JP4083473B2 - 難消化吸収性甘味糖質の副作用予防剤 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラクトマンナン分解物を難消化吸収性甘味糖質と共に摂取することにより、難消化吸収性甘味糖質の副作用を予防する予防剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、健康志向の増大から、シュガーレス・低カロリー商品のニーズが活発化しており、砂糖の代替品として、難消化吸収性甘味糖質が広く利用されている。
この難消化吸収性甘味糖質は消化吸収されない、または消化吸収されにくいことから、一定量以上まとめて摂取すると、腹部の膨満感、ゲップ、放屁、腹痛や急激な軟便化といった副作用を誘発するため、これらの糖質を利用した加工食品を設計、加工する場合に大きな問題となっている。
これまでに奥や小泉らにより難消化吸収性甘味糖質について素材ごとに最大無作用量が報告されており、商品設計する上で一つの基準となっている。例えば、ラクチトールで0.075g/体重kg、ソルビトールで0.15g/体重kg、ラクチュロースで0.26g/体重kg、マルチトールで0.30g/体重kgとなっている。体重50kgとすれば、ラクチトールで3.75g、ソルビトールで7.5g、ラクチュロースで13.0g、マルチトールで15.0gとなる。これらの量から、市場に多く出ている500mlのペットボトル飲料を作る場合を想定すると100ml当たりの量は、ラクチトールで0.75g、ソルビトールで1.5g、ラクチュロースで2.6g、マルチトールで6gとなり、非常に少ない量で副作用が誘発される可能性があることがわかる。今後、さらに難消化吸収性甘味糖質を含有したさまざまな食品が、開発され、それらを組み合わせて摂取する機会が増えることで、摂取量が最大無作用量を超え、副作用が誘発される危険性が非常に高くなると考えられるため、この副作用を予防する方法の必要性は非常に高いものである。
【0003】
難消化吸収性甘味糖質の副作用を予防する方法に関して、いくつかの報告がある。例えば、砂糖と難消化吸収性甘味糖質を混合し難消化吸収性甘味糖質の量を減らした方法(特開2001−72594)、素材ごとに最大無作用量を求め添加量を制限する方法(食品と開発,Vol.35,No2,p7−9,2000)や難消化吸収性甘味糖質の摂取方法を検討したもの(日本栄養・食糧学会誌,Vol.52,No.4,p201−208,1999)等がある。しかし、従来の方法では副作用予防効果が弱く、個人差もあるため、この問題を根本的に解決するに至っていない。即ち、従来にない難消化吸収性甘味糖質の副作用予防剤であり、かつ、各種飲食物に簡単に幅広く応用できる安全な難消化吸収性甘味糖質の副作用予防剤の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガラクトマンナン分解物を難消化吸収性甘味糖質と同時に摂取することにより、難消化吸収性甘味糖質の副作用を予防する予防剤に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、難消化吸収性甘味糖質が原因でおこる副作用を予防することを目的として鋭意研究を重ねた結果、ガラクトマンナン分解物が上記目的課題を解決することを見い出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、ガラクトマンナン分解物を含有することを特徴とする副作用の予防剤である。
【0006】
【実施の形態】
本発明に使用するガラクトマンナン分解物は、ガラクトマンナンを主成分とするグアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガム等の天然粘質物、好ましくは、グアーガム、ローカストビーンガム、セスバニアガム、さらに好ましくはグアーガム、ローカストビーンガムを加水分解し低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては、酵素分解法、酸分解法等、特に限定するものではないが、分解物の分子量が揃い易い点から酵素分解法が好ましい。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾープス属菌等に由来するβ−マンナナーゼが好ましい。
【0007】
本発明に使用されるガラクトマンナン分解物は、2,000〜1,000,000の平均分子量を持つこと、及び0.5%水溶液の粘度がB型粘度計を用いて測定した時、25℃で50mPa・s以下であることが望ましい。好ましくは、30mPa・s以下、さらに好ましくは、10mPa・s以下である。平均分子量2,000以上であれば本発明の副作用改善効果を有するが、一方、平均分子量が1,000,000を超えると、粘度が高く食品に加工する場合に不都合が生じる場合が多いため、ガラクトマンナン分解物平均分子量は、2,000〜1,000,000である事が望ましい。特に好ましくは8,000〜100,000、さらに好ましくは、15,000〜25,000である。市販品としては、サンファイバー(太陽化学(株)製)、ファイバロン(大日本製薬(株)製)などが挙げられる。
