JP4088883B2 - 負荷駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FETをスイッチングすることで、負荷への駆動電流をPWM制御する負荷駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の負荷駆動装置では、FETをスイッチングする間隔(即ち、出力パルスの幅)のみを変更して、負荷に流す駆動電流をPWM制御する構成になっていた(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特公昭53−41331号公報(1頁 右欄4〜24行目)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しなしながら、上記した従来のものでは、負荷に流す駆動電流が大きくなると、FETのスイッチング動作時における損失が大きくなる。その理由は、FETは、スイッチング動作時にドレイン・ソース間の抵抗が過渡的に変化し、従来は、その過渡的な抵抗変化の時定数が負荷への駆動電流の大小に拘わらず一定になっていたからである。この結果、負荷に流す駆動電流が大きくなるとその駆動電流とドレイン・ソース間の抵抗(又は、ドレイン・ソース間の電圧降下)とから求められる損失が大きくなっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、FETのスイッチング動作時の損失を抑えて、従来よりFETの小型化及び低コスト化を図ることが可能な負荷駆動装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る負荷駆動装置は、原動機付きの乗り物に搭載された電源と負荷との間を導通状態と非導通状態とに切り替えるFETを備え、FETをスイッチングすることで負荷への電流をPWM制御する負荷駆動装置において、原動機の回転数の増加に伴い乗り物内の静粛性が低下するに従って、スイッチング動作時にFETのゲートに流れる電流を大きくする制御電流変更手段を備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の負荷駆動装置において、負荷は、四輪駆動車における前後輪の駆動力の配分を変更するためのアクチュエータであるところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の負荷駆動装置において、制御電流変更手段は、制御信号用電源とFETのゲートとの間に設けたマルチプレクサと、マルチプレクサによって選択的にFETのゲートに接続可能な複数の異なる減流素子とを備えてなるところに特徴を有する。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の負荷駆動装置において、制御電流変更変更手段は、負荷に流れ得る駆動電流とスイッチング動作時にFETのゲートに流す電流とを対応させたデータマップと、負荷に流れた駆動電流又は外部からの情報により決定した負荷への駆動電流に基づき、データマップからFETのゲートに流す電流を決定する電流値決定手段と、電流値決定手段によって決定した電流をFETのゲートに流すためのD/Aコンバータとを備えてなるところに特徴を有する。
【0012】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
請求項1の負荷駆動装置では、原動機の回転数の増加に伴い乗り物内の静粛性が低下するに従って、スイッチング動作時にFETのゲートに流れる電流も大きくなり、FETに寄生したコンデンサが急速に充電され、スイッチング動作時における過渡的なドレイン・ソース間の抵抗変化の時定数が小さくなる。これにより、スイッチング動作時のFETにおける電圧降下が急峻に減衰し、原動機の回転数が大きくなった場合のFETの損失が従来より低減される。即ち、本発明によれば、FETの発熱が抑えられて、FETの小型化及び低コスト化を図ることが可能になる。
【0013】
ところで、乗り物には、ノイズ(例えば、ラジオ等)の影響を受ける機器が搭載されているのでエミッション性能が問題になる。そして、原動機の回転数が小さいときには、車内の静粛性が高く、高いエミッション性能が要求される一方、原動機の回転数が大きいときには、原動機の騒音が大きく、車内の静粛性が低いため高いエミッション性能は要求されない。これに対し、スイッチング動作時のFETのゲートに流れる電流を大きくするほどエミッション性能が低下する。本発明では、原動機の回転数が小さいときには、スイッチング動作時におけるFETのゲートに流れる電流が小さくなるので、高いエミッション性能の要求に応えられる。また、原動機の回転数が大きくなり、高いエミッション性能が要求されなくなったときに、スイッチング動作時におけるFETのゲートに流れる電流が大きくなり、損失低減を図ることができる。
【0014】
具体的には、四輪駆動車の前後輪の駆動力配分を行うためのアクチュエータは、原動機の回転数の増加に伴って比較的大きな駆動電流を必要とするので、請求項2の負荷駆動装置のように、上記アクチュエータを負荷とすれば、アクチュエータへの駆動電流と原動機の回転数とが共に大きくなったときに、FETにおける電圧降下を急峻に減衰させることができ、乗り物におけるエミッション性能と損失低減の両方を従来より向上させることができる。
