JP4082473B2 - レーダ装置の信号処理方法および装置 - Google Patents

レーダ装置の信号処理方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、車両周辺の物体を検出するために好適に用いられるレーダ装置の信号処理方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両には、たとえば、自車と同じ道路を先行して走行する先行車両等の目標物を検出するために、目標物と車両との相対距離および相対速度を求めるレーダ装置が備えられる。
【0003】
第1の従来技術のレーダ装置の送信アンテナ1および受信アンテナ2は、図13に示すように、たとえば車両3のフロントグリル内に設置される。送信アンテナ1から、指向性のある予め定める波長の電磁波が、送信波5として、その放射方向を時間経過に伴って水平方向6に角変位させつつ放射される。この送信波5のビーム幅は、たとえば、2〜3度である。送信波5は、目標物7で反射されて、反射波として戻り、受信アンテナ2によって受信される。レーダ装置は、まず、測定角度を変数とした反射波の受信電界強度の分布を求める。測定角度は、送信波の放射方向と車両の車軸に垂直でかつ地表に平行な予め定める前方方向との成す角度である。次いでその分布の極大点の測定角度を求め、目標物と車両との相対距離と前記極大点の測定角度とに基づいて、車両に対する目標物の位置を算出する。
【0004】
図14は、第1の従来技術のレーダ装置において、測定角度に対する反射波の受信電界強度の分布を表すグラフである。このグラフでは、実際に測定された反射波の受信電界強度を太実線で表し、この受信電界強度から推測される分布を曲線9によって表す。送信波のビーム幅が2〜3度の送信波を用いる場合、送信波が実際に放射される測定角度の間隔8が比較的大きい。このように、第1の従来技術のレーダ装置では、実際に測定された反射波の個数が少ないので、目標物の厳密な位置を求めることが困難だった。
【0005】
このために、第2の従来技術のレーダ装置として、ビーム幅が0.1〜0.9度の送信波を放射するレーダ装置が用いられている。このレーダ装置は、図15に表すように、送信アンテナ11および受信アンテナ12の設置位置ならびに送信波の放射および反射波の受信の挙動は、第1の従来技術のレーダ装置と等しく、アンテナ11,12の構造およびビーム幅だけが異なる。
【0006】
図16は、第2の従来技術のレーダ装置において、測定角度に対する送信波15の反射波の受信電界強度の分布を表すグラフである。ビーム幅が0.1〜0.9度の送信波を用いる場合、実際に放射される測定角度の間隔18が、第1の従来技術のレーダ装置の前記間隔8よりも小さい。このために、車両が存在する角度範囲内に複数回送信波が放射されることになり、角度範囲の内外で明確に反射波の受信電界強度が変化する。したがって、受信電界強度が或る閾値を越えるような範囲19に基づいて、目標物の大きさおよび位置を定める。しかしながら、ビーム幅を狭くするためには、送信アンテナの開口面積を大きくする必要があるので、レーダ装置の小型化が困難だった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ビーム幅に拘わらず、目標物の大きさおよび位置を厳密に求めることができるレーダ装置の信号処理方法および装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理方法において、
送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近い場合に、複数の極大点のうちで信号レベルが最大である極大点の角度範囲に基づいて、目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理方法である。
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理方法では、上述のように、まず周波数と角度とに対する混合信号の信号レベルの分布を作成し、この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波の電界強度が一定である場合、混合信号の信号レベルは、反射波の受信電界強度が増減するのに伴って増減する。ゆえに、上述のように混合信号の信号レベルに基づいて処理を行うことは、反射波の受信電界強度に基づいて処理を行うことと等しい。これによって、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることができる。これによって、レーダ装置を容易に小型化することができる。
またレーダ装置の信号処理方法では、或る周波数の分布の極大点が複数あるとき、その信号レベルが最大の極大点に基づいて、目標物の大きさまたは位置を求める。これによって、たとえば反射波に多数の雑音成分が混入しており、かつ目標物からの反射波の受信電界強度が雑音成分の受信電界強度に近い場合にも、目標物の大きさまたは位置を確実に求めることができる。
【0015】
本発明は、時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理方法において、
送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近いときを除いて、各極大点の角度範囲のうちで相互に重複する角度範囲全体の信号レベルの分布のうちで、最も外側の2点の角度を両端とする角度範囲に基づいて、単一の目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理方法である
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理方法では、上述のように、まず周波数と角度とに対する混合信号の信号レベルの分布を作成し、この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波の電界強度が一定である場合、混合信号の信号レベルは、反射波の受信電界強度が増減するのに伴って増減する。ゆえに、上述のように混合信号の信号レベルに基づいて処理を行うことは、反射波の受信電界強度に基づいて処理を行うことと等しい。これによって、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることができる。これによって、レーダ装置を容易に小型化することができる。
【0016】
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理方法では、或る周波数の分布の極大点が複数あり、かつ各極大点の角度範囲が相互に重複するとき、重複した角度範囲の曲線全体が、或る目標物からの反射波を表すものと見なして、目標物の大きさまたは位置を求める。これによって、たとえば目標物が存在する角度範囲よりも送信波のビーム幅が小さいために反射波に干渉が生じる場合でも、目標物の大きさまたは位置を確実に求めることができる。
【0017】
本発明は、増加期間および減少期間の分布の各極大点毎に、周波数の差と角度範囲の中心角度の差と角度範囲の大きさの差と信号レベルの差とを求め、
周波数の差が予め定める第1基準値未満であり、角度範囲の中心角度の差が予め定める第2基準値未満であり、角度範囲の大きさの差が予め定める第3基準値未満であり、かつ信号レベルの差が予め定める第4基準値未満である増加期間および減少期間の分布の極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理方法では、増加期間および減少期間の分布に極大点が複数あるとき、増加期間の極大点と減少期間の極大点とを組合わせて、それらの信号レベルの差、中心角度の差、角度範囲の大きさの差、および周波数の差を求める。これら変数の差を、極大点の組合わせを変更してそれぞれ求め、各差がそれぞれ基準値未満である極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、同じ目標物からの反射波を表す増加期間および減少期間の分布の極大点の各変数に微小な誤差がある場合も、これら極大点を組合わせて、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0019】
本発明は、前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、周波数の差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、増加期間の極大点と減少期間の極大点とを組合わせて変数の差を求めた場合に、各変数の差が基準値未満である極大点の組合わせが複数あるとき、周波数の差が最小である組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、上述のときでも、同じ目標物からの反射波を表す可能性が高い極大点の組合わせを選んで、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0021】
