JP4091103B2 - 管継手 - Google Patents

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Description

本発明は、給水、給湯、冷暖房システム或は消火設備等に広く用いられる樹脂パイプをワンタッチで接続することができる管継手に関する。
この樹脂パイプは、建物内の給水、給湯或は冷暖房配管や戸建住宅の床暖房などに広く応用されており、そして、この樹脂パイプを接続するための管継手は、パイプとの接続作業が簡便である一方、パイプの抜け止め機能が確実であり、しかも漏水の心配がないことが必須条件である。
従来、図12(a)に示すように、継手本体1内に押圧体2を螺合して位置決め固定された一対のロックリング3a、3bの間に0.3〜1.0mmのスペーサ4を介装して樹脂パイプ5を抜け止めするようにした継手がある(例えば、特許文献1参照。)。
一方、パイプの差込方向前方側に向く複数の爪の先端近傍に突部を設けたものがある(例えば、特許文献2参照。)。また、ロックリングに設けた規制片の両端にパイプに食い込む深さに対応するように切欠き部を形成したものがあり(例えば、特許文献3参照。)、更に、パイプに食い込む内端縁と食い込みを制限する部分に面取りをしたロックリングがある(例えば、特許文献4参照。)。
特許第3165109号公報 特許第2685105号公報 特許第2945653号公報 特許第2920146号公報
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、一対のロックリング3a、3bが押圧体2の先端部により継手本体1内の受け面1a上に軸方向及び周方向に移動不能に位置決め固定されているため、図13(a)、(b)に示すように、パイプ5を挿入する際に、ロックリング3a,3bの爪6a,6bのみが変形するので、爪の弾性力に抗してパイプを挿入しなければならず、挿入力が大きくなりパイプ挿入作業が困難であった。その上、挿入したパイプ5が回転したときに、パイプ5の外周に周方向の傷が付き、その部分よりパイプ5が切断されてしまう場合があった。
特に、樹脂パイプ5は伸びの影響があるため、パイプ挿入口側にあるロックリング3bと奥側にあるロックリング3aとでは変形の仕方が異なり、図12(b)に示すように、挿入口側の方がパイプ5の伸びが大きいため、その伸びに追随するロックリング3bの変形量は必然的に大きくなる。その結果、図12(c)に示すように、常に挿入口側のロックリング3bのパイプ5への食い込み量が過多となって、その部位からパイプ5が切断されるおそれがあった。この場合、ロックリングの枚数を増やせば個々の変形量が減ってこの点が解消されたとしても却ってパイプの挿入が極めて困難となる。
また、特許文献2と特許文献3に記載された発明は、いずれもパイプへの食い込みをロックリングの形状によって制限しようとするものであるが、実際には金属の薄板状のロックリングが、軟質状の樹脂パイプに食い込むのを阻止する効果にはばらつきがあり、制限部位ごと食い込んでしまうため、結果的にパイプが切断するおそれがある。このうち、特許文献3の発明では、各爪間にスリットを形成することにより、パイプ挿入時における各爪の拡がりを許容してパイプの挿入を円滑に行おうとするものであるが、実際にはスリットだけでは不十分な場合があり、爪を強制的に押し拡げるために強い力でパイプを継手に挿入しなければならない場合があった。
更に、特許文献4に記載されている発明は、樹脂パイプに食い込む内端縁への面取りは、パイプ挿入時の傷付きに対して効果はあるが、食い込みを制限する部位に面取りをしても前記の例と同様にその効果にはばらつきがあるため、結果的に樹脂パイプに食い込んでパイプを切断するおそれがあった。
