JP4084029B2 - 未加硫ゴム部材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、未加硫ゴム部材の製造方法に関し、より詳細には、2種以上の未加硫ゴム組成物を別々に押出し、回転する支持体上に巻回することを特徴とする未加硫ゴム部材の製造方法に関する
【0002】
【従来の技術】
一般に、各種ゴムを有する複合体は、製造に際し、複合体の加硫前に各種の未加硫ゴム部材を貼り合わせる工程を必要とする。この複合体が空気入りタイヤ(以下、タイヤという)の場合、タイヤは、有機繊維又はスチールコードからなる補強部材と、各種のゴム部材とからなっている。従って、タイヤの加硫前に、成形工程にて、未加硫ゴム部材とコード等の補強部材とを貼り合わせた未加硫タイヤを用意する。
【0003】
ところが、今日では、タイヤを含むゴム複合体に対する要求性能は益々高度化し、多様化の傾向を示している。そのため、成形工程も複雑にならざるを得ず、依然として、人手による作業を必要としているのが現状である。しかし、成形工程に人手による作業が入ると、成形効率の大幅向上は達成できず、また、各種部材の貼付け精度が低下するという問題もある。特に、タイヤの場合、貼付け精度の良否はタイヤの品質を左右するため、成形効率向上と共に、貼付けの精度向上が強く望まれている。
【0004】
そこで、これらの要望に応えるために、特公平7-94155号公報では、回転する支持体上にゴム部材を配置する位置近傍に、定容押出機の出口オリフィスを位置させ、定容押出機から出口オリフィスを介し、支持体上にゴム組成物を直接押出す方法、及び装置を提案している。また、特開2000-79643号公報では、複数のゴム組成物を1台の押出し装置で、混合しながら支持体上に該ゴム組成物を直接押出す方法及び装置を提案している。
【0005】
ところが、上記公報の押出し方法では、成形効率を上げようとして押出し速度を速くした場合、ゴム組成物は押出機内での摩擦によって発熱し、スコーチ(予期しないところで加硫を起こしてしまう現象)を起こす恐れが大きくなるという問題があった。これに対し、成形速度を落として押出機内での摩擦を低減しようとすると成形効率が落ちるという問題があり、有効な解決手段とはなり得なかった。
【0006】
また、加硫促進剤の種類の選択や、加硫剤(硫黄)・加硫促進剤の量を少なくする等の手段で、加硫速度を遅くすると、スコーチは起こりにくくなるが、この場合は加硫時間を長くする必要があるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来技術における諸問題を解決し、成形工程でスコーチを発生させず、かつ成形効率が高い未加硫ゴム部材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
(1) 加硫剤を除いた配合系からなるゴム組成物Aと、加硫促進剤を除いた配合系からなるゴム組成物Bとを別々に製造し、前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとをそれぞれ所望の形に成形機で成形しつつ、回転する支持体上で巻回することを特徴とする未加硫ゴム部材の製造方法である。
(2) 前記成形機が押出機であることを特徴とする前記(1)に記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
(3) 成形後のゴム組成物A及び/又はBの形状が、シート状、リボン状、ひも状の何れか一つであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
(4) 成形後のゴム組成物A及び/又はBをらせん状に巻回してなることを特徴とする前記(1)から(3)の何れかに記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
【0009】
(5) 成形後のゴム組成物A及びBを、回転する支持体上で巻回する前に冷却することを特徴とする前記(1)から(4)の何れかに記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
(6) 未加硫ゴム部材における前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとの存在比率を適宜変動させることを特徴とする、前記(1)から(5)の何れかに記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
(7) 未加硫ゴム部材における前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとの存在比率を支持体の幅方向で適宜変動させることを特徴とする、前記(1)から(5)の何れかに記載の未加硫ゴム部材の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来、未加硫ゴム組成物は、原料ゴムの他、補強剤、軟化剤、活性剤、老化防止剤、作業性改良剤、加硫剤と加硫促進剤とを含んでいた。この未加硫ゴム組成物は、該未加硫ゴム組成物を所望の形状に成形した後、または、例えばコード等の補強材料と成形後の該未加硫ゴム組成物とを貼り合わせた未加硫ゴム部材を成形した後、加熱により加硫させて十分な強度を有する部材となっていた。従って、加硫工程前に、未加硫ゴム組成物に例えば成形工程の摩擦等によって熱が加わると、加硫剤と加硫促進剤とを含んでいるため、予期せぬスコーチが発生する可能性があった。
