JP4084434B2 - 安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤及び殺菌剤 - Google Patents

安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤及び殺菌剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、漂白、殺菌、及び洗浄等の用途に使用される安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機過酸は、強い酸化力を有することから種々の物質の酸化剤として利用されると共に、漂白、殺菌、及び洗浄等の用途にも使用されている。
有機過酸の利用形態は、固形のものと水溶液状のものとに大別される。過酢酸は、最も広く利用されている水溶液状の有機過酸であるが、強い刺激臭を有することから、用途によってはその使用が制約される場合がある。
この問題点を解決するために、無臭性の有機過酸の水溶液が提案されており、例えば、特開昭53−81619号公報には、過グルタル酸濃厚液が、特開平8−67667号公報には、過グルタル酸、過コハク酸及び過アジピン酸を含む過ジカルボン酸含有水溶液が開示されている。
しかし、これらの有機過酸は、漂白、或いは殺菌作用を発揮する条件が狭く、また該作用が不十分であるという問題点がある。
特開平1−153674号公報には、アルカリ性領域から酸性領域までの広いpH範囲で、高い漂白力を示す、固形のアミノ過カルボン酸塩が開示されており、注目されるが、同公報に従って、アミノ過カルボン酸塩を得ようとする場合、高濃度の過酸化水素と高濃度の硫酸を用いる(水含有量の少ない反応系をつくる)必要があること、反応系からアミノ過カルボン酸塩の結晶を得るために、多量の有機溶媒が必要であること、また結晶を取り出す前の該アミノ過カルボン酸塩の水溶液の安定性は、極めて悪く危険である等の製造上の問題点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、アミノ過カルボン酸の優れた漂白力に注目し、該アミノ過カルボン酸の性能を十分に発揮できる、保存安定性の良いアミノ過カルボン酸の水溶液を得ることを目的に検討を重ねた結果、特定の組成を有するアミノ過カルボン酸含有の水溶液が極めて安定であること、またラクタムを出発原料とすることにより、簡単かつ安価に該アミノ過カルボン酸含有水溶液を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の一つは、下記の(a)〜(d)の成分
(a)次の一般式で表わされるアミノカルボン酸と、該アミノカルボン酸に相応するアミノ過カルボン酸との和 0.5〜5.0モル/Kg
H2N−R−COOH(Rは炭素数2〜8を有する直鎖のアルキレン基を表わす)
(b)過酸化水素 1.0〜12.0モル/Kg
(c)水 10.0〜45.0モル/Kg
(d)硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸から選ばれる少なくとも1種の強酸を含有し、(a)成分に対する(d)成分のモル比が、(d)成分として、硫酸、又は メタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0であり、(d)成分として、リン酸 を用いる場合には、1.0〜4.0である安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤及び殺菌剤に関する。
【0005】
前記アミノ過カルボン酸の濃度は、好ましくは、0.05〜2.0モル/Kgである。また、前記アミノカルボン酸は、好ましくは、β−アラニン、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、及び6−アミノ−n−カプロン酸等のいずれかである。
尚、前記アミノ過カルボン酸含有水溶液は、安定剤としてジピコリン酸を0.0001〜2重量%含有することが好ましい。
【0006】
本発明のもう一つは、ラクタムを硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸等の強酸の水溶液中で加熱し、加水分解して該ラクタムに相応するアミノカルボン酸の該強酸の水溶液を得た後、該強酸水溶液に過酸化水素を添加することを特徴とするアミノ過カルボン酸含有水溶液の製造方法に関する。
