JP4089511B2 - 樹脂シートの圧延装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対のロール間に樹脂シートを通して、樹脂シートを圧延する樹脂シートの圧延装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)等で形成された樹脂シートを、弾性率の向上や、線膨張係数の低減を目的として圧延することが検討されている。その際の、圧延装置としては、一対のロール間に樹脂シートを通して、樹脂シートを圧延する樹脂シートの圧延装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。そして、特許文献1には、樹脂シート(特許文献1では押し出し成形品)を一対のロール間に通して圧延する場合、樹脂シートを、塑性変形可能な温度に加温した後、ロール間に通して圧延を行うのがよいと記載されている。このような、従来の圧延装置1の概略図を図8に示す。図8に示す圧延装置1では、一対のロール2A、2B(圧延ロール2)に圧延荷重をかけながら、それらの間に樹脂シート3を通して、樹脂シート3を圧延する。そして、圧延ロール2の手前(上流側)に、樹脂シート3の温度を調整する温度調整手段として、一対のプレートヒータ4、4を設けている。
【0003】
【特許文献1】
特開2003−80596号公報(第2図、第3〜5頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示すような、従来の圧延装置1では、樹脂シート3の幅が広くなると、一対のロール2A、2Bの長さも長くなるため、これらのロール2A、2Bの軸10A、10Bに圧延荷重をかけながら樹脂シート2を圧延すると、図9に模式的に示すように、各ロール2A、2Bがたわむ現象が発生する。その結果、圧延前には、図10(a)に示すように、幅方向の厚みが均一であった樹脂シート3が、圧延後には、図10(b)に示すように、幅方向の端部に比べて中央部の方が厚い樹脂シート3となるという問題が生じる。
【0005】
圧延後の樹脂シート3にこのような中央部が厚く、端部が薄いという幅方向の厚み分布が生じると、それに対応して中央部が小さく、端部が高いという幅方向の圧延倍率分布が生じる。なお、圧延倍率とは、(圧延前厚み/圧延後厚み)を表していて、圧延後に均一な特性の樹脂シート3を得るためには、圧延後の樹脂シート3の全面において圧延倍率は均一であることが求められる。すなわち、端部に比べて中央部の方が厚い樹脂シート3となるという問題が生じると、圧延によって向上させようとする弾性率や、線膨張係数等の特性がバラツクという問題も生じてくる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、一対のロール間に樹脂シートを通して、樹脂シートを圧延する樹脂シートの圧延装置であって、圧延して得られる樹脂シートの幅方向の厚み精度を向上できると共に、圧延後の樹脂シートの特性がバラツクことを防止できる樹脂シートの圧延装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明の樹脂シートの圧延装置は、一対のロールで構成される圧延ロールを備え、前記一対のロール間に樹脂シートを通して、樹脂シートを圧延する樹脂シートの圧延装置において、圧延ロールの手前に、樹脂シートの温度を調整する温度調整手段を設けると共に、この温度調整手段を、圧延ロールの幅方向に温度調整可能としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明の樹脂シートの圧延装置は、請求項1記載の樹脂シートの圧延装置において、圧延ロールよりも下流側に圧延した樹脂シートの幅方向の厚さ分布を測定する厚さ分布測定手段を設けておき、厚さ分布測定手段の測定結果を、温度調整手段の幅方向の温度調整にフィードバックできるようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の樹脂シートの圧延装置についての実施の形態の一例を示す斜視図であり、図2は一対のロール2A、2Bを示す正面図である。
【0010】
図1に示す樹脂シートの圧延装置1は、一対のロール2A、2Bで構成される圧延ロール2を備えている。一対のロール2A、2Bの軸10A、10B間には、図2に示すように、圧延荷重をかけるようにしている。