本発明は、従来のワンタッチ管継手が有する問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、ロックリングと挿入したパイプとが共回り可能にしてパイプの捩れに追随するようにし、しかも、挿入パイプをワンタッチで簡単に挿入することができ、一方、挿入されたパイプは、引き抜き阻止力が確実に発揮されて、極めて安定した状態で接続され、しかも漏水の心配もない管継手を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状の継手部材と蓋部材で継手本体を構成し、この継手本体内にシールリングと挿入パイプ抜け止め用のロックリングを装着し、このロックリングのリング部内周に複数の保持爪を傾斜状に突出形成し、この保持爪には、パイプ食い込み部とパイプへの食い込みを防止した凹部を形成すると共に、この継手本体へのパイプ挿入後、パイプに引き抜き力が加わった際の保持爪の起立過程において、隣り合う各保持爪の両側部同士を互いに接触させて保持爪のパイプ食い込み量をパイプ肉厚断面積の35〜50%とした管継手である。
以上のことから明らかなように、請求項1に係る発明によると、ロックリングの保持爪をリング部と同一の水平方向に起立させた際の保持爪のパイプ食い込み量をパイプ肉厚断面積の35〜50%であるように構成したので、半分以上パイプの肉厚が確保されるため、ロックリングの食い込み部位におけるパイプの破断が確実に防止され、一方、パイプの引抜阻止力が向上する。更には、各保持爪に形成した凹部によって保持爪全体がパイプに食い込むことのないように対応していると共に、各保持爪における両側部同士が接触保持されるので、各保持爪の適正な傾斜角度を保持してパイプ食い込み量を適切なものとし、十分なパイプ保持力を有する管継手を得ることができる。
また、パイプの破断を確実に防止することが可能であり、更に、凹部をアール状に形成することによりパイプへの食い込みを少しずつ行って無理な食い込みを行うことがない。
本発明における管継手に樹脂パイプを接続する際の実施形態の一例を図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明における管継手の一例を示した斜視図で、図2は同上の分離斜視図であり、図3は管継手に樹脂パイプを接続した状態を示す部分断面図である。図中10は、黄銅または青銅等の金属製の継手本体であり、本例における継手本体10は、筒状の継手部材11の雄螺子11aと筒状の蓋部材(ナット又はキャップ)12の雌螺子12aを螺合して構成しており、継手部材11の端部には、図示しないヘッダーや接続部材或は配管と連結するおねじ部11b(又はめねじ或はその他の接続部)を設けている。この蓋部材12は、上記のキャップ構造には限らずおねじを有するブッシュであってもよく、この場合は、継手部材にブッシュをねじ込んで継手本体を構成する。この蓋部材12には、外周面に確認窓27を形成している。
継手本体10に接続するための樹脂パイプ13は、架橋ポリエチレン又はポリブテン等の樹脂素材により成形されたパイプであり、このパイプ13を継手本体10に接続する場合は、樹脂パイプ13の先端挿入部分に青黄銅等の金属製のコアリング14を嵌着して、後述するロックリング15,16の食い込み量とシールリング17又は18のシール性を保持するようにしている。このコアリング14の先端部には鍔部14aを形成しており、樹脂パイプ13の端部を保護すると共に継手本体1へのパイプ13の挿入が円滑に行えるようにテーパ面14bを形成している。なお、パイプ13は、樹脂製の他、銅製であってもよい。
図2において、ステンレス鋼等で形成したロックリング15,16は、リング部19が継手本体の中心軸の直交方向に対して3〜5度傾斜させるものとし、本例においては、図7に示すように約5度、環状スペーサ26側に傾斜するよう、屈曲形成されている。リング部19を傾斜させることにより、このリング部19と接触する継手本体10等の部品との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が小さくなることから、ロックリング15,16が回転し易くなる。従って、継手部材11と蓋部材12で構成した継手本体10内において、挿入パイプ13とロックリング15,16とは共回り可能に設けられている。
