JP4085833B2 - 磁界発生装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は磁界発生装置の製造方法に関し、より特定的にはMRI用磁界発生装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、MRI用の磁界発生装置は、出荷前に予め磁界強度および磁界均一性が十分に調整された上で、コンテナ等で設置場所まで輸送される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような工夫にも拘わらず現地に到着した時点で磁界強度が低下しあるいは磁界の均一性が基準値を超えて悪化し、磁界発生装置を再調整しなければならない場合があった。
特に、漏洩磁束防止用磁石を用いて漏洩磁束を少なくするとともに主磁石から発生した磁束を中心部分に集中させる磁界発生装置においてその傾向が顕著である。また、コンテナ梱包されて輸出される場合や、撮像スピードを向上させるために最近多く使用されている磁界強度の大きい(中心磁界強度:0.25T以上)装置においてもその傾向が顕著である。
それゆえにこの発明の主たる目的は、輸送後における磁界強度の低下および磁界均一性の悪化を抑制できる、磁界発生装置の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の磁界発生装置の製造方法は、R−Fe−B系磁石(Rはイットリウム(Y)を含む希土類元素、Feは鉄、Bはホウ素)を含む磁界発生装置を組み立てる第1工程、および組み立てられた磁界発生装置全体を40℃以上70℃以下で加温する第2工程を備える。
【0016】
請求項1に記載の磁界発生装置の製造方法では、着磁率が99.9%をこえる磁石を使用して磁界発生装置を組み立てた後に磁界発生装置全体を加温することによって、磁界発生装置に含まれる磁石を予め減磁し着磁率を抑えておく。これによって、たとえば温度上昇等の環境要因の変化があっても磁界発生装置によって発生する磁界が長時間にわたって安定し、磁界発生装置の輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制でき、磁界発生装置は設置場所に到着した時点で高い磁界精度を保つことができる。
なお、この明細書において「着磁率」とは常温(25℃)における着磁率をいう。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態のMRI用磁界発生装置10は、オープンタイプのMRI用磁界発生装置であり、空隙を形成して対向配置される一対の磁極ユニット11aおよび11bを含む。
【0021】
磁極ユニット11aおよび11bは、それぞれ板状継鉄12aおよび12bを含む。一対の板状継鉄12aおよび12bのそれぞれの対向面側には永久磁石群14aおよび14bが配置され、永久磁石群14aおよび14bのそれぞれの対向面側には磁極板16aおよび16bが固着される。
【0022】
永久磁石群14aおよび14bは、図3からわかるように、直方体状の複数の永久磁石18を含む。永久磁石18には、たとえばNEOMAX−47(住友特殊金属株式会社製)等のCoおよび/またはDyが実質的に含まれていない高磁束密度タイプのR−Fe−B系磁石が用いられ、たとえば常温における着磁率は80%以上99.9%以下に設定される。一例として、永久磁石18は、着磁率100%のときの磁束密度が0.3824Tの磁石であれば、磁束密度が0.3820Tとなるよう着磁される。永久磁石18は図示しない磁石単体を組み立てることによって得られる。
【0023】
磁極板16aは、永久磁石群14a上に配置されるたとえば鉄からなる円板状のベースプレート20を含む。ベースプレート20上には、うず電流の発生を防止するための珪素鋼板22が形成される。珪素鋼板22は、ベースプレート20上に接着剤で固定される。ベースプレート20の周縁部には、たとえば鉄からなり周縁部の磁界強度を上げ、均一磁界を得るための環状突起24が形成される。環状突起24は複数の環状突起片26を含み、各環状突起片26を珪素鋼板22の周縁部に固定することによって環状突起24が形成される。
【0024】
各環状突起24の外側面には、漏洩磁束防止用の永久磁石28が設けられる。永久磁石28には、NEOMAX−39SH(住友特殊金属株式会社製)等の高保磁力タイプのR−Fe−B系磁石が用いられ、たとえば常温における着磁率は80%以上99.9%以下に設定される。一例として、永久磁石28は、着磁率100%のときの磁束密度が0.3824Tの磁石であれば、磁束密度が0.3820Tとなるよう着磁される。永久磁石28は図示しない磁石単体を組み立てることによって得られる。
