JP4088378B2 - 発電機および蓄電器を備えた車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電気自動車やハイブリッド車などのように、車両の走行のための動力によって発電し、かつ蓄電することのできる機能を備えた車両の制御装置に関し、特にその発電量あるいは蓄電量を制御する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近では、環境の悪化防止のために車両の排気ガスを可及的に低減する要求が高くなっており、その要求に応えるために電気自動車や内燃機関および電動機を動力源としたハイブリッド車が開発されている。これらの車両に搭載される電動機は、電力によって動作して機械的エネルギを発生し、車両の動力源となると同時に、その出力軸を外力によって強制的に回転させれば、その入力された回転力に応じて起電力を生じ、発電機としても機能する。そのため、この種の車両では、走行のための動力によって発電をおこなって電力を得る回生制御がおこなわれ、エネルギ効率の向上が図られている。
【0003】
例えば、電気自動車では、電動機がプロペラシャフトなどを介して駆動輪に連結されているので、減速時には駆動輪から入力されるトルクによって電動機を回転させて電動機を発電機として機能させ、得られた電力を蓄電器(バッテリー)に蓄えている。また、いわゆるパラレルハイブリッド形式と称される駆動装置のように電動機と内燃機関とを駆動系統に連結したハイブリッド車では、車両の走行慣性力によって電動機を駆動することができるので、減速時に回生制御をおこなって制動力を得たり、あるいは特開平9−193676号公報に記載されているように遊星歯車機構を介して内燃機関と電動機との動力を合成しあるいは配分するように構成した装置では、発進時に電動機によって反力を生じさせて駆動トルクを増大させると同時に回生をおこなったりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電気自動車やハイブリッド車などのように、発電機として機能する装置および蓄電器を搭載した車両では、単に回生をおこなうだけでなく、回生時のトルクを制動トルクとしたり、あるいは上記の公報に記載されているように駆動トルクを増大させるための反力トルクとしたりすることがある。また一方、回生制御によって生じた電力は、蓄電器に蓄えているが、蓄電器による蓄電容量は無限ではないうえに、蓄電器の動作状態では蓄電をおこなえない場合がある。
【0005】
そのため、回生時のトルクを利用して制動をおこなったり、駆動トルクの増幅をおこなったりする際に、蓄電器に電力を供給できない事態が生じていると、回生動作自体を抑制しなければならなくなるので、制動力が不足したり、あるいは必要とする駆動力を得られない等、車両の走行性能が悪化する可能性がある。
【0006】
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、蓄電器での電力の受け入れが制約されている場合であっても必要とするトルクを確保することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の課題を解決するため請求項1の発明は、駆動輪に動力を伝達する駆動系統に動力合成分配機構を介して連結された内燃機関および発電機と、前記動力合成分配機構と前記駆動輪との間に設けられた変速機と、前記発電機で生じた電力を蓄える蓄電器とを備えた車両の制御装置において、車両の要求駆動力と前記変速機の変速比に基づいて前記内燃機関の燃費最適点近傍で運転するように前記内燃機関の運転状態を制御する際に前記発電機で生じる電力の全てを前記蓄電器で受け入れることができない場合に、前記発電機の電流値に基づいて設定される電流位相を制御することにより、前記発電機のトルクを変化させずに、受け入れられない電力量だけ前記発電機による発電量を低下させる第1の発電量低下手段を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
したがって請求項1の発明によれば、発電機が、車両の要求駆動力と変速機の変速比に基づいて内燃機関の燃費最適点近傍で運転するように内燃機関の運転状態を制御する際の駆動系統から動力を受けて発電をおこなう場合、その発電量に対して蓄電器によって受け入れることのできる電力が少ないと、発電機による発電量が低下させられる。その場合、発電機のトルクは低下させられない。このような状態は、一例として発電機の発電効率を低下させた状態である。その結果、蓄電器に受け入れる電力が制限されている場合であっても発電機によるトルクが確保され、必要とする制動力や駆動力を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図4はこの発明を電気自動車に適用した場合の制御系統の一例を示しており、動力源として発電機能を備えた電動機(モータ・ジェネレータ;M/G)1が設けられている。この電動機1がこの発明における発電機に相当し、具体的には電気自動車の動力装置として従来知られている各種の電動機を採用することができ、その一例を挙げれば、永久磁石型同期モータを挙げることができる。この電動機1の出力軸に、プロペラシャフト2やデファレンシャル3などからなる駆動系統を介して駆動輪4が連結されている。
【0012】
電動機1には、そのトルクおよび回転数を制御するためのインバータ5が接続されており、またそのインバータ5に蓄電器としてバッテリー6が接続されている。そのインバータ5を介して電動機1を制御するために電動機用電子制御装置(ECU)7が設けられ、またバッテリー6を制御するためのバッテリー用電子制御装置(ECU)8が設けられている。その電動機用電子制御装置7には、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)Accや車速V、ブレーキ信号、電動機1の回転数Nm などが制御データとして入力されるとともに、バッテリー用電子制御装置8とデータ通信可能に接続され、バッテリー用電子制御装置8からバッテリー電力Pb やバッテリー温度などのデータが電動機用電子制御装置7に送信されている。
【0013】
図5は上記の電動機1として採用することのできる永久磁石型同期モータの動作概念図であり、出力軸1aと一体のロータ9に永久磁石10が取り付けられており、またステータには三相交流電源であるインバータ5に接続された巻き線11が設けられている。これらの巻き線11に対する図5に示すd軸電流やq軸電流によって定まる電流位相(電流進角)Φに応じて電動機トルクTm が変化する。回生時の電流位相ΦとトルクTm との関係を電流Iごとに示すと図6のとおりである。通常、燃費を向上させるために、最も効率の良い状態で回生制御が実行され、その最大効率ラインは、図6の破線で示される。すなわち電動機1の運転点がこの最大効率ライン上にあるように電流位相Φが制御される。
