JP4084555B2 - フォトダイオードを有する半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置に関し、特にフォトダイオードを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光信号を電気信号に変換する受光素子には、分光感度特性の相違する各種の素子が実用化ないし提案されているが、可視光に分光感度を有する受光素子としては、CdSと呼ばれる硫化カドミウム素子、及びシリコンのフォトダイオードが一般に用いられている。しかし、CdSは、有害物質の使用が環境の点から近年問題となっており、シリコンのフォトダイオードに置き換わりつつある。また、シリコンのフォトダイオードは可視光だけでなく赤外光に対しても高い感度を有するため、カメラの自動露出用など視感度にほぼ一致するような分光感度が望まれる用途では、長波長側の感度を抑える必要がある。本発明はシリコンのフォトダイオードにおける長波長側の感度の抑制技術に関する。
【0003】
フォトダイオードにおける長波長側の感度を抑える典型的な方法は、入射光の成分のうち赤外領域の光成分を吸収すると共に可視領域の光成分は透過する光学フィルタを受光面上に配設することである(以下、第1の従来技術と称す)。しかし、赤外光をカットする光学フィルタは、通常蒸着による干渉フィルタが使用されており、高価であり、またスペースもとってしまうという課題がある。
【0004】
フォトダイオードにおける長波長側の感度を抑える他の方法は、素子の構造に改良を加える方法である。このような方法の一例が特開平11−163386号公報に記載されている。同公報に記載の従来技術では、フォトダイオードのPN接合を構成する2種類の半導体層のうち光の入射側と反対側の半導体層(この層のことを同公報では光吸収層と呼んでいる)の厚さを薄く形成する方法である(以下、第2の従来技術と称す)。光吸収層の厚さの違いによる分光感度の違いを説明する同公報の図面を図5に示す。図5において、フォトダイオードAは、厚さ400μmのN型単結晶シリコン基板101の上にP型領域102を形成したもので、N型単結晶シリコン基板101とP型領域102とのPN接合でフォトダイオードが構成されている。この場合、単結晶シリコン基板101が光吸収層になり、その厚さは400μmである。他方、フォトダイオードBは、高不純物濃度のN型半導体層103の上に低不純物濃度の厚さ10μmのN型半導体層104を形成し、このN型半導体層104にP型領域105を形成したもので、N型半導体層104とP型領域105とのPN接合でフォトダイオードが構成されている。この場合、N型半導体層104が光吸収層になり、その厚さは10μmである。
【0005】
図5には、フォトダイオードA及びBの分光感度の測定結果が併せて描かれている。横軸は入射光の波長(μm)、縦軸はピーク値を100とした場合の相対感度を表す。この測定結果から、フォトダイオードAの分光感度特性が0.9〜1.0μm程度をピーク値としているのに対し、フォトダイオードBの分光感度特性は、0.7μm程度をピーク値として、それより長波長側では徐々に感度が低下する傾向を示し、全体として、可視光領域で充分な感度を有しながら赤外光に対する感度がフォトダイオードAに比べて低くなっているのが分かる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図5のフォトダイオードBは赤外光に対する感度が低くなってはいるが、カメラの自動露出用など視感度にほぼ一致するような分光感度が望まれる用途には、赤外感度がまだ高すぎる。半導体層104をもっと薄く、例えば2.5μm程度にすると、赤外感度もちょうど良い程度に低くなり、緑色波長領域にピークを持つようになる。この場合の特性を図6に示す。なお、縦軸は変換効率A/Wを、横軸は入射光の波長(nm)を示す。
【0007】