【0025】
永久磁石28によって磁束を磁極板16a、16b間に誘導し漏れ磁束を少なくできる。永久磁石28の底部から磁束が漏洩しないように、永久磁石28の底部が永久磁石群14aに略当接(5mm以下に近接)するまで、永久磁石28の下部が延びていることが望ましい。このように永久磁石28と永久磁石群14aとが近接する場合には減磁が発生しやすい。磁極板16bについても同様である。
【0026】
図2に示すように、下側の磁極板16aにおける永久磁石28の磁化方向A1は永久磁石群14aの各永久磁石18の磁化方向B1とは異なり内向きとなる。その永久磁石28の磁化角度θ1は永久磁石群14aの主面30a(水平方向)に対して永久磁石28の磁化方向A1がなす角度を示す。上側の磁極板16bにおける永久磁石28の磁化方向A2は永久磁石群14bの各永久磁石18の磁化方向B2とは異なり外向きとなる。その永久磁石28の磁化角度θ2は永久磁石群14bの主面30b(水平方向)に対して永久磁石28の磁化方向A2がなす角度を示す。
【0027】
また、板状継鉄12aおよび12bには、それぞれ複数の貫通孔32aおよび32bが形成され、永久磁石群14aおよび14bには、それぞれ貫通孔32aおよび32bに対応する位置に貫通孔34aおよび34bが形成される。さらに、磁極板16aおよび16bの各ベースプレート20には、それぞれ貫通孔34aおよび34bに対応する位置にねじ孔36aおよび36bが形成される。
【0028】
そして、磁極板固定用の固定ボルト38aが、貫通孔32aおよび34aに挿通され、すなわち板状継鉄12aおよび永久磁石群14aを貫通して、ねじ孔36aに螺入されることによって、磁極板16aが永久磁石群14aの主面に固定される。同様に、磁極板固定用の固定ボルト38bが、貫通孔32bおよび34bに挿通され、すなわち板状継鉄12bおよび永久磁石群14bを貫通して、ねじ孔36bに螺入されることによって、磁極板16bが永久磁石群14bの主面に固定される。
【0029】
板状継鉄12aおよび12bは一枚の板状の支持継鉄40によって磁気的に結合される。すなわち、支持継鉄40の下端面に板状継鉄12aの一端縁側上面が、支持継鉄40の上端面が板状継鉄12bの一端縁側下面にそれぞれ位置するように、支持継鉄40が板状継鉄12aおよび12bに接続される。したがって、板状継鉄12aおよび12bと支持継鉄40とは、その接続部が略90度の角度を有し側面視コ字状になるように接続される。
【0030】
図1を参照して、板状継鉄12aと支持継鉄40との接続部内面側のうち永久磁石群14aから最も遠い位置(この実施の形態では板状継鉄12aと支持継鉄40との接続部内面側の両端)に、それぞれ補強部材42が形成される。同様に、板状継鉄12bと支持継鉄40との接続部内面側のうち永久磁石群14bから最も遠い位置(この実施の形態では板状継鉄12bと支持継鉄40との接続部内面側の両端)に、それぞれ補強部材42が形成される。したがって、補強部材42によって、板状継鉄12aと支持継鉄40とが、板状継鉄12bと支持継鉄40とがそれぞれより強く固定される。
【0031】
また、板状継鉄12aの下面には、4つの脚部44が取り付けられる。
このような磁界発生装置10では、均一磁界空間F(図2参照)においてたとえば0.25T以上の磁界強度が要求される。
【0032】
ついで、磁界発生装置10の製造方法について説明する。
なお、主磁石である永久磁石18および漏洩磁束防止用磁石である永久磁石28は、たとえば図4に示すような着磁装置50を用いて着磁あるいは減磁される。着磁装置50は着磁コイル52を含み、載置台54上に配置された永久磁石18または28が着磁コイル52内に挿入される。着磁コイル52には切り替えスイッチ56を介して着磁電源58が接続される。したがって、着磁装置50は、切り替えスイッチ56の動作によって着磁と減磁とを切り替えることができる。
【0033】
また、永久磁石18および28は、たとえば図5に示す加温装置60を用いて加温される。加温装置60は、加温槽62を含み、加温槽62内の上部および下部にはそれぞれヒータ64が設けられる。ヒータ64は温度制御装置66によって制御される。また、永久磁石18および28は加温槽62の入口から出口までコンベア68によって搬送される。永久磁石18(28)は加温槽62内で所定温度まで昇温される。