リング部の傾斜角は、3度よりも小さい角度では、継手本体10に接続されたパイプ13内に流体圧が加わった際、パイプ13に引き抜き力が加わり、その力によりロックリング15,16のリング部19が継手本体10等の部品に押し付けられ、継手本体10等の部品との接触面積が大きくなり、摩擦抵抗が上昇することから、ロックリング15,16の回転が行いにくい。一方、7度よりも大きい角度では、後述する保持爪20がパイプ13に接触する角度が浅くなり、パイプ13に引き抜き力が加わった際、確実にこのパイプ13を保持できないおそれがある。仮に、これを解消するために保持爪20を長くした場合には、起立に伴うパイプ13への食い込み深さが深くなり、パイプ13が切れやすくなるおそれがある。従って、リング部の傾斜角は3〜7度の範囲であればよいが、ロックリング15,16の回転性を確実に得るには、上記のように5〜7度がより望ましい。
保持爪20は、図7に示すようにリング部19の内周に、リング部19より更に所定の傾斜角度(本例におけるロックリングの初期屈曲角度は45度)を有して突出形成するように設けてパイプ挿入が容易になるようにし、且つ、パイプの引抜阻止力を得るようにし、パイプ引抜時には、この保持爪20がパイプ13の外周面に食い込んでパイプの抜け止めを規制するようにしている。各保持爪20は、図5に示すようにスリット20aと中央位置に凹部20bを形成し、この凹部20bを形成することによって、保持爪20が起立しても保持爪20全体がパイプに食い込むことのないようにしている。また、この凹部20bを形成することにより、パイプ食い込み部20cを保持爪20の両側に沿って2ヶ所に形成している。このように、本例におけるロックリング15,16には、ロックリングの形状によってパイプ13への食い込みを制限しようとする部分がない。
食い込み部20cは、各保持爪20先端の3ヶ所以上に設けるようにしてもよく、このように複数箇所に食い込み部20cを設ける場合には、食い込み部20cが細く形成されることにより、保持爪20とパイプ13との接触面圧が高くなり、ポリエチレン管のように比較的硬質のパイプはもちろん、ポリブテン管のように比較的軟質のパイプ13への食い込みが容易となる。また、保持爪20がパイプ13を保持する際のポイントが増加するため、確実にパイプ13を保持できる。
なお、食い込み部20c先端を小半径のアール形状とすれば、継手本体10へのパイプ13の挿入時に、パイプ13外周を傷つけるおそれがない。
パイプ13の挿入時には、挿入するに伴って各保持爪20がスリット20aにより拡がってその傾斜角度が大となり、リング部19の傾斜や後述する離間部24ともあいまって、パイプに対するロックリングの傾斜角度が更に大となり、継手本体10へのパイプ13の挿入を円滑に行うことができる。
一方、パイプ挿入後、このパイプ13に引き抜き力が加わった際には、後述するようにロックリング成形時に保持爪20がやや押し広げられているため、各保持爪20が起立してその傾斜角度が浅くなる過程において、隣り合う保持爪20の側部20dが接触する。パイプ13の引き抜き力により更に保持爪20が起立しようとしても、両保持爪20間のスリット20aが狭まることにより保持爪20は互いに規制し合い、起立が抑制される。従って、保持爪20は、2つの食い込み部20c、20cが略一体となってパイプ13への接触角の急激な低下を生ずることなく、パイプを保持することができる。このように、各保持爪20の起立過程においては、各保持爪20の側部20dが互いに接触するようにし、保持爪20の傾斜角度を保持して十分なパイプ保持力を有する管継手を得るようにした。
なお、保持爪20の側部20dと食い込み部20cの側部位とを共用することにより、側部20dを長く確保することができるので、ロックリングの成形時、側部20dや食い込み部20cを精度良く形成することができる。
この側部20dは、より好ましくは、パイプ13に引き抜き力が加わった際、保持爪20が起立してパイプ食い込み部20cがパイプ13に食い込んだ後に各保持爪20が互いに接触するよう、図5に示すように保持爪20のパイプ食い込み部20c先端からややリング部よりの位置からリング部19に向かって形成するのが好ましい。