本発明は、前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、信号レベルの差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、増加期間の極大点と減少期間の極大点とを組合わせて変数の差を求めた場合に、各変数の差が基準値未満である極大点の組合わせが複数あるとき、信号レベルの差が最小である組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、上述のときでも、同じ目標物からの反射波を表す可能性が高い極大点の組合わせを選んで、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0023】
本発明は、前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、角度範囲の中心角度の差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする。
【0024】
本発明に従えば、増加期間の極大点と減少期間の極大点とを組合わせて変数の差を求めた場合に、各変数の差が基準値未満である極大点の組合わせが複数あるとき、角度範囲の中心角度の差が最小である組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、上述のときでも、同じ目標物からの反射波を表す可能性が高い極大点の組合わせを選んで、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0025】
本発明は、前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、角度範囲の大きさの差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする。
【0026】
本発明に従えば、増加期間の極大点と減少期間の極大点とを組合わせて変数の差を求めた場合に、各変数の差が基準値未満である極大点の組合わせが複数あるとき、角度範囲の大きさの差が最小である組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、上述のときでも、同じ目標物からの反射波を表す可能性が高い極大点の組合わせを選んで、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0030】
本発明は、時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理装置において、
送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近い場合に、複数の極大点のうちで信号レベルが最大である極大点の角度範囲に基づいて、目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理装置である。
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理装置では、上述のように、まず周波数と角度とに対する混合信号の信号レベルの分布を作成し、この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波の電界強度が一定である場合、混合信号の信号レベルは、反射波の受信電界強度が増減するのに伴って増減する。ゆえに、上述のように混合信号の信号レベルに基づいて処理を行うことは、反射波の受信電界強度に基づいて処理を行うことと等しい。これによって、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることができる。これによって、レーダ装置を容易に小型化することができる。
また或る周波数の分布の極大点が複数あるとき、その信号レベルが最大の極大点に基づいて、目標物の大きさまたは位置を求める。これによって、たとえば反射波に多数の雑音成分が混入しており、かつ目標物からの反射波の受信電界強度が雑音成分の受信電界強度に近い場合にも、目標物の大きさまたは位置を確実に求めることができる。
本発明は、時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理装置において、
送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近いときを除いて、各極大点の角度範囲のうちで相互に重複する角度範囲全体の信号レベルの分布のうちで、最も外側の2点の角度を両端とする角度範囲に基づいて、単一の目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理装置である。
本発明に従えば、レーダ装置の信号処理装置では、上述のように、まず周波数と角度とに対する混合信号の信号レベルの分布を作成し、この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波の電界強度が一定である場合、混合信号の信号レベルは、反射波の受信電界強度が増減するのに伴って増減する。ゆえに、上述のように混合信号の信号レベルに基づいて処理を行うことは、反射波の受信電界強度に基づいて処理を行うことと等しい。これによって、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることができる。これによって、レーダ装置を容易に小型化することができる。
また或る周波数の分布の極大点が複数あり、かつ各極大点の角度範囲が相互に重複するとき、重複した角度範囲の曲線全体が、或る目標物からの反射波を表すものと見なして、目標物の大きさまたは位置を求める。これによって、たとえば目標物が存在する角度範囲よりも送信波のビーム幅が小さいために反射波に干渉が生じる場合でも、目標物の大きさまたは位置を確実に求めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態であるレーダ装置の信号処理方法を用いたレーダ装置31の電気的構成を示すブロック図である。レーダ装置31は、いわゆるFM−CWレーダ装置であり、たとえば車両に取付けられて、オートクルーズ装置において先行車両を検出するために用いられる。レーダ装置31は、送信アンテナ33、受信アンテナ34、発振回路35、局部発振器36、方向性結合器37、混合回路38、増幅回路39、FFT回路40、変位装置41、および信号処理回路44を含む。さらにレーダ装置31に関連して、アプリケーション装置45が設けられる。送信および受信アンテナ33,34、発振回路35、局部発振器36、方向性結合器37、混合回路38、増幅回路39は、センサ装置46として、単一筺体に収納される。
【0032】
送信および受信アンテナ33,34は、指向性の強いアンテナであり、送信アンテナ33の主ローブのビーム幅θbはたとえば約2度〜3度である。送信アンテナ33は、たとえば車両の進行方向前方に電磁波を放射することができる位置に設置される。また受信アンテナ34は、車両の進行方向前方からの電磁波を受信することができる位置に設置される。このような位置は、たとえば、車両の車体前方のフロントグリル内である。この送信および受信アンテナ33,34は、単一のアンテナを共用する構成によって実現されても良い。
【0033】
発振回路35は、約750HzのFM周波数に応じて電圧が増減する発振信号を生成して、局部発振器36に与える。局部発振器36は、発振信号の電圧に対応した周波数の局部発振信号を生成する。局部発振信号は、局部発振器36から方向性結合器37を介して送信アンテナ33に与えられる。局部発振信号は、たとえば周波数が経時的に偏移する交流電力信号であり、その強度は常に一定である。送信アンテナ33は、局部発振信号と同一周波数の電磁波である送信波をビーム状に放射する。この送信波は、車両の走行方向前方の目標物によって反射されて、反射波として戻る。反射波は、目標物とレーダ装置31との相対距離に対応して遅延し、また目標物とレーダ装置31との相対速度に対応して周波数が偏移する。
【0034】
受信アンテナ34は、反射波および雑音成分を含む電磁波を受信して、その電磁波の受信電界強度を表す受信信号を混合回路38に導出する。受信信号の信号レベルは、受信電界強度のレベルに比例して増加する。混合回路38には、受信信号の他に、局部発振器36からの局部発振信号が、方向性結合器37を介して与えられる。混合回路38は、局部発振信号と受信信号とを混合して、両信号の混合信号であるビート信号を生成する。このビート信号は、増幅回路39で増幅された後に、FFT回路40に与えられる。
【0035】
FFT回路40は、まず、予め定める観測開始時刻から、ビート信号の信号レベルを、時間経過に伴って予め定める回数Nだけサンプリングして、N個の信号レベル値L1〜LNを得る。このサンプリングは、予め定める周期で繰返される。上述のサンプリングの回数Nは、たとえば128回である。次いで、ビート信号の信号レベル値L1〜LNを周波数変換することによって、観測開始時刻でのビート信号の信号レベルの周波数成分を、周波数軸上のN点の観測点の周波数f1〜fN毎に得る。FFT回路40は、たとえば周波数変換の演算を行う演算回路で実現され、上述のビート信号の周波数成分は、ビート信号の信号レベル値L1〜LNを用いたフーリエ変換によって得られる。各周波数の周波数成分は、信号処理回路42に与えられる。
【0036】
変位装置41は、送信波が予め定める走査速度で予め定める走査範囲θsを走査するように、送信波の放射方向を周期的に角変位させる。送信波は、たとえば、地表に平行に角変位され、走査範囲θsを周期的に走査するものとする。走査範囲θsは、たとえば、基準方向から測定角度が増加する方向および減少する方向にそれぞれ10度〜15度の範囲であり、全体で20度〜30度の範囲であるとする。測定角度は、送信波の放射方向と予め基準方向との成す角度である。