【0034】
(製造方法1)
磁界発生装置10全体を加温する場合について説明する。
まず、磁界発生装置10全体を組み立てる。このとき、永久磁石18および28はたとえば図4に示す着磁装置50を用いて99.9%をこえる着磁率で着磁されている。ここで、「着磁率が99.9%をこえる着磁」とは、磁化が略飽和した状態をいい、通常、磁石の保磁力の3倍以上の磁界を印加したときにこの状態になる。
【0035】
そして、磁界発生装置10を収容できる部屋をヒータによって全体が均一の温度になるように暖め、その部屋に磁界発生装置10を収容して加温し減磁する。磁界発生装置10はたとえば40℃以上70℃以下の所望の温度に加温される。この温度範囲であれば、永久磁石18や28の常温における着磁率を80%以上99.9%以下に設定でき、所望の着磁率に応じて温度が設定される。その後、最終磁界調整を行う。
【0036】
この製造方法では、磁界発生装置10全体を組み立ててから加温処理して永久磁石18,28の着磁率を80%以上99.9%以下に抑えることによって、その後における経時的なあるいは温度上昇による減磁を少なくでき、磁界発生装置10の輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。
【0037】
特に、漏洩磁束防止用の永久磁石28は主磁石である永久磁石18を減磁させやすいが、この方法によれば、永久磁石18および28を含む磁界発生装置10を加温して永久磁石18および28を減磁した後に最終磁界調整するので、その後における磁界均一度の劣化が少なく、漏洩磁束防止用の永久磁石28による影響をも抑制できる。
【0038】
したがって、磁界発生装置10は搬送中に高い温度になったとしても設置場所に到着した時点で高い磁界均一度を保つことができる。
なお、磁界発生装置10を加温するには、板状継鉄12aおよび12b等にヒータを埋め込んでおき、これによって磁界発生装置10を内部から昇温させてもよい。この場合には、磁界発生装置10全体をスポンジ等の断熱材で覆うことが好ましい。
【0039】
(製造方法2)
磁極ユニット11aを加温する場合について説明する。
まず、磁極ユニット11aを組み立てる。このとき、永久磁石18および28はたとえば図4に示す着磁装置50を用いて99.9%をこえる着磁率で着磁されている。
【0040】
そして、磁極ユニット11aを収容できる部屋をヒータによって全体が均一になるように暖め、その部屋に磁極ユニット11aを入れて加温し減磁する。磁極ユニット11aは、先の製造方法1と同様に所望の着磁率(80%以上99.9%以下から選択)に応じて、たとえば40℃以上70℃以下の温度に加温される。磁極ユニット11bについても同様に処理する。
その後、磁極ユニット11a,11bを支持継鉄40に固定して磁界発生装置10を得た後、工場出荷前に最終的に磁界均一度の調整を行う。
【0041】
この製造方法では、組み立てられた磁極ユニット11a,11bを加温処理することによって、磁極ユニット11a,11bを用いた磁界発生装置の輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。特に、漏洩磁束防止用の永久磁石28は主磁石である永久磁石18に影響を与えやすいが、この方法によれば、永久磁石18および28を含む磁極ユニットを加温して永久磁石18および28を減磁した後に最終磁界調整するので、その後における磁界均一度の劣化が少なく、漏洩磁束防止用の永久磁石28による影響をも抑制できる。また、磁界発生装置10全体を組み立ててから加温する場合と比べて加温スペースが狭くてもよい。
【0042】
(製造方法3)
永久磁石18を組み立て、昇温したあとで着磁する場合について説明する。
この場合、永久磁石18を組み立てた後、板状継鉄12a,12bに接着する前に以下の工程を行う。
【0043】
まず、永久磁石18をたとえば図5に示す加温装置60の加温槽62内に入れ、永久磁石18全体が均一にたとえば60℃になるまで加温する。なお、永久磁石18は、たとえば40℃以上70℃以下の所望の温度で加温され得る。加温された永久磁石18を加温槽62から取りだし、たとえば図4に示す着磁装置50で永久磁石18に対して瞬間的に高い磁界(3T以上)を印加し永久磁石18を80%以上99.9%以下の着磁率で着磁する。高温時には低温時に比べて着磁率が低下するので、永久磁石18を高温にした状態で着磁することは、結果的に、永久磁石18を着磁後に熱減磁する(後述の製造方法5参照)のと同様になる。