更に、食い込み部20cを保持爪20の両側に形成することによって、保持爪20の側部20dにおいては面積が大きくなることから、保持爪が絞り曲げ加工時に割合が大きくなり、結果としてスリット20aをより狭く形成することができる。
図5において、ロックリング15,16の保持爪20をリング部19と同一の水平方向に起立させた際の保持爪20のパイプ食い込み量は、パイプ13の肉厚断面積の35〜50%としており、過剰なパイプ引き抜き力が加わった場合でもパイプ13を破断しにくくしている。
ここで、ロックリングを成形する場合を説明する。図8(a)は、ロックリングを平面状に加工成形した状態である。また、図8(b)においては、曲げ加工によって保持爪を屈曲させた状態である。実線部分は保持爪を絞り曲げ加工により屈曲させた場合の形状を示したものであり、この絞り曲げ加工によって保持爪をやや押し広げられた形状として約45度に傾斜成形している。具体的には、プレス機を用いて絞りを加えることにより保持爪は伸ばされ、円周方向に広がった形状となり、これに伴い、スリット巾もやや狭いものになる。従って、パイプ13に引き抜き力が加わった際、保持爪20が完全に起立する前にスリット巾が図8(c)に示すように零になり、各保持爪側面20dが接触する。この状態から保持爪20が更に起立しようとしても、互いの保持爪20が干渉して起立を防げるので屈曲角度が維持され、パイプ13の抜けを防ぐことができる。このときの角度αは10〜20度で保持するような加工を施すのがよいが、より好ましくは、12〜20度で保持するように加工するのがよい。
図8(b)の破線部分は、保持爪を通常の曲げ加工によって単に屈曲させた場合の形状を示したものであり、この場合には、保持爪の屈曲によってスリット巾は広がるが、パイプに引き抜き力が加わって保持爪が起立する際、スリット巾が無くなるのは、保持爪が完全に起立して保持爪の屈曲角が無くなったときであり、望ましくない。なお、図8(a)、図8(b)、図8(c)において、それぞれB−B線、C−C線、D−D線で切断したときの断面図を左側に示した。
このロックリング15,16を使用することにより、パイプ13がポリエチレン管、ポリブテン管の何れの場合でも保持することができる。一般にポリエチレン管は比較的硬質で金属製ロックリングの爪が食い込みやすい材質である一方、ポリブテン管は比較的軟質で弾性があり、パイプとの接触面圧が低い爪ではパイプ外面から逃げてしまい爪が食い込みにくい材質であるが、従来の技術に示した各爪の先端中央に半径の大きい円弧状の突部を有する形状のロックリングのように、管に対する爪の接触面圧が低くなり、ポリブテン管への食い込みが不十分となったり、管に引き抜き力が加わった際に管が継手から抜けてしまったりするおそれがなく、確実に保持できる。
このように、ポリブテン管専用としてあらたに別のロックリングを設ける必要がなく、ポリエチレン管とポリブテン管に共用できるロックリングであり、部品が増えて管理工数が増えたり、コストアップとなったりすることがない。また、管継手本体の組み立て時に、誤って異種管用のロックリングを組み込んでしまうおそれもない。
この複数のロックリング15,16(本例では2個)は、リング部19同士間に金属や樹脂等で形成したスペーサリング21を介在させて、継手本体内の装着部22に装着している。本例において、このスペーサリング21の厚みは、0.7〜1.5mmが好ましく、スペーサリング21の厚さが0.5mm以下では、各ロックリング15,16が略同じ挙動となり、全ての爪が一度に起立してパイプが破断に至るため望ましくない。後述する実施例においては、角度規制部28と組み合わせることにより、スペーサリング厚21が1.0〜1.5mmにおいて好ましい結果を得た。
