JP4089782B2 - パイプまたはパイプマットの施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、天井、壁、床に、敷設する樹脂製のパイプまたはパイプマットの施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、冷暖房用として、壁や天井、床に、温水や冷水など、熱交換用の流体を流すための熱交換パイプを取り付けることがあった。上記熱交換パイプ内に冷水あるいは温水を流せば、パネル表面を介して部屋を冷房あるいは暖房することができるというものである。
上記熱交換パイプは、冷暖房用壁材として、予めパネル化して用いられる場合と、直接天井などに取り付けられる場合とがあった。
パネル化して用いる方法としては、モルタルやプラスターで形成されるプレートの中に、熱交換用のパイプマットの熱交換パイプとラスシートとを埋設させたパネルを形成する。そして、上記パネルを部屋の壁材や天井材として用いていた。
【0003】
また、上記プレート層の代わりに、天井面や壁面に直接パイプを取り付ける方法もある。その場合には、まず、天井面や壁面に、ラスシートと熱交換用のパイプマットとを釘やタッカーなどで止め付ける。その後、流動性を有するモルタルやプラスターを、上記パイプマットが隠れるまで吹き付けたり塗りつけたりして、乾かして固める。
【0004】
なお、上記パイプマットとは、熱交換用のパイプをリテーナで整列させてマット化したパイプユニットのことである(特許文献1参照)。ただし、熱交換用パイプの施工方法には、予めマット化していないパイプを、施工時に整列させながら、天井などに止め付けていく方法もある。
また、パイプや、パイプマットが長い場合には、それらをロール状に巻いて施工現場に運び込むようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−118374号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、天井、壁、床に、冷暖房用のパイプを取り付ける作業現場は、建築途中の建物のことが多い。そのため、ドアや、窓ガラスなどが取り付けられていないことが多くある。このような状態では、現場の気温は、外気温とほとんど同じである。
従って、冬季には、温度が低くなり、樹脂製のパイプが硬くなってしまう。硬くなったパイプやパイプマットは、取り扱いにくく、施工性が悪いという問題があった。
【0007】
例えば、ロール状に巻いて搬入したパイプマットを、天井や床などの平面に取り付ける場合には、パイプの巻き癖をなおして、まっすぐにしなければならない。また、壁などの角に沿ってパイプを取り付けるためには、巻き癖とは異なる角度に曲げなければならないこともある。
しかも、低温で硬くなったパイプは、脆くなっているので、強引にのばしたり、曲げたりすると、パイプにひびが入ってしまう。パイプを傷つけないように注意して、巻き癖をなおしたり、必要な角度に曲げたりするためには、大変な手間がかかってしまう。
【0008】
だからといって、外気に解放されている室内を、上記パイプが軟らかくなるまで暖めるのは、エネルギーの無駄である。また、パイプが柔軟になるまで、室内を十分に暖めた場合、熱気が上方に溜まるので、天井側で作業する作業員は、暑すぎてかえって作業能率が下がってしまうこともあった。
この発明の目的は、天井や、壁、床などに設ける樹脂製のパイプの施工性を向上させることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、天井、壁、あるいは床に、樹脂製のパイプまたはパイプマットを敷設する施工方法において、上記パイプまたはパイプマット内に、温流体を供給して、上記パイプまたはパイプマットを柔軟にした後、あるいは、パイプまたはパイプマット内に、温流体を循環させて当該パイプまたはパイプマットを柔軟にしながら敷設する点に特徴を有する。
第2の発明は、天井、壁、あるいは床に、リテーナによって間隔を保持した樹脂製のパイプまたはパイプマットを敷設する施工方法において、上記パイプまたはパイプマット内に、温流体を供給して、上記パイプまたはパイプマットを柔軟にした後、あるいは、パイプまたはパイプマット内に、温流体を循環させて当該パイプまたはパイプマットを柔軟にしながら敷設する点に特徴を有する
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図5を用いて、この発明の実施例を説明する。
この実施例は、図1に示すパイプマット1を、この発明の施工方法によって天井に取り付ける例である。
図1に示すパイプマット1は、全て樹脂製であり、供給側メインパイプ2と戻り側メインパイプ3との間を、湾曲部4で折り返した複数の熱交換パイプ5で、接続している。この熱交換パイプ5が、この発明のパイプにあたる。
供給側メインパイプ2は、その一端に流体供給口6を設け、他端を漏れがないように塞いでいる。
【0011】
それに対して、戻り側メインパイプ3では、その一端を漏れがないように塞ぎ、他端に流体排出口7を設けている。そして、実際に、冷暖房装置として用いる場合には、上記供給口6を図示しないポンプに接続し、上記流体排出口7を、図示しない戻り流路を介して図示しないタンクに接続する。