しかしながら、半導体のチップ上にフォトダイオードだけを作る場合には第2の従来技術でも実用化は容易であるが、バイポーラトランジスタと一緒にフォトダイオードを集積化するバイポーラICへの適用は困難である。その理由は、バイポーラICでは、バイポーラトランジスタの一部を使ってフォトダイオードを作るため、前記公報で言う光吸収層を薄く形成することは仕様上あるいは製造プロセスの制約上、困難になるためである。具体的には、例えば、通常のP型基板の上にN型のエピタキシャル層を成長させ、さらに、P型のベース拡散、更にその上にN型のエミッタ拡散を行ったバイポーラIC構造の場合、N型のエピタキシャル層とP型のベース拡散とのPN接合がフォトダイオードとして一般に利用される。この場合、エピタキシャル層が前記公報で言う光吸収層に相当するため、このエピタキシャル層を薄く形成する必要がある。しかし、エピタキシャル層の厚さは耐圧などの関係で余り薄くすることはできない。また、エピタキシャル層の厚さをフォトダイオードの部分だけ薄く形成し、バイポーラトランジスタの部分は厚く形成するようなことは製造プロセス上、極めて困難である。従って、エピタキシャル層の厚さは、仕様あるいは製造プロセスの制約から任意には選べない。このような状況のため、同じチップ上にフォトダイオードとバイポーラトランジスタ等の素子を集積化する場合には、光学フィルタを使用する第1の従来技術が使用されているのが現状である。
【0008】
本発明の目的は、光学フィルタを使うことなく長波長側の感度を充分に抑圧することができ、然もバイポーラトランジスタとの集積化に適したフォトダイオードを有する半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のフォトダイオードを有する半導体装置は、P型半導体基板の上に形成したN型エピタキシャル層に素子を形成する構造の半導体装置において、N型エピタキシャル層の上に形成したP型半導体層と前記N型エピタキシャル層とで構成されるフォトダイオードの領域の全部または一部に不純物濃度の高いP型埋め込み層を備えるようにしている。ここで、不純物濃度の高いP型埋め込み層からN型エピタキシャル層への拡散と上方からの分離拡散とをN型エピタキシャル層の中間部分で繋げることによって、N型エピタキシャル層をコレクタとするNPNトランジスタや同じくN型エピタキシャル層をベースとするラテラルPNPトランジスタ等の素子間の分離を行う半導体装置にあっては、素子分離工程におけるP型埋め込み層の形成時に同時に前記フォトダイオードの領域の全部または一部にP型埋め込み層を形成することが好ましい。また、P型半導体基板の上に他の素子としてバーチカルPNPトランジスタを形成する場合、前記フォトダイオードは、バーチカルPNPトランジスタのベースを構成するN型エピタキシャル層とエミッタを構成するP型半導体層とのPN接合を利用したものとすることができ、その場合、フォトダイオードの領域の全部または一部に形成される不純物濃度の高いP型埋め込み層は、バーチカルPNPトランジスタのコレクタを構成するP型埋め込み層を利用するのが好ましい。
【0010】
前記フォトダイオードは、好ましくは分光感度において図6の特性図に示したように緑色波長領域にピークを持つ。この場合、N型エピタキシャル層は4μm乃至6μm程度の厚さで形成され、フォトダイオードの領域に設けられたP型埋め込み層からN型エピタキシャル層への拡散によってフォトダイオードの領域における実効的なN型エピタキシャル層の厚さが1.5μm乃至3μm程度に形成される。
【0011】
また、P+埋め込み層のように濃度の高い不純物層を作ることで、近傍の結晶に欠陥が入る確率が増加し、微少電流領域においてデリケートな性能が要求される対数圧縮用のトランジスタに影響が及ぶのを防止するために、デリケートな性能が要求されるトランジスタは、フォトダイオードから好ましくは80μm以上離して形成するのが良い。同様の理由で、フォトダイオードの領域の一部に不純物濃度の高いP型埋め込み層を形成する際には、当該P型埋め込み層はフォトダイオードの領域の中心に近い部分、好ましくは周辺部50μmより内側にのみ形成するのが好ましい。
【0012】
【作用】
本発明にあっては、P型半導体基板の上に形成したN型エピタキシャル層とこのN型エピタキシャル層の上に形成したP型半導体層とで構成されるフォトダイオードの領域の全部または一部に不純物濃度の高いP型埋め込み層を備えているため、N型エピタキシャル層自体の厚さが4μm乃至6μm程度と厚い場合であっても、P型埋め込み層からN型エピタキシャル層への拡散によってフォトダイオード領域における実効的なN型エピタキシャル層の厚さが1.5μm乃至3μm程度に薄くでき、フォトダイオードの長波長側の感度を充分に低くすることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態の例について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置の要部断面図である。この例の半導体装置は、シリコンのP型基板11の上にフォトダイオード12とNPNトランジスタ13とが形成されている。図1では、フォトダイオード12に隣接してNPNトランジスタ13が形成されているが、必ずしもこのような関係である必要はない。また、一般にバイポーラICには抵抗やコンデンサ等の他の基本素子も集積化されるが、本発明と直接関係しないため図1では描いていない。