この製造方法において、過酸化水素を添加する際に、アミノカルボン酸に対する強酸のモル比が、強酸として、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0になるように、強酸として、リン酸を用いる場合には、1.0〜4.0になるようにそれぞれ強酸の濃度を調製する必要がある。
前記ラクタムは、好ましくは、ε−カプロラクタム又はγ−ブチロラクタムである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液中において、アミノカルボン酸、過酸化水素、アミノ過カルボン酸、及び水は、平衡組成を形成しているが、硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸等の強酸は、該平衡反応の触媒として作用するだけでなく、該平衡組成物の保存安定性に極めて重要な影響を及ぼす。
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液は、次の(a)〜(d)成分を含有し、各成分は、次に示すような範囲内で調整される。
(a)次の一般式で表わされるアミノカルボン酸と、該アミノカルボン酸に相応するアミノ過カルボン酸との和は、0.5〜5.0モル/Kgであり、好ましくは、0.8〜3.5モル/Kgである。
H2N−R−COOH(Rは炭素数2〜8を有する直鎖のアルキレン基を表わす)
(b)過酸化水素は、1.0〜12.0モル/Kgであり、好ましくは、1.5〜10モル/Kgである。
(c)水は、10.0〜45.0モル/Kgであり、好ましくは、12.0〜40.0モル/Kgである。
(d)硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸から選ばれる少なくとも1種の強酸は、(d)成分として、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いる場合には、(a)成分に対するモル比で、0.4〜2.0の範囲であり、好ましくは、0.6〜2.0の範囲であり、(d)成分として、リン酸を用いる場合には、(a)成分に対するモル比で、1.0〜4.0の範囲であり、好ましくは、1.2〜3.0の範囲である。
【0008】
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液は、アミノカルボン酸、過酸化水素、強酸、及び水のそれぞれを、所望の比率で混合することによって調整することができるが、仕込み時のアミノカルボン酸、過酸化水素、及び強酸濃度が高い程、また水の濃度が低い程、高い濃度のアミノ過カルボン酸を得ることができる。
即ち、アミノ過カルボン酸の濃度は、仕込み時のアミノカルボン酸、過酸化水素、及び強酸濃度濃度を調整することによって、所望の濃度に調節することができる。
アミノ過カルボン酸の濃度は、0.05モル/Kg未満では実用上、有用ではなく、また、2.0モル/Kg以上の濃度では保存安定性が悪くなるという問題があり、アミノ過カルボン酸の濃度は、0.05〜2.0モル/Kgであることが好ましく、より好ましくは、0.08〜1.8モル/Kgである。
【0009】
保存安定性の良いアミノ過カルボン酸含有水溶液を得るためには、アミノカルボン酸等の前記(a)成分に対する、前記硫酸等の(d)成分のモル比が極めて重要であり、その比率は、(d)成分として、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0の範囲であり、(d)成分として、リン酸を用いる場合には、1.0〜4.0の範囲である。該比率が、前記比率よりも小さい時には、実用的な濃度のアミノ過カルボン酸を得ることができず、また前記比率よりも大きい時には、保存安定性の良いアミノ過カルボン酸含有水溶液を得ることはできない。
例えば、(d)成分として硫酸を用いた時、硫酸と過酸化水素とが反応して、カロ酸を生成する副反応が生起すると推定されるが、硫酸の添加量が多くなると、この副反応が起こりやすくなり、アミノ過カルボン酸含有水溶液の保存安定性を悪くする要因の一つになると推察される。
本発明において、アミノ過カルボン酸含有水溶液の安定性を高める目的で、安定剤としてジピコリン酸を0.0001〜2重量%含有させることが好ましい。
ジピコリン酸以外の安定剤では、その効果は不十分である。
【0010】
本発明のアミノカルボン酸は、炭素数2〜8のアルキレン基の両端にアミノ基とカルボキシル基が結合したアミノカルボン酸であり、次の一般式で示され、好ましくは、β−アラニン、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、及び6−アミノ−n−カプロン酸等である。