【0014】
これに対してこの発明に係る制御装置は、バッテリー6の状態によってはその電流位相Φを制御して効率の悪い状態で電動機1を運転する。その例を以下に説明する。
【0015】
図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、先ず、電動機1のトルク指令値(モータトルク指令値)Ti と、電動機1の回転数(モータ回転数)Nm と、その運転状態で電動機1からバッテリー6に入力される電力(バッテリー電力)Pb とを読み込む(ステップ1)。ここで、モータトルク指令値Ti は、その時点の車速Vやブレーキ(図示せず)の踏力などの車両の走行状態に基づいて決定される。
【0016】
これらのデータのうちモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm とに基づいて電動機1の電流指令値(モータ電流指令値)Ii を算出する(ステップ2)。このモータ電流指令値Ii は、前記のモータトルク指令値Ti を出力するのに必要な最少の電流値であって、トルクT、電流進角(電流位相)Φ、モータ回転数Nm に応じて予め実験的に求めてマップ化された値であって、そのマップの一例を図2に示してある。すなわち所定のモータ回転数Nm についてのマップにおいてモータトルク指令値Ti に応じた最少電流値Ii を求める。このモータ電流マップには、モータ電流値に応じた電流進角Φi が定められている。この電流進角Φi は、最大効率となる角度であり、したがってこの電流進角Φi は、上述したモータ電流値Ii とモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm との関数として定められ、図2に示すマップから求めることができる(ステップ3)。
【0017】
このステップ3までの制御によって電動機1を最大効率運転点で運転する指令値Ii を算出したことになる。そしてこの運転点で電動機1を運転した場合の損失(モータ損失)Plossを求める(ステップ4)。モータ損失は各電動機の容量や形式などに応じて定まる値であるから、予め実験的に求めておくことができ、マップ化しておくことができる。そのマップの例を図3に示してある。すなわちモータトルクTi と電流進角Φi とに基づいてモータ損失Plossが定められており、したがってステップ4の制御は、このマップを参照することにより実行することができる。
【0018】
前述したようにバッテリー6の充電状態(SOC:State of Charge)やバッテリー6の温度などのデータが電子制御装置8によって検出・判定されており、したがってその検出結果に基づいてバッテリー6で受容できる電力が求められる。一方、ステップ1で述べたように現時点の運転状態に基づく電力Pb が知られており、したがってステップ5では、その現時点における電力Pb をバッテリー6が受容できるか否かが判断される。具体的には、バッテリー6の受け入れ可能な最大電力値Pbminと前記バッテリー電力Pb とを比較する。この比較の結果、その時点の運転状態で発生している電力Pb がバッテリー6の受け入れ可能な電力Pbminを超えている場合、すなわちバッテリー6が発電電力の全てを受け入れることができない場合には、ステップ5で肯定判断され、その場合の電力オーバー量ΔPが計算される(ステップ6)。
【0019】
なお、バッテリー6が電力を受け入れることができない状態の一例は、バッテリー6が満充電状態になる場合が最も典型的であり、これ以外にバッテリー6の温度が高いために、充電することにより更に温度が上昇することが懸念される場合、あるいはこれとは反対に、バッテリー6の温度が極端に低いために充電できない場合などがある。したがってこのステップ5の機能が、いわゆる充電可否判断手段となっている。
【0020】
この電力オーバー量ΔPは、バッテリー6が受容できる最大電力Pbminとその時点の運転状態で発電されている電力Pb との偏差である。このステップ6で算出された電力オーバー量ΔPは、バッテリー6に入力することができないので、これをモータ損失として消費するように電流進角が計算される(ステップ7)。すなわちステップ7では、ステップ4で求めたモータ損失Plossに電力オーバー量ΔPを加えた値を新たなモータ損失とし、その新たなモータ損失とモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm との三つのパラメータに基づいて電流進角Φi’を求める。これは前述した図3に示すモータ損失マップ上によって求められる。具体的には、モータ回転数Nm が所定値である場合のマップにおいてモータトルク指令値Ti を定め、そのモータトルク指令値Ti における新たなモータ損失(Ploss+ΔP)についての電流進角Φi’を読み取ればよい。
【0021】
前述したようにモータ回転数Nm とトルクTm と電流Iと電流進角とは相互に所定の関係にあるから、ステップ7で求められた電流進角Φi’とモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm とに基づいて電流指令値Ii’が求められる(ステップ8)。具体的には、前述した図2に示す所定のモータ回転数のマップ上においてモータトルク指令値Ti と新たな電流進角Φi’とのそれぞれに対応する電流値Ii’を読み取ることにより、新たな電流指令値Ii’が求まる。
【0022】
つぎに、上記のステップ8で求めたバッテリー受容オーバー時のモータ電流進角Φi’と、モータ最大効率点で運転するときのモータ電流進角Φi との偏差(Φi −Φi’)を求め、その偏差の絶対値が予め定めた基準値(Φo )内に入っているか否かが判定される(ステップ9)。これは、電流進角を変えて発電効率を悪化させる効率悪化制御を継続する必要性を判断するためである。すなわち、上記の効率悪化制御をおこなうことにより、発電電力がバッテリー6で受容することのできる電力にまで低下するが、このバッテリー受容可能状態が、効率悪化制御をおこなっているためか、あるいはその制御をおこなわなくてもバッテリー受容可能であるかを判定する必要がある。上記の偏差の絶対値が基準値以内であれば、効率悪化のためのモータ電流進角Φi’が、最大効率運転時のモータ電流進角Φi に近い値になっていることになり、この場合は上記の効率悪化制御をおこなわなくてもよいことになる。
【0023】