したがって、供給側メインパイプ2から供給された流体が、熱交換パイプ5で熱交換し、戻り側メインパイプ3を介してタンクへ戻る。
【0012】
上記熱交換パイプ5は、細くて曲り易いため、そのままでは、間隔L(図2、図3参照)が不均一になり易い。そこで、リテーナ8を用いて、熱交換パイプ5を等間隔に整列させるようにしている。
図2はこのリテーナ8の正面図、図3は図2のIII-III線断面図である。
図2のように、リテーナ8は第1、第2の桟9、10を平行にして、その間隔を複数の連結部材11で保っている。この連結部材11は、直径d(図3参照)とほぼ同じ幅を持つ板状の部材である。
【0013】
また、各桟9、10の、それぞれには、複数のピッチ保持溝AとBとをそれぞれ等間隔Lで形成している。そこで、上記各ピッチ保持溝AとBとは、それぞれ互いに対向することになる。
そして、これらのピッチ保持溝A,Bの断面形状は、図3に示すように、熱交換パイプ5の外形に一致するように、直径dの円弧で形成されているが、開口幅sを直径dより小さくしている。そのため、熱交換パイプ5をこのピッチ保持溝に押し込むと、熱交換パイプ5を固定することができる。
また、このリテーナ8を、タッカーによって、天井や、壁、床に、固定するようにしている。
【0014】
そして、リテーナ8のピッチ保持溝A、Bは、等間隔Lで形成されているので、このピッチ保持溝に熱交換パイプ5をはめ込めば、それを等間隔Lに保つことができる。
また、上記複数の熱交換パイプ5は、メインパイプ2、3に等間隔Lで接続しているので、図1のように、熱交換パイプ5の長さ方向に対して、複数のリテーナ8を適当な間隔で設置すれば、熱交換パイプ5の間隔が長さ方向のどの位置でも等間隔となり、全ての熱交換パイプ5がほぼ平行になる。
【0015】
なお、熱交換パイプ5は、リテーナ8の部分で等間隔を保持しているが、本来、可撓性を有しているため、リテーナ8以外の部分は、自由に曲げることができる。したがって、熱交換パイプ5を巻いてパイプマット1をロール状にすることができる。
また、パイプマット1に設置するリテーナ8の数を多くすれば、全ての部分で熱交換パイプ5を等間隔に保持し易い。また、多数の熱交換パイプ5を一体的に取り扱うことができるので、施工作業も効率が上がる。ただし、あまり多くするとリテーナ8の取り付けに時間がかかるし、パイプマット1の可撓性が失われる。そこで、リテーナ8の数は、パイプマットの設置条件などに応じて適当な数を選べばよい。
【0016】
さらに、図2のリテーナ8のピッチ保持溝A、Bは、整列させる熱交換パイプ5の本数に合わせて、その数を決めればよい。そして、リテーナ8のピッチ保持溝A、Bは、等間隔Lで形成されているので、このピッチ保持溝に熱交換パイプ5をはめ込めば、それを等間隔Lに保つことができる。
ただし、熱交換パイプ5は、必ずしも等間隔にしなければならないというものではない。必要に応じた温度分布を実現するために最適な間隔を設定し、その設定を保持するために、リテーナを用いることができる。
【0017】
なお、熱交換パイプ5の間隔を保持する必要がない場合には、上記リテーナ8を用る必要はない。ただし、その場合には、釘やタッカーなどを打ち付けて、パイプマット1を天井や壁に止めるための部材が必要になる。
また、パイプマットは、この実施例のパイプマット1に限らない。例えば、両メインパイプ2と3を対向させて配置し、その間を熱交換パイプ5で連結するようにしたものでもよいし、その他の形状でもかまわない。
【0018】
次に、パイプマット1の取り付け手順を説明する。
まず、上記のようなパイプマット1を、図4のようにロール状にして、施工現場に運び込む。
現場では、ロール状のパイプマット1の各メインパイプ2,3に開口した流体供給口6と排出口7に、図示しない温流体循環装置を接続する。温流体は、図4の矢印aのように、上記供給口6から供給側メインパイプ2に供給され、熱交換パイプ5を通過後、戻り側メインパイプ3の排出口7から矢印bのように排出される。
【0019】
この実施例では、温流体として、60℃くらいの温水を用いることにし、上記温流体循環装置は、ヒーターと循環ポンプを備えた装置である。ただし、この発明の温流体としては、熱交換パイプ5が柔軟になる温度の流体ならば、水以外の液体や、ガスなど、どのような流体でもかまわない。また、温流体は、循環させずに、排出口7から廃棄してもかまわない。
さらに、パイプマット1を暖房装置として利用するための流体供給装置が、現場に設置済みで、稼動可能な状態になっていた場合には、その流体供給装置からの配管に、上記メインパイプ2,3を接続して、熱交換パイプ5を暖めることもできる。
【0020】
上記のようにして、パイプマット1に温流体を供給すれば、熱交換パイプ5が暖まり、柔軟になる。そのため、パイプマット1を、図4に示すようなロール状態から、図1に示す平面状に伸ばしても、巻き癖が簡単にとれる。巻き癖の無いパイプマット1は、天井などの平面に、簡単に取り付けることができる。
また、壁などの角に沿って、熱交換パイプ5を曲げながら取り付けることも容易である。
【0021】
上記パイプマット1の取り付け作業は、温流体を循環させながら行っても良いし、熱交換パイプ5が軟らかくなったら、一旦、温流体の供給を止めて、それから取り付け作業を行うようにしてもかまわない。