【0015】
<請求項3の発明>
請求項3の負荷駆動装置では、マルチプレクサが複数の異なる減流素子を選択的にFETのゲートに接続することで、スイッチング動作時にFETのゲートに流れる電流を変更することができる。
【0016】
<請求項4の発明>
請求項4の負荷駆動装置では、負荷に流れた駆動電流又は外部からの情報により決定した負荷への駆動電流に基づき、データマップからFETのゲートに流す電流を決定し、その決定した電流をD/AコンバータからFETのゲートに流すことでスイッチング動作時にゲートに流す電流を変更することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
<第1実施形態>
以下、本発明を四輪駆動車に搭載されたECUとしての負荷駆動装置に適用した第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。本実施形態の四輪駆動車は、例えば車両の前側にエンジン(本発明に係る「原動機」に相当する)を搭載しており、前輪を常時駆動する。そして、車両の前後に延びたプロペラシャフトの途中に駆動力伝達装置を備え、その駆動力伝達装置の作動により、走行状況に応じてエンジンからプロペラシャフトを通して後輪に駆動力を伝達する。本実施形態の負荷駆動装置10は、この駆動力伝達装置に内蔵のアクチュエータ11(図1参照)を駆動して、四輪駆動車の前後の駆動トルクの配分を制御する。
【0018】
詳細には、プロペラシャフトは駆動力伝達装置の入力部に接続された入力側プロペラシャフトと駆動力伝達装置の出力部に接続された出力側プロペラシャフトとからなり、負荷駆動装置10からアクチュエータ11に流す駆動電流によって、アクチュエータ11に備えたソレノイド11Sが励磁され、その磁力によって入力側と出力側のプロペラシャフト同士が結合される。そして、本実施形態では、エンジンの回転数が大きくなるに応じて、負荷駆動装置10からアクチュエータ11に流す駆動電流を大きくすることで、入力側と出力側のプロペラシャフトの結合力を高め、後輪の駆動トルクを大きくする構成になっている。
【0019】
図1には、本実施形態の電気的な構成が示されている。自動車のバッテリー13の正極とグランドGNDとを繋ぐ電力ラインL1の途中には、負荷駆動装置10に備えたFET12とダイオードD1とが直列接続されている。詳細には、FET12のソースがグランドGNDに接続され、FET12のドレインがダイオードD1のアノードに接続され、さらに、ダイオードD1のカソードがバッテリー13の正極に接続されている。そして、ダイオードD1の両端子から延ばしたラインが、負荷駆動装置10に備えたケース16に固定のコネクタ17に接続され、そのコネクタ17にアクチュエータ11に備えたコネクタを接続することで、アクチュエータ11のソレノイド11Sが、ダイオードD1の両端子に接続されている。また、ダイオードD1のカソードとソレノイド11Sとを接続するラインの途中には、抵抗R10が設けられている。これらにより、FET12をオンしたときには、電力ラインL1が通電状態になってアクチュエータ11のソレノイド11Sに駆動電流が流れる一方、FET12をオフしたときには、電力ラインL1が非通電状態になり、ダイオードD1がオンしてソレノイド11Sの励磁エネルギーが放出される。
【0020】
前記抵抗R10の両端末には、オペアンプOP1の両入力端子を接続することで駆動電流計測回路14が構成されている。この駆動電流計測回路14は、抵抗R10の両端子間の電位差に基づきアクチュエータ11に流れる駆動電流を計測する。
【0021】
図1において符合19は、制御信号用電源であって、制御信号用電源19とFET12のゲートとの間には、制御電流変更回路20が設けられている。制御電流変更回路20は、複数の異なる減流素子としての抵抗R1,R2,R3,・・・をマルチプレクサ18に接続してなる。そして、FET12をオフするときには、マルチプレクサ18に備えた全てのスイッチをオフして制御信号用電源19とFET12のゲートとの間を断絶し、FET12をオンするときには、マルチプレクサ18の何れかのスイッチをオンして抵抗R1,R2,R3,・・・の何れかを選択的に制御信号用電源19とFET12のゲートとの間に接続する。本実施形態では、この制御電流変更回路20と後述するマイコン21とで本発明に係る「制御電流変更手段」が構成されている。
【0022】
なお、各抵抗R1,R2,R3,・・・・とグランドGNDとの間には、それぞれ抵抗R11,R12,R13,・・・が直列接続されて複数の分割回路が構成されている。従って、本実施形態では、マルチプレクサ18によって、何れかの分割回路の出力がFET12のゲートに接続されることにもなり、これにより、FET12のゲート・ソース間の電圧も切り替えられるようになっている。
【0023】