本例における装着部22は、蓋部材12の内周側に設けた段部12bと蓋部材12に嵌合した耐圧強度、耐冷熱性、耐加水分解性、耐塩素性を有する透明又は半透明状透視筒25の端部に設けた環状スペーサ26との間である。この装着部22の少なくとも装着面23とリング部19との間に離間部24を設け、図6(a)において、装着部22の継手本体軸方向におけるロックリング15と段部12bとの離間距離Aを0.1〜0.8mmとしている。これによりロックリング15は、離間距離A分だけ傾斜可能となり、パイプ挿入が円滑に行われる。また、離間距離Aがあることにより、ロックリング15,16は継手本体内で回転可能となる。従って、継手部材11と蓋部材12で構成した継手本体10内において、挿入パイプ13とロックリング15,16とは共回り可能に設けられている。なお、離間距離Aを0.8mmよりも大とすると、パイプ13に引き抜き力が加わった際に、リング部19の外周側が継手部材11の方向に傾斜してしまい、パイプ13に対する保持爪20の接触角が浅くなってしまうことから、十分なパイプの保持を行うことができないおそれがある。
なお、離間部24を設けずに、ロックリングのリング部19のみを傾斜させてパイプ13の共回りを防止することもでき、この場合、リング部19を適宜の角度傾斜させることによりリング部と接触する継手本体10等の部品との接触面積が少なくなり、摩擦抵抗が小さくなることからロックリングが回転しやすくなる。
角度規制部28は、継手本体10と一体に又は別体に設け、ロックリング15の変形角度を規制している。本例においては、図4において、蓋部材12に一体に設けた角度規制部28を一体に設けている。この角度規制部28は、継手本体10内に一体に又は別体に設ければよく、上記の例には限定されない。角度規制部28の傾斜角度は、パイプ13に引抜力が働いた場合、パイプ挿入口側に装着したロックリング15の変形量が、奥側にあるロックリング16の変形量を下回ることにより、これら2個のロックリングが当接してしまうことのないよう、ロックリング15の保持爪20の傾斜角度以下に設定している。本例は、ロックリング15の保持爪20の初期屈曲角45度に対し、角度規制部28は0度よりも大きく40度以下の角度の範囲で、継手の呼び径等に対応して任意に設定される。また、角度規制部28は、継手の呼び径が大きくなる程、その角度を小さくすることにより、パイプを破断することなく、ロックリングによってパイプを保持することができる。
透視筒25は、パイプ13の外周面と継手本体10の内周面との間に配置しているが、継手本体10を構成する蓋部材12のめねじ12aの端部と、継手本体10のおねじ基部とを当接させ、蓋部材12が必要以上にねじ込めないようにして透視筒25に蓋部材12による締付力が加わらないようにしている。
蓋部材12には段部12cを設け、ここに環状スペーサ26を係止することにより、ロックリング装着部を確実に確保している。
次に、上記の実施形態における作用を説明する。
図2、図3において、継手部材11の係合面11cの角部にシールリング18を装着し、透視筒25を継手部材11内に挿入すると、透視筒25の係合部25aが継手部材11の係合面11cに係合され、シールリング18が装着段部25bに装着されて接液部分の透視筒25と継手部材11とが密封シールされる。
次に、透視筒25の後端部に形成した装着部25cにシールリング17を装着する。
一方、蓋部材12の装着部22には、2個のロックリング15,16をスペーサリング21を介して装着しておき、更に、ロックリング16とシールリング17との間に環状スペーサ26を介挿し、蓋部材12のめねじ12aを継手部材11のおねじ11aに螺合して継手本体10を構成している。