どちらにしても、熱交換パイプ5を柔軟にすることによって、パイプマット1の施工性を向上させることができる。
なお、施工作業中に温流体として水を利用した場合には、エア等によって、熱交換パイプ5内の水分をとばしておくようにすることが好ましい。熱交換パイプ5内に、水分が残っていると、気温が下がったときに凍ってしまって、熱交換パイプ5を破損してしまうことがあるからである。
【0022】
また、パイプマット1の施工作業中に、温流体を循環させるようにしているので、その経路中に漏れがあった場合には、施工作業中にそれを見つけることもできる。液体ならば、漏れの個所が見えるし、熱風でパイプを暖める場合には、排出口側を絞って、圧力がかかるようにしておけば、エア漏れの音で、漏れを見つけることができる。
例えば、天井にパイプマット1を取り付けて、モルタルなどを塗りつけてしまった後に、漏れが発見されると、モルタルを剥がさなければならなくなって、作業が大変である。しかし、この実施例の場合には、モルタルなどを塗る前に漏れを発見できるので、不良品を早めに交換できる。
また、施工作業と、漏れ検査とを同時にできるので、これらの作業を別々に行なう場合と比べて、施工作業全体の時間を短縮できる。
【0023】
なお、上記パイプマット1を、天井などの施工面に取り付ける際には、タッカーを用いて、リテーナ8部分を止め付けるようにしている。
具体的には、図5に示すように、コの字状のタッカー芯12が、ピッチ保持溝A,A間で、桟9をまたいだ状態で、タッカー芯12の先端が施工面に食い込むように、打ち込む。この実施例では、上記タッカー芯12が、この発明の止め部材にあたる。ただし、止め部材としては、タッカー芯に限らない。例えば、釘や、ビスなどでもかまわない。
なお、図5では、ピッチ保持溝Aに熱交換パイプ5をはめ込んでいないが、実際には、熱交換パイプ5を保持した状態で、タッカー止めをする。また、ここでは、リテーナ8の一方の桟9のみを図示しているが、もう一方の桟10も、同様にして、タッカー止めをする。
【0024】
上記のようにタッカー止めを行う際には、タッカー芯12に、矢印c方向の力が作用し、その力は、リテーナ8の桟9にも作用する。桟9は、上記矢印cの力で、タッカー芯12に押された部分とその周辺が変形する。その変形分が、矢印dで示すように、ピッチ保持溝Aの内側に向かって移動する。そのため、ピッチ保持溝A内にはめ込まれた熱交換パイプ5に、桟9の変形による圧力が作用する。このとき、上記ピッチ保持溝A内の熱交換パイプ5が、低温で硬く、脆くなっていると、上記圧力によって、ひびが入ってしまうことがあった。
【0025】
また、上記リテーナ8の変形が無くても、リテーナ8を止め付けるためのタッカーの打ち込み作業や、釘打ちの衝撃が伝わることによって、低温で脆くなっている熱交換パイプ5が破損してしまうこともあった。
しかし、この実施例のように、熱交換パイプ5が、温流体によって柔軟性を保っていれば、桟9の変形による圧力や、衝撃力で、熱交換パイプ5が破損することはない。
【0026】
【発明の効果】
第1および第2の発明は、樹脂製のパイプまたはパイプマットを、天井や、壁、床などに施工する際に、パイプの柔軟性を保って施工作業ができるようにしたので、その施工性を向上させることができる。特に、冬季、気温が低い時にも、部屋全体を暖める方法に比べて、エネルギーロスも小さく、必要な部分を集中的に暖めて、施工性を上げることができる。
また、パイプ内を通過させる温流体の漏れを検出することによって、パイプの破損を検出することもできる。
【0027】
さらに、第2の発明のように、リテーナを用いた場合、パイプまたはパイプマットを固定するための圧力や衝撃が、リテーナに作用したとしても、パイプが柔軟なので、その衝撃で、パイプが破損してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のパイプマットの平面図である。
【図2】実施例のリテーナの正面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】実施例のパイプマットをロール状にした図である。
【図5】リテーナの取り付け時に熱交換パイプに作用する圧力を説明するための図である。
【符号の説明】
1 パイプマット
5 熱交換パイプ
8 リテーナ
12 タッカー芯(発明の止め部材にあたる)

Claims (2)

  1. 天井、壁、あるいは床に、樹脂製のパイプまたはパイプマットを敷設する施工方法において、上記パイプまたはパイプマット内に、温流体を供給して、上記パイプまたはパイプマットを柔軟にした後、あるいは、パイプまたはパイプマット内に、温流体を循環させて当該パイプまたはパイプマットを柔軟にしながら敷設するパイプまたはパイプマットの施工方法。
  2. 天井、壁、あるいは床に、リテーナによって間隔を保持した樹脂製のパイプまたはパイプマットを敷設する施工方法において、上記パイプまたはパイプマット内に、温流体を供給して、上記パイプまたはパイプマットを柔軟にした後、あるいは、パイプまたはパイプマット内に、温流体を循環させて当該パイプまたはパイプマットを柔軟にしながら敷設するパイプまたはパイプマットの施工方法。
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