H2N−R−COOH(Rは炭素数2〜8を有する直鎖のアルキレン基を表わす)
α―アミノ酸やアルキレン基の両端でない炭素にアミノ基を有するアミノカルボン酸は、実用的な濃度のアミノ過カルボン酸を生成させることができない。また得られる生成物の保存安定性は悪い。
前記アルキレン基の炭素数が、8よりも大きくなると、水溶液への溶解度が低いため、反応は困難になる。
【0011】
強酸成分としては、硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸等を用いることができるが、強酸の種類によって、生成するアミノ過カルボン酸の濃度、及び得られる組成物の安定性が相違する。硫酸を用いた時、アミノ過カルボン酸の濃度が最も高く、また得られる組成物の安定性も最も良い。
【0012】
反応温度は、特に限定されないが、反応時間を短縮させる目的から、30〜80℃で反応を行うことが好ましく、より好ましくは、40〜60℃である。
反応時間は、反応温度、及び前記(a)成分に対する、前記(d)成分の比率によっても異なり、反応温度を高くする程、またモル比率を大きくする程、組成物が平衡に達するまでの時間は短く、反応時間は短くなる。通常は、2〜50時間で行われる。
【0013】
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液は、先に述べたように、アミノカルボン酸、過酸化水素、強酸、及び水のそれぞれを、所望の比率で混合することによって調製することができるが、調製に際し、アミノカルボン酸に対する強酸のモル比を、強酸として、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0の範囲に、またリン酸を用いる場合には、1.0〜4.0の範囲になるように調製すれば、先に述べた(a)成分に対する(d)成分のモル比の規定の範囲内に調製することができる。
【0014】
上記のようにアミノ過カルボン酸含有水溶液を得ることができるが、ラクタムを出発原料とすることにより、簡単かつ安価に該アミノ過カルボン酸含有水溶液を得ることができる。
その製造方法は、ラクタムを硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸等の強酸の水溶液中で加熱し、加水分解して該ラクタムに相応するアミノカルボン酸の該強酸水溶液を得、そこに過酸化水素、強酸、安定剤、及び水等を添加する方法である。
本発明においては、ラクタムの加水分解反応液中の強酸、或いはアミノカルボン酸等を分離することなしにそのまま反応に用いることができるため、極めて経済的にアミノ過カルボン酸含有水溶液を得ることができる。
【0015】
ラクタムの加水分解反応は、ラクタムを20〜50重量%、水を25〜60重量%、及び硫酸等の強酸を5〜50重量%の割合になるように添加、混合し、該混合物を80〜110℃の温度で、還流しながら、1〜10時間反応させることによって行うことができる。ラクタムのアミノカルボン酸への転換は、反応温度が高いほど、強酸のラクタムに対する比率が大きいほど、進行する。転換率は、用いる強酸の種類によっても異なり、メタンスルホン酸を用いた時、その転換率は最も高く、硫酸、リン酸の順で低くなる。ラクタムのアミノカルボン酸への転換率は、一般的には80〜100%である。未反応ラクタムが仮に存在しても、アミノ過カルボン酸の生成反応、及び該生成組成物の安定性には殆ど悪影響を及ぼさない。
上記反応条件で加水分解を行った後、反応液に過酸化水素、必要により強酸、水、安定剤等を先に示した組成を形成するような割合で添加、混合して反応させる。
尚、加水分解反応液と過酸化水素とを反応させる際には、アミノカルボン酸に対する強酸のモル比が、強酸として、硫酸、又はメタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0、またリン酸を用いる場合には、1.0〜4.0になるように強酸の添加量を調整することが重要である。
【0016】
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等を用いることができるが、ε−カプロラクタムを原料として用いた時には、6−アミノ-n−過カプロン酸含有水溶液を得ることができ、またγ−ブチロラクタムを用いた時には、4−アミノ過酪酸を得ることができる。