したがってステップ9で肯定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグをオフにする(ステップ10)。これとは反対にステップ9で否定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグをオンにする(ステップ11)。そして、こうして求められた新たな電流指令値Ii’と電流進角Φi’とをそれぞれの指令値Ii ,Φi に置き換える(ステップ12)。
【0024】
一方、バッテリー電力Pb がバッテリー6で受容できる電力を超えていないことによりステップ5で否定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグがオンか否かが判断される(ステップ13)。このステップ13で肯定的に判断された場合、すなわち効率悪化制御フラグがオンであれば、電動機1の運転効率を悪化させることに起因してバッテリー電力Pb がバッテリー6で受容できる電力になっていることになるから、ステップ6に進んで効率悪化制御を継続する。これとは反対にステップ13で否定的に判断された場合には、効率悪化制御をおこなう必要がないので、リターンする。
【0025】
これを図6に示すと、当初、最大効率ライン上の運転点Aで電動機1を運転していた状態でバッテリー6によって発電電力の全てを受け入れることができない状態となった場合、その最大効率ラインから外れた運転点Bに変更される。すなわちこのB点における電流進角がΦi’であり、また電流値がIi’である。その場合、図6からも判るようにモータトルクTi は変化していない。すなわち電動機1は、その時点の車両の運転状態に基づいて定まるトルクを出力し続けると同時に、発電電力をバッテリー6が受容できる程度まで減少させ、余剰のエネルギを運転効率の低下により損失として消費する。その結果、図1に示す制御によれば、制動トルクが不足するなどの事態を未然に回避することができる。また、余剰エネルギを消費するための特別な機器を設ける必要がないので、装置もしくは車両の小型軽量化に有利になる。
【0026】
なお、上記の具体例とこの発明との関係とを説明すると、前記ステップ7およびステップ8の機能がこの発明の第1の発電量低下手段に相当する。また前記ステップ7およびステップ8では、要は、電動機1による発電効率を低下させて入力されたエネルギに対する発電電力を低下させるのであるから、この発明の第1の発電量低下手段は、第1の発電効率低減手段とすることができる。
【0027】
つぎにこの発明の他の具体例について説明する。図7はこの発明を適用したハイブリッド車の駆動系統を示しており、電動機20のトルクと内燃機関(エンジン)21のトルクとを合成分配機構23に入力するように構成されている。この合成分配機構23は1組のシングルピニオン型遊星歯車機構を主体として構成されており、そのサンギヤ24に電動機20が連結されている。またこのサンギヤ24と同心円上に配置したリングギヤ25に、クラッチCi を介してエンジン21が連結されている。さらにサンギヤ24とリングギヤ25とに噛合するピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤ26が出力要素であって、このキャリヤ26が変速機27の入力軸28に連結されている。そして、そのキャリヤ26とリングギヤ25との間に遊星歯車機構の全体を一体化するクラッチCd が設けられている。
【0028】
変速機27は無段変速機や有段変速機などの適宜の変速機であって、その出力軸29がデファレンシャル30に連結され、そのデファレンシャル30から左右の駆動輪31に動力を伝達するように構成されている。
【0029】
この図7に示す例における電動機20は前述した例における電動機1と同様な構成であって、インバータ32に接続されるとともに、このインバータ32に蓄電器としてのバッテリー33が接続されている。そして、インバータ32には電動機用電子制御装置34が接続されるとともに、バッテリー33を制御するための電子制御装置35が設けられている。これらの各電子制御装置34,35はデータ通信可能に相互に接続されている。
【0030】
上記の合成分配機構23によれば、変速機27に入力されるトルクをエンジントルクよりも増大させることができる。すなわちトルクコンバータとして機能させることができる。その状態を図8に共線図として示してある。すなわちクラッチCi を係合させてエンジン21をリングギヤ25に連結し、その状態でエンジン21を例えば最も効率の良い運転状態で運転させ、所定のトルクを出力させる。これと同時に電動機20を逆回転させる。この場合のサンギヤ24とリングギヤ25とキャリヤ26との各回転要素におけるトルクの状態は図8に矢印で示すとおりであって、一定の運転状態でのエンジン21によるトルクに対して電動機20が逆回転しつつ所定のトルクを生じることにより、出力要素であるキャリヤ26にトルクが発生する。
【0031】
そしてこのキャリヤ26のトルクは、エンジントルクを(1+ρ)倍したトルクになる。なおここで、ρは前記サンギヤ24とリングギヤ25との歯数の比(ギヤ比)である。この場合、電動機20は、強制的に逆回転させられるから、その出力軸に合成分配機構23側から入力される動力によって発電をおこなうことになる。すなわち、車両全体としては電動機20で発電しつつ、エンジントルクを増幅した大きいトルクで走行することになる。この場合においても、燃費を向上させるために電動機20は最大効率で運転するよう制御され、これは、前述した図6における破線上の点(例えばA点)で示される運転状態となる。
【0032】
このような走行状態で生じる電力は、基本的には、バッテリー33に蓄えられるが、バッテリー33が満充電状態であったり、あるいは温度が高いなどの状態であれば、発電された電力の全てをバッテリー33が受容することができない場合があり、その場合には、以下のように制御する。
【0033】
先ず、電動機20の目標回転数(目標モータ回転数)Nmtを算出する。図9はその過程を説明するためのフローチャートであって、アクセル開度Accと変速機27の出力軸回転数Np とを読み込む(ステップ15)。そしてそれらの読み込まれたデータAcc,Np に基づいて要求駆動力Tp を計算する(ステップ16)。アクセル開度Accごとの駆動力は、車両ごとによって予め定められるものであるから、結局、アクセル開度Accと出力軸回転数Np とに基づいて駆動力Tp をマップ化することができ、したがってステップ16の制御は予め定めたマップに基づいて実行することができる。なお、図10にはその駆動力マップを模式的に示してある。
【0034】
つぎに要求駆動力Tp に基づいて要求エンジントルクTetおよび目標エンジン回転数Netを計算する(ステップ17)。すなわち要求駆動力Tp は、変速機27の出力側のトルクであるから、変速比をGとした場合、変速機27の入力側のトルクTinは、
Tin=Tp /G
となる。これに対して要求エンジントルクTetは、