この継手本体10に樹脂パイプ13を接続する場合は、パイプ13の先端よりコアリング14を嵌着し、しかも、コアリング14の鍔部14aがパイプ13の端面に位置した状態に嵌着する。この樹脂パイプ13を蓋部材12のパイプ挿入口29より挿入すると、図6(a)に示す初期状態において、ロックリング15は、段部12bに対し距離Aだけ離間した状態で、かつ、リング部19が約5度の角度で傾斜した状態で配置されていると共に、ロックリング15の保持爪20はリング部19に対して約45度の角度を有しているので、保持爪20は合計で約50度の角度でパイプ外周に接する。この構造は、ロックリング16も同様である。次いで、同図(b)に示すように、ロックリング15は、距離Aの範囲内で更に傾斜状態になる。同図(c)において、ロックリング16も傾きながらパイプは容易に挿入される。このように容易に挿入されるので、ロックリング15,16は、同様な角度を呈するので、両者は重なることなく、パイプの挿入が容易に行われる。この場合、ロックリング15,16は周方向に回転可能であり、パイプの捩れ等に追随可能に設けられている。
ロックリング15,16のリング部19の座面は、3〜7度の傾斜角としているので接触面積が少なくなり、パイプ13とロックリング15,16の共回りが行なわれやすい状態でパイプ13を強固に保持することができる。更には、離間距離Aがない場合でも、リング部19は段部12bとスペーサリング21との接触部分が減って、ロックリング15,16が回転可能となり、パイプのねじれ等に追随できる。更に、上述のように離間距離Aを設けることで、ロックリング15はより回転しやすくなるほか、傾斜度合が増してパイプ挿入が容易となる機能を発揮することができる。
次いで、図3に示すように、パイプ13を透視筒25の内周面に設けたパイプ当接面25dに当接するまで挿入すると、パイプ13の外周面にロックリング15,16が食い込み、抜け止めされると共に、パイプ13の外周面と透視筒25の内周面とがシールリング17により確実に密封シールされる。
このとき、ロックリング15,16の保持爪20は、その中央部に凹部20bを深く形成しているので、両端部の食い込み部20cからパイプ13に食い込む。
ロックリングを用いた管継手では、パイプに引き抜き力が加わり保持爪が起立するに従って、食い込み部分がパイプに食い込む面積が次第に増加していくが、本例においては、食い込み部20cを厚さ一定の板状で且つ角度の浅い台形状に形成することにより、食い込み増加量を抑え、保持爪20とパイプ13との接触面圧が高い状態を継続することができ、パイプ13への食い込みを容易にすることができる。従って、食い込み面積が急激に増加して保持爪20の起立と共にパイプ13との接触面圧が低下して、食い込みにくくなるような現象を抑えられる。
なお、本例は、蓋部材12のパイプ挿入口29に、蓋部材12とパイプ13の外周との間を密封シールするシール部材を設けない構造、すなわちパイプ13は継手本体10に挿入されるとまずロックリング15に接触する構造である。よって、パイプ挿入作業者がこの接触感覚をもってパイプ13がロックリング15に達するまで挿入が行なわれたかを確認することができ、パイプ挿入時にまずシール部材と接触する構造の継手に比べて誤認のない確実なパイプ挿入を行うことができる。
継手本体10に挿入した樹脂パイプ13は、継手本体10の蓋部材12の外周面に形成した確認窓27より透明又は半透明状の透視筒25を介して外部より、目視することができる。確認窓27により継手本体10への樹脂パイプ13の装着確認を終えた後、パイプ13に冷水又は温水等の流体を流すと、流体は透視筒25とパイプ13外周の隙間、及び透視筒25と継手部材11の隙間にそれぞれ進入するが、いずれもシールリング17,18によりシールされているので、流体が蓋部材12に設けられた確認窓27から管継手外部に漏れることはない。
図4(a)に示すように、パイプ13に矢印方向に引抜力が働くと、ロックリング15,16は、段部12b側に引き寄せられてリング部19は垂直となり、図6における距離Aは零となり、保持爪20は約45度の角度でパイプ外周に接する。次いで、図4(b)において、パイプ13を抜け止め規制しているロックリング15,16の保持爪20が徐々に起立し、やがて、ロックリング15の保持爪20が、最も起立してしまった場合でも、保持爪20のパイプ13への食い込み量はパイプ13の肉厚断面積の35〜50%であり、パイプ13は、その肉厚が半分以上確保されているので、パイプ13がみだりに破断されるおそれがない。このとき、保持爪20の凹部20bを深く形成してパイプ13に全く食い込まない部分とし、保持爪20全体がパイプ13に食い込むことのないようにしているので、パイプ13の初期肉厚を部分的に確保でき、パイプ13の破断をより一層抑えることができる。