【0011】
そして、圧延ロール2の手前(圧延ロール2よりも上流側)に樹脂シート3の温度を調整する温度調整手段として、対向させて設けている一対のプレートヒータ4、4と、上側のプレートヒータ4と上側の圧延ロール2Aとの間で樹脂シート3に冷風又は熱風を吹付ける送風装置5とを備えている。この送風装置5は、樹脂シート3が通る領域の上方であって、圧延ロール2の幅方向に沿う6箇所の位置に配置していて、それぞれ独立して設定した温度の風を発生する送風機6で構成される。各送風機6は、発生した風を樹脂シート3の表面に導くノズル7を備えている。そのため、この圧延装置1における温度調整手段は、各送風機6で発生させる風の温度を変えることによって、圧延ロール2の幅方向に温度調整可能となっている。
【0012】
そして、圧延ロール2よりも下流側に、圧延した樹脂シート3の幅方向の厚さ分布を測定する厚さ分布測定手段として、圧延した樹脂シート3の両端部及び中央部が通過する位置にそれぞれ光学式板厚測定機8を配置して、樹脂シート3の幅方向の厚さ分布を測定するようにしている。
【0013】
この樹脂シートの圧延装置1で圧延する樹脂シート3の材質については、特に制限はないが、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PE樹脂(ポリエチレン樹脂)やそれらのアロイが例示できる。
【0014】
以上説明した樹脂シートの圧延装置1では、樹脂シート3の幅方向に対して、端部から中央に向かって、6箇所に配置している送風機6からの風の温度が順に高くなるように、各送風機6の風の温度を設定することによって、図9に示すような、各ロール2A、2Bがたわむ現象が修正されて、圧延して得られる樹脂シート3の幅方向の厚みを均一にすることが可能となる。また、その結果、圧延後の樹脂シートの圧延倍率を均一にすることが可能となり、弾性率や、線膨張係数等の樹脂シート特性を均一にすることが可能となる。
【0015】
さらに、上記の樹脂シートの圧延装置1では、圧延ロール2よりも下流側に圧延した樹脂シート3の幅方向の厚さ分布を測定する厚さ分布測定手段を設けているので、この厚さ分布測定手段の測定結果を、幅方向の温度調整手段である各送風機6の風の温度の調整にフィードバックすることができる。このフィードバックは人が行ってもよく、また、制御装置を用いて自動的に行うようにしてもよい。このフィードバックにより、圧延して得られる樹脂シート3の幅方向の厚みをより均一にすることが可能となる。また、その結果、圧延後の樹脂シート3の圧延倍率をより均一にすることが可能となる。
【0016】
【実施例】
(実施例、比較例)
圧延前の樹脂シートとして、ABS樹脂とPET樹脂とのアロイをシート状に押し出して作製した、厚みが3mmで、幅が300mmの長尺の樹脂シート3を用い、図1に示す樹脂シートの圧延装置1によって、圧延した。圧延ロール2の各ロール2A、2Bのロール径は200mm、ロール幅は400mmとし、各ロール2A、2Bの両端に突出している軸10A、10B間に、左右両側共にそれぞれ30トンの圧延荷重をかけて圧延するようにした。また、6基の送風機6は、樹脂シート3が通る領域の上方であって、圧延ロール2の幅方向に沿う6箇所の位置に、均等間隔で配置した。
【0017】
まず、比較のために、送風装置5は停止させた状態で、プレートヒータ4、4を用いて、樹脂シート3を幅方向全域にわたって均一に80℃まで昇温させて、圧延ロール2で圧延した(比較例1)。樹脂シート3について、幅方向の圧延前の厚さ分布と、幅方向の圧延後の厚さ分布を測定したところ、圧延前の厚さは全て3.0±0.05mmの範囲内であり、圧延後の厚さは1.2±0.2mmの範囲内でばらついていた。この結果を図3のグラフに示す。なお、図3中の白丸は、圧延ロール2よりも下流側の3箇所に配置した光学式板厚測定機8を用いて測定した圧延後の厚さの測定値を示している。光学式板厚測定機8の配置位置は、樹脂シート3の幅方向の中央位置と、この中央位置から120mm端部よりの位置とした。図3のグラフで明らかなように、この場合の、圧延後の幅方向の厚さ分布は、中央部が厚く、両端が薄いというものであった。
【0018】