【0015】
フォトダイオード12及びNPNトランジスタ13は、P型基板11の上に形成されたN型のエピタキシャル層14をP+層15及びP+層16によって分断して形成したエピタキシャル層の島部分にそれぞれ形成されている。ここで、P+層15はエピタキシャル層14の成長前にP+不純物を分離部分に拡散しておいたP+埋め込み層であり、P+層16はエピタキシャル層14の成長後にP+不純物を上方から熱拡散した分離拡散層である。双方のP+層15及び16は、熱拡散時にエピタキシャル層14のほぼ中央部で衝突し、両者が一体となって分離層を形成する。
【0016】
NPNトランジスタ13は、エピタキシャル層14をコレクタ領域、エピタキシャル層14にベース拡散されて形成されたP層17をベース領域、P層17にエミッタ拡散されて形成されたN+層18をエミッタ領域としており、エピタキシャル層14にはコレクタ配線19、P層17にはベース配線20、N+層18にはエミッタ配線21がそれぞれ形成されている。なお、22はSiO2等の絶縁層、23はN+埋め込み層、24はコレクタ抵抗を減らすためのN+拡散層である。
【0017】
他方、フォトダイオード12は、エピタキシャル層14をカソード領域、エピタキシャル層14に形成されたP層30をアノード領域としており、P層30にはアノード配線25が、エピタキシャル層14にはN+拡散層26及びN+埋め込み層27を介してカソード配線28が形成されている。N+拡散層26、N+埋め込み層27は、NPNトランジスタ13におけるN+拡散層24、N+埋め込み層23と同じ役割を持つ。使用に際しては、エピタキシャル層14とP層30のPN接合が逆バイアス状態となるようにアノード配線25とカソード配線28に電圧をかけるが、その際、カソード配線28を或る電位に固定して、アノード配線25から光電変換電流を取り出す。このようなフォトダイオード12の構造自体は、NPNトランジスタ13のエピタキシャル層14とベース層(P層17)とのPN接合をフォトダイオードとして利用する従来のフォトダイオードと同じである。
【0018】
本実施の形態の特徴は、フォトダイオード12のエピタキシャル層14とP型基板11との間に、素子間分離に使うP+埋め込み層15と同様なP+埋め込み層29を設けている点にある。すなわち、通常の製造プロセスでは、P+埋め込み層は分離部分の下にのみ形成されるが、本実施の形態ではフォトダイオード12の領域の下にも入れておくことで、フォトダイオード領域における実効的なエピタキシャル層14の厚みを小さくしている。
【0019】
エピタキシャル層14の厚さは、同時に集積化されるNPNトランジスタ13の仕様などから余り薄くはできず、またP層30は、NPNトランジスタ13のP層17と同じプロセスで作られるため、P層30の厚さも自ずと決まってしまう。従って、P+埋め込み層29が無い従来のフォトダイオードでは、フォトダイオード領域におけるエピタキシャル層14の厚さ(図1の符号a)は4μmから6μm程度になり、前述したように赤外光の感度が依然として高い。P+埋め込み層29を設けることで、フォトダイオード領域における実効的なエピタキシャル層14の厚さ(図1の符号b)をより小さく設定することができる。この実効的なエピタキシャル層14の厚さは、長波長側の感度をどの程度まで抑圧するかによって事前に決められる。カメラの自動露出用など視感度にほぼ一致するような分光感度が望まれる用途では、実効的なエピタキシャル層14の厚さは、1.5μmから3μm程度が望ましい。
【0020】