図1において符合21は、マイコンであって、エンジンの回転数、車速等の走行状況に係る情報を取得し、その情報とデータマップとからアクチュエータ11(詳細にはソレノイド11S)に流す駆動電流を決定する。そして、マイコン21は、マルチプレクサ18の何れかのスイッチをオンし、減流素子としての何れかの抵抗R1,R2,R3,・・を通して、制御信号用電源19をFET12のゲートに接続する。このとき、駆動電流の決定値に応じてFET12のオン時間を変更することで、アクチュエータ11に印加する電圧のパルス幅を変更し、これによりアクチュエータ11への駆動電流をPWM制御する。また、アクチュエータ11に流れた駆動電流は、駆動電流計測回路14によって計測され、その計測結果がマイコン21に取り込まれる。
【0024】
さて、マイコン21は、データマップから決定したアクチュエータ11への駆動電流に応じてマルチプレクサ18を作動し、減流素子としての何れかの抵抗R1,R2,R3,・・を制御信号用電源19とFET12のゲートとの間に接続する。具体的には、マイコン21は、アクチュエータ11への駆動電流が大きくなるに従って、小さな抵抗がFET12のゲートに接続されるようにマルチプレクサ18を作動する。これにより、アクチュエータ11への駆動電流が大きくなるに従って、スイッチング動作時にFET12のゲートに流れる電流が大きくなり、FET12に寄生したコンデンサC1(図1参照)が急速に充電されて、スイッチング動作時における過渡的なドレイン・ソース間の抵抗変化の時定数が小さくなる。
【0025】
従って、アクチュエータ11への駆動電流が大きなときは(図2(A)参照)、アクチュエータ11への駆動電流が小さいとき(図2(B)参照)に比べて、FETをオンするスイッチング動作時におけるドレイン・ソースの間の電圧降下が急峻に減衰し、ドレイン・ソースの間に流れる電流Iと、ドレイン・ソースの間の電圧降下Vdsとの積から求められるFET12のスイッチング損失が小さくなる。即ち、本実施形態の負荷駆動装置10によれば、FET12の発熱を抑えて、FET12の小型化及び低コスト化を図ることが可能になる。
【0026】
ところで、乗り物には、ノイズ(例えば、ラジオ等)の影響を受ける機器が搭載されているのでエミッション性能が問題になる。そして、エンジンの回転数が小さいときには、社内の静粛性が高いので高いエミッション性能が要求される一方、エンジンの回転数が大きいときには、エンジンの騒音が大きいため高いエミッション性能は要求されない。ここで、スイッチング動作時にFET12のゲートに流れる電流を大きくするとノイズが発生してエミッション性能が低下するが、本実施形態では、エンジンの回転数が大きいときに、FET12のゲートに流れる電流を大きくし、エンジンの回転数が小さいときには、FET12のゲートに流れる電流を小さくするので、乗り物におけるエミッション性能に対する要求にも応えることができる。
【0030】
<他の実施形態>
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0031】
(1)前記第1実施形態の負荷駆動装置10は、自動車に搭載したECUであったが、本発明に係る負荷駆動装置は、自動車以外の乗り物の負荷を駆動するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る負荷駆動装置の回路図
【図2】 (A)駆動電流が大きいときのFETのドレイン・ソース間の電圧及び電流
(B)駆動電流が小さいときのFETのドレイン・ソース間の電圧及び電流
【符号の説明】
10…負荷駆動装置
11…アクチュエータ(負荷)
12…FET
14…駆動電流計測回路(駆動電流計測手段)
18…マルチプレクサ
19…制御信号用電源
20…制御電流変更回路(制御電流変更手段)
21…マイコン(制御電流変更手)
R1,R2,R3…抵抗
Claims (4)
- 原動機付きの乗り物に搭載された電源と負荷との間を導通状態と非導通状態とに切り替えるFETを備え、前記FETをスイッチングすることで前記負荷への電流をPWM制御する負荷駆動装置において、
前記原動機の回転数の増加に伴い前記乗り物内の静粛性が低下するに従って、前記スイッチング動作時に前記FETのゲートに流れる電流を大きくする制御電流変更手段を備えたことを特徴とする負荷駆動装置。 - 前記負荷は、四輪駆動車における前後輪の駆動力の配分を変更するためのアクチュエータであることを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
- 前記制御電流変更手段は、制御信号用電源と前記FETのゲートとの間に設けたマルチプレクサと、前記マルチプレクサによって選択的に前記FETのゲートに接続可能な複数の異なる減流素子とを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷駆動装置。
- 前記制御電流変更変更手段は、前記負荷に流れ得る前記駆動電流とスイッチング動作時に前記FETのゲートに流す電流とを対応させたデータマップと、
前記負荷に流れた駆動電流又は外部からの情報により決定した負荷への駆動電流に基づき、前記データマップから前記FETのゲートに流す電流を決定する電流値決定手段と、
前記電流値決定手段によって決定した電流を前記FETのゲートに流すためのD/Aコンバータとを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷駆動装置。
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