JP4090762B2 - 耐爆裂性水硬性硬化体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、建造物の床、壁、柱、梁などを構成するコンクリート部材に関し、さらに詳しくは火災により加熱されたときの耐爆裂性に優れた水硬性硬化体に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート、モルタル、セメントボードなどの水硬性硬化体からなる建造物の床、壁、柱などの構造部材が火災によって強く熱せられた場合に、爆裂が生じて硬化体が削れ、構造部材が強度を喪失したり、内部の鉄筋が露出し、熱によって軟化し、耐力を失うことがある。この爆裂現象は水硬性硬化体に含まれる水分が加熱されて発生する蒸気圧と、加熱により硬化体中に発生する熱ストレスによるものと考えられている。
【0003】
建造部材の爆裂防止に関して、種々の対策が提案されている。例えば特開昭58−104072号では繊維径15μ、繊維長6mmのポリプロピレン繊維を混入する方法が提案されている。また特開2000−143322号では繊維径5〜100μ、繊維長5〜40mmのポリプロピレン繊維やポリビニルアルコール繊維を含有した水結合材比35%以下の高強度コンクリートの爆裂防止方法が提案されている。これらは火災時の加熱により繊維がいち早く溶融または分解し、水蒸気の逃げ道となる微細トンネルをつくるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリプロピレン繊維やポリビニルアルコール繊維を用いた場合であっても、爆裂防止効果は必ずしも十分であるとはいえず、また上記特開2000−143322号のような方法は、部材の厚さが薄い場合や鉄筋の被りが薄い場合には必ずしも有効ではなく、多量の繊維の添加が必要となっていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、水硬性硬化体に対し、特定のエチレン含有量を有するエチレンービニルアルコール系繊維を用いたところ、従来のポリプロピレン繊維やポリビニルアルコール繊維を添加した場合に比べて爆裂防止効果に優れることを見出し、さらには薄肉の建造部材において、繊維の添加量が少量であっても爆裂防止に効果があることを見出した。すなわち本発明は、エチレン含有量が25〜70モル%であるエチレンービニルアルコール系共重合体を成分とする繊維が含有されてなり、かつ該繊維が下記(1)〜(3)を満足してなる耐爆裂性水硬性硬化体である。
(1)繊維繊度が1〜100dtexであること、
(2)繊維長さが1〜30mmであること、
(3)水硬性硬化体100容積%に対し、0.05〜0.5容積%含有されてなること。
【0006】
本発明のエチレンービニルアルコール系共重合体を成分とする繊維(以下、EVA系繊維と称す)は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物を成分とする繊維であり、エチレン含有量の制御により、200℃以下の融点をもつEVA系繊維を製造することが可能である。本発明のEVA系繊維において、該共重合体に含有されるエチレンの量は25〜70モル%のものが用いられる。エチレンの含有量が25モル%よりも低い場合、繊維は水に溶解しやすい性質を有するため、繊維が水硬性材料中の水により硬化前に溶解しやすくなるといった問題点がある。一方、エチレンの含有量が70モル%よりも高い場合は、融点が120℃以下の低融点の繊維となるため、繊維が水硬性材料中で硬化前の水和熱により溶融しやすくなるといった問題点がある。好ましくは30〜50モル%である。
【0007】
本発明の耐爆裂性能を達成するためのEVA系繊維の必要な繊度、繊維長さは、繊度が1〜100dtex、繊維長さが1〜30mmであり、またEVA系繊維の水硬性硬化体中における含有率は水硬性硬化体100容積%に対し、0.05〜0.5容積%の範囲が必要である。
【0008】
繊度が1dtex未満であると分散が困難となり、100dtexを超えると爆裂防止効果が少なくなる。したがって繊度は1〜100dtexであることが必要であり、好ましくは10〜80dtexである。また繊維長さについては1〜30mmであることが必要である。1mm未満であると爆裂防止効果が少なくなり、30mmを超えると水硬性硬化体中での繊維の分散性が悪くなる。好ましくは2〜15mmである。さらに含有率についてはフレッシュミックス(硬化する前の配合直後のコンクリート、モルタルなどの水硬性組成物)の流動性を損なうことから、できるだけ少ないことが望ましいとされている。水硬性硬化体において本発明のEVA系繊維を添加した場合、水硬性硬化体100容積%に対し、0.05〜0.5容積%が必要である。含有率が0.05容積%未満の場合爆裂防止効果が少なくなり、逆に0.5容積%を超えると混練性が悪くなる。好ましくは0.08〜0.25容積%である。