Tet=Tin/(1+ρ)
となるから、結局、
Tet=Tp /G(1+ρ)
となる。
【0035】
そして燃費最適点でこの要求エンジントルクTetを出力する回転数Netをマップから求める。そのマップの例を図11に示してある。すなわちエンジン21の燃費最適点は、そのエンジンごとに回転数とトルクとの関数となっており、したがってそのマップを予め求めておくことにより、要求駆動力Tp から要求エンジントルクTetと目標エンジン回転数Netとを求めることができる。
【0036】
ついで目標モータ回転数Nmtを算出する(ステップ18)。すなわち合成分配機構23の構造からサンギヤ24とリングギヤ25とキャリヤ26との間には、そのギヤ比ρに基づいた所定の関係があるから、目標モータ回転数Nmtは、
Nmt={(1+ρ)Nc −Net}/ρ
で求められる。ここで、Nc はキャリヤ26の回転数であって、変速比Gと出力軸回転数Np との積(G×Np )で求められる。
【0037】
以上のようにして求めた目標モータ回転数Nmtに基づいてモータ電流進角を算出する。すなわち図12において、現在のモータ回転数Nm と上述した目標モータ回転数Nmtと現時点のバッテリー電力(発電電力)Pb とを読み込む(ステップ21)。ついでモータ回転数Nm とその目標回転数Nmtとの偏差ΔNm とを計算する(ステップ22)。その偏差ΔNm がゼロとなるように、すなわちモータ回転数Nm を目標モータ回転数Nmtに一致させるように電流値を計算する(ステップ23)。この電流制御は比例積分制御(PI制御)によっておこない、したがってそのモータ電流指令値Imiは、
【式1】
で求めることができる。ここで、Kp およびKi は予め定めた係数である。そしてそのモータ電流指令値Imiとモータ回転数Nm とに基づいてモータ電流進角Φi を計算する(ステップ24)。
【0038】
前述したように、モータ電流とモータ回転数と電流進角とには相関関係があり、モータ電流値とモータ回転数とに基づいてモータ効率が最も高くなるモータ電流進角が定まり、これをマップ化しておくことにより、モータ電流指令値とモータ回転数とから電流進角Φi を求めることができる。図13にはそのマップの一例を模式的に示してある。
【0039】
一方、バッテリー33で受容可能な電力は、バッテリー用電子制御装置35によって算出されており、したがってステップ25では、上述したバッテリー電力Pb がバッテリー33で受容できる電力を超えているか否かが判断される。その時点の運転状態で発生する電力Pb がバッテリー33で受容できる電力を超えていることにより、ステップ25で肯定的に判断された場合には、そのバッテリー電力のオーバー量ΔPを算出する(ステップ26)。
【0040】
すなわちバッテリー33で受容できる最大電力Pbminと前述したバッテリー電力Pb との偏差を計算する。そしてそのバッテリー電力オーバー量ΔPに合わせてモータ効率の悪くなる方向の電流進角Φi’をPI制御によって算出する。すなわち
【式2】
の演算をおこなう。これを特性線上で示せば、図14のとおりであって、破線で示す最大効率ライン上の運転点D1 の状態からモータトルクTm を変化させないように電流進角をΦi’まで増大させる(D2 点)。その結果、電動機20の運転効率が悪化するために、トルクが一定であっても発電電力が低下し、その低下分がバッテリー電力オーバー量ΔPに相当する。
【0041】
つぎに、上記のステップ27で求めたバッテリー受容オーバー時のモータ電流進角Φi’と、モータ最大効率点で運転するときのモータ電流進角Φi との偏差(Φi −Φi’)を求め、その偏差の絶対値が予め定めた基準値(Φo )内に入っているか否かが判定される(ステップ28)。これは、電流進角を変えて発電効率を悪化させる効率悪化制御を継続する必要性を判断するためである。すなわち、上記の効率悪化制御をおこなうことにより、発電電力がバッテリー33で受容することのできる電力にまで低下するが、このバッテリー受容可能状態が、効率悪化制御をおこなっているためか、あるいはその制御をおこなわなくてもバッテリー受容可能であるかを判定する必要がある。上記の偏差の絶対値が基準値以内であれば、効率悪化のためのモータ電流進角Φi’が、最大効率運転時のモータ電流進角Φi に近い値になっていることになり、この場合は上記の効率悪化制御をおこなわなくてもよいことになる。
【0042】
したがってステップ28で肯定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグをオフにする(ステップ29)。これとは反対にステップ28で否定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグをオンにする(ステップ30)。そしてステップ27で求めた新たなモータ電流進角Φi’をモータ電流進角Φi に置き換えた後(ステップ31)、リターンする。
【0043】
一方、バッテリー電力Pb がバッテリー33で受容できる電力を超えていないことによりステップ25で否定的に判断された場合には、効率悪化制御フラグがオンか否かが判断される(ステップ32)。このステップ32で肯定的に判断された場合、すなわち効率悪化制御フラグがオンであれば、電動機20の運転効率を悪化させることに起因してバッテリー電力Pb がバッテリー33で受容できる電力になっていることになるから、ステップ26に進んで効率悪化制御を継続する。これとは反対にステップ32で否定的に判断された場合には、効率悪化制御をおこなう必要がないので、リターンする。
【0044】
したがって上記の制御によれば、電動機20が必要なトルクを発生しつつその発電電力がバッテリー33で受容できる程度まで減少させられる。その結果、電動機20が必要なトルクを発生することにより走行のために必要な駆動トルクを得ることができる。言い換えれば、バッテリー33の状態によって走行性能が制約を受けることがない。また、上記の例においても、発電電力を消費するための新たな装置を追加する必要がないので、装置もしくは車両の小型軽量化を図ることができる。
【0045】
なお、図12に示す例におけるステップ25がいわゆる充電可否判断手段となっており、またステップ27,28の機能がこの発明の発電量低下手段に相当している。さらに、前記ステップ27およびステップ28では、要は、電動機20による発電効率を低下させて入力されたエネルギに対する発電電力を低下させるのであるから、この発明の発電量低下手段は、発電効率低減手段とすることができる。
【0046】