保持爪20の起立過程においては、各保持爪20の側部20dが接触し、互いに起立を規制し合うロックリング15,16を用いることにより、保持爪20全体の起立が抑制された状態で傾斜角度を保持することができ、保持爪20がそれ以上起立するのを防いでパイプ13の保持力を維持することができ、パイプの破断を確実に防ぐことができる。
更に、パイプ食い込み部20cを保持爪20の両側に形成しているので、スリット20aの狭まりに即座に追従させて保持爪20の起立の初期段階から起立抑制を行うことができ、保持爪20の完全な起立を更に防ぐことができる。また、側部20dの面積を大きくとることができ、絞り曲げ加工により、この面積を増加させてスリット20aをより狭く形成することができ、保持爪20が起立するときの側部20dの接触を起立当初から確実に行うことができる。
なお、本実施形態のように、各保持爪20におけるパイプ食い込み部20cを側部20dに沿って細く形成することにより、パイプ13への食い込み性を確保しつつ、保持爪20の接触によってスリット20aを介して隣り合うパイプ食い込み部20cが一体となってパイプ13の保持を行うことができ、パイプの保持力を十分確保することができる。更に、ロックリングの保持爪20が、継手本体10内と一体又は別体に設けた角度規制部28に当接するため、パイプ13への保持爪20の食い込み防止力を高め、確実にパイプ13の破断を防ぐことができる。
ロックリング15,16は、パイプ13と共に回転可能であるため、図11(a)に示すように、通常の状態の場合はロックリングに支障を与えないが、従来構造では、図11(b)に示すように、パイプが曲がった場合、ロックリングは偏変形を生じ、ロックリングに加わる力が位置により異なる問題点がある。しかし、本例によると、角度規制部28を設けているので、図11(c)に示すようにロックリング15,16が局部的に変わることがなく確実に抜け止め防止ができる。
なお、手前のロックリング15は、パイプ13の引き抜き力の一部を確実に受けるため、奥のロックリング16に加わる力を低減でき、保持爪20の変形量が抑えられ、パイプ13への食い込み角度が浅く、ばね力が維持され、パイプ13を把持する力が大となる。
また、パイプ13の移動量も抑制されるので、シールリング17等とのシール性への影響がない。
本発明における管継手の実施の一例を具体的に説明する。
本例における継手サイズは13Aを用いており、ロックリングの保持爪の初期屈曲角は、45度である。
図9に示したグラフは、架橋ポリエチレン管(PEX管)におけるパイプのストロークと引張力との関係を示した例であり、また、図10に示したグラフは、ポリブテン管(PB管)におけるパイプのストロークと引張力との関係を示した例である。両図において、実線は、パイプ引き抜き力負荷時、パイプは伸び、かつロックリング食い込み部でのパイプ破断なしを示し、これを二重丸で示した。破線は、パイプ引き抜き力負荷時、パイプは伸びるが、ロックリング食い込み部でパイプが破断したことを示し、これを丸印で示した。鎖線は、パイプ引き抜き力負荷時、パイプは伸びなかったが、パイプ材料の降伏点に達する強度を有した上で、ロックリング食い込み部でパイプが破断したことを示し、これを△印で示した。 また、パイプ材料の降伏点に達することなく、ロックリング食い込み部でパイプが破断したものは、表において×印で示した。
Figure 0004091103
表1は、継手サイズは13A(パイプ13Aの断面積約98平方ミリメートル)を用いており、ロックリングの保持爪の初期屈曲角は、45度である。この例は、角度規制部はなく、パイプの材質は、結果(1)は架橋ポリエチレン管であり、結果(2)はポリブテン管である。この実験結果からすると、パイプ13への保持爪20の食い込み量が30%を下回ると、パイプ13の把持力が低下し、ロックリングからパイプが抜けてしまう。一方、パイプ13への保持爪20の食い込み量が55%を上回ると、パイプが伸びることなく破断してしまう。従って、ロックリング15,16の保持爪20をリング部19と同一の水平方向に起立させた際の保持爪20のパイプ食い込み量は、パイプ13の肉厚断面積の35〜50%が好ましく、とりわけ40〜50%が最適である。