【0037】
たとえば、変位装置41は、センサ装置46全体をモータ等を用いて機械的に角変位させることによって、送信波の放射方向を角変位させる。また、変位装置41は、送信および受信アンテナ33,34だけを機械的に角変位させる構造であっても良い。さらにまた、送信波の放射方向の角変位は、上述の機械的手法だけでなく、電気的手法を用いても良い。電気的手法としては、たとえば、送信アンテナ33としてフェイズドアレイアンテナを用い、フェイズドアレイアンテナの各アンテナ素子から放射される電磁波の位相差を変更することによって、放射ビームの方向を変更する手法が挙げられる。
【0038】
信号処理回路44には、FFT回路40から、ビート信号の信号レベルの各周波数の周波数成分が与えられ、変位装置41から、送信波の測定角度が与えられる。本実施形態では、基準方向を、車両の車軸に垂直であってかつ地表と平行な前方方向であるとする。信号処理回路44は、測定角度と周波数とに対するビート信号の信号レベルの分布を求め、その分布に基づいて、目標物の位置および大きさを算出する。さらに、ビート信号の周波数に基づいて、目標物と車両との相対距離および相対速度を算出する。
【0039】
アプリケーション装置45は、信号処理回路44から目標物の位置および大きさが与えられ、それらに基づいて、車両の挙動を制御する。たとえば、アプリケーション装置45は、目標物が車両の走行の妨げになるか否かを判定し、妨げになると判定されたとき、車両の部品を制御して、目標物を回避するための回避動作を行う。
【0040】
図2は、送信および受信アンテナ33,34の指向性を表すグラフである。このグラフの縦軸は電界強度(単位dB)であり、横軸は放射方向である。このグラフでは、放射方向を、アンテナの最大放射方向を0度として、時計まわりに増加するものとする。送信および受信アンテナ33,34は、主ローブ51が副ローブ52の数倍以上に大きくなるような指向特性を有する。送信波のビーム幅θbは、主ローブ51を表す曲線上で、最大放射方向の電界強度Epから3dB低い電界強度Emに相当する点pb1,pb2間の幅である。
【0041】
以下に、FM−CW方式のレーダ装置の挙動を説明するために、送信波および反射波ならびにビート信号の挙動を詳細に説明する。図3(1)は、送信波および反射波の周波数の経時偏移を説明するためのグラフである。実線51は送信波の周波数の経時偏移を表し、実線52は、実線51の送信波が目標物によって反射されて戻った反射波の周波数の経時偏移を表す。
【0042】
送信波の周波数は、予め定める中心周波数F0を中心として、予め定める変調幅δfだけ、予め定める掃引周期W1で周期的に増減するように偏移される。この偏移形態としては、三角波スイープ、鋸波スイープ、およびsin波スイープが挙げられる。本実施形態では、三角波スイープさせている。具体的には、送信波の周波数は、時刻t0から時刻t2までの増加期間W2で予め定める最小周波数fminから予め定める最大周波数fmaxまで時間経過に比例して増加し、時刻t2から時刻t4までの減少期間W3で最大周波数fmaxから最小周波数fminまで時間経過に比例して減少する。最大および最小周波数fmax,fminは、それぞれ中心周波数F0から変調幅δfの半分の周波数だけ増加および減少した周波数である。中心周波数F0はたとえば60GHzであり、変調幅δfは、たとえば75MHzである。このときの送信波の振動周波数はたとえば750Hzであり、掃引周期W1はたとえば1.3m秒である。増加および減少期間W2,W3の長さは同一であって掃引周期W1の半分の時間である。また周波数の増加および減少の各時間変化率の絶対値は等しい。
【0043】
上述の送信波の放射時刻から該送信波の反射波の受信時刻までの遅延時間W4は、目標物とレーダ装置31との相対距離に比例して増加する。また、送信波の最大および最小周波数fmax,fminと、反射波の最大および最小周波数fmaxa,fminaとの周波数差δfcwは、目標物とレーダ装置31との相対速度に比例して増加する。ゆえに、反射波の周波数偏移の挙動は、周波数の偏移タイミングが遅延時間W4だけ送信波の周波数の偏移タイミングから遅延する点と、最大および最小周波数ならびに中心周波数が周波数差δfcwだけ変化する点が異なり、周波数の時間変化率、変調幅δf、および掃引周期W1は等しい。ゆえに反射波は、周波数増加の開始時刻t1から時刻t2を経て減少開始時刻t3まで時間経過に比例して増加し、減少開始時刻t3から時刻t4を経て減少終了時刻t5まで時間経過に比例して減少する。時刻t1,t3,t5は、それぞれ送信波の周波数偏移の時刻t0,t2,t4から遅延時間W4だけ遅れた時刻である。
【0044】
図3(2)は、図3(1)に示す送信波および反射波を混合して生成されるビート信号を表すグラフである。ビート信号のビート周波数は、反射波の周波数増加の開始時刻t1から送信波の周波数減少の開始時刻t2まで、増加期間W2のビート周波数Fupを保ち、反射波の周波数減少の開始時刻t3から送信波の周波数減少の終了時刻t14まで、減少期間W3のビート周波数Fdnを保つ。増加期間W2に得られるビート信号をビート信号Bupn、減少期間W3に得られるビート信号をビート信号Bdnnとする。nは、1以上の任意の整数である。
【0045】
ビート信号Bupn,Bdnnのビート周波数Fup,Fdnは、送信波と反射波とのうなり周波数であって、目標物とレーダ装置31との相対距離および相対速度が大きいほど大きくなる。また、局部発信信号の信号レベルは常に予め定めるレベルを保ち、受信信号の信号レベルは反射波の受信電界強度の経時変化に対応して変動する。このため、ビート信号は、反射波の受信電界強度の経時変化に対応して信号レベルが変化する脈動信号であり、信号レベルの交流成分の振幅の変化は、反射波の受信電化強度の経時変化に対応する。
【0046】
図4は、測定角度および周波数に対する増加期間のビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。このグラフは、相互に直交する3本の軸線を有し、図面上で横方向の軸が測定角度を表し、奥行き方向の軸が周波数を表し、縦方向の軸がビート信号の信号レベルを表す。測定角度を表す軸と周波数を表す軸とによって規定される基準平面内の或る点から分布を表す曲面71までの高さが、ビート信号の信号レベルの周波数成分に相当する。測定角度および周波数に対する減少期間のビート信号Bdnnの信号レベルの分布は、雑音およびマルチパス妨害等の影響がなければ、その減少期間の直前の増加期間のビート信号Bupnの分布とほぼ等しい。
【0047】
信号レベルは局部的に増加しており、信号レベルの極大点を含む部分が、目標物によって反射された反射波に対応する。この部分を、注目部分75と称する。目標物が1つであるときには、図4に示すように注目部分75は1つであり、目標物が2つであれば、注目部分75は図5に表すように2つある。すなわち、反射波に干渉等がない場合、分布を表す曲面には、注目部分75が、目標物の数と同数だけある。注目部分の角度範囲内には、レーダ装置31から見て目標物の中心がある方向と基準方向との成す角度がある。
【0048】
このように、測定角度および周波数を変数として受信電界強度の分布を求めると、ビート信号の信号レベルは、レーダ装置31から目標物の中心に向かう方向およびビート信号の周波数によって定められる範囲で局部的に増加する。したがって、この分布を表す曲面71の注目部分75の位置および形状に基づいて、目標物の中心の位置および目標物の大きさを求めることができる。
【0049】
以下に、ビート信号の周波数の偏移と送信波の放射方向の角変位との関係を説明する。図6は、送信波の周波数の経時変化を表すグラフである。ビート信号の周波数に送信波の放射方向の角変位の影響が加わらないようにするために、FFT回路40によってサンプリングするべきビート信号Bupn,Bdnnを得る間、送信波の放射方向は固定されていることが好ましい。このために、たとえば、掃引周期W1の整数倍の期間W11内に、変位装置41によって送信波の放射方向を角変位させ、期間W11終了後の期間W12に、受信アンテナ34と混合回路38と増幅回路39とによって、ビート信号Bupn,Bdnnを得る。送信波は、期間W11,W12にわたって連続して放射されていてもよく、期間W12だけ放射されるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態では、期間W11は掃引周期W2の4倍であり、期間W12は掃引周期W2と等しいとする。前述のサンプリングの観測開始時刻は、たとえば期間W12の開始時刻に相当し、観測開始時刻の周期は、期間W11,W12の和と等しい。期間W11内の放射方向の角変位量は、たとえば送信波のビーム幅θbよりも小さく、たとえば0.1度〜1.0度である。送信波の放射方向を電気的手法によって変更する場合は、このような手順で送信波の放射方向を変更するとよい。
【0051】
また、送信波の放射方向をモータ等を用いた機械的手法によって変更する場合、モータを停止させるときにモータに負荷がかかる。このため、モータにかかる負荷を減少させるために、送信波の周波数の偏移に影響を与えない程度の角速度で、送信波の放射方向を常に角変位させてもよい。たとえば、送信波の周波数が最小周波数から最大周波数に至り再び最初周波数に戻るまでの掃引を複数回繰返す間に、送信波の放射方向を前記角変位量だけ角変位させる。受信アンテナ34と混合回路38と増幅回路39とは、この複数回の掃引のうちのいずれか1回において、ビート信号Bupn,Bdnnを取得する。本実施形態では、掃引の回数をたとえば5回とする。これによって、モータに負荷をかけることなく、ビート信号に送信波の放射方向の角変位に起因する影響が加わることを防止することができる。