【0009】
従来の、コンクリート、モルタルなどの水硬性組成物を調製する際に爆裂防止用として添加されるポリビニルアルコール繊維(以下、ビニロン繊維と称す)が200℃以上の高温で溶融しながら分解が開始するのに対し、本発明のEVA系繊維は、上記したようにエチレン含有量の制御により200℃より低い融点を有する。したがってEVA系繊維が添加された水硬性硬化体が火災などによって加熱された場合、ビニロン繊維が添加された水硬性硬化体に比べてEVA系繊維が速やかに溶融・分解し、水蒸気の逃げ道となる微細トンネルをつくるので、EVA系繊維を添加した水硬性硬化体はビニロン繊維を添加した水硬性硬化体に比べて、爆裂防止性に優れる。
【0010】
また、本発明のEVA系繊維は水硬性硬化体のフレッシュミックスに繊維を添加するに際して、ビニロン繊維が親水性に富んだ繊維であることから水硬性硬化体のフレッシュミックスに添加すると流動性を損なうのに対し、EVA系繊維はビニロン繊維に比べて疎水性であるので、ビニロン繊維よりも流動性に優れるといった特長を有する。
【0011】
一方、ポリプロピレン繊維との比較においては、ポリプロピレン繊維は比重が0.9であることから、水硬性硬化体のフレッシュミックスにポリプロピレン繊維を添加した場合に表面に繊維が浮いて、フレッシュミックス中に繊維を均一に混合するのが難しいのに対し、EVA系繊維は比重が1.2程度であることから、EVA系繊維がフレッシュミックス中において均一な混合が容易であるという優位点を有する。繊維のフレッシュミックス中への均一な混合は、優れた爆裂防止性能を得るためには重要な要素である。
【0012】
さらに本発明においては、繊維と水硬性硬化体との接着性についても考慮すべき重要な因子である。水硬性硬化体が火災などの急激な温度上昇を伴って加熱されることにより、空隙に存在する水分が気化して蒸気圧が増すときに、周辺のマトリックスにはこれを破壊しようとする応力が負荷される。繊維が水硬性硬化体中に存在しないとマトリックスは容易に破壊され、爆裂に至る。繊維が存在すると分断されようとするマトリックスに繊維よる架橋が形成され、マトリックスの破壊を防ごうとする。その後、さらなる温度上昇によって繊維が溶融・分解することにより水蒸気の逃げ道となる微細トンネルを形成し、爆裂防止が達成される。
【0013】
従来よりビニロン繊維は水硬性硬化体との接着性に優れていることが知られており、これに対してポリプロピレン繊維は水硬性硬化体との接着性が低いことが知られている。
ビニロン繊維が添加された水硬性硬化体が火災などの急激な温度上昇を伴って加熱された場合、ビニロン繊維はマトリックスとの接着性が高いため、ビニロン繊維の存在により加熱時の水分の気化による蒸気圧の上昇に抗してマトリックスの破壊を防ごうとするが、さらなる温度および蒸気圧の上昇により繊維が溶融または分解する前に一旦マトリックスの破壊が生じると、繊維がマトリックスに固く固定されているために、かえって大きな爆裂に至る場合がある。
一方、ポリプロピレン繊維はマトリックスとの接着性が低く、繊維が溶融する前に繊維により形成される架橋が弱いので、加熱時の水分の気化による蒸気圧の上昇に抗しきれず、容易に爆裂に至る場合がある。
【0014】
EVA系繊維はビニロン繊維よりも水酸基が少ないことから水硬性硬化体との接着性はビニロン繊維よりも低いが、一方ではポリプロピレン繊維に比べて接着性は高く、すなわちマトリックスの破壊を防ぐための適度な接着性を有する。EVA系繊維を添加した水硬性硬化体は火災などの急激な温度上昇を伴った加熱時において、加熱時の水分の気化による蒸気圧の上昇により分断しようとするマトリックスをEVA系繊維が溶融する前に架橋を形成し、さらに加熱されることにより200℃以下の温度により速やかに溶融・分解し、水蒸気の逃げ道となる微細トンネルをつくる。したがって、EVA系繊維は、加熱による蒸気圧の上昇時に、繊維が溶融する前の爆裂を防ぐためのマトリックス中での架橋形成と、さらなる温度上昇により繊維が溶融・分解することによる微細トンネルの生成が、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維に比べてスムーズに進行するので、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維に比べて優れた耐爆裂防止性能を有する。
【0015】