【0008】
平均分子量の測定方法は、特に限定するものではないが、ポリエチレングリコール(分子量;2,000、20,000、100,000)をマーカーに高速液体クロマトグラフ法(カラム;YMC−Pack Diol−120(株)ワイエムシィ)を用いて、分子量分布を測定する方法等を用いることにより求めることができる。
当該副作用予防剤の各種飲食物への添加方法は、特に限定されるものではなく、あらかじめ原材料に添加したり、その製造工程中で添加したり、調理中に添加したり、喫食時に添加するなどが挙げられる。
【0009】
ガラクトマンナン分解物を有効成分とする副作用予防剤は、ガラクトマンナン分解物を含有すればその含有量については特に限定されるものではないが、そのままで使用したり、アミノ酸、ペプチド、デキストリン等の賦形剤を使用したり、形態は、液状、粉末等でも使用できる。
本発明の副作用予防剤の添加量は、特に限定されるものではないが、また添加量は対象とする難消化吸収性甘味糖質によって変動するが、難消化吸収性甘味糖質に対し予防効果が期待されるガラクトマンナン分解物の有効量は、難消化吸収性甘味糖質一部に対して1/1,000部以上、好ましくは1/100部以上、さらに好ましくは1部以上のガラクトマンナン分解物が確保し得る量が好ましい。
【0010】
本発品の副作用予防剤の併用物質としては、特に限定されるものではないが、アミノ酸、ペプチド、デキストリン、食物繊維などが挙げられ、好ましくは、デキストリン、アミノ酸、食物繊維、さらに好ましくは、デキストリン、食物繊維である。
難消化吸収性甘味糖質の副作用とは、難消化吸収性甘味糖質のような消化吸収されない、あるいは消化吸収されにくいものを、ある量以上まとめて摂取すると誘発される腹部の膨満感、ゲップ、放屁、腹痛や急激な軟便化といった副作用のことである。これらの特徴としては、その原因物質の摂取を中断すると改善されることである。
難消化吸収性甘味糖質とは、糖アルコール類、難消化性オリゴ糖類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等、難消化性の甘味をもつ糖質である。
【0011】
糖アルコール類とは、糖類の分子に水素を添加することにより、得られたアルコール基(−OH)をもつ糖質である。例えばソルビトール、還元水あめ、マルチトール、エリスリトール、還元パラチノース、ラクチトール、マンニトール、キシリトール等がある。好ましくは、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、還元パラチノース、ラクチトール、キシリトール、さらに好ましくは、ソルビトール、ラクチトールである。
難消化性オリゴ糖とは、構成糖が、分子2〜10鎖状から成る難消化性の糖質である。例えば、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等がある。好ましくは、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、さらに好ましくは、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖である。
【0012】
本発明のガラクトマンナン分解物が、いかなる理由により、難消化吸収性甘味糖質の副作用誘発を予防するかについては、明確な作用メカニズムは解明されていないが、ガラクトマンナン分解物の有する粘度などの作用による糖質の胃から腸へのソフトリリースによる急激な腸内環境の変化の抑制(浸透圧等)、腸内で生産される短鎖脂肪酸による水の吸収性の増加や腸内絨毛の萎縮改善効果などが考えられる
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するがこれにより限定されるものではない。
【0013】
【実施例】
実施例1
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4.5に調整し、これにアスペルギルス属由来のβ−マンナナーゼ(阪急バイオインダストリー製)0.2gとグアーガム粉末(Lucid製)100gを添加混合して40〜45℃で24時間酵素を作用させた。反応後90℃、15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(エバポレーター;Yamato製)した後(固形分20%)、噴霧乾燥(大川原化工機(株))し、本発明品の飲食物の副作用予防剤であるガラクトマンナン分解物(平均分子量 約20,000)の粉末65gが得られた。このものの、0.5%水溶液をB型粘度計(東機産業(株))を用いて測定した時の粘度が2mPa・sであった。