【0052】
図7は、レーダ装置31の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。レーダ装置31が起動されると、ステップa1からステップa2に進む。ステップa2では、まず、変位装置41が、送信波の放射方向を、基準方向から測定角度θnだけずれた方向に変更する。nは、0以上の任意の整数である。次いで、発振回路35と局部発振器36と送信アンテナ33とによって、送信波を放射させる。ステップa3では、受信アンテナ34が電磁波を受信して受信信号を生成し、受信信号を混合回路38に与えて、ビート信号を生成させる。
【0053】
ステップa4では、FFT回路40が、ビート信号のサンプリング処理および周波数変換処理を行い、ビート信号の信号レベルの周波数f1〜fNの周波数成分を求める。周波数変換処理は、サンプリング時刻を変数とする信号レベルL1〜LNを、周波数を変数として並べ直し、分布を求めるための処理である。周波数変換処理には、具体的には、たとえばN点の高速フーリエ変換法が用いられる。フーリエ変換の点数Nは、たとえば128点である。式1は、測定角度が角度θnである観測開始時刻tamにおける周波数変換処理において、周波数f1〜fNのうちの任意の周波数fnの周波数成分cn(tam)を得るための高速フーリエ変換法の変換式である。得られた周波数成分c1(tam)〜cM(tam)と測定角度θnとは、相互に対応づけられて、たとえば信号処理回路44内部のメモリに記憶される。
【0054】
【数1】
Figure 0004082473
【0055】
ステップa5では、ステップa2〜a4の動作がN回実行されたか否かを判定する。実行回数がN回未満であるとき、ステップa5からステップa2に戻り、変位装置41によって測定角度θnを予め定める前記角変位量だけ増加させて、ステップa2〜a4の処理を繰返す。実行回数Nは、たとえば40回である。実行回数がN回以上であるとき、ステップa5からステップa6に進む。ステップa2〜a5の処理動作は、この処理動作中に目標物が移動したために相対距離を補正しなければならなくなることを防止することができる程度の時間内に実行される。この時間は、たとえば0.1秒である。
【0056】
ステップa6,a7では、信号処理回路44が、ビート信号の信号レベルの分布の極大点を検出する手段として動作する。この動作を、図8を用いて説明する。図8は、図4,5に示す分布を表すグラフを簡略化して表したものである。まずステップa6で、信号処理回路44は、増加期間および減少期間のビート信号Bupn,Bdnnそれぞれについて個別に、ステップa2〜a5の処理によって得られた全ての信号レベルの周波数成分のうちで、測定角度が等しい周波数成分を用いて、周波数に対するビート信号の信号レベルの分布を表す曲線の極大点の周波数を求める。
【0057】
この処理は、模式的には、まず、基準平面に垂直で奥行き方向の軸に平行でありかつ横方向の軸上で測定角度θxを表す点を通る平面によって、分布を表す曲面71を切取り、その断面を表す曲線72を求める。図9は、或る測定角度θxにおける周波数に対するビート信号の信号レベルの分布を表すグラフであり、上述の断面に相当する。次いで、この曲線72の極大点の信号レベルLpを探す。極大点の信号レベルLpは、たとえば、予め定める基準レベル以上であって、その信号レベルに対応する測定角度を中心とした予め定める角度範囲内の測定角度に対応する信号レベルのうちで最大のものであるとする。最後に、得られた信号レベルLpの点の周波数を、極大点の周波数fpとして取得する。この処理を、たとえば前記角変位量単位で測定角度θxを増減させて、各測定角度毎に行う。
【0058】
次いで、ステップa7では、増加期間および減少期間のビート信号Bupn,Bdnnそれぞれについて個別に、ステップa2〜a5の処理によって得られた全ての信号レベルの周波数成分のうちで、ステップa6で得られた極大点の周波数fpに対応する周波数成分を用いて、測定角度に対するビート信号の信号レベルの分布を表す曲線の極大点の測定角度を求める。この処理は、模式的には、まず、前記分布を表す曲面71を、基準平面に垂直で横方向の軸に平行でありかつ奥行き方向の軸上で極大点の周波数fpを表す点を通る平面で切取り、その断面を表す曲線73を求める。図10は、極大点の周波数fpにおける測定角度に対するビート信号の信号レベルの分布を表すグラフであり、上述の断面に相当する。次いで、この曲線73上で、信号レベルが前記信号レベルLpである点を探し、その点の測定角度を取得する。ステップa7の処理は、極大点が複数得られている場合、各極大点毎に行う。
【0059】
ステップa8では、信号処理回路44が、ビート信号の信号レベルの分布を表す曲面の注目部分を抽出する手段として動作する。このために信号処理処理回路44は、目標物が存在する角度範囲を求める。レーダ装置31から見て目標物が存在する角度範囲は、レーダ装置31と対面する目標物の面の水平方向の一方端部に送信波が当たったときの測定角度θLと、前記面の水平方向の他方端部に送信波が当たったときの測定角度θRとを両端とする範囲であるとする。この角度範囲は、図4,5,8のグラフの注目部分の角度範囲に相当する。
【0060】
具体的には、まず、信号処理回路44は、増加期間および減少期間のビート信号Bupn,Bdnnそれぞれについて個別に、ステップa6で得られた極大点の周波数fpにおける測定角度に対する信号レベルの分布に基づいて、角度範囲の両端の測定角度θL,θRを探す。この測定角度θL,θRは、具体的には、図10に示すように、極大点の信号レベルLpよりも予め定める基準レベルΔLだけ小さい信号レベルLbに対応する測定角度であるとする。基準レベルΔLは、たとえば10dB〜20dBである。
【0061】
次いで、信号処理回路44は、角度範囲の角度幅Δθaを求める。角度幅Δθaは、たとえば式2に示すように、測定角度θRから測定角度θLを減算した差である。さらに、信号処理回路44は、角度範囲の中心角度θmを求める。中心角度θmは、たとえば式3に示すように、測定角度θL,θRの中間の角度である。角度幅Δθaと中心角度θmとは、その算出に用いられた極大点の信号レベルLpおよび周波数fpに対応づけられて、メモリに記憶される。ステップa8の処理は、極大点が複数ある場合、各極大点毎に行う。
Δθa = θR−θL …(2)
θm = (θR−θL)/2+θL …(3)
【0062】
角度幅Δθaがビーム幅θb未満である場合、角度幅Δθaは、送信アンテナ33のアンテナ特性に基づいて定められる基準角度幅θcを変数として増減する値になると考えられる。基準角度幅θcは、図2の主ローブ51を表す曲線上で、最大放射方向の電界強度Epから予め定める電界強度ΔLだけ低い電界強度Enに相当する点pb3,pb4間の幅である。実験的には、角度幅Δθaは、基準角度幅θcとほぼ等しくなった。
【0063】
再び図7を参照する。ステップa9では、信号処理回路44が判定手段として働き、増加期間および減少期間のビート信号の信号レベルの分布毎に、ステップa8で求められた角度範囲が相互に重複するか否かを判定する。角度範囲が重複するとき、ステップa9からステップa10に進み、重複しないとき、ステップa9からステップa11に進む。ステップa10では、信号処理回路44は、重複する複数の角度範囲の極大点に基づいて、角度範囲を再設定し、前記複数の角度範囲を1つにする。再設定後、ステップa10からステップa11に進む。
【0064】
ステップa6〜a10の処理によって、増加期間および減少期間のビート信号それぞれについて、該ビート信号の分布の極大点のデータの変数として、極大点の周波数fpおよび信号レベルLpならびに該極大点を含む角度範囲の角度幅Δθaおよび中心角度θmが得られる。この極大点のデータは、その極大点を含む注目部分を極大点を通り角度を表す軸に平行に切取った断面を表す曲線形状を表すものである。表1は、増加期間および減少期間のビート信号の極大点Pup1〜Pup3,Pdn1〜Pdn3のデータの一例を表す。
【0065】
【表1】
Figure 0004082473
【0066】
ステップa11では、信号処理回路44は、同じ目標物からの反射波を表す増加および減少期間の分布の注目部分を組合わせる。このために信号処理回路44は、増加期間のビート信号Bupnの各極大点Pupiのデータと、減少期間のビート信号Bdnnの各極大点Pdniのデータとを比較して、基準平面上でほぼ同じ位置にありかつ形状がほぼ等しい注目部分の極大点のデータの組合わせを、同じ目標物から反射波を表す注目部分の極大点のデータとして選ぶ。iは任意の自然数である。
【0067】
たとえば、まず、任意の極大点Pupi、Pupiを選択し、その周波数fpの差、信号レベルLpの差、角度範囲の中心角度θmの差、および角度幅Δθaの差をそれぞれ求める。次いで、周波数fpの差が予め定める第1基準値未満であるか否か、信号レベルLpの差が予め定める第2基準値未満であるか否か、角度範囲の中心角度θmの差が予め定める第3基準値未満であるか否か、および角度幅Δθaの差が予め定める第4基準値未満であるか否かをそれぞれ調べる。