さらに、繊維とマトリックスの接着性はセメント量の多い(砂が少ない)マトリックス、例えば高強度コンクリートや高強度モルタル等では小さく、セメント量の少ない(砂が多い)マトリックス、例えば普通コンクリートや普通モルタル等では大きいと一般的にいわれている。したがってセメントの多いマトリックスで適度な接着性を得ようとすれば、マトリックスとの接着性に優れたビニロン繊維が好適であり、一方セメント量の少ないマトリックスで適度な接着性を得ようとすれば、マトリックスとの接着性が低いポリプロピレン繊維が好適である。EVA系繊維は上記したように、マトリックスとの接着性がビニロン繊維よりも低いが、ポリプロピレン繊維よりも高く、しかも共重合体中のエチレン含有量を制御することによって接着性を調整できるので、普通コンクリートや普通モルタル等から高強度コンクリートや高強度モルタル等まで幅広い物性のコンクリートやモルタル等の使用に適している。
なおここでいう、高強度コンクリート、高強度モルタルとは圧縮強度が60MPa以上のコンクリート、モルタルのことであり、普通コンクリート、普通モルタルとは20MPa以上60MPa未満のコンクリート、モルタルのことである。
【0016】
本発明のEVA系繊維を含有した水硬性硬化体は、従来のビニロン繊維やポリプロピレン繊維を含有した水硬性硬化体に比べ、普通コンクリート、普通モルタル等から高強度コンクリート、高強度モルタル等まで幅広い圧縮強度の水硬性硬化体において爆裂防止性能に優れており、建造物の床、壁、柱、梁などを構成するコンクリート部材として使用することができる。また手摺などの薄肉部材は表面積が大きいことから急激に温度上昇して爆裂しやすいので、従来のビニロン繊維やポリプロピレン繊維を用いた場合においては、耐爆裂性を付与することは容易ではないが、本発明のEVA系繊維を用いれば、薄肉部材においても耐爆裂性を付与することが可能となる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例を加えて詳細に説明するが、本発明は実施例により何等限定されるものではない。なお本発明における各繊維の物性および得られる水硬性硬化体の物性、耐爆裂性の評価は以下の方法により測定されたものを意味する。
【0018】
[繊度 dtex]
得られた繊維状物の一定試長の重量を測定して見掛け繊度をn=5以上で測定し、平均値を求めた。なお、一定糸長の重量測定により繊度が測定できないものはバイブロスコープにより測定した。
【0019】
[繊維強力 cN、強度 cN/dtex、伸度 %]
繊維を予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間放置して調湿した後、単繊維を試長10cm、引張速度5cm/分としてインストロン試験機「島津製作所製オートグラフ」にて繊維強力を測定し、該強力を繊度で除して強度を求めた。伸度は、(単繊維破断(cm)/把持長(cm))×100(%)により算出した。なお繊維長が10cmより短い場合
は、そのサンプルの可能な範囲での最大長さを把持長として測定することとする。
【0020】
[EVA繊維の融点 ℃]
示差走査熱量計「メトラー社製TA3000」により、以下の条件で測定して吸熱ピーク温度で示す。
測定条件:30℃で3分間放置し、次いで220℃まで速度10℃/分で昇温した。
【0021】
[耐火試験供試体用コンクリートの調製]
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材(川砂)、粗骨材(最大粒径20mm)、高性能AE減水剤(SP)としてポゾリスSP−8Nを使用した。100リットルの2軸ミキサーを使用して、最初にセメントと砂を1分間混ぜ、次いで水を加えて2分間混練する。次いで繊維を加え1分間混練し、一度掻き落として再度1分間混練した。
次いで排出し切り返しを行い、再度2分間混練し、調製した。
【0022】
[コンクリートのスランプ値 mm]
JIS A1101によるコンクリートのスランプ試験方法に準じて、コーン(上辺直径10cm、下辺直径20cm、高さ30cm)にフレッシュコンクリートを所定の手順で満たし、且つコーンを引き上げ、崩れたフレッシュコンクリートを上辺部の下がりを測定した。
【0023】
[耐火試験供試体用モルタルの調製]
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、砕砂、高性能AE減水剤(SP)としてポゾリスSP−8Nを使用した。30リットルのオムニミキサーを使用して、最初に粉体を2分間混ぜ、次いで水を加え2分間混練する。次いで繊維を加え1分間混練し、一度掻き落として再度1分間混練し、調製した。
【0024】
[モルタルのフロー値 mm]
練り混ぜたフレッシュモルタルを底面が直径10cm、上面が直径7cm、高さ6cmの真鍮製のコーンに、鉄製円盤上で満たし、静かにコーンを抜き去り、次いでテーブルに15回上下打撃を与えた時のモルタルの広がりをその直径(mm)で表示する。
【0025】
[水硬性硬化体の圧縮強度 MPa]
コンクリートの場合は直径10cm、高さ20cm、モルタルの場合は直径5cm、高さ10cmの円柱体を成形して試料とし、毎秒0.25MPaの増加速度で荷重をかけてJIS A1108−1993に準じて測定した。