本実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置にあっては、フォトダイオード12の領域におけるエピタキシャル層14の実質的な厚さがP+埋め込み層29によって薄くなっているため、P層30を主たる受光面として外部からP層30に入射した光の成分のうち、浅い領域で吸収されずに深い位置まで到達する長波長成分はエピタキシャル層14を突き抜けてP+埋め込み層29またはP型基板11まで達し、そこで少数キャリアを発生させる。しかし、P型基板11で発生する少数キャリアも、P+埋め込み層29で発生する少数キャリアも、まずエピタキシャル層14側に移動する間にP+埋め込み層29で再結合して吸収されるだけでなく、エピタキシャル層14に到達してもこの部分は或る基準となる電位に固定されているため、その電位に対して電流を流すのみであり、フォトダイオード12の出力電流には影響を与えない。これによって、長波長側の感度が充分に抑圧されることになる。
【0021】
長波長側の感度がどの程度抑圧されるかは、フォトダイオード領域におけるP層30とP+埋め込み層29との距離(エピタキシャル層14の図1の符号aで示す厚さ)以外に、P+埋め込み層29の平面積(基板面に平行な面積)にも関係する。図2に、フォトダイオード12を受光面側から見た場合のP層30とP+埋め込み層29の平面図の概略を示す。図2(a)に示すように、フォトダイオード領域のほぼ全部をカバーするようにP+埋め込み層29を形成したときが長波長側の感度抑圧効果が一番大きくなり、図2(b)に示すように、フォトダイオード領域の一部分にP+埋め込み層29を形成したときは、P+埋め込み層29の平面積が小さくなるに従って長波長側の感度抑圧効果が低下していく。このため、P+埋め込み層29の平面積を調整することで、フォトダイオードの長波長側の感度を微調整することも可能である。例えば、エピタキシャル層14の符号aで示す厚さが或る値のとき、長波長側の感度が所望の感度より低く、少し感度を上げたい場合には、エピタキシャル層14の実効的な厚さを増やす設計変更以外に、P+埋め込み層29の平面積を狭くする設計変更でも対処することができる。なお、P+埋め込み層29は、1つだけでなく、図2(c)に示すように複数個形成するようにしても良い。
【0022】
また、フォトダイオードの感度は、P+埋め込み層29が入っているフォトダイオード、入っていないフォトダイオード、P+埋め込み層29が入っているがそのP+埋め込み層29の平面積が異なる複数のフォトダイオードなど、感度特性の異なる複数のフォトダイオードを同一基板上に形成し、複数のフォトダイオードを並列に接続することで調整することも可能である。
【0023】
また、P+埋め込み層のように濃度の高い不純物層を作ることで、近傍の結晶に欠陥が入る確率が増加する。このため、対数圧縮トランジスタのように微少電流領域においてデリケートな性能が要求されるトランジスタは、フォトダイオードの近傍に配置しないことが望ましい。具体的には、そのようなデリケートな性能が要求されるトランジスタは、フォトダイオードのP+埋め込み層の端から80μm以上離して形成するのが望ましい。同様の理由で、図2(b)に示すようにフォトダイオード領域の一部にP+埋め込み層29を入れる場合、フォトダイオード領域の周辺部から50μmより内側にのみP+埋め込み層29を形成するのが望ましい。
【0024】
本実施の形態にかかる半導体装置は、NPNトランジスタ13を集積化するバイポーラICと同様の製造プロセスで製造することができる。相違する点は、通常の製造プロセスでは、P+埋め込み層は分離部分の下にのみ形成するが、本実施形態ではフォトダイオード12の領域の下にも入れておくことである。P+埋め込み層を形成するプロセスの一例を図3に示す。P型基板11の上に生成したSiO2等の酸化膜31をパターニングして、分離部分の下に形成するP+埋め込み層15用の開孔32とフォトダイオード領域に入れるP+埋め込み層29用の開孔33とを形成し、例えばホウ素を熱拡散させてP+埋め込み層15と同時にP+埋め込み層29を形成する。図3の例では、N+埋め込み層23、27の形成後にP+埋め込み層15、29を形成したが、N+埋め込み層23、27を形成する前にP+埋め込み層15、29を形成するようにしても良い。
【0025】
図4は本発明の別の実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置の要部断面図である。この例の半導体装置は、シリコンのP型基板41の上に形成されるバーチカル構造のPNPトランジスタ43のプロセスでフォトダイオード42を形成したものである。