【0068】
全ての差がその基準値未満であるとき、極大点Pupi,Pdniを個別に含む2つの注目部分の形状が類似しているとみなし、それら注目部分が同じ目標物からの反射波を表するものであると判定する。いずれか1つの差がその基準値以上であるとき、極大点Pupi,Pdniを個別に含む2つの注目部分の形状が異なると見なし、それら注目部分が同じ目標物からの反射波を表していないと判定する。
【0069】
この判定を、たとえば、極大点の周波数fpの差が予め定める値未満である極大点Pupi,Pdniの全ての組合わせを網羅するように、極大点Pupi,Pdniの組合わせを変えて繰返し、その注目部分が同じ目標物からの反射波を表すと判定された極大点Pupi,Pdniのデータをメモリに記憶させる。また、これら両極大点Pupi,Pdniの各変数の値を平均値を求め、その平均値も併せて記憶させるようにしてもよい。
【0070】
また、この判定によって、全ての前記差がその基準値未満である組合わせが複数得られた場合、これら組合わせのうちで、周波数fmの差が最小である組合わせの極大点Pupi,Pdniを、同じ目標物からの反射波に対応するものとして選択する。またこの選択の基準は、信号レベルのLpの差、中心角度θmの差、または角度幅Δθaの差を用いても良く、これら4種類の差のうちの2つ以上のものが最小であるものを選択するようにしてもよい。また、注目部分の形状および位置を比較することができる変数であれば、他の変数を用いても良い。
【0071】
たとえば表1の例で、極大点Pup1,Pdn1を組合わせた場合と、極大点Pup2,Pdn1を組合わせた場合とを考えると、前者の方がデータの各変数の差が小さい。ゆえに、前者の組合わせを選択する。極大点Pup1,Pup2は、その中心角度と角度幅とから、角度範囲が重複していることが分かる。ゆえに、この極大点Pup1,Pup2を個別に含む2つの注目部分は、たとえば反射波の干渉によって単一の目標物からの反射波の信号レベルが局所的に減少したために、本来単一の注目部分になる筈のものが分割されたものであると考えられる。ゆえに、この組合わせ処理によって、上述の理由で複数に分割された注目部分を1つの注目部分と考え、その極大点を以後の処理に用いることができる。
【0072】
また、表1の例で、極大点Pup3,Pdn2を組合わせた場合と、極大点Pup3,Pdn3を組合わせた場合とを考えると、両者のデータの各変数の差がほぼ等しい。極大点Pdn2,Pdn3を比較すると、その極大点の周波数および信号レベルがほぼ一致し、角度範囲も重複していることが分かる。このため、この2つの極大点を個別に含む2つの注目部分も、本来単一の注目部分になる筈のものが分割されたものであると考えられる。この場合、信号処理回路44は、極大点Pdn2,Pdn3の各変数の値に基づいて、新たに極大点のデータを作成し、この極大点のデータと極大点Pup3のデータとを組合わせて、以後の処理に用いる。新たな極大点のデータの各変数の値は、たとえば極大点Pdn2,Pdn3の各値の平均値であり、表1の例では、周波数が75Hz、中心角度が4.1度、角度幅が.8度である。この組合わせ処理によっても、上述の理由で複数に分割された注目部分を1つの注目部分と考え、その極大点を以後の処理に用いることができる。
【0073】
再び図7を参照する。ステップa12では、信号処理回路44は、目標物の相対距離および相対速度を算出する手段として動作する。具体的には、信号処理回路44は、ステップa11で組合わせられた極大点のデータのうちの周波数を式4および式5に代入して、レーダ装置11と目標物との相対距離Rおよび相対速度vを算出する。相対距離Rは、車両61のレーダ装置31のアンテナと、目標物の送信波を反射する面とを両端とし、基準方向65に平行な線分の長さであるとする。相対速度vは、レーダ装置11に目標物が近付く方向への速度を正の値で表し、遠ざかる方向への速度を負の値で表す。
【0074】
式4,5において、「fup」は、増加期間のビート信号Bupnの極大点Pupiの周波数fpであり、「fdn」は、減少期間のビート信号Bdnnの極大点Pdniの周波数fpである。係数Krは、式6で示すように、送信波の中心周波数F0と変調幅δfとを変数とする予め定める関数F()によって求められる。また、係数Kvは、式7に示すように規定される。cは光速度である。
【0075】
【数2】
Figure 0004082473
【0076】
Kr = F(F0,δf) …(6)
Kv = 2・F0/c …(7)
この算出処理で用いられる極大点のデータは、それを組合わせるときに角度範囲の中心角度θmおよび角度幅Δθaを参照している。これによって、極大点を含む注目部分の形状を比較していることになるので、異なる目標物に対応する増加および減少期間の分布の注目部分の極大点を組合わせることを未然に防止することができる。したがって、ステップa11で組合わされたデータを用いて相対距離Rおよび相対速度vを算出する場合、その精度を従来技術のレーダ装置によって算出された相対距離および相対速度よりも向上させることができる。
【0077】
ステップa13では、信号処理回路44は、注目部分の位置および形状に基づいて、目標物の中心位置を算出する手段として働く。概略的には、該回路44は、基準方向と成す角度が前記中心角度θmになる方向に目標物の中心があると見なして、目標物の中心位置を、ステップa12で求められた相対距離Rと、ステップa11で組合わせられた極大点のデータのうちの角度幅Δθaおよび中心角度θmとに基づいて算出する。次式で「(θR−θL)/2+θL」は、目標物の中心がある方向と基準方向とのなす角度を表す。
【0078】
具体的には、xy直交座標系のx座標軸が基準方向と平行であり、y座標軸が基準方向に垂直でかつ地表に平行であり、原点がレーダ装置31と一致すると仮定すると、目標物の中心の位置のx座標は相対距離Rと等しい値になり、y座標は以下の式によって求められる。これによって、送信波のビーム幅を狭くすることなく、目標物の中心の位置を求めることができる。また、分布を表す曲線の極大点をそのまま中心の位置のy座標とするときよりも、目標物の中心位置を正確に求めることができる。
Figure 0004082473
【0079】
ステップa14では、信号処理回路44は判定手段として働き、相対距離Rが予め定める基準距離Rthを越えるか否かを判定する。相対距離Rが基準距離Rthを越えるとき、ステップa15に進み、相対距離Rが基準距離Rth以下であるとき、ステップa16に進む。ステップa15,a16では、信号処理回路44は、注目部分の位置および形状に基づいて、目標物の走査方向に平行な方向の幅を算出する手段として働く。具体的には、ステップa15では、前記幅が角度幅Δθaを変数として増減するものと考えて、前記幅を、相対距離Rとステップa11で組合わせられた極大点のデータの角度範囲の測定角度θR,θLとに基づいて、式9によって算出する。ステップa16では、前記幅は角度幅Δθaとビーム幅θbとの差分を変数として増減するものと考えて、相対距離Rと前記測定角度θR,θLとに基づいて、式10によって算出する。
幅 = R×tanθR−R×tanθL …(9)
幅 = R×tan(θR−θb/2)−R×tan(θL−θb/2) …(10)
【0080】
相対距離に応じて幅の算出手法を変更するのは、以下の理由からである。角度幅Δθaは、目標物がレーダ装置から遠ざかるほど小さくなる。ゆえに、或る相対距離だけレーダ装置31から離れた目標物が存在する角度幅Δθaとビーム幅θbとが等しい場合でも、その目標物がレーダ装置31から或る相対距離以上に遠ざかれば、角度幅Δθaがビーム幅θb未満になり、目標物がレーダ装置31に或る相対距離未満まで近付けば、角度幅Δθaがビーム幅θbを越える。このため、角度幅Δθaと相対距離Rと目標物の大きさとの関係が、相対距離Rに応じて変化する。上述の目標物の走査方向の幅を式9によって求める場合、角度幅Δθaがビーム幅θbを越えるである場合には誤差が少ないが、角度幅Δθaがビーム幅以下である場合には誤差がでることがある。この誤差を少なくするために、本実施形態のレーダ装置31では、相対距離Rと基準距離Rthとの大小関係に応じて、幅を算出するための式を変更する。これによって、幅の誤差を小さくすることができる。ステップa15,a16にいずれかで幅を算出すると、信号処理回路44の処理動作を終了して、ステップa17に進む。
【0081】
ステップa17では、アプリケーション装置45が判定手段として働き、ステップa6〜a16の処理によって求められた目標物の中心位置および幅に基づいて、目標物が車両の走行を妨げる可能性があるか否かを判定する。目標物が車両の走行の妨げになる場合は、ステップa17からステップa18に進む。妨げにならない場合は、ステップa17からステップa19に進み、信号処理動作を終了する。
【0082】
目標物が車両の走行を妨げるか否かの判定は、たとえば、車両の中心を通り前方方向に平行な仮想軸線を考え、まず、その仮想軸線と目標物の中心位置との位置関係を調べる。目標物の中心の位置が仮想軸線上にあれば、その目標物は車両の走行を妨げる可能性があると見なす。目標物の中心の位置が仮想軸線から離れた位置にある場合、次いで、その目標物の幅に基づいて、目標物の端部が仮想軸線上に至るか否かを調べる。たとえば、目標物の中心の位置が仮想軸線に極めて近い位置にある場合でも、目標物の幅が中心の位置と仮想軸線との距離未満であれば、その目標物は、車両の走行を妨げない。逆に、目標物の中心の位置が仮想軸線から遠ざかった位置にある場合でも、目標物の幅が中心の位置と仮想軸線との距離以上である場合、目標物の端部が仮想軸線上にくるので、その目標物は車両の走行を妨げる恐れがあるとみなす。このように、本実施形態のレーダ装置31では、目標物の正確な位置と大きさとが分かっているので、目標物が車両の走行の妨げになるか否かを確実に求めることができる。