【0026】
[耐爆裂性の評価]
下記式により爆裂した場合の試験体の残存率を求め、爆裂防止性を評価した。
Figure 0004090762
Figure 0004090762
Figure 0004090762
【0027】
[実施例1〜2、比較例1〜2]
繊維を添加しない場合の、圧縮強度が30MPaである普通コンクリートの基本配合をL−配合とし、一方、繊維を添加しない場合の圧縮強度が80MPaである高強度コンクリートの基本配合をH−配合とし、各々表1、表2に示す。さらにL−配合、H−配合に添加する繊維(使用繊維1と称す)を表3に示す。使用したEVA繊維のエチレン含有量は44モル%(ケン化率99%、融点165℃)のものを用いた。なお、ビニロン繊維は(株)クラレ製「REC15」(繊維繊度15dtex×繊維長12mm)を用いた。またポリプロピレン繊維はFibermesh社製「Fiberforce」(繊維繊度15dtex×繊維長12mm)を用いた。
【0028】
【表1】
Figure 0004090762
【0029】
【表2】
Figure 0004090762
【0030】
【表3】
Figure 0004090762
【0031】
表1、表2の配合に表3の使用繊維1を0.1〜0.3容積%添加したコンクリートを調製し、直径10cm、高さ20cmの円柱供試体用型枠にキャスティングし、各水準あたり4個作成した。そして作成した円柱供試体を20℃、65%RHの部屋で24時間気中養生し、直ちに脱型し、20℃の水中に入れ28日間水中養生した。その後各水準あたり4個のうち2個を水中より取り出し、5時間後に圧縮強度を測定したところ、L−配合の試験体はいずれも30〜40MPaの範囲であり、一方H−配合の試験体はいずれも80〜90MPaの範囲であった。また残りの各水準あたり2個については、爆裂試験を行うために、105℃の熱風乾燥機内で7日間乾燥した。乾燥後の水分率は約2%であった。
【0032】
上記乾燥後のサンプルを横3m、高さ1m、奥行き50cmであり、一方の壁面にLPGバーナー火炎噴射口を上下に合計9個有する耐火煉瓦製加熱機にセットして加熱し、爆裂試験を実施した。耐火煉瓦製加熱機の加熱プログラムはISO834に準拠し、加熱開始後15分で700℃に達し、加熱後30分で830℃に到達するようにした。そして加熱温度が830℃に到達した後ガス供給を遮断し、室温になるまで冷却した。その後さらに自然冷却を約4時間行った後、各円柱試験体の爆裂試験後の耐爆裂性を評価した。その結果を表4に示す。なお、各試験体の中で、L−配合試験体の中の1水準の実施例1−2とH−配合試験体の中の1水準の実施例2−2は全く爆裂を示さなかったので、これらをそれぞれL−配合試験体およびH−配合試験体の爆裂試験後の基準重量とし、各試験体の爆裂試験後の重量を上記基準重量で除して爆裂後の残存率として算出した。なお繊維を添加していないL−配合試験体、H−配合試験体はそれぞれ参考例1、参考例2として表示した。表4からEVA繊維を添加した試験体は残存率が98〜100%であり、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体に比べて爆裂防止性能に優れていた。
【0033】
また各試験体について、フレッシュコンクリートの流動性の度合いを示すスランプ値を測定し、測定結果を上記耐爆裂性能(残存率)と併せて表4に示した。繊維を添加しないコンクリートのスランプ値(参考例1、参考例2)と繊維を添加したコンクリートのスランプ値(実施例1〜2、比較例1〜2)を比較したところ、EVA繊維を添加した試験体スランプ値はビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体のスランプ値に比べて、繊維を添加しないコンクリートのスランプ値に対する数値の低下が少なく、すなわちEVA繊維を添加した試験体はビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体に比べてスランプ値への影響が小さいことがわかった。
【0034】
【表4】
Figure 0004090762
【0035】
[実施例3〜4、比較例3〜4]
上記L−配合、H−配合の場合と同様、繊維を添加しない場合の圧縮強度が30MPaである普通モルタルの基本配合をLM−配合、一方繊維を添加しない場合の圧縮強度が70MPaである高強度モルタルの基本配合をHM−配合とし、それぞれ表5、表6に示す。
そして上記LM−配合、HM−配合に添加する繊維(使用繊維2と称す)を表7に示す。
なお、使用繊維2は表3の使用繊維1の繊維長12mmを6mmに変えたものである。
【0036】
【表5】
Figure 0004090762
【0037】
【表6】
Figure 0004090762
【0038】
【表7】