【0017】
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液は、望む場合に於いて本発明の目的を妨げない範囲で、界面活性剤、溶剤、可溶化剤、キレート剤、着色剤等の添加剤を添加、含有させることができる。
尚、本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液を繊維の漂白剤として使用するに際しては、通常、該アミノ過カルボン酸含有水溶液を水で希釈して用いる。また、漂白効果を上げるためにアルカリ剤を添加してpHを4〜10に調整するのが好ましい。
本発明のアミノ過カルボン酸含有水溶液は、原液のまま、或いは水等で希釈して、漂白剤、殺菌剤、漂白洗浄剤、或いはカビ取り剤等として有利に使用できる。
【0018】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例をもって本発明を説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1及び比較例1〜2
次のアミノ酪酸(4−アミノ酪酸、DL−2−アミノ酪酸、及びDL−3−アミノ酪酸)をそれぞれの試験管に1g(0.0097モル)取り、それぞれに、60重量%過酸化水素水を2g(H2O2 0.0353モル)、97重量%硫酸は、アミノ酪酸に対して等モル量(97重量%硫酸を1g<H2SO4 0.01モル>)、及び安定剤として、ジピコリン酸を0.002gを加え、混合、溶解して室温で反応させた。各反応の所定時間(0時間(仕込み時)、2時間、24時間、10日、及び30日)経過後の反応液の組成を表1〜表3に示す。(表中における濃度は、モル/Kgである。)
アミノ酪酸として、4−アミノ酪酸を用いた時には、DL−2−アミノ酪酸、又はDL−3−アミノ酪酸を用いた時と比較し、高濃度のアミノ過カルボン酸を得ることができ、またその保存安定性も極めて良好である。
尚、下記の表1〜表6において、次の略号を用いる。
アミノカルボン酸 :ACA
アミノ過カルボン酸:PACA
【0019】
また、アミノ過カルボン酸含有水溶液中のアミノ過カルボン酸濃度、及び過酸化水素の濃度は、次のように分析して求めた。
アミノ過カルボン酸含有水溶液を0.1〜0.3g精量し(Sg)、水で約50mlに希釈し、氷片を加えて冷却後、20%ヨウ化カリウムを約2ml加え、デンプン溶液を指示薬として、すばやくN/10チオ硫酸ナトリウム(ファクター f)で滴定する(Aml)。硫酸(1+4)約10ml、20%ヨウ化カリウム約5ml、モリブデン酸アンモニウム溶液を2〜3滴加え、5分間暗所に放置後、N/10チオ硫酸ナトリウムで滴定する(Bml)。
アミノ過カルボン酸(モル/Kg)= A×f×0.05/S
過酸化水素(モル/Kg)= B×f×0.05/S
【0020】
【表1】
Figure 0004084434
【0021】
【表2】
Figure 0004084434
【0022】
【表3】
Figure 0004084434
【0023】
実施例2及び比較例3
アミノカルボン酸として、アミノカプロン酸(6−アミノ−n−カプロン酸、2−アミノイソカプロン酸)を用いた以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、表4〜表5の結果を得た。
アミノカプロン酸として、6−アミノ−n−カプロン酸を用いた時には、2−アミノイソカプロン酸を用いた時に比較し、高濃度のアミノ過カルボン酸を得ることができ、またその保存安定性も極めて良好である。
【0024】
【表4】
Figure 0004084434
【0025】
【表5】
Figure 0004084434
【0026】
比較例4
アミノカルボン酸として、グリシンを用いた以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、表6の結果を得た。
【表6】
Figure 0004084434
【0027】
実施例3
β―アラニン(3―アミノプロピオン酸)15.1g、60%過酸化水素水9.2g、97%硫酸18.4g、ジピコリン酸0.01g及び水14.4gを混合溶解させた。この溶液(反応前)は、β―アラニンが2.96モル/Kg、過酸化水素が2.84モル/Kg及び硫酸が3.19モル/Kg含有する。この溶液を50℃に加温、24時間反応させた。反応後の溶液は,3−アミノ過プロピオン酸を0.36モル/Kg、過酸化水素を2.50モル/Kgの濃度で含有した。この3−アミノ過プロピオン酸含有水溶液を50℃で7日間貯蔵した後の3−アミノ過プロピオン酸の濃度は0.35モル/Kg、過酸化水素の濃度は、2.40モル/Kgであり、3−アミノ過プロピオン酸の安定度は、97%、全過酸化物成分の安定度は、96%であった。