Figure 0004091103
表2は、継手サイズ13Aにて角度規制部28の角度規制値を0度から30度まで7種類に分けて試験を実施すると共に、スペーサリング21の厚みを0.5mm、1.0mm、1.2mm、1.5mmの4種類に分けて行った。その結果、同表から明らかなように、スペーサリング21の厚みに対する角度規制部28は、スペーサ厚を1.0〜1.5mmにしたときに、10〜15度の角度に設けた場合が良好なパイプ13の引張性能を得ることができた。また、継手サイズ16A、20A等の試験では、角度規制値を5〜10度とした場合も良好な結果を得たことから、角度規制部28の規制値は、0度よりも大きく、パイプ挿入口29側に装着したロックリング15の保持爪20の初期屈折角よりも小さければより効果を発揮する。
Figure 0004091103
表3は、同じく継手サイズ13Aにて角度規制値30度において、離間距離Aを0.2から1.2まで変えてパイプの引張性能と挿入性の試験を行った。引張性能では0.2〜0.6mmが好ましく、挿入性では、0.2mmを除いて良好な結果を得た。総合的には0.4〜0.6が好ましいと考える。なお、表3における挿入性は、継手にパイプを挿入できなかったものを×印で示し、一方、無理な力を加えることなくパイプを挿入できたものを二重丸で示した。
本発明における管継手の一例を示した斜視図である。 図1の管継手を分離して示した分離斜視図である。 図1の管継手を示した部分断面図である。 (a)、(b)は、本発明におけるパイプの引抜き力とロックリングの変形量を示した説明図である。 本発明におけるロックリングの保持爪が完全に起立した場合のパイプへの食い込み量を示した部分説明図である。 (a)、(b)、(c)は、本発明における管継手のパイプ挿入工程を示した説明図である。 図6(a)の部分拡大図である。 (a)、(b)、(c)は、ロックリングの状態説明図である。(a)は、ロックリングを平面状に加工成形した状態である。(b)は、曲げ加工によって保持爪を屈曲させた状態である。(c)は、スリット巾が零になった状態である。 架橋ポリエチレン管(PEX管)の管継手におけるパイプの引張試験データの比較例を示したグラフである。 ポリブテン管(PB管)の管継手におけるパイプの引張試験データの比較例を示したグラフである。 (a)、(b)、(c)は、パイプとロックリングとの関係を説明するための説明図である。 (a)、(b)、(c)は、従来例におけるパイプの引抜き力とロックリングの変形量を示した説明図である。 (a)、(b)は、従来例における管継手のパイプ挿入状態を示した説明図である。
符号の説明
10 継手本体
11 継手部材
12 蓋部材
13 パイプ
15,16 ロックリング
17,18 シールリング
19 リング部
20 保持爪
20b 凹部
20c 食い込み部
21 スペーサリング
22 装着部
23 装着面
24 離間部
28 角度規制部

Claims (1)

  1. 筒状の継手部材と蓋部材で継手本体を構成し、この継手本体内にシールリングと挿入パイプ抜け止め用のロックリングを装着し、このロックリングのリング部内周に複数の保持爪を傾斜状に突出形成し、この保持爪には、パイプ食い込み部とパイプへの食い込みを防止した凹部を形成すると共に、この継手本体へのパイプ挿入後、パイプに引き抜き力が加わった際の保持爪の起立過程において、隣り合う各保持爪の両側部同士を互いに接触させて保持爪のパイプ食い込み量をパイプ肉厚断面積の35〜50%としたことを特徴とする管継手。
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