永久磁石28についても同様に処理される。
【0044】
その後、永久磁石18および28を板状継鉄12a,12bに固定し、磁界発生装置10を組み立てる。
この製造方法によって得られた永久磁石18および28を用いた磁界発生装置10では、輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。また、磁界発生装置10全体や磁極ユニット11a,11bを加温する場合より、加温スペースが狭くてもよく、小型の加温装置60を用いることができる。
なお、永久磁石は一旦着磁すると磁力が働き吸引力や反発力が作用するので、加温した永久磁石を板状継鉄12a,12bに固定する分だけ順次着磁して使用することが、安全面から好ましい。
【0045】
(製造方法4)
永久磁石18を組み立て、着磁したあとで逆磁界を印加して減磁する場合について説明する。
この場合、永久磁石18を組み立てた後、板状継鉄12a,12bに接着する前に以下の工程を行う。
【0046】
まず、永久磁石18に対して瞬間的に高い磁界(3T以上)を印加し99.9%をこえる着磁率で着磁した後、着磁された永久磁石18に対して逆磁界(0.01T〜2T)を印加して減磁させ、着磁率を80%以上99.9%以下に抑える。永久磁石18の着磁および減磁は、たとえば図4に示す着磁装置50を用いて行われる。
永久磁石28についても同様に処理される。
【0047】
その後、永久磁石18および28を板状継鉄12a,12bに固定し、磁界発生装置10を組み立てる。
この製造方法によって得られた永久磁石18および28を用いた磁界発生装置10では、輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。また、この方法によれば、加温による減磁ではないので、時間が短くて済み、作業効率がよい。
【0048】
(製造方法5)
永久磁石18を組み立て、着磁したあとで熱減磁する場合について説明する。
この場合、永久磁石18を組み立てた後、板状継鉄12a,12bに接着する前に以下の工程を行う。
【0049】
まず、たとえば図4に示す着磁装置50を用いて永久磁石18に対して瞬間的に高い磁界(3T以上)を印加して99.9%をこえる着磁率で着磁する。着磁された永久磁石18をヒータが設置された炉内(40℃〜70℃)内に収容して熱減磁させ、着磁率を80%以上99.9%以下に抑える。
永久磁石28についても同様に処理される。
【0050】
永久磁石18および28を板状継鉄12a,12bに固定し、磁界発生装置10を組み立てる。
この製造方法によって得られた永久磁石18および28を用いた磁界発生装置10では、輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。
【0051】
なお、上述の製造方法以外の方法としては、永久磁石を本来の着磁方向とは逆方向にわずかに着磁した後に本着磁し所望の着磁率を得るようにしてもよい。この場合には、逆方向の着磁率が大きいほどその後の正方向の着磁磁界を大きくしなければならない。
また、減磁の方法としては、磁界発生装置10全体あるいは磁極ユニット11a,11b全体に対して、逆磁界減磁を施すようにしてもよい。
【0052】
因みに、図6を参照して、永久磁石に関する一実験例について説明する。
ここでは、永久磁石としてNEOMAX−47を用い、永久磁石を加温処理(100%着磁した後50℃で24時間維持)した場合と加温処理しない場合とについて、磁界強度の経時変化を比較した。
【0053】
加温処理した永久磁石の着磁率は99%、加温処理しない永久磁石の着磁率は100%に設定された。そして、実験中は、永久磁石には逆磁界なしで温度が32℃に保たれた。
図6からわかるように、加温処理した場合は加温処理しない場合より磁界強度の変化率を大幅に小さくできる。
【0054】
つぎに、図7を参照して、他の実験例について説明する。
ここでは、永久磁石としてNEOMAX−47を用い、永久磁石を55℃加温処理した場合と、逆磁界減磁処理した場合と、加温処理および逆磁界減磁処理のいずれも行わない場合とについて、温度上昇に対する磁界強度の変化を比較した。
【0055】
「55℃加温処理」は、永久磁石を100%着磁した後55℃で2時間保ち着磁率を99.9%とした。「逆磁界減磁処理」は、永久磁石を100%着磁した後、表面磁界強度が55℃加温処理の場合と同等になるように逆磁界を上げながら減磁した。
【0056】