【0028】
実施例4〜8
6−アミノ−n−カプロン酸、60%過酸化水素水、97%硫酸、及び水の各成分を、表7に示す濃度になるようにそれぞれを調整し、混合溶解させて、50℃で6時間反応させた。尚、何れの反応においても、安定剤としてジピコリン酸を0.02重量%添加した。
反応後に得られた、6−アミノ−n−過カプロン酸含有水溶液の組成、及びこの組成物を50℃で7日間貯蔵(安定度試験)した後の該組成物の組成等を表7に示す。
【0029】
【表7】
Figure 0004084434
【0030】
比較例5
6−アミノ−n−カプロン酸 16.5g、60%過酸化水素水19.6g、97%硫酸4.9 g、ジピコリン酸0.01g及び水9.7gを混合溶解させた。この溶液(反応前)は6 −アミノ−n―カプロン酸2.5モル/kg、過酸化水素6.8モル/kg及び硫酸0.96モル/kgを含有し、硫酸/6−アミノ-n-カプロン酸のモル比は0.39である。この 溶液を50℃に加温し、6時間反応させた。
反応後の溶液は、6−アミノ−n−過カプロン酸を0.10モル/kg、過酸化水素を6.7モル/kg含有した。この溶液を50℃で7日間貯蔵した後の6―アミノ−n―過 カプロン酸濃度は0.03モル/kg、過酸化水素濃度は3.55モル/kgであり、6−ア ミノ−n−過カプロン酸の安定度は30%、全過酸化物成分の安定度は53%であった。
このように硫酸/6−アミノ−n−カプロン酸のモル比が本発明の範囲以下では、生成する6−アミノ−n−過カルボン酸濃度は低く、またその安定性も低い。
【0031】
比較例6
6−アミノ−n−カプロン酸 12g、60%過酸化水素水13g、97%硫酸29g、ジピコリン酸0.011gを混合溶解させた。この溶液(反応前)は、6−アミノ−n−カプロン酸1.7モル/kg、過酸化水素4.2モル/kg及び硫酸5.3モル/kgを含有し、硫酸/6−アミノ−n−カプロン酸のモル比は3.1である。この溶液を50℃に加温し、6時間反応させた。
反応後の溶液は、6−アミノ−n−過カプロン酸を1.69モル/kg、カロ酸を0.82モル/kg、過酸化水素を1.6モル/kg含有した。この溶液を50℃で7日間貯蔵した後の6−アミノ−n−過カプロン酸濃度は0.60モル/kg、カロ酸濃度は0.01モル/kg、過酸化水素濃度は0.2モル/kgであり、6−アミノ−n−過カプロン酸の安定度は36%、全過酸化物成分の安定度は20%であった。
このように硫酸/6−アミノ−n−カプロン酸のモル比が本発明の範囲以上では、生成した6−アミノ−n−過カルボン酸の安定性は低い。
アミノ過カルボン酸含有水溶液中のカロ酸濃度は次のようにして求めた。
アミノ過カルボン酸含有水溶液を0.1〜0.5g精秤し(Sg)、水で約100mlに希釈し、N/10水酸化ナトリウム(ファクター f)による中和滴定曲線のpH約6の変曲点とpH約8.5の変曲点の間の滴定量(Cml)からアミノ過カルボン酸の1/2硫酸塩を求め、ヨードメトリーによる分析値から、この中和滴定による分析値を差し引いた値をカロ酸濃度とした。
カロ酸(モル/kg)=ヨードメトリーによるアミノ過カルボン酸(モル/kg)−(C×f×0.1/S)尚、実施例においては、ヨードメトリーによる分析値をそのままアミノ過カルボン酸の濃度としたが、上の方法で分析した実施例6及び実施例8における反応直後の6−アミノーn―過カルボン酸含有水溶液中のカロ酸濃度は、実施例6では0.03モル/kg、実施例8では、0.02モル/kgであり、カロ酸の濃度は、上記比較例に比べて低く、本発明においては、カロ酸はほとんど生成していないことがわかる。
【0032】
実施例9
6−アミノ−n−カプロン酸 2.29モル/Kg、過酸化水素 1.98モル/Kg、及び硫酸 2.10モル/Kgを含有する水溶液を調製し、そこに表9に示す安定剤を、それぞれ所定量添加した後、50℃で20時間反応させた。得られた反応組成物を更に50℃で7日間貯蔵して、6−アミノ−n−過カプロン酸(PACpA)、及び全過酸化物の安定度試験(残存率の測定)を行った。その結果を表8に示す。
ジピコリン酸が安定剤として、優れていることが分かる。
【0033】
【表8】
Figure 0004084434
【0034】
実施例10