【0083】
また、上述の判定は、目標物と車両との位置関係だけでなく、車両の走行状態、および車両の走行している道路の交通状態を加味して行っても良い。車両の走行状態は、たとえば、車速センサ、ヨーレイトセンサおよびステアリングセンサを含む各種のセンサによって計測された情報に基づいて、求められる。道路の交通状態は、ナビゲーション装置およびそれに備えられたセンサによって計測された情報に基づいて、求められる。
【0084】
ステップa18では、アプリケーション装置45は、車両の部品を制御して、目標物を回避するための回避動作を行わせる。たとえば、車両に警報機を取付ておき、車両の走行を妨げる目標物があるときは、警報機によって警告音を発生させる。これによって、車両の運転者が車両の走行の妨げとなる目標物があることを認識することができ、車両の走行方向を変更することができる。したがって、車両が目標物に接近する前に、目標物を避けることができる。また、ハンドルのシャフトに電気的に制御可能な動力源を取付け、車両の走行を妨げる目標物があるときには、動力源によってハンドルが回転されて、車両の進行方向を目標物を避けることができる方向に変化させるようにしてもよい。これによって、目標物に車両が接近する前に、目標物を避けることができる。
【0085】
さらにまた、車両のブレーキに電気的に制御可能な動力源を取付け、車両の走行を妨げる目標物があるときには、動力源によってブレーキを作動させて、車両の走行速度を減少させる。これによって、車両の走行の妨げとなる目標物に車両が急接近することを未然に防止することができる。さらにまた、車両のスロットル弁に電気的に制御可能な動力源を取付け、車両の走行を妨げる目標物があるときには、動力源によってスロットル弁の弁開度を減少させて、車両の走行速度を減少させる。これによっても、車両の走行の妨げとなる目標物に車両が接近することを未然に防止することができる。また、これらの回避動作では、車両が停止する程度まで車両の走行速度を減少させてもよく、また目標物との相対距離が縮まらない程度の速度で目標物を追尾させてもよい。これら4種類の回避動作は例示であり、他の回避動作を行っても良い。また、これらの回避動作は、個別に実行してもよく、一部の動作を組合わせて実行してもよく、すべての動作を同時に実行してもよい。
【0086】
物体の回避動作が終了するとステップa19で信号処理動作を終了する。この一連の動作によって、レーダ装置31では、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置および大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることによって、従来のレーダ装置と同等の精度で目標物の位置および大きさを算出することができレーダ装置を、容易に小型化することができる。
【0087】
ステップa9の判定は、以下の第1および第2の理由のために行われる。第1の理由は、以下の通りである。反射波の受信電界強度が受信アンテナ34によって受信される雑音成分に近い場合、雑音成分が増加したことに起因して信号レベルが増加したために生じた前記極大点を含む部分を、注目部分であると誤認して、その角度範囲を求めていることがある。このために、信号処理回路44は、重複する角度範囲のうちから目標物の反射波を表す注目部分の角度範囲だけを選択する。
【0088】
第2の理由は、以下の通りである。目標物表面の送信波を反射する面に凹凸等があり複雑であると、この面内の複数の箇所からの反射波が干渉し、その受信電界強度が低下することがある。このために、目標物からの反射波の受信電界強度は、本来送信波が反射する面のどこに当たってもほぼ同一の値になる筈にも拘わらず、局部的に低下することがある。また、反射する面の複数の箇所で反射率が異なることがあり、この場合にも、反射波の受信電界強度が局部的に低下することがある。このことは、たとえば、送信波のビーム幅が目標物が存在する角度範囲未満であるときに良く起こる。このとき、目標物が1つであるにも拘わらず、分布を表す曲面に注目部分が複数できる。したがって、この場合、信号処理回路44は、ステップa11で、複数の注目部分を1つの目標物を表すものとして統合し、統合された注目部分に基づいて角度範囲を再設定する。
【0089】
角度範囲の再設定処理を、図11を参照して説明する。図11は、目標物が1つだけ存在する場合の極大点の周波数fpにおける測定角度に対するビート信号の信号レベルの分布を表すグラフである。分布を表す曲線80の極大点のうち、信号レベルが基準レベルの極大点81,82の角度範囲が重複している。極大点81,82の角度範囲の角度幅を、角度幅Δθa1、Δθa2とする。角度範囲の再設定手法は、2種類ある。
【0090】
角度範囲の再設定の第1の手法では、角度範囲が重複する極大点81,82のうちから信号レベルが最大である極大点81を選択し、その極大点81の角度範囲だけを採用して、残余の極大点82の角度範囲を以後の処理に用いないようにする。角度幅と中心角度とは、極大点81の角度範囲に基づいて算出する。この手法を用いた場合、第1の理由によって角度範囲が重複していたときに、雑音成分に起因する角度範囲を以後の処理に用いないようにすることができる。
【0091】
角度範囲の再設定の第2の手法では、まず、角度範囲が重複する極大点81,82のうちから信号レベルが最大である極大点81を選択する。次いで、重複する角度範囲全体の信号レベルの分布のうちで、選択された極大点81の信号レベルよりも予め定めるレベルΔLだけ信号レベルが小さい点を検出する。図11の例では、点83〜88が検出される。最後に、検出された点のうちで最も外側の2点の角度を、測定角度θR,θLとして取得する。図11の例では、測定角度が最小の点83と測定角度が最大の点88とが選択され、これら2点83,88の測定角度が、測定角度θR,θLとして取得される。これらの測定角度θR,θLを用いて、式2,3によって角度幅Δθaと中心角度θmとを求め、その角度幅Δθaと中心角度θmとを、選択された極大点81の信号レベルおよび周波数に対応付けてメモリに記憶させる。
【0092】
また、測定角度θR,θLを求めるとき、複数の極大点81,82の包絡線を求め、この包絡線上で受信電界強度が極大点の受信電界強度よりも電界強度ΔLだけ受信強度が小さい点を検出し、これら点に対応する角度を測定角度θR,θLとしてもよい。この手法を用いた場合、第2の理由によって角度範囲が重複していたときに、それら角度範囲をまとめて、1つの目標物に対応する角度範囲を得ることができる。また、重複する角度範囲全体をそのまま1つの角度範囲としてもよい。
【0093】
以下に、本発明の第2の実施形態のレーダ装置の信号処理方法を用いたレーダ装置について説明する。第2の実施形態のレーダ装置の電気的構造は、第1の実施形態のレーダ装置31と比較して、FFT回路40が削除され、増幅回路39からの出力が直接信号処理回路44に与えられる点が異なり、他は等しい。また、信号処理回路44の信号処理動作が変更されている。同一の構造および挙動の構成部品には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0094】
図12は、第2実施形態のレーダ装置の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは図7のフローチャートと類似の動作を行うステップを含み、そのステップの詳細な説明は省略する。レーダ装置が起動されると、ステップa1からステップa2に進む。ステップb2〜b5の処理動作は、ステップb4の処理動作以外は、ステップa2〜a5と等しい。
【0095】
ステップb4では、信号処理回路44が相対距離および相対速度を算出する手段として動作する。具体的には、まず、測定角度θnが等しい増加期間および減少期間のビート信号Bupn,Bdnn毎に、そのビート信号Bupn,Bdnnのビート周波数fup,fdnを求め、このビート周波数を極大点の周波数fpに代わって式4,5に代入して、相対距離Rおよび相対速度vを算出する。このとき、測定角度θnが等しいビート信号Bupn,Bdnnが複数あるとき、たとえば、ビート周波数の差が最小のビート信号の組合わせ、または信号レベルの差が最小のビート信号の組合わせを選択して、上述の算出処理を行う。この相対距離Rおよび相対速度vは、前記ビート信号Bupn,Bdnnの信号レベルおよび測定角度θnと対応づけられて記憶される。また、両ビート信号Bupn,Bdnnの信号レベルが異なる場合、両ビート信号Bupn,Bdnnの信号レベルの平均値、または両ビート信号Bupn,Bdnnのうちで高い方のレベルを、対応付けておく。
【0096】
ステップb5では、ステップa5と同じ判定を行い、ステップb2〜b4の動作の実行回数がN回未満であるとき、ステップb5からステップb2に戻り、変位装置41によって測定角度θnを前記角変位量だけ増加させて、ステップb2〜b4の処理を繰返す。実行回数がN回以上であるとき、ステップb5からステップb6に進む。
【0097】