図7からわかるように、55℃加温処理した場合および逆磁界減磁処理した場合は、これらの処理をしない場合より、温度上昇に対する磁界強度変化率が大幅に小さくなる。
さらに、55℃加温処理した場合は逆磁界減磁処理した場合より、温度上昇に対する磁界強度変化率が小さくなる。これは、加温処理は永久磁石全体に対して均一に作用するが、逆磁界減磁処理は逆磁界による減磁を永久磁石に対して均一に作用させにくいからである。
【0057】
図6および図7の結果より、加温処理あるいは逆磁界減磁処理した永久磁石を主磁石および/または漏洩磁束防止用磁石として用いれば、主磁石や漏洩磁束防止用磁石の経時変化あるいは温度上昇による減磁を抑制でき、磁界発生装置を組み立てた後の磁界強度の変化や磁界均一度の低下を抑制できる。
【0058】
さらに、図8に磁界発生装置の磁束分布を示す。
図8(a)は、漏洩磁束防止用磁石を有する磁界発生装置の磁束分布を示し、図8(b)は、漏洩磁束防止用磁石がない磁界発生装置の磁束分布を示す。なお、図8(a)の場合の中心磁界強度は0.262T、図8(b)の場合の中心磁界強度は0.215Tであった。
【0059】
図8(a)と(b)とを比較してわかるように、漏洩磁束防止用磁石を用いた場合には、磁束を磁極板間に誘導する一方、漏洩磁束防止用磁石の外側の磁束が疎になる。言い換えれば、漏洩磁束防止用磁石と永久磁石群とは互いに反発しあって減磁しやすい状態にあるといえる。したがって、漏洩磁束防止用磁石を用いた磁界発生装置では、温度が上昇することによって磁界強度やその分布がより変化しやすくなる。したがって、漏洩磁束防止用磁石を用いた磁界発生装置にこの発明を適用すれば、磁界均一度の劣化を抑制でき効果的である。
【0060】
また、永久磁石18や28に用いられるR−Fe−B系磁石は、フェライト磁石やSm−Co磁石に比べて比較的低温で熱減磁が発生しやすいが、上述の実施形態のようにR−Fe−B系磁石の着磁率を予め抑えておくことによって熱減磁を抑制できる。
【0061】
永久磁石18に高い残留磁束密度が要求される場合には上述のようにCoを実質的に含まない三元系R−Fe−B系磁石が使用される。この場合には、Coを含む永久磁石に比べて熱減磁が大きくなるので、上述の実施形態を採用する効果が大きい。さらにDyを実質的に含んでいない磁石を用いる場合にも、上述の実施形態を採用する効果は大きい。
【0062】
また、磁界強度の変化や磁界均一度の悪化を抑制できるので、空隙において、均一磁界空間Fすなわち磁界強度の誤差が100ppm以内の磁界空間が必要とされる場合であっても、磁界強度の誤差を上述の範囲内に抑えやすい。
さらに、たとえば空調が十分でないコンテナによって磁界発生装置が輸送される場合であっても、磁界強度の変化および磁界均一度の悪化を抑制できる。
また、均一磁界空間Fの磁界強度がたとえば0.25T以上と大きく変化量が大きくなりやすい場合であっても、磁界強度の変化を抑制できる。
【0063】
【発明の効果】
【0064】
この発明によれば、磁界発生装置の組立後に磁界発生装置全体を加温しておくことによって、温度上昇等の環境要因の変化があっても磁界発生装置によって発生する磁界が長時間にわたって安定し、磁界発生装置の輸送後における磁界強度の低下および磁界均一度の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】 図1の実施形態の要部を示す図解図である。
【図3】この発明に用いられる永久磁石群の一例を示す斜視図である。
【図4】この発明に用いられる着磁装置の一例を示す図解図である。
【図5】この発明に用いられる加温装置の一例を示す図解図である。
【図6】永久磁石の磁界強度の経時変化を示すグラフである。
【図7】永久磁石の磁界強度の温度上昇による変化を示すグラフである。
【図8】 (a)は漏洩磁束防止用磁石を有する磁界発生装置の磁束分布、(b)は漏洩磁束防止用磁石のない磁界発生装置の磁束分布を示す。
【符号の説明】
10 磁界発生装置
11a,11b 磁極ユニット
12a,12b 板状継鉄
14a,14b 永久磁石群
16a,16b 磁極板
18,28 永久磁石
24 環状突起
40 支持継鉄
50 着磁装置
60 加温装置
F 均一磁界空間
Claims (1)
- R−Fe−B系磁石を含む磁界発生装置を組み立てる第1工程、および
組み立てられた前記磁界発生装置全体を40℃以上70℃以下で加温する第2工程を備える、磁界発生装置の製造方法。
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