【0026】
フォトダイオード42及びPNPトランジスタ43は、P型基板41の上に形成されたN型のエピタキシャル層44をP+層45及びP+層46によって分断して形成したエピタキシャル層の島部分にそれぞれ形成されている。ここで、P+層45はエピタキシャル層44の成長前にP+不純物を分離部分に拡散しておいたP+埋め込み層、P+層46はエピタキシャル層44の成長後にP+不純物を上方から熱拡散した分離拡散層であり、図1の実施の形態におけるP+埋め込み層15、P+分離拡散層16に相当する。
【0027】
バーチカル構造のPNPトランジスタ43は、エピタキシャル層44をベース領域、エピタキシャル層44にエミッタ拡散されて形成されたP層47をエミッタ領域、エピタキシャル層44に形成されたP+埋め込み層48をコレクタ領域としており、エピタキシャル層44にはベース配線49、P層47にはエミッタ配線50、P+埋め込み層48にはコレクタ配線51がそれぞれ形成されている。なお、52はSiO2等の絶縁層、53はN+埋め込み層、54はベース抵抗を減らすためのN+拡散層であり、62はエピタキシャル層44の島のバイアスを与えるためのコンタクトで通常最大電位(普通は電源+)に接続する。ここで、P+埋め込み層48は、エピタキシャル層44の成長前にP+不純物を拡散しておいた基部48aと、エピタキシャル層44の成長後にP+不純物を上方から熱拡散した拡散部48bとで構成されている。
【0028】
他方、フォトダイオード42は、エピタキシャル層44をアノード領域、エピタキシャル層44に形成されたP層60をカソード領域としており、P層60にはカソード配線55が、エピタキシャル層44にはN+拡散層56を介してアノード配線57が形成されている。また、PNPトランジスタ43におけるP+埋め込み層48及びN+埋め込み層53と同様なP+埋め込み層58及びN+埋め込み層59が設けられており、P+埋め込み層58にはバイアス配線(GND電位)61が接続されている。ここで、N+拡散層56、N+埋め込み層59は、PNPトランジスタ43におけるN+拡散層54、N+埋め込み層53と同じ役割を持つ。また、P+埋め込み層58は、エピタキシャル層44の成長前にP+不純物を拡散しておいた基部58aと、エピタキシャル層44の成長後にP+不純物を上方から熱拡散した拡散部58bとで構成されている。使用に際しては、エピタキシャル層44とP層60のPN接合が逆バイアス状態となるようにアノード配線57とカソード配線55に電圧をかけるが、その際、バイアス配線61にバイアスをかけておき、アノード配線57から光電変換電流を取り出す。
【0029】
本実施の形態の特徴は、フォトダイオード42のエピタキシャル層44とP型基板41との間に、バーチカル構造のPNPトランジスタ43で使うP+埋め込み層48と同様なP+埋め込み層58を設け、フォトダイオード領域における実効的なエピタキシャル層44の厚みを小さくしている点にある。これにより、例えば、P+埋め込み層58が無いフォトダイオードでは、フォトダイオード領域におけるエピタキシャル層44の厚さ(図4の符号a)は一般に4μmから6μm程度あるため赤外光の感度が依然として高くなるが、P+埋め込み層58を設けてフォトダイオード領域における実効的なエピタキシャル層の厚さ(図4の符号b)を例えば1.5μmから3μm程度に設定することで、カメラの自動露出用など視感度にほぼ一致するような分光感度を得ることができる。
【0030】
なお、図1の実施例と同様に、本実施の形態においてもフォトダイオード領域の一部分にP+埋め込み層58を形成することで、フォトダイオードの長波長側の感度を微調整することが可能である。また、P+埋め込み層58が入っているフォトダイオード、入っていないフォトダイオード、P+埋め込み層58が入っているがそのP+埋め込み層58の平面積が異なる複数のフォトダイオードなど、感度特性の異なる複数のフォトダイオードを同一基板上に形成し、複数のフォトダイオードを並列に接続することで、フォトダイオードの長波長側の感度を所望の感度に調整することも可能である。
【0031】