【0012】
これに対し、本発明では、上記従来の配合系から加硫剤を除いた配合のゴム組成物Aと、上記従来の配合系から加硫促進剤を除いた配合のゴム組成物Bとを別々に製造する。従って、これらのゴム組成物A及びゴム組成物Bには、加硫剤又は加硫促進剤の何れかが存在しないため、成形工程において摩擦により発熱があってもスコーチは発生しない。
【0013】
本発明に係わるゴム組成物に用いる原料ゴムとしては、SBR、NR、BR、ブチルゴム等が挙げられる。これらの原料ゴムは、1種単独でも複数種のブレンドでもよい。補強剤としては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。加硫剤、加硫促進剤及びその他の添加剤としては、ゴム業界で通常使用されるあらゆるものが配合できる。但し、加硫促進剤の内、チラウム類は単独で加硫可能なため、ゴム組成物A及びBへの適用を除外する。
【0014】
上述した従来の配合組成からなるゴム組成物を用いて未加硫ゴム部材を製造する際に、成形機の中で一旦スコーチが発生すると、成形装置を分解し、装置内を掃除しなければならないだけでなく、装置の故障原因にもなり得るという問題があった。これに対し、本発明では、複数の成形機を用意して、各々に単独では加硫しないゴム組成物、即ち、加硫剤を除いた配合系からなるゴム組成物Aと、加硫促進剤を除いた配合系からなるゴム組成物Bとを、これら成形機に別々に供給して押出すので、成形機内での摩擦により発熱があってもスコーチの発生を回避することができ、スコーチ発生による装置の分解・掃除、更には装置の故障という従来の問題点を解決することができる。
【0015】
本発明では、前述の通り、スコーチの発生が防止できるため、複数の成形機からこれらゴム組成物A及びBを機械的能力まで充分な押出し速度で成形することが可能であり、成形時の生産効率を大幅に向上させることができる。
また、加硫剤・加硫促進剤の配合量を減ずる手段をとる必要がなくなり、加硫時間が長くなるという問題も生じない。
【0016】
本発明では、ゴム組成物Aとゴム組成物Bとをそれぞれ成形し、支持体上で巻回せしめることにより、成形した未加硫ゴム部材は、次の加硫工程において架橋可能なゴム組成物となっている。従って、加硫工程において、加熱により加硫剤/加硫促進剤の熱拡散が起こると、両方のゴム組成物を加硫させることが可能である。
【0017】
従って、十分な熱拡散を行うためには、ゴム組成物A及びBは、本来の配合を補償するに十分な量の加硫剤又は加硫促進剤を配合するのが好ましい。特に、ゴム組成物Aは2倍量の加硫促進剤を含有し、ゴム組成物Bは2倍量の加硫剤を含有するのが好ましい。
【0018】
加硫剤/加硫促進剤の熱拡散距離を考慮すると、各ゴム組成物の成形体の厚さは2mm以下が好ましい。また、これらゴム組成物の巻回時に完全に重ね合わせることは難しいが、加硫剤/加硫促進剤が熱拡散する範囲内であれば問題はないため、重ね合わせのズレも2mm以下が好ましい。
【0019】
本発明では、上記の通り、加硫工程での加硫剤/加硫促進剤の熱拡散により、架橋可能なゴム組成物としてあるため、成形機からの押出し直後のかなり温度の高い状態で2種のゴム組成物成形体が接触すると、加硫剤/加硫促進剤の熱拡散が起こり、加硫(架橋)が始まってしまう恐れがある。このため、ゴム組成物成形体を支持体上に巻回する前に、該成形体を急速に90℃程度、好ましくは70℃以下まで冷却するのが好ましい。
【0020】
本発明では押出機等の成形機からゴム組成物を押出成形した後、ゴム組成物成形体を支持体上に巻回する。この場合、成形後のゴム組成物の形状は、所望の形状を形成できるものであれば特に制約はなく、シート状、リボン状、ひも状等の何れであってもよい。
【0021】
巻回方法としては、らせん巻回が好ましいが、成形体の形状によっては、これに限定されるものではない。例えば、図1(a)に示すような平面状の積層体のらせん巻回、図1(b)に示すような傾斜したらせん巻回、図1(c)に示すようなシート状成形体へのリボン状成形体のらせん巻回、又は図1(d)に示すように支持体外周面に対して垂直に貼り合せたもののらせん巻回等がある。
【0022】
また、本発明でゴム組成物を押出すのに使用する成形機としては、押出機等が挙げられ、成形機を複数使用することにより、ゴム組成物Aとゴム組成物Bとを別々に支持体上に巻回することが可能となる。
【0023】
本発明では、未加硫ゴム部材内で、ゴム組成物A及びBからなる未加硫ゴム部材内でのこれらゴム組成物の存在比率を適宜変動させることができる。変動の方法としては、ゴム組成物成形体A及びBの厚さの比率を変動させる、何れか一方の成形体の巻回数を変える等の方法がある。
