが得られている
ことを意味している。
〔テスト4〕 実施例品の厚さを変えた場合の厚さと通気抵抗との相
関を測定した結果を図13に示している。
図の様に、厚みと通気抵抗は直線関係にあり、次式で
示される。
△P=307t △P:通気抵抗(mmAq) t:短繊維層の厚さ(mm) このように、厚さと通気抵抗の間に明瞭な直線関係が
あるということは、粒子層の構造が極めて均一で、厚さ
が変わっても分布密度が一定であることと、フィルタの
全面のわたって厚みのばらつきが小さいことを示してい
る。
従って、吸引時間の設定で短繊維層の厚みは任意に調
整可能であり、厚さに応じた通気抵抗が得られることか
ら、厚さの管理をすることで、特性の確認が出来ると言
える。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多孔質の金属からなる支持体(2)に、該
    支持体(2)の孔径より微細な粒子からなる粒子層
    (3)を前記支持体(2)の少なくとも一つの面に積層
    した積層濾材であって、支持体(2)の前記一つの面は
    凹凸(5)をなし、かつ前記粒子層(3)は、平均アス
    ペクト比2〜15の金属短繊維、又はこの金属短繊維と金
    属粉との混合粉からなる前記粒子を、結合材を用いるこ
    となく前記粒子を懸濁した懸濁液(15)に前記支持体
    (2)を浸漬し、真空引きすることにより該支持体
    (2)の前記一つの面に積層、形成されて前記凹凸面に
    沿うとともに、支持体(2)と粒子層(3)とを一体に
    焼結しかつ前記粒子層(3)の空孔率を50〜80%とした
    ことを特徴とする積層濾材。
  2. 【請求項2】前記支持体(2)は、金属粉末、金属短繊
    維、金属繊維のいづれかを、結合材を用いることなく成
    形した成形品の焼結体からなることを特徴とする請求項
    1記載の積層濾材。
  3. 【請求項3】前記支持体(2)は、前記粒子の20倍以上
    かつ100倍以下の平均直径をもつ不定型の金属粉末を用
    いて成形することにより、前記一つの面が一前記金属粉
    末の多面形状によって凹凸(5)をなすことを特徴とす
    る請求項1又は2記載の積層濾材。
  4. 【請求項4】半導体装置用のプロセスガスの濾過に使用
    されることを特徴とする請求項1記載の積層濾材。
  5. 【請求項5】請求項1記載の積層濾材を支持金具(20)
    に固定したフィルタ(F)であって、該積層濾材(1)
    の端面に接する金属製の取付部(24)を前記支持金具
    (20)に設けて、前記取付部(24)と前記端面とを、前
    記取付部(24)の他面側からしかも前記粒子層(3)を
    溶融する溶接によって固定したことを特徴とするフィル
    タ。
  6. 【請求項6】前記支持金具(20)は、前記積層濾材
    (1)を収容する容器状をなし、かつ前記積層濾材
    (1)は、前記支持金具(20)を分割した分割片(21、
    22)に固定されることを特徴とする請求項5記載のフィ
    ルタ。
  7. 【請求項7】前記溶融した部分の溶融深さ(D)は、溶
    融巾(W)よりも小であることを特徴とする請求項5に
    記載のフィルタ。
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