つぎのこの発明の更に他の例について説明する。上述した図1に示す例では、電動機1で発電されてバッテリー6に印加される電力Pb を読み込んでいるから、そのバッテリー電力Pb がバッテリー受容電力をオーバーしている場合には、一時的であってもバッテリー33に過剰な負荷が掛かることになる。これを避けるために、図15に示す例は、バッテリー電力Pb をモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm とに基づいて求めるように構成されている。すなわち図15において、先ず、モータトルク指令値Ti およびモータ回転数Nm を読み込む(ステップ1−1)。ついで、これらの読み込んだ値に基づいてバッテリー電力Pb を求める(ステップ1−2)。
【0047】
すなわち、電動機1で発電されかつインバータ5を介してバッテリー6に印加される電力は、電動機1に入力されるトルクとその回転数とに基づいて決まるから、モータトルクとモータ回転数とをパラメータとしたモータ電力Pb の二次元マップ(図16参照)を実験的に求めておき、そのマップと読み込んだモータトルクおよびモータ回転数とに基づいてモータ電力Pb を求めることができる。また、電動機1やインバータ5における損失は、モータトルクおよびモータ回転数に応じて生じるから、損失Plossをモータトルクとモータ回転数とをパラメータとして実験的に求めたマップ(図17参照)から求め、
Pb =Ti ×Nm +Ploss(Ti ,Nm )
として演算することができる。なお、Ploss(Ti ,Nm )がマップから求めた損失である。
【0048】
ステップ1−2に続くステップ2以降の制御は、図1に示す例と同様であるから、図15に図1と同一のステップ番号および制御内容を記載してその説明を省略する。
【0049】
したがって図15に示すように制御することにより、前述した各例と同様に、バッテリーに充電することができない場合であっても、必要とするモータトルクを得ることができ、また一時的であってもバッテリーに過剰な負荷を掛けることを確実に防止することができる。
【0050】
また、図12に示すハイブリッド車での適用例では、モータ電流指令値Ii を演算していたが、これに替えてモータトルク指令値Ti を演算して求めてもよい。その例を図18に示してある。
【0051】
ここに示す例は、図1におけるステップ1を変更したものであって、先ず、ステップ1Aで、モータ回転数Nm と目標モータ回転数Nmtとバッテリー電力Pb とを読み込む。これは、図12に示すステップ21と同様の制御である。つぎに、目標モータ回転数Nmtとモータ回転数Nm との偏差ΔNを計算する(ステップ2B)。これは、図12に示すステップ22と同様の制御である。そして、その回転数偏差ΔNに基づきモータ回転数Nm が目標回転数NmtになるようにモータトルクをPI制御し、そのモータトルク指令値Ti を計算する(ステップ1C)。すなわち、
【式3】
の演算をおこなう。なお、Kp やKi などの係数の値は、上述した演算式での値と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0052】
そして、このモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm とに基づいてモータ電流指令値Ii を算出する。これは図1に示すステップ2の制御であり、これ以降の制御は、図1に示す例と同様に実行する。したがって図18には図1と同様のステップ番号および制御内容を記載してその説明を省略する。したがってこの図18に示す例であっても、前述した各例と同様に、バッテリーに充電することができない場合であっても、必要とするモータトルクを得ることができる。
【0053】
以上、この発明を具体例に基づいて説明したが、この発明は上記の各例に限定されないのであって、この発明で対象とする車両は、電動機と発電機とを備えた車両など、要は、駆動系統に連結された発電機で発電し、かつその電力をバッテリーなどの蓄電器に蓄えるように構成された車両であればよく、この種の車両のの制御装置にこの発明を適用することができる。
【0054】
さらにこの発明の他の具体例について説明する。図19はこの発明の適用対象の一例であるハイブリッド車の駆動系統を示している。このハイブリッド車は、いわゆるFF車(エンジン前置き前輪駆動方式)であり、エンジン(内燃機関)40と発電機41と電動機42と合成分配機構43とを有する。この合成分配機構43は、シングルピニオン型の遊星歯車機構を主体として構成されている。この合成分配機構43は、サンギヤ44と、サンギヤ44と同心円上に配置したリングギヤ45と、サンギヤ44とリングギヤ45とに噛合するピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤ46とを備えている。
【0055】
前記エンジン40は出力軸47を有し、この出力軸47とキャリヤ46とが連結されている。また、この出力軸47の外周には中空軸48が取り付けられており、出力軸47と中空軸48とが相対回転可能に構成されている。そして、この中空軸48の外周に前記サンギヤ44が形成されている。さらに発電機41は前述した電動機1と同様な構成であり、電動機の機能をも有する。この発電機41はロータ49とステータ50と巻き線51とを有し、ロータ49が中空軸48に取り付けられている。
【0056】
前記リングギヤ45はコネクティングドラム52の内周に形成されている。さらに、前記電動機42は前述した電動機1と同様な構成であり、発電機の機能をも有する。この電動機42はロータ53とステータ54と巻き線55とを有し、ロータ53がコネクティングドラム52に連結されている。一方、コネクティングドラム52における発電機41と遊星歯車機構43との間にはドライブスプロケット56が設けられている。このドライブスプロケット56のトルクが、デファレンシャル57を介して駆動輪58に伝達されるように構成されている。
【0057】
ドライブスプロケット56とデファレンシャル57との間の駆動系統には、第1カウンターシャフト59および第2カウンターシャフト60が配置されている。第1カウンターシャフト59にはドリブンスプロケット61とカウンタードライブギヤ62とが形成されている。また、第2カウンターシャフト60にはカウンタードリブンギヤ63とファイナルドライブギヤ64とが形成されている。さらに、デファレンシャル57はリングギヤ65を有する。そして、ドライブスプロケット56とドリブンスプロケット61とがチェーン66により連結され、カウンタードライブギヤ62とカウンタードリブンギヤ63とが噛合され、ファイナルドライブギヤ64とリングギヤ65とが噛合されている。
【0058】