6−アミノ−n−カプロン酸 10g、60%過酸化水素水 10.2g、85%リン酸 12.7g、ジピコリン酸 0.01g及び水 17.5gを混合溶解させた。この溶液(反応前)は、6−アミノ−n−カプロン酸が1.51モル/Kg、過酸化水素が3.57モル/Kg及びリン酸が2.19モル/Kg含有する。この溶液を50℃に加温、20時間反応させた。反応後の溶液は,6−アミノ−n−過カプロン酸を0.51モル/Kg、過酸化水素を2.97モル/Kgの濃度で含有した。この6−アミノ−n−過カプロン酸含有水溶液を50℃で7日間貯蔵した後の6−アミノ−n−過カプロン酸の濃度は0.49モル/Kg、過酸化水素の濃度は、2.86モル/Kgであり、6−アミノ−n−過カプロン酸の安定度は96%、全過酸化物成分の安定度は、96%であった。
【0035】
実施例11
6−アミノ−n−カプロン酸 6g、60%過酸化水素水 20.1g、メタンスルホン酸 8.8g、ジピコリン酸 0.01g及び水 15.4gを混合溶解させた。この溶液(反応前)は、6−アミノ−n−カプロン酸が0.91モル/Kg、過酸化水素が7.06モル/Kg及びメタンスルホン酸が1.82モル/Kg含有する。この溶液を50℃に加温、20時間反応させた。反応後の溶液は,6−アミノ−n−過カプロン酸を0.41モル/Kg、過酸化水素を6.63モル/Kgの濃度で含有した。この6−アミノ−n−過カプロン酸含有水溶液を50℃で7日間貯蔵した後の6−アミノ−n−過カプロン酸の濃度は0.38モル/Kg、過酸化水素の濃度は、6.13モル/Kgであり、6−アミノ−n−過カプロン酸の安定度は93%、全過酸化物成分の安定度は、93%であった。
【0036】
実施例12
γ―ブチロラクタム17.2gに水を22.5g加え、これに97%硫酸15.9gを冷却、撹拌しながら徐々に加えた。この溶液を、撹拌機、温度計、還流冷却器の付いたフラスコ中で、105〜107℃で4.5時間反応させた。得られた反応溶液には、4―アミノ酪酸が35重量%、未反応γ―ブチロラクタムが1.4重量%、硫酸が27重量%含有されていた。この4―アミノ酪酸の硫酸水溶液を27.1g、60%過酸化水素水を5.8g及びジピコリン酸を0.01g加え撹拌しながら50℃で6時間反応させた。反応後の溶液には、4−アミノ過酪酸が0.48モル/Kg、過酸化水素が2.75モル/Kg含有されていた。
得られた4−アミノ過酪酸含有水溶液を、50℃で7日間貯蔵した後の4−アミノ過酪酸の濃度は0.52モル/Kgであり、また、全過酸化物成分の残存率は97.1%であった。
【0037】
実施例13
ε―カプロラクタム149gに水を138g加え、これに97%硫酸86.1gを冷却、撹拌しながら徐々に加えた。この溶液を、撹拌機、温度計、還流冷却器の付いたフラスコ中で、105〜107℃で.5時間反応させた。得られた反応液には、6―アミノーn―カプロン酸が45重量%、未反応ε―カプロラクタムが0.5重量%、硫酸が22重量%含有されていた。この6―アミノーn―カプロン酸の硫酸水溶液を32.1g、60%過酸化水素水を14.9g、97%硫酸を3.0g及びジピコリン酸を0.01g加え撹拌しながら50℃で24時間反応させた。反応後の溶液には、6―アミノーn―過カプロン酸が0.91モル/Kg、過酸化水素が4.35モル/Kgの濃度で含有されていた。
得られた6―アミノーn―過カプロン酸含有水溶液を50℃で7日間貯蔵した後の6―アミノーn―過カプロン酸の濃度は0.91モル/Kgであり、また、全過酸化物成分の残存率は97.7%であった。
【0038】
実施例14、及び比較例7〜9
実施例13で調製した6−アミノ−n−過カプロン酸含有水溶液、過酢酸含有水溶液、過酸化水素水、及び過炭酸ナトリウムを用いて下記の方法で漂白試験を行い、表9の結果を得た。
〔漂白試験〕
6−アミノ−n−過カプロン酸含有水溶液と過酢酸含有水溶液は、有機過酸分の有効酸素が0.005%になるように、過酸化水素水と過炭酸ナトリウムは、過酸化水素分の有効酸素が0.07%になるように、水で希釈して用いた。pH調整は、水酸化ナトリウム水溶液で行った。
調製した漂白液100mlに紅茶汚染布(8×8cm、2枚)を20℃で30分間浸漬し、漂白を行った。漂白後の布は水洗、乾燥、プレス後、色差計によって反射率を測定し、次式から漂白率を算出した。
紅茶汚染前白布の反射率:W0
漂白前の反射率 :W1
漂白後の反射率 :W2
漂白率(%)=(W2−W1)/(W0−W1)×100
【0039】
【表9】
Figure 0004084434
【0040】
実施例15〜16、及び比較例10