ステップb6,b7では、信号処理回路44が、ビート信号の信号レベルの分布の極大点を検出する手段として動作する。まずステップa6で、信号処理回路44は、予め定める複数の相対速度それぞれについて、その相対速度を含み予め定める範囲の相対速度に対応づけられたビート信号の信号レベルの測定角度および相対距離に対する分布を求める。この分布を表すグラフは、図4,5のグラフの奥行き方向の軸が表す変数を、周波数から相対距離に置換えたものである。またこのグラフは、複数の相対速度それぞれについて作成される。また、予め定める範囲は、たとえば、FFT処理の分解能と同程度とする。
【0098】
ステップb7,b8では、信号処理回路44は、ステップb6で作成された分布の注目部分の抽出およびその形状を表すデータの算出を行うための手段として動作する。具体的には、ステップb7では、信号処理回路44は、或る相対速度について作成された分布に基づいて、相対距離が等しい信号レベル毎に、測定角度に対するそれら信号レベルの分布を表す曲線の極大点の測定角度および相対距離を求める。この処理の具体的な手法は、ステップa7の処理と比較して、ステップa6で求められた極大点の周波数だけについて行う処理を、予め定める複数の測定角度θnに対して行う点が異なり、他は等しい。ステップb8では、信号処理回路44が、目標物が存在する角度範囲を求める手段として動作し、ステップa8と同様の処理によって、角度範囲の中心角度θmおよび角度幅Δθaを求める。角度幅Δθaと中心角度θmとは、その算出に用いられた極大点の信号レベルLpおよび相対距離に対応づけられて、メモリに記憶される。
【0099】
ステップb9では、信号処理回路44が判定手段として働き、前記相対速度について作成された分布に基づいて、ステッb8で求められた角度範囲が相互に重複するか否かを判定する。角度範囲が重複するとき、ステップb9からステップb10に進み、角度範囲の再設定処理を行い、ステップa11に進む。重複しないとき、ステップb9からそのままステップb11に進む。ステップb9,b10の処理は、ステップa9,a10の処理と等しい。
【0100】
ステップb11では、信号処理回路44は、注目部分の位置および形状に基づいて目標物の中心位置を算出する手段として働く。ステップb12では、信号処理回路44は判定手段として働き、相対距離Rが予め定める基準距離Rthを越えるか否かを判定する。相対距離Rが基準距離Rthを越えるとき、ステップb13に進み、相対距離Rが基準距離Rth以下であるとき、ステップb14に進む。ステップb13,b14では、信号処理回路44は、注目部分の位置および形状に基づいて目標物の走査方向に平行な方向の幅を算出する手段として働く。ステップb11〜b14の処理動作は、ステップa13〜a16の処理動作と比較して、ステップa11の組合わせ処理によって得られた角度範囲に代わって、ステップb8で得られた角度範囲を用いる点が異なり、他は等しい。ステップb13,b14のいずれかで幅を算出すると、信号処理回路44の処理動作を終了して、ステップb15に進む。
【0101】
ステップb15では、信号処理回路44は判定手段として動作し、ステップb6で作成した全ての相対速度についての分布に対して、ステップb7〜b14の処理が行われたか否かを判定する。処理が行われていないものがあるときには、ステップb15からステップb7に戻り、処理が行われていないものに対して、上述の処理を行う。全てのものに対して処理が行われたと判定されたときは、ステップb15からステップb16に進む。
【0102】
ステップb16では、ステップa17と同様に、アプリケーション装置45が判定手段として働き、ステップb7〜b14の処理によって求められた目標物の位置および幅に基づいて、目標物が車両の走行を妨げる可能性がある位置にいるか否かを判定する。目標物が車両の走行の妨げになる場合は、ステップb16からステップb17に進み、目標物の回避処理を行った後、ステップb18で信号処理動作を終了する。また、妨げにならない場合は、ステップb16から直接ステップb18に進み、信号処理動作を終了する。ステップb16,b17の詳細な動作は、ステップa17,a18と等しい。
【0103】
この一連の動作によって、第2実施形態のレーダ装置では、送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置および大きさを精密に算出することができる。また、送信波のビーム幅が限定されないので、ビーム幅を第2の従来技術のレーダ装置よりも広げることによって、従来のレーダ装置と同等の精度で目標物の位置および大きさを算出することができるレーダ装置を、容易に小型化することができる。
【0104】
図7,12のフローチャートは例示であり、第1および第2実施形態のレーダ装置の信号処理動作は、図7,12のフローチャートで説明した動作の一部分だけを実行するようにしてもよい。たとえば、ステップa9,10;b9,b10を省略してもよい。また、ステップa14,b12を削除して、ステップa13、b11終了後は、ステップa15,16;b13,b14のいずれか一方の動作を実行するようにしてもよい。また、ステップa4,b4の処理は、ステップa5,b5の後でまとめて実行するようにしてもよい。
【0105】
さらにまた、アプリケーション装置45の処理は、上述の回避動作に限らず、他の動作であってもよい。また、レーダ装置31は、アプリケーション装置の動作に応答して、目標物の位置または大きさだけを算出するようにしてもよい。また、上述のレーダ装置では、ステップa6〜a18;b6〜b17の処理を、信号処理回路44およびアプリケーション装置45の演算処理によって行っているが、各ステップの処理動作だけを行う手段を個別に準備して、それらによって個別に行ってもよい。
【0106】
第1および第2実施形態のレーダ装置は本発明のレーダ装置の信号処理方法の例示であり、主要な動作が等しければ、他の様々な形で実施することができる。特に各回路および装置の詳細な動作は、その目的が達成されれば、これに限らず他の動作によって実現されてもよい。また、このレーダ装置の信号処理方法は、FM−CW方式のレーダ装置以外のレーダ装置に用いられても良い。さらにまた、レーダ装置の信号処理方法は、コンピュータの記憶媒体に上述の信号処理方法を実行するためのソフトウエアに記憶させ、このソフトウエアをレーダ装置の制御を行うコンピュータにインストールすることによって実現してもよい。この記憶媒体には、CD−ROMおよびフレキシブルディスクが挙げられる。
【0107】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、レーダ装置の信号処理方法では、上述のように、まず周波数と角度とに対するビート信号の信号レベルの分布を作成する。この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、レーダ装置を容易に小型化することができる。さらに、相対距離および相対速度の計算精度を向上させることができる。
また、レーダ装置の信号処理方法では、曲線形状が類似する極大点を求めるために、その極大点の信号レベルおよび角度と該極大点を含む角度範囲とを比較する。これによって、演算処理を容易にすることができる。
【0109】
さらにまた本発明によれば、レーダ装置の信号処理方法では、或る周波数の分布の極大点が複数あるとき、その信号レベルが最大の極大点に基づいて、目標物の大きさおよび位置を求める。また本発明によれば、レーダ装置の信号処理方法では、或る周波数の分布の極大点が複数あり、かつ各極大点の角度範囲が相互に重複するとき、重複した角度範囲の曲線全体の曲線形状に基づいて、目標物の大きさまたは位置を求める。これらのことによって、目標物の大きさまたは位置を確実に求めることができる。
【0110】
さらにまた本発明によれば、レーダ装置の信号処理方法では、増加期間および減少期間の分布に極大点が複数あるとき、両期間の極大点のデータの変数の差を求め、それら変数の差がそれぞれ基準値未満である極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、相対距離もしくは相対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0111】
また本発明によれば、増加期間および減少期間の極大点を組合わせて変数の差を求めた場合に、各変数の差が基準値未満である極大点の組合わせが複数あるとき、変数のうちのいずれか1つの差が最小である組合わせを、曲線形状が類似する極大点の組合わせとする。これによって、上述のときでも、相対距離もしくは対速度または目標物の大きさもしくは位置を確実に求めることができる。
【0113】
また本発明によれば、レーダ装置の信号処理装置では、上述のように、まず周波数と角度とに対するビート信号の信号レベルの分布を作成する。この分布に基づいて、目標物の位置または大きさを算出する。送信波のビーム幅に拘わりなく、目標物の位置または大きさを精密に算出することができる。また、レーダ装置を容易に小型化することができる。さらに、相対距離および相対速度の計算精度を向上させることができる。
また、レーダ装置の信号処理装置では、曲線形状が類似する極大点を求めるために、その極大点の信号レベルおよび角度と該極大点を含む角度範囲とを比較する。これによって、演算処理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態であるレーダ装置の信号処理方法を用いたレーダ装置31の電気的構成を表すブロック図である。
【図2】送信および受信アンテナ33,34のアンテナ特性を表すグラフである。