一方、エンジン40を制御するエンジン用電子制御装置(エンジンECU)67が設けられており、このエンジン用電子制御装置67にはアクセル開度Accおよび車速Vなどの信号が入力される。また、発電機41はインバータ68に接続されるとともに、このインバータ68に蓄電器としてのバッテリー69が接続されている。つまり、発電機41により発電された電気エネルギがインバータ68を介してバッテリー69に充電される。さらに、電動機42はインバータ70に接続されるとともに、このインバータ70にバッテリー69が接続されている。つまり、バッテリー69の電気エネルギをインバータ70を介して電動機42に供給することが可能である。これとは逆に電動機42により発電された電力を、バッテリー69に充電することも可能である。
【0059】
さらにまた、インバータ68,70には電子制御装置(モータECU)71が接続されるとともに、バッテリー69を制御するための電子制御装置(バッテリECU)72が設けられている。この電子制御装置72にはバッテリー温度、バッテリー電力などの信号が入力される。そして、各電子制御装置67,71,72がハイブリッド用電子制御装置(HV−ECU)73に接続され、各電子制御装置67,71,72とハイブリッド用電子制御装置73との間で相互にデータ通信が可能である。
【0060】
図19に示すハード構成のハブリッド車においては、エンジン40のトルクを合成分配機構43およびデファレンシャル57を介して駆動輪58に伝達することが可能である。また、エンジン40の動力の一部を発電機41に伝達して高電圧の発電をおこなうことが可能であり、この発電機41によりエンジン40を始動させることが可能である。さらに、車両の発進時、加速時、登坂時などにおいては、バッテリー69の電力を電動機42に供給し、エンジン1の出力を電動機42の出力により補って駆動力を高めることが可能である。さらに、制動時または減速時には、駆動輪58から入力される運動エネルギ(動力)を電動機42および発電機41に伝達して回生制御(発電)をおこない、その電気エネルギをバッテリー69に充電することが可能である。
【0061】
つぎに、図19に示すハイブリッド車の制御例を図20のフローチャートに基づいて説明する。まず、ハイブリッド用電子制御装置73に入力される各種の信号が処理され(ステップ41)、発電機41および電動機42が回生中であるか否かが判断される(ステップ42)。このステップ42の判断基準にはアクセル開度Accおよび車速が含まれる。
【0062】
ステップ42で肯定的に判断された場合は、バッテリー69に充電される電力が、予め設定されている許容値をオーバーするか否かが判断される(ステップ43)。ステップ43で肯定的に判断された場合は、バッテリー69における電力のオーバー量ΔPbov が演算される(ステップ44)。ここで、バッテリー69の状態(充電量SOCまたはバッテリー69の温度など)に応じた最大受け入れ電力をPbmin、バッテリー69に充電される電力をPbとすると、電力オーバー量ΔPbov は、
ΔPbov =Pbmin−Pb
により求められる。
【0063】
ついで、発電機41および電動機42のトルクを共に制限することなく、かつ、共にモータ効率(発電効率)の悪い領域で発電機として動作させることにより、電力オーバー量ΔPbov を消費させるために、発電機41のモータ効率悪化分担量P1と、電動機42のモータ効率悪化分担量P2とを演算し(ステップ45)、リターンされる。
【0064】
すなわち、発電機41のモータ効率悪化分担量P1は、
P1=K×ΔPbov
により求められ、電動機42のモータ効率悪化分担量P2は、
P2=(1−K)×ΔPbov
により求められる。ここで、Kは発電機41と電動機42とによる電力の分担比であり、分担比Kは、発電機41の温度Tm1およびインバーター68の温度Ti1、電動機42の温度Tm2およびインバーター70の温度Ti2、発電機41の悪化効率可能量Pml1および電動機42の悪化効率可能量Pml2などを総合的に判断して最適値に決定される。一方、前記ステップ42またはステップ43で否定的に判断された場合は、P1=0、P2=0に決定して(ステップ46)リターンされる。
【0065】
図20のフローチャートにより演算されたモータ効率悪化分担量P1に基づいて、発電機41を制御する場合の制御例を図21のフローチャートにより説明する。まず、ハイブリッド用電子制御装置73において入力信号が処理され(ステップ51)、ついでステップ2,〜5の制御をおこなう。このステップ2,〜5の制御内容は、図1のステップ2,〜5の制御内容と同様である。なお、図21のステップ4で用いるマップの例が、図22に示してある。すなわちモータトルクTi と電流進角Φi とに基づいてモータ損失Plossが定められており、したがってステップ4の制御は、このマップを参照することにより実行することができる。
【0066】
図21のステップ5で肯定的に判断された場合は、電力オーバー量をバッテリー69に入力することができないので、これをモータ損失として消費するように電流進角が計算される(ステップ7A)。すなわちステップ7Aでは、モータ損失Plossに、図20の制御で求めた電力オーバー量P1を加えた値を新たなモータ損失とし、その新たなモータ損失とモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm との三つのパラメータに基づいて電流進角Φi’を求める。これは前述した図22に示すモータ損失マップ上によって求められる。具体的には、モータ回転数Nm が所定値である場合のマップにおいてモータトルク指令値Ti を定め、そのモータトルク指令値Ti における新たなモータ損失(Ploss+P1)についての電流進角Φi’を読み取ればよい。
【0067】
このステップ7の制御についで、ステップ8以降の制御がおこなわれ、リターンされる。なお、図21のステップ8,〜13の制御内容は、図1のステップ8,〜13の制御内容と同様である。なお、図21の制御例とこの発明との関係を説明すると、ステップ7Aおよびステップ8の機能がこの発明の第2の発電量低下手段に相当する。また前記ステップ7Aおよびステップ8では、要は、発電機41による発電効率を低下させることにより、その発電電力を低下させるのであるから、この発明の第2の発電量低下手段を、第2の発電効率低減手段と言い換えることもできる。
【0068】
つぎに、図20のフローチャートにより演算されたモータ効率悪化分担量P2に基づいて、電動機42を制御する場合の制御例を図23のフローチャートにより説明する。まず、ハイブリッド車用電子制御装置73に入力される信号の処理がおこなわれ(ステップ51)、ついでステップ2,〜5の制御をおこなう。このステップ2,〜5の制御内容は、図1のステップ2,〜5の制御内容と同様である。なお、図23のステップ4で用いるマップの例が、図24に示してある。すなわちモータトルクTi と電流進角Φi とに基づいてモータ損失Plossが定められており、したがってステップ4の制御は、このマップを参照することにより実行することができる。