【0024】
また、本発明では、支持体の幅方向でみて未加硫ゴム部材中のゴム組成物A及びBの存在比率を適宜変動させることもできる。変動の方法としては、例えば、図1(d)に示すようにゴム組成物A又はBが密な部分と、ゴム組成物A又はBが疎な部分とを適宜設けることによって実現できる。
【0025】
次に、本発明の製造装置の一実施態様を、図2を参照しながら更に詳しく説明する。
図2において、支持体1を、図示を省略した回転駆動源の駆動により回転する軸に取付ける。支持体1は、成形ドラム、成形ドラム上に一部の未加硫ゴム部材や未加硫ゴム被覆コード等を巻付けた成形途中体、及び更生用台タイヤ等である。
【0026】
本発明の装置においては、複数の押出機、図2に示す例では2つの押出機2a、2bを備える。ゴム組成物Aを押出機2aから押出し、ゴム組成物Bを押出機2bから押出し、これら成形体A及びBを支持体1上に巻回する。
【0027】
ここで、2種のゴム組成物成形体A及びBが、前述のように押出し直後のかなり温度の高い状態で接触すると、加硫剤/加硫促進剤の熱拡散が起こり、加硫が始まってしまう恐れがあるため、押出機を出たゴム組成物成形体A及びBを支持体1上に巻回する前に、該成形体を急速に90℃程度、好ましくは70℃以下まで冷却する冷却装置3a及び3bを備えるのが好ましい。冷却装置3a及び3bを押出機2a及び2bと支持体1の間に配置する。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0029】
実施例1
表1の配合に従い、加硫剤を除いたゴム組成物A、及び加硫促進剤を除いたゴム組成物Bを調製した。
次に、図2に示す装置を用いて、ゴム組成物A及びゴム組成物Bを押出機2a及び2bからそれぞれ押出し、回転支持体1上に巻回して未加硫ゴム部材を成形した。
【0030】
比較例1
表1の配合に従い、従来のゴム組成物Cを調製した。
次に、これを一つの押出機で押出し、回転支持体1上に巻回して未加硫ゴム部材を成形した。
【0031】
【表1】
Figure 0004084029
【0032】
実施例1では、各ゴム組成物の成形工程でスコーチは見られず、良好であったが、比較例1では、ゴム組成物の成形工程中にスコーチが観測された。この結果から、本発明の製造方法及び製造装置によれば、スコーチの発生を防止できることが確認できた。
【0033】
【発明の効果】
成形機で成形すべき未加硫ゴム組成物を、加硫剤及び加硫促進剤の何れかを除いた配合系とすることにより、成形時の摩擦による発熱によるスコーチの発生を防止することができるため、成形の生産効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴム組成物の巻回状態を示す部分断面図である。
【図2】 本発明の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 支持体
2a、2b 押出機
3a、3b 冷却装置
A ゴム組成物Aの成形体
B ゴム組成物Bの成形体

Claims (7)

  1. 加硫剤を除いた配合系からなるゴム組成物Aと、加硫促進剤を除いた配合系からなるゴム組成物Bとを別々に製造し、前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとをそれぞれ所望の形に成形機で成形しつつ、回転する支持体上で巻回することを特徴とする未加硫ゴム部材の製造方法。
  2. 前記成形機が押出機であることを特徴とする請求項1に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
  3. 成形後のゴム組成物A及び/又はBの形状が、シート状、リボン状、ひも状の何れか一つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
  4. 成形後のゴム組成物A及び/又はBをらせん状に巻回してなることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
  5. 成形後のゴム組成物A及びBを、回転する支持体上で巻回する前に冷却することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
  6. 未加硫ゴム部材における前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとの存在比率を適宜変動させることを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
  7. 未加硫ゴム部材における前記ゴム組成物Aと前記ゴム組成物Bとの存在比率を支持体の幅方向で適宜変動させることを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の未加硫ゴム部材の製造方法。
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