本実施の形態にかかる半導体装置は、バーチカル構造のPNPトランジスタ43を集積化したバイポーラICと同様の製造プロセスで製造することができる。相違する点は、通常の製造プロセスでは、P+埋め込み層48はPNPトランジスタ43の領域にのみ形成するが、本実施形態ではフォトダイオード42の領域の下にも入れておくことである。P+埋め込み層58を形成するプロセスの一例を説明すると、エピタキシャル層44の形成前に、P型基板41の上に形成したN+埋め込み層53、59にP+埋め込み層48用の開孔、P+埋め込み層58用の開孔をパターニングし、例えばホウ素を熱拡散させてP+埋め込み層48の基部48aと同時にP+埋め込み層58の基部58aを形成する。そして、エピタキシャル層44の形成後、P+埋め込み層48の拡散部48bを形成するプロセスにおいて、P+埋め込み層58の拡散部58bを同時に形成する。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、光学フィルタ無しにフォトダイオードの長波長側の感度を抑えることができる。その理由は、P型半導体基板の上に形成したN型エピタキシャル層とこのN型エピタキシャル層の上に形成したP型半導体層とで構成されるフォトダイオードの領域の全部または一部に形成した不純物濃度の高いP型埋め込み層によって、実効的なN型エピタキシャル層の厚さを薄くできるからである。
【0033】
また本発明によれば、バイポーラトランジスタとの集積化に適したフォトダイオードを有する半導体装置が得られる。その理由は、P型半導体基板の上に形成するN型エピタキシャル層自体の厚さをフォトダイオードのためだけに薄く形成する必要がないこと、P型埋め込み層を素子間分離工程におけるP型埋め込み層と同じ工程や、バーチカルPNPトランジスタのコレクタを構成するP型埋め込み層と同じ工程で製造できるためである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置の要部断面図である。
【図2】フォトダイオードを受光面側から見た概略平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置においてP+埋め込み層を形成するプロセスの説明図である。
【図4】本発明の別の実施の形態にかかるフォトダイオードを有する半導体装置の要部断面図である。
【図5】光吸収層の厚さの違いによるフォトダイオードの分光感度の違いを説明する図である。
【図6】光吸収層の厚さを2.5μm程度にしたときのフォトダイオードの分光感度の特性を示す図である。
【符号の説明】
11…シリコンのP型基板
12…フォトダイオード
13…NPNトランジスタ
14…N型のエピタキシャル層
15…P+層(P+埋め込み層)
16…P+層(分離拡散層)
17…P層(ベース領域)
18…N+層(エミッタ領域)
19…コレクタ配線
20…ベース配線
21…エミッタ配線
22…絶縁層
23…N+埋め込み層
24…N+拡散層
25…アノード配線
26…N+拡散層
27…N+埋め込み層
28…カソード配線
29…P+埋め込み層
30…P層(アノード領域)
Claims (3)
- P型半導体基板の上に形成したN型エピタキシャル層と該N型エピタキシャル層に形成したP型半導体層とのPN接合を利用したフォトダイオードを有する半導体装置の製造方法において、P型埋め込み層から前記N型エピタキシャル層への拡散と上方からの分離拡散とを前記N型エピタキシャル層の中間部分で繋げることによって素子間の分離を行う素子分離工程における前記P型埋め込み層の形成時に、前記フォトダイオードの前記PN接合を形成する前記P型半導体層が形成される領域の下方にも同時に、前記P型埋め込み層と同じ不純物濃度のP型埋め込み層を形成することを特徴とするフォトダイオードを有する半導体装置の製造方法。
- 前記N型エピタキシャル層は4μm乃至6μm程度の厚さで形成され、前記フォトダイオードの前記PN接合を形成する前記P型半導体層が形成される領域の下方に形成された前記P型埋め込み層から前記N型エピタキシャル層への拡散によって、前記P型半導体層の下方の前記N型エピタキシャル層の厚さが1.5μm乃至3μm程度に形成される請求項1記載のフォトダイオードを有する半導体装置の製造方法。
- 微少電流領域においてデリケートな性能が要求されるトランジスタは前記フォトダイオードから離して形成する請求項1または2に記載のフォトダイオードを有する半導体装置の製造方法。
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