【0069】
図23のステップ5で肯定的に判断された場合は、電力オーバー量をバッテリー69に入力することができないので、これをモータ損失として消費するように電流進角が計算される(ステップ7B)。すなわちステップ7Bでは、モータ損失Plossに、図20の制御で求めた電力オーバー量P2を加えた値を新たなモータ損失とし、その新たなモータ損失とモータトルク指令値Ti とモータ回転数Nm との三つのパラメータに基づいて電流進角Φi’を求める。これは前述した図24に示すモータ損失マップ上によって求められる。具体的には、モータ回転数Nm が所定値である場合のマップにおいてモータトルク指令値Ti を定め、そのモータトルク指令値Ti における新たなモータ損失(Ploss+P2)についての電流進角Φi’を読み取ればよい。
【0070】
このステップ7B制御についで、ステップ8以降の制御がおこなわれ、リターンされる。なお、図23のステップ8,〜13の制御内容は、図1のステップ8,〜13の制御内容と同様である。なお、図23の制御例とこの発明との関係を説明すると、ステップ7Bおよびステップ8の機能がこの発明の第2の発電量低下手段に相当する。また前記ステップ7Bおよびステップ8では、要は、電動機42による発電効率を低下させることにより、その発電電力を低下させるのであるから、この発明の第2の発電量低下手段を、第2の発電効率低減手段と言い換えることもできる。
【0071】
さらに図21,23の制御例を適用することができる他のハード構成について説明する。図25はハイブリッド車の駆動系統の一例を示しており、このハイブリッド車はいわゆるFR車(エンジン前置き後輪駆動方式)である。このハイブリッド車は、エンジン(内燃機関)80と発電機81と電動機82とデファレンシャル83とを有する。発電機81は前記電動機1と同様の構成を有し、この発電機81はインナーロータ83Aとアウターロータ83と巻き線84とスリップリング85とを有する。このスリップリング85は、アウターロータ83に取り付けられた回転リング(図示せず)と、この回転リングに接触するブラシ(図示せず)とを有する。そして、インナーロータ83Aとエンジン80の出力軸86とが連結されている。
【0072】
前記電動機82は前記電動機1と同様の構成を有し、発電機の機能をも有する。この電動機82はロータ87とステータ88と巻き線89とを有する。そして、ロータ87とアウターロータ83とが連結軸90により連結されている。また、ロータ87とデファレンシャル83とがプロペラシャフト91により連結されている。
【0073】
一方、エンジン80を制御するエンジン用電子制御装置(エンジンECU)92が設けられており、このエンジン用電子制御装置92にはアクセル開度Accおよび車速Vなどの信号が入力される。また、発電機81はインバータ93に接続されるとともに、このインバータ93に蓄電器としてのバッテリー94が接続されている。つまり、発電機81により発電された電気エネルギがインバータ93を介してバッテリー94に充電される。さらに、電動機82はインバータ95に接続されるとともに、このインバータ95にバッテリー94が接続されている。つまり、バッテリー94の電気エネルギをインバータ95を介して電動機82に供給することが可能である。これとは逆に電動機82により発電された電力をバッテリー94に充電することも可能である。
【0074】
さらにまた、インバータ93,95には電子制御装置(モータECU)96が接続されるとともに、バッテリー94を制御するための電子制御装置(バッテリECU)97が設けられている。この電子制御装置97にはバッテリー温度、バッテリー電力などの信号が入力される。そして、各電子制御装置92,96,97がハイブリッド用電子制御装置(HV−ECU)98に接続され、各電子制御装置92,96,97とハイブリッド用電子制御装置98との間で相互にデータ通信が可能である。なお、デファレンシャル83の出力側には駆動輪99が設けられている。
【0075】
図25に示すハイブリッド車において、車両の減速時または制動時には、駆動輪99から入力される運動エネルギにより、発電機81および電動機82により回生制動をおこない、その電気エネルギをバッテリー94に充電することが可能である。そして、図20,21,23に示した制御例を、図25のハイブリッド車に適用することも可能である。
【0076】
つぎに図21,23の制御例を適用することができるさらに他のハード構成について説明する。図26はハイブリッド車の駆動系統の他の構成例を示しており、このハイブリッド車はいわゆるFR車(エンジン前置き後輪駆動方式)である。このハイブリッド車は、エンジン(内燃機関)100と発電機101と電動機102とデファレンシャル103とを有する。発電機101は前記電動機1と同様の構成を有し、電動機の機能をも有する。この発電機101はロータ104とステータ105と巻き線106とを有する。そして、ロータ104とエンジン108の出力軸107とが連結されている。
【0077】
前記電動機102は前記電動機1と同様の構成を有し、発電機の機能をも有する。この電動機102はロータ108とステータ109と巻き線110とを有する。そして、ロータ108とプロペラシャフト111とが連結され、プロペラシャフト111とデファレンシャル103とが連結されている。さらに、デファレンシャル103の出力側には駆動輪112が設けられている。
【0078】
一方、エンジン100を制御するエンジン用電子制御装置(エンジンECU)113が設けられており、このエンジン用電子制御装置113にはアクセル開度Accおよび車速Vなどの信号が入力される。また、発電機101はインバータ114に接続されるとともに、このインバータ114に蓄電器としてのバッテリー115が接続されている。つまり、発電機101により発電された電気エネルギがインバータ114を介してバッテリー115に充電される。さらに、電動機102はインバータ116に接続されるとともに、このインバータ116にバッテリー115が接続されている。つまり、バッテリー115の電気エネルギをインバータ116を介して電動機102に供給することが可能である。これとは逆に電動機102により発電された電力をバッテリー115に充電することも可能である。
【0079】
さらにまた、インバータ114,116には電子制御装置(モータECU)117が接続されるとともに、バッテリー115を制御するための電子制御装置(バッテリECU)118が設けられている。この電子制御装置118にはバッテリー温度、バッテリー電力などの信号が入力される。そして、各電子制御装置113,116,118がハイブリッド用電子制御装置(HV−ECU)119に接続され、各電子制御装置113,116,118とハイブリッド用電子制御装置119との間で相互にデータ通信が可能である。