【0014】
実施例2
水900gに0.1N塩酸を加えてpH3.0に調整し、これにアスペルギルス属由来のβ−マンナナーゼ(阪急バイオインダストリー製)0.15gとグアーガム粉末(Lucid製)100gを添加混合して40〜45℃で24時間酵素を作用させた。反応後90℃、15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(エバポレーター;Yamato製)した後(固形分20%)、噴霧乾燥(大川原化工機(株))し、本発明品の飲食物の副作用予防剤であるガラクトマンナン分解物(平均分子量約25,000)の粉末68gが得られた。このものの、0.5%水溶液をB型粘度計(東機産業(株))を用いて測定した時の粘度が3mPa・sであった。
【0015】
実施例3
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4.0に調整した。これにバチルス属由来のβ−マンナナーゼ(阪急バイオインダストリー製)0.25gとグアーガム粉末(Lucid製)100gを添加混合して50〜55℃で12時間酵素を作用させた。反応後90℃、15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(エバポレーター;Yamato製)した後(固形分20%)、デキストリンを固形分の1/4量添加溶解し、噴霧乾燥(大川原化工機(株))し、本発明品の粉末80gが得られた。デキストリン添加前のガラクトマンナン分解物の平均分子量は、約15,000であり、このものの、0.5%水溶液をB型粘度計(東機産業(株))を用いて測定した時の粘度が9mPa・sであった。
【0016】
試験例1.
体重により無作為に割り付けした5週齢、体重70−90gのウイスター系雄性ラット30匹を3群(1群10匹)に分け表1に示すように、ソルビトール水溶液4g/kg体重を摂取させ副作用(腹部の膨張、急激な軟便化)を惹起した群、ソルビトール水溶液4g/kg体重とともに実施例1で得られたガラクトマンナン分解物を1.0もしくは、2.0g/kg体重で同時摂取した群について投与から5時間まで観察し、この効果を検討した。副作用発生率は、副作用が観察されたラットの匹数を一群の匹数で除し、100を乗じて求めた。
【0017】
【表1】
Figure 0004083473
【0018】
表1より、明らかにガラクトマンナン分解物を同時摂取させることで副作用発生率が低下しており、副作用を予防することが確認された。
【0019】
試験例2.
Wistar系幼若雄ラット(3週齢、体重40−50g)40匹を4群(1群10匹)に分け、表2の処方で調製した飼料にて3日間飼育し、副作用(腹部の膨張、急激な軟便化)の発生率を検討した。
【0020】
【表2】
Figure 0004083473
【0021】
【表3】
Figure 0004083473
【0022】
表3より、明らかにガラクトマンナン分解物を同時摂取させることで副作用発生率が低下しており、副作用を予防することが確認された。
【0023】
試験例3
被験者(健康女性20名:平均年齢20歳、平均体重57kg)に、試験食I:ラクチトール15g、試験食II:ガラクトマンナン分解物(実施例1)5g+ラクチトール15g、試験食III:ガラクトマンナン分解物(実施例2)5g+ラクチトール15g、試験食IV:ガラクトマンナン分解物(実施例3)6.5g+ラクチトール15gを摂取させ副作用発生率(腹部の膨満感、ゲップ、放屁、腹痛や急激な軟便化)について検討を行った。ここで副作用発生率は、副作用を訴えた被験者の人数を被験者参加人数で除し、100を乗じて求めた。
【0024】
【表4】
Figure 0004083473
【0025】
表4より、明らかにガラクトマンナン分解物を同時摂取させることで副作用発生率が低下しており、副作用を予防することが確認された
【0026】
【発明の効果】
本発明品である難消化吸収性甘味糖質の副作用予防剤は、簡単に飲食物に応用することが可能であり、さらに、副作用を予防することで難消化吸収性甘味糖質を使用した食品の安全性を高める効果を提供することが可能である。

Claims (2)

  1. ガラクトマンナンを主成分とする天然粘質物の加水分解物であって、平均分子量2,000〜1,000,000であるガラクトマンナン分解物を含有する糖アルコールの副作用予防剤。
  2. 糖アルコールを含有する飲食品に請求項1記載の予防剤を添加することを特徴とする糖アルコールの副作用予防方法。
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