次に、プレートヒータ4、4を用いて、樹脂シート3を幅方向全域にわたって80℃の均一温度となるよう昇温させた後で、圧延ロール2の幅方向に温度調整可能である送風装置5を用いて、中央部になるほど高温の熱風を吹付けるようにした。具体的には、図1に示す樹脂シートの圧延装置1における、6箇所に備える送風機6からの風の温度を調整し、6本の各ノズル7の先端での熱風温度を、図1における手前側から奥側に向けて80℃、90℃、100℃、100℃、90℃、80℃と、幅方向の中央部になるほど高く設定した。このように加熱された樹脂シート3を圧延ロール2で圧延した(実施例1)。なお、各ノズル7の先端での熱風温度の分布を、図4のグラフに示す。樹脂シート3について、幅方向の圧延前の厚さ分布と、幅方向の圧延後の厚さ分布を測定したところ、圧延前の厚さは全て3.0±0.05mmの範囲内であり、圧延後の厚さは0.95±0.1mmの範囲内でばらついていた。この結果を図5のグラフに示す。なお、図5中の白丸は、圧延ロール2よりも下流側の3箇所に配置した光学式板厚測定機8を用いて測定した圧延後の厚さの測定値を示している。図5のグラフで明らかなように、この場合は、圧延後の幅方向の厚さ分布は、中央部に比べ、両端が少し厚いというものであったが、厚さのバラツキの程度は、図3の場合に比べて小さくなっている。
【0019】
次に、プレートヒータ4、4の条件は変えずに、6本の各ノズル7の先端での熱風温度を、図1の手前側から奥側に向けて80℃、87℃、95℃、95℃、87℃、80℃と、再設定して、加熱された樹脂シート3を圧延ロール2で圧延した(実施例2)。なお、各ノズル7の先端での熱風温度の分布を、図6のグラフに示す。樹脂シート3について、幅方向の圧延前の厚さ分布と、幅方向の圧延後の厚さ分布を測定したところ、圧延前の厚さは全て3.0±0.05mmの範囲内であり、圧延後の厚さは1.0±0.02mmの範囲内となっていた。この結果を図7のグラフに示す。図7のグラフで明らかなように、この場合は、圧延後の幅方向の厚さは全て、1.0±0.02mmの範囲内となっていて、厚み精度が良好な、圧延された樹脂シートを得られた。
【0020】
【発明の効果】
請求項1に係る発明の樹脂シートの圧延装置は、上記の構成を備えるので、圧延ロールで圧延して得られる樹脂シートの幅方向の厚み精度を向上することができ、その結果、圧延後の樹脂シートの特性がバラツクことを防止することができる。
【0021】
請求項2に係る発明の樹脂シートの圧延装置は、厚さ分布測定手段の測定結果を、温度調整手段の幅方向の温度調整にフィードバックできるようにしているので、請求項1に係る発明の効果に加えて、圧延ロールで圧延して得られる樹脂シート3の幅方向の厚みをより均一にすることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例における、一対のロールを示す正面図である。
【図3】比較例1における、樹脂シートの幅方向の圧延前、圧延後の厚さ分布を示すグラフである。
【図4】実施例1における、幅方向の熱風温度の分布を示すグラフである。
【図5】実施例1における、樹脂シートの幅方向の圧延前、圧延後の厚さ分布を示すグラフである。
【図6】実施例2における、幅方向の熱風温度の分布を示すグラフである。
【図7】実施例2における、樹脂シートの幅方向の圧延前、圧延後の厚さ分布を示すグラフである。
【図8】従来の圧延装置の一例を示す側面図である。
【図9】従来の圧延装置を用いたときの、ロールの状態を説明するための正面図である。
【図10】従来の圧延装置を用いたときの、樹脂シートの幅方向の厚さ分布を説明する断面図であり、(a)は圧延前、(b)は圧延後の樹脂シートである。
【符号の説明】
1 圧延装置
2 圧延ロール
2A、2B ロール
3 樹脂シート
4 プレートヒータ
5 送風装置
6 送風機
7 ノズル
8 光学式板厚測定機
10A、10B 軸
Claims (2)
- 一対のロールで構成される圧延ロールを備え、前記一対のロール間に樹脂シートを通して、樹脂シートを圧延する樹脂シートの圧延装置において、圧延ロールの手前に、樹脂シートの温度を調整する温度調整手段を設けると共に、この温度調整手段を、圧延ロールの幅方向に温度調整可能としたことを特徴とする樹脂シートの圧延装置。
- 圧延ロールよりも下流側に、圧延した樹脂シートの幅方向の厚さ分布を測定する厚さ分布測定手段を設けておき、厚さ分布測定手段の測定結果を、温度調整手段の幅方向の温度調整にフィードバックできるようにしたことを特徴とする請求項1記載の樹脂シートの圧延装置。
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