【0080】
図26に示されたハイブリッド車においては、エンジン100の動力により発電機101を駆動し、その電気エネルギをバッテリー115に充電するとともに、バッテリー115の電気エネルギを電動機102に供給して電動機102を駆動させ、電動機102のトルクにより車両を走行させることが可能である。また、車両の減速時または制動時には、駆動輪112から入力される運動エネルギを電動機102に入力して発電機として機能させ、その電気エネルギをバッテリー115に充電することも可能である。そして、図20,21,23に示した制御例を、図26のハイブリッド車に適用することが可能である。つまり、バッテリー115に対する電力の余剰分を、発電機101を電動機として駆動させることで消費し、運動エネルギの消費を、電動機102および発電機101の両方により分担することが可能である。
【0081】
このように、図20,21,23の制御例においても、発電機または電動機の少なくとも一方が必要なトルクを発生しつつ、その発電電力がバッテリーで受容できる程度まで減少させられる。その結果、発電機または電動機の少なくとも一方が必要なトルクを発生することにより走行のために必要な駆動トルクを得ることができる。言い換えれば、バッテリーの状態によって走行性能が制約を受けることがない。また、各ハイブリッド車の構成例においても、発電電力を消費するための新たな装置を追加する必要がないので、装置もしくは車両の小型軽量化を図ることができる。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、発電機が、車両の要求駆動力と変速機の変速比に基づいて内燃機関の燃費最適点近傍で運転するように内燃機関の運転状態を制御する際の駆動系統から動力を受けて発電をおこなう場合、その発電量に対して蓄電器によって受け入れることのできる電力が少ないと、発電機のトルクを維持したまま、発電機による発電量が低下させられ、その結果、蓄電器に受け入れる電力が制限されている場合であっても発電機によるトルクが確保されるので、必要とする制動力や駆動力を得ることができ、ひいては車両の走行性能の悪化を防止することができる。また、発電機で吸収するべきエネルギ量が多い場合であっても、蓄電器で受け入れることのできない余剰エネルギを発電機で消費することになるため、余剰エネルギを消費するための特別な装置を追加する必要がなく、そのため、制御装置あるいは車両の小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 モータ回転数ごとの電流マップを模式的に示す図である。
【図3】 モータ回転数ごとのモータ損失マップを模式的に示す図である。
【図4】 この発明で対象とする電気自動車の制御系統の一例を示す模式図である。
【図5】 永久磁石型同期モータの動作概念図である。
【図6】 その回生動作時の電流位相(電流進角)とトルクとの関係を概略的に示す特性線図である。
【図7】 この発明で対象とするハイブリッド車の駆動系統の一例を模式的に示す図である。
【図8】 合成分配機構をトルクコンバータとして機能させている状態での共線図である。
【図9】 モータ目標回転数を求める手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】 そのエンジンについての駆動力マップの一例を模式的に示す図である。
【図11】 そのエンジンについての燃費最適点を模式的に示す図である。
【図12】 この発明の制御装置で実行される他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図13】 モータ電流進角マップの一例を模式的に示す図である。
【図14】 電動機の駆動状態での電流位相(電流進角)とトルクとの関係を概略的に示す特性線図である。
【図15】 この発明の制御装置で実行される更に他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図16】 モータ回転数とモータトルクとからバッテリー電力を求めるためのマップを模式的に示す図である。
【図17】 モータ回転数とモータトルクとに基づくモータ損失を求めるためのマップを模式的に示す図である。
【図18】 この発明の制御装置で実行される更に他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図19】 この発明で対象とするハイブリッド車の制御系統の一例を示す模式図である。
【図20】 図19のハイブリッド車の制御例を示すフローチャートである。
【図21】 図19のハイブリッド車の制御例を示すフローチャートである。
【図22】 図21のフローチャートに用いられるマップの一例を模式的に示す図である。
【図23】 図19のハイブリッド車の制御例を示すフローチャートである。
【図24】 図23のフローチャートに用いられるマップの一例を模式的に示す図である。
【図25】 図20,21,23の制御を適用可能なハイブリッド車の他の構成例を示す模式図である。
【図26】 図20,21,23の制御を適用可能なハイブリッド車の他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
1,20,42,82,102…電動機、 4,31,58,99,112…駆動輪、 6,33,69,94,115…バッテリー、 7,34…電子制御装置、 41,81,101…発電機。
Claims (1)
- 駆動輪に動力を伝達する駆動系統に動力合成分配機構を介して連結された内燃機関および発電機と、前記動力合成分配機構と前記駆動輪との間に設けられた変速機と、前記発電機で生じた電力を蓄える蓄電器とを備えた車両の制御装置において、
車両の要求駆動力と前記変速機の変速比に基づいて前記内燃機関の燃費最適点近傍で運転するように前記内燃機関の運転状態を制御する際に前記発電機で生じる電力の全てを前記蓄電器で受け入れることができない場合に、前記発電機の電流値に基づいて設定される電流位相を制御することにより、前記発電機のトルクを変化させずに、受け入れられない電力量だけ前記発電機による発電量を低下させる第1の発電量低下手段を備えていることを特徴とする発電機および蓄電器を備えた車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP02076199A JP4088378B2 (ja) | 1998-09-08 | 1999-01-28 | 発電機および蓄電器を備えた車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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