実施例13で調製した6―アミノーn―過カプロン酸含有水溶液、過酸化水素水を用いて下記の方法で殺菌試験を行い、表11の結果を得た。
〔殺菌試験〕
下水処理場汚水500mlに6―アミノーn―過カプロン酸含有水溶液と過酸化水素水をそれぞれ所定量にの濃度になるように添加し、室温で所定時間攪拌接触させた溶液中の大腸菌群と一般細菌を、下水試験法(下水道法)に記載されている大腸菌群(デスオキシコール酸塩培地による平板培養法)、及び一般細菌(普通寒天培地による平板培養法)に準じて算出し、殺菌効果(生存率)を次の式より求めた。
生存率(%)=(殺菌処理液中の菌数)/(殺菌処理前の菌数)×100
尚、殺菌処理前の菌数は、大腸菌群が8,700個/ml、一般細菌が610,000個/mlであった。
【0041】
【表10】
Figure 0004084434
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単かつ安価な方法で、長期間安定に保存することができるアミノ過カルボン酸の水溶液を得ることができるため、該アミノ過カルボン酸の水溶液を漂白、殺菌、或は洗浄等の用途に有利に使用することができる。

Claims (7)

  1. 下記の(a)〜(d)の成分
    (a)次の一般式で表わされるアミノカルボン酸と、該アミノカルボン酸に相応するアミノ過カルボン酸との和 0.5〜5.0モル/Kg
    H2N−R−COOH(Rは炭素数2〜8を有する直鎖のアルキレン基を表わす)
    (b)過酸化水素 1.0〜12.0モル/Kg
    (c)水 10.0〜45.0モル/Kg
    (d)硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸から選ばれる少なくとも1種の強酸を含有し、(a)成分に対する(d)成分のモル比が、(d)成分として、硫酸、又は メタンスルホン酸を用いる場合には、0.4〜2.0であり、(d)成分として、リン酸 を用いる場合には、1.0〜4.0である安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤
  2. 前記アミノ過カルボン酸の濃度が、0.05〜2.0モル/Kgである請求項1のアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤
  3. 前記アミノカルボン酸が、β−アラニン、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、及び6−アミノ−n−カプロン酸いずれかである、請求項1〜2のアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤
  4. 安定剤としてジピコリン酸を0.0001〜2重量%含有する、請求項1〜3のアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む漂白剤
  5. 下記の (a) (d) の成分
    (a) 次の一般式で表わされるアミノカルボン酸と、該アミノカルボン酸に相応するアミノ過カルボン酸との和 0.5 5.0 モル /Kg
    2 N−R−COOH ( Rは炭素数2〜8を有する直鎖のアルキレン基を表わす )
    (b) 過酸化水素 1.0 12.0 モル /Kg
    (c) 10.0 45.0 モル /Kg
    (d) 硫酸、メタンスルホン酸、又はリン酸から選ばれる少なくとも1種の強酸を含有し、 (a) 成分に対する (d) 成分のモル比が、 (d) 成分として、硫酸、又は メタンスルホン酸を用いる場合には、 0.4 2.0 であり、 (d) 成分として、リン酸 を用いる場合には、 1.0 4.0 である安定なアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む殺菌剤。
  6. 前記アミノ過カルボン酸の濃度が、 0.05 2.0 モル /Kg である請求項5のアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む殺菌剤。
  7. 前記アミノカルボン酸が、β−アラニン、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、及び6−アミノ− n −カプロン酸のいずれかである、請求項5〜6のアミノ過カルボン酸含有水溶液を含む殺菌剤。
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