【図3】送信波および反射波の周波数の経時変化を表す波形図、およびビート信号Bupn,Bdnnを表す波形図である。
【図4】測定角度および周波数に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。
【図5】測定角度および周波数に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。
【図6】送信波の放射方向の角変位と送信波の周波数の偏移との関係を説明するための送信波の周波数の経時変化を表す波形図である。
【図7】レーダ装置31の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】測定角度および周波数に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフを簡略化して表す模式図である。
【図9】或る測定角度における、周波数に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。
【図10】或る周波数における、測定角度に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。
【図11】極大点が複数ある場合、或る周波数における、測定角度に対するビート信号Bupnの信号レベルの分布を表すグラフである。
【図12】第2実施形態のレーダ装置の信号処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】第1の従来技術のレーダ装置を搭載した車両3と目標物7との位置関係を表すグラフである。
【図14】第1の従来技術のレーダ装置によって受信された反射波の受信電界強度の分布を表すグラフである。
【図15】第2の従来技術のレーダ装置を搭載した車両3と目標物7との位置関係を表すグラフである。
【図16】第2の従来技術のレーダ装置によって受信された反射波の受信電界強度の分布を表すグラフである。
【符号の説明】
31 レーダ装置
33 送信アンテナ
34 受信アンテナ
40 FFT回路
41 変位装置
44 信号処理回路
45 アプリケーション装置
46 センサ装置

Claims (9)

  1. 時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理方法において、
    送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
    増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
    求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
    増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
    角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近い場合に、複数の極大点のうちで信号レベルが最大である極大点の角度範囲に基づいて、目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理方法。
  2. 時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理方法において、
    送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
    増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
    求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
    増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
    角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近いときを除いて、各極大点の角度範囲のうちで相互に重複する角度範囲全体の信号レベルの分布のうちで、最も外側の2点の角度を両端とする 角度範囲に基づいて、単一の目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理方法。
  3. 増加期間および減少期間の分布の各極大点毎に、周波数の差と角度範囲の中心角度の差と角度範囲の大きさの差と信号レベルの差とを求め、
    周波数の差が予め定める第1基準値未満であり、角度範囲の中心角度の差が予め定める第2基準値未満であり、角度範囲の大きさの差が予め定める第3基準値未満であり、かつ信号レベルの差が予め定める第4基準値未満である増加期間および減少期間の分布の極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする請求項1または2記載のレーダ装置の信号処理方法。
  4. 前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、周波数の差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする請求項記載のレーダ装置の信号処理方法。
  5. 前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、信号レベルの差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする請求項記載のレーダ装置の信号処理方法。
  6. 前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、角度範囲の中心角度の差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする請求項記載のレーダ装置の信号処理方法。
  7. 前記各差が各基準値未満である極大点の組合わせが複数ある場合、角度範囲の大きさの差が最小の組合わせの極大点を、曲線形状が類似する極大点とすることを特徴とする請求項記載のレーダ装置の信号処理方法。
  8. 時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理装置において、
    送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
    増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
    求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
    増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
    角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近い場合に、複数の極大点のうちで信号レベルが最大である極大点の角度範囲に基づいて、目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理装置
  9. 時間経過に伴って周波数が増加および減少する電磁波である送信波を、放射方向を角変位させつつ送信し、送信波が目標物によって反射された反射波を受信し、送信波と反射波とを混合した混合信号に基づいて目標物の位置に関する情報を求めるレーダ装置の信号処理装置において、
    送信波の周波数が増加する増加期間および送信波の周波数が減少する減少期間毎に、周波数および予め定める基準方向と送信波の放射方向との成す角度に対する混合信号の信号レベルの分布を求め、
    増加期間および減少期間の分布を表す曲線を比較して、極大点を含む予め定める範囲の曲線形状が類似する極大点を求め、
    求められた増加期間および減少期間の極大点を含む前記範囲の分布に基づいて、目標物の位置または大きさを求め、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が1つある場合に、増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布毎に、分布の極大点の角度を含み、極大点の信号レベルよりも予め定める基準レベルだけ信号レベルが小さい第1および第2角度であって極大点の角度から第1および第2角度に近付くに伴って信号レベルが減少する第1および第2角度を両端とする角度範囲を求め、
    増加期間および減少期間の分布の極大点の周波数と信号レベルと角度範囲とを比較して、信号レベルと角度範囲と周波数とが等しい極大点の組合わせを、曲線形状が類似する極大点とし、
    増加期間および減少期間の周波数が等しい信号レベルの分布に極大点が複数ある場合、各極大点毎に角度範囲を求め、
    角度範囲が重複し、かつ重複する角度範囲において反射波の受信電界強度が受信アンテナによって受信される雑音成分に近いときを除いて、各極大点の角度範囲のうちで相互に重複する角度範囲全体の信号レベルの分布のうちで、最も外側の2点の角度を両端とする角度範囲に基づいて、単一の目標物の位置または大きさを求めることを特徴とするレーダ装置の信号処理装置
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