Figure 0004090762
【0039】
表5、表6の配合に表7の使用繊維2を0.1〜0.3容積%添加したモルタルを調製し、直径5cm、高さ10cmの円柱供試体用型枠にキャスティングし、各水準あたり4個作成した。そして作成した円柱供試体を20℃、65%RHの部屋で24時間気中養生し、直ちに脱型し、20℃の水中に入れ28日間水中養生した。その後各水準あたり4個のうち2個を水中より取り出し、5時間後に圧縮強度を測定したところ、LM−配合の試験体はいずれも30〜40MPaの範囲であり、一方HM−配合の試験体はいずれも60〜70MPaの範囲であった。また残りの各水準あたり2個については、爆裂試験を行うために、105℃の熱風乾燥機内で7日間乾燥した。乾燥後の水分率は約2%であった。
【0040】
上記乾燥後のサンプルを横3m、高さ1m、奥行き50cmであり、一方の壁面にLPGバーナー火炎噴射口を上下に合計9個有する耐火煉瓦製加熱機にセットして加熱し、爆裂試験を実施した。耐火煉瓦製加熱機の加熱プログラムはISO834に準拠し、加熱開始後15分で700℃に達し、加熱後30分で830℃に到達するようにした。そして加熱温度が830℃に到達した後ガス供給を遮断し、室温になるまで冷却した。その後さらに自然冷却を約4時間行った後、円柱試験体の爆裂試験後の耐爆裂性を評価した。その結果を表8に示す。なお、各試験体の中で、LM−配合試験体の中の2水準の実施例3−1、3−2とHM−配合試験体の中の1水準の実施例4−2は全く爆裂を示さなかったので、これらをそれぞれLM−配合試験体およびHM−配合試験体の爆裂試験後の基準重量とした。ただし、LM−配合の場合においては、上記したように2水準が全く爆裂を示さなかったので、2水準の重量の平均値を使用した。そして各試験体の爆裂試験後の重量を上記基準重量で除して爆裂後の残存率として算出した。なお繊維を添加していないLM−配合試験体、HM−配合試験体はそれぞれ参考例3、参考例4として表示した。表8からEVA繊維を添加した試験体は残存率が97〜100%であり、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体に比べて爆裂防止性能に優れていた。
【0041】
また各試験体について、フレッシュモルタルの流動性の度合いを示すフロー値を測定し、測定結果を上記耐爆裂性能(残存率)と併せて表8に示した。繊維を添加しないモルタルのフロー値(参考例3、参考例4)と繊維を添加したモルタル(実施例3〜4、比較例3〜4)のフロー値を比較したところ、EVA繊維を添加した試験体のフロー値はビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体のフロー値に比べて、繊維を添加しないモルタルのフロー値に対する数値の低下が少なく、すなわちEVA繊維を添加した試験体はビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した試験体に比べてフロー値への影響が小さいことがわかった。
【0042】
【表8】
Figure 0004090762
【0043】
[実施例5:薄板での爆裂試験]
表5のモルタル配合(LM−配合)に表9に示す使用繊維3を0.1〜0.2容積%添加し、縦50cm、横50cm、厚さ5cmの平板を作成し、水中養生28日、気中養生28日後105℃で乾燥し、水分率2%に調製した後、爆裂試験を行った。試験結果を表10に示す。表10の結果から、従来提案されているビニロン繊維、ポリプロピレン繊維を添加した薄肉のモルタル板では爆裂を防止することが困難であったが、EVA繊維を添加した薄肉のモルタル板では爆裂を防止することが可能であった。
【0044】
【表9】
Figure 0004090762
【0045】
【表10】
Figure 0004090762
【0046】
【発明の効果】
本発明の、EVA系繊維を添加した水硬性硬化体は、従来のビニロン繊維やポリプロピレン繊維を添加した水硬性硬化体に比べて優れた爆裂防止効果を得ることができる。さらには、普通コンクリート、普通モルタルから高強度コンクリート、高強度モルタルに至る広範囲のコンクリート部材の爆裂防止が可能となる。また薄肉部材においても優れた耐爆裂性を付与することが可能となる。

Claims (1)

  1. エチレン含有量が25〜70モル%であるエチレンービニルアルコール系共重合体を成分とする繊維が含有されてなり、かつ該繊維が下記(1)〜(3)を満足してなる耐爆裂性水硬性硬化体。
    (1)繊維繊度が1〜100dtexであること、
    (2)繊維長さが1〜30mmであること、
    (3)水硬性硬化体100容積%に対し、0.05〜0.5容